2015年5月31日日曜日

17年 南海vs黒鷲 9回戦


7月26日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 4 0 0 0 0 2 6 南海 32勝27敗 0.542 石田光彦 神田武夫
0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 黒鷲 14勝39敗4分 0.264 畑福俊英

勝利投手 神田武夫 17勝12敗
敗戦投手 畑福俊英   2勝5敗

二塁打 (黒)木村

勝利打点 国久松一 1

猛打賞 (南)国久松一 4


国久松一、猛打賞の活躍

 黒鷲は初回、山田潔、渡辺絢吾が連続四球を選んで無死一二塁、しかし玉腰忠義は一邪飛、小松原博喜の遊飛に飛び出した二走山田が帰れずダブルプレー。これを単なる凡走と見るだけでは実況中継の資格はない。ヒットが多く出るチームではない状況、ボールが飛ばない時代に外野が浅く守っていた状況を考えると、ポテン気味の打球に行方を見てからではホームインは難しいと判断して一発勝負を賭けたと見るべきでしょう。これが新人なら単なるボーンヘッドの可能性が高いが、走者が山田ですから。「一死なのだから自重すべき」は現代の常識であり、時代背景を考慮する必要がある。六番に下がっている好打者・富松信彦が当たっていないことも山田の脳裏にあったのではないでしょうか。 

 3回まで1安打無得点の南海は4回、先頭の猪子利男が四球、北原昇が死球を受けて無死一二塁、岩本義行の送りバントをファースト小松原が落球、犠打とエラーが記録されて無死満塁、国久松一が左前に先制の2点タイムリーを放って2-0、バックホームの隙を突いて一走岩本は三塁に進み、打者走者の国久も二塁に達して無死二三塁、中野正雄の右前タイムリーで3-0、中野が二盗を決めて無死二三塁、石田光彦の遊ゴロの間に三走国久が還って4-0とする。久々に南海らしい攻撃を見せた。

 黒鷲は5回、先頭の富松が四球で出塁、木下政文も中前打で続いて無死一二塁、南海ベンチはここで先発の石田から神田武夫にスイッチ、杉江文二は二飛に倒れて一死一二塁、木村孝平の左中間二塁打で1-4としてなお一死二三塁、ここは神田が踏ん張り畑福俊英は浅い右飛、トップに返り山田は左邪飛に倒れて追加点はならず。

 黒鷲は7回、先頭の富松が四球で出塁、木下は二飛に倒れるが杉江の遊ゴロをショート猪子がエラー、しかし木村の三ゴロはサード柳鶴震がベースを踏んで二死一二塁、畑福は三振に倒れる。

 黒鷲は8回、先頭の山田の遊ゴロを又しても猪子がエラー、渡辺は左飛に倒れるが玉腰の右前打で一死一二塁、しかし小松原の二ゴロが「4-6-3」と渡ってダブルプレー。

 南海は9回、先頭の八木進がピッチャー強襲ヒット、徳島忠彦のバントが内野安打となって無死一二塁、トップに返り柳は6球ファウルで粘った末に三振、猪子が四球を選んで一死満塁、北原が左前にタイムリーを放ち5-1、岩本の中犠飛で6-1として試合を決める。

 神田武夫は最終回を三者凡退に抑えて5イニングを2安打1四球1三振無失点で17勝目をあげる。


 五番に入った国久松一が決勝タイムリーを含む5打数3安打の猛打賞。南海は好調・柳鶴震をトップに上げた関係で国久が五番に回ったのが効を奏した。国久は今季4回目の猛打賞であるが4月に3回記録して以来となる。




 

2015年5月30日土曜日

17年 阪神vs大洋 8回戦


7月25日 (土) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 5 3 0 0 1 0 1 11 阪神 33勝25敗2分 0.569 木下勇 若林忠志 三輪八郎
1 1 0 0 0 0 0 0 0  2  大洋 31勝21敗4分 0.596 重松通雄 三富恒雄 古谷倉之助

勝利投手 若林忠志 14勝7敗
敗戦投手 重松通雄   1勝3敗
セーブ     三輪八郎   1

三塁打 (神)松尾、若林 (大)中村
本塁打 (神)金田 1号

勝利打点 松尾五郎 5

猛打賞 (神)カイザー田中義雄(4安打) 1


田中義雄、4安打

 阪神は初回、先頭の松本貞一が左前打で出塁、御園生崇男が送りバントを決め、カイザー田中義雄の左前打で一死一三塁とするが、土井垣武は三ゴロ、藤井勇は中飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 大洋は1回裏、先頭の中村信一が四球で出塁、浅岡三郎が中前打、濃人渉が送りバントを決めて一死二三塁、野口明はストレートの四球で一死満塁、村松長太郎の中犠飛で1点を先制する。

 阪神は2回、先頭の松尾五郎が四球を選んで出塁、野口昇が送って一死二塁、木下勇は左飛に倒れるが、塚本博睦が左前に同点タイムリーを放って1-1とする。

 大洋は2回裏、一死後重松通雄が四球で出塁、織辺由三の三ゴロで重松は二封、トップに返り中村の右中間三塁打で2-1と勝ち越す。

 阪神は3回、一死後田中が三塁に内野安打、土井垣が四球を選んで一死一二塁、藤井の右前タイムリーで2-2の同点、松尾の右前タイムリーで3-2と逆転、一走藤井は三塁に進み、中継の乱れの間にホームに還って4-2、野口昇は三振に倒れるが、木下に代わる代打若林忠志監督の右中間三塁打で5-2、塚本の遊ゴロをショート濃人が一塁に悪送球する間に三走若林が還って6-2とリードを広げる。

 阪神は4回、先頭の御園生が中前打で出塁、田中が送りバントを決め、土井垣が四球を選んで一死一二塁、松尾の右中間三塁打で二者還り8-2、野口昇の三塁内野安打がタイムリーとなって9-2とする。

 阪神は7回、二死後御園生が遊撃内野安打、ショート濃人の悪送球が重なり御園生は二進、田中の中前タイムリーで10-0とする。

 阪神は9回、8回の守備からセンターに入っている金田正泰がライトにホームランを放って11-2とする。

 2回の攻撃で木下の代打に出て三塁打を放った若林は3回からマウンドに上がり4イニングを4安打無四球2三振無失点に抑えて14勝目、7回から登板した三番手の三輪八郎は3イニングを1安打2四球無三振無失点に抑え、当ブログルールによりセーブが記録された。


 カイザー田中義雄が4打数4安打、好調・松尾五郎が3打数2安打3得点3打点を記録、阪神が圧勝した。


 金田正泰が甲子園球場でライトにホームランを放った。当りは「飛球」と記録されているので柵越えの可能性が高い。金田は昭和18年8月1日にも甲子園球場でホームランを放つがこれは「ゴロ」によるものなのでランニングホームランであった。


 甲子園球場では昭和16年には1本も本塁打が記録されなかったが、昭和17年7月20日に小暮力三が左打席からレフトスタンドにホームランを放ち、この日は非力な金田正泰もライトにホームランを放った。このところ、関西では飛ぶボールを使用しているようだ。昭和17年夏頃の「野球界」にも「飛ぶボールの使用」について書かれており、それを裏付けていると言える。聯盟では非常時に備えてニューボールをストックしており、折に触れて「飛ぶボール」を使用し、突如として本塁打が量産される場面を見ることができる。本塁打が減って客足が遠のくと「飛ぶボール」を使用して客足を引き寄せるという手段を使っている。この手段は、戦後も継続され、現在に至るまで使われている。





 

2015年5月29日金曜日

17年 朝日vs名古屋 8回戦


7月25日 (土) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 0 3 0 0 2 0 0 7 朝日     25勝31敗2分 0.446 林安夫
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 名古屋 20勝37敗2分 0.351 石丸進一 森井茂

