2013年9月30日月曜日

16年 阪神vs朝日 4回戦


4月21日 (月) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 0 0 0 0 0 0 0 2 阪神 6勝6敗 0.500 藤村隆男
0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 朝日 4勝8敗 0.333 福士勇

勝利投手 藤村隆男 1勝2敗
敗戦投手 福士勇     2勝4敗

二塁打 (朝)坪内

勝利打点 藤村隆男 1


藤村隆男、自ら決勝打

 阪神は2回、先頭の土井垣武が左前打で出塁、山根実は中飛に倒れるが、野口昇が四球を選んで一死一二塁、藤村隆男が中前に先制タイムリーを放って1点を先制、森国五郎の遊ゴロで一走藤村が二封されて二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて2-0とする。

 朝日は1回裏、先頭の坪内道則が左越えに二塁打、村上重夫の三ゴロの間に二走坪内は三進、鬼頭政一が四球を選び二盗に成功、灰山元章が四球で歩いて一死満塁、しかし室脇正信は一邪飛、戸川信夫は遊ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。朝日tごしtげはここで得点を奪えなかったことが後に響いた。

 2回~4回は三者凡退に終った朝日は5回、一死後福士勇が右前打で出塁、前田諭治が左翼線にヒットを放って一死一二塁、トップに返り坪内道則が中前にタイムリーを放って1-2とする。

 福士勇は3回まで5安打を打たれたが4回以降は1安打無失点、しかし味方の援護は無く4敗目を喫する。

 藤村隆男は5回まで5安打を打たれたが6回以降は2安打無失点、結局7安打6四球5三振1失点の完投で今季初勝利をあげる。




藤村隆男は7安打完投で今季初勝利をあげる。








 

2013年9月29日日曜日

16年 阪急vs名古屋 4回戦


4月21日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
0 0 0 3 0 0 0 0 0  0   3   6 阪急     7勝4敗 0.636 森弘太郎
3 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   3 名古屋 4勝7敗 0.364 松尾幸造 西沢道夫

森弘太郎 4勝0敗
西沢道夫 1勝3敗

二塁打 (名)吉田2

勝利打点 伊東甚吉 1

ファインプレー賞 (急)黒田健吾 1


森田定雄、2点タイムリー2発

 名古屋は初回、二死後桝嘉一が左前打、大沢清が中前打を放って二死一二塁、吉田猪佐喜がセンター左奥に二塁打を放ち二者生還して2-0、三浦敏一がセンター右にタイムリーを放って3-0とする。

 3回まで無安打の阪急は4回、先頭のフランク山田伝が四球で出塁、田中幸男は右飛、井野川利春は三振に倒れるが一走山田が二盗に成功、キャッチャー三浦からの送球が逸れる間に山田は三塁に進み、黒田健吾が四球を選んで二死一三塁、伊東甚吉の右前タイムリーで1-3、黒田は三塁に進んで二死一三塁、阪急ベンチは石井武夫に代えて森田定雄を代打に起用、一走伊東が二盗を決めて二死二三塁、森田が中前に同点の2点タイムリーを放って3-3と追い付く。

 名古屋は5回から先発の松尾幸造に代えて西沢道夫を投入、その西沢が素晴らしいピッチングを見せて阪急打線を10回まで無安打に抑える。

 阪急先発の森弘太郎も中盤から立ち直り、4回までは7安打を喫したが5回~10回を2安打無失点に抑えて試合は延長1回に突入する。

 阪急は11回表、一死後田中が中前打で出塁、井野川の三ゴロをサード芳賀直一がエラー、黒田の三ゴロも野選を誘い一死満塁、伊東の二前へのスクイズバントが内野安打となって1点を勝ち越し4-3、森田が左前に止めの2点タイムリーを放って6-3とする。

 森弘太郎は11回裏の名古屋の反撃を三者凡退に退け、9安打1四球1三振の完投で開幕から無傷の4連勝を飾る。

 伊東甚吉が3打数2安打2打点で勝利打点を記録、森田定雄が2点タイムリーを2本放って4打数2安打4打点の活躍を見せた。伊東の勝利打点はスクイズが内野安打となったもので、真の殊勲打は森田定雄となります。当ブログは森田定雄を「最も無名の最強打者」と呼んでおり、「殿堂入りしていないベストナイン」でも一塁手部門に選出しています。4月15日の名古屋3回戦では森田がスクイズで勝利打点を記録しましたが真の殊勲打は伊東甚吉でした。

 まだ1回戦のカードが行われていない対戦もありますが本日から4回戦のカードが組まれています。今季から8球団に減少して東西2試合で進行していきますが、春の時点では今季も満州遠征が予定されており、昨年の徹は踏むまいと試合消化を早めていると考えられます。

 昭和16年2月6日付け読売新聞は「満州、地方へ進出 本年度の方針決る」の見出しで「満州リーグを今夏も引続いて挙行する」と伝えています。一方で、4月16日付け読売新聞の「白線」というコラムでは、「亀田といい長谷川といい米政府の帰国命令によって揃って6月12日の船で帰米することに決定している」とも書かれているように、戦争の足音は日増しに高くなってきています。但し4月16日の記事では「シーズン半ばで帰国せねばならぬ両投手も残念であろうが、ファンにとっても名残り惜しい次第だ。」と結ばれているように、まだ呑気なところもあったようです。









               *森弘太郎は延長11回を完投して4勝目をあげる。








     *森田定雄が4打点を記録した阪急打線。











 

16年 大洋vs黒鷲 4回戦


4月21日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 1 0 2 0 1 5 大洋 9勝2敗 0.818 古谷倉之助 浅岡三郎 野口二郎
0 0 1 1 0 0 1 0 0 3 黒鷲 2勝9敗 0.182  亀田忠
 
勝利投手 野口二郎 4勝1敗
敗戦投手 亀田忠     2勝4敗

二塁打 (黒)寺内
本塁打 (大)佐藤 1号 (黒)富松 1号

勝利打点 佐藤武夫 1


佐藤武夫、決勝ホームラン

 大洋はこれまでリリーフに回っていた古谷倉之助が今季初先発、スタメンセカンドには中村信一が苅田に代わって入り一番。一方、黒鷲はエース亀田忠で応戦する。午後1時ちょうど、横沢三郎プレートアンパイヤの右手があがり、プレイボール。翌日の読売新聞によるとこの試合の二階席には国民学校の生徒が招待された。昭和16年3月1日に国民学校令が公布され、4月から国民学校が発足した。当時のプロ野球は、国策と付き合いながら生き延びていったのである。


 大洋は3回、先頭の古谷がツースリーから四球を選んで出塁、柴田多摩男が送って一死二塁、村松長太郎は右飛に倒れるが、トップに返り中村信一が左前にタイムリーを放って1点を先制する。

 黒鷲は3回裏、二死後富松信彦が右翼スタンドに同点ホームランを叩き込んで1-1と追い付く。
 黒鷲は4回、先頭のサム高橋吉雄の三ゴロをサード高橋輝彦がエラー、サム高橋は捕逸で二進、中河美芳が左翼線にタイムリーを放って2-1と勝ち越しに成功する。


 大洋は5回、先頭の森田実がツースリーから四球を選んで出塁、古谷が送って一死二塁、柴田に代わる代打西岡義晴の投ゴロで二走森田が飛び出し二三塁間で挟殺プレー、森田はタッチアウトとなるが良く粘って時間を稼ぎ、打者走者の西岡は二塁に進む。村松の遊ゴロをショート山田潔が一塁に悪送球する間に二走西岡が還って2-2の同点に追い付く。

