2012年5月31日木曜日

14年 最高殊勲選手



 昭和14年11月15日付け読売新聞は最高殊勲選手にスタルヒンが選出されたことを伝えている。

 候補者5名の無記名投票の結果、スタルヒン9票、若林忠志8票、鶴岡一人7票、苅田久徳5票、川上哲治5票となり、スタルヒンと若林忠志のどちらを選出するかについて3時間にわたる再審議を行い、決戦投票の結果、スタルヒン5票、若林忠志3票となってスタルヒンが選出されたとのことである。

 スタルヒンは今季42勝を記録したが若林とは大接戦となった。当ブログで選定しいる月間MVPでも今シーズンはスタルヒンは一度も選出されていない。因みに昭和13年秋季はスタルヒンが3カ月連続で選出されている。当ブログが最高殊勲選手を選出するならば、千葉茂としたい。千葉は今季354打数108安打60得点51打点、打率3割5厘、OPS0.787。川上の打率3割3分8厘、OPS0.897と比べると数字的には落ちるが、四死球が川上の38個に対して70個であるように、打つだけの川上と違い何とかしてくれる信頼度の高いプレイヤーである。



       *昭和10年第二次アメリカ遠征時のスタルヒンのサイン。






*千葉茂のサイン入り写真。どこかのホテルで蕎麦を挽いているようです。カツカレーの生みの親でもあるグルメ千葉らしい写真です。


2012年5月30日水曜日

14年 11月 月間MVP


月間MVP

投手部門

 イーグルス 望月潤一 1

 今月は約2週間の短期決戦で突出した投手が不在の混戦となった。

 最多勝のスタルヒンは6試合に登板して5勝1敗で防御率2.10、WHIP1.07、奪三振率4.59。但し後半4試合では防御率2.97、WHIP1.20、後半3試合では防御率3.67、WHIP1.30と徐々に悪化している。スタルヒンが本調子にないのは明白であり、受賞対象からは除外された。

 若林忠志は5試合に登板して3勝2敗で3完封、防御率1.09、WHIP1.17、奪三振率2.39。3完封は光るが負けた2試合は野口二郎と延長11回を投げ合った試合と優勝をかけたジャイアンツ戦であり、受賞対象からは除外された。

 野口二郎は6試合に登板して3勝2敗で2完封、防御率3.15、WHIP1.43、奪三振率3.71。調子を崩しているのは明白であり、受賞対象からは除外された。

 中山正嘉は6試合に登板して2勝2敗で1完封、防御率3.09、WHIP1.25、奪三振率7.26。奪三振率が突出しているが防御率は悪い。

 望月潤一は4試合に登板して2勝2敗、防御率1.59、WHIP1.47、奪三振率2.91。WHIPは悪いが防御率がいい。望月のピッチングは四球が多いが打線の援護がないのでランナーを出しながらも得点を許さないピッチングが身に付いている。安定した投球が光っており望月の受賞となった。昭和13年7月に浅岡三郎が受賞した時と状況は酷似している。望月は昭和14年を代表する上記4投手に比べて力は落ちるかもしれないが、4人が調子を崩している間、安定したピッチングを続けてきたことからチャンスを掴んだものである。



打撃部門

 セネタース 尾茂田叶 1

 尾茂田叶は今月8試合に出場して32打数14安打4得点7打点、二塁打4本、本塁打2本、打率4割3分8厘、OPS1.264。

 大沢清は打率4割2分1厘、OPS1.266。優勝に貢献した千葉茂は打率3割3分3厘、OPS0.967。月間首位打者の鬼頭数雄は打率4割7分4厘、OPS0.974。景浦将は打率4割、OPS1.004。いずれも尾茂田を凌ぐ数字とは認められず、尾茂田叶の受賞となった。




 望月潤一、尾茂田叶ともに今季を最後に兵役に就き、生き抜いて帰還するがプロの世界に戻ってくることはなかった。






2012年5月28日月曜日

14年 第25節 週間MVP


 今節はジャイアンツが2勝0敗1分、名古屋が1勝0敗1分、イーグルスが3勝1敗、タイガースが3勝1敗、セネタースが2勝1敗1分、阪急が1勝3敗、南海が0勝1敗2分、金鯱が0勝1敗1分、ライオンが0勝4敗であった。



週間MVP

投手部門

 セネタース 野口二郎 6

 今節4試合に登板して2勝0敗2完封。21回3分の1を投げて失点はゼロであった。


 タイガース 若林忠志 6

 今節3試合に登板して2勝0敗1セーブ。20回を投げて失点はゼロであった。


 イーグルス 望月潤一 1

 今節2試合に登板して2勝0敗。打線に恵まれず今季は7勝に終わったが二桁勝利の実力がある。



打撃部門

 タイガース 景浦将 3

 今節17打数9安打2得点1打点二塁打1本。


 セネタース 尾茂田叶 2

 今節17打数9安打3得点5打点二塁打3本、本塁打1本。








殊勲賞

 イーグルス 亀田忠 2

 13日のライオン11回戦で自身6度目の1安打ピッチング。



敢闘賞

 南海 宮口美吉 1

 11日のセネタース12回戦で延長11回を投げ抜き無失点に抑え引き分ける。


 イーグルス 岩垣二郎 1

 今節15打数4安打2得点4打点2四球2盗塁、本塁打2本。前節の週間MVPに続き猛打を見せる。



技能賞

 ジャイアンツ 吉原正喜 1

 優勝を決めた9日の南海12回戦9回裏、二死無走者でセーフティバントを決めてスタルヒンのサヨナラ打でサヨナラのホームを踏む。


 ライオン 鬼頭数雄 1

 今節4連敗のライオンで15打数7安打と孤軍奮闘。



2012年5月27日日曜日

14年 ジャイアンツvs名古屋 12回戦


11月16日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11  計
1 0 0 2 0 0 0 0 0  0   0   3 ジャイアンツ 66勝26敗4分 0.717 中尾輝三 スタルヒン
0 0 0 0 1 0 2 0 0  0   0   3 名古屋         38勝53敗5分 0.418 松尾幸造 西沢道夫


二塁打 (名)大沢2


今季最終戦は引分け


 ジャイアンツは初回、先頭の水原茂が左翼線にヒット、平山菊二は中飛に倒れるが千葉茂の二ゴロの間に水原が二進、中島治康の右前打で一死一三塁、川上哲治の中前タイムリーで1点を先制する。


 ジャイアンツは4回、先頭の川上が中前打で出塁、三田政夫が四球を選び、井上康弘が左前にタイムリーを放って2-0、二走三田はキャッチャー三浦敏一からの牽制に刺されるが吉原正喜が死球を受けて一死一二塁、中尾輝三が四球を選んで一死満塁、トップに返り水原の一ゴロで三走井上は本封、平山の遊ゴロをショート村瀬一三が失する間に吉原が還って3-0とする。


 名古屋は5回から先発の松尾幸造に代えて西沢道夫をマウンドに送り込む。


 名古屋は5回、一死後桝嘉一が左翼線にヒット、村瀬の二ゴロをセカンド千葉が失して一死一二塁、大沢清は三振に倒れるがダブルスチール後、加藤正二が四球を選んで二死満塁、吉田猪佐喜が押出し四球を選んで1-3とする。

 ジャイアンツは6回から先発の中尾輝三に代わってスタルヒンがマウンドに上る。


 名古屋は7回、先頭の桝嘉一の三ゴロをサード水原が一塁に悪送球、村瀬の右前打で一死一二塁、ここで大沢が右中間に同点の2点タイムリー二塁打を放って3-3に追い付く。


 その後は西沢道夫、スタルヒンの投げ合いが続き昭和14年の公式戦は延長11回引分けで幕を閉じた。


 ジャイアンツのスターティングラインナップに三田政夫と井上康弘が名前を連ねていることを奇異に感じた読者の方もいらっしゃることでしょう。理由は簡単で、三田と井上はシーズン終了後兵役に就くこととなります。藤本定義監督の計らいで最終戦のスタメン起用となったのでしょう。今シーズン終了後、各チームの主力選手が大量に戦地に送り込まれます。ジャイアンツは主力が温存され、三田と井上が戦場に赴くこととなります。ジャイアンツの第一期黄金時代はこうした背景によるものであることは歴史的事実です。そこに元高級官僚であった正力松太郎の介入があったのか否か。筆者はこれが偶然であったなどど言う程の偽善者でもなければ単純でもありません。