勝利投手 林安夫   14勝14敗
敗戦投手 石丸進一 9勝10敗

二塁打 (朝)内藤、岩田
三塁打 (朝)林

勝利打点 林安夫 2


林安夫、六度の三者凡退で14勝目

 朝日は四番に浅原直人を起用、浅原の四番は兵役に就く前、昭和12年11月7日以来のこととなる。

 朝日は2回、先頭の伊勢川真澄がストレートの四球で出塁、林安夫が左中間に三塁打を放ち1点を先制、続く広田修三の打席でキャッチャー古川清蔵がパスボール、林が還って2-0とする。

 朝日は4回、先頭の林が四球を選んで出塁、広田に代わる代打内藤幸三の右翼線二塁打で一走林が長駆ホームに還り3-0、五味芳夫がセンター右にタイムリーを放ち4-0、トップに返り坪内道則の二ゴロが野選を誘い、室脇正信の二ゴロの間に二者進塁して一死二三塁、鬼頭政一の右犠飛で5-0と突き放す。

 朝日は7回、一死後鬼頭に代わる代打早川平一が四球から二盗に成功、浅原も四球を選んで一死一二塁、岩田次男の左中間二塁打で二者還り7-0とダメ押す。

 朝日先発の林は3回まで三者凡退を続けるパーフェクトピッチング。4回、先頭の石丸藤吉に中前打を許すが桝嘉一を「5-4-3」の併殺に打ち取り、吉田猪佐喜も投ゴロに抑えて無失点。5回、一死後飯塚誠に中前打を許すが後続を抑え、6回も一死後石丸藤吉に右前打を打たれるが桝を三飛、本田親喜を遊ゴロに抑えて無失点。


 林安夫は7回から9回を三者凡退に抑え、4安打無四球1三振で今季8度目の完封、打っても先制&決勝の三塁打を放ち勝利打点を記録した。






*林安夫は無四球4安打完封で14勝目をマークする。









*林に4安打に抑え込まれた名古屋打線。1回から3回と7回から9回は三者凡退であった。









 

2015年5月28日木曜日

17年 阪急vs巨人 7回戦


7月25日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急 28勝26敗2分 0.519 笠松実 天保義夫
0 0 4 0 0 0 0 0 X 4 巨人 40勝17敗1分 0.702 広瀬習一

勝利投手 広瀬習一 17勝6敗
敗戦投手 笠松実      8勝10敗

二塁打 (巨)伊藤

勝利打点 なし


広瀬習一、7度の三者凡退で17勝目

 巨人は初回、先頭の白石敏男が右前打で出塁するが呉波の二ゴロが「4-6-3」と渡ってダブルプレー。2回も二死後伊藤健太郎が左中間二塁打を放つが坂本茂はファーストライナーに倒れて無得点。

 巨人は3回、先頭の広瀬習一がピッチャー強襲ヒット、三好主の右前打で無死一二塁、トップに返り白石の遊ゴロをショート中村栄が失する間に二走広瀬が駿足を飛ばしてホームに還り1点を先制、呉も三前にバントヒットを決めて無死満塁、中島治康の三塁内野安打で2-0、川上哲治の左前タイムリーで3-0、楠安夫の右犠飛で4-0とする。

 巨人は4回以降も毎回のように走者を出しながら3つの併殺を喫して追加点はならず。

 阪急打線は広瀬の下手投げに抑え込まれた。1回は三者凡退。2回は一死後山下好一が右前打を放つが日比野武は投ゴロ、石井武夫は三ゴロに倒れる。4回から6回は三者凡退。

 阪急は7回、上田藤夫、黒田健吾は連続左飛に倒れるが、小田野柏が中前打、山下好一がライト線にヒットを放ち二死一三塁とこの試合唯一のチャンスを作り、日比野の当りは右前に抜けるがライト中島からファースト川上に送球されてライトゴロ。

 広瀬習一は8回、9回を三者凡退に抑え、3安打無四球2三振で今季8度目の完封、17勝目をあげる。昨日の野口二郎と同様、無四球で7度の三者凡退を記録した。


 巨人ベンチは下位チーム専門に起用してきた広瀬を上位チームにぶつけてきた。この時点で中尾輝三より上と判断した模様で、広瀬も期待に応えて無四球完封劇を演じて見せた。広瀬の完封勝利は、6月までは朝日から3回、黒鷲から2回であったが、7月に入るや大洋、南海、阪急から各1回と上位球団にも通用してきている。但し、7月に入って南海は2勝13敗と泥沼の状況で、阪急も6勝8敗と元気がない状況である。7月共に9勝5敗1分と好調の名古屋と阪神に通用するかどうかで広瀬の成長ぶりが判断できる。





*広瀬習一は3安打無四球の完封で17勝目をあげる。




 

2015年5月27日水曜日

17年 黒鷲vs南海 8回戦


7月25日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 1 0 1 0 3 黒鷲 14勝38敗4分 0.269 石原繁三
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 南海 31勝27敗 0.534 石田光彦 長谷川善三 神田武夫

勝利投手 石原繁三 9勝16敗
敗戦投手 石田光彦 5勝6敗

二塁打 (黒)小松原、木下、玉腰
三塁打 (南)国久

勝利打点 小松原博喜 1


黒鷲全員安打

 黒鷲は初回、先頭の山田潔が四球を選んで出塁、渡辺絢吾が三振に倒れて山田は二盗に失敗、しかし玉腰忠義が右翼線にヒット、小松原博喜の右中間二塁打で玉腰が還り1点を先制する。

 黒鷲は2回に富松信彦と木村孝平、3回は山田と渡辺がヒットを放つが無得点。4回、先頭の杉江文二が中前打を放つがここも得点に結びつかず、5回も二死一塁から木下政文が左中間に二塁打を放ち一走小松原が一気にホームを狙うがタッチアウト、毎回安打を放ちながら追加点を奪えず。

 黒鷲は6回、先頭の杉江が四球で出塁、木村が送って一死二塁、石原繁三の右前打で一死一三塁、のはずであったが石原が一塁をオーバーランして「9-1-3」と転送されてタッチアウト、トップに返り山田が四球を選んで二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて2-0とする。このプレーでは三走杉江と一走山田に同じタイミングで盗塁が記録されているので「重盗」なのですが、備考欄に「1-6-2の間に重盗」と書かれているので、一走山田がディレードスチールを仕掛けて一二塁間に挟まれている間に三走杉江がホームを陥れ山田も二塁に進んだトリックプレーによる重盗であったことが分かります。

 黒鷲は8回、一死後木村がショートに内野安打、石原が送って二死二塁、トップに返り山田の左前タイムリーで3-0とリードを広げる。

 南海は8回裏、元気のない南海打線の中にあって一人気を吐く柳鶴震が中前打を放って出塁、猪子利男が四球を選んで一死一二塁、北原昇の遊ゴロをショート山田が失して一死満塁、岩本義行の遊ゴロの間に三走柳が還って1-3とするが追撃もここまで。

 石原繁三は6安打3四球1三振1失点、自責点ゼロの完投で9勝目をあげる。


 不振を続ける南海と最下位を独走する黒鷲との一戦は黒鷲が全員安打を記録して快勝、7回を除く毎回安打でもあった。


 南海は好調・柳鶴震をトップに起用し、柳は4打数2安打を記録して期待に応えたが、チームは元気なく敗れ去った。



*全員安打を記録した黒鷲打線。



 

17年 朝日vs大洋 7回戦


7月24日 (金) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 朝日 24勝31敗2分 0.436 福士勇
0 0 0 0 0 0 4 1 X 5 大洋 31勝20敗4分 0.608 野口二郎

