2014年12月31日水曜日

17年 阪神vs名古屋 5回戦


5月17日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 1 2 阪神     15勝14敗1分 0.517 藤村隆男 渡辺誠太郎 若林忠志
0 0 0 3 0 0 0 5 X 8 名古屋 10勝20敗 0.333 松尾幸造 石丸進一

勝利投手 松尾幸造 3勝2敗
敗戦投手 藤村隆男 2勝3敗

勝利打点 古川清蔵 4


石丸進一プロ入り初セーブ

 ダブルヘッダーの第二試合は午後2時35分、横沢三郎主審の右手が上がりプレイボール。阪神は松本貞一が三番に戻って、二番には松本と並んで好調の御園生崇男が入る。

 名古屋は4回、先頭の桝嘉一が中前打で出塁、飯塚誠の左飛をレフト金田正泰が落球、岩本章も中前打を放って無死満塁、古川清蔵がストレートの押出し四球を選んで1点を先制、野口正明もストレートの押出し四球で2-0、阪神ベンチはここで先発の藤村隆男から渡辺誠太郎にスイッチ、松尾幸造も押出し四球で3-0とする。

 毎回走者を出しながら無得点だった阪神は6回、先頭の金田が四球を選んで出塁、御園生が中前打を放ち無死一二塁、松本の三ゴロをサード芳賀直一がエラーする間に二走金田が還って1-3、打撃の調子がいいと運も向いてくる。しかし続く土井垣武の二ゴロは「4-6-3」と渡ってゲッツー、カイザー田中義雄も中飛に倒れて追加点はならず。阪神はここで追い付けなかったのが敗因となった。御園生と松本は当たっているが、土井垣と田中に当たりが止まっている。

 阪神は7回、先頭の大島武に代わる代打玉置玉一が四球を選んで出塁、名古屋ベンチはここで先発の松尾から石丸進一にスイッチ、石丸は野口昇を二飛に打ち取り、塚本博睦には中前打を許すが渡辺に代わる代打若林忠志を三振、上田正も三振に仕留めてリリーフの役目を果たす。

 名古屋は8回、岩本、古川が連続四球、7回からマウンドに上がった若林のコントロールがままならない。野口正明の遊ゴロをショート野口昇がエラーする間に二走岩本が還って4-1、石丸進一の一ゴロもファースト仁科栄三が失して無死満塁、芳賀は三振に倒れるが、トップに返り石丸藤吉がレフト線に2点タイムリーを放ち6-1とする。一走石丸進一も三塁に走るがレフト上田からの返球をカットした若林が三塁に送球してタッチアウト、この間に打者走者の石丸藤吉は二塁に進み更に三盗に成功、木村進一が四球、桝も四球を選んで二死満塁、飯塚がレフト線に2点タイムリーを放って8-1として試合を決める。


 7点のリードをもらってほっとしたか石丸進一は9回、先頭の仁科にストレートの四球を与え、野口昇にも四球、塚本を三ゴロに打ち取り「5-4-3」のゲッツーかと思われたところファースト野口正明が後逸する間に三塁に進んでいた二走仁科が還って2-8、しかし若林を二ゴロに打ち取り今度は「4-6-3」と渡ってダブルプレー、石丸進一は3イニングを2安打2四球2三振1失点自責点ゼロに抑えてプロ入り初セーブを記録する。






 

松本貞一のその後



 当ブログでは現在絶好調の松本貞一の活躍をお伝えしているところです。


 松本貞一は今季限りでプロ野球から去る。おそらく応召でしょう。木下姓となって戦後は愛知産業に所属し、昭和28年に中日に入ってプロ野球の世界に復帰する。愛知産業は昭和21年の戦後復活第1回から27年まで7年連続で都市対抗に出場している。毎日新聞社発行「都市対抗野球大会60年史」に掲載されているテーブルスコアには昭和21年のメンバーに「木下」の名が認められる。本文解説では「・・・全桐生が・・・八幡製鉄も倒し、さらに木下卓三投手の名古屋市・愛知産業を降して・・・」と書かれている。


 「木下」姓の選手は21年がセンターとピッチャー、22年の四番センター「樹下」は「木下」の誤植の可能性があります。23年も四番センターで出場しています。24年は代打で1打数1安打、25年は三番セカンドで登場します。25年の三番セカンド「木下」は木下家に養子に入って「木下貞一」となった「松本貞一」ではないでしょうか。


 27年のメンバーには同姓の「木下育」捕手がいて「木下貞」二塁手は四番を打っています。「木下育」捕手は昭和26年に名古屋ドラゴンズ、29年に大映スターズに所属する「木下育彦」捕手のことで、27年は愛知産業で都市対抗に出場しました。「木下貞一」は昭和28年に中日入りしてプロ野球の世界に11年ぶりに復帰するので、27年の愛知産業の「木下貞」二塁手は「木下貞一」と見て間違いないでしょう。


 「都市対抗野球大会60年史」に書かれている「木下卓三」が「木下貞一」の誤植であれば松本貞一は「木下貞一」として7年連続都市対抗に出場していたこととなります。「野球人国記」というサイトに愛知産業に所属した主な選手が掲載されており、「木下貞一」と「木下育彦」の名は見られますが「木下卓三」の名は見られませんので、可能性はゼロとは言えないかもしれませんがちょっと考え過ぎでしょうか。



 野球史における「卓三」と言えば南海で活躍した上田卓三となります。上田卓三は三池工業時代に夏の甲子園決勝で、木樽と阿天坊を擁して優勝候補と言われた銚子商業を降して優勝投手となりました。この時の三池工業の監督が今年逝去された原辰徳監督の父、原貢監督であったことはご存知の方も多いと思います。Wikipediaによると真弓明信は原貢と同じ社宅に住んでおり、小学校6年生の時に見た三池工業の優勝パレードに感激して野球の道に進んだとのことです。原辰徳と筆者は同年代なので、この時原辰徳少年は小学校1年生だったはずです。




 

17年 名古屋vs阪神 4回戦


5月17日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 0 0 0 0 0 0 1 3 名古屋 9勝20敗 0.310 森井茂 河村章
0 1 0 2 0 0 3 0 X 6 阪神  15勝13敗1分 0.536 御園生崇男 木下勇

勝利投手 木下勇 4勝3敗
敗戦投手 森井茂 1勝6敗

二塁打 (名)石丸藤
三塁打 (神)松本
本塁打 (名)野口正明 2号 (神)野口昇 1号

勝利打点 木下勇 1


松本貞一、試合を決める適時三塁打

 本日の後楽園球場では第二試合と第三試合に名古屋と阪神のダブルヘッダーが組まれています。西宮球場でも第一試合と第二試合は巨人と朝日のダブルヘッダーです。雨天順延で4回戦が未消化だったための措置となります。


 名古屋は初回、先頭の木村進一が左前打で出塁、石丸藤吉も左前打で続いて無死一二塁、桝嘉一が中前にタイムリーを放って1点を先制する。阪神ベンチはいきなり3連打を浴びた先発の御園生崇男をライトに回して木下勇をリリーフのマウンドに送り込んで後続を断つ。

 名古屋は2回、先頭の野口正明がレフトポール際に第2号ホームランを叩き込んで2-0と突き放す。

 阪神は2回裏、一死後野口昇がレフトスタンドにホームランを叩き込んで1-2と追い上げる。

 阪神は4回、一死後御園生が中前打、大島武が左前打で続き、野口昇が四球を選んで一死満塁、塚本博睦が左前にタイムリーを放って2-2の同点、木下がスクイズを決めて3-2と逆転する。

 阪神は6回、先頭の御園生が右前打で出塁、名古屋ベンチはここで先発の森井茂から河村章にスイッチ、河村が後続を抑える。

 阪神は7回、先頭の木下がストレートの四球で出塁、金田正泰の三前バントが野選を誘って無死一二塁、この日二番に入った松本貞一が左中間に三塁打を放って5-2、カイザー田中義雄の左犠飛で6-2と突き放す。

