2017年12月31日日曜日

18年 第18節 週間MVP


 今季最終節は名古屋が4勝0敗、巨人が2勝0敗1分、大和が2勝1敗、西鉄が3勝2敗、阪急が1勝1敗、阪神が0勝4敗1分、朝日が0勝2敗、南海が0勝2敗であった。


週間MVP

投手部門

 名古屋 石丸進一 4

 2勝0敗1セーブ、1安打完封。最後のピッチング。

 西鉄 野口二郎 3

 3勝0敗。秋季優勝の立役者。


打撃部門

 名古屋 加藤正二 2

 12打数5安打3得点2打点、二塁打4本。名古屋4連勝の立役者。

 名古屋 古川清蔵 2

 徴兵検査から復帰して2試合で9打数4安打2得点1打点2盗塁、勝利打点1個、猛打賞1回。

 巨人 中島治康 2

 9打数3安打3打点、勝利打点2個。不振を極めてきたが最後に存在感を示す。


殊勲賞

 西鉄 山田秀夫 2
 
 11月4日の阪神戦で先制ツーランと決勝打を放ち全3打点をマーク。

 西鉄 濃人渉 1

 11月6日の大和戦で秋季優勝を決定付ける2点タイムリー二塁打。
 

敢闘賞

 阪神 田中義雄 1

 12打数5安打1本塁打

 巨人 白石敏男 1

 11打数5安打2得点

 名古屋 野口正明 1

 2勝0敗1完封

 阪神 三輪八郎 1
 
 11月7日の巨人戦で12回無失点。


技能賞
 
 南海 中野正雄 2

 11月2日の巨人戦で14球粘って押出し四球を選ぶ。
 
 西鉄 鵜飼勉 2

 11打数1安打ながら5四球4得点。西鉄秋季優勝は、山田秀夫と鵜飼勉が下位から上位の中村信一と濃人渉につないだ点が大きい。
 

2017年12月30日土曜日

18年 阪神vs巨人 12回戦


11月7日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0  0 阪神 41勝36敗7分 0.532 三輪八郎
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0  0 巨人 54勝27敗3分 0.667 藤本英雄

二塁打 (神)御園生
三塁打 (神)藤村

勝利打点 なし


延長12回0対0

 昭和18年の最終戦。

 阪神は今季巨人戦4勝1敗の「巨人キラー」三輪八郎が先発。巨人は35勝目を狙う藤本英雄で応戦する。

 阪神は初回、先頭の御園生崇男の当りはライト線に飛び御園生は二塁ベースを蹴って三塁に向かうが、ライト中島治康からの返球を中継したセカンド小池繁雄の三塁送球にタッチアウト、記録は二塁打であるが一死無走者、金田正泰は左飛、藤村冨美男は三振に倒れて無得点。

 巨人は1回裏、一死後白石敏男が中前打で出塁、青田昇も中前打、四番サード中村政美はストレートの四球を選んで一死満塁、しかし藤本の投ゴロで三走白石は本封、小暮力三はニゴロに倒れて無得点。

 阪神は4回、二死からではあるが藤村が右中間に三塁打、しかし景浦将は左飛に倒れて無得点。

 巨人は8回まで12個の四球を選んで毎回のようにチャンスを作るがもう1本が出ず無得点を続ける。

 阪神は10回、先頭の景浦が左前打で出塁、門前真佐人も左前打で続いて無死一二塁、しかし玉置玉一の送りバントをピッチャー藤本が三塁に送球して景浦は三封、三輪八郎の中飛をセンター呉昌征が落球して一死満塁、しかし乾国雄に代わる代打若林忠志は三振に倒れて二死満塁、ここで三走門前がホームスチールを敢行するがタッチアウト、スリーアウトチェンジ。

 巨人は12回裏、一死後小暮が死球を受けて出塁、林清光に代わる代打中島治康がセンター左にヒットを放ち一死一二塁、しかし川畑博の投ゴロが「1-4-3」と渡ってダブルプレー、延長12回0対0の引分け。

 藤本英雄は12回を投げて7安打1四球7三振無失点。

 三輪八郎は12回を投げて4安打13四球1死球12三振無失点。三輪の投球数は5回で早くも100球を超え、9回で184球、結局224球を投げ抜いた。昭和15年の満州リーグで巨人相手に無安打無得点を達成した「巨人キラー」三輪八郎の生涯最後のピッチングである。三輪はこの後、戦死することとなる。


 

18年 名古屋vs西鉄 12回戦


11月7日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 2 0 0 0 0 2 名軍 48勝29敗7分 0.623 野口正明 石丸進一
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 西鉄 39勝37敗8分 0.513 重松通雄 野口二郎

勝利投手 野口正明 12勝4敗
敗戦投手 重松通雄   9勝18敗
セーブ    石丸進一 3

二塁打 (名)加藤

勝利打点 加藤正二 4

猛打賞 (名)古川清蔵 3


石丸進一、最後のピッチング

 名古屋は初回、二死後古川清蔵が左前打で出塁、吉田猪佐喜の二遊間ヒットで二死一二塁、しかし加藤正二は遊ゴロに倒れて無得点。

 西鉄は2回、先頭の富松信彦がライト線にヒット、中村民雄は三塁に内野安打、山田秀夫は捕邪飛に倒れるが、鵜飼がストレートの四球を選んで一死満塁、重松通雄の当りは捕前で止まり、キャッチャー藤原鉄之助がホームベースを踏んで一塁に送球、「2H-3」のダブルプレーが記録される。慶應式スコアでは、一塁を「A」、二塁を「B」、三塁を「C」、本塁は「H」と表記する。

 4回まで毎回安打を放ちながら無得点の名古屋は5回、先頭の石丸藤吉が四球を選んで出塁、金山次郎の投前送りバントはピッチャー重松が好フィールディングを見せて石丸藤吉を二封、西鉄ベンチはここで先発の重松から野口二郎にスイッチ、古川が中前打を放つと金山は三塁に進んで一死一三塁、古川が二盗を決めて一死二三塁、吉田は浅い左飛に倒れるが、加藤が中前に先制の2点タイムリーを放ち2-0とリードする。