 大洋は5回の守備から佐藤武夫がマスクを被り、一死を取ったところで先発の古谷から浅岡三郎にスイッチする。

 黒鷲は6回、先頭の小島利男が三遊間に内野安打、サム高橋は中飛に倒れるが、中河が中前打を放って一死一二塁、大洋はここでセカンドの中村に代わって苅田久徳が登場、竹内功は一邪飛、清家忠太郎は投ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 大洋は7回、先頭の佐藤がレフトスタンドにホームランを叩き込んで3-2、村松が中前打、トップに返り苅田が送って一死二塁、石井豊の中前打で一死一三塁、濃人渉が中前にタイムリーを放って4-2とする。

 黒鷲は7回裏、先頭の山田が中前打で出塁、亀田の左翼線ヒットで山田が三塁に走り無死一三塁、トップに返り寺内一隆の左翼線二塁打で3-4としてなお無死二三塁と逆転のチャンス、打席には3回に本塁打を放っている二番富松を迎え、カウントワンストライクツーボールとなったところで大洋ベンチは浅岡に代えてエース野口二郎を投入、レフトも黒澤俊夫から織辺由三に代える。富松はファウル2本で粘るがツースリーから三振、三番小島も三振、四番サム高橋は左飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 大洋は9回、先頭の濃人の三ゴロをサード竹内が一塁に悪送球して濃人は二塁に進み一死後三盗に成功、キャッチャー清家からの送球が逸れる間に濃人が還って5-3と突き放す。

 8回を三者凡退に抑えた野口二郎は9回も寺内に中前打1本を許しただけで無失点、3イニングを投げて1安打無四球2三振無失点の好リリーフで4勝目をあげる。


 大洋は5連勝で勝率を8割台に乗せ、首位巨人に迫ってきた。翼と金鯱が合併して選手層が厚くなり、ふんだんに選手交代を活用している。この試合でも二番手マスクの佐藤武夫が決勝本塁打を放ち、6回に苅田久徳が入って試合の流れを変え、最後はエース野口二郎で締めくくった。








                 *好リリーフを見せた野口二郎は今季4勝目をあげる。
















      *選手交代が機能している大洋打線。












 

2013年9月28日土曜日

16年 阪神vs巨人 1回戦


4月20日 (日) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 阪神 5勝6敗 0.455 若林忠志
0 3 0 0 1 0 0 1 X  5 巨人 8勝1敗 0.889 須田博

勝利投手 須田博     5勝0敗
敗戦投手 若林忠志 2勝3敗

二塁打 (神)堀尾 
三塁打 (巨)平山2

勝利打点 平山菊二 3


平山菊二、攻守に奮闘

 巨人は2回、一死後千葉茂がショートに内野安打、吉原正喜が四球を選んで一死一二塁、平山菊二が右中間に三塁打を放って2点を先制、呉波の左前タイムリーで3-0と試合の主導権を握る。

 巨人は5回、二死後川上哲治が四球を選ぶと二盗に成功、千葉が右前にタイムリーを放って4-0と中押す。

 巨人は8回、一死後平山が右中間にこの日2本目の三塁打、呉の左犠飛で5-0とダメ押す。

 巨人は先制、中押し、ダメ押しと効果的な攻撃で阪神を撃破、平山菊二が4打数2安打2得点2打点三塁打2本、呉波が3打数2安打2打点の活躍を見せた。

 須田博は若林忠志との投げ合いに投げ勝ち、2安打2四球4三振で今季2度目の完封、開幕以来無傷の5連勝を飾る。


 翌日の読売新聞によると「守っても8回森の難邪飛球を好捕した平山の働きは激賞してよい。」とのこと。平山が「塀際の魔術師」と呼ばれるのは戦後のことですが、この頃から塀際のプレーに長けていたことが窺われる記述です。なお、このプレーについてはスコアカードには「好捕」と記述されていないので「ファインプレー賞」は授与されません。これまで「ファインプレー賞」は25個授与されてきましたが、後楽園球場で24個、西宮球場で1個となっています。スコアカードに記載される「好捕」や「好守」等は記録員が判断すると考えられますが、関東の試合は広瀬謙三公式記録員が判定していると考えられるところ、関西の試合では委託先の新聞記者が判定しているものと考えられることから、両者の目線が合っていない可能性があります。







                 *須田博は2安打完封で無傷の5勝目をあげる。













*森国五郎の第三打席、読売新聞によると左邪飛をレフト平山菊二が「好捕」したとのことであるが、スコアカードには「好捕」の記載は認められていない。










 

三冠への道 2013 第21回



 環境依存文字は「⑳」までしか使えないようなので本日は「第21回」とさせていただきます。


 9月26日に全30球団が159試合を終了し、本日も恙無く15試合を挙行して全30球団は160試合を消化、残すところ2試合となりました。アストロズをア・リーグ西地区に移籍させて毎日インターリーグを1試合行って15試合を消化していく作戦は見事に嵌ったようです。


 各地区の優勝が決まり、ナ・リーグのワイルドカードもパイレーツとレッズで決まり、ア・リーグのワイルドカードは明日レイズとインディアンスが勝ってレンジャーズが負ければ決まります。レイズかインディアンスが負ければレンジャーズにもチャンスが残るので最終戦はダルビッシュ有が登板しますが明日決まった場合の登板はあるのでしょうか?


 ダルビッシュが最終戦に登板するか否かは、ア・リーグのサイ・ヤング賞争いにまで影響を与える可能性があります。マックス・シャーザー(21勝(一位)3敗、防御率2.90(五位)、奪三振240(二位)、被打率1割9分8厘(二位)、WHIP0.97(一位))有利は否めないところですが、ダルビッシュ(13勝(十五位タイ)9敗、防御率2.82(四位)、奪三振269(一位)、被打率1割9分3厘(一位)、WHIP1.07(四位))は最終登板でどこまで数字を伸ばせるでしょうか。登板すれば当ブログが課したノルマである「奪三振でシャーザーに30個差を付けること」を達成しますのでまだ可能性は残ります。


 ア・リーグMVP争いはミゲール・カブレラ(551打数191安打(二位)、打率3割4分7厘(一位)、44本塁打(二位)、137打点(二位)、OPS1.078(一位))と、クリス・デービス(581打数167安打(二十位タイ)、打率2割8分7厘(二十位)、53本塁打(一位)、138打点(一位)、OPS1.007(二位))の一騎打ちが最後まで続いています。地区優勝に加えて数字のバランスが良いミギー有利は否めないところですが、クリス・デービスにもチャンスはあります。打率が低くて本塁打・打点の二冠はよくあるパターンで、MVP投票では得票は伸びない傾向にあります。楽天初優勝に貢献したアンドルー・ジョーンズもアトランタ・ブレーブス時代の2005年に51本塁打、128打点で二冠を制しましたが打率は2割6分3厘で、カージナルスのアルバート・プホルス(打率3割3分、41本塁打、117打点)がMVPに輝いています。但し、本塁打、打点共に3位以下を大きく引き離していますのでクリス・デービスの数字は価値が高く、可能性は残ります。プレーオフ進出を逃したオリオールズからの選出は厳しいところではありますが。