*今季最終戦はスタルヒンと西沢道夫が締めて延長11回引分けに終わった。








*今季最終戦のジャイアンツのオーダー。藤本定義監督の計らいで応召直前の三田政夫と井上康弘がスタメンに名を連ねている。二人ともプロでの最後の試合であった。三田は戦死することとなる。








        *名古屋の最終戦のオーダー。










14年 タイガースvsセネタース 12回戦


11月16日 (木) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 1 0 0 0 0 2 タイガース 63勝30敗3分 0.677 木下勇 若林忠志
0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 セネタース 49勝38敗9分 0.563 浅岡三郎 野口二郎

勝利投手 木下勇     4勝3敗
敗戦投手 浅岡三郎 9勝8敗
セーブ      若林忠志 2

二塁打 (タ)景浦、門前、伊賀上、皆川 (セ)尾茂田

有終の美

 タイガースは初回、二死後景浦将が左中間に二塁打、続く門前真佐人も左中間を抜く二塁打を連発して1点を先制する。

 タイガースは5回、先頭の木下勇が四球で出塁、トップに返り松木謙治郎が左前打を放って無死一二塁、ジミー堀尾文人の遊ゴロは「6-4-3」と渡って二死三塁、景浦が左前にタイムリーを放って2-0とする。

 セネタースは7回、先頭の尾茂田叶が左中間に二塁打、野口二郎の遊ゴロの間に三進、浅岡三郎の遊ゴロの間に尾茂田が生還して1-2とする。

 セネタースは8回無死一二塁の場面で野口二郎がマウンドに上がり後続を抑える。タイガースも8回から若林忠志がマウンドに上がり2イニングを抑えて当ブログルールによりセーブが記録される。

 応召を控えた最後のゲームで景浦将は4打数4安打1得点1打点二塁打1本の猛打を見せた。景浦が次にプロ野球の場に姿を見せるのは昭和18年のこととなる。その後二度目の兵役で戦死することとなる。同じく応召を控える尾茂田叶は4打数2安打1得点二塁打1本。尾茂田は戦地で病を得るも生き延びるがプロに復帰することはなく、この試合がプロでの最後の試合となった。この二人の最終節の打棒は凄まじい。アスリートとしての生存本能であろうか。






*若林忠志と野口二郎は好リリーフを見せて今シーズンの有終の美を飾った。









       *タイガース最終戦のオーダー。









       *セネタース最終戦のオーダー。







14年 金鯱vs阪急 12回戦


11月15日 (水) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8  9  計
3 0 0 0 0 0 1 0  0  4 金鯱 36勝56敗4分 0.391 古谷倉之助 中山正嘉 古谷倉之助
0 0 0 0 2 0 0 0 3X 5 阪急 58勝36敗2分 0.617 森弘太郎 重松通雄

勝利投手 重松通雄 13勝12敗
敗戦投手 中山正嘉 25勝21敗

二塁打 (阪)伊東
三塁打 (金)野村、小林利
本塁打 (金)小林利 4号

阪急最終戦にサヨナラ勝ち

 金鯱は初回、先頭の濃人渉の二飛をセカンド伊東甚吉が落球、一死後野村高義が右中間に三塁打を放って1点を先制、続く小林利蔵が左翼スタンドに第4号ツーランホームランを叩き込んで3-0とする。

 阪急先発の森弘太郎はその後も毎回ヒットを許すが無失点に食い止める。阪急は6回から重松通雄がリリーフとしてマウンドに上る。

 金鯱先発の古谷倉之助は4回まで阪急打線を日比野武の中前打1本に抑えて無三振ながらのらりくらりとかわしてきた。

 阪急は5回、先頭の土肥省三が左前打で出塁、石井武夫の右前打で無死一三塁、伊東が右中間に2点タイムリー二塁打を放って2-3とする。

 金鯱は7回、先頭の瀬井清が三塁に内野安打、サード土肥の一塁送球が悪送球となるミスが重なって瀬井が二塁に進み無死二塁、五味芳夫の右翼線タイムリーで4-2と突き放す。この1点で勝負あったかと思われたが9回に波乱が待っていた。

 阪急は9回、先頭の山下好一が四球を選んで出塁、代走に石田光彦を起用、金鯱はここでファーストの中山正嘉がマウンドに上がり古谷はファーストに回る。しかし中山はストライクが入らず土肥、石井が連続四球を選んで無死満塁、伊東に代わる代打浅野勝三郎の中犠飛で3-4として二走土肥もタッチアップから三塁に進み、石井が二盗を決めて一死二三塁、日比野が中前に同点タイムリーを放って3-3、金鯱ベンチはここで再び古谷をマウンドに送り中山をファーストに戻す。重松が四球を選んで一死満塁、トップに返り西村正夫の一ゴロで三走石井は本封されて二死満塁、フランク山田伝が右前にサヨナラヒットを放って阪急が最終戦にサヨナラ勝ち。翌日の読売新聞によると山田の当りは一旦ライト小林茂太のグラブに収まったかに見えたがポロリと落とし記録はヒットになったとのことである。







       *金鯱の最終戦のオーダー










       *阪急の最終戦のオーダー




2012年5月26日土曜日

14年 イーグルスvsライオン 12回戦


11月15日 (水) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 0 0 0 0 0 1 0 3 イーグルス 29勝65敗2分 0.309 望月潤一
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 ライオン      33勝58敗5分 0.363 菊矢吉男


勝利投手 望月潤一    7勝27敗
敗戦投手 菊矢吉男 16勝21敗


二塁打 (ラ)水谷、室井
本塁打 (イ)岩垣 2号


望月潤一7安打完投で7勝目


 南海は既に全日程を終了しているが残る8チームは今日と明日の4試合で今季最終戦を戦うこととなる

 イーグルスは初回、先頭の岩垣二郎がライトスタンドに先頭打者ホームラン。岩垣はこのところ奇跡的大当たりを続けている。翌日の読売新聞は「イ軍の先頭岩垣が第二球を右翼に本塁打したのは試合の機先を制するものとして全局に及ぼす影響頗る良好であった。」と伝えている。


 イーグルスは2回、先頭の木下政文が右前打で出塁、望月潤一は右邪飛に倒れるが伏見五郎が中前打、山田潔が四球を選んで一死満塁、トップに返り岩垣が押出し四球を選んで2-0とする。初回のホームランがここでも効いたようだ。続く太田健一の当りは一直となり岩垣が戻れずダブルプレー。


 ライオンは4回、先頭の室井豊が右中間に二塁打、坪内道則、西端利郎が連続四球を選んで無死満塁、井筒研一の左犠飛で1-2、しかし松岡甲二は三振、菊矢吉男は一飛に倒れる。ライオンはここで望月を攻略できなかったことが敗因となった。


 イーグルスは8回、二死後杉田屋守の遊ゴロをショート松岡がエラー、木下の右前打をライト水谷則一が後逸する間に杉田屋が長駆ホームに還り3-1とする。


 ライオン先発の菊矢吉男は9回を完投して5安打3四球5三振の好投であったが、最後のイーグルス二連戦を亀田と望月の前に敗れ去った。

 イーグルス先発の望月潤一は初回先頭の水谷に左翼線二塁打許すが後続を抑え、2回は先頭の坪内に四球を与えボークで二進させて西端の遊ゴロで杉田屋は三進、井筒研一に四球を与えて一死一三塁のピンチを迎えるが松岡がスクイズを空振りして杉田屋を三本間に挟殺してピンチを逃れた。3回は一死後水谷に四球を与えるが後続を抑え、4回は上記のとおり。5回は二死後秋季シリーズ首位打者の鬼頭数雄に右前打を許すが四番室井を一邪飛に仕留める。6回は坪内三ゴロ、西端三ゴロ、井筒は遊ゴロで得意のドロップがよく切れているようだ。