 名古屋先発の野口正明は5回まで5安打を許しながら無失点に抑える。

 名古屋は6回から石丸進一を投入。石丸進一は6回を三者凡退に抑え、7回は二死後中村信一のニゴロを兄の石丸藤吉がエラー、続く濃人渉の当りはピッチャー返しのライナーとなったが石丸進一が難なく捕球してスリーアウトチェンジ。

 8回、先頭の黒沢俊夫に三塁内野安打を許すが、野口明を二飛、富松の遊ゴロで黒沢は二封、中村民雄を右飛に打ち取り無失点。

 石丸進一は最終回、先頭の山田秀夫に代わる代打真野常照を三振、鵜飼勉を左飛、最後は野口二郎を右飛に打ち取り、生涯最後のマウンドを締めくくった。

 

18年 阪神vs名古屋 12回戦


11月6日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 1 0 1 2 阪神 41勝36敗6分 0.532 若林忠志
5 0 0 0 0 0 0 0 X 5 名軍 47勝29敗7分 0.618 石丸進一

若林忠志 24勝15敗
石丸進一 20勝12敗

二塁打 (名)古川
本塁打 (神)田中 1号

勝利打点 古川清蔵 5


石丸進一、最後の勝利

 名古屋の先発は石丸進一。これがプロでの最後の先発となった。

 古川清蔵がグラウンドに戻ってきた。10月21日、「出陣学徒壮行会」に参加した古川は故郷鹿児島に帰って徴兵検査を受け、10月30日の阪神戦から11月3日の南海戦までの4試合を欠場した後、グラウンドに戻ってきたのである。この年、主に二番を打ってきた古川を、名古屋軍は三番に起用して迎えた。

 名古屋は初回、一死後金山次郎がショートに内野安打、ショート武智修が間に合わない一塁に送球するが悪送球となって金山は一気に三塁へ、三番・古川清蔵がレフト線に二塁打を放って1点を先制、吉田猪佐喜が中前にタイムリーを放って2-0、加藤正二の遊ゴロをショート武智がこの回2個目のエラー、一走吉田は三塁に走り、バックアップしたセンター塚本博睦からの三塁送球の間に打者走者の加藤も二塁に進んで一死二三塁、岩本章の遊ゴロで三走吉田がホームに突っ込み、武智がバックホームするがセーフ、野選が記録されて3-0、藤原鉄之助が右前にタイムリーを放って4-0、芳賀直一の遊ゴロで藤原が二封されて二死一三塁、石丸進一が右前にタイムリーを放って5-0と大量リードする。

 自らのタイムリーも含めた大量リードを背景に、石丸進一は6回まで1安打無失点の好投。7回、先頭の田中義雄に三塁内野安打を許し、若林忠志の三ゴロの間に田中は二進、乾国雄にはストレートの四球を与えて一死一二塁、武智修に代わる代打門前真佐人の遊ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、塚本博睦の中前タイムリーで1点返される。

 9回表、先頭の田中にレフトポール際に本塁打を許して3点差に迫られるが、若林を二飛、乾を三ゴロ、最後は門前も三ゴロに打ち取り、4安打5四球3三振の完投で20勝目をあげる。

 石丸進一は最後の勝利で「20勝投手クラブ入り」を達成した。プロ野球史上16人目となる。(2シーズン制の昭和12年と13年に春秋合計で20勝に到達した古谷倉之助、野口明、御園生崇男を除く。12年春の沢村栄治は2シーズン制時代唯一の20勝投手として16人にカウント)


 

2017年12月29日金曜日

18年 大和vs西鉄 12回戦


11月6日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 大和 35勝43敗6分 0.449 石田光彦 片山栄次
0 0 2 3 0 0 0 0 X 5 西鉄 39勝36敗8分 0.520 野口二郎

勝利投手 野口二郎 25勝12敗
敗戦投手 石田光彦 11勝13敗

二塁打 (和)鈴木 (西)農人、黒沢

勝利打点 野口明 9


西鉄、秋季優勝!!

 西鉄はこの試合に勝つと、明日の名古屋戦に負けて巨人が阪神との最終戦に勝っても巨人を勝率で上回ることから、秋季リーグ戦優勝を決めることとなる。

 西鉄は3回、先頭の鵜飼勉が左前打を放って出塁、トップに返り中村信一が中前打、濃人渉の投前送りバントをピッチャー石田光彦が三塁に送球するがセーフ、犠打と野選が記録されて無死満塁、野口二郎は遊飛に倒れて一死満塁、野口明の左犠飛で1点を先制、レフト小松原博喜が落球する間に二走中村信一も還って2-0とする。

 西鉄は4回、二死後鵜飼がストレートの四球を選び出塁、鵜飼が二盗を決め、中村信一の中前打で二死一三塁、中村が二盗を決めて二死二三塁、濃人がレフト線に二塁打を放って4-0、野口二郎も左前にタイムリーで続いて5-0とリードを広げる。

 大和は6回、先頭の呉新亨が三塁線にセーフティバントを決めて出塁、トップに返り木村孝平が左前打、岡田福吉の遊ゴロで木村が二封されて一死一三塁、小島利男が左前にタイムリーを放って1-5とするが反撃もここまで。

 野口二郎は6安打無四球1三振の完投で25勝目をあげる。

 西鉄はこの勝利によって昭和18年秋季リーグ戦を決めた。昭和14年以降、1シーズン制が導入されたが実際はシーズンを春季、夏季、秋季に分けて運営され、それぞれのシーズンで優勝と首位打者が表彰されている。昭和16年秋季以降、昭和18年夏季まで巨人が6季連続優勝を続けてきたが、今期は西鉄が優勝した。巨人以外の優勝は、昭和16年夏季の阪急以来のこととなる。肘の故障からシーズン当初は全く勝てなくなった野口二郎が復活したことが優勝の要因となった。野口二郎は西鉄の秋季17勝のうち12勝をあげる獅子奮迅の活躍を見せたのである。

 