 名古屋は9回、芳賀直一の中前打と石丸藤吉のレフト線二塁打で二死二三塁のチャンスを作り、桝の左前タイムリーで1点返すのがやっと、第一試合は阪神が快勝した。


 1回無死からリリーフの木下勇は9回を投げて6安打3四球3三振2失点で今季4勝目をあげる。


 5月10日の巨人戦と15日の巨人戦で貴重な決勝打を放った松本貞一がこの日も試合を決める2点タイムリー三塁打を放った。昨年投手として4勝をあげた松本は、今季阪神の内野陣の大半が兵役に就いたため主にセカンドで起用され、このところ三番に定着していた。昭和16年11月15日に投手として先発した際には六番に入っており、代打にも起用されていたことからも分かるように、打撃の評価も高かったのである。





 

2014年12月30日火曜日

17年 黒鷲vs大洋 5回戦


5月17日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 黒鷲 6勝21敗2分 0.222 石原繁三 小松原博喜 松本操
3 0 0 1 0 0 0 0 X 4 大洋 17勝12敗1分 0.586 古谷倉之助 野口二郎

野口二郎 9勝6敗
石原繁三 5勝9敗

三塁打 (大)古谷
本塁打 (大)濃人 1号

勝利打点 古谷倉之助 1


古谷倉之助、決勝三塁打

黒鷲は初回、先頭の渡辺絢吾がレフト線にヒット、木村孝平が送って一死二塁、鈴木秀雄の二ゴロの間に二走渡辺は三進、富松信彦の投ゴロをピッチャー古谷倉之助がエラーする間に三走渡辺が還って1点を先制する。

 大洋は1回裏、中村信一のピッチャー強襲の当りを石原繁三が弾くがショート木村がバックアップして一塁に刺す。記録は「1-6-3」。続く濃人渉がレフトスタンドに同点ホームランを叩き込んで1-1、浅岡三郎が四球を選んで一死一塁、野口明は右飛に倒れるが、古谷が右中間に三塁打を放って2-1と勝越し、ライト富松からの返球を中継したセカンド宗宮房之助が三塁に悪送球する間に古谷が還って3-1とする。

 リードを奪った大洋は2回から先発の古谷に代えて野口二郎をマウンドに送った。

 大洋は4回、一死後祖父江東一郎が二遊間に内野安打、佐藤武夫が中前打、織辺由三が左前打を放って一死満塁、トップに返り中村は浅い右飛に倒れるが、濃人が押出し四球を選んで4-1とする。


 2回からリリーフのマウンドに上がった野口二郎は8イニングを3安打無四球8三振、9勝目をあげる。昨年肩を痛めた野口二郎は今季もシーズン序盤は調子が上がらなかったが、ここにきて調子をあげてきた。




 

17年 阪神vs巨人 5回戦


5月15日 (金) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 1 2 0 3 阪神 14勝13敗1分 0.519 若林忠志
0 0 0 0 0 2 0 0 0 2 巨人 20勝8敗 0.714 広瀬習一 中尾輝三

勝利投手 若林忠志 6勝4敗
敗戦投手 中尾輝三 7勝5敗

二塁打 (神)土井垣

勝利打点 松本貞一 2


阪神、気魄の逆転劇

 巨人は川上哲治が戦列に復帰して五番ファースト、白石敏男はまだ戻らず本日も一番には呉波が入る。

 巨人は広瀬習一が今季初めて阪神戦に先発。巨人のローテーションは上位球団には中尾輝三と須田博で、広瀬習一は下位球団専門に投げている。今季阪神戦の先発回数は須田が7回、中尾が5回に対して広瀬は2回に過ぎません。後の1回は藤本英雄となります。

 阪神は若林忠志監督が先発して気魄のピッチングを見せた。5回まで巨人打線を1安打無失点に抑える。その1本は2回に川上が放った左前打でした。

 広瀬も阪神打線を6回まで2安打無失点に抑える。初回の一死一塁は松本貞一を二ゴロ併殺、3回の一死満塁も御園生崇男を遊ゴロ併殺に打ち取っているように、低目の変化球がキレていたようだ。

 巨人は6回裏、一死後広瀬がライト線にヒット、ライトゴロを狙った御園生からの一塁送球が逸れる間に広瀬は二塁に進む。トップに返り呉波がライト線ヒットから二盗を決めて一死二三塁、水原が四球を選んで一死満塁、ここで楠安夫がレフト前に2点タイムリーを放って2-0とする。

 しかし今日の阪神は粘った。7回、先頭の土井垣武がセンター右奥に二塁打、カイザー田中義雄の遊ゴロの間に土井垣は三進、若林は浅い中飛に倒れるが、野口昇に代わる代打玉置玉一が右前にタイムリーを放って1-2とする。

 阪神は8回、先頭の仁科栄三が四球を選んで出塁、巨人ベンチはここで先発の広瀬をあきらめて中尾輝三にスイッチ、塚本博睦が送って一死二塁、トップに返り金田正泰の一ゴロの間に二走仁科は三進、、ここで巨人はファーストを川上から永沢富士雄に、レフトを伊藤健太郎から林清一に代えて守備を固める。この選手交代が試合に重大な影響を及ぼしますから覚えておいてください。二死三塁から御園生崇男が左前に同点タイムリーを放って2-2、ここで巨人はキャッチャー楠がベンチに下がってファーストの永沢がマスクを被り、ファーストには須田博を入れる。三走仁科は御園生の右前打でゆっくりとホームに還ってきたので交錯プレーで楠が怪我をしたとは考えられない。突き指で途中退場の可能性が考えられるが、昭和17年には関西の試合は読売新聞では試合経過が書かれていないので分かりません。キャッチャーが永沢に代わった隙を突いて御園生が二盗に成功、松本貞一がレフトに決勝タイムリーを放って3-2とリードを奪う。松本も二盗に成功するが、土井垣は遊ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 巨人は8回、一死後中尾がライト前にヒット、トップに返り呉は二飛に倒れるが水原が四球を選んで二死一二塁、しかし楠の後に三番に入っている須田は二ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 巨人9回の攻撃は四番の中島治康から、しかし中島は遊ゴロに倒れ、川上に代わって五番に入っている永沢は三振、伊藤の代わりにレフトに入っている林清一も中飛に倒れてゲームセット。


 若林忠志は5安打2四球3三振の完投で6勝目をあげる。



 ゲーム序盤に併殺打に倒れた御園生崇男と松本貞一が8回に同点打と決勝打を放って意地を見せた。


 巨人はその8回に川上と伊藤を永沢富士雄と林清一に代えたが楠安夫が退場したため永沢がキャッチャーに回り須田博をファーストに起用せざるを得なかった。8回裏のチャンスに楠に代わって三番に入った須田に打順が回って二ゴロ、須田もバッティングはいいが今季好調の楠の退場は痛かった。9回は本来であれば中島、川上、伊藤と続くところであるが守備固めのため中島、永沢、林のオーダーとなり、最終回を迎えた若林も先頭の中島さえ押さえれば何とかなるという気持ちで投げられたのではないでしょうか。


 5月10日から西宮球場で巨人と阪神は3回対戦して阪神が2勝1敗。初戦は中尾が崩れて阪神が圧勝、13日の第二戦は須田をリリーフした中尾が意地を見せて巨人が雪辱、本日の第三戦は阪神戦初先発の広瀬が好投したが阪神が終盤逆転勝ち。戦力低下が著しい阪神が気魄で巨人を上回った。戦時下ではあるがグラウンドに出てしまえばそんなことは関係ない。伝統の一戦らしい熱い闘いであった。







*若林忠志が気魄のピッチングで6勝目をあげた。









*戦時下に伝統の一戦らしい熱戦を繰り広げる両軍ナイン。














 

2014年12月29日月曜日

17年 朝日vs黒鷲 5回戦


5月15日 (金) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 朝日 11勝16敗1分 0.407 渡辺時信 林安夫
1 0 0 0 0 0 0 0 X 1 黒鷲  6勝20敗2分 0.231 石原繁三