 ナ・リーグのサイ・ヤング賞は順当であればドジャースのクレイトン・カーショウ(16勝(三位タイ)9敗、防御率1.83(断トツ一位)、奪三振232(一位)、被打率1割9分5厘(二位)、WHIP0.92(一位))が2011年に続いて2度目の選出となるところですが、当ブログはブレーブスのクローザー、クレイグ・キンブレル(67試合に登板して4勝3敗50セーブ、防御率1.23、66イニングスを投げて奪三振98、被打率1割6分5厘、WHIP0.88)に期待しています。2012年11月17日付けブログ「三冠への道 2012 ⑳」で「ナ・リーグでもアトランタ・ブレーブスのクローザーのクレイグ・キンブレルに一位票が1票入っています。・・・まだ若いキンブレルには2~3年のうちにサイ・ヤング賞が回ってくる可能性があります。」と書かせていただきましたが、早くもチャンス到来です。今年の一位票は昨年の1票よりは増えるのではないかと期待しています。


 ナ・リーグMVP争いはア・リーグ以上に混戦です。ポール・ゴールドシュミット(595打数180安打(四位)、打率3割0分3厘(十一位)、36本塁打(一位)、124打点(断トツ一位)、OPS0.957(一位))が一歩リードしていますが、ダイヤモンドバックスはプレーオフ進出を逃しました。今季快進撃を見せてワイルドガードでのプレーオフ進出を決めているパイレーツのアンドルー・マカッチェン(578打数183安打(三位)、打率3割1分7厘(六位)、20本塁打(二十六位タイ)、83打点(十三位)、OPS0.907(六位))はこの数字では厳しいところですが、盗塁27個(六位)に加えて全米No1の守備が加味されます。終盤にきて調子を落としているのは気になりますが、20年連続負け越しに終止符を打ってワイルドカードを獲得したピッツバーグ・パイレーツをけん引するマカッチェンをMVP候補としたい。大穴に浮上してきたのが地区優勝を決めているカージナルスの核弾頭、マット・カーペンター(619打数199安打(一位)、打率3割2分1厘(三位)、11本塁打(七十五位タイ)、78打点(二十一位タイ)、OPS0.881(九位))です。スタン・ミュージアルが持っていたカージナルス球団の左打者のシーズン二塁打記録53本を抜いて55本に伸ばしてきました。200本安打に乗せてくれば若干ながら可能性が残ります。






 

16年 朝日vs南海 1回戦


4月20日 (日) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 0 0 0 1 1 0 3 朝日 4勝7敗 0.364 山本秀雄
0 0 0 2 3 2 0 0 X 7 南海 3勝6敗 0.333 石田光彦 川崎徳次

勝利投手 川崎徳次 1勝3敗
敗戦投手 山本秀雄 2勝2敗

二塁打 (朝)五味 (南)岩本2
三塁打 (南)鬼頭

勝利打点 岡村俊昭 1

猛打賞 (南)安井鍵太郎 1


南海、継投策ズバリ!

 朝日のレフトは村上重夫で南海のファーストは村上一治、朝日のショートは前田諭治で南海のショートは前田貞行、朝日のサードは鬼頭政一(弟)で南海のレフトは鬼頭数雄(兄、今季朝日から南海に移籍)と今季のこのカードはちょっとややこしいのでご注意ください。


 朝日は2回、先頭の村上重夫が四球で出塁、伊勢川眞澄が送って一死二塁、山本秀雄の遊ゴロの間に村上は三進、前田諭治の遊ゴロをショート前田貞行が一塁に悪送球する間に三走村上が還って1点を先制する。

 朝日は3回、先頭の室脇正信が四球で出塁、南海ベンチはここまで5四球とコントロールが定まらない先発の石田光彦を下げて川崎徳次をリリーフに送り、後続を断つ。

 南海は4回、一死後鬼頭数雄が右前打で出塁、村上一治が四球で歩き、ダブルスチールを決めて一死二三塁、岡村俊昭が右前に逆転の2点タイムリーを放ち2-1とする。

 南海は5回、先頭の国久松一が四球で出塁、安井鍵太郎の一塁線バントが内野安打、岩本義が左翼線に二塁打を放って3-1、鬼頭数雄は二飛に倒れるが、村上一治が死球を受けて一死満塁、岡村の一ゴロはファースト灰山元章から「3-2」と送られて三走安井は本封、前田貞行の左飛をレフト村上重夫が痛恨の落球、三走岩本に続いて二走村上一治も還って5-1とする。

 朝日は6回の守備からライトの室脇がレフトに回り、レフトの村上重夫に代わって内藤幸三が入ってライトの布陣を敷く。

 南海は6回、一死後国久が左前打で出塁、安井も左前打で続き、岩本の三ゴロはサード鬼頭政一がそのままベースを踏んで国久が三封され二死一二塁、ここで鬼頭数雄が右中間にダメ押しの三塁打を放って7-1とする。

 朝日は7回、一死後坪内道則がセンター左にヒット、五味芳夫が右中間にタイムリー二塁打を放って2-7とする。室脇は三飛に倒れるが灰山が死球、鬼頭政一は四球を選んで二死満塁、しかし内藤は遊飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 朝日は8回、一死後山本秀雄が中前打で出塁、前田諭治の投ゴロでランナーが入れ替わり前田が二盗に成功、坪内が四球を選んで二死一二塁、五味が左前に二打席連続のタイムリーを放って3-7と追い上げるが時すでに遅し。中盤に得点を重ねた南海が快勝した。


 南海の勝因は継投策にあった。2回まで4四球の石田光彦が3回先頭の室脇正信脇に5個目の四球を与えたところで川崎徳次にスイッチ、川崎が朝日打線を抑え込んでいる間に逆転した。川崎は7イニングを投げて7安打3四球1死球2三振2失点の投球で今季初勝利をあげる。


 なお、8回表の朝日の攻撃、6点ビハインドの場面で二死一塁から前田諭治が二盗を決めています。一見無謀な走塁に見えるかもしれませんが、この回から南海はキャッチャーの国久松一が本職のセカンドに回り、松本光三郎が開幕二戦目以来のマスクを被りました。松本は開幕戦に満塁ホームランを放ちましたが二戦目の大洋戦で6盗塁を許し、その後マスクは被っていません。朝日ベンチには松本光三郎の肩が弱いというデータがインプットされていたようです。







 *朝日vs南海1回戦のオーダー。今季の両チームには同姓の選手が多いのでご注意ください。














 

2013年9月26日木曜日

16年 大洋vs阪急 1回戦


4月20日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 2 0 1 0 1 2 7 大洋 8勝2敗 0.800 野口二郎
0 0 0 1 0 0 0 0 X 1 阪急 6勝4敗 0.600 浅野勝三郎

勝利投手 野口二郎     3勝1敗
敗戦投手 浅野勝三郎 1勝2敗

二塁打 (大)濃人、佐藤、村松
三塁打 (大)高橋
本塁打 (大)森田 1号 

勝利打点 森田実 1

ファインプレー賞 (大)高橋輝彦 3


森田実、決勝ホームラン

 大洋は2回、二死後森田実がレフトスタンドに先制ホームランを放って1点を先制する。

 大洋は4回、先頭の黒澤俊夫が四球で出塁、高橋輝彦が送って一死二塁、野口二郎の遊ゴロをショート濃人渉がエラー、野口が二盗を決めて一死二三塁、森田実の中犠飛で2-0、佐藤武夫が左前にタイムリーを放って3-0とする。

