2019年5月23日木曜日

胎動


 昭和20年8月2日、アメリカ空軍による空襲が水戸市を襲い、水戸市内の多くが焼け野原となったが、奇跡的に水戸商業は焼け残った。
 同年10月、水戸中学、水戸商業の野球部員が伝統ある対抗試合の復活を相談して、二連隊あとの広場で軟式ボールで実施した。うわさを聞いたOB、ファンが百数十人観戦した。


 昭和20年11月の初め、長野市内の中等学校で対抗試合が行われ、優勝校に賞状一枚が授与された。長野では終戦直後から各校野球部員が野球部復活を叫び、古い用具を持ち寄って練習を開始していたのである。

 昭和20年11月、京都市内の中等学校9校が集まり同志社中学グラウンドで野球大会が行われ、京都二中が優勝した。京都市河原町三条南の「エビスヤ運動具店」で野球道具を調達したのである。この大会には近隣の野球ファンが多数詰めかけ、同志社中学グラウンドのセンター後方にあった「土俵」の屋根にまで見物人が上がり込み、とうとう屋根もろとも土俵が倒れるという一幕も見られた。

 昭和20年11月17日、愛媛県体育会の肝いりで、松山市内中等学校軟式野球大会が、松山中学校庭で、松山中学、北予中学、松山商業、松山工業、新田中学の五校により開催された。硬式ボールが手に入らず、軟式ボールで、古い道具の寄せ集めであったが、5年ぶりの野球大会ということで、校庭にあふれる観衆は、久しぶりに展開された選手たちの妙技に、終日拍手歓声鳴り止まず、野球松山の伝統を示す喜ばしい記念行事となった。

 *以上、「日本高校野球連盟三十年史」より

 昭和51年12月に刊行された「日本高校野球連盟三十年史」には、各都道府県野球連盟の「連盟発足したころ」、「連盟の歩み」、「主な出来ごとについて」が記述されている。各都道府県の野球連盟は昭和21年に結成されていることから、昭和20年秋の野球についての記述が認められるのは上記の4府県だけであるが、各都道府県で終戦直後から「野球復活」の胎動が見られたことは間違いない。

 もし私が同時代に生きていたら、8月16日には押し入れの奥に隠しておいたバットとボールとグローブを持ち出して、家の前の広場(現・市川市国分尼寺跡公園)で野球をやっていました。これだけは断言できる。

 

2019年5月20日月曜日

復活


 「翌16日、私は、早速大阪・中之島にある朝日新聞大阪本社を訪ねた。そのころ運動部の姿は消えていた。戦前最後の同社運動部長だった渡辺文吉氏は、当時厚生部長の任にあった。・・・飛行機事故でなくなった東口真平氏のお悔やみを述べた。東口氏は大阪本社の運動部長で、戦前の全国中等学校優勝野球大会育ての親とも言うべき人だったが、終戦直前の7月13日に殉職された。あいさつを終わった後、昨日、奈良公園で考えたことどもを述べた。青少年に光明を与えるため、一日も早く中等学校野球大会を再開してほしいと熱を込めて話した。自分もそのためには最善の努力をすると誓った。」
 *佐伯達夫著「佐伯達夫自伝」より

 朝日新聞社内では「時期尚早」論が大宗を占めていたが、佐伯の訪問を契機として、中等学校野球大会復活に向けて動き出し、運動部次長・芥田武夫らの活躍により、全国中等学校野球連盟が結成されることとなる。

 佐伯が朝日を訪れたのは昭和20年8月16日、敗戦の翌日のことであった。

 

2019年5月17日金曜日

正月大会


 昭和20年年明け、甲子園と西宮で「正月大会」が行われたことが確認されている。

 松木謙治郎著「タイガースのおいたち」には「20年の正月大会は関西だけの選手で二組つくり挙行した。このとき阪神にのこっていたのは若林、金田、本堂、辻の四名だけで、この四選手が参加したのである。」とだけ書かれている。

 「Wikipedia」によると、この時のスコアカードが残されていたとのことで、「Wikipedia」には「正月大会」について詳しく書かれている。

 

