2010年7月31日土曜日

12年春 タイガースvs名古屋 8回戦

7月8日 (木) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 1 0 0 2 0 2 0 6 タイガース 40勝12敗1分 0.769 若林忠志
0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 名古屋   19勝33敗    0.365 木下博喜-田中実


勝利投手 若林忠志 8勝1敗
敗戦投手 木下博喜 3勝11敗


二塁打 (タ)藤井 
三塁打 (タ)山口、藤井


松木の執念に景浦が応えて先制


 タイガースは初回、松木謙治郎四球から盗塁、一死後山口政信の三ゴロで松木が飛び出す、白球は5-4-5-6-4と転送されてタッチアウト、しかし松木の時間稼ぎの間に山口は二塁に進む。そして景浦将が左前に先制タイムリー。松木の執念に弟分の景浦が応えて1点を先制(松木著「タイガースのおいたち」によると松木は景浦を実の弟のように思っていたとのこと)。挟まれるのは仕方がない、問題はそこからの対処であり次のランナーが進塁する時間を稼ぐべきである。昨今の挟殺プレーを見ていると挟まれた走者には次のランナーを進めてやろうという意欲が見えず、次のランナーには次の塁を奪ってやろうという意欲に欠けているケースが圧倒的に多い。そもそも「大脱走」に見られるように欧米では捕虜になった場合は後方をかく乱する義務が課せられていたが大日本帝国では捕虜となること自体が恥ずべきこととなっていた。ところが昭和12年当時には塁間に挟まれた走者(戦争における捕虜のようなもの)は何とか次の走者を進めよう(すなわち後方かく乱義務を果たそう)と努力しているケースが目立つことは当ブログを読んできていただいている方々はお気づきのことと思う。しかるに平成の世になってからは塁間に挟まれること(捕虜となること)が大日本帝国時代の恥ずべきことに戻ってしまったのかヘラヘラと挟まれているケースが散見される。松木や三原のプレーをスコアブックに残された記録から追っていくと、何故二人が玉砕してもおかしくなかった戦地から生きて戻ってきたのかが分かるような気がする。

 タイガースは3回、二死から藤井勇が左翼線に二塁打、続く山口が右前にタイムリーして2-0。更に6回、藤井が四球で出塁、山口の中越え三塁打で3-0、奈良友夫の右飛がライト白木一二からショート芳賀直一に返球される隙を突いて山口がホームに駆け込み4-0、このケースでは犠飛は記録できない。

 若林忠志は6回まで名古屋打線を3安打無得点に抑える。名古屋は7回、白木が左前打で出塁、前田喜代士の左飛をレフト藤井が落球、芳賀直一の送りバントが内野安打となり無死満塁、7回からマウンドに上がった田中実は二ゴロゲッツー、この間に三走白木が還り1-4とする。しかしタイガースは8回、松木四球、藤井が右中間に三塁打して5-1、奈良の遊失の間に藤井が還り6-1とリードを広げる。

 若林は8回、9回とランナーを出しながらも要所を締めて7安打1四球4三振の完投で8勝目をあげる。

 このカードはタイガースが5勝3敗。結果からみるとタイガースは名古屋を苦手としたことが昭和12年春季リーグ戦の優勝を逃す原因となったのである。

12年春 阪急vs金鯱 8回戦

7月8日 (木) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 3 0 4 阪急 26勝23敗2分 0.531 笠松実-丸尾千年次-石田光彦
1 2 0 0 1 0 0 3 X 7 金鯱 21勝28敗1分 0.429 古谷倉之助