勝利投手 野口二郎 20勝9敗
敗戦投手 福士勇      8勝6敗

二塁打 (大)濃人

勝利打点 なし


野口二郎、7度の三者凡退で20勝

 大洋は初回、先頭の中村信一の二ゴロをセカンド鬼頭政一がエラー、濃人渉が送って一死二塁と先制のチャンス、しかし浅岡三郎は捕邪飛、野口二郎は三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 大洋は4回、二死後野口明の三ゴロをサード岩田次男がエラー、続く村松長太郎は遊ゴロに倒れて野口は二封される。

 大洋は7回、先頭の野口明の二ゴロをセカンド鬼頭がエラー、しかし野口は「1-6B」と送球されてタッチアウト、盗塁失敗は記録されていないのでディレードスチールではないようですが何らかのトリックプレーを試みたのかもしれない。続く村松が四球で出塁、山川喜作が中前打で続いて一死一二塁、佐藤武夫は左飛に倒れて二死一二塁、ダブルスチールを決めて二死二三塁、この時キャッチャー伊勢川真澄は二塁に送球したようで、伊勢川からの送球を捕球したセカンド鬼頭が三塁に進んだ村松がオーバーランしたのを見て三塁に送球するが、これが低く逸れて悪送球となる間に村松が生還して1点を先制する。山川も三塁に進んで二死三塁、織辺由三が四球を選んで二死一三塁、トップに返り中村が左前にタイムリーを放ち2-0、この打球をレフト室脇正信が後逸する間に一走織辺も還って3-0、中村は三塁に進み、続く濃人のレフト線二塁打で4-0とする。福士勇の自責点はゼロであった。

 大洋は8回、先頭の野口二郎が中前打で出塁、続く野口明の二ゴロをセカンド鬼頭がこの日4つ目のエラー、村松は中飛に倒れ、山川の遊ゴロで野口明が二封されて二死一三塁、ここで山川がディレードスチールから一二塁間に挟まれる間に三走野口二郎がホームに還り5-0、山川は「2-6-3」でタッチアウトとなるがこれは想定の範囲内。


 野口二郎が快投を見せた。2回一死後、浅原直人に中前打、岩田にバントヒットを許すが、広田修三を三振、福士を遊ゴロに打ち取る。3回、先頭の五味芳夫の遊ゴロをショート濃人がエラー、トップに返り坪内道則の遊ゴロを濃人が一塁に送球して一死二塁、ここで二塁に進んだ五味が送球の隙に三塁を狙うがファースト野口明からの三塁送球にタッチアウト、「6-3-5」の併殺が記録される。


 野口二郎は4回以降、一人の走者も出さず三者凡退を積み重ね、1回の三者凡退も含めて7度の三者凡退を記録、2安打無四球7三振で今季9度目の完封、20勝目をあげる。


 朝日は鬼頭政一の4つを含めて6失策、福士勇は5失点ながら自責点はゼロであった。



 

2015年5月25日月曜日

三冠への道 2015 その3




 月間MVPの季節が近づいてきましたのでプレ予想といきましょう。打撃部門は固まってきていますが、投手部門は今月最終登板で激変する可能性がありますのでご了承ください。投手部門に「プレ予想」は禁物ですね(笑)。


 ナ・リーグ打撃部門はブライス・ハーパーで決まりでしょう。今月ここまで70打数27安打21得点26打点、二塁打3本、三塁打1本、本塁打11本、17四球2盗塁。打率3割8分6厘、出塁率5割6厘、長打率9割2分9厘、OPS1.434と、歴史的な成績を残しています。ライバルはいません!二塁打が少なすぎるのが唯一の欠点ですが、本塁打が多すぎるので致し方のないところでしょう(笑)。本日は「9-6」のライトゴロも記録しています。ハーパーが残りの試合を無安打だと、大穴としてサンディエゴのジャスティン・アプトンが浮上します。打率は3割9厘ですが、6本塁打21打点に加えて8盗塁が光ります。5月の盗塁王ディー・ゴードンの9個とは1個差です。


 ア・リーグ打撃部門は90打数41安打、打率4割5分6厘のジェイソン・キプニスが有力ですが、3本塁打12打点と打率だけの成績なので終盤急降下する可能性があります。二塁打が11本でOPSは1.260ですから逃げ切る可能性も十分ありますが。キプニスの打率が落ちてくると7本塁打22打点のプリンス・フィルダーが浮上してきます。打率も3割8分ですし。


 ナ・リーグ投手部門は一昨年のア・リーグサイ・ヤング賞マックス・シャーザーが4勝1敗で36イニングスを投げて43奪三振。2008年にリーグチャンピオンシップMVPとワールドシリーズMVPに加えてベーブ・ルース賞を受賞したコール・ハメルズも4勝1敗で35回3分の1を投げて35奪三振と好調です。大穴は快調アトランタのシェルビー・ミラーで2勝0敗ながら31イニングスを投げて防御率0.87、被打率1割4分4厘、WHP0.68と抜群の内容です。奪三振も25個とそこそこですし。


 ア・リーグ投手部門は2勝2敗ながら35回3分の2を投げて47奪三振のコーリー・クルーバーと予想します。現在、世界で最も打者の手元で曲がるスライダーの持主であることを世界で最も早く見抜いたのが当ブログであることはご案内のとおりです。それが証明されたのが5月13日のカージナルスとの交流戦でした。何と8イニングで18奪三振、この時点で113球を投げていたことから降板させられましたが、9回も投げていれば21奪三振の新記録が樹立された可能性がありました。


 投手部門は今月の最終登板結果で大きく状況が変わります。



*コーリー・クルーバーは8回で18奪三振。

http://m.mlb.com/video/topic/28033182/v114090483/stlcle-kluber-takes-nono-into-7th-strikes-out-18/?c_id=mlb



*ブライス・ハーパーはライトゴロを記録。

http://m.mlb.com/video/topic/6479266/v129491383/phiwsh-harper-fields-throws-to-second-for-forceout





 

17年 名古屋vs阪神 8回戦


7月24日 (金) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 名古屋 20勝36敗2分 0.357 西沢道夫 河村章
0 0 0 0 2 0 0 0 X 2 阪神    32勝25敗2分 0.561 御園生崇男

勝利投手 御園生崇男 8勝6敗
敗戦投手 西沢道夫     3勝5敗  

勝利打点 土井垣武 6


御園生崇男、投げて3安打、打って2安打

 名古屋は初回、先頭の石丸藤吉が四球を選んで出塁、桝嘉一は中飛に倒れるが、本田親喜の投ゴロはピッチャー御園生崇男がグラブに当てバックアップのセカンド松本貞一からファースト藤井勇に送られて一塁アウト、この間に石丸は一気に三進、吉田猪佐喜が右前にタイムリーを放って1点を先制する。

 阪神は1回裏、二死後カイザー田中義雄、土井垣武が連続四球、しかし藤井は中飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪神は3回、一死後御園生が中前打で出塁、しかし田中のサードライナーに御園生が戻れず「5-3」と渡ってダブルプレー。ここは「打走法」が掛かっていた可能性があるが、エンドランの場合、詰まってもゴロが鉄則でライナーは禁物です。

 阪神は5回、先頭の野口昇が四球を選んで出塁、塚本博睦の投前送りバントはピッチャー西沢道夫が二塁に送球してフォースアウト、「1-4」と記録されているのでセカンド石丸藤吉が二塁ベースカバーに入った訳で、名古屋はバントシフトをとっていなかったようだ。石丸が「打走法」を警戒してシフトをとっていなかった可能性も考えられる。こういうケースの「1-4」で、こういう想像ができるのがスコアカード解読の醍醐味です。トップに返り松本貞一の三前バントが内野安打となって一死一二塁、御園生は左飛に倒れて二死一二塁、田中が中前に同点タイムリーを放って1-1、名古屋ベンチはここで先発の西沢から河村章にスイッチ、しかし土井垣が左前にタイムリーを放って2-1と逆転に成功する。