2019年5月16日木曜日

申合わせ事項


一.日本野球報国会は残置す。但し登録選手の登録のみに止め、他の機能は一時停止し、之を専務理事管理す。
一.報国会々長、相談役、及び役員は辞任す。
一.報国会事務局解散に要する退職金の不足額参千円は六球団により平等支出す。
一.会長に対し、感謝の記念品を贈呈す。
一.東京所在球団の所属選士にして、尚今後日本野球選士としての希望ある場合は該球団が将来再び野球仕合を行う時まで、日本野球報国会関西連盟に選士を委託し、関西連盟之れを適正なる球団に配置す。但し仕合中止したる時は、委託選士は元球団に於て引取ること。


昭和十九年十月二十三日

細野躋(阪神)
岩倉具光(阪急)
小原英一(近畿)
田村駒治郎(朝日)
正力松太郎(巨人)
赤嶺昌志(産業)


鈴木龍二著「鈴木龍二回顧録」より

 

2019年5月14日火曜日

右中間三塁打


 12日(日)は東綾瀬公園球場で、関東近辺から23チームが参加した足立区長杯争奪還暦野球大会。

 還暦野球では「DH」を含めて10人が打席に立ちますので「十番センター」で出場し、第1打席でいきなり右中間を低いライナーで抜く三塁打。新しく買ったばかりのZETTブラックキャノンZⅡが火を噴きました(笑)。

 約18年ぶりとなる対外試合としては順調なスタートに見えましたがその後はノーヒット。初戦に勝ったのでWヘッダーとなりましたが、何とか足も持ってフル出場できました。

 3月末の初めて参加した合同練習で左ふくらはぎを軽い肉離れ。ようやく治ってきて4月11日の癌研有明病院グラウンドでの自主トレでダッシュを繰り返したのが仇となって次の合同練習で右太ももを軽い肉離れ、左太ももも肉離れ寸前のところまで行っていました。試合ではいきなり三塁まで全力疾走、守備では右中間、左中間を抜かれた打球をダッシュで追いかけましたが何とか太ももは持ちこたえました。一度はやってから徐々に慣れていくというのは、学生時代にも何度も経験済みです。ここを乗り越えなければ次のステップには進めない。


 

2019年5月9日木曜日

昭和19年最後の試合


 昭和19年9月に、「阪神・産業」、「巨人・朝日」、「阪急・近畿」合併軍3チームによる大会が挙行された。

 大会の名称は、「日本野球総進軍大会」。9月9、10、11日に甲子園で「第1回大阪大会」が、同17、18、20日に後楽園で「東京大会」が、同24、25、26日に西宮で「第2回大阪大会」が行われた。

 スコアカードは残されていないので、広瀬謙三著「日本野球十二年史」に書かれている試合結果を記す。( )内は投手。

第1回大阪大会(甲子園)
9月9日 阪神・産業(武智修) 4対1 巨人・朝日(藤本英雄)
    阪急・近畿(天保義夫) 3対3 巨人・朝日(内藤幸三、藤本英雄) 延長12回引分
9月10日 阪神・産業(野口正明、若林忠志) 7対6 阪急・近畿(清水秀雄、大平茂、天保義夫)
      阪神・産業(若林忠志) 1対0 巨人・朝日(内藤幸三)
9月11日 巨人・朝日(藤本英雄) 10対4 阪急・近畿(清水秀雄、木暮英路)
       阪神・産業(藤村冨美男、井上嘉弘、武智修) 11対6 阪急・近畿(天保義夫)


東京大会(後楽園)
9月17日 阪急・近畿(天保義夫) 3対2 巨人・朝日(内藤幸三)
      阪神・産業(若林忠志) 1対0 巨人・朝日(藤本英雄)
9月18日 阪神・産業(武智修) 5対1 阪急・近畿(清水秀雄)
      巨人・朝日(藤本英雄) 6対4 阪急・近畿(天保義夫、大平茂)
9月20日 阪神・産業(若林忠志) 4対2 阪急・近畿(大平茂、木暮英路)
      阪神・産業(若林忠志) 3対2 巨人・朝日(内藤幸三、藤本英雄)