 阪急は4回裏、先頭の新富卯三郎が左前打、黒田健吾が四球を選び、浅野勝三郎の二ゴロの間に二者進塁、森田定雄の中犠飛で1-3とする。

 大洋は6回、先頭の黒澤が四球で出塁、高橋が送って一死二塁、野口が左前にタイムリーを放って4-1と突き放す。

 大洋は8回、一死後高橋が左中間に三塁打、野口は二飛に倒れるが、森田実の二塁内野安打がタイムリーとなって5-1とする。

 大洋は9回、先頭の村松長太郎が右越えに二塁打、トップに返り苅田久徳の三前バントが内野安打、ファースト森田定雄の悪送球の間に二走村松が生還して6-1、石井豊は遊飛に倒れるが、濃人が左前にタイムリーを放ち7-1として勝負を決める。

 野口二郎は7安打3四球6三振の完投で3勝目をあげる。


 昨年後半から急激に力を付けてきた森田実が2回に放った先制ホームランが決勝打となった。現在、南海の国久松一と大洋の森田実が成長株の双壁でしょう。










                  *野口二郎は7安打完投で3勝目をあげる。















 

2013年9月24日火曜日

殿堂入りしていないベストナイン



 明日は恒例の「昭和20年代野球倶楽部」の会合が開催されます。同会は、「BIBLIO」の店主であるO氏が主宰しており、「野球の記録で話したい」のH氏、スポーツ報知のH記者等、多彩なメンバーが集まり、筆者も毎回参加させていただいております。


 明日のテーマは「野球殿堂」ということで、各人が「こいつを殿堂入りさせろ」の喧々諤々の議論となることは目に見えていますので、当ブログとしても「殿堂入りしていないベストナイン」を発表させていただきます。


左投手 江夏豊
 ピート・ローズの復権が難しいのと同じくらいの確率で江夏の殿堂入りがない理由は皆様ご存知のところだと思います。当ブログは日本野球史上左投手を七人選ぶとしたら守山恒太郎、小川正太郎、内村祐之、嶋清一、荒巻淳、金田正一、江夏豊であると考えており、一人選ぶなら江夏豊であると考えています。七人の内、殿堂入りしていないのは江夏だけとなります。



右投手 森弘太郎
 当ブログの読者であれば、寧ろ森弘太郎は当然殿堂入りしていると思っていた方の方が多いのではないでしょうか。エアポケットに入りこんだように忘れられた存在となっています。



捕手 バッキー・ハリス
 外国人選手の殿堂入りも明日の議論の対象となるのは必至の情勢ですが(笑)、外国人選手殿堂入り第一号はバッキー・ハリスでなくてはならない。



一塁手 森田定雄
 ご存知「最も無名の最強打者」。同じく岐阜商業の松井栄造が殿堂入りしていないのも不思議です。



二塁手 基満男
 理由は至極単純で、筆者がプロ野球史上最も好きな選手だからです。実績からいっても選ばれない理由を探す方が困難でしょう。他にも桜井、国貞、大下、住友と候補は目白押しです。少し前でしたら君島一郎でしたが、「日本野球創世記」を著した功績が認められて2009年に殿堂入りしました。



三塁手 掛布雅之
 順当であれば年齢的にそろそろ順番が回ってくるところですが無理でしょうね。千葉県市川市の中学生であった筆者は習志野高校時代からよく知っています。同級生が「掛布はいい、掛布はいい」と絶叫していました。当時の新聞記事では「テスト生」扱いでしたがドラフト6位になっているのも不思議です。



遊撃手 大橋穣
 ショートの守備に革命を起こした選手として知られていますが亜細亜大学時代は当時の東都記録となる20本塁打を記録するスラッガーでした。1971年10月17日(日)の日本シリーズ第五戦で四人外野をやった際、王貞治の右空間ライナーをキャッチして「史上最長のショートフライ」として知られています。筆者はこの試合を後楽園球場のライトスタンドで観戦しており、目の前で大橋が王のラインドライブをキャッチしたシーンを目撃しました。筆者の角度からは、捕った瞬間大橋が「ニヤリ」としたのが見えました。



外野手 桝嘉一、尾茂田叶、小林茂太
 外野部門の選出が最も簡単でした。すんなりと三人が決まりました。


 桝嘉一の通算IsoDは1.36で、四球の多かった当時でもずば抜けています。

 当ブログでは毎月、月間MVPを表彰していますが、昭和12年~15年の打撃部門で複数回受賞したのは景浦将(2回)、川上哲治(4回)、尾茂田叶(2回)、鬼頭数雄(2回)であり、尾茂田叶は殿堂入りするのが当然の実績を残しています。鬼頭数雄もですが。

 小林茂太の勝負強さは殿堂入りの資格十分です。当ブログが「戦前最強のクラッチヒッター」と呼んでいるのはご存知のところでしょう。











 

ライパチ君の意地



 各地区で続々と優勝チームが誕生していますが、アメリカン・リーグ西地区を連覇したアスレチックスの優勝はレンジャースの敗戦によって決まりました。昨日のレンジャースvsロイヤルズ戦は延長10回裏、ロイヤルズの「八番ライト」ジャスティン・マクスウェルのサヨナラ満塁ホームラン(あちら流に言うとウォーク・オフ グランドスラム)で決まりました。



 マクスウェルは昨年アストロズで18本塁打を記録して注目を集めました。地区優勝を狙える位置にいたカンザスシティ・ロイヤルズは7月31日の期限ぎりぎりでマクスウェルを獲得、期待のスラッガーのはずでしたがこの日は「ライパチ君」での出場でした。マクスウェルは2007年9月11日のメジャー初ヒットが「代打満塁ホームラン」。2009年にもメッツのフランシスコ・ロドリゲスから「ウォーク・オフ グランドスラム」を放っています。劇的な事が好きなようです(笑)。195センチ、106キロ。こういうタイプが大化けしますのでお忘れなく。



 2010年4月4日付けブログ「12年春 セネタースvs名古屋 2回戦」のタイトルも「ライパチ君の意地」でした。セネタースの八番ライト家村相太郎が試合を決める満塁走者一掃の二塁打を放った試合です。当ブログの古くからの読者の方でも覚えてはいらっしゃらないかもしれませんが(笑)。筆者が昭和53年4月、2年の春の東京六大学準硬式野球リーグ戦で、先輩の怪我により対明大1回戦でスタメンに起用された時も「八番ライト」でした。当時六大学準硬式ではNo1のサイドハンドであった明大のエースから第一打席は送りバント、第二打席で右前打を放ってレギュラー獲りの足掛かりにした試合でした。当ブログが「ライパチ君」に注目する理由は、こういった経緯によるものです。最初は誰でも「八番ライト」から始まるものですよね。






 

16年 黒鷲vs名古屋 1回戦


4月20日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 黒鷲     2勝8敗 0.200 長谷川重一
0 0 0 3 2 0 1 0 X  6 名古屋 4勝6敗 0.400 河村章

勝利投手 河村章        2勝0敗
敗戦投手 長谷川重一 0勝4敗

勝利打点 芳賀直一 2

ファインプレー賞 (名)芳賀直一 2、木村進一 1、本田親喜 1


河村章、プロ入り初完封

 3回まで無安打の名古屋は4回、一死後吉田猪佐喜が左前打で出塁、三浦敏一の投ゴロの間に吉田は二進、芳賀直一が左前に先制タイムリーを放って1-0、石丸進一がショートに内野安打、この間に芳賀は好走塁見せて三塁に進む。石丸はこれがプロ入り初ヒットとなって一死一三塁、更にダブルスチールを決めて2-0、河村章の三塁内野安打で二走石丸も一気にホームに還り3-0とする。プロ入り二試合目の出場となった石丸進一はまず脚で魅せた。