勝利投手 石原繁三 5勝8敗
敗戦投手 渡辺時信 0勝2敗

勝利打点 鈴木秀雄 1


鈴木秀雄、決勝タイムリー

 朝日は渡辺時信がプロ入り2度目の先発。

 その渡辺時信が初回、先頭の渡辺絢吾に四球を出すと奇才・竹内愛一監督は早くも二番手として林安夫を投入、木村孝平が送って一死二塁、鈴木秀雄が中前に先制タイムリーを放って黒鷲が1点を先制する。自責点は渡辺時信に記録され、これが決勝点となって敗戦投手は一人に四球を出して降板した渡辺時信に記録される。

 朝日二番手の林安夫はその後黒鷲打線を3安打無失点に抑えたが味方の援護が得られなかった。

 黒鷲先発の石原繁三は初回、二死後鬼頭政一にワンスリーからファウルで4球粘られ四球、しかし伊勢川真澄を右飛に打ち取る。2回、先頭の内藤幸三に中前打を許し、室脇正信にも左前打を打たれて無死一二塁、ここで広田修三の投前送りバントにダッシュよく飛び出し二走内藤を三塁に刺す。このプレーで波に乗った石原は続く景浦賢一に代わる代打早川平一を三振、林を遊飛に打ち取る。3回から5回は三人ずつで切り抜けるパーフェクトピッチング。6回一死後五味芳夫に内野安打を許すが後続を抑え、7回二死後広田を四球で歩かせるが岩田次男を左飛に打ち取る。

 石原は8回、坪内道則に中前打を打たれ二盗を許して一死二塁と一打同点のピンチを迎えるが、落ち着いて五味を三振、鬼頭を右飛に打ち取りこの回も無失点。9回も三者凡退に退けた。

 石原繁三は4安打2四球3三振で今季2度目の完封、5勝目をあげる。


 2度目の先発となった渡辺時信は1四球を出して降板、5月6日の名古屋戦で初登板した時も先頭から4連続四球(4人目の飯塚誠のカウントツーボールの時)で降板していますので、現時点でプロ入り通算2試合に登板して投球回数3分の0回、与四球5個、防御率算定不能の無限大、0勝2敗の成績です。渡辺の名誉のために付言しておきますと、山口商時代に昭和15年夏の山口県大会準決勝の防府商業戦で13奪三振を記録してノーヒットノーランをやっています。この時は与四球3個でした。山口商が「山口高等商業学校」のことであるかは今のところ不明ですが、1905年に設立された山口高等商業学校なら超名門校であることは言うまでもありません。


 初回に決勝の先制タイムリーを放って勝利打点を記録した鈴木秀雄は昭和11年名古屋入団の古い経歴を持つ。榛原中学(現・静岡県立榛原高等学校)から全静岡を経て昭和11年に名古屋入団と紹介されるのが一般的ですが、「野球界」昭和15年10月号に掲載されている「選手総展望」には「名古屋養成」と紹介されています。「養成選手」と言えば西沢道夫が有名ですが、鈴木秀雄も養成選手であった可能性があります。但し、この「選手総展望」には上野義秋が「左利き」と誤って紹介されているので全面的には信用できません。上野義秋は1度だけですがキャッチャーで出場したことがあり、本当に「左利き」であればプロ野球史上唯一の「左のキャッチャー」になりますが、他の資料では全て「右利き」となっています。

 因みに榛原(はいばら=筆者注)高校と言えば政・官・財界や文化・学術分野に数多の人材を送り込んでいる名門校で、2012年には第1回「科学の甲子園」に静岡県代表として出場しています。プロ野球選手のOBは鈴木秀雄と90年代に広島で中継ぎとして活躍した片瀬清利(聖敏)だけのようです。







*石原繁三は朝日打線を4安打に抑えて今季2度目の完封、5勝目をあげる。




















 

17年 大洋vs阪急 5回戦


5月15日 (金) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 0 0 0 0 0 1 0 3 大洋 16勝12敗1分 0.571 三富恒雄
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急 16勝11敗1分 0.596 笠松実

勝利投手 三富恒雄 6勝4敗
敗戦投手 笠松実     6勝3敗

勝利打点 村松長太郎 2


三富恒雄、3安打完封

 大洋は初回、先頭の中村信一が中前打で出塁、濃人渉は遊飛に倒れるが浅岡三郎が右前打、野口明が四球を選んで一死満塁、村松長太郎が押出し四球を選んで1点を先制、山川喜作の右犠飛で2-0とする。

 大洋打線は2回以降立ち直った阪急先発の笠松実に抑えられて6回まで無安打。

 大洋は7回、一死後三富恒雄が四球を選んで出塁、佐藤武夫が左前打を放って一死一二塁、しかし織辺由三の中飛に飛び出した二走三富が帰れずダブルプレー。

 大洋は8回、先頭の中村がストレートの四球で出塁、濃人は左飛、浅岡は三邪飛に倒れるが、野口明が左前打、これをレフト山下好一が後逸する間に一走中村がホームに還り貴重な追加点、3-0とする。

 大洋先発の三富恒雄は初回、先頭の中島喬に3球ファウルで粘られ四球で歩かせたが上田藤夫の三ゴロで中島を二封、フランク山田伝の二ゴロの間に二進を許すが森田定雄を遊ゴロに打ち取る。ここからが圧巻のピッチングで2回から6回まで一人の走者も許さずパーフェクトピッチング。

 ノーヒットノーランが見えてきた7回、一死後山田に初安打となる内野安打を許す。これはセーフティバントの可能性が高い。ここも続く森田を一邪飛、黒田健吾を二直に退け無失点。

 三富は8回、先頭の山下好一に中前打を許すが日比野武の遊ゴロで山下を二封、中村栄に代わる代打池田久之を一飛、笠松を中飛に抑えて進塁すら許さない。

 三富は9回、先頭の中島を遊ゴロに打ち取るが上田に左前打を許し、山田をストレートの四球で歩かせて一死一二塁とこの試合初めてのピンチを迎えるが、森田のショートライナーに飛び出した二走上田が戻れずゲッツーで試合終了。


 三富恒雄は3安打2四球1三振で今季2度目の完封、6勝目をマークする。当ブログでは今季の三富の好調ぶりを再三にわたってお伝えしてきているところですが、本日はその代表事例と言ってよいでしょう。






*今季好調の三富恒雄は3安打完封で6勝目。














 

2014年12月27日土曜日

沢村二世




 神田武夫は澤村栄治の後輩となることから「沢村二世」と呼ばれることがありますが、神田が京都商業在学当時「沢村二世」と呼ばれた好投手は高崎商業の古島誠治でした。古島は立教大学に進学して戦死することとなります。野球殿堂博物で見ることのできる「戦没野球人モニュメント」には高崎商業-立教大学 古島誠治の名前が刻まれています。「野球界」昭和16年3月号に「沢村二世と言われる高崎商業の古島は阪神入団」の記事が認められますが、阪神には行かずに立教大学に進みました。


 高崎市のホームページに「市政情報」が掲載されており、そこから「市の概要」→「歴史・文化」→「たかさき100年」に入っていくと平成10年8月1日号に掲載された第42回「高商、甲子園準決勝に進出」に辿り着きます。そこまでしなくても「高崎商業 古島誠二」でグーグル検索すれば簡単に見つかります。昭和13年に高崎商業が夏の甲子園でベスト4に進出した時のエースは金井茂雄でした。金井も沖縄戦で戦死したとのことです。古島はこの時三塁手、昭和15年はエースとしてチームを夏の甲子園に導き「沢村二世」と呼ばれる豪速球投手に成長していました。



 野球殿堂博物館のホームページに掲載されている「戦没野球人モニュメント」のページによると、「戦後六十年の節目を迎えるにあたり、先の大戦において戦死された中等学校野球・大学野球・社会人野球の選手の方々を慰霊するための「戦没野球人」モニュメントを制作しました。」とされています。プロ野球経験者は「鎮魂の碑」に祀られていますが、アマチュア球界の戦没者は無視されていたので2005年に製作されたものです。選考基準は