勝利投手 古谷倉之助 13勝12敗
敗戦投手 笠松実     7勝8敗


二塁打 (阪)西村 (金)濃人
本塁打 (金)瀬井 3号


二つの送りバントが巨艦を沈める


 阪急のクリーンナップトリオは三番サード宮武三郎、四番ファースト山下実、五番センター山下好一と今季初めて慶應トリオが占める。

 阪急は初回、先頭の西村正夫が左中間に二塁打、二番ショート倉本信護が四球で無死一二塁として強力クリーンナップトリオを迎える。しかし宮武は一飛、山下実は二直、山下好一は遊ゴロに倒れてランナーを進めることもできず二者残塁。ここは今季の阪急を象徴するシーンとして記憶されるべき場面である。
 金鯱は1回裏、先頭の濃人渉が左翼線に二塁打、こちらは島秀之助が投前に送りバントを決めて一死三塁、笠松実のワイルドピッチで濃人が生還して1点を先制。更に2回、一死後黒澤俊夫、五味芳夫の連打で一死一二塁、笠松の二塁牽制が悪送球となりランナーはそれぞれ進塁、センター山下好一はホームに返球するがこれが暴投となる間に黒澤がホームに還る。更にバックネットまで追ったキャッチャー島本義文からの返球が悪送球となり五味まで生還して3-0とする。

 金鯱は5回、二死無走者で瀬井清が左翼スタンドに第3号ホームランを叩き込んで4-0。阪急は6回、山下好一中前打、北井正雄四球から島本が中前にタイムリーを放って1-4と反撃の狼煙をあげる。

 阪急8回、この回先頭の山下実が二失に生き、山下好一四球、北井四球で無死満塁。島本は捕邪飛に倒れて一死満塁、金鯱はここでセカンドを五味から江口行男に交代、川村徳久に代わる代打黒田健吾がセンター右に快打を放ち山下実に続いて山下好一もホームに還り3-4、丸尾千年次は遊直に倒れて二死一二塁、トップに返り西村四球で二死満塁、金鯱はセンターの島秀之助を下げてライト佐々木常助がセンターへ、小林茂太がライトに入る、阪急は倉本に代わる代打重松通雄が押出し四球を選んで遂に4-4の同点に追い付く。

 金鯱は8回裏、この回先頭の黒澤が四球、江口死球で無死一二塁となり阪急は丸尾から三番手石田光彦にスイッチ、バッター相原輝夫の三球目に黒澤が三盗を決めて揺さぶりをかける。相原は右前にタイムリーを放ち5-4、佐々木常助が投前に送りバントを決めて一死二三塁、濃人遊飛で二死二三塁、小林茂の二飛をセカンド宇野錦次が逸らす間に江口が還って6-4、ライト西村からの本塁への返球が暴投となる間に相原も生還して7-4とする。

 古谷倉之助は一度は追い付かれながら6安打8四球2三振と久々にのらりくらり投法を発揮して完投で13勝目を飾る。金鯱はきめの細かい選手交代、黒澤の三盗、そして何といっても二つの送りバントを効果的に決めて巨艦主義の阪急に快勝。岡田源三郎監督快心の試合であろう。

 このカードは4勝4敗のドロー。見応えのある好ゲームの連続であった。金鯱の4勝は全て古谷倉之助の完投勝利、うち完封が2試合ある。4月21日の1回戦は古谷が5安打1四球、2三振で完封、この時点で阪急はジャイアンツと並んで首位を走っていた。5月12日の2回戦は古谷が2安打3四球0三振で完封、古谷快心の投球である。7回戦は延長12回表に金鯱が2点をあげるがその裏阪急が3点入れ返して劇的な逆転サヨナラ勝ち、今季最高の試合であった。

12年春 大東京vsジャイアンツ 8回戦

7月8日 (木) 上井草


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 大東京    19勝29敗4分 0.396 大友一明
0 2 0 0 0 0 0 0 0 2 ジャイアンツ 40勝11敗2分 0.784 スタルヒン


勝利投手 スタルヒン 13勝4敗
敗戦投手 大友一明     3勝11敗


三塁打 (ジ)中島


スタルヒン、24イニングス連続無失点


 大東京は昨日、今日先発予定の菊矢吉男まで注ぎ込んで引分けに持ち込んだ関係で本日は大友一明が先発のマウンドに上る。鬼頭数雄をセカンドに回してレフトには煤孫伝を起用。

 ジャイアンツは2回、二死から内堀保、スタルヒンが連続中前打、呉波四球で二死満塁から水原茂が押出し四球を選んで1点を先制、更に三原脩が左翼線にタイムリーを放って2-0とする。
 現在のスタルヒンには2点の援護で十分であった。前回の無安打無得点に続きこの日も4安打ピッチング、1四球4三振の二試合連続完封で13勝目をあげる。前々回の名古屋6回戦でも6回零封で青柴憲一にマウンドを譲っており、これで24イニングス連続無失点となった。 