 名古屋は5回、先頭の木村進一が四球で出塁、桝嘉一のショートライナーに木村が飛び出してダブルプレー、しかし大沢清が右前打で出塁、吉田猪佐喜の三塁内野安打で二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて4-0、三浦が左前にタイムリーを放って5-0とする。

 名古屋は7回、一死後大沢が右前打で出塁、吉田は捕邪飛に倒れるが、三浦が四球を選んで二死一二塁、芳賀の三ゴロをサード木下政文が一塁に悪送球する間に二走大沢が還って6-0とする。


 河村章は5安打3四球4三振でプロ入り初完封、今季2勝目をあげる。初回、一死後富松信彦に中前打を打たれるが、小島利男の三ゴロは「5-4-3」と転送されてダブルプレー。このプレーにはサード芳賀直一とセカンド木村進一に「ファインプレー賞」が与えられた。3回にはヒットと四球で二死一二塁のピンチを招くがサム高橋吉雄の左翼線へのライナーをレフト本田親喜がファインプレー、「雑記」欄に「好捕」と記録されたこのプレーについて翌日の読売新聞は「高橋の痛打を本田が左翼塀にぶつかって好捕」と伝えている。スコアカードに記載されている「好捕」が読売新聞の記事でも追認された。高橋の記録は「FL-7」で、レフト線ファウルグラウンドへのライナーとなりますが、和訳すると「左邪直」となります。筆者は2010年3月に当ブログ開設以来旧式スコアカードで数万プレーを解読してきましたが、「左邪直」を見たのはこれが初めてです。これまで気付かなかっただけかもしれませんが(笑)。


 昨日の大洋戦で遊撃手としてデビューした石丸進一が4回の第二打席でプロ入り初ヒットを放ち重盗に成功した。今季のルーキーで注目を集めるのは神田武夫と石丸進一となりますが、9月19日付けブログ「16年 南海vs巨人 3回戦」でお伝えしたとおり、神田もプロ入り初ヒットで出塁した場面で盗塁(この時は盗塁失敗)を試みています。神田武夫と石丸進一がプロ入り初ヒットを放って出塁した場面で共に盗塁を試みている、こういう事実を解明できるので、実況中継は辞められない。



          *河村章は黒鷲打線を5安打に抑えてプロ入り初完封を飾る。






*石丸進一は第二打席でプロ入り初安打を放つと、芳賀直一との間でダブルスチールを決めた。






     *名前に「一」の字が入る選手が5人並んだ名古屋打線。





 

2013年9月23日月曜日

54本目の二塁打



 セントルイス・カージナルスのマット・カーペンターが21日のブルワーズ戦で一塁線を抜く二塁打を放ち、今季54本目の二塁打はカージナルスの左打者史上最多記録更新となりました。これまでの記録は1953年にスタン・ミュージアルが記録した53本でした。マット・カーペンターは今季ナショナル・リーグ最多の194安打(21日現在)と大ブレイクしています。MVP争いでも大穴中の大穴です。2011年が1安打、昨年が87安打とこれまでの実績は皆無に等しい訳ですが、この手の選手は向こうにはゴロゴロしていますのでチェックが欠かせません。


 本日のスポニチの小さな記事で知ったので助かったのには感謝していますが、「60年ぶりに球団の二塁打記録を更新」の記事は誤報です。正しくは「左打者の球団新記録」です。右打者では1936年にジョー・メドウイックが64本の二塁打を記録しており、これがカージナルスの球団史上最多二塁打のようです。海外の記事の多くは配信記事を垂れ流しているだけなので、記者諸君にはもう少し自分で勉強する癖を付けるようお願いしたい。


 何故分かったかですが、MLB.comの画面に「Most All-Time by Kardinals Left-Handed Batter」と映し出されており、アナウンサーの「Pass Stan The Man」が聞き取れますのでミュージアルの記録を抜いたことは分かります。更に「1936 by Joe Ducky Medwick」が聞き取れたのでメドウィックの記録を調べてみたら矢張り1936年に64本の二塁打を記録していました。因みに「Ducky」はミドルネームではなく愛称です。アナウンサーの声の全てが聞き取れなくても、単語を押さえておけば意味は理解できる訳です。そもそも単語も知らなければお話になりませんが。「Stan The Man」や「Joe Ducky Medwick」の意味が分からないようではスポーツ記者失格でしょうね。


 ジョー・メドウィックはガスハウスギャングの中心メンバーとして活躍し、1937年にはナ・リーグ三冠王でMVPを獲得しています。ナショナル・リーグでは1937年のメドウィック以降三冠王は誕生しておらず、メドウィックが最後のナ・リーグ三冠王です。







         *1936年に64本の二塁打を記録したジョー“ダッキー”メドウィックの直筆サイン。






 

16年 南海vs阪神 1回戦


4月19日 (土) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 0 0 4 0 0 0 0 6 南海 2勝6敗 0.250 神田武夫
0 0 0 0 1 0 0 2 0 3 阪神 5勝5敗 0.500 藤村隆男 三輪八郎 木下勇 カイザー田中義雄

勝利投手 神田武夫 2勝2敗
敗戦投手 藤村隆男 0勝2敗

二塁打 (南)岡村、岩本 (神)森

勝利打点 岩本義行 1


一番キャッチャー国久

 南海は初回、一番キャッチャー国久松一が四球を選んで出塁、安井鍵太郎の右前打で無死一三塁、岩本義行の遊ゴロで安井が二封される間に三走国久が還って1点を先制する。

 南海は2回、先頭の岡村俊昭が左中間に二塁打、前田貞行の右前打で無死一三塁、柳鶴震の遊ゴロで前田が二封される間に三走岡村が還って2-0とする。南海は1回、2回と同じようなパターンで得点を重ねて試合の主導権を握った。

 阪神は3回から先発の藤村隆男に代えて三輪八郎をマウンドに送る。その三輪は5回に突然乱れた。

 南海は5回、先頭の国久が四球で出塁、安井も四球、岩本は死球で無死満塁、鬼頭数雄の二ゴロをセカンド宮崎剛がホームに悪送球する間に三走国久が還って3-0、阪神ベンチは三輪に代えて三番手として木下勇を投入、村上一治が中前に2点タイムリーを放って5-0、岡村の一ゴロの間に二者進塁し、前田が四球を選んで一死満塁、柳の三ゴロをサード野口昇が失する間に三走鬼頭が還って6-0、神田武夫の投ゴロは「1-2-3」と転送されてダブルプレー。

 阪神は5回裏、二死後森国五郎が右中間に二塁打、トップに返り皆川定之が三塁に内野安打、宮崎が右前にタイムリーを放って1点を返し1-6とする。

 阪神は8回、一死後カイザー田中義雄が中前打で出塁、ジミー堀尾文人が四球を選び、松木謙治郎の一塁内野安打で一死満塁、松本貞一の遊ゴロをショート前田がエラーする間に三走田中が還って2-6、野口に代わる代打土井垣武の二ゴロ併殺崩れの間に三走堀尾が還って3-6、木下に代わる代打若林忠志は投飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪神の9回のマウンドにはカイザー田中義雄の姿があった。ピッチャー木下の代打に出た若林がそのまま四番手とはならず、サード野口の代打に出た土井垣がマスクを被り、サードには比留木虎雄が入り、田中がマスクとプロテクターをかなぐり捨ててマウンドに上がったのである。田中は先頭の岩本を四球で歩かせ、鬼頭の二ゴロをセカンド宮崎が二塁に投げるがセーフ、野選が記録されて無死一二塁、村上の投ゴロを田中が三塁に投げて二走岩本を三封、キャチャー土井垣の二塁牽制が悪送球となって一死二三塁、岡村を浅い右飛に打ち取り二死二三塁、前田を遊ゴロに抑えて、1イニングを無安打1四球無三振無失点に抑える。田中の登板はプロ野球生活ではこの1試合だけなので、通算防御率は0.00である。