 その後は両軍無得点、好調阪神が5連勝を飾った。


 御園生崇男は91球で3安打2四球2三振の完投、8勝目をあげる。打っても4打数2安打を記録した。


 名古屋先発の西沢道夫は4回3分の2を投げて72球、二番手の河村章は3回3分の1を投げて25球、両軍ともに100球以下の投球数で試合時間は1時間6分、西沢が四球を5個も出していなければ試合時間は1時間を切っていたでしょう。




 

2015年5月24日日曜日

17年 南海vs阪急 7回戦


7月24日 (金) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 2 0 0 0 2 南海 31勝26敗 0.544 神田武夫
0 0 1 0 0 0 1 2 X 4 阪急 28勝25敗2分 0.528 森弘太郎

勝利投手 森弘太郎 14勝8敗
敗戦投手 神田武夫 16勝12敗

二塁打 (急)山田、黒田
三塁打 (急)小田野

勝利打点 黒田健吾 4


新四番・小田野柏の三塁打で阪急が息を吹き返す

 南海は神田武夫、阪急は森弘太郎の両エースが先発。南海は好調だった川崎徳次が盲腸の手術のため緊急入院、再び神田の負担が増してきた。

 阪急の四番は帰還兵の小田野柏。小田野は元はピッチャーであるが強打を買われて外野手として起用されていくこととなる。昭和13年5月1日、川上哲治がプロ入り初打席で対戦したピッチャーこそが小田野柏であった。川上の初打席は「センターフライ」と誤って伝わっているが、スコアカードに残されている記録は「ライトフライ」である。

 南海は2回、先頭の岩本義行が三塁に内野安打、国久松一が中前打を放って無死一二塁、中野正雄が送りバントを決めて一死二三塁、柳鶴震の当りはサードライナー、二死二三塁から徳島忠彦は三振に倒れて無得点。

 阪急は3回、一死後森弘太郎が三塁に内野安打、トップに返りフランク山田伝がレフト線に二塁打を放って一死二三塁、上田藤夫が中前にタイムリーを放って1点を先制する。

 南海は6回、二死後岩本が四球を選んで出塁、続く国久の打席で岩本が二盗、三盗を決めて二死三塁、国久も四球から二盗を決めて二死二三塁、中野に代わる代打中村金治も四球を選んで二死満塁、ここで不振を極める南海打線の中で一人気を吐く柳鶴震が三塁線を破る逆転タイムリーを放って2-1とする。

 しかし調子の上がらない神田はこのリードを守れなかった。

 阪急は7回、先頭の小田野が右中間に三塁打、中継プレーでショート猪子利男が落球する間に小田野が生還して2-2の同点とする。

 阪急は8回、一死後山田が四球を選んで出塁、上田の三ゴロをサード柳が二塁に悪送球して一死一二塁、ここで黒田が左中間に二塁打を放って二者還り4-2と逆転に成功する。

 森弘太郎は7回から9回を三者凡退に抑え、5安打3四球4三振の完投で14勝目をあげる。


 この頃の神田について、「野球界」や読売新聞は「投げ過ぎによる疲労」と書いており胸の病については触れていない。一方、北原昇については、昭和17年11月15日発行「野球界」第22号に「北原は病気」という記述が認められる。


 劣勢だった阪急は新四番・小田野柏の三塁打で息を吹き返した。川上のプロ入り初打席が実際は「ライトフライ」であったにもかかわらず「センターフライ」と誤って伝わっている理由は、小田野の母校である岩手県立福岡高校野球部史「陣場台熱球録」に紹介されている「小田野柏」の項に「川上哲治がプロ入りして最初に対戦した投手が小田野柏であった。この時は、見事にセンターフライに打ち取っている。」と書かれているからであると推測される。それが「Wikipedia」等で事実誤認が伝播してしまったのでしょう。同部史は非常に内容が優れた著作である。小田野柏は長命であったので、同部史が平成17年に刊行された際、実際に小田野柏本人にインタビューして作成されたものと推測できる。但し、川上との初対決は数十年前のことであり記憶違いであった可能性は十分考えられる。




*昭和13年5月1日、川上哲治のプロ入り初打席は「ライトフライ」であった。対戦投手が小田野柏である。3人目のファースト内海五十雄は現巨人・内海哲也の祖父である。







 

17年 黒鷲vs巨人 8回戦


7月24日 (金) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 黒鷲 13勝38敗4分 0.255 金子裕 松本操
0 2 0 1 0 1 0 0 X 4 巨人 39勝17敗1分 0.696 中尾輝三

勝利投手 中尾輝三 11勝6敗
敗戦投手 金子裕      3勝7敗

二塁打 (黒)山田 (巨)中島、伊藤、三好

勝利打点 三好主 1

猛打賞 (巨)白石敏男 2


三好主、決勝二塁打

 7月21日から2日間日程が空いた巨人は本日24日が黒鷲戦、25、26日が阪急との連戦、27日が黒鷲戦で次は8月1日からの関西遠征まで日程が空くというスケジュール。従来であれば本日と27日の黒鷲戦は広瀬習一に任せ、明日と明後日の阪急戦に須田博と中尾輝三が先発というローテーションとなるところだが、本日は中尾輝三が先発した。広瀬は阪急戦に回るようで、巨人首脳陣は、下位チーム相手に実績を積み重ねてきた広瀬の評価を上げたようだ。


 巨人は2回、先頭の伊藤健太郎が左中間に二塁打、坂本茂の送りバントは三飛となって失敗、しかし三好主が右中間に二塁打を放ち1点を先制、坂本のバント失敗をカバーした。更に中尾が中前にタイムリーを放って2-0とする。

 広瀬にエースの座を奪われかねない中尾は気迫あふれるピッチングで黒鷲打線を寄せ付けず3回まで無安打。4回、玉腰忠義の三塁内野安打と木下政文の四球で無死一二塁とされるが、小松原博喜を捕邪飛、富松信彦を中飛に抑え、杉江文二に右前打を許して二死満塁とするが、木村孝平を三振に打ち取り無失点。5回、6回も無安打、7回も木村に三塁内野安打を許すがキャッチャー楠安夫が木村の盗塁を刺してここまで無失点。

 この間に巨人は着々と加点していった。4回、先頭の坂本の三ゴロをサード玉腰が一塁に悪送球、三好は右飛に倒れるが中尾の二ゴロの間に坂本は二進、トップに返り白石敏男の中前タイムリーで坂本が還り3-0とする。更に6回、二死後坂本が中前打、三好が四球を選んだ4ボール目にキャッチャー木下の捕逸が重なり坂本が一気に三進して一三塁、三好が二盗を決めて二三塁、中尾が四球を選んで二死満塁、トップに返り白石が2打席連続となるタイムリーを中前に放って4-0とする。

 黒鷲は8回、先頭の山田潔がレフト線に二塁打、寺内一隆の遊ゴロの間に山田は三進、玉腰の左犠飛で1-4とするが追い上げもここまで。

 中尾輝三は4安打5四球2三振の完投で11勝目をあげる。打っても貴重な追撃のタイムリーを放つ活躍であった。


 決勝の二塁打を放って勝利打点を記録した三好主は今季高松商業から入団、水原茂の後輩となる。その水原先輩の欠場により21日の阪神戦からサードに起用されている。水原は9月から応召してシベリアに抑留されることとなり、帰還は昭和24年7月のこととなる。三好も兵役に就いたと推測されるが復員は早かったようで、昭和20年11月に行われる戦後初の東西対抗にも出場している。




