2010年8月8日日曜日

ベースボールの原風景

 既報のとおり、昨日世界大学野球選手権、キューバvsアメリカの決勝戦を見てきました。三位決定戦の日本vs韓国戦については各紙が詳細を伝えておりますが、決勝戦はほとんど無視されておりますので特別企画として当ブログで取り上げてみます。

 観客は1~2千人程度でしょうか。こういう試合を見に来る人たちは野球通が揃っているという印象を受けました。入場料は一般2,000円、全席自由席ですので3回まではネット裏、6回まで一塁側(アメリカ)、10回までは三塁側(キューバ)で見ていました。同じような移動をしている人が何人かいました。流石に野球の見方を良くご存じの方が多いようです。
 始球式の打席には王さんが立ちました。「王さんの打席なんて後楽園で見た以来だ。」という声が聞こえてきました(私もそうですが)。

 試合経過ですが7回まではキューバ先発ゴンザレス、アメリカ先発コーンの投げ合いで0対0が続きます。ゴンザレスは重そうなストレートにスライダーとフォーク(試合前のブルペンを目の前で見て握りまで確認しましたので間違いありません。)、コーンのストレートはゴンザレスよりは軽そうですがMax158キロ(全球確認したわけではありませんが私が確認した中でのMaxは158キロでした。ゴンザレスのmaxは155キロ。)、スライダーの切れはゴンザレスを上回っています

 8回表アメリカは一番セカンド右打者マジーの右翼ホームランで1点を先制。ゴンザレスがマウンドを降りてくる際グラブで顔を隠していました。恐らく泣いていたのだと思います。1点リードしたアメリカは二番手ノア・ラミレスを投入、しかし球威は明らかにコーンに劣ります。周りからも「大丈夫か」と言う声が複数聞こえてきました。8回裏キューバは四番右打者デスパイネが右中間最深部に叩き込んで1-1の同点となります。

 9回表ゴンザレスが続投し無得点に抑えます。ブルペンでは二人用意していましたが(神宮のブルペンはスタンドから見えます)試合後の監督インタビューによると本人が続投を申し出たとのことでした。9回裏キューバ先頭打者の当りは左中間へのラインドライブ、アメリカのレフトがダイビングして捕ったかに見えましたがグラブに当てながらつかめず二塁打、この後死球、パスボール、敬遠で無死満塁となります。監督が出てきましたがノア・ラミレスは続投、次打者への一球目の前、三塁擬投から一塁牽制の構え、明らかに勝負を避けたがっている様子、すかさず監督がベンチから飛び出しリリーフに一塁手のニック・ラミレスを送ります。アメリカもブルペンで二人用意していましたが何故か全く投球練習をしていない一塁手をマウンドに送りました。投球練習を見ても明らかに球威不足、一球目のストレートの球速表示が118キロと出た時はスタンドのあちこちから「あれで大丈夫か」「勝負あった」との声が飛びました。9回裏無死満塁で迎えるバッターは一番打者、誰が見ても勝負の行方は目に見えていたのですが、一番打者の当りは痛烈なピッチャー返し、これをニック・ラミレスがハッシと掴むや1-2-3のゲッツー、次打者も抑えて延長戦に突入、アメリカ監督の采配に兜を脱ぎました。

 延長戦はタイブレーク制度を採用、すなわち無死一二塁からの攻撃となります。10回表アメリカは先頭打者が送りバントを決めて一死二三塁、この後1点をあげて(記憶が飛んでいるため詳細が思い出せません)四番ニック・ラミレスが登場、ゴンザレスの剛球にバットが真っ二つとなる一塁へのハーフライナー、ところが折れたバットと詰まったハーフライナーの打球がほとんど同じタイミングで一塁手の正面に飛び、一塁手がバットを避けながらジャンプしましたがタイミングが合わずボールを逸らして2点目が入り3-1となります。ここでゴンザレスが無念の降板、少ない観衆から最大限の賛辞の拍手が送られました。

 10回裏キューバは無死一塁で三番打者からの攻撃、ニック・ラミレスの球威では逆転サヨナラスリーランが期待できますので(スタンドのあちこちからも「ホームランで逆転じゃないか」との声が聞こえてきました。)当然打ってくると思いましたが初球送りバントがファウル、二球目からヒッティングに切り替えいい当たりのセンター後方へのライナーとなりましたが合わせただけで振りきれておらずフェンス手前でセンターが捕球して一死一二塁となり四番デスパイネを迎えます。デスパイネは十分引きつけてフルスイング、打球は左翼スタンドに消えキューバが劇的な逆転サヨナラ優勝を決めました。

 キューバの練習が見たくて試合開始一時間前に神宮に到着しました。キューバの特徴を一言でいえば肩が違います。地肩の強さもあるでしょうがキャッチボールの質が日本とは違います。短距離でも平気で恐ろしいくらいの球を投げます。日本の練習方法でも「けんかボール」がありますがちょっと違います。恐らく幼いころから身についているのではないかと思われます。キャッチボールの最後は至近距離からアンダーでのスナップスローの連続、この辺りは日本でも行われているとは思いますがぜひ見習ってもらいたい。もうひとつ、一人の時は常に壁にボールを当ててワンバウンドの捕球を繰り返しています。こうした積み重ねがキューバ野球を形成しているのでしょう。キューバ野球にベースボールの原風景を見たのは私だけではなかったと思います。

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