2010年8月6日金曜日

一騎討ち ④

 本年度ナショナル・リーグのサイ・ヤング賞争いがロイ・ハラデーとティム・リンスカムの一騎打ちになるとの前提で始まった当シリーズが5月31日以来途絶えていた理由は、ティム・リンスカムの不調(と言っても8月4日現在奪三振数第二位ですが)により三年連続サイ・ヤング賞がほぼ絶望的になったことに起因しております。代わって予想だにしていなかった奪三振王争いがロイ・ハラデーとティム・リンスカムによる一騎打ちムードとなってきました。8月4日現在(以降の数字は全て8月4日現在)ハラデー158個、リンスカム152個、リンスカムの次の登板で逆転することとなります(とは言っても151個のジョシュ・ジョンソン、147個のアダム・ウェインライトにも可能性はあります。)。

 残された数字が両者のピッチングを表しています。リンスカムは22試合に登板して先発22、完投1、完封1、投球回数145回3分の1、自責点50、防御率3.10、奪三振152、奪三振率9.41。ハラデーは23試合に登板して先発23、完投8、完封3(うち完全試合1)、投球回数178回、自責点43、防御率2.17、奪三振158、奪三振率7.99。

 打たせて取るピッチングが身上のハラデーが奪三振ランキング1位にいる理由は簡単、投球回数が多いからであり、投球回数が多い理由はもっと簡単、完投が多いからです。松坂のピッチングしか見たことのないスポーツ記者も多いようでメジャーでは完投はしないものと決め付けている方も多々見受けられますが、もう一度ロイ・ハラデーのスタッツを確認してください(松坂も完投しようと思えば簡単にできるのですが100億の金をかけてしまったボストン・レッドソックス球団は松坂の故障を極度に恐れており超過保護政策をとっています。それが松坂の持ち味を殺してしまっていることにいつになったら気が付くのでしょうか。)。

 リンスカムは相変わらず奪三振数が投球回数を上回ってはいますが奪三振率が2008年の10.51、2009年の10.42に比べて落ちていますので、3年連続サイ・ヤング賞はありえません。

 ナショナル・リーグサイ・ヤング賞候補は4人に絞られました。WHIPのデータを有しておりませんので分かる範囲のみで推測します。ウバルト・ヒメネスは本日17勝目をあげて依然として候補の一人ではありますが、5月31日「一騎討ち ③」で指摘した通り約2カ月で防御率を1点以上落としていますので厳しいのではないでしょうか。投球内容ではジョシュ・ジョンソンに一番魅力を感じますがスタッツがついてこないかもしれません。ということで候補一位は依然としてロイ・ハラデーですが、私的にはアダム・ウェインライトを応援しております。2006年終盤、セントルイス・カージナルスのクローザーとして君臨していたジェイソン・イズリングハウゼンが故障離脱した際、トニー・ラルーサ監督はウェインライトをクローザーに抜擢してポストシーズンを乗り切り、1982年以来のワールドチャンピオンに輝きました。2007年に先発投手陣が続々と退団、ウェインライトは先発に転向して実績を積んできました。ハラデーは別格として、ヒメネス、ジョンソンには経験で上回っています。サイ・ヤング確率は、ハラデー40%、ウェインライト25%、ヒメネス20%、ジョンソン10%、リンスカム5%。

 ウバルト・ヒメネスはここからが正念場です。コロラド・ロッキーズの本拠地クアーズ・フィールドは高地にあるため打者有利となります。そのため、ロッキーズの打者は好成績をあげてもMVP投票では票が入りません。2007年、マット・ホリデーは打率3割4分、137打点で二冠に輝き216安打、36本塁打、更に二塁打50本という凄まじい成績を残してチームを球団創設以来初のワールドシリーズに導きました(サンディエゴ・パドレスとのワンゲーム・プレーオフ最終回、逆転サヨナラのホームにヘッドスライディングで突っ込んだシーンは忘れられません。)がMVPはジミー・ロリンズのものとなり唖然とさせられました(もちろんジミー・ロリンズもキャリアハイの成績でしたが。)。逆にいえばロッキーズのピッチャーにはサイ・ヤング賞の投票ではゲタを履かせてもらわなければならないわけですが、これまでロッキーズのピッチャーがサイ・ヤング賞候補になったことがありませんのでどうなることやら注目です。




 

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