 7回、先頭の松岡が右前打、菊矢を右飛に打ち取るがトップに返り水谷が中前打、玉腰年男を三振に打ち取り二死一二塁、鬼頭が左前打を放つと二走松岡は三塁ベースを蹴ってホームに向かうがレフト岩垣からのバックホームにタッチアウト。バッティングが好調だと守備にも好影響を与える。8回は三者凡退。9回、井筒に代わる代打近藤久は遊ゴロ、松岡に代わる代打伊藤吉男に左前打を許し代走に鈴木秀雄を起用、菊矢の三ゴロで二死二塁、最後は水谷を二ゴロに打ち取る。


 望月潤一は7安打5四球3三振1ボーク1失点、自責点1の完投で7勝目をあげる。望月はシーズン終了後応召し、この試合がプロでの最後の登板となった。戦地ではフィリピンに帰ったアチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)と交流があり、帰還した戦後はスタルヒンとも交流を持つ。淡路島に住み瀬戸内少年野球団を指導し、兵庫県立洲本高校の指導者となって昭和28年の洲本高校センバツ初出場初優勝の礎を築くこととなる。この大会には望月の母校である早稲田実業も出場し1回戦で土佐高校に敗れている。その土佐を2回戦で破ったのが初出場の銚子商業であり銚子商業を準々決勝で破った小倉高校を洲本が準決勝で破り、決勝では浪華商業を4対0で降して初出場初優勝を飾った。

 望月の相棒・キャッチャーの伏見五郎は今季限りでプロ野球から去り地元に帰って函館大洋倶楽部でプレーすることとなり、後に応召して戦死することとなる。伏見五郎の父・伏見勇蔵は函館大洋倶楽部中興の祖として知られている。郁文館中学時代には野球選手として鳴らし、夏目漱石の「吾輩は猫である」にも登場する。





               *望月潤一は7安打完投で7勝目をあげる。








       *今季最終戦となったイーグルスのオーダー。









       *今季最終戦となったライオンのオーダー。





14年 阪急vsタイガース 12回戦

11月13日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0   0  阪急         57勝36敗2分 0.613 重松通雄 石田光彦
2 0 1 3 2 0 0 3 X 11 タイガース 62勝30敗3分 0.674 若林忠志

勝利投手 若林忠志 29勝7敗
敗戦投手 重松通雄 12勝12敗

二塁打 (タ)松木、若林
本塁打 (タ)堀尾 7号

若林忠志今季7度目の完封

 タイガースは初回、先頭の松木謙治郎が右中間に二塁打、ジミー堀尾文人がライトスタンドに第7号先制ツーランを叩き込んで2点を先制する。堀尾は元来スイッチヒッターであったが日本のプロ野球では右で打っていたと伝えられているので右の重松通雄の下手投げを流し打ったものでしょう。

 タイガースは3回、二死後堀尾が四球を選んで出塁、景浦将の右前打で二死一三塁、門前真佐人が左前にタイムリーを放って3-0とする。

 タイガースは4回、先頭の岡田宗芳が三塁に内野安打、若林忠志の左前打で無死一二塁、皆川定之の一ゴロをファースト浅野勝三郎が一塁ベースカバーに入ったピッチャー重松にトスするがこれが悪送球となる間に二走岡田が還って4-0としてなお無死二三塁、トップに返り松木の左犠飛で5-0、堀尾の中前タイムリーで6-0とリードを広げる。

 タイガースは5回、一死後伊賀上良平が右前打で出塁、岡田は捕邪飛に倒れるが若林の右前打で二死一三塁、富松信彦の一ゴロをファースト浅野がこの日2個目のエラーする間に伊賀上が還って7-0としてなお二死二三塁、皆川が四球を選んで二死満塁、松木が押出し四球を選んで8-0とする。

 阪急先発の重松通雄は5回で降板、6回から二番手に石田光彦がマウンドに上る。

 タイガースは8回、先頭の景浦が左前打で出塁、門前の四球で無死一二塁、伊賀上の三ゴロは「5-4-3」と渡って二死三塁、岡田が死球を受けて二死一三塁、若林が右中間に2点タイムリー二塁打を放って10-0、富松は四球、皆川が左翼線にタイムリーを放って11-0とする。

 阪急打線は9安打を放ち6四球を得ているが14残塁で零敗する。0対3で迎えた4回、先頭の浅野が左前打で出塁するが盗塁失敗でチャンスを潰した。翌日の読売新聞によるとこの場面では「上田がバントを試みたのでスタンドから“何点とられているのだ?”と皮肉を浴せかけられた」とのこと。ジャイアンツとタイガースは気力を振り絞っているのがスコアカードからも読み取れるが、どうも阪急はシーズン終盤は気力が失せてしまったようだ。

 若林忠志は9安打6四球3三振、今季7度目の完封で29勝目をあげる。



               *若林忠志は今季7度目の完封で29勝目をあげる。








14年 ライオンvsイーグルス 11回戦

 
 
11月13日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 ライオン    33勝57敗5分 0.367 菊矢吉男
0 0 0 1 0 0 0 0 X  1 イーグルス 28勝65敗2分 0.301 亀田忠

勝利投手 亀田忠     15勝27敗
敗戦投手 菊矢吉男 16勝20敗

亀田忠通算6度目の1安打ピッチング

 イーグルスは4回、先頭の亀田忠は捕邪飛に倒れるが中河美芳が二遊間に内野安打、杉田屋守の投ゴロの間に中河が二進、木下政文は四球を選んで一死一二塁、伏見五郎の当りはショートへの内野安打、三塁に達した中河がホームを狙い、ショート山本尚敏からのバックホームが悪送球となる間に中河が生還して1点を先制する。この得点が両チーム唯一の得点となった。

 ライオン先発の菊矢吉男は初回、先頭の岩垣二郎に右前打を許し太田健一、亀田に四球を与えて一死満塁のピンチを迎えるが中河を二ゴロ併殺に打ち取る。2回は木下に四球を与えただけで3回は三者凡退。5回も三者凡退、6回は亀田に三塁内野安打を許すが杉田屋を二ゴロ併殺に打ち取る。7回、8回も三者凡退で結局8回を完投して4安打4四球3三振1失点、自責点ゼロの好投であった。

 イーグルス先発の亀田忠が快心のピッチングを見せた。初回は鬼頭数雄に、2回は西端利郎に四球を許すが無安打。3回、4回は三者凡退。5回は山本に四球を与えるが無安打、6回は三者凡退でここまで無安打無得点。7回、先頭の室井豊の三ゴロをサード木下がエラー、一死後西端に四球を与えて一二塁、井筒研一に代わる代打近藤久に右前に初安打を許して一死満塁とするが山本、菊矢を連続三振に仕留める。8回も三者凡退、9回は室井を三飛、坪内道則を三振、最後は西端に代わる代打鈴木秀雄を三振に仕留める。

 亀田忠は1安打4四球11三振、今季4度目の完封で15勝目をあげる。亀田の1安打ピッチングは通算6度目となる。相手投手が菊矢吉男だったのは昭和13年5月28日のライオン2回戦以来2度目のこととなる。今季はこの試合が初めての1安打ピッチングであるが5月25日のライオン4回戦は2安打完封、8月3日の金鯱7回戦は無安打1失点、10月8日の金鯱10回戦は2安打1失点をやっている。



     *亀田忠は通算6度目の1安打ピッチングで今季15勝目をあげる。




        *亀田忠に1安打に抑え込まれたライオン打線。

2012年5月24日木曜日

14年 ジャイアンツvsタイガース 12回戦


11月12日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 1 0 4 0 0 0 0 6 ジャイアンツ 66勝26敗3分 0.717 スタルヒン
0 0 0 1 0 2 0 0 1 4 タイガース    61勝30敗3分 0.670 西村幸生 三輪八郎

勝利投手 スタルヒン 42勝15敗
敗戦投手 西村幸生  11勝9敗

二塁打 (ジ)中島、リベラ (タ)伊賀上
三塁打 (ジ)白石
本塁打 (タ)堀尾 6号

スタルヒン42勝目!  