2017年12月27日水曜日

18年 西鉄vs阪神 12回戦


11月4日 (木) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 2 0 0 1 0 0 0 3 西鉄 38勝36敗8分 0.514 野口二郎
0 0 0 1 1 0 0 0 0 2 阪神 41勝35敗6分 0.359 三輪八郎 若林忠志

勝利投手 野口二郎 24勝12敗
敗戦投手 三輪八郎 11勝11敗

二塁打 (西)中村民雄 (神)三輪八郎
本塁打 (西)山田 1号 (神)三輪八郎 1号

勝利打点 山田秀夫 5


山田秀夫、先制ツーランと決勝打

  西鉄は秋季リーグ戦ここまで15勝7敗3分で首位、阪神は15勝9敗1分で三位。阪神はこの試合に負けると秋季優勝の目はなくなる。

 西鉄は3回、先頭の鵜飼勉が四球を選んで出塁、続く山田秀夫がワンボールワンストライクからの3球目をレフトスタンドに叩き込む先制ツーラン、2-0とリードする。

 阪神は4回、先頭の金田正泰はツーボールツーストライクから捕邪飛、ところがこれをキャッチャー中村民雄が落球、中村にはエラーが記録され、命拾いした金田が中前打を放って出塁、センター富松信彦がこの打球を後逸する間に打者走者の金田は一気に三塁に進む。富松にはエラーが記録されてワンヒットワンエラー、金田は1打席で2個のエラーを誘発させた。藤村冨美男は投ゴロに倒れ、景浦将は歩かされて一死一三塁、田中義雄の当りはショート後方への小飛球、これがレフト黒沢俊夫の前にポトリと落ちてタイムリーテキサスリーガーズヒット、1-2とする。

 阪神は5回、先頭の三輪八郎がライトスタンドに同点ホームランを叩き込んで2-2と追い付く。

 西鉄は6回、先頭の富松が4球ファウルで粘って四球を選び、中村民雄の一ゴロはスコアカードには「3.4-3」で一塁アウトと記載されており、をファースト景浦のミットを弾いた打球をセカンド藤村がバックアップして、景浦が素早く一塁ベースに戻ってアウトにした。この間に富松は二塁に進み、鵜飼は中飛に倒れて二死二塁、ここで山田がセンター右に決勝タイムリーを放ち3-2と勝ち越す。

 野口二郎は7回以降阪神の反撃を無安打に封じ込め、5安打4四球3三振の完投で24勝目をあげる。西鉄は秋季リーグ戦優勝に向けて大きく前進した。

 山田秀夫が先制ツーランと決勝タイムリーを放つ活躍を見せた。山田は7・8月の月間MVPに選出される活躍を見せた後、9月に入って試合出場が無くなったが10月に入って戦列に復帰し、この日爆発した。荏原中学からプロ入りして在籍は昭和18年のみとなる。この日のホームランがプロでの唯一の本塁打であった。


 三輪八郎が一時同点となる本塁打を放ったが、三輪にとってもこれがプロでの唯一のホームランであった。三輪はこの後戦死することとなる。福田赳夫、中曽根康弘と二人の総理大臣を輩出した名門・高崎中学(現・群馬県立高崎高等学校、地元では「タカタカ」と呼ばれる)の出身で、松木謙治郎は著書「タイガースの生いたち」に「もし復員しておれば、戦後阪神にエースとして活躍したと思われるだけに、惜しい左腕投手を失ったものだ。」と書いている。


 

2017年12月25日月曜日

藤本英雄がスタメンセカンド


 昭和18年11月3日、藤本英雄がスタメンセカンドに入った背景について考察してみましょう。

 同年10月21日、明治神宮外苑競技場で「出陣学徒壮行会」が挙行されました。

 2017年8月12日にNHK総合で放映された野口4兄弟を描いたドラマ「1942年のプレイボール」制作過程において、当ブログが「資料提供者」として協力させていただいたことは既報のとおりです。

 NHK取材陣は、当ドラマ制作に当たって、現在も生存されている古川清蔵氏へのインタビューに成功しました。2014年のプロ野球80周年当時、野球殿堂博物館の関係者が古川氏へのインタビューを試みましたが断られたという経緯があります。こちらも野球殿堂博物館関係者から直接聞かせていただいた事実です。

 NHKのOB記者の方が古川氏と旧知の間柄だったことから、古川氏はNHKの取材を受諾されました。その中で、古川氏も当時大学に籍を置いていたことから「出陣学徒壮行会」に参加され、直後に鹿児島に帰って徴兵検査を受検したと明かされました。古川清蔵は、10月27日の阪急戦まで出場していますが、10月30日の阪神戦よりグラウンドから姿を消し、11月6日の阪神戦と7日のシーズン最終戦となる西鉄戦に復帰して出場します。

 徴兵検査に赴く直前、古川清蔵の成績は、10月24日の阪急戦は3打数無安打、26日の南海戦も3打数無安打、27日の阪急戦は5打数無安打。ところが、復帰後の11月6日の阪神戦では4打数1安打二塁打1本で勝利打点を記録、11月7日の西鉄戦では5打数3安打2盗塁を記録して戦場に旅立ちました。徴兵検査を受検してふっきれたのでしょうか。

 巨人の三塁手小池繁雄も10月19日の大和戦までは出場していますが、「出陣学徒壮行会」直後の10月23日から姿を消し、4試合を欠場して復帰した10月31日の名古屋戦で満塁走者一掃の三塁打を放ち戦場に旅立ちました。

 巨人の二塁手坂本茂も10月30日の阪急戦を最後にグラウンドから姿を消し、11月3日には藤本英雄がスタメンセカンドに名を連ねる事態となったのです。

 古川清蔵は1922年3月生れ、小池繁雄は1922年8月生れ、坂本茂は1921年4月生れの同年代となります。

 

18年 朝日vs巨人 12回戦


11月3日 (水) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 朝日 41勝36敗7分 0.532 真田重蔵
1 0 0 0 0 0 0 1 X 2 巨人 54勝27敗2分 0.667 須田博