*昭和20年11月に行われた戦後初の東西対抗を伝える「体育週報」臨時号(日本体育週報社、発行人 大野堅志、昭和20年12月1日発行)。





*三好主も東軍のメンバーに名を連ねている。大下弘は姓の「大下」だけが記載されてる。




*最終面に当日のオーダーと試合経過が記載されている。




 終戦直後の「体育週報」は野球殿堂博物館の図書館でも見ることができます。保存状態が悪化してきているため、閲覧用はコピー版に変更される可能性があるので、実物を見たい方は急がれた方が良いでしょう。




 

2015年5月23日土曜日

17年 第13節 週間MVP



 今節は阪神が快調に飛ばして4勝0敗、大洋が3勝0敗1分、名古屋が2勝1敗1分、巨人が2勝2敗、朝日が1勝3敗、南海が1勝3敗、阪急が1勝3敗、黒鷲が0勝2敗2分であった。


週間MVP

投手部門

 名古屋 西沢道夫 2

 7月18日の阪急戦でノーヒットノーランを達成する。西沢は今季、延長28回と無安打無得点で2回の受賞となったが、この2試合以外はほとんど活躍していない。

 阪神 若林忠志 2

 今節2勝0敗で快調阪神を引っ張る。


打撃部門

 阪神 土井垣武 1

 今節4試合全て4打数2安打で16打数8安打、打率5割、3得点4打点、二塁打2本。四球0が積極的な打撃を物語っている。

 阪神 松尾五郎 1

 今節14打数5安打2得点4打点、2四球。2試合連続勝利打点に続いて次の試合では猛打賞も記録した。土井垣と共に快調阪神を引っ張る。

 大洋 佐藤武夫 1

 今節15打数5安打2得点5打点、1四球、2本塁打。19日の阪急6回戦では同点ホームラン、21日の阪急7回戦では0対3のビハインドから逆転満塁ホームランを放った。

 名古屋 吉田猪佐喜 1

 今節16打数7安打、1盗塁、二塁打2本、本塁打1本。主砲がこれだけ活躍しながら1得点1打点と少ないことが名古屋の勢いが止まった要因となった。


殊勲賞

 巨人 小暮力三 1

 7月20日の朝日戦では左打席から流し打って甲子園の柵越え本塁打を放った模様。甲子園球場では昭和16年には本塁打は1本も記録されていないので、昭和15年12月4日に吉田猪佐喜が放って以来の本塁打であった。

 名古屋 岩本章 1

 18日の阪急戦で決勝2ランホームランを放ち西沢道夫の無安打無得点をアシストした。

 巨人 広瀬習一 2

 19日の南海戦で1安打完封。

 大洋 三富恒雄 5

 20日の黒鷲戦で完投勝利&決勝打


敢闘賞

 黒鷲 畑福俊英 1

 18日の大洋戦と21日の名古屋戦で共に延長12回を完投して引分け。18日は7安打3四球5三振1失点、21日は5安打5四球2三振2失点であった。

 朝日 鬼頭政一 1

 今節15打数5安打の活躍を見せる。

 南海 柳鶴震 1

 今節12打数4安打の活躍。不振の極みとなっている南海打線の中で一人好調をキープしている。当時の「野球界」でも守備の進境ぶりを絶賛されており、戦後の評価と昭和17年夏頃の評価は真逆となっているのが不思議。
 
 朝日 林安夫 2

 18日の巨人戦では須田博に投げ勝つ。


技能賞

 巨人 楠安夫 1

 19日の南海戦では2つの補殺を記録する。

 名古屋 河村章 1

 21日の黒鷲戦では8回二死からリリーフのマウンドに立ち12回までパーフェクトリリーフを見せる。

 朝日 岩田次男 1

 18日の巨人戦、3回一死一二塁の場面で二塁走者としてダブルスチールを決めて巨人を倒す立役者となる。




 

2015年5月22日金曜日

17年 巨人vs阪神 7回戦


7月21日 (火) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 巨人 38勝17敗1分 0.691 須田博
0 1 0 0 0 0 0 2 X 3 阪神 31勝25敗2分 0.554 若林忠志

勝利投手 若林忠志 13勝7敗
敗戦投手 須田博       9勝5敗

勝利打点 御園生崇男 4


阪神4連勝

 巨人は一番に小暮力三を起用、小暮のトップはプロ入り初となる。水原茂が欠場してサードには三好主が入って八番、二番に呉波が入る。要するに、今季ここまで全試合に二番でスタメン出場してきた水原の欠場がオーダー変更の原因となったのである。

 巨人は初回、小暮が一番バッターの役目を果たし8球粘って四球で出塁、呉波の三前送りバントをサード土井垣武がお手玉、犠打とエラーが記録されて無死一二塁、しかし中島治康の遊ゴロが「6-4-3」と渡ってダブルプレー、川上哲治が四球を選んで二死一三塁とするが楠安夫は一直に倒れる。

 巨人は2回、先頭の坂本茂の遊ゴロをショート野口昇がエラー、須田博が右前打を放って無死一二塁、三好の投ゴロで須田が二封されるが三好が二盗を決め、小池繁雄が四球を選んで一死満塁、トップに返り小暮は三邪飛に倒れるが、呉が中前に先制タイムリーを放って1-0とする。

 阪神は2回裏、先頭の土井垣が一塁に内野安打、藤井勇の三ゴロをサード三好が一塁に悪送球して無死二三塁、松尾五郎が四球を選んで無死満塁、若林忠志の二ゴロは「6-4-3」と転送されるが一塁はセーフ、この間に三走土井垣が還って1-1の同点とする。


 この時、巨人ベンチは若林が一塁ベースを踏んでいないと抗議して、試合は15分中断した。

 その後、須田と若林の好投が続き両軍追加点のないまま8回裏を迎える。

 阪神は8回裏、先頭の塚本博睦が四球を選んで出塁、トップに返り松本貞一が左前打を放って無死一三塁、松本が二盗を決めて無死二三塁の大チャンス、御園生崇男の二ゴロの間に三走塚本が還って2-1と勝ち越し、カイザー田中義雄は捕邪飛に倒れるが、土井垣が中前にタイムリーを放って3-1と突き放す。

 若林忠志は6安打3四球4三振1失点、自責点ゼロの完投で13勝目をあげる。快調阪神はこれで4連勝。


 

2015年5月21日木曜日

17年 南海vs朝日 7回戦


7月21日 (火) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 1 0 0 0 1 0 0 3 南海 31勝25敗 0.554 神田武夫
0 0 0 0 0 2 0 0 0 2 朝日 24勝30敗2分 0.444 福士勇 斉藤忠二 山本秀雄 林安夫

勝利投手 神田武夫 16勝11敗
敗戦投手 山本秀雄   2勝5敗

三塁打 (朝)坪内、室脇

勝利打点 神田武夫 1


神田武夫、3週間ぶりの勝利

 南海は初回、一死後猪子利男がストレートの四球で出塁、北原昇もストレートの四球で出塁して一死一二塁、岩本義行は左飛に倒れるが、国久松一の一塁内野安打の間に二走猪子が還って1点を先制する。

 南海は3回、一死後猪子が三塁に内野安打、北原が中前打、岩本が四球を選んで一死満塁、国久の右犠飛で2-0とする。二走北原はタッチアップからスタートを切るが二三塁間に挟まれ「9-2-6-5」と渡ってダブルプレーが記録された。試合巧者北原のことなので、三走猪子のホームインが危ないと見てアシストするために飛び出したとも考えられる。