 既にジャイアンツの優勝が決定した後のジャイアンツvsタイガース最終戦。スタルヒンvs西村幸生の対決となった。

 ジャイアンツは初回、先頭の白石敏男の三ゴロをサード伊賀上良平が一塁に悪送球する間に白石は二塁に達し、平山菊二の遊ゴロをショート皆川定之が失して無死一三塁、千葉茂が右前にタイムリーを放って1点を先制する。中島治康は中飛に倒れて一死一二塁、川上哲治の中飛に二走平山が飛び出しセンタージミー堀尾文人からの返球に戻れずダブルプレー。

 ジャイアンツは3回、二死後平山の遊ゴロを又も皆川がエラー、白石が二盗を決めて千葉は四球で二死一二塁、中島が左前にタイムリーを放って2-0とする。

 タイガースは4回、先頭の門前真佐人が中前打で出塁、伊賀上が左中間にタイムリー二塁打を放って1-2とする。

 ジャイアンツは5回、先頭のスタルヒンの当りはピッチャー西村が弾くがバックアップのセカンド岡田宗芳が捌いてワンアウト。トップに返り白石が左中間に三塁打、平山は一邪飛に倒れるが千葉がこの日2本目のタイムリーを右前に放って3-1、中島が左翼線に二塁打を放ち川上哲治四球で二死満塁、このチャンスにアチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)がセンター右奥に走者一掃の二塁打を放って6-1とリードを広げる。西村幸生はここで降板し、二番手として三輪八郎がマウンドに上る。

 タイガースは6回、先頭の伊賀上が遊撃内野安打、岡田が四球を選んで無死一二塁、森国五郎の捕ゴロの間に二者進塁して一死二三塁、皆川が四球を選んで一死満塁、三輪の投ゴロの間に三走伊賀上が還って2-6、トップに返り松木謙治郎の遊撃内野安打で岡田が還り3-6とする。

 タイガースは9回、二死後堀尾が左翼スタンドに第6号ホームランを放って4-6とするが最後は景浦将が中飛に倒れる。

 スタルヒンは8安打5四球5三振、4失点ではあったが完投で42勝目をあげる。戦後になって紆余曲折はあったがこの42勝は昭和36年に稲尾が記録した42勝と並んで日本記録として残っている。  タイガースの初代エースとして君臨してきた西村幸生はこの日の登板がプロでの最後の登板となった。最後はリベラに満塁走者一掃の二塁打を打たれた。西村はこの後満州に渡り、終戦直前に召集されて戦死することとなる。今季限りでフィリピンに帰国するリベラの消息は長く不明であったが、フィリピン独立義勇軍に参加して日本との戦いで戦死したと伝わっている。




*スタルヒンは8安打完投で42勝目をあげる。この試合が西村幸生のプロでの最後の登板となった。








2012年5月23日水曜日

14年 ライオンvsセネタース 12回戦


11月12日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 ライオン     33勝56敗5分 0.371 福士勇 近藤久
2 0 0 0 2 1 1 1 X  7 セネタース 49勝37敗9分 0.570 野口二郎

勝利投手 野口二郎 33勝19敗
敗戦投手 福士勇    12勝19敗

二塁打 (セ)尾茂田
三塁打 (セ)浅岡

野口二郎8度目の完封

 セネタースは初回、先頭の苅田久徳が二遊間に内野安打、浅岡三郎が四球を選んで無死一二塁、尾茂田叶が中前に先制タイムリーを放って1-0として浅岡も三塁に進み無死一三塁、野口二郎の遊ゴロ併殺崩れの間に浅岡が還って2-0とする。

 ライオンは3回から先発の福士勇に代えて近藤久がマウンドに送り込む。

 セネタースは2回~4回も毎回走者を出すが無得点。5回、一死後苅田が四球を選んで出塁、浅岡が右中間に三塁打を放って3-0、尾茂田が左前にタイムリーを放って4-0とリードを広げる。

 セネタースは6回、先頭の横沢七郎の遊ゴロをショート山本尚敏が一塁に悪送球する間に横沢は二塁に進む。村松長太郎、織辺由三は連続して中飛に倒れるが苅田の三塁内野安打で横沢が還り5-0とする。

 セネタースは7回、先頭の尾茂田が右前打、野口の三ゴロをサード井筒研一がエラー、柳鶴震の右前打で二走尾茂田が三塁ベースを蹴ってホームに向かい、ライト水谷則一からのバックホームが悪送球となる間にホームインして6-0、記録はワンヒットワンエラー。

 セネタースは8回、一死後浅岡の投ゴロをピッチャー近藤が一塁に悪送球、尾茂田の右中間二塁打が本日3本目のタイムリーとなって7-0、更に野口の遊ゴロをショート山本がエラー、柳の遊ゴロは「6-4-3」と渡ってダブルプレー。

 野口二郎は6安打2四球無三振、今季8度目の完封で33勝目をあげる。好調尾茂田叶が3本のタイムリーを放ち5打数4安打1得点3打点の活躍。

 悪い時のパターンでライオンは6失策を記録して自滅した。鬼頭数雄が4打数3安打で秋季シリーズ通算116打数41安打、3割5分3厘として秋季首位打者の座をキープしている。





               *野口二郎が今季8度目の完封で33勝目をあげる










       *尾茂田叶は3本のタイムリーを放ち5打数4安打の活躍を見せた。





2012年5月22日火曜日

14年 金鯱vs南海 12回戦


11月12日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11  計
0 0 0 0 0 0 0 1 1  0   0   2 金鯱 36勝55敗4分 0.396 中山正嘉 古谷倉之助
1 0 0 0 0 0 0 1 0  0   0   2 南海 40勝50敗6分 0.444 政野岩夫

二塁打 (金)中村
三塁打 (南)平井
本塁打 (金)濃人 1号

南海、今季最終戦を引き分ける  

 南海はいよいよ今季最終戦。エース政野岩夫をマウンドに送る。

 金鯱は初回、先頭の濃人渉の遊ゴロをショート小林悟楼が一塁に悪送球、佐々木常助が四球を選んで無死一二塁、野村高義の右邪飛で濃人はタッチアップから三塁に進み一死一三塁、ここで小林が二塁に走るがキャッチャー吉川義次からの送球にタッチアウト、三走濃人もホームを狙っていたがショート小林からサード鶴岡に送球されてタッチアウト。

 南海は1回裏、先頭の平井猪三郎が右中間に三塁打、岡村俊昭の中犠飛で1点を先制する。

 金鯱は8回、一死後濃人がレフトスタンドにプロ入り初ホームランを叩き込んで1-1の同点、濃人は初回の拙走の汚名を雪いだ。

 南海は8回裏、先頭の小林が四球を選んで出塁、しかし平井の投ゴロは「1-4-3」と転送されてダブルプレー。ところが岡村が四球を選ぶと二盗に成功、鶴岡一人の中前タイムリーで2-1と突き放す。  

 金鯱は9回、一死後松元三彦の代打長島進が右前打、代走に岡野八郎を起用、瀬井清に代わる代打中村輝夫が左中間に二塁打を放って一死二三塁、五味の三ゴロに三走岡野が突っ込むがサード鶴岡からのバックホームにタッチアウト、続く濃人を敬遠するが三球目をキャチャー吉川が三塁に牽制するとこれが高く逸れて三走中村が還り2-2の同点とする。  金鯱は9回から中山正嘉に代えて古谷倉之助をマウンドに送り込む。