勝利投手 須田博     10勝5敗
敗戦投手 真田重蔵 13勝13敗

二塁打 (朝)中谷 (巨)藤本

勝利打点 中島治康 9

猛打賞 (巨)白石敏男 5


須田博、2安打完封

 巨人は五番セカンドで藤本英雄がスタメン出場。

 巨人は初回、先頭の呉昌征が四球を選んで出塁、白石敏男の中前打で呉は三塁に進んで無死一三塁、中島治康の中犠飛で1点を先制する。

 巨人は8回、先頭の白石が三塁線にセーフティバントを決めて出塁、中島は左飛、小暮力三は三邪飛に倒れて二死一塁、藤本英雄が左中間に二塁打を放って白石が一塁から長駆ホームを駆け抜け2-0とする。

 巨人先発の須田博は快調なピッチング。初回、先頭の坪内道則に三塁線セーフティバントを決められるが、後続を抑えるとエンジン全開、2回~8回は無安打ピッチング。2点にリードを広げてもらった9回、二死後中谷順次に左中間を抜かれる二塁打、大友一明に四球を許して二死一二塁、最後は小林章良を三振に打ち取り、2安打4四球6三振で今季3度目の完封、10勝目をあげる。

 8回まで1安打ピッチングの須田は9回にピンチを迎えたが、8回に藤本の二塁打で1点追加して2点差にリードを広げてもらったことが大きかった。勝利打点は先制犠飛の中島治康に記録されるが、「真の殊勲打」は藤本英雄となる。藤本がセカンドでスタメン出場した背景は別途お伝えします。

 

2017年12月24日日曜日

18年 名古屋vs南海 12回戦


11月3日 (水) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 名軍 46勝29敗7分 0.613 石丸進一
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 南海 26勝56敗2分 0.317 丸山二三雄

勝利投手 石丸進一   19勝12敗
敗戦投手 丸山二三雄 7勝20敗

二塁打 (名)加藤

勝利打点 金山次郎 3


石丸進一、1安打完封

 南海は初回、先頭の安井亀和は遊ゴロ、猪子利男は三ゴロ、岡村俊昭が右前打を放って二死一塁、四番ファースト別所昭の当りはセンターライナーとなって無得点。

 南海は2回、先頭の鈴木芳太郎の当りはスコアカードには「1.6'」で出塁と記録されている。鈴木の強い当りの投ゴロをピッチャー石丸進一が弾いてバックアップのショート金山がエラーしたと考えられます。続く堀井数男は四球を選んで無死一二塁、八木進の投前送りバントを石丸進一が三塁に送球して二走鈴木は三封、丸山二三雄の遊ゴロが「6-4-3」と渡ってダブルプレー。

 名古屋は1回~3回まで1本ずつヒットを放つが無得点。4回~7回は丸山の前に三者凡退に抑え込まれる。

 名古屋は8回、一死後芳賀直一が中前打で出塁、石丸進一の三ゴロの間に芳賀は二進、トップに返り石丸藤吉は四球を選んで二死一二塁、金山がセンター右に決勝のタイムリーを放って1-2と勝ち越す。

 石丸進一は2回以降、5四球を出しながら南海打線を無安打に抑え込み、1安打5四球2三振で今季6度目の完封、19勝目をマークする。石丸は10月12日の大和戦でノーヒットノーランを達成しており、あわや2ヶ月連続快挙達成というところであった。

 

18年 阪神vs大和 12回戦


11月3日 (水) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
0 0 0 0 0 0 0 3 1  0   0  4 阪神 41勝34敗6分 0.547 三輪八郎 若林忠志
2 0 0 1 0 0 0 1 0  0 1X  5 大和 35勝42敗6分 0.455 石田光彦

勝利投手 石田光彦 11勝12敗
敗戦投手 若林忠志 24勝14敗

二塁打 (神)景浦
三塁打 (和)鈴木
本塁打 (和)高橋 1号

勝利打点 木村孝平 4

猛打賞 (和)小松原博喜 1


木村孝平、サヨナラスクイズタイムリー内野安打

 大和は初回、一死後岡田福吉が四球を選んで出塁、小島利男の左前打で一死一二塁、高橋吉雄の投ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、ここで小松原博喜が左前打、二者還るタイムリーとなって2点を先制する。

 大和は4回、一死後木下政文の当りは三ゴロ、これをサード玉置玉一が一塁に送球する間に打者走者の木下は二塁に進み、鈴木秀雄の一ゴロの間に木下は三進して二死三塁、石田光彦の中前タイムリーで3-0とリードを広げる。

 大和先発の石田光彦に7回まで内野安打1本の無得点に抑えられてきた阪神は8回、本日一番に入っている先頭の御園生崇男がショートに内野安打、金田正泰が四球を選んで無死一二塁、藤村冨美男が中前にタイムリーを放って1-3、景浦将のセンター左奥への二塁打で二者還り3-3の同点に追い付く。

 大和は8回裏、一死後高橋吉雄がレフトスタンドにライナーで本塁打を叩き込み4-3と勝ち越す。

 阪神は9回表、先頭の田中義雄が左前打で出塁、代走に上田正を起用、トップに返り御園生が送りバントを決めて一死二塁、金田は四球、藤村冨美男は三振に倒れるが、景浦がストレートの四球を選んで二死満塁、門前真佐人が押出しの同点四球を選んで4-4とする。

 大和は11回裏、先頭の鈴木秀雄が右中間に三塁打、石田は投ゴロに倒れるが、杉江文二がストレートの四球を選んで一死一三塁、トップに返り木村孝平がサヨナラスクイズバントを決めて大和がサヨナラ勝ち。木村の記録は内野安打である。したがって、サヨナラタイムリーと記録されるが、真相はサヨナラスクイズである。

 石田光彦は延長11回を6安打4三振、12四球を与えるが4失点の完投で11勝目をあげる。

 決勝点は鈴木秀雄の三塁打と木村孝平のサヨナラスクイズによるものであった。この二人は、昭和18年、6・7月の月間MVPに輝く活躍を見せたが、その実力はほとんど知られていない。戦前屈指の強打のショートストッパー木村孝平は戦死することとなる。鈴木秀雄は生き延びて昭和21年には中部日本に在籍するが、その後の消息は知られていない。