 神田武夫は7安打3四球1三振の完投で2勝目をあげる。


 一番キャッチャー国久松一が5打席3打数2安打2四球2得点1盗塁の活躍を見せた。南海のキャッチャーは、開幕戦では松本光三郎がマスクを被り満塁ホームランも放ったが二戦目の大洋戦で6盗塁を許して失脚、三戦目から器用な木村勉がマスクを被ってきたが国久にもお鉢が回ってきた。国久は球界随一の強肩の持主、興国商業時代にもキャッチャー経験があったようで、南海入団後もマスクを被ることがあった。昨年の新聞記事では最も成長が期待される若手の筆頭にあげられていたが順調に育っている。この俊英も昭和17年限りで応召し、戦死することとなる。








*神田武夫が7安打完投で2勝目をあげる。阪神の四番手はカイザー田中義雄です。田中にとって、プロでの唯一の登板機会となりました。













     *一番キャッチャー国久が活躍した南海打線。



















 

2013年9月22日日曜日

" Baseball's Sad Lexicon"




 9月21日付けブログ 「16年 名古屋vs大洋 1回戦」に掲載させていただいたNew York newspaperのコラムニストであったフランクリン・ピアース・アダムスのポエム" Baseball's Sad Lexicon"を英語の達人が翻訳してくれました。


"Baseball's Sad Lexicon"

These are the saddest of possible words:
“Tinker to Evers to Chance.”
Trio of bear cubs, and fleeter than birds,
Tinker and Evers and Chance.
Ruthlessly pricking our gonfalon bubble,
Making a Giant hit into a double –
Words that are heavy with nothing but trouble:
“Tinker to Evers to Chance.”


“哀しき(野球用語)言葉”

これが最も哀しき(野球用語)言葉であろう
“ティンカーからエバースそしてチャンスへ”

鳥よりも速く翔ぶ三匹の子熊は、ティンカーとエバースとチャンス

我々の大きな希望の泡を無情にも潰し、大ヒットを併殺にしてしまうー

言葉は重いが、厄介でしかない
“ティンカーからエバースそしてチャンスへ”



 1900年代初頭、全盛期のシカゴ・カブスとジョン・マグロー率いるニューヨーク・ジャイアンツは強烈なライバル関係にありました。ニューヨークのジャイアンツファンにとって、ジョー・ティンカー、ジョニーエバース、フランク・チャンスの併殺トリオは頭痛の種だった訳です。そんなニューヨークっ子の気持ちをNew York newspaperのコラムニストであったフランクリン・ピアース・アダムスがポエムにしたものです。




 “子熊”とはカブスのことであり、“大ヒット”とはジャイアンツが放つ打球のことです。ジョー・ティンカー、ジョニー・エバース、フランク・チャンスの三人は1946年に揃って殿堂入りしました。W.P.キンセラ著「シューレス・ジョー」(「フィールド・オブ・ドリームス」の原作)には「National Baseball Hall of Fame and Museum」にこのポエムが掲げられていると書かれています。









 

16年 朝日vs巨人 1回戦


4月19日 (土) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 0 0 1 0 0 0 0 3 朝日 4勝6敗 0.400 福士勇
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 巨人 7勝1敗 0.875 澤村栄治 泉田喜義

勝利投手 福士勇     2勝3敗
敗戦投手 澤村栄治 1勝1敗

二塁打 (朝)坪内 (巨)千葉

勝利打点 なし


灰山元章、真の殊勲打

 朝日は初回、先頭の坪内道則が澤村栄治の立ち上がりをとらえて左翼線に二塁打、五味芳夫の記録は一邪飛ですがこれは送りバント失敗でしょう。室脇正信の遊ゴロをショート白石敏男がエラーして一死一三塁、ここで澤村がワイルドピッチを犯して坪内が生還し1点を先制、なお一死二塁から灰山元章が左前にタイムリーを放って2-0として試合の主導権を握る。

 巨人は1回裏、先頭の白石の遊ゴロをショート前田諭治がエラー、白石が二盗を試みるがキャッチャー伊勢川眞澄からの送球にタッチアウト、水原茂が四球で出塁、中島治康の投ゴロで水原は二進、川上哲治が四球を選んで二死一二塁とするが、千葉茂の二ゴロで一走川上が二封されてスリーアウトチェンジ。

 朝日は2回、二死後前田が四球で出塁すると二盗に成功、トップに返り坪内も四球を選ぶが、五味は遊ゴロに倒れる。

 巨人は2回裏、先頭の吉原正喜が中前打で出塁、平山菊二の遊ゴロで吉原は二封、呉波が右前打を放って一死一二塁、しかし澤村は三邪飛、トップに返り白石は三ゴロに倒れてこの回も無得点。

 朝日は3回、先頭の室脇が四球で出塁、巨人ベンチはここで早くも3四球を与えた先発の澤村をあきらめて泉田喜義をリリーフに送り、灰山を三ゴロ併殺に仕留める。

 巨人は3回裏、先頭の水原が四球で出塁するが、中島は捕邪飛、川上は左飛に倒れ、千葉が四球を選んで二死一二塁、しかし吉原が捕邪飛に倒れてスリーアウトチェンジ。3イニング連続で得点圏に走者を進めながらここまで無得点。

 巨人は4回、一死後呉が四球で出塁するが泉田の遊ゴロが「6B-3」と渡ってダブルプレー。

 朝日は5回、一死後五味が四球で出塁、室脇は左飛に倒れるが、五味が二盗に成功して二死二塁、灰山がこの日2本目のタイムリーを右前に放って3-0とリードを広げる。

 巨人は5回裏、先頭の白石が四球で出塁するが、水原は遊ゴロ、中島は二飛、川上は左飛に倒れてこの回も無得点。

 巨人は6回、先頭の千葉が右翼線に二塁打、吉原は三邪飛に倒れるが、平山は四球、呉が中前にタイムリーを放って1-3、泉田は三振に倒れるが、トップに返り白石が四球を選んで二死満塁、しかし水原は左飛に倒れて追加点はならず。

 7回の攻撃で初めて三者凡退に終わった巨人は8回、9回も先頭を四球で出しながら後続を抑えられて今季初の黒星を喫した。

 殊勲の福士勇は4安打10四球1三振の粘りのピッチングで完投、2勝目をあげる。中島を5打数無安打、川上を4打数無安打に抑え込み、巨人は12残塁を記録した。


 本日の勝利打点は「なし」であったが、真の殊勲打は灰山元章が放った2本のタイムリーであった。当ブログでは「勝利打点」をお伝えしていますが、「勝利打点」が「真の殊勲打」とは限らないケースも散見されることは承知しています。但し、昨年の勝利打点王は川上哲治であり、1981年から1988年まで表彰対象となっていた時の勝利打点王にも落合、ブーマー、バース、清原等の最強打者が輝いているという史実が物語るように、「勝利打点」が最強打者の称号とニアリーイコールの関係にあるのも事実です。