中等学校 ・・・・ 選抜大会、選手権大会出場者(本大会)
大学 ・・・・・・ リーグ戦出場者(東京六大学野球連盟、東都大学野球連盟、 旧関西六大学野球連盟、旧関西学生野球連盟)
社会人 ・・・・・ 都市対抗野球大会出場者(本大会)


とされていますが、選定された戦没選手の多くが大学出身者で占められていることからも推測されるように、実際の調査は大学のOB名簿に頼ったもののようで、大学に進学していない甲子園出場者の調査は杜撰なものであったことがうかがえます。昭和13年に高崎商業を甲子園ベスト4に導いた群馬県野球史に残る名投手「金井茂雄」の名前は「戦没野球人モニュメント」には刻まれていません。「古島誠治」は立教大学のOB名簿から判明したものであると推測されます。金井茂雄以外にも多数の「漏れ」が存在する可能性は否定できないでしょう。




 

2014年12月26日金曜日

17年 名古屋vs南海 5回戦


5月15日 (金) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12  計
1 0 0 0 0 1 0 0 1  0   0   0   3 名古屋 9勝19敗 0.321 石丸進一 河村章
0 0 0 0 0 0 0 2 1  0   0  1X  4 南海  18勝11敗 0.621 神田武夫

勝利投手 神田武夫 12勝3敗
敗戦投手 河村章      1勝8敗

二塁打 (名)木村
三塁打 (南)猪子

勝利打点 岩本義行 2

猛打賞 (南)岩本義行 3


石丸-神田の対決

 名古屋は石丸進一、南海は神田武夫の先発、注目の一戦となった。石丸と神田の対決が見られるのは昭和17年だけで、石丸と神田が共に先発するのは歴史上この日と11回戦の2度のみとなります。

 名古屋は初回、先頭の木村進一が左中間に二塁打、石丸藤吉が送って一死三塁、桝嘉一は三ゴロに倒れ、飯塚誠が四球を選んで二死一三塁、古川清蔵が左前に先制タイムリーを放って1-0とする。

 名古屋は6回、先頭の石丸藤吉が左前打で出塁、桝が送って一死二塁、飯塚の三ゴロの間に石丸藤吉は三進、古川が又も右前にタイムリーを放ち2-0とする。

 神田武夫は6回までに5安打を許し2失点。一方、石丸進一は快調なピッチングを続け6回まで南海打線をノーヒットに抑える。

 南海は7回、一死後岩本義行が左前にチーム初ヒット、しかし室井豊は左邪飛、岡村俊昭は一ゴロに倒れてこの回も無得点。

 南海は8回、一死後神田が左前打を放って出塁、柳鶴震は三振に倒れるが、トップに返り国久松一が四球を選んで二死一二塁、ここで猪子利男がライト線に三塁打を放って二者還り2-2の同点に追い付く。

 名古屋は9回表、先頭の岩本章がレフト線にヒット、野口正明は遊飛、石丸進一は中飛に倒れて二死一塁、芳賀直一の中前打で一走岩本章は三塁に進んで二死一三塁、ピッチャー神田が一塁に牽制球を投げた隙を突いて三走岩本章がスタート、ホームに滑り込んで勝越しのホームスチールを決める。このプレーは「雑記」欄に「1.3の間 本盗」と書かれているので神田の牽制の隙を突いた岩本章の好走塁だったようです。

 南海は9回裏、先頭の岩本義行が中前打で出塁、室井が右前打を放って無死一二塁、室井の代走に川崎徳次を起用、岡村も中前打を放って無死満塁と逆転サヨナラの大チャンス、中野正雄は三振に倒れて一死満塁、ここで打席に立った神田が右犠飛を打ち上げて3-3の同点に追い付く。神田は京都商業からプロ入りする際、当時の「野球界」には「プロでは外野手か」という記事が掲載されており、打撃にも優れていたことがうかがえる。

 神田は延長戦も続投するが、名古屋は10回から石丸進一を下げて河村章をマウンドに上げる。神田の9回までの投球数は112球であったが、石丸のそれは134球に達していたのである。

 南海は12回裏、一死後国久が左前打で出塁すると二盗に成功、8回に同点三塁打を打っている猪子は歩かされて一死一二塁、北原昇の三塁内野安打で一死満塁、岩本義行がライトにサヨナラヒットを放ち激戦にピリオドを打つ。



 神田武夫は154球で12回を投げ抜き9安打3四球4三振3失点、12勝目をあげる。川崎徳次の復調により登板間隔を空けることができた点が勝因でしょう。その川崎は9回に室井の代走に起用されており、足も速かったようです。


 石丸進一は9回を投げて6安打5四球2三振3失点、神田に同点犠飛を打たれて力尽きた。










*石丸進一と神田武夫の先発対決は歴史上、この日を含めて2回だけです。











*9回表に岩本章が記録したホームスチールは「雑記」欄に「1.3の間 本盗」と書かれているので二死一三塁でピッチャー神田武夫が一塁に牽制球を投げた隙を突いてホームスチールを決めたものであると考えられます。
















 

2014年12月25日木曜日

17年 阪神vs朝日 5回戦


5月14日 (木) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 阪神 13勝13敗1分 0.500 木下勇
2 0 0 0 0 1 0 0 X 3 朝日 11勝15敗1分 0.423 福士勇

勝利投手 福士勇 3勝1敗
敗戦投手 木下勇 3勝3敗

二塁打 (神)松本、金田
三塁打 (神)土井垣

勝利打点 内藤幸三 1

猛打賞 (朝)室脇正信 1


五味芳夫、2個の本盗を防ぐ

 朝日は初回、先頭の坪内道則が遊失に生き、五味芳夫が四球を選んで無死一二塁、内藤幸三のピッチャー強襲ヒットで坪内が還り1点を先制、鬼頭政一も左前にタイムリーを放って2-0とする。
 このところ調子をあげてきた朝日先発の福士勇は5回まで6四球の乱調であったが無失点で切り抜ける。この間阪神の2つの拙走に助けられた。すなわち、1回一死後野口昇が右前打で出塁、続く松本貞一のレフト線二塁打で野口が一気にホームを突くが「7-5-2」とレフト室脇正信からサード景浦賢一の中継プレーでタッチアウト。2回は二死ながら三塁に塚本博睦、一塁に仁科栄三のチャンスを迎えて重盗を敢行するがキャッチャー伊勢川真澄からの送球をショート五味が折り返して「2-6-2」でタッチアウト。


 阪神は6回、先頭の土井垣武が左中間に三塁打、御園生崇男の中飛は浅く土井垣は動けなかったが、カイザー田中義雄の中飛は犠牲フライとなって1-2と1点差に追い上げる。

 しかしその裏、二死後伊勢川が中前打で出塁、室脇の右中間ヒットで伊勢川が強引に三塁ベースを回りホームを狙う。センター坪内、セカンド鬼頭と中継されたバックホームはタイミングはアウトであったがキャッチャー田中が落球して伊勢川がホームイン、すかさず3-1と突き放す。

 こうなると今の阪神には反撃の力はなく、7回二死後金田正泰が右中間に二塁打を放つが野口は右飛に倒れ、8回二死後御園生が右前打を放つが田中は中飛に倒れる。9回、先頭の塚本が四球で出塁、大島武に代わる代打玉置玉一も四球を選び、塚本が単独三盗を決めて無死一三塁とするが、ここで重盗を敢行すると一走玉置はキャッチャー伊勢川からの送球に刺され、三走塚本もショート五味からの折り返し送球に刺されてダブルプレー。一走玉置には盗塁失敗が記録されていないが三走塚本には盗塁失敗が記録されている。玉置がディレード気味にスタートを切り、三走塚本もスタートを切ったが五味がタッチしてホームに転送して刺したと考えられ、五味の判断力の高さがもたらした併殺である可能性が高い。何れにしろこの珍しい併殺により阪神の反撃の芽は断たれ、最後は木下勇が三振に倒れてゲームセット。ここは木下に代打若林が出てくる策も考えられるところであったが、木下はこの日無四球の好投を続け、8回は三者三振に打ち取っていることから若林監督は木下をそのまま打席に向かわせたのであろう。






*福士勇は6安打完投で3勝目。木下勇も無四球7三振の力投を見せる。










 