 

2017年12月18日月曜日

プッシュバント


 お伝えしたとおり、昭和18年11月3日「阪急vs西鉄 12回戦」、阪急8回表の攻撃で、山田伝が「プッシュバント」を決めて出塁して1点を追加しました。

 慶應式スコアカードは打球方向が記載されますので、山田のバントヒットが二塁前へ転がしたものであることが分かります。ある程度野球を知っている方であれば、「プッシュバント」であることがご理解いただけるでしょう。早稲田式スコアカードでは文字で補足説明することになるでしょうか。


*山田伝のバントヒットは二塁前に転がしたプッシュバント。その後二盗を決め、二番上田藤夫の送りバントでピッチャー重松通雄が自ら一塁ベースに駆け込む隙を突いて二塁から一気にホームを駆け抜けたことが分かります。


 

18年 阪急vs西鉄 12回戦


11月3日 (水) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 3 0 0 0 0 1 0 4 阪急 31勝51敗2分 0.378 天保義夫
0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 西鉄 37勝36敗8分 0.507 近藤貞雄 重松通雄

勝利投手 天保義夫 11勝15敗
敗戦投手 近藤貞雄   5勝5敗

二塁打 (西)農人、野口二郎、富松

勝利打点 なし


天保義夫、完投で11勝目

 阪急は3回、一死後中村栄が四球を選んで出塁、トップに返り山田伝の打席でピッチャー近藤貞雄からの牽制に一走中村が釣り出されて一二塁間で挟殺プレー、「1-3-6-1-4-1」と転送されるが最後に近藤が落球して中村は二塁に進み、山田は四球を選んで一死一二塁、上田藤夫の遊ゴロをショート濃人渉が一塁に悪送球する間に二走中村はホームインして1-0、カバーに走ったキャッチャー中村民雄が一塁に送球するとこれも悪送球、三塁に進んでいた一走山田もホームインして2-0、打者走者の上田は二塁に進み、高橋敏が中前にタイムリーを放って3-0とする。

 西鉄は3回裏、先頭の鵜飼勉が四球を選んで出塁、近藤に代わる代打重松通雄は三振、トップに返り中村信一が四球を選んで一死一二塁、濃人がレフト戦に二塁打を放って1点返し1-3、野口二郎はストレートの四球で一死満塁、しかし野口明のとうごろで三走中村信一は本封、黒沢俊夫も三振に倒れて同点機を逸す。

 西鉄は代打に出た重松がそのまま4回からマウンドに上がる。降板した近藤は3失点ながら自責点はゼロ。

 4回~7回まで二番手重松の下手投げに無安打に抑えられてきた阪急は8回、先頭の山田が二前にプッシュバントを決めて出塁、山田が二盗に成功して無死二塁、上田がピッチャーとファーストの間に送りバント、一塁ベースががら空きとなってピッチャー重松がそのまま一塁ベースに駆け込んで上田はアウト、しかしこのプレーを見て三塁に進んでいた山田が一気にホームに駆け込み4-1とする。上田には犠打と打点が記録された。

 天保義夫は7安打7四球5三振の完投で11勝目をマークする。

 西鉄は相変わらず打撃好調であるがこの日は13残塁を記録。三番野口二郎は4残塁、四番野口明は3残塁、六番富松信彦は3残塁と、打線のつながりを欠いた。守備でも3回に3失策を記録して3失点、これが敗因となった。

 

2017年12月17日日曜日

18年 名古屋vs朝日 12回戦


11月2日 (火) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 2 0 0 0 2 0 5 名軍 45勝29敗7分 0.608 野口正明
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 朝日 41勝35敗7分 0.539 内藤幸三

勝利投手 野口正明 11勝4敗
敗戦投手 内藤幸三   8勝12敗

二塁打 (名)石丸藤吉、加藤2

勝利打点 なし


野口正明、オール内野安打で完封

 名古屋は初回、先頭の石丸藤吉が三塁線に二塁打、金山次郎がセオリー通り三前に送りバントを決めて一死三塁、西沢道夫は遊飛に倒れるが、吉田猪佐喜が四球を選んで二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて1点を先制する。

 名古屋は4回、一死後加藤正二の当りは二ゴロ、これをセカンド大友一明がエラー、加藤が二盗を決めて岩本章は四球、藤原鉄之助は中飛に倒れるが、芳賀直一がストレートの四球を選んで二死満塁、野口正明が中前にタイムリーを放って2-0、トップに返り石丸藤吉も中前にタイムリーを放ち3-0とリードを広げる。

 名古屋は8回、先頭の吉田が中前打で出塁、加藤のライト線二塁打で無死二三塁、岩本章は二飛に倒れるが、藤原の打席でキャッチャー小林章良がパスボール、三走吉田がホームに突っ込み、ピッチャー内藤幸三がホームカバー、キャッチャー小林が内藤に送球するが悪送球、この間に三塁に進んでいた加藤もホームに還って5-0とする。小林には捕逸と失策が記録された。

 野口正明は快調なピッチングを見せて5安打3四球2三振で今季2度目の完封、11勝目をあげる。打たれた5安打は、酒沢政夫と森本清三のバントヒットを含んで全て内野安打、外野飛球は10個あったので名古屋外野陣はヒマではなかった。

 

2017年12月15日金曜日

18年 巨人vs南海 12回戦


11月2日 (火) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 3 0 0 0 0 0 0 4 巨人 53勝27敗2分 0.663 中村政美 藤本英雄
1 0 0 0 0 1 0 0 1 3 南海 26勝55敗2分 0.321 政野岩夫 清水秀雄

勝利投手 中村政美 4勝5敗
敗戦投手 政野岩夫 0勝3敗
セーブ     藤本英雄 3

二塁打 (南)長谷川、岡村
三塁打 (巨)青田、中島

勝利打点 中島治康 8


中島治康、決勝三塁打

 南海は初回、一死後猪子利男が四球を選んで出塁、岡村俊昭もストレートの四球を選んで一死一二塁、鈴木芳太郎は中飛に倒れるが、堀井数男も四球を選んで二死満塁、中野正雄が10球ファウルで粘り、中村政美に14球投げさせて押出し四球を選び1点を先制する。