第2回大阪大会(西宮)
9月24日 巨人・朝日(藤本英雄) 7対3 阪急・近畿(清水秀雄、大平茂)
      阪神・産業(若林忠志、井上嘉弘) 14対0 阪急・近畿(木暮英路)
9月25日 阪急・近畿(大平茂) 6対2 巨人・朝日(内藤幸三、近藤貞雄)
      阪神・産業(若林忠志) 3対2 巨人・朝日(藤本英雄)
9月26日 阪急・近畿(山田伝、大平茂) 10対6 阪神・産業(井上嘉弘、若林忠志)
      阪神・産業(若林忠志) 8対0 巨人・朝日(藤本英雄、近藤貞雄、大橋一郎)


 「鈴木龍二回顧録」には「阪神・産業」連合軍が11戦全勝と書かれているが、広瀬の著によると「阪神・産業」は11勝1敗である。各チーム12試合ずつを戦っているので、「鈴木龍二回顧録」の記述は間違いでしょう。
 

2019年5月6日月曜日

19年 8月 月間MVP


月間MVP

投手部門

 投手部門は若林と内藤の争い。

 若林は6試合54回を投げて5勝1敗1完封、防御率1.83、WHIP1.09、奪三振率1.33。
 内藤は7試合57回3分の2を投げて4勝3敗3完封、防御率1.56、WHIP1.44、奪三振率5.21。

 内藤は33奪三振31与四死球、若林は8奪三振12与四球。WHIPの差は投球スタイルの違いに起因する。

 3試合連続完封の力感溢れるピッチングが評価されて内藤幸三が受賞した。


打撃部門

 打撃部門は山田伝と坪内の争い。

 山田は10試合で40打数18安打11得点6打点7盗塁、二塁打2本、三塁打1本。
 坪内は7試合で27打数13安打3得点2打点3盗塁、二塁打6本、三塁打1本。

 試合数の差は変則日程による残試合の差である。

 ヒットに占める長打の割合が5割を超える坪内道則が受賞した。

 

2019年5月2日木曜日

背番号42


「品川ベースボールクラブ」に入団し、選手登録されました!

 

19年 第9節 週間MVP


 今節は阪神が3勝0敗、阪急が4勝1敗、巨人が2勝3敗、朝日が1勝3敗、近畿が1勝3敗、産業が0勝1敗であった。


週間MVP

投手部門

 阪神 若林忠志 6

 3勝0敗1完封。

 阪急 天保義夫 2

 2勝0敗1完封。

 阪急 木暮英路 1

 8月26日の巨人戦で無四球完投勝利。打撃も好調で13打数4安打。

打撃部門

 阪急 山田伝 1

 19打数11安打8得点4打点4盗塁。投げても2試合連続完封。最後の8試合で32打数17安打を記録する。前半戦不調だった山田の打率はは27試合終了時点では2割ちょうどであったが、最後の8試合で2割7分7厘まで上げたことになる。

 阪急 三木久一 1

 24打数8安打3得点5打点、V打1、並列の殊勲打1。 

 朝日 菊矢吉男 2

 16打数8安打1得点5打点。

 阪神 本堂保次 3

 14打数6安打3得点5打点、二塁打3本、三塁打1本、V打1、真の殊勲打1。

 阪神 呉昌征 2

 11打数5安打5得点、4四球、4盗塁。


殊勲賞

 巨人 中村政美 1

 8月26日の阪急戦で戦前最後のホームラン。

 阪急 榎並達郎 1

 8月27日の阪神戦で4安打、二塁打1本、三塁打2本、あわや史上初のサイクルヒット。

 阪神 藤村冨美男 1

 12打数3安打2得点4打点。


敢闘賞

 阪急 野口明 1

 22打数9安打4得点4打点。

 阪急 大平茂 1

 21打数6安打1得点4打点、V打1。

 朝日 坪内道則 2

 15打数7安打、二塁打2本、三塁打1本。

 朝日 内藤幸三 1

 12打数5安打、二塁打2本。

 近畿 荒木正 1

 14打数6安打2得点1打点。


技能賞

 阪神 辻源兵衛 1

 13打数4安打5得点2打点。二番打者としてつなぎ役を果たす活躍。

 巨人 呉新亨 1

 8月26日の阪急戦で今季2度目の4安打。