17年 黒鷲vs巨人 5回戦


5月14日 (木) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 0 0 0 3 0 0 4 黒鷲 5勝20敗2分 0.200 小松原博喜 松本操
3 1 1 0 0 0 0 0 X 5 巨人 20勝7敗 0.741 多田文久三 広瀬習一

勝利投手 多田文久三 3勝0敗
敗戦投手 小松原博喜 0勝3敗
セーブ     広瀬習一 1

二塁打 (黒)木下
本塁打 (黒)木下 2号

勝利打点 伊藤健太郎 3


人間機関車

 巨人では白石敏男が13、14、15日の三日間欠場、川上同様関西遠征を利用して広島に帰り徴兵検査を受けたのではないかと推測されるが、白石の自伝「背番号8は逆シングル」によると白石の応召は昭和19年4月とのことで昭和18年も81試合に出場することとなる。但し、同自伝には「18年も暮になると・・・『オレのところへは、どうして召集が来んのかいのう』と、この頃になると召集が来ないのが、むしろ不安になる。早く軍隊へ入ってお国のために働きたい、と思うようになった」と書かれているので早い時期に徴兵検査を受けていたのは間違いないようです。17年シーズンオフに受けたとも考えられますが。

 巨人は初回、白石に代わってトップに入る呉波は三振に倒れるが、水原茂が左前打、楠安夫がストレートの四球を選んで一死一二塁、中島治康の二遊間内野安打で一死満塁、伊藤健太郎がセンター右に先制タイムリーを放って1-0、川上に代わりこの日もファーストに入っている永沢富士雄は浅い右飛に倒れるが、坂本茂、小池繁雄の新二遊間コンビが連続して押出し四球を選んで早くも3点を先制する。黒鷲はここで先発の小松原博喜を下げて松本操をマウンドに送り、多田文久三は三振に倒れてスリーアウトチェンジ。

 黒鷲は2回、先頭の木下政文がレフトスタンドに第2号ホームランを叩き込んで1-3と追い上げる。

 巨人は2回裏、一死後水原が四球で出塁、楠が中前打、中島は二飛に倒れるが伊藤が四球を選んで二死満塁、永沢が中前にタイムリーを放って4-1と突き放す。

 巨人は3回、先頭の小池が四球を選んで出塁するが多田の三ゴロは「5-4-3」と渡ってゲッツー、トップに返り呉の当りは遊ゴロ、スリーアウトチェンジかと思われたところショート木村孝平がエラー、呉の快足を意識したか、すかさず呉が二盗に成功、水原の内野安打で二死一三塁、ここで鮮やかにダブルスチールを決めて5-1とする。結果的にこの1点が効いた。

 巨人先発の多田は4回、6回と走者を出すが何れも「5-4-3」の併殺で切り抜けたが7回に捕まった。

 黒鷲は7回、一死後松本が右前打、木下がレフト線にタイムリー二塁打を放って2-5、谷義夫の三遊間内野安打もタイムリーとなって3-5、杉山東洋夫の遊ゴロの間に谷は二進、宗宮房之助が中前にタイムリーを放って4-5とし、風雲急を告げる。

 しかし巨人は8回から黒鷲に強い広瀬習一をリリーフに送り、広瀬が2イニングを三者凡退に抑えて逃げ切る。


 白石の欠場により昨日から一番に入っている呉波は6回に二盗と本盗を決めて貴重な追加点をもたらした。呉は11日の黒鷲戦でも本日同様ピッチャー松本操の時に重盗による本盗を決めている。いよいよ呉が「人間機関車」の本領を発揮し始めた。白石が復帰すると呉は再び下位に戻されるが、今季後半は一番打者に定着することとなる。白石の三日間の欠場が呉波の野球人生におけるターニングポイントとなった可能性が高い。




 

2014年12月23日火曜日

17年 名古屋vs阪急 5回戦


5月14日 (木) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
3 0 0 0 2 0 0 0 1 6 名古屋 9勝18敗 0.333 河村章 西沢道夫
2 0 3 1 0 0 0 2 X 8 阪急  16勝10敗1分 0.615 橋本正吾 森弘太郎

勝利投手 森弘太郎 7勝3敗
敗戦投手 河村章     1勝7敗

勝利打点 池田久之 1 


池田久之、逆転打

 名古屋は初回、先頭の木村進一がストレートの四球で出塁、石丸藤吉の三前バントが内野安打となって無死一二塁、桝嘉一が送りバントを決めて一死二三塁、飯塚誠の三ゴロで三走木村がホームを突くがサード黒田健吾からのバックホームで三本間に挟まれる。挟殺プレーの間に打者走者の飯塚が二塁に向かうと「5-2-5」と折り返された白球を黒田が飯塚を刺さんと二塁に投じるが、これがライトに抜ける悪送球となって木村が生還、石丸藤吉も三塁ベースを蹴ってホームイン、バックアップのライト西村正夫からの本塁送球も悪送球となる間に打者走者に飯塚は三塁に進む。更に吉田猪佐喜の中犠飛で1点を追加、この回3点を先制する。

 阪急は1回裏、こちらも先頭の西村が四球で出塁、上田藤夫がライト線にヒット、フランク山田伝は三飛に倒れるが森田定雄が四球を選んで一死満塁、黒田健吾の左邪犠飛で1-3、レフト吉田のファウルグラウンドからのバックホームが悪送球となってタッチアップから三塁に進んでいた二走上田も生還して2-3とする。両チーム序盤からエラーの応酬で失点を重ねる。

 阪急は3回、先頭の上田が四球で出塁、山田の三塁内野安打で無死一二塁、ここでダブルスチールを仕掛けるがキャッチャー古川清蔵からの三塁送球に上田はタッチアウト、一死二塁から森田の遊ゴロで二走山田が三塁に走るが「6-5」と送球されてタッチアウト、走塁ミスが重なりチャンスは潰えたかに見えたがここから名古屋先発の河村章が黒田、山下好一に連続四球を与えて二死満塁、名古屋ベンチは河村から今季2度目の登板となる西沢道夫にスイッチ、このチャンスに池田久之が中前に逆転の2点タイムリーを放ち4-3、江口行雄も左前にタイムリーで続いて5-3と逆転に成功する。

 阪急は4回、一死後上田がライト線にヒット、山田も左前打を放って一死一二塁、森田の三ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、黒田が中前にタイムリーを放って6-3、二走山田もホームを狙うがセンター桝嘉一からのバックホームにタッチアウト、結果的にこの追加点が効いた。

 名古屋は5回、一死後芳賀直一が中前打で出塁、トップに返り木村が3打席連続となる四球を選んで一死一二塁、石丸藤吉の三ゴロで木村は二封、ここでダブルスチールを決めて4-6、キャッチャー池田からの二塁送球が悪送球となる間に石丸藤吉は三塁に進み、桝が四球を選んで二死一三塁、阪急ベンチはここで先発の橋本正吾から森弘太郎にスイッチ、飯塚の三塁内野安打で石丸藤吉が還って5-6、吉田は投ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 6回、7回と併殺でチャンスの芽を摘んだ阪急は8回、先頭の江口が死球を受けて出塁、森の投ゴロをピッチャー西沢がエラーして無死一二塁、トップに返り中島喬の遊飛をショート木村が落球する間に二走江口が還って7-5、上田の遊ゴロは「6-4-3」と渡ってゲッツー、山田の三ゴロをサード芳賀がエラーする間に森が還って8-5と突き放す。

 阪急は9回の守備から死球を受けてそのまま走者として残りホームに還ったセカンド江口を下げてショートの上田がセカンドに回り、ショートには中村栄が入る。

 名古屋は9回、先頭の野口正明の打球は代わったところに飛んで遊ゴロ、これを中村が失して無死一塁、代走に岩本章を起用、西沢はストレートの四球、芳賀の遊ゴロを又も中村がエラーして無死満塁、阪急ベンチはここで上田をショートに戻し中村栄をセカンドに回して一息入れる。トップに返り木村は浅い右飛に倒れて一死満塁、名古屋ベンチはここで石丸藤吉に代えてかつての阪急の主砲山下実を代打に起用、山下の打球は一ゴロ、三走岩本はホームに向かい、ファースト森田がバックホームするがセーフ、野選が記録されて6-8、なおも一死満塁のチャンスが続くが桝は浅い左飛、飯塚が三振に倒れてゲームセット。