 巨人は2回、先頭の青田昇がライト線に三塁打、川畑博の右前タイムリーで1-1と追い付く。

 巨人は3回、先頭の呉昌征が四球から二盗に成功、白石敏男も二盗を決めて無死一二塁、中島治康がライト線に三塁打を放って二者還り3-1と勝ち越す。ここで南海ベンチは先発の政野岩夫から清水秀雄にスイッチ、小暮力三は三振に倒れるが、中村政美が中前にタイムリーを放って4-1とする。

 南海は6回、先頭の中野正雄がストレートの四球で出塁、八木進の左前打で無死一二塁、清水の右前打で無死満塁、巨人ベンチはここで先発の中村政美から藤本英雄にスイッチ、長谷川善三が打撃妨害を受けて三走中野が還り2-4と追い上げる。

 巨人は7回、先頭の小池繁雄が死球を受けて出塁、しかしピッチャー清水からの牽制にタッチアウト、呉も死球を受けて一死一塁、白石敏男の中前打で一死一三塁、しかし中島の投ゴロが「1-6-3」と渡ってダブルプレー。

 南海は9回裏、先頭の岡村が左中間に二塁打、鈴木は三振、パスボールで岡村は三進、堀井の二ゴロの間に三走鈴木が還って3-4の1点差、しかし中野に代わる代打別所昭が三振に倒れてゲームセット。

 中村政美は5回3分の0を投げて8四球を出すが、藤本英雄のリリーフを受けて4勝目をマークする。

 南海二番手の清水秀雄は7回を投げて4安打2四球2死球7三振無失点であった。

 

2017年12月14日木曜日

11月2日


 お伝えしたとおり、昭和18年11月2日、景浦将が生涯最後のホームランを放ちました。

 その9年前、昭和9年11月2日にベーブ・ルースが来日しました。

 そしてその24年後、昭和33年11月2日に私が産まれました。

 すなわち、景浦が最後のホームランを打った15年後の11月2日が私の誕生日です。



 

18年 阪神vs西鉄 11回戦


11月2日 (火) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 阪神 41勝33敗6分 0.554 若林忠志
0 0 0 0 1 0 0 1 X 2 西鉄 37勝35敗8分 0.514 野口二郎

勝利投手 野口二郎 23勝12敗
敗戦投手 若林忠志 24勝13敗

二塁打 (西)富松

本塁打 (神)景浦 3号

勝利打点 なし

猛打賞 (西)野口明 3


景浦将、生涯最後のホームラン

 阪神は2回、先頭の景浦将がレフトスタンドにホームランを叩き込んで1点を先制する。

 西鉄は5回、先頭の富松信彦がライト線にに二塁打、中村民雄の遊ゴロの間に富松は三進、山田秀夫が中前に同点タイムリーを放って1-1とする。

 西鉄は8回、一死後野口二郎が二遊間にヒット、野口明の右前打で一死一二塁、黒沢俊夫はストレートの四球を選んで一死満塁、富松の一ゴロの間に三走野口二郎が生還、これが決勝点となって西鉄が2対1で勝利する。

 野口二郎は7安打1四球4三振の完投で若林忠志との投合いを制し23勝目をあげる。兄の野口明が4打数3安打で猛打賞を記録した。

 1対1の同点で迎えた西鉄8回裏の攻撃、一死満塁から富松信彦の一ゴロの間に三走野口二郎が生還しているので、通常であれば富松に勝利打点が記録されるところですが、この一打で富松に打点が記録されていいないので当然にして勝利打点も記録されない。

 異例なケースなので、「雑記」」欄の記載について詳しく説明させていただきます。
 例によって山内以九士による判読し難い字で書かれていますので若干の推測も含まれます。富松の一ゴロは、ファースト景浦将がきちんと捕球していれば併殺又は本塁封殺が可能であったとされて富松に「打点」が記録されませんでした。ならばファースト景浦に「失策」が記録されるはずですが、打者走者の富松を避けたことによるものと判定されて景浦には「失策」は記録されていません。以上の経緯から、ピッチャー若林忠志にも「自責点」は記録されていません。ということで、当ブログが独自に算出している「勝利打点」も「なし」という結果となりました。


 景浦将が放った第3号ホームランは、戦前最強のスラッガーとも言われる景浦にとって、生涯最後のホームランとなった。

 

2017年12月12日火曜日

18年 大和vs阪急 12回戦


11月2日 (火) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
4 0 0 0 1 0 0 1 0 6 大和 34勝42敗6分 0.447 片山栄次 金子裕 石田光彦
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急 30勝51敗2分 0.370 笠松実
 
勝利投手 片山栄次 12勝19敗
敗戦投手 笠松実      9勝14敗

二塁打 (和)小島2 (急)松本

勝利打点 小島利男 3

猛打賞 (和)小島利男 3


小島利男爆発

 大和は初回、先頭の木村孝平が四球を選んで出塁、岡田福吉は中飛に倒れるが、キャッチャー安田信夫からの一塁牽制が悪送球となって一走木村は一気に三塁に進み、小島利男が左中間に二塁打を放って1点を先制、高橋吉雄の三ゴロをサード伊藤健一が一塁に悪送球して一死二三塁、小松原博喜のレフト線タイムリーで2-0として一死一三塁、小松原が二盗を決めて一死二三塁、木下政文が中前に2点タイムリーを放ってこの回4点を先制する。

 大和は5回、一死後岡田の当りは三ゴロ、これをサード伊藤がエラー、岡田が二盗を決めて一死二塁、小島が中前にタイムリーを放って5-0とする。

 小島利男は3回の第2打席でも左中間に2打席連続となる二塁打を放っており、これで猛打賞となった。

 大和は8回、先頭の高橋が左前打で出塁、小松原は四球を選んで無死一二塁、木下の遊ゴロで小松原が二封されて一死一三塁、鈴木秀雄の左犠飛で6-0とリードを広げる。

 大和先発の片山栄次は7回まで阪急打線を4安打1四球1三振無失点の好投。ところが大和ベンチは8回から今季初登板となる金子裕をマウンドに送る。

 阪急は8回、先頭の遠山晴富に代わる代打高橋敏が四球を選んで出塁、伊藤に代わる代打大平茂の二ゴロの間に高橋は二進、トップに返り山田伝はストレートの四球で一死一二塁、大和ベンチはここで金子に代えて石田光彦を三番手としてマウンドに送り、上田藤夫の三ゴロをサード木下が三塁ベースを踏んでから一塁に送球してダブルプレー。