 「勝利打点」が抱える矛盾点を解消するには、本日の灰山元章のように「真の殊勲打」を明らかにする必要があります。当ブログではまだ「真の殊勲打」を公表はしていませんが手許のデータには保存しています。いずれ各試合の「真の殊勲打」を公表する時期も来るかもしれません。








              *福士勇は粘りのピッチングで無敗の巨人を破る金星をあげた。












     *灰山元章が「真の殊勲打」を放った朝日打線。

















 

2013年9月21日土曜日

24本目の満塁本塁打



 アレックス・ロドリゲスが通算24本目の満塁本塁打を放ってルー・ゲーリッグと並んでいた通算記録を塗り替えました。バレンティンの56号にはあれ程大騒ぎした日本のマスコミもこちらの記録は全く無視していますので当ブログがお伝えした次第です。“堕ちた偶像”もここまでくると憐憫の情が湧いてくるのが不思議ですね(笑)。今更A-ロッドの記事では広告代も出ないというころでしょうか。


 数々の騒動はさて置き、まだ薬をやっていなかった頃のアレックス・ロドリゲスのスピード感あふれる姿でも思い出しながら芋焼酎でも呑みましょうか。新しいファンの方々には、アレックス・ロドリゲスが40-40をやったことがあると言ってもピンとこないかもしれません。


 ハンク・アーロンの通算本塁打記録を抜くのは確実と言われ、指折り数えて楽しみにしていた頃が懐かしい。当ブログも年をとったものです(笑)。と書いたところでよくよく調べてみたらバリー・ボンズが抜いていましたね。こうやたらと薬漬けだらけだと、どの記録を信じてよいのか混乱するばかりです(笑)。


 ヤンキース移籍がこれほどの厄災を招くとは、“代理人”ナンチャラに騙されたと嘆いてみても後の祭りです。ライトスタンドに持っていった姿は“へっぴり腰”そのもので、体中のバネで右中間スタンドに運んでいた頃の姿は見る影もない。天上のゲーリッグが一番嘆いているのでしょうが。画像はMLB.comのホームページで無料で確認することができます。見ても失望するだけだと思いますのであまりお薦めはしませんが・・・。







*2003年テキサス・レンジャーズ時代のアレックス・ロドリゲスの実使用直筆サイン入りバット、ローリングスです。松ヤニも打撃痕もバッチリですが、価値は暴落しています。












*こちらは1934年に来日した際、日本で残したルー・ゲーリッグのサイン。ジミー・フォックス、ベーブ・ルースと並んでいます。鳴海球場で撮影された報道用写真にサインが入れられたものと考えられます。こちらの価値は永久に不滅でしょう(笑)。














 

16年 名古屋vs大洋 1回戦


4月19日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 名古屋 3勝6敗 0.333 森井茂 西沢道夫
0 0 2 0 0 0 0 0 X 2 大洋    7勝2敗 0.778 浅岡三郎

勝利投手 浅岡三郎 3勝0敗
敗戦投手 森井茂     1勝2敗

勝利打点 高橋輝彦 1

ファインプレー賞 (大)高橋輝彦 2、苅田久徳 1 (名)芳賀直一 1


“百万ドル内野”復活!

 名古屋は2回、先頭の大沢清が右前打、この打球をライト村松長太郎が後逸する間に打者走者の大沢は三塁に進む。吉田猪佐喜は浅い右飛に倒れて一死三塁、服部受弘が中前に先制タイムリーを放って1-0、続く芳賀直一の三ゴロはサード高橋輝彦からセカンド苅田久徳、苅田からファースト石井豊と転送されてダブルプレー、高橋と苅田にはファインプレー賞が授与された。

 大洋は3回、二死後石井が左前打で出塁、濃人渉がストレートの四球を選んで二死一二塁、名古屋先発の森井茂は突然ストライクが入らなくなり黒澤俊夫もストレートの四球で二死満塁、続く高橋は初球を狙い打ちして左前に逆転の2点タイムリーを放ち2-1とする。

 大洋は5回、先頭の黒澤が中前打で出塁、高橋の三ゴロで一走黒澤は二封、続く森田実の三ゴロもサード芳賀が二塁に送球して一走高橋は二封、芳賀の二つ目のプレーに対してファインプレー賞が贈られた。

 浅岡三郎は4回までに5安打を許したが6回以降を無安打1四球無失点に抑え、5安打1四球3三振1失点、自責点ゼロの完投で開幕以来無傷の3連勝を飾る。


 昭和11年のセネタース創設期、サード高橋輝彦、ショート中村信一、セカンド苅田久徳の内野陣は「百万ドル内野」と呼ばれ、「Tinker to Evers to Chance」と並んで日米野球史上最も有名な併殺トリオとして名を残している。昭和11年に高橋輝彦が応召、昭和12年に中村信一が応召して併殺トリオは解消したが、高橋と中村が帰還してようやく態勢が整ってきた。スコアカードに記されている「好守」の文字は、“百万ドル内野復活”を告げているのである。







                  *浅岡三郎は5安打完投で3勝目をあげる。











*大洋2回の守備、一死一二塁から名古屋・芳賀直一の三ゴロは「5-4-3」のダブルプレー。サード高橋輝彦とセカンドド苅田久徳に「ファインプレー賞」が贈られた。









*名古屋5回の守備、無死一塁から高橋輝彦と森田実の三ゴロは何れもサード芳賀直一が一走を二封、二度目のプレーに「ファインプレー賞」が贈られた。








                  「①  好守」を伝える「雑記」欄の記載。









*以下のサインは1900年代初頭のシカゴ・カブスのキーストーン・コンビであるジョー・ティンカーとジョニー・エバースの直筆サインです。何れもPSAからMINT9を得ている極めて状態の良いもので、筆者もこれ以上の状態の両者のサインは見たことがありません。

2008年秋に起きたリーマンショック後のアメリカ経済の崩壊により、メモラビア市場も大打撃を受けてベースボールグッズのオークション市場も閉鎖されました。2009年春、復活第一弾となったアメリカのオークションに出品されたのが以下の2品です。落札価格はそれまでの3分の1程度となり、当ブログが落札しました。ジョー・ティンカーとジョニー・エバースは二人とも早逝しており、残されたサインが少ないことから希少性が極めて高く、本来であれば当ブログが手を出せるような代物ではありません。

日本人はハゲタカどもに国富を略取されるのを常としていますが、ああ言う時は果敢にチャレンジしてアメリカの宝を手に入れるべきでしょう。






 















“Tinker to Evers to Chance”は、New York newspaperのコラムニストであったフランクリン・ピアース・アダムスのポエムです。

"Baseball's Sad Lexicon"

These are the saddest of possible words:
“Tinker to Evers to Chance.”
Trio of bear cubs, and fleeter than birds,
Tinker and Evers and Chance.
Ruthlessly pricking our gonfalon bubble,
Making a Giant hit into a double –
Words that are heavy with nothing but trouble:
“Tinker to Evers to Chance.”