 大東京は初回に坪内道則が二失と盗塁でチャンスを作るが水谷則一三振、坪内三盗失敗の三振ゲッツー。6回も鬼頭、坪内の連打でチャンスを作るが水谷は遊ゴロに倒れる。7回には中村三郎がヒットで出塁するが煤孫の一塁小飛球に飛び出しゲッツー。あとはチャンスらしいチャンスも作れず。

 このカードはジャイアンツの6勝1敗1分であったが、終盤の優勝争いが佳境に入った段回で大東京小西徳郎監督の継投策がハマって6月24日の6回戦を7対6で勝利し、7月7日は澤村を向こうに回して近藤-桜井-菊矢の継投で延長12回を1対1の引分けに持ち込んだ。

 ジャイアンツのマジックナンバーは3となりいよいよカウントダウンに入ってきた。

12年春 セネタースvsイーグルス 8回戦

7月8日 (木) 上井草


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 0 0 2 4 7 セネタース 28勝24敗 0.538 伊藤次郎
0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 イーグルス  8勝41敗 0.163 藤野文三郎


勝利投手 伊藤次郎   5勝7敗
敗戦投手 藤野文三郎 1勝6敗


三塁打 (イ)ハリス


綿貫惣司、4打点の活躍


 セネタースは初回、苅田久徳左前打、今岡謙次郎の投ゴロでランナーが入れ替わり今岡盗塁失敗で二死無走者、しかしここから尾茂田叶四球、中村民雄遊ゴロをショートサム高橋吉雄が一塁に悪送球して岩田次男の中前タイムリーで1点を先制する。この後は伊藤次郎の緩球、藤野文三郎のシュートを両軍打ちあぐねてゼロ行進が続く。

 イーグルスは7回、この回先頭のレフト畑福俊英の当りは三ゴロ、これをサード岩田次男が一塁に悪送球、太田健一の送りバントは内野安打となり無死一二塁、藤野の三前送りバントはサード岩田からファーストベースカバーのセカンド苅田に送球されたがこれを苅田がエラーする間に畑福がホームに還り1-1の同点となる。

 しかしセネタースは8回、一死後中村民が三遊間を破って出塁、岩田の遊ゴロを又も高橋が悪送球して一死二三塁、綿貫惣司の左前2点タイムリーで3-1とする。更に9回、一死後苅田、中村信一が連続四球、尾茂田の三塁内野安打で一死満塁、中村民の左前打で二者を迎え入れて5-1、岩田中前打で再び満塁とすると綿貫が又も中前に2点タイムリーを放ち7-1とリードを広げて伊藤次郎が逃げ切る。

 綿貫惣司は二本のタイムリーで4打点。伊藤次郎は6安打3四球3三振の完投で5勝目をあげる。

 このカードはセネタースが7勝1敗。イーグルスは1回戦で畑福俊英が完封勝利を飾ったのみ。セネタースはサヨナラ勝ちが二回。伊藤次郎と野口明が3勝ずつをあげる。

2010年7月30日金曜日

12年春 第15節 週間MVP

 第15節週間MVPは7月1日~7月4日までが対象となります。発表が遅れてしまい申し訳ございません。
 優勝へひた走るジャイアンツが3勝0敗、追いすがるタイガースが3勝1敗、金鯱に連勝した名古屋が2勝1敗、阪急と大東京が2勝2敗、金鯱が1勝2敗、セネタースが1勝3敗、イーグルスが0勝3敗であった。