 石田は阪急最終回の攻撃を三者凡退に退け、大和が逃げ切る。

 小島利男が4打数3安打1得点2打点、二塁打2本と爆発した。昭和初期の東京六大学野球全盛期における最大のスター選手であった小島利男はプロに入ってからは不遇であったと言えるかもしれない。今ではほとんど知られていない小島利男を伝える唯一の書籍は、妻である松竹少女歌劇団のスターであった小倉みね子(本名:小島千鶴子)が残した「小島利男と私 都の西北と松竹少女歌劇」のみである。

 

2017年12月11日月曜日

18年 第17節 週間MVP


 今節は24試合の長丁場。
 
 西鉄が5勝0敗1分、朝日が4勝1敗1分、阪神が4勝2敗、巨人が3勝2敗、名古屋が3勝3敗、阪急が2勝4敗、大和が2勝5敗、南海が0勝6敗であった。


週間MVP

投手部門

 西鉄 野口二郎 2

 今節3勝0敗1セーブ、2完封。西鉄快進撃を引っ張る。

 名古屋 野口正明 1

 今節2勝1敗1セーブ。野口兄弟ではありません。


打撃部門

 朝日 坪内道則 3

 2試合連続4安打を含めて24打数13安打、24打数13安打8得点4打点5盗塁

 西鉄 富松信彦 1

 26打数7安打3得点打点、V打2、真の殊勲打1
 西鉄 黒沢俊夫 3
 
 22打数10安打6得点3打点8四球

 西鉄 野口明 1

 23打数8安打6得点4打点6四球

 巨人 白石敏男 3
 
 20打数9安打3得点4打点4四球


殊勲賞

 南海 堀井数男 1

 21打数5安打3得点8打点

 名古屋 加藤正二 2

 10月27日の阪急戦で決勝スリーラン

 巨人 小池繁雄 1

 10月31日の名古屋戦で満塁走者一掃の三塁打

 阪神 金田正泰 1

 10月31日の阪急戦で決勝ホームラン


敢闘賞

 朝日 森本清三 3

 23打数8安打2得点4打点5四球

 名古屋 藤原鉄之助 2

 20打数9安打3得点1打点

 名古屋 吉田猪佐喜 2

 24打数10安打4得点

 西鉄 中村信一 2

 21打数6安打7得点2打点9四球

 南海 安井亀和 1

 22打数8安打2得点1打点


技能賞

 阪急 安田信夫 1
 
 10月24日の名古屋戦4回に2盗塁を刺す。10月30日の巨人戦でも初回に2補殺

 朝日 中谷順次 1

 10月26日の阪神戦で1安打ながら4打点

 阪急 高橋敏 2

 10月24日の名古屋戦で四番ピッチャー、完投勝利、勝利打点

 阪神 玉置玉一 1

 10月30日の名古屋戦で決勝タイムリーセーフティバント

 大和 木村孝平 1

 10月31日の南海戦で決勝スクイズ
 

2017年12月4日月曜日

Out Above Average


 外野守備の指標として「OAA」(Out Above Average)が注目されています。

 要は、外野守備では派手なダイビングキャッチなどには意味がなく、「スタート」が肝心であるという、40年前に私が現役であった頃からの常識が現在のメジャーリーグで再認識されているだけです。

 スタートが遅れただけのダイビングキャッチなどには何の意味もない。私が東京六大学野球準硬式リーグ戦で外野手時代、ダイビングキャッチもやったことはありますが、自分で最も納得のいく守備は、打者のスウィングから打球方向を読んで好スタートを切った時でした。「OAA」ですね(笑)。

 

カーブ復活


 肘に悪いと言われて日本では少年野球からカーブを禁じてスライダー全盛となっていますが、メジャーリーグでは「フライボール革命」に対抗するには「カーブ」が有効であることが立証されています。

 今季ワールドシリーズを制覇したヒューストン・アストロズは、打撃では「フライボール革命」、投手陣は各チームから「カーブの名手」をかき集めて成功しました。

 今、NHK-BSでやっていますからご確認ください。

 

2017年12月2日土曜日

18年 朝日vs西鉄 12回戦


10月31日 (日) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 2 1 0 0 0 3 朝日 41勝34敗7分 0.547 真田重蔵
0 5 0 0 0 0 0 0 X 5 西鉄 36勝35敗8分 0.507 野口二郎

勝利投手 野口二郎 22勝12敗
敗戦投手 真田重蔵 13勝12敗

二塁打 (朝)渡辺時信、大友

勝利打点 山田秀夫 4


山田秀夫、決勝タイムリー

 西鉄は2回、先頭の黒沢俊夫が左前打で出塁、中村民雄の投ゴロをピッチャー真田重蔵が二塁に悪送球、富松信彦は三振に倒れるが、鵜飼勉はストレートの四球を選んで一死満塁、山田秀夫が右前に先制タイムリーを放って1-0、ここで真田がワイルドピッチを犯して2-0、中村信一が右前に先制タイムリーを放ち3-0、中村が二盗を決めて一死二三塁、濃人渉も三塁線にタイムリーを放って4-0、野口二郎の二ゴロをセカンド大友一明がエラーする間に三走中村信一が還って5-0、野口二郎には打点が記録される。

 西鉄先発野口二郎の前に4回まで無安打に抑え込まれていた朝日は5回、先頭の大友が四球を選んで出塁、田中雅治は中飛に倒れるが、早川平一が左前打を放って一死一二塁、渡辺時信が5球ファウルで粘った末レフト線に二塁打を放って1-5、真田の中犠飛で2-5と追い上げる。