 南海は9回裏、吉川、岩出清が連続三振、栗生信夫が右前打を放って二死一塁、政野が中前打で続いて二死一二塁、しかし小林が中飛に倒れて延長戦に突入する。

 セネタースは10回表に二死一二塁のチャンスを作るが無得点。その後は両チーム三者凡退をくり返し延長11回2対2で引き分く。

 南海は二試合連続引分けで昭和14年のシーズンを終了、40勝50敗6分、勝率4割4分4厘で五位が確定している。



2012年5月20日日曜日

訂正のお知らせ ④


 イーグルスの勝敗について、10月28日のタイガース11回戦の引分けでイーグルスの引分け数は「2」になりましたが、10月29日の南海11回戦以降の七試合において引分け数の表示が「1」になっていました。お詫びして訂正させていただきます。本文は訂正済みです。

14年 セネタースvs南海 12回戦


11月11日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11  計 
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0    0 セネタース 48勝37敗9分 0.565 浅岡三郎 野口二郎
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0    0 南海          40勝50敗5分 0.444 宮口美吉

二塁打 (セ)野口、織辺 (南)国久
三塁打 (セ)苅田 (南)宮口

延長11回ドロー  

 セネタースは初回、先頭の苅田久徳が四球で出塁、一死後尾茂田叶の遊ゴロは「6-4」と渡るがセカンド国久松一が落球して一死一二塁、しかし続く野口二郎の打球に苅田が触れて守備妨害、浅岡三郎は中飛に倒れてスリーアウトチェンジ。2回は一死後佐藤武夫、村松長太郎が連続して四球を選ぶが後続なし。3回は一死後尾茂田が右前打、野口が左前打を放つが浅岡は右飛、柳鶴震は中飛に倒れる。

 南海は初回、先頭の平井猪三郎が右前打で出塁するが後続なし、3回も一死後平井が右前打で出塁、岡村俊昭の中前打で平井は三塁を狙うがセンター尾茂田からの返球にタッチアウト。

 セネタースは4回~6回も走者を出すが何れも二死からで得点はならず。7回、一死後苅田が右中間に三塁打を放って絶好の先制のチャンスを迎え、横沢七郎の遊ゴロに苅田がホームに突っ込むがショート小林悟楼からのバックホームにタッチアウト。8回は一死後浅岡が四球で出塁、柳の左前打で一死一二塁、しかし佐藤の遊ゴロは「6-4-3」と渡ってダブルプレー。

 南海は4回、5回と三者凡退。6回、岡村が右前打で出塁して二盗を決めて一死二塁、しかし鶴岡一人は中飛、国久は三振に倒れる。7回一死後岩出清が中前打を放つが栗生信夫に代わる代打中村金次の三ゴロは「5-4-3」と渡ってダブルプレー。

 セネタースは9回、二死後苅田の三ゴロをファースト中村が落球、しかし横沢の当りは二直に終わる。南海は9回裏、二死後国久が左中間に二塁打を放つが吉川義次は右飛に倒れて延長戦に突入する。  セネタースは10回、先頭の尾茂田が四球を選んで出塁、野口が送って一死二塁、しかし浅岡、柳が連続して右邪飛に倒れる。

 南海は10回裏、二死後ここまで粘投を続けている宮口美吉が気魄の右中間三塁打、セネタース苅田監督はここで先発の浅岡をファーストに回して野口をマウンドに送る。小林は敬遠で二死一三塁、平井は三振に倒れてスリーアウトチェンジ。

 セネタースは11回、二死後織辺由三が右中間に二塁打、宮口は続く苅田を敬遠して二死一二塁、横沢に代わる代打小島二男の当りは一直に終わりスリーアウトチェンジ。

 南海は11回裏、先頭の岡村が右前打で出塁、鶴岡は三振に倒れて一死一塁、国久の右前打で岡村は三塁を陥れて一死一三塁、吉川に代わる代打平野正太郎の打席でスクイズを試みるがウエストされて三走岡村が三本間に挟まれ「2-5-1」と渡ってタッチアウト、最後は平野が左飛に倒れてゲームセットを告げるサイレンが高々と鳴り響く。

 宮口美吉は11回を投げ抜き8安打7四球3三振無失点。浅岡三郎は9回3分の2を投げて8安打無四球4三振無失点。




            *宮口美吉と浅岡三郎の粘り合いは延長11回引分け。










            *延長11回の死闘を伝えるスコアカード。





14年 阪急vsイーグルス 12回戦


11月11日 (土) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 1 0 2 阪急           57勝35敗2分 0.620 石田光彦 高橋敏
0 0 2 0 0 0 0 4 X 6 イーグルス 27勝65敗2分 0.293 望月潤一

勝利投手 望月潤一 6勝27敗
敗戦投手 高橋敏  17勝10敗

二塁打 (阪)山田、上田 (イ)中河
本塁打 (イ)岩垣 1号

岩垣二郎プロ入り初ホーマー  

 イーグルスは2回、先頭の岩垣二郎がインコースを引っ張ってライトスタンドにプロ入り第1号を叩き込み1点を先制する。太田健一が四球で出塁、中河美芳の遊ゴロをショート上田藤夫がエラーして無死一二塁、寺内一隆は中飛に倒れるが菅利雄が左前にタイムリーを放って2-0とする。

 イーグルスは4回、先頭の望月潤一が四球で出塁、一死後望月が二盗を試みるがキャッチャー日比野武からの送球にタッチアウト、山田潔が四球を選んで出塁、トップに返り岩垣が右前にヒットを放ち山田は三塁に走るがライト西村正夫からの返球にタッチアウト。5回も先頭の太田が二塁に内野安打、太田が二盗を決め中河が送って一死三塁のチャンスを迎えるが寺内は投ゴロ、菅は二飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪急は6回、先頭の西村が四球で出塁、フランク山田伝が右前打を放って無死一二塁、浅野勝三郎が投前に送りバントを決めて一死二三塁、上田の遊ゴロで三走西村がホームを衝くがショート山田潔からのバックホームにタッチアウト、しかし続く黒田健吾が中前にタイムリーを放って1-2とする。

 阪急は8回、先頭の山田伝が四球を選んで出塁、浅野は中飛に倒れるが上田が右翼線に二塁打を放って一死二三塁、黒田は遊ゴロに倒れて二死二三塁、日比野に代わる代打山下好一は四球で二死満塁、土肥省三が左前打を放ち三走山田に続いて二走上田も三塁ベースを蹴ってホームを狙うがレフト岩垣からのバックホームにタッチアウト、2-2の同点止まり。

 イーグルスは8回裏、先頭の杉田屋守が左翼線にヒット、望月の三ゴロでランナーが入れ替わり、伏見五郎四球、山田潔も四球を選んで一死満塁、ここで岩垣がカウントワンツーからスクイズを決めて3-2、続く太田がカウントツースリーから中前に2点タイムリーを放ち5-2として太田もバックホームの隙をついて二塁に進み、中河の右中間二塁打で6-2とする。

 望月潤一は9回二死から西村に四球を与えるが最後は山田伝を右飛に打ち取り、6安打7四球1死球4三振の完投で6勝目をあげる。翌日の読売新聞は「望月は徹頭徹尾ドロップを用いて阪急軍に向かったがこれが鋭く曲り込んで頗る効果があった上に右打者の外角をつく直球にもスピードと“伸び”があって・・・」と伝えている。





               *望月潤一は6安打完投で6勝目をあげる。










*前節週間MVPに輝いた好調岩垣二郎は3回の第二打席でライトにプロ入り初ホームランを放つ。
















2012年5月19日土曜日

14年 南海vsジャイアンツ 12回戦

11月9日 (木) 後楽園



1 2 3 4 5 6 7 8  9  計
0 1 0 0 0 0 0 0  0  1 南海             40勝50敗4分 0.444 政野岩夫
0 0 0 0 0 0 0 1 1X 2 ジャイアンツ 65勝26敗3分 0.714 スタルヒン


勝利投手 スタルヒン 41勝15敗
敗戦投手 政野岩夫  18勝19敗


二塁打 (南)吉川 三塁打 (南)国久




ジャイアンツ優勝!!  