 勝利打点は決勝の逆転タイムリーを放った池田久之に記録されたが、4回に追撃のタイムリーを放った黒田健吾の一打も並列の殊勲打であった。




 

17年 南海vs大洋 5回戦


5月14日 (木) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 3 0 0 0 2 5 南海 17勝11敗 0.607 川崎徳次
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 大洋 15勝12敗1分 0.556 野口二郎 古谷倉之助

勝利投手 川崎徳次 4勝5敗
敗戦投手 野口二郎 8勝6敗

二塁打 (南)岩本

勝利打点 なし


川崎徳次5安打完封

 4回まで無安打の南海は5回、先頭の室井豊が中前にチーム初ヒット、岡村俊昭も中前打で続いて無死一二塁、中野正雄の三ゴロはサード山川喜作がそのまま三塁ベースを踏んで一死一二塁、川崎徳次の三ゴロは「5-4-3」と転送されるがセカンド中村信一からの一塁送球が悪送球となる間に三塁に進んでいた二走岡村がホームに還って1点を先制、ファースト野口明からの本塁送球も悪送球となる間に打者走者の川崎は二塁に進み、柳鶴震の三ゴロをサード山川がエラーして二死一三塁、柳が二盗を決めて二死二三塁、トップに返り国久松一の遊ゴロをショート濃人渉が一塁に悪送球する間に三走川崎に続いて二走柳もホームに還って2点を追加、3-0とする。この回大洋内野陣は4人全員が失策を記録した。

 大洋先発の野口二郎は6回まで南海打線を2安打に抑えたが守備に足を引っ張られて3失点、7回からファーストに回りファーストの古谷倉之助がマウンドに上がる。

 南海は9回、一死後岩本義行がレフト線に二塁打、八木進が左前打から二盗を決めて一死二三塁、岡村の二ゴロの間に三走岩本が還って4-0、中野の三ゴロをサード山川がエラーする間に三走八木が生還して5-0とする。

 川崎徳次は5安打3四球4三振で大洋を完封、4勝目をあげる。シーズン序盤を病気のため出遅れた川崎もようやく調子を上げてきて神田武夫の負担が軽減されてきた。

 大洋内野陣は5回の守備でセカンド中村信一、ファースト野口明、サード山川喜作、ショート濃人渉が失策を記録。1イニング内野陣全員エラーは他に事例があるのでしょうか、調べる価値はあると思いますが調べ方が分からない(笑)。





*川崎徳次が5安打完封。川崎の復調により神田武夫の負担が軽減されてきた。









 

訂正のお知らせ




 5月5日南海vs黒鷲4回戦の南海の二番手投手が石丸進一となっていましたが神田武夫の間違いでした。


 また、5月10日の朝日vs黒鷲3回戦では朝日のピッチャーが石原繁三、黒鷲のピッチャーが林安夫となっていましたが、朝日のピッチャーが林安夫で黒鷲のピッチャーが石原繁三の間違いでした。


 お詫びして訂正させていただきます。




 

17年 第6節 週間MVP



 今節は大洋が3勝1敗、阪急が3勝1敗、巨人が3勝1敗、朝日が2勝1敗1分、名古屋が2勝2敗、阪神が2勝2敗、黒鷲が0勝3敗1分、南海が0勝4敗であった。


週間MVP

投手部門

 巨人 広瀬習一 1

 5月9日の朝日戦と11日の黒鷲戦に2試合連続完封。

 巨人は上位チームは中尾輝三と須田博、下位チームは広瀬習一を中心にローテーションを組んでいる。今節巨人は阪神と2試合、黒鷲、朝日と対戦したが、阪神の先発は中尾輝三と須田博で朝日、黒鷲戦は広瀬が先発している。この点から広瀬の成績は割り引いて評価しなければならないが、今節は広瀬のMVPが妥当でしょう。


 阪急 森弘太郎 1

 昨シーズン後半から肘を痛めている森は今季調子が上がらなかったが、今節は1完封を含む2勝をあげて復活してきた。



打撃部門 

 巨人 伊藤健太郎 3

 早くも今季3度目のMVPを獲得。戦地から戻って神懸かり的な活躍を続けている。川上が欠場(おそらく徴兵検査か)した今節、18打数7安打6打点の猛打で首位固めに貢献する。11日の黒鷲戦では3本のタイムリーで猛打賞を記録した。


 阪急 黒田健吾 1

 今節13打数5安打4打点6四球。11日の名古屋戦では決勝の逆転スリーランを放つ。


 名古屋 古川清蔵 1

 12日の南海戦で7回裏に同点本塁打、10回裏にはサヨナラホームランを放つ。


 大洋 浅岡三郎 1

 今季は三富恒雄が好調なので浅岡はライトに入ることが多い。今節から三番に起用されて14打数6安打3得点5四球、出塁率は5割を超える。




殊勲賞

 巨人 楠安夫 1

 今節2試合連続猛打賞を記録して15打数8安打。


 阪神 御園生崇男 1

 9日の黒鷲戦で9回裏代打サヨナラタイムリーを放つ。


 大洋 織辺由三 2

 好調織辺はこのところ九番から六番、七番に上がって今節18打数5安打。10日の阪急戦では延長14回に二盗を決めて決勝点に結びつけ、11日の南海戦では決勝打を放つ。好調と言うよりも力を付けてきたと言うべきでしょう。前節に続いて2節連続殊勲賞を獲得。


 大洋 三富恒雄 3

 10日の阪急戦では粘りのピッチングで延長14回完投勝利。


敢闘賞 

 巨人 中尾輝三 1

 13日の阪神4回戦では7失点を喫した10日の3回戦の雪辱を遂げる気魄のピッチングを見せた。この試合が巨人の春季優勝を決定づけたと言っても過言ではない。


 朝日 福士勇 1

 11日の阪神戦で完封勝利。


 黒鷲 金子裕 1

 勝ち星には恵まれないが9日の阪神戦では完投して2対3でサヨナラ負け、13日の朝日戦では12回を完投して1対1の引分け。


 南海 北原昇 1

 今節15打数6安打2打点。



技能賞

 朝日 五味芳夫 1

 13日の黒鷲戦で1試合3盗塁を記録する。






 

2014年12月22日月曜日

訂正のお知らせ




 5月5日の南海vs黒鷲4回戦から11日の巨人vs黒鷲4回戦まで、黒鷲の4試合の成績で「1分」が抜けておりました。12日の黒鷲vs朝日4回戦の引分けで黒鷲の成績は5勝19敗2分となりました。


 また、5月4日の阪急vs黒鷲戦では登板投手の記載が抜けていました。この試合の阪急は中田武夫から森弘太郎への継投、黒鷲は石原繁三が完投しています。


 ご迷惑をおかけしますが、お詫びして訂正させていただきます。




 

17年 巨人vs阪神 4回戦


5月13日 (水) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 3 0 0 0 0 0 0 1 4 巨人 19勝7敗 0.731 須田博 中尾輝三
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 阪神 13勝12敗1分 0.520 御園生崇男 若林忠志

勝利投手 中尾輝三     7勝4敗
敗戦投手 御園生崇男 2勝2敗

二塁打 (巨)伊藤、須田、呉 (神)御園生

勝利打点 なし


中尾輝三、気魄のピッチング

 川上哲治が欠場(おそらく徴兵検査でしょう)している巨人は六番ファーストに永沢富士雄を据える。

 阪神は初回、先頭の塚本博睦が三前にセーフティバントを試みるもサード水原茂に捌かれて一塁アウト、続く金田正泰がストレートの四球で出塁するが松本貞一の二ゴロが「4-6-3」と渡ってダブルプレー。