 朝日は南海先発・神田武夫の前に4回まで2安打無得点。5回はショート猪子のダブルエラーに送りバントを絡めて一死一三塁のチャンスを作るが、斉藤忠二に代わる代打早川平一は捕ゴロ、五味芳夫も三振に倒れて無得点。

 朝日は6回、先頭の坪内道則が左中間に三塁打、室脇正信も左中間に三塁打を放って1-2、南海はここでレフトを岡本利三から徳島忠彦に交代、鬼頭政一は三振に倒れて一死三塁、伊勢川真澄が同点スクイズを決めて2-2と追い付く。

 南海は7回、先頭の中野正雄が四球で出塁、柳鶴震が中前打を放って無死一二塁、朝日ベンチはここで四番手の林安夫を投入、徳島の一前送りバントが野選を誘って無死満塁、神田の遊ゴロで二走柳が三封される間に三走中野が還って3-2と勝ち越す。これが決勝点となって神田には勝利打点が記録された。


 神田武夫は5安打1四球2三振の完投で16勝目をあげる。神田の勝利投手は6月29日以来のこととなる。



 

2015年5月20日水曜日

17年 阪急vs大洋 7回戦


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 2 0 0 0 0 0 0 3 阪急 27勝25敗2分 0.519 笠松実
0 0 0 0 0 0 4 0 X 4 大洋 30勝20敗4分 0.600 野口二郎 重松通雄

勝利投手 重松通雄 1勝2敗
敗戦投手 笠松実     8勝9敗

本塁打 (大)佐藤 3号

勝利打点 佐藤武夫 2


つり銭なし

 阪急は初回、一死後上田藤夫が左前打、黒田健吾の二ゴロをセカンド山川喜作が二塁に送球するがベースカバーに入ったショート濃人渉が落球、この日四番に入った森田定雄が四球を選んで二死満塁、小田野柏の左前タイムリーで1点を先制する。

 阪急は3回、先頭の上田がファウルで6球粘った末四球を選んで出塁、黒田もカウントツースリーから3球ファウルで粘るが三振、この時上田が二盗に成功、森田はあっさり三球三振、小田野の遊ゴロをショート濃人が一塁に低投する間に上田が還って2-0、中島喬が四球を選んで二死一二塁、池田久之が中前にタイムリーを放って3-0とリードを広げる。

 大洋先発の野口二郎は4回まで5安打を許し、自責点はゼロであるが3失点。大洋ベンチは5回から野口二郎をライトに回して重松通雄をマウンドに送り込む。

 その重松は代わってから無安打ピッチングを続けて味方の反撃を待つ。

 大洋は7回、この日2エラーの濃人が四球を選んで出塁、野口二郎は左飛に倒れるが、野口明が中前打を放って一死一二塁、重松の当りはショートへの内野安打となって一死満塁、山川が三振に倒れて二死満塁、ここで佐藤武夫がレフトスタンドに第3号逆転満塁ホームラン、4-3と大逆転に成功する。


 重松通雄は最終回に2個の四球を出すが無失点で切り抜け、復帰後初勝利をあげる。



 佐藤武夫は7回裏、0対3の劣勢から見事レフトスタンドに逆転満塁ホームランを放つ。つり銭なしで4対3と逆転したのである。







 

2015年5月19日火曜日

17年 名古屋vs黒鷲 8回戦


7月21日 (火) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 0 0 1 1 0 0 0 0  0   0   0  2 名古屋 20勝35敗2分 0.364 石丸進一 西沢道夫 河村章
1 0 0 0 0 0 0 1 0  0   0   0  2 黒鷲     13勝37敗5分 0.260 畑福俊英

二塁打 (名)吉田
本塁打 (名)吉田 1号

勝利打点 なし

猛打賞 (名)吉田猪佐喜 1


河村章、パーフェクトリリーフ

 黒鷲は初回、先頭の山田潔が四球を選んで出塁すると二盗に成功、寺内一隆も四球を選んで無死一二塁、山田が三盗を決めて無死一三塁、玉腰忠義が中前にタイムリーを放って1点を先制する。無死一二塁から木下政文の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー、小松原博喜は右飛に倒れてこの回1点止まり。

 黒鷲は2回、一死後杉江文二が三塁線を破るヒット、木村孝平の投ゴロをピッチャー石丸進一が二塁に悪送球して一死二三塁、名古屋ベンチはここで先発の石丸進一から西沢道夫にスイッチ、畑福俊英は三振、トップに返り山田が四球を選んで二死満塁とするが寺内は中飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 3回まで無安打の名古屋は4回、一死後吉田猪佐喜が左越えに同点ホームラン、1-1とする。

 名古屋は5回、一死後西沢の二ゴロをセカンド木村孝平がエラー、トップに返り石丸藤吉の投ゴロでランナーが入れ替わり石丸が二盗に成功、桝嘉一の三ゴロをサード玉腰が一塁に悪送球する間に石丸が還り2-1とリードする。

 名古屋は8回、一死後本田親喜が左前打、吉田が中前打で続いて一死一二塁、古川清蔵の右飛に二走本田が飛び出し「9-6」と渡ってダブルプレー。ここは「打走法」だった可能性もある。

 黒鷲は8回裏、先頭の山田が中前打、寺内も左前打で続いて無死一二塁、玉腰の遊ゴロが「6B-3」と渡ってダブルプレー、木下が四球を選んで二死一三塁、小松原博喜が左前に同点タイムリーを放って2-2とする。名古屋ベンチはここで西沢を下げて三番手として河村章をマウンドに送り込む。

 9回、10回と両軍無安打。名古屋は11回、先頭の吉田が左中間に二塁打、古川は三ゴロに倒れるが飯塚誠が四球を選んで一死一二塁、木村進一のバントが犠打となって二死二三塁、しかし芳賀直一は投飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 黒鷲は9回以降三者凡退の連続。名古屋の12回表も三者凡退、黒鷲も12回裏三者凡退で引き分ける。


 名古屋三番手の河村章は4回3分の1を投げて無安打無四球4三振無失点、パーフェクトリリーフであった。



 

2015年5月17日日曜日

17年 南海vs阪神 9回戦


7月20日 (月) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 南海 30勝25敗 0.545 石田光彦 長谷川善三
1 0 0 0 0 1 2 1 X 5 阪神 30勝25敗2分 0.545 木下勇

勝利投手 木下勇     7勝5敗
敗戦投手 石田光彦 5勝5敗

勝利打点 土井垣武 5

猛打賞 松尾五郎 2


土井垣が決勝打、松尾は猛打賞

 阪神は初回、一死後松本貞一が四球で出塁すると二盗に成功、御園生崇男の投前バントが犠打となって二死三塁、ここで好調・土井垣武が右前にタイムリーを放って1点を先制する。

 阪神先発の木下勇は4回までに3安打を浴びながら持ちこたえ無失点で切り抜ける。

 阪神は5回、一死後こちらも好調・松尾五郎が右前打で出塁、木下の三ゴロでランナーが入れ替わり、野口昇の左前打で二死一二塁、しかしトップに返り塚本博睦は二ゴロに倒れて追加点はならず。

 阪神は6回、先頭の松本の三ゴロをサード柳鶴震が一塁に低投、悪送球となって無死一塁、御園生が送って一死二塁、土井垣は投飛に倒れるが藤井勇、カイザー田中義雄が連続四球を選んで二死満塁、ここで松尾が左前にタイムリーを放ち2-0と貴重な追加点をあげる。