 あと1勝で優勝決定のジャイアンツは今日負けると残りは12日のタイガース戦と16日の苦手とする名古屋戦だけに本日決めておきたいところ。ということで不振を押してスタルヒンが先発。


 南海は2回、先頭の国久松一が右中間に三塁打、中村金次は三振に倒れるが吉川義次が中前に先制タイムリーを放って1-0とする。翌日の読売新聞によるとスタルヒンは吉原のカーブのサインに首を振りストレートを投げて打たれたとのこと。


 スタルヒンは3回以降南海打線を抑えるがジャイアンツ打線も毎回走者を出しながら政野岩夫の下手投げに手を焼いた。


 ジャイアンツは初回、一死後平山菊二が四球で出塁するが二盗に失敗。2回は先頭の中島治康が二塁内野安打で出塁するが後続なし。3回は一死後スタルヒンが右前打で出塁、白石敏男は中飛に倒れるが平山の右前打で二死一三塁、ここで平山がスタートを切るが「2-6-5」と送球されて中途半端な走塁のスタルヒンがタッチアウト。4回は千葉茂が中前打から二盗を決めて川上哲治の四球で一死一二塁とするがアチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)の「遊ゴロが「6-4-3」と渡ってダブルプレー。

 ジャイアンツは5回、先頭の水原茂が左翼線にヒットを放ち二塁を狙うがレフト平井猪三郎からの返球にタッチアウト。翌日の読売新聞によると「左翼平井の強肩を忘れて二進を企てて見事刺される」ということなので平井の強肩は有名だったのでしょう。6回は先頭の平井が左前打で出塁、普段はバントを使わない藤本定義監督もなりふり構っていられず千葉が送って一死二塁、しかし中島は捕邪飛、川上は一ゴロに倒れる。7回も先頭の先頭のリベラが四球を選び代走に呉波を起用、ここでも水原が送りバントを決めて一死二塁とするが吉原正喜は遊飛、スタルヒンは右飛に倒れる。


 敗色濃厚のジャイアンツは8回、先頭の白石が右前打で出塁、続く平井がこの日チーム3本目となる送りバントを決めて一死二塁、ワイルドピッチで白石は三進、千葉の中犠飛で遂に1-1の同点に追い付く。


 ジャイアンツは9回裏、先頭の呉は三振、続く水原は左飛に倒れて二死無走者、ここで吉原が三塁線にセーフティバント、しかもピッチャー政野が一塁に悪送球して吉原は二塁に進んでスタルヒンが登場、スタルヒンはカウントツースリーからの高目のボールを中前に弾き返して吉原がサヨナラのホームを駆け抜け、ここに昭和14年度ペナントレースはジャイアンツの優勝と決したのである。





               *スタルヒンは7安打完投で41勝目をあげる。






     *スタルヒンは今季4本目のサヨナラ打を放ち優勝を決めた。












14年 名古屋vsライオン 12回戦

11月9日 (木) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 0 1 0 1 3 名古屋   38勝53敗4分 0.418 松尾幸造
0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 ライオン 33勝55敗5分 0.375 福士勇

勝利投手 松尾幸造 8勝13敗
敗戦投手 福士勇  12勝18敗

三塁打 (名)加藤2、大沢

3本の三塁打

 名古屋は4回、先頭の桝嘉一がセンター左にヒット、大沢清の遊ゴロランナーが入れ替わって一死一塁、加藤正二が右中間に三塁打を放って1点を先制する。  

 名古屋は7回、先頭の加藤が左中間に三塁打、中村三郎は三邪飛に倒れるが三浦敏一が中前にタイムリーを放って2-0とする。  

 名古屋は9回、先頭の大沢が左中間に三塁打、加藤の中犠飛で3-0とする。

 ライオンは9回裏、一死後西端利郎が四球を選んで出塁、井筒研一に代わる代打菊矢吉男が左翼線にヒットを放ち、山本尚敏に代わる代打近藤久が右翼線にヒットを放って一死満塁、福士勇に代わる代打伊藤吉男は三振に倒れるが、水谷則一が押出し四球を選んで1-3、しかし玉腰年男は左飛に倒れてゲームセットを告げるサイレンが高々と鳴り響く。 


 松尾幸造は6安打5四球3三振の完投で8勝目をあげる。翌日の読売新聞の松尾の談話によると「今日はよくなかった。カーブが入らなかった。」とのこと。  


 名古屋は加藤正二の2本と大沢清による合計3本の三塁打で快勝した。加藤正二は中央大学時代、東都大学野球リーグ戦で4回首位打者を獲っているが昭和12年秋季の5割7分7厘は現在に至るまで東都大学リーグ戦のシーズン最高打率記録として残っている。  名古屋はここ8試合を7勝1敗と絶好調。





*名古屋は加藤正二が2本、大沢清が1本の三塁打を記録する。大沢の当りは珍しく左中間を抜いた。翌日の読売新聞には大沢の当りは右中間に飛んだと誤って記載されている。大沢の当りは右に飛ぶという先入観が筆を誤らせたのであろう。


14年 阪急vsセネタース 12回戦

11月8日 (水) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急     57勝34敗2分 0.626 高橋敏
0 0 0 1 2 0 0 0 X 3 セネタース 48勝37敗8分 0.565 野口二郎
勝利投手 野口二郎 32勝19敗
敗戦投手 高橋敏    17勝9敗

二塁打 (セ)尾茂田
三塁打 (セ)村松
本塁打 (セ)尾茂田 4号

野口二郎今季7度目の完封

 阪急は初回、二死後三番に入った浅野勝三郎が四球を選んで出塁、上田藤夫の三塁内野安打で二死一二塁とするが黒田健吾は左飛に倒れる。3回も二死後フランク山田伝の左前打、浅野の中前打、上田の四球で二死満塁とするが黒田が三振に倒れて無得点。

 セネタースは初回、先頭の苅田久徳の三ゴロをサード黒田が一塁に悪送球、苅田が二盗を決めて無死二塁、浅岡三郎の投ゴロをピッチャー高橋敏が捕って二塁に送球するがセーフ、野選が記録されて無死一二塁、尾茂田叶の三ゴロはサード黒田がそのままベースを踏んで一死一二塁、野口二郎が四球を選んで一死満塁、しかし柳鶴震の投ゴロは「1-2-3」と渡ってダブルプレー、一瞬にして先制のチャンスを潰す。3回も二死後浅岡の中前打、尾茂田の右翼線二塁打、野口の四球で二死満塁とするが柳が三振に倒れて無得点。

 ここまで両チームの五番打者黒田健吾と柳鶴震がブレーキとなって両軍無得点。

 セネタースは4回、一死後村松長太郎が右中間に三塁打、織辺由三が右犠飛を打ち上げて1点を先制する。

 
 セネタースは5回、先頭の苅田が左翼線にヒット、浅岡が送りバントを決めて一死二塁、ここで尾茂田が左翼スタンドに第4号ツーランホームランを叩き込んで3-0とリードを広げる。

 阪急は7回、二死後高橋が三塁に内野安打、トップに返り西村正夫が中前打、山田が左前打を放って二死満塁、しかし浅野が一飛に倒れて無得点。8回も先頭の上田が四球、黒田が左前打で続いて無死一二塁とするが日比野武は三振、石井武夫は一邪飛、伊東甚吉に代わる代打重松通雄は三振に倒れてこの回も無得点。

 野口二郎は8安打3四球7三振、今季7度目の完封で32勝目をあげる。5度スコアリングポジションに走者を進めたが粘りのピッチングで凌いだ。阪急の11残塁の淡白な攻撃に助けられた感が強い。