 朝日は6回、先頭の森本清三が三塁線にバントヒット、酒沢政夫が中前打で続いて無死一二塁、中谷順次の遊ゴロで酒沢が二封されて一死一三塁、ここで一走中谷がディレードスチール、キャッチャー中村民雄が二塁ベースカバーのショート濃人に送球すると酒沢は一塁に戻り、濃人がファースト野口明に送球すると三走森本がスタートの構え、野口明からサード中村信一に送球されて森本はタッチアウト、この間に一走中谷は二塁に進んで二死二塁、大友が左中間に二塁打を放って3-5とし、試合は分からなくなってきた。

 しかし野口二郎は7回、8回、9回を無失点で切り抜け、7安打2四球7三振の完投で22勝目をあげる。

 西鉄3回の攻撃、先頭の中村民雄が左前打、富松も左前打を放って無死一二塁、ここでエンドランを仕掛けるが鵜飼勉の当りはレフトライナー、レフト早川からセカンド大友、大友からファースト森本に送球されててトリプルプレーが記録された。


*三重殺のシーン。





 

18年 大和vs南海 12回戦


10月31日 (日) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  2  2 大和 33勝42敗6分 0.440 片山栄次 石田光彦
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0  0 南海 26勝54敗2分 0.325 清水秀雄
 
勝利投手 石田光彦 10勝12敗
敗戦投手 清水秀雄   2勝3敗

勝利打点 木村孝平 3


大和、バント攻勢が奏功

 大和は初回、一死後呉新亨が三前にバントヒット、呉がスタートを切るが高橋吉雄の当りは左飛、呉が戻れず「7-4-3」と渡ってダブルプレー。

 南海は1回裏、先頭の安井亀和がライト線にヒット、猪子利男が送って一死二塁、岡村俊昭の中前打で一死一三塁、しかし堀井数男の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。

 大和は4回、先頭の木村が投前にバントヒット、しかしキャッチャー八木進からの牽制にタッチアウト、呉が四球から二盗に成功、高橋は三振に倒れるが、小島利男が四球を選んで二死一二塁、しかし小松原博喜は三振に倒れて無得点。

 大和は5回、先頭の木下政文が四球を選んで出塁、鈴木秀雄が投前に送りバントを決めて一死二塁、片山栄次は三振に倒れるが、岡田福吉が三塁線にヒットを放ち二死一三塁、しかしトップに返り木村は三ゴロに倒れて無得点。

 大和は7回、先頭の小松原が四球で出塁すると木下が投前に送りバントを決めて一死二塁、しかし鈴木は三振、片山も一ゴロに倒れて無得点。

 大和は8回、先頭の岡田が左前打で出塁、トップに返り木村が投前に送りバントを決めて一死二塁、ここも呉が中飛、高橋が三ゴロに倒れて無得点。

 大和はここまで2本のバントヒットと3つの送りバントを成功させるが無得点が続いた。

 南海は9回裏、先頭の岡村がストレートの四球で出塁、堀井が投前に送りバント、鈴木芳太郎は歩かされて一死一二塁、大和ベンチはここまで無失点の片山栄次を下げて石田光彦をリリーフに送り、清水の一ゴロが「3-6-3」と渡ってダブルプレー。

 大和は10回、先頭の鈴木が右前打を放って出塁、石田が一塁線にバントヒットを決めて無死一二塁、岡田が三前に送りバントを決めて一死二三塁、トップに返り木村が投前に決勝スクイズを決めて1-0、呉が三遊間タイムリーで続いて2-0とリードする。

 石田光彦は10回裏、7回の代打からファーストに入っている別所昭を三ゴロ、八木進を三振、長谷川善三も三振に打ち取る好リリーフを見せて10勝目をマークする。
 決勝点を木村孝平のスクイズバントでもぎ取った大和はこの試合で3本のバントヒットと5個の犠打を記録した。


 石田光彦が10勝目をあげたことにより、大和は畑福俊英、片山栄次と共に3人の二桁勝利投手を輩出した。昭和18年に3人の投手が二桁勝利を記録したのは、8球団で大和だけである。

 

18年 巨人vs名古屋 12回戦


10月31日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 4 0 0 0 0 0 1 0 5 巨人 52勝27敗2分 0.658 藤本英雄
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 名軍 44勝29敗7分 0.603 石丸進一

勝利投手 藤本英雄 34勝11敗
敗戦投手 石丸進一 18勝12敗

二塁打 (巨)小暮
三塁打 (巨)小池

勝利打点 青田昇 10


小池繁雄、満塁走者一掃の三塁打

 巨人は2回、先頭の小暮力三が右前打で出塁、この試合で五番に入っている藤本英雄が三前に送りバント、これをサード小鶴誠が一塁に悪送球、犠打とエラーが記録されて無死一三塁、六番サードで先発出場の中村政美がピッチャー強襲ヒット、三走小暮は動かず無死満塁、青田昇の中犠飛で1点を先制、八番キャッチャー川畑博が四球を選んで一死満塁、ここで小池繁雄が右中間に走者一掃の三塁打を放って3点を加え4-0とする。

 その後巨人は5回まで無安打。6回、一死後小暮が右中間に二塁打を放つが無得点。7回も二死後小池が四球、トップに返り呉昌征がセンター右にヒットを放つが白石が中飛に倒れて無得点。

 巨人は8回、先頭の中島治康が中前打で出塁、小暮は右飛に倒れるが中島が二盗に成功、藤本英雄の遊ゴロの間に中島は三進、中村の二塁への内野安打がタイムリーとなって5-0とリードを広げる。

 巨人先発の藤本英雄は会心のピッチング。1回、2回は三者凡退。3回、4回は1四球を与えるが無失点。5回は二死後三ゴロをファースト小暮が落球するが無失点。6回もエラーと四球で二死一二塁とするがここまで無安打無得点を続ける。

 しかし7回、先頭の西沢道夫がレフト線に初ヒット、続く3人は凡退。

 藤本英雄は8回、9回と1四球ずつを与えるが、1安打5四球4三振で今季18回目の完封、34勝目をマークする。