 阪神は7回、先頭の野口の遊ゴロをショート加藤喜作が一塁に低投、白球がファウルグラウンドを転々とする間に打者走者の野口は二塁に進む。トップに返り塚本の一前送りバントをファースト中野正雄が一塁ベースカバーのピッチャー石田光彦に送球するが石田が落球、これを見て三塁に進んでいた二走野口がホームに走ると、落球した白球を拾いあげた石田がホームに悪送球、タイミングはアウトだったので石田にはダブルエラーが記録されて3-0、この間に打者走者の塚本は二塁に進み無死二塁、松本は三ゴロ、御園生は三邪飛に倒れるが、土井垣が左前にタイムリーを放って4-0とリードを広げる。

 阪神は8回、先頭の松尾がサードの横を破って出塁、木下が送って一死二塁、野口は遊飛に倒れるが、トップに返り塚本が中前にタイムリーを放ち5-0として試合を決める。

 5回以降を無安打1四球に抑えた木下勇は3安打2四球2三振で今季2度目の完封、7勝目をあげる。


 6月まで3度しか完封負けがなかった南海は元気なく7月に入って4度目のシャットアウト負け、広瀬、木下と2試合連続下手投げ投手に完封負けを喫した。


 好調阪神を象徴する土井垣武が決勝打、松尾五郎が猛打賞を記録した。二番に戻ってきた松本貞一も渋い働きで無安打ながら2得点を記録した。






 

2015年5月16日土曜日

17年 巨人vs朝日 9回戦


7月20日 (月) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 1 0 0 1 0 3 巨人 38勝16敗1分 0.704 中尾輝三
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 朝日 24勝29敗2分 0.453 林安夫

勝利投手 中尾輝三 10勝6敗
敗戦投手 林安夫     13勝14敗

二塁打 (朝)浅原
三塁打 (巨)中島
本塁打 (巨)小暮 1号

勝利打点 小暮力三 1

猛打賞 (巨)小暮力三 1


小暮力三デー

 朝日は2回、先頭の岩田次男が左前打で出塁、浅原直人は三塁に内野安打、広田修三のショートへの内野安打がタイムリーとなって1点を先制する。

 巨人は3回、先頭の小暮力三が右前打を放って出塁、坂本茂の三前送りバントが野選を誘い無死一二塁、中尾輝三の一前送りバントをファースト広田が三塁に送球、タイミングはアウトであったがサード岩田が落球して無死満塁、トップに返り呉波のピッチャーへの内野安打で1-1の同点とする。なお無死満塁のチャンスが続くが水原茂の投ゴロは「1-2-3」と渡ってダブルプレー、中島治康は左飛に倒れて追加点はならず。

 巨人は5回、先頭の小暮力三がレフトスタンドへホームランを放って2-1と勝ち越す。ここから坂本、中尾、呉は三者連続三振。

 巨人は8回、一死後呉が左前にヒット、水原は左飛に倒れるが、中島が左中間に三塁打を放って3-1と突き放す。

 中尾輝三は5安打3四球6三振の完投で10勝目をあげる。


 小暮力三が決勝本塁打を含む3安打で猛打賞を獲得した。小暮の本塁打は今季甲子園球場での初ホームラン。甲子園では昭和16年には本塁打は1本も記録されていないので、昭和15年12月4日に吉田猪佐喜が放って以来のものとなる。昭和も17年なると物資不足は甚だしく、新聞のスペースは削られて関西の試合では読売新聞に試合経過の記述は書かれていないので、スタンドインしたものであるかは不明ですが、ランニングホームランとする根拠もなく、スコアカードの記録では飛球による本塁打なので柵越えの可能性が高い。左打者の小暮が流し打った柵越えホームランであったと考えられる。小暮力三はネット上では「右打ち」とされているものも見かけますが、筆者の確認する限り、公式の資料では全て「左打ち」となっています。



*戦後最初の「日本野球年報」。野球殿堂博物館も持っていない貴重な資料です。



*ここで小暮力三は「左打ち」となっています。




 

2015年5月15日金曜日

17年 阪急vs名古屋 9回戦


7月20日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 2 0 0 0 0 0 2 阪急     27勝24敗2分 0.529 森弘太郎
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 名古屋 20勝35敗1分 0.364 河村章

勝利投手 森弘太郎 13勝8敗
敗戦投手 河村章      4勝11敗

二塁打 (名)吉田

勝利打点 なし


エラー合戦

 名古屋は初回、先頭の石丸藤吉は三ゴロ、続く岩本章の遊ゴロをショート中村栄がエラー、しかし本田親喜の二ゴロで岩本は二封、吉田猪佐喜の遊ゴロで本田も二封されてスリーアウトチェンジ。

 名古屋は2回、先頭の古川清蔵が左前打で出塁、飯塚誠の三ゴロをサード黒田健吾が二塁に送球するがセカンド上田藤夫が落球して無死一二塁、河村章の右前打で無死満塁、芳賀直一の遊ゴロをショート中村が2つ目のエラー、この間に三走古川が還って1点を先制、芳賀には打点は記録されていない。続く木村進一の三ゴロは「5-2-3」と渡ってダブルプレー、トップに返り石丸藤吉は二飛に倒れて追加点はならず。

 阪急は4回、先頭のフランク山田伝が左前打で出塁、上田が送って一死二塁、黒田は投ゴロに倒れるが森田定雄は四球、小田野柏も四球を選んで二死満塁、続く池田久之の遊ゴロをショート木村がエラーする間に三走山田に続いて二走森田も還って2-1と逆転する。

 名古屋は6回、先頭の吉田が左中間を抜き二塁を回って三塁に向かうが「8-6-5」と転送されてタッチアウト、ショート中村は2個のエラーを帳消しにする中継プレーを見せた。続く古川は四球を選んで出塁、飯塚が左前打、河村は右飛に倒れて二死一二塁、ダブルスチールを決めて二死二三塁、続く芳賀直一の投ゴロは「1-5-3」で一塁アウト、ピッチャー森弘太郎が弾いた打球が偶然サード黒田の前に転がり、「黒田のアリ地獄」が一塁に送球してアウトにしたと見るべきでしょうか。

 名古屋は9回裏、一死後河村が四球を選んで出塁、芳賀に代わる代打西沢道夫の三ゴロをサード黒田が二塁に送球するがセーフ、野選が記録されて一死一二塁、木村に代わる代打山下実代理監督の一ゴロの間に二者進塁して二死二三塁と一打サヨナラのチャンス、しかしトップに返り石丸藤吉は三振に倒れて試合終了。

 森弘太郎は6安打3四球と走者を出しながら名古屋の9残塁に助けられて完投、珍しく5三振を奪う力投で13勝目をあげる。


 両チームの得点は全てエラー絡みのものであった。




 

2015年5月13日水曜日

ダイブ 3 こんなダイブ初めて見た



 まずは画像をご覧ください。こんなダイブは初めて見ました。

http://m.mlb.com/video/topic/11493214/v112976683/must-c-catch-calhoun-glides-for-beautiful-catch


 但し、この選手は守備が巧いとは思えません。猪突猛進型ではないでしょうか。首脳陣が安心して使えるタイプではないと思います。このプレーのようにハマれば凄いのでしょうが。


 ボールを捕っているのはグラブの土手の部分です。キャッチングは下手ですね。


 何れにしろ、こんなダイブは初めて見ました。ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムのコール・カルホーンです。




 

17年 大洋vs黒鷲 8回戦


7月20日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 3 0 0 0 0 4 大洋 29勝20敗4分 0.592 三富恒雄
0 0 2 0 0 0 0 0 0 2 黒鷲 13勝37敗4分 0.260 金子裕 石原繁三

勝利投手 三富恒雄 8勝7敗
敗戦投手 金子裕     3勝6敗

勝利打点 三富恒雄 1


三富恒雄、完投勝利&決勝打

 大洋は初回、先頭の中村信一が中前打で出塁、浅岡三郎の送りバントは捕邪飛となって失敗、濃人渉が左前打、野口二郎も左前打を放って一死満塁、野口明がストレートの押出し四球を選んで1点を先制する。