 巨人は2回、一死後伊藤健太郎が中越えに二塁打、永沢の右飛で伊藤はタッチアップから三塁に進み、パスボールで先制のホームを踏む。坂本茂が四球から二盗に成功、小池繁雄も四球を選んで二死一二塁、須田博の左中間二塁打で二者生還して3-0とする。

 阪神は2回裏、先頭の土井垣武が右前打で出塁、御園生崇男の右越え二塁打で無死二三塁、カイザー田中義雄は四球を選んで無死満塁、巨人ベンチはここで早くも先発の須田をあきらめ中尾輝三をリリーフに送る。野口昇の中犠飛で三走土井垣が還り1-3、大島武の第一打席で早くも代打若林忠志を起用、しかし若林は三振、上田正も遊ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。この辺りに阪神打線の弱さが見て取れる。

 若林は3回から先発の御園生崇男に代わってマウンドに上がり、御園生はライトに入る。

 10日の3回戦で7失点を喫した中尾が気魄のピッチングを見せた。3回から5回まで三者凡退、6回からは1安打ずつを許すが8回まで無失点。

 巨人は9回表、先頭の中島が四球で出塁、伊藤が左前打を放って無死一二塁、ここで中島が単独三盗を決めて一三塁、永沢が四球を選んで無死満塁、二塁に進んだ伊藤に代走林清一を起用、坂本は中飛に倒れて一死満塁、小池が右中間にタイムリーを放って4-1、二走林もホームを狙うがセンター塚本からのバックホームにタッチアウト。


 中尾輝三は9回阪神の反撃を三者凡退に退け、8回を投げて3安打1四球4三振無失点、10日とは見違えるピッチングを見せて7勝目をあげる。


 阪神は今季9人が兵役で抜けて戦力低下が著しいが、特に下位打線の弱さが目立っている。内野のレギュラーが全員抜けてメンバーが組める状況にない。ショートの野口昇だけが昨年出場経験があり、サードにキャッチャーの土井垣武、セカンドにピッチャーの松本貞一を使って糊口を凌いでいる。








*10日の雪辱を期す中尾輝三は気魄のピッチングで7勝目をあげた。











 

17年 黒鷲vs朝日 4回戦


5月13日 (水) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 0 0 0 0 0 0 1 0  0   0   0  1 黒鷲   5勝19敗2分 0.208 金子裕
1 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0  1 朝日 10勝15敗1分 0.400 斉藤忠二 林安夫

勝利打点 なし

猛打賞 (朝)伊勢川真澄 1


五味芳夫3盗塁

 チーム力が拮抗している黒鷲と朝日のカードは接戦が多いが、この試合はその代表格と言ってよいでしょう。

 朝日は初回、先頭の坪内道則が三塁に内野安打、更に二盗を決めて無死二塁、五味芳夫の三ゴロの間に坪内は三進、内藤幸三が四球から二盗を決めて一死二三塁、鬼頭政一の左犠飛で1点を先制する。

 朝日先発の斉藤忠二は7回まで4安打6四球と毎回のように走者を背負いながらも無失点で切り抜けてきた。

 黒鷲は8回、一死後富松信彦の二ゴロをセカンド鬼頭がエラー、続く木下政文のカウントツーボールからの3球目もボールとなったところで富松が二盗に成功、朝日竹内愛一監督はここで斉藤から林安夫にスイッチ、林の初球もボールとなって木下は四球、与四球は斉藤に記録される。一死一二塁となって打席はこの試合途中からレフトに入っている寺内一隆監督、寺内は中前に同点タイムリーを放って1-1と試合を振出しに戻す。

 この日の朝日は足を使ってきた。初回に二盗を決めた坪内は5回も先頭打者として四球を選ぶとすかさず二盗に成功、しかし五味のショートライナーに戻れずダブルプレー。その五味芳夫も3回、7回、12回と3つの盗塁に成功するが得点には結びつかなかった。

 黒鷲先発の金子裕は例によって粘りの投球を見せた。8回まで8安打4四球に加え朝日のしつこい足の攻撃に苦しめられたが初回の1失点に抑える。9回は三者凡退に抑えて延長戦に突入、以降は無安打に抑えきった。


 第二試合を控えているため試合は延長12回で引分け。金子裕は12回を完投して8安打5四球2三振1失点。斉藤忠二は7回3分の1を4安打7四球無三振1失点、自責点ゼロ。リリーフの林安夫は4回3分の2を3安打2四球無三振無失点であった。


 朝日では伊勢川真澄が5打数3安打の猛打賞、黒鷲では五味芳夫の3盗塁が目に付いた。五味は昭和14年盗塁王、甲府中学時代は夏の甲子園で1試合5盗塁の記録も作っている。




 

17年 阪急vs大洋 4回戦


5月12日 (火) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 2 0 0 1 3 阪急 15勝10敗1分 0.600 天保義夫 笠松実
2 0 0 0 0 0 0 0 0 2 大洋 15勝11敗1分 0.577 三富恒雄 野口二郎

勝利投手 笠松実     6勝3敗
敗戦投手 野口二郎 8勝5敗

勝利打点 (なし)


西村正夫、決勝スクイズ

 大洋は初回、二死後浅岡三郎が三塁内野安打、次のプレーはスコアカードに「野口二郎の二ゴロをセカンド江口行雄がエラーする間に一走浅岡が生還し野口二郎も三塁に進塁」と記載されている。野口の強い当りのゴロを江口がトンネルし、打球は右中間を抜けていったと見るのが妥当でしょう。二死三塁から野口明が二遊間に内野安打して野口二郎が還りこの回2点を先制する。

 大洋先発の三富恒雄は3回まで三者凡退を続けるパーフェクトピッチング。翌日の読売新聞が「近来長足の進歩を示した三富」と書いている三富の好調ぶりは当ブログでも再三指摘してきているとおりです。

 阪急は4回、一死後上田藤夫が二遊間に内野安打、フランク山田伝が中前打で続いて一死一二塁、森田定雄は遊ゴロに倒れ、黒田健吾が四球を選んで二死満塁、しかし山下好一が遊ゴロに倒れて反撃のチャンスを逸す。

 阪急は6回、先頭の西村正夫が四球で出塁、上田は右飛に倒れるが山田が死球を受けて一死一二塁、森田の二遊間内野安打で一死満塁、黒田が押出し四球を選んで1-2、山下好一が右前に同点タイムリーを放ち2-2とする。なおも一死満塁が続くが日比野武は捕邪飛、江口は一ゴロに倒れて逆転はならず。

 同点に追い付いた阪急は6回から先発の天保義夫に代えて笠松実をマウンドに送り込む。

 阪急は7回、先頭の笠松がストレートの四球で出塁、大洋ベンチは三富限界と見てファーストの野口二郎をマウンドに上げ、ファーストには古谷倉之助が入る。トップに返り西村の投ゴロは「1-4-3」と渡るダブルプレー、ここは野口二郎-苅田久徳の黄金の併殺コンビが魅せた。


 阪急は9回、先頭の山下好一が中前打で出塁、日比野も中前打で続いて無死一二塁、江口が送りバントを決めて一死二三塁、笠松は四球を選んで一死満塁、トップに返り西村の一塁線スクイズをファースト古谷がエラー、三走山下好一が決勝のホームを踏んだ。西村には犠打、古谷には失策が記録されており、西村には打点が記録されていない。したがって西村には勝利打点は記録されない。三走山下好一のホームインは古谷のエラーによるもの、二走日比野の三進と一走笠松の二進は西村の犠打によるものと判定されているようだ。翌日の読売新聞には「西村がスクイズ・バントしたのを古谷が失して決勝点を握った」と書かれている。


 筆者の拙い知識では一番先の走者である三走山下好一のホームインが失策によるものであれば西村には犠打は記録されず、西村に犠打が記録されているのであれば山下好一のホームインは古谷のエラーがなくても成されたものと判定されて西村に打点が記録されると考えたのですが、筆者はルールに精通している訳ではないのでスコアカードの記載通りとし、この試合の勝利打点は「なし」とします。但し、腑に落ちないのも事実なので括弧付の「(なし)」とさせていただきます。