週間NVP


 ジャイアンツ スタルヒン 2


 イーグルス戦でノーヒットノーランを達成する。


 名古屋 田中実 1


 クローザー田中実としてではなく、打者田中実として受賞。金鯱6回戦ではサヨナラヒット、7回戦では試合を決める2点タイムリーを放ち金鯱戦2連勝に貢献する。




殊勲賞


 セネタース 浅岡三郎 1


 阪急6回戦で2回からリリーフ登板して7回を無安打ピッチング。




敢闘賞


 タイガース 山口政信 1


 今節15打数6安打3打点4盗塁の活躍。


技能賞


 名古屋 三浦敏一 1


 金鯱6回戦で三者連続補殺を記録する。黒澤俊夫の二盗を刺し、五味芳夫を二塁牽制で刺し、江口行男の二盗を刺す。

2010年7月29日木曜日

12年春 金鯱vs阪急 7回戦

7月7日 (水) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 0 2 0 1 0 0 0 3  0   0   2   8 金鯱 20勝28敗1分 0.417 鈴木鶴雄-中山正嘉
1 0 1 2 0 0 0 2 0  0   0  3X  9 阪急 26勝22敗2分 0.542 石田光彦-重松通雄-笠松実


勝利投手 石田光彦 6勝4敗
敗戦投手 鈴木鶴雄 4勝7敗
セーブ   笠松実 1


二塁打 (金)瀬井 (阪) 山下好、宮武、堀尾
 
今季最高試合


 阪急は山下実が短期兵役から復帰して四番ファーストに入る。宮武三郎はサードに入って三番、黒田健吾も復帰してショートに入る。一番(9)西村正夫、二番(6)黒田健吾、三番(5)宮武三郎、四番(3)山下実、五番(9)北井正雄(10回からジミー堀尾文人)、六番山下好一と並ぶ打線は古今東西を見渡しても歴代最強打線ではないか。

 阪急は初回、西村左前打、黒田の送りバントは内野安打となり無死一二塁、宮武のセンターフライで西村は三塁へ、しかも一走黒田もタッチアップから二塁に進んでいることから推測すると宮武の当りはあわやホームランという当りだったのではないか。山下実の二ゴロをセカンド五味芳夫がバックホームするがこれが野選となり1点を先制。金鯱は3回、その五味が中前打で出塁、一死後島秀之助の遊ゴロをショート黒田がセカンドに送球するがこちらも野選となり一死一二塁。急造ショートの不安が顕在化するが打者走者島の快足を考えるとセカンド送球は仕方のないところか、であれば島の内野安打であってもおかしくはない(野選ですから島の記録は遊ゴロ)。小林利蔵の投ゴロで島は二封、三走五味は動けず二死一三塁、ここで小林利が二盗、キャッチャー倉本信護からの送球が悪送球となる間に五味が還って1-1の同点、瀬井清が右中間に二塁打を放ち2-1と逆転。

 阪急は3回裏、北井がセンター右にはじき返し山下好一右中間二塁打で無死二三塁、ここで倉本がスクイズを決めて2-2の同点に追い付く。阪急は4回、こちらも久々復帰の石田光彦が右翼線安打で出塁、西村遊失、黒田が送って一死二三塁、宮武の右犠飛で3-2として西村も三塁に進む。この走塁が効いて山下実四球後の盗塁がキャッチャー相原輝夫の悪送球を誘い西村が還って4-2、両軍似たような得点経過をたどる。

 金鯱は5回、二死から小林利が中越えに三塁打、続く瀬井も右中間にバックツーバックの三塁打を放ち3-4とする。因みにバックツーバックとは「連続」という意味で使われており、大リーグの中継を原語で聴いていると頻繁に出てきます(二者連続ホームラン、二打席連続ホームランの場合等)。更に因みに1992年・93年と二年連続ワールドシリーズを制したトロント・ブルージェイズのビデオのタイトルはズバリ「BACK 2 BACK」です(実際のスペルは「bacck to bacck」のようです。更に本来の意味は輸出と輸入との同時開設信用状のことのようです。)。

 8回表まで小康状態が続いて阪急は8回裏、一死後西村が四球で出塁、黒田の中前打で又も西村は三塁に好走塁、黒田が二盗を決めて一死二三塁、宮武の右前タイムリーで5-3、山下実のショート後方への当りが左前に落ちて黒田も還り6-3、しかし一走宮武は二封されて記録はレフトゴロ。勝負は決したかに見えた。

 しかし勝負は下駄を履くまで分からない。金鯱は9回、一死後濃人渉、島が連続四球、小林利の左前打で濃人が還って4-6、瀬井の遊ゴロはショート黒田からファースト山下実に送球されるがこれを山下実が落球する間に島が還って5-6、約1カ月ぶりの実戦で試合勘はまだ戻っていないか。黒澤俊夫の右飛で二走小林利は三塁に進んで二死一三塁、ここで起死回生のダブルスチールが決まって金鯱が土壇場で6-6と追い付く。9回裏の阪急は8回から登板の中山正嘉に抑えられて延長戦に突入。