               *野口二郎は今季7度目の完封で32勝目をあげる。






2012年5月18日金曜日

14年 イーグルスvsタイガース 12回戦

11月8日 (水) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 イーグルス 26勝65敗2分 0.286 亀田忠
0 0 0 0 2 0 0 0 X  2 タイガース 61勝29敗3分 0.678 若林忠志

勝利投手 若林忠志 28勝7敗
敗戦投手 亀田忠    14勝27敗

二塁打 (タ)景浦、門前

若林忠志今季6度目の完封  

 イーグルスの先発は亀田忠。2日の阪急戦で完封勝ちした中河美芳は3日の金鯱戦では途中出場して2打数2安打、6日の南海戦も途中出場して2打数1安打、7日のライオン戦はフル出場して5打数2安打で一塁手として出場しているが登板はしていない。望月潤一は3日と6日に完投負け、本日は亀田忠が昨日に続いて連投となった。翌日の読売新聞は「中河が病気とあって連投の苦痛を物ともせず亀田が自ら投手を買って出る」と伝えているが真相や如何に。  

 当ブログではこの時期中河美芳は憲兵隊に尋問を受けていたのではないかと推測しています。昭和15年からプロ野球選手の徴兵は飛躍的に増大します。しかしジャイアンツの主力は温存され、第一期黄金時代が昭和18年まで継続することとなります。正力松太郎は野に下ったとはいえかつては総理大臣候補とまで言われた警察官僚でいわば向こうサイドの人。子飼の市岡忠男はイーグルスの河野安通志とは犬猿の仲。当時兵役逃れのため多くのプロ野球選手が夜間大学に籍を置いていたのは周知の事実であり、これはジャイアンツの選手でも例外ではありません。にもかかわらず中河だけが憲兵に目を付けられていたのには筆者は昔から疑問に感じていました。

 4回までタイガース打線は2安打無得点。但し亀田忠は3回に1四球、4回に2四球を出している。  タイガースは5回、一死後松木謙治郎が四球を選んで出塁、ジミー堀尾文人は右飛に倒れるが景浦将の左翼線ヒットで松木は三塁に達し二死一三塁、景浦が二盗を決めて二死二三塁、門前真佐人が右中間に二塁打を放って2点を先制する。  
 

 イーグルスは2回は先頭の亀田が中前打、3回も先頭の伏見五郎が中前打で出塁するが無得点。4回は先頭の寺内一隆が四球で出塁するが一死後高須清の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。7回も先頭の寺内が中前打で出塁するが亀田の遊ゴロは「6-4-3」と渡ってダブルプレー。相変わらず若林のシンカーは冴えている。8回も先頭の菅利雄が中前打を放つが無得点で結局若林から得点を奪うことはできなかった。

 若林忠志は5安打1四球2三振、今季6度目の完封で28勝目をあげる。

 この頃、読売新聞の論調が日増しに軍国調になってくるのは時節柄致し方のないところでしょうが、あれだけのキレ味を発揮していた鈴木惣太郎の論評も精彩を欠いてきている。鈴木惣太郎はある程度ことの真相を知っていたのではないでしょうか。その良心の呵責が文面に表れてきているように見えます。



                 
              *若林忠志は今季6度目の完封で28勝目をあげる。





2012年5月16日水曜日

14年 第24節 週間MVP


 今節はライオンが1勝0敗、ジャイアンツが4勝1敗、名古屋が3勝1敗、金鯱が3勝1敗、南海が2勝1敗、セネタースが1勝3敗、阪急が1勝3敗、タイガースが1勝3敗、イーグルスが1勝4敗であった。



週間MVP

投手部門 

 ジャイアンツ スタルヒン 4

 今節3勝1敗。金鯱戦の完封以外は内容もピリっとしなかったが今季40勝を達成する。


打撃部門

 金鯱 野村高義 1

 今節13打数5安打5得点2打点4四球1盗塁、三塁打1本。とにかくよく塁に出て5得点を記録した。


 イーグルス 岩垣二郎 1

 今節21打数9安打。6日の南海戦では4打数4安打を記録する。




殊勲賞

 金鯱 松元三彦 1

 5日の名古屋戦で試合を決めるタイムリーを放つ。


 ジャイアンツ 中尾輝三 1

 3日のセネタース戦で10四球ながら無安打無得点を記録する。




敢闘賞

 名古屋 村松幸雄 1

 今節2勝0敗。肩の故障から復活してきた。


 名古屋 村瀬一三 1

 今節16打数5安打4得点1打点2四球3盗塁、三塁打2本の活躍を見せる。村瀬が二番に定着して名古屋が調子に乗ってきた。




技能賞

 イーグルス 伏見五郎 1

 7日のライオン戦で1イニング3補殺を記録する。




2012年5月15日火曜日

14年 ジャイアンツvs南海 11回戦


11月7日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
3 0 0 0 1 0 6 0 4  14 ジャイアンツ 64勝26敗3分 0.711 スタルヒン
0 0 0 0 2 0 3 1 0  6   南海            40勝49敗4分 0.449 宮口美吉 平野正太郎
勝利投手 スタルヒン 40勝15敗
敗戦投手 宮口美吉  10勝12敗


二塁打 (ジ)リベラ、川上、スタルヒン (南)平井
三塁打 (南)小林
本塁打 (ジ)リベラ 5号 (南)鶴岡 10号


スタルヒン40勝に到達
 
 ジャイアンツは初回、一死後平山菊二が左翼線にヒット、千葉茂が四球を選び、ダブルスチールを決めて一死二三塁、中島治康は一邪飛に倒れるが、11月に行って4試合で14打数ノーヒットの川上哲治が久々に快音を響かせて中前に2点タイムリーを放ち2-0、アチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)が右中間にタイムリー二塁打を放って3点を先制する。


 ジャイアンツは5回、二死後白石敏男が四球で出塁、平山が中前打で続いて二死一二塁、千葉が右翼線にタイムリーを放って4-0とする。


 南海は5回裏、先頭の国久松一が右前打で出塁、小林悟楼が右中間に三塁打を放って1-4、中田道信は二ゴロ、宮口美吉は三振に倒れて二死三塁、トップに返り平井猪三郎のピッチャー強襲ヒットで2-4、更に岡村俊昭、鶴岡一人が連続四球を選んで二死満塁、しかし中村金次は三振に倒れて追加得点はならず。南海としてはここで追い付けなかったのが敗因となった。


 ジャイアンツは7回、先頭のスタルヒンが左中間に二塁打、トップに返り白石は四球、平山の三前内野安打で無死満塁、千葉が中前に2点タイムリーを放ち6-2、中島の中前タイムリーで7-2としてなお無死一三塁、川上は遊飛に倒れるがリベラの遊ゴロをショート小林が失する間に千葉が還って8-2、水原茂の中前タイムリーで9-2、この打球をセンター岡村俊昭が後逸する間にリベラも還って10-2とする。


 南海は7回裏、先頭の中田が四球で出塁、宮口に代わる代打岩出清が中前打、トップに返り平井の遊ゴロで岩出は二封、平井が二盗を決めて一死二三塁、岡村の三ゴロの間に中田が還って3-10、鶴岡一人が右翼スタンドに第10号ツーランを放って5-10とする。鶴岡は9本で並んでいた景浦将を突き放し、単独ホームラン王に躍り出た。


 南海は8回、一死後国久が三塁に内野安打、小林が死球を受けて一死一二塁、中田の左前打で一死満塁、8回からマウンドに上っている平野正太郎の一ゴロの間に国久が還って6-10と追い上げる。


 ジャイアンツは9回、一死後リベラが左翼スタンドに第5号を叩き込んで11-6、二死後吉原が左翼線にヒット、スタルヒンの三ゴロをサード鶴岡が珍しくエラー、トップに返り白石の中飛をセンター岡村がこの日2つ目のエラー、吉原が還って12-6としてなお二死二三塁、平山が左前に2点タイムリーを放ち14-6として止めを刺す。