 黒鷲は3回、一死後金子裕が左前打、金子は前回登板の12日に完投勝ちした試合では3打数3安打、18日に代打で凡退したが、投手としては4打席連続ヒット、トップに返り山田潔が右前打、渡辺絢吾は遊飛に倒れて二死一二塁、玉腰忠義の中前タイムリーで金子が還り1-1の同点、木下政文も右前にタイムリーを放って2-1と逆転に成功する。

 大洋は5回、一死後中村が四球を選んで出塁、浅岡の二ゴロの間に中村は二進、濃人渉が二遊間内野安打から二盗に成功、野口二郎が四球を選んで二死満塁、ここで黒鷲ベンチは先発の金子をあきらめて石原繁三を注ぎ込むが、野口明が中前に同点タイムリーを放って2-2、三富恒雄が左前に逆転の2点タイムリーを流し打って4-2と勝ち越す。

 三富は4回以降黒鷲打線を無安打に抑え、4安打2四球1三振の完投で8勝目をあげる。


 大洋は18日の黒鷲戦に引き分けてから2連勝、混戦の続く二位争いから抜け出してきた。




 

2015年5月12日火曜日

17年 巨人vs南海 9回戦


7月19日 (日) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 3 1 3 1 0 0 0 8 巨人 37勝16敗1分 0.698 広瀬習一
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 南海 30勝24敗 0.556 神田武夫 徳島忠彦 石田光彦 長谷川善三

勝利投手 広瀬習一 16勝6敗
敗戦投手 神田武夫 15勝11敗

二塁打 (巨)水原

勝利打点 伊藤健太郎 5


広瀬習一、今季7度目の完封

 巨人は広瀬習一、南海は神田武夫が先発。両者による対決はこれが最後となる。

 巨人は初回、一死後水原茂が四球を選んで出塁、中島治康は右飛に倒れるが川上哲治が左前打、白石敏男がストレートの四球を選んで二死満塁、しかし楠安夫は右飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 南海は1回裏、一死後猪子利男がストレートの四球で出塁、北原昇の捕ゴロをキャッチャー楠がダッシュよく飛び出し猪子を二封、北原の二盗も楠が刺してスリーアウトチェンジ。楠の2つの補殺がこの後効いてくる。

 南海は2回、先頭の岩本義行の遊ゴロをショート白石がエラー、岡村俊昭は中飛に倒れるが中村金次が中前打を放って一死一二塁、神田の二ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、しかし八木進は三振に倒れる。広瀬は序盤のピンチを凌いで、この後調子に乗る。

 巨人は3回、先頭の中島が二遊間に内野安打、川上の一ゴロで中島は二進、白石は三振に倒れるが楠が四球を選んで二死一二塁、伊藤健太郎が左前に先制タイムリーを放って1-0、坂本茂の遊ゴロをショート猪子がエラーして二死満塁、広瀬が右前に2点タイムリーを放って3-0とする。

 巨人は4回、先頭の中島が三前にセーフティバントを決めて出塁、川上は中前打、白石が送って一死二三塁、楠が四球を選んで一死満塁、伊藤は遊飛に倒れるが、坂本が中前タイムリーを放って4-0、二走川上も三塁ベースを蹴ってホームに向かうがセンター岩本からのバックホームにタッチアウト。

 南海は5回から先発の神田に代えて徳島忠彦をマウンドに送るが火に油を注ぐ結果となった。

 巨人は5回、二死後水原がピッチャー強襲ヒット、中島、川上が連続四球で二死満塁、白石の中前打で川上が生還して5-0、二走中島も返球の隙を突いてホームインして6-0、エラーが付くほどでもないが白石は1打点、楠が四球を選んで再度二死満塁、南海ベンチはここで徳島から三番手の石田光彦にスイッチ、伊藤が押出し四球を選んで7-0と突き放す。

 巨人は6回、一死後呉波が四球で出塁、水原のレフト線二塁打で一死二三塁、中島の右犠飛で8-0として試合を決める。


 広瀬習一は南海打線を2回の中村金次の中前打1本に抑え、3四球2三振で今季7度目の安封、16勝目をあげる。1安打完封は今季3度目となる。藤本定義監督は南海戦に広瀬を先発させて明日の朝日戦に中尾輝三をぶつける。一見、広瀬を上位球団にぶつけてきたように見えるが、お伝えしてきたとおり南海は調子を崩してきており朝日は調子をあげてきている。矢張り、藤本監督は中尾をエースとして扱っている。



 

2015年5月10日日曜日

17年 阪神vs朝日 10回戦


7月19日 (日) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 1 1 0 0 0 0 3 阪神 29勝25敗2分 0.537 御園生崇男
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 朝日 24勝28敗2分 0.462 福士勇

勝利投手 御園生崇男 7勝6敗
敗戦投手 福士勇        8勝5敗

二塁打 (神)藤井、田中
三塁打 (朝)福士

勝利打点 松尾五郎 4


松尾五郎、2試合連続決勝打

 阪神は帰還兵・御園生崇男が先発、朝日は10月に戦場に旅立つ福士勇が先発する。

 昭和17年10月には各チームから大量に応召することとなり、福士もその一人である。一方、阪神は創設期の主力の多くが大卒で早い時期に応召していた選手が多く、この時期には帰還者が増えてくる。御園生の他にも戦場で大手柄をたてた上田正、この夏に復帰したばかりで大活躍を見せている藤井勇に続いて山口政信も近く復帰の予定であり、更に景浦将と藤村冨美男の帰還も噂されている(昭和17年8月発行「野球界」より)。

 阪神は2回、先頭の土井垣武が三塁に内野安打、藤井勇が右翼線に二塁打で続いて無死二三塁、しかしキャッチャー伊勢川真澄からの二塁牽制の際、三走土井垣のリードが大きく「2-4-5」と転送されてタッチアウト、ここは二塁ベースカバーに入った鬼頭政一の隠れたファインプレーと言えそうです。御園生は中飛に倒れて二死二塁、松尾五郎が昨日に続いて先制タイムリーを左前に放って1-0とする。

 阪神は4回、一死後土井垣が右前打で出塁、藤井が左前に流し打って無死一二塁、御園生が送って一死二三塁、松尾の遊ゴロをショート五味芳夫が失する間に三走土井垣が還って2-0とする。松尾には打点は記録されていないが、ラッキボーイとなっている。

 朝日は4回裏、先頭の五番・早川平一が左前打で出塁、広田修三は三振、岩田次男は左飛に倒れるが、福士勇が右中間に三塁打を放って1-2と追い上げる。

 阪神は5回、先頭の野口昇が四球を選んで出塁、トップに返り塚本博睦が送って一死二塁、松本貞一の二ゴロが進塁打となって二死三塁、カイザー田中義雄が右翼線に二塁打を放ち3-1と突き放す。

 御園生崇男は最終回、一死満塁のピンチを迎えるが、室脇正信に代わる代打森恒雄を三振、トップに返り坪内道則を二ゴロに抑えて逃げ切り、7安打5四球4三振の完投で7勝目をあげる。


 阪神は四番・土井垣武が攻撃の起点となり、五番・藤井勇と六番・御園生崇男の帰還兵コンビでチャンスを広げ、七番・松尾五郎が2試合連続決勝打を放つ活躍であった。二番に松本貞一が戻ってこの日も渋い進塁打で得点に結びつけているように打線につながりが出てきた。阪神は好調である。



*御園生崇男は7安打完投で7勝目をマークする。






*つながりが出てきた好調阪神打線。