By Franklin Pierce Adams
New York Evening Mail July 12, 1910



 英語は得意ではありませんので意味はよく分かりませんが、タイトルが「悲しき野球用語」なのでニューヨーク・ジャイアンツのファンがライバルであるシカゴ・カブスの併殺トリオの蟻地獄にはまって嘆いている様子を詩っているのではないでしょうか。










 

2013年9月20日金曜日

16年 黒鷲vs阪急 1回戦


4月19日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 黒鷲 2勝7敗 0.222 亀田忠
1 0 0 0 0 1 0 0 X  2 阪急 6勝3敗 0.667 笠松実

勝利投手 笠松実 2勝2敗
敗戦投手 亀田忠 2勝3敗

二塁打 (黒)中河
本塁打 (急)森田定雄 1号

勝利打点 上田藤夫 1

ファインプレー賞 (急)フランク山田伝 1


笠松実、4年ぶりの完封勝利

 黒鷲は初回、二死後小島利男が中前打を放つが、サム高橋吉雄は中飛に終わる。2回、先頭の中河美芳が右中間に二塁打を放つが、木下政文は左飛、清家忠太郎は二飛、山田潔が四球を選んで二死一二塁とするが、亀田忠は右飛に倒れてスリーアウトチェンジ。黒鷲のヒットはこの2本だけであった。

 阪急は初回、先頭の中島喬の三ゴロをサード木下が一塁に悪送球、中島は二塁に進み、フランク山田伝が四球を選んで無死一二塁、上田藤夫が左前にタイムリーを放って1点を先制する。

 阪急は3回、二死後山田伝が左前打から二盗に成功、上田が四球、井野川利春も四球を選んで二死満塁、新富卯三郎は遊ゴロに倒れて追加点は成らず。

 阪急は4回も二死一二塁のチャンスを潰したが6回、先頭の森田定雄が左翼スタンドに第一号ホームランを叩き込んで2-0とする。


 阪急先発の帰還兵・笠松実は3回以降黒鷲打線を無安打に抑え、2安打3四球3三振も完封で2勝目をあげる。笠松の完封勝利は昭和12年4月10日のセネタース戦以来、4年ぶり二度目のこととなる。









              *笠松実は四年ぶりの完封勝利で2勝目をあげる。











 

16年 名古屋vs阪急 3回戦


4月15日 (火) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 1 0 0 1 0 3 名古屋 3勝5敗 0.375 村松幸雄 河村章
0 0 0 4 0 0 2 0 X 6 阪急    5勝3敗 0.625 森弘太郎
勝利投手 森弘太郎 3勝0敗
敗戦投手 村松幸雄 0勝1敗

二塁打 (名)服部

勝利打点 森田定雄 1


阪急バント攻勢

 3回まで無安打の名古屋は4回、先頭の本田親喜が四球で出塁、村瀬一三の一前送りバントをファースト森田定雄がお手玉、犠打エラーが記録されて無死一二塁、桝嘉一は右飛に倒れるが、吉田猪佐喜が中前に先制タイムリーを放って1-0とする。

 阪急は4回、一死後上田藤夫が四球から二盗に成功、井野川利春、新富卯三郎も連続四球で一死満塁、黒田健吾の一塁線スクイズバントが内野安打となって1-1の同点、森田が二前にスクイズを決めて2-1と逆転に成功、なお一死二三塁から伊東甚吉が左前に追撃の2点タイムリーを放って4-1とする。阪急打線は村松幸雄の突然の乱れを見逃さなかった。

 名古屋は5回、先頭の服部受弘が左翼線に二塁打、芳賀直一が左前打を放って無死一三塁、村松に代わる代打岩本章の中犠飛で2-4とする。

 名古屋は先発の村松に代打を出したので5回から河村章をマウンドに送る。

 阪急は7回、先頭の伊東が中前打、森弘太郎の投前送りバントが野選を誘い、トップに返り中島喬の三前バントが内野安打となって無死満塁、フランク山田伝の投前スクイズはピッチャー河村がホームに送球して三走伊東を刺し一死満塁、上田が押出し四球を選んで5-2、井野川利春の左犠飛で6-2と突き放す。

 名古屋は8回、一死後河村が左前打、レフト中島が後逸する間に河村は三塁に進み、木村進一の中前打で3-6とするがここまで。

 森弘太郎は6安打2四球無三振の完投で開幕3連勝を飾る。


 阪急は5安打で6得点をあげた。記録に表れた犠打は2個だけであったが、合計5個のバントを駆使して得点を積み重ねていったと考えられる。


 勝利打点は森田定雄のスクイズに記録されたが、真の殊勲打は伊東甚吉の追撃弾であった。伊東は7回にも追加点のきっかけとなる中前打を放っている。滝川中学時代から名二遊間コンビと謳われた田中幸男と共に阪急に入団して三年目、伊東は今季限りで応召し、戦死することとなる。








             *森弘太郎は6安打完投で開幕から無傷の3連勝を飾る。














*伊東甚吉が真の殊勲打を放った阪急打線。記録に表れた犠打は2個であったが5つのバント攻勢を見せたと考えられる。











 

2013年9月19日木曜日

16年 南海vs巨人 3回戦



4月15日 (火) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 2 0 0 2 南海 1勝6敗 0.143 神田武夫
0 1 0 1 0 1 0 0 X 3 巨人 7勝0敗 1.000 中尾輝三

勝利投手 中尾輝三 2勝0敗
敗戦投手 神田武夫 1勝2敗

三塁打 (巨)平山

勝利打点 平山菊二 2


中尾輝三、先輩の意地

 巨人は中尾輝三、南海は神田武夫が先発。京都商業の先輩と後輩による投げ合いとなった。


 巨人は2回、二死後吉原正喜が三遊間を破って出塁、平山菊二が左中間に三塁打を放って1点を先制する。

 南海は3回、先頭の神田が左翼線にヒット、神田はここまで代打も含めて9打席9打数無安打であったが10打席目にプロ入り初ヒットを放った。国久松一の打席で神田が二盗を試みるがキャッチャー吉原の強肩の前にタッチアウト。国久は中飛、安井鍵太郎が四球を選ぶが、鬼頭数雄は二飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 巨人は4回、一死後吉原の遊ゴロをショート柳鶴震がエラー、平山菊二の中前打で一走吉原が三塁に向かい、センター岩本義行からの三塁送球はタイミングはアウトであったが悪送球となって一死二三塁、呉波の中犠飛で2-0とする。

 巨人は6回、先頭の川上哲治が中前打、千葉茂の一ゴロをファースト村上一治が二塁に送球するがセーフ、野選が記録されて無死一二塁、吉原の左前打で無死満塁、平山の遊ゴロ併殺の間に三走川上が還って3-0とする。

 南海は7回、一死後岡村俊昭の三ゴロをサード水原茂がエラー、柳に代わる代打前田貞行が中前打、神田は三振に倒れて二死一二塁、トップに返り国久の中前打で二走岡村がホームインするがセンター呉からの返球が悪送球となる間に一走前田も還って2-3とし、打者走者の国久も三塁に進んで二死三塁、しかし安井は二飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 中尾輝三は8回の一死一二塁のピンチも凌いで5安打3四球3三振2失点、自責点ゼロの完投で2勝目をあげる。神田武夫は8回を完投して7安打3四球無三振3失点であった。ここは先輩の中尾が意地を見せた。

 神田武夫がプロ入り初ヒットを放って一塁に出塁し、二盗を試みて失敗した事実は本日初めて明かされた史実です。何らかの記録集で神田武夫の盗塁失敗の記録を見つけたとしても、それがプロ入り初ヒットの場面のものであったことはスコアカードから掘り起こしていかなければ判明しません。神田武夫の運命については当ブログの読者であればご存知の方が多いと思いますのでここでは省きますが、何事にも手を抜かない生真面目な性格であったことが読み取れます。休めと言われて休むような男ではなかったことだけは間違いない。








   *中尾輝三は5安打完投で京都商業の後輩である神田武夫に投げ勝ち先輩の意地を見せる。















     *神田武夫は第一打席でプロ入り10打席目にして初ヒットを放つが盗塁に失敗する。