 大量得点をもらいながらスタルヒンは10安打3四球1死球6三振で6失点とピリっとしない内容、ヘロヘロの投球ながら我が国プロ野球史上初の40勝目を記録した。


 ジャイアンツは二位タイガースに3.5ゲーム差としてあと1勝で優勝となった。



               *スタルヒン10安打6失点ながら40勝目を記録した。

2012年5月14日月曜日

14年 イーグルスvsライオン 10回戦


11月7日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 3 0 0 0 4 イーグルス 26勝64敗2分 0.289 亀田忠
0 1 5 1 0 0 0 0 X 7 ライオン    33勝54敗5分 0.379 菊矢吉男


勝利投手 菊矢吉男 16勝19敗
敗戦投手 亀田忠    14勝26敗
セーブ  近藤久    1


三塁打 (イ)亀田 (ラ)菊矢、水谷
本塁打 (ラ)室井 1号


イーグルス16残塁
 
 イーグルスは初回、先頭の岩垣二郎が右前打で出塁、岩垣はこれで前の試合から5打数連続ヒット、太田健一の投ゴロの間に岩垣は二進、寺内一隆が左中間にタイムリーを放って1点を先制する。


 ライオンは2回、先頭の室井豊がレフトスタンドに同点ホームランを叩き込んで1-1とする。


 ライオンは3回、先頭の菊矢吉男が右中間に三塁打、水谷則一、玉腰年男は連続三振に倒れて二死三塁、鬼頭数雄が中前にタイムリーを放って2-1と勝ち越し、室井の右翼線ヒットで二死一三塁、坪内道則が右前にタイムリーを放って3-1、井筒研一が四球を選んで二死満塁、西端利郎の右翼線2点タイムリーで5-1、ライト太田からのバックホームが悪送球となる間に一走井筒もホームに還って6-1とする。


 ライオンは4回、一死後水谷が右中間に三塁打、玉腰が四球を選んで一死一三塁、鬼頭の三塁内野安打がタイムリーとなって7-1とリードを広げる。


 イーグルスは2回は伏見五郎の右前打と山田潔の四球、3回は亀田忠が中越え三塁打、4回は杉田屋守の左前打と山田の四球、5回は太田と寺内の連続四球と毎回スコアリングポジションにランナーを進めるが無得点。


 イーグルスは6回、先頭の杉田屋の遊ゴロをショート松岡甲二がエラー、杉田屋が二盗を決めて伏見は三振で一死二塁、山田の二ゴロをセカンド西端がエラーする間に杉田屋が還り2-7として山田も二塁に進む。トップに返り岩垣は右邪飛に倒れて二死二塁、太田の三ゴロをサード井筒が一塁に低投する間に山田が還って3-7として太田も二塁に進み、寺内の三ゴロを又も井筒が一塁に低投する間に太田が還り、この回無安打で3点をあげて4-7とする。


 イーグルスは7回も中河美芳が左前打で出塁して伏見の遊ゴロでランナーが入れ替わり伏見が二盗、8回も岩垣の四球と太田に代わる代打高須清の右前打と亀田の左前打、9回も中河の中前打と杉田屋の右前打と山田の四球で毎回スコアリングポジションにランナーを送るが無得点。イーグルスは16残塁を記録した。


 菊矢吉男は6回を投げて6安打5四球2三振で16勝目をあげる。リリーフの近藤久が3回を投げて5安打2四球2三振無失点に抑えて当ブログルールによりセーブが記録される。


 イーグルス外野陣は補殺、刺殺ともにゼロの珍記録を樹立した。


 イーグルスのキャッチャー伏見五郎はよく走られるキャッチャーであるがこの日は4つの補殺を記録、特に5回は左前打で出塁した坪内を一塁牽制で刺し、四球で歩いた井筒には盗塁を許すが西端の右前打で一死一三塁となって西端が走るとこれを刺し、松岡の三振ナットアウトを一塁に刺して1イニング3補殺を記録した。




 *ライオン5回の攻撃でイーグルスのキャッチャー伏見五郎は1イニング3補殺を記録した。

2012年5月13日日曜日

14年 阪急vs名古屋 12回戦


11月6日 (月) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 3 1  4 阪急     57勝33敗2分 0.633 森弘太郎 石田光彦
0 2 3 0 0 1 0 0 X  6 名古屋 37勝53敗4分 0.411 繁里栄


勝利投手 繁里栄  14勝18敗
敗戦投手 森弘太郎 7勝3敗


二塁打 (名)繁里
本塁打 (名)加藤 6号、大沢 2号
 
大沢清またも右にホームラン


 阪急は初回、先頭の西村正夫が四球を選んで出塁、しかし浅野勝三郎の一ゴロは「3-6-3」と渡ってダブルプレー。


 阪急は2回、先頭の上田藤夫が右前打で出塁して二盗に成功、黒田健吾は三振に倒れて一死二塁、日比野武の一塁への小フライに上田が飛び出し「3-6B」と渡ってダブルプレー。この2つの併殺で勝利の女神は西宮駅から名古屋行きの特急電車に乗り込んでしまった。


 名古屋は2回裏、先頭の大沢清が四球を選んで出塁、加藤正二が左翼スタンドに先制の第6号ツーランを叩き込んで2-0とする。


 名古屋は3回、二死後村瀬一三が中前打を放って二盗に成功、桝嘉一が左翼線にタイムリーを放って3-0、続く大沢が右翼スタンドに第2号ツーランを叩き込んで5-0とリードを広げる。


 名古屋は6回、一死後中村三郎が三塁に内野安打、三浦敏一が四球を選んで一死一二塁、芳賀直一は三振に倒れるが繁里栄が左中間に二塁打を放って6-0と突き放す。


 5回の無死一塁も併殺で潰した阪急は8回、先頭の石井武夫が四球で出塁、伊東甚吉も四球を選んで無死一二塁、森弘太郎に代わる代打高橋敏の右前打で無死満塁、トップに返り西村の投ゴロで三走石井は本封、浅野の一塁内野安打で1点返して1-6、フランク山田伝がセンター左に2点タイムリーを放って3-6としてなお一死一二塁、しかし上田の右飛に二走浅野が飛び出して「9-6B」のダブルプレー。


 阪急は9回、先頭の黒田の遊ゴロをショート村瀬がエラー、日比野武は三振に倒れるが石井に代わる代打重松通雄が四球を選んで一死一二塁、黒田が三盗を決めて一死一三塁、伊東に代わる代打新富卯三郎の遊ゴロの間に黒田が還って4-6とするがここまで。4つの併殺があまりにも痛かった。


 繁里栄は8安打6四球3三振の完投で14勝目をあげる。


 名古屋は大沢清、加藤正二の強打が目立ったが忘れてならないのが村瀬一三の活躍である。村瀬は10月20日のセネタース戦から二番に起用されているが、それ以降名古屋は8試合で6勝2敗と波に乗っている。この間村瀬は29打数7安打であるが数字以上に貢献度が高い。小西徳郎監督もそれを分かっているから二番に起用し続けているのであろう。本日も追加点のきっかけとなるヒットと盗塁、守っては4つの併殺に絡んだ。


 大沢清が3打数2安打2得点2打点1本塁打、秋季シリーズ通算103打数34安打、打率3割3分で中島治康と鬼頭数雄の3割2分7厘を抜いて首位に立った。10月24日のジャイアンツ戦に続いて右翼スタンドにホームランを叩き込んだ。大沢の本塁打は昭和13年5月28日の幻のホームランを含めて全て右翼スタンドに飛び込んでいる。




                 *繁里栄は8安打完投で14勝目をあげる。







     *スコアカードの「併殺」欄には村瀬一三が4つの併殺を記録したと記されている。









*大沢清のホームランは幻のホームランも含めて全て右翼スタンドに打ち込んだものである。




                  *昭和13年5月28日の幻のホームラン





                *昭和13年6月19日の通算第1号ホームラン






             *昭和14年10月24日の通算第2号(今季第1号)ホームラン








                *本日の通算第3号(今季第2号)ホームラン