 いずれにせよ、バントの名手西村正夫のスクイズにより決勝点をあげた阪急がリリーフ笠松実の好投で逃げ切った試合でした。







*9回に西村正夫が決勝のスクイズを決めた場面。











*四角で囲ってあるのは「犠打」を表します。犠打欄にも「1」が記録されており、他の打席で犠打はありませんので9回のスクイズに犠打が記録されています。一方、打点欄(スコアカードでは「得点打」の欄)は空欄となっており打点は記録されていない。「3’」はファースト古谷倉之助のエラーを表し、「犠打エラー」と記録されているので西村に打点が記録されてもおかしくはない。















 

2014年12月21日日曜日

17年 南海vs名古屋 4回戦


5月12日 (火) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10  計
0 0 0 1 0 0 0 0 0  0   1 南海   16勝11敗 0.593 川崎徳次
0 0 0 0 0 0 1 0 0 1X  2 名古屋 9勝17敗 0.346 松尾幸造

勝利投手 松尾五郎 2勝2敗
敗戦投手 川崎徳次 3勝5敗

本塁打 (名)古川 1号、2号

勝利打点 古川清蔵 3


古川清蔵2発

 名古屋が古川清蔵の2本塁打で南海を粉砕した。

 南海は初回、先頭の国久松一の中飛を名手桝嘉一が失して無死一塁、ここで国久が二盗を試みるがキャッチャー古川清蔵からの送球にタッチアウト。二死後北原昇がレフト線にヒットを放ち二盗を試みるが又も古川が刺す。この2つの補殺で古川が乗った。

 南海は4回、先頭の国久が中前打で出塁、猪子利男の捕前送りバントを古川が一塁に悪送球、犠打とエラーが記録される。ここは古川が調子に乗り過ぎたようだが、このエラーで冷静になれたとも考えられる。古川の暴投で国久は三塁に進み無死一三塁、北原が右前に先制タイムリーを放ち1-0、しかし岩本義行の遊ゴロは「6-4-3」のゲッツー、室井豊が四球を選ぶが岡村俊昭が一ゴロに倒れて追加点はならず。

 南海先発の川崎徳次は好調なピッチングを続け6回まで無安打無得点を続ける。

 名古屋は7回、先頭の飯塚誠は左飛、吉田猪佐喜も三振に倒れて依然として無安打、ここで古川がファウル、ボール、ボール、ファウル、ボール、ファウル、ファウルからの8球目をレフトスタンドに同点ホームラン、1-1とする。

 名古屋先発の松尾幸造は6回まで5安打3四球と走者を出しながら2つの併殺にも助けられて1失点。7回以降は南海打線を無安打に抑え10回まで1失点で切り抜ける。8回には先頭の国久を遊失で生かし、猪子の送りバントを二塁に送球して野選を犯すミスをやったが、ダブルスチールを又も古川が刺してピンチを未然に防いだ。

 名古屋は10回裏、先頭の古川がレフトスタンドにサヨナラホームラン、開幕から快進撃続けてきた南海は4連敗となった。


 古川清蔵が7回に放った同点ホームランは自身プロ入り初ホームラン、2年連続本塁打王に輝くこととなる古川がホームランバッターとして開眼した一打であった。古川の2本塁打は記録を調べれば判明しますが、その伏線として3つの補殺を記録していたことはスコアカードをめくっていかないと見つけることはできません。原データをじっくり調べることの重要性を再認識させられた試合でした。







*古川清蔵の2本塁打を伝えるスコアカード。

















 

2014年12月20日土曜日

17年 朝日vs阪神 4回戦


5月11日 (月) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 2 0 0 0 2 0 4 朝日 10勝15敗 0.400 福士勇
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪神 13勝11敗1分 0.542 藤村隆男 三輪八郎 若林忠志

勝利投手 福士勇     2勝1敗
敗戦投手 藤村隆男 2勝2敗

勝利打点 なし


打点ゼロ、自責点ゼロ

 3回まで無安打の朝日は4回、先頭の鬼頭政一がレフト線にチーム初ヒット、伊勢川真澄が送って一死二塁、内藤幸三の投ゴロに二走鬼頭が飛び出し二三塁間に挟まれるが、挟殺プレーでサード玉置玉一が一塁方向に悪送球する間に鬼頭が還って1点を先制、打者走者の内藤も走りに走って三塁に向かい、バックアップのファースト土井垣武からの返球を受けたピッチャー藤村隆男が三塁に送球するがこれも悪送球、内藤が還って2-0とする。阪神はここでピッチャーを藤村から三輪八郎に交代、三輪が後続を断つ。

 朝日は8回、先頭の福士勇のカウントがノースリーとなったところで阪神は三輪から若林忠志にスイッチ、若林の4球目もボールとなった福士が四球で出塁、与四球は三輪に記録される。トップに返り坪内道則が右前打、五味芳夫の三塁内野安打で無死満塁、ここでパスボールが飛び出し三走福士が還って3-0、鬼頭の三ゴロで三走坪内がホームを突くがサード土井垣武からの送球にタッチアウト、一死一三塁から伊勢川も三ゴロ、三走五味がホームを狙いサード土井垣がバックホームするが今度は悪送球となって五味が生還、4-0とする。


 福士勇は阪神打線を寄せ付けず、4安打2四球3三振で今季初完封、2勝目をあげる。


 試合経過からも分かるように阪神は守備自の乱れで自滅、朝日打線の打点はゼロ、阪神投手陣の自責点もゼロであった。






*福士勇は阪神打線を4安打完封、2勝目をあげる。阪神投手陣は4失点ながら自責点ゼロであった。








 

17年 巨人vs黒鷲 4回戦


5月11日 (月) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 2 0 0 0 2 1 0 6 巨人 18勝7敗 0.720 広瀬習一
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 黒鷲 5勝19敗 0.208 松本操

勝利投手 広瀬習一 8勝3敗
敗戦投手 松本操     0勝5敗

二塁打 (巨)伊藤、楠

勝利打点 伊藤健太郎 2

猛打賞 (巨)楠安夫(二試合連続)2、伊藤健太郎 3


伊藤健太郎4打点

 巨人は川上哲治がこの日から14日の黒鷲戦まで欠場して15日の阪神戦から復帰する。10日の阪神2回戦まで出場して3試合欠場するが、今回の関西遠征を利用して熊本に帰り徴兵検査を受けたと考えるのが妥当でしょう。川上はこの後9月16日の大和戦までスタメン出場を続けるが、9月19日の名古屋戦での途中出場を最後に忽然とグラウンドから姿を消すこととなる。川上の徴兵は今季途中からとなるようです。

 巨人は初回、先頭の白石敏男が三塁に内野安打、水原茂の遊ゴロでランナーが入れ替わり、楠安夫が死球を受けて一死一二塁、中島治康の三塁内野安打で一死満塁、伊藤健太郎の三塁内野安打がタイムリーとなって1点を先制する。

 巨人は3回、先頭の水原がストレートの四球で出塁、楠の二塁内野安打で水原が三塁に進んで無死一三塁、楠はピッチャー松本操の牽制に刺されるが、中島が粘って四球を選び一死一三塁、伊藤が右中間に二塁打を放って二者還り3-0とする。

 巨人は7回、一死後水原がピッチャーへの内野安打で出塁、楠が左中間に二塁打を放ち水原が還って5-0、中島は右飛に倒れるが、伊藤が中前にタイムリーを放って5-0とする。

 巨人は8回、先頭の呉波がストレートの四球で出塁、永沢富士雄の左前打で呉が三塁に進み一死一三塁、ここでダブルスチールを決めて6-0とする。


 黒鷲打線は巨人先発広瀬習一の前に手も足も出なかった。8回まで無安打、三者凡退を6回記録する。黒鷲は9回、先頭の宗宮房之助に代わる代打金子裕の三塁内野安打で何とかノーヒットノーランを免れる。


 広瀬習一は1安打1四球1三振で2試合連続完封、8勝目をあげる。



 巨人は楠安夫と伊藤健太郎が猛打賞を記録、伊藤は3本のヒットが全てタイムリーで4打点を記録した。








*広瀬習一は1安打完封で8勝目をあげる。