 金鯱は12回表、先頭の黒澤俊夫が三塁内野安打とサード悪送球で無死二塁、松元三彦の投前送りバントがピッチャーエラーを誘い無死一三塁、ここで相原が中前にタイムリーを放って7-6としてなお一三塁、中山の右犠飛で8-6として今度こそ勝負あったか。

 阪急は12回裏、笠松実四球、西村中前打、黒田が送って一死二三塁。宮武の右前打で1点返して7-8、山下実の左犠飛で8-8の同点に追い付く。ここでバッターは前の打席で北井の代打で登場してそのままライトに入っているジミー堀尾文人、堀尾の一打は右中間を抜き宮武の代走林信一郎が勇躍ホームを駆け抜け阪急が逆転サヨナラ勝ちをおさめることとなった。

 時計の針は18時37分、試合開始は16時10分、2時間27分の大熱戦は日没引分け寸前のサヨナラ劇となった。恐らく今季最高試合であろう。
 

12年春 名古屋vsタイガース 7回戦

7月7日 (水) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
1 0 2 0 0 0 1 0 2  6  名古屋     19勝32敗    遠藤忠二郎-田中実-大沢清
2 4 5 6 0 1 2 0 X 20  タイガース  39勝12敗1分 藤村富美男-青木正一-橋本正吾


勝利投手 青木正一 1勝0敗
敗戦投手 大沢清   1勝4敗


二塁打 (タ)藤村、奈良、景浦2、広田
三塁打 (名)三浦 (タ)伊賀上
本塁打 (タ)景浦 2号


タイガース最多得点新記録、景浦将は満塁ホームランを含む7打点


 名古屋は初回、石丸藤吉、小島茂男、大沢清の3四球と白木一二の右犠飛で1点を先制。タイガースは1回裏、松木謙治郎四球、しかし二番ピッチャー藤村富美男の遊ゴロは6-4-3と渡りゲッツー、このまま抑えていれば違った展開になっていたかもしれない。ここから山口政信三塁内野安打と盗塁、景浦将の左前タイムリーで1-1の同点。奈良友夫が右前打、藤井勇の遊ゴロはショート芳賀直一からセカンド石丸に送球されるが石丸が落球する間に景浦が還り2-1と逆転。

 タイガースは2回、岡田宗芳の左前打を皮切りに松木四球、藤村左中間に2点タイムリー二塁打、山口三塁内野安打、景浦四球、奈良友夫の2点タイムリー右前打で6-1とする。名古屋は3回、小島と前田喜代士のタイムリーで2点を返し3-6。しかしタイガースは3回裏、門前真佐人三失、岡田右前打、藤村四球、山口押出し四球で7-1としてなお一死満塁、ここで主砲景浦将が左翼観覧席にグランドスラムを放って11-3とする。

 タイガースは4回、岡田四球、松木左前打で一死一三塁、4回から二番手として登板する青木正一の右飛をライト白木が失して12-3(この場合、青木に当ブログルールによる犠飛を記録すべきか否かの判断基準は白木が捕球していても三塁走者が還れる当りであったか否かとなるので、実際のプレーを見ていない限り判断は保留せざるを得ない。しかし、三走岡田の得点が自責点によるものとスコアブックに記録されていることから記録員も白木が捕球していても岡田はホームに生還できる当りであったと判断したと考えられることから、犠飛として認定したい。もし白木が捕っていれば三走岡田はホームインできなかったと記録員が判断していたならば岡田の得点は自責点によらないものと記録されているはずである。その得点が自責点によるものかよらないものかは、得点を表す丸印の中にE(アーンドラン=自責点)が書かれていれば自責点によるもの、書かれていなければ自責点によらないものとなります。)、山口四球で一死満塁、ここで景浦が本日7打点目となる2点タイムリー二塁打を左中間に放って14-3、奈良の三ゴロの間に山口が還って15-3、藤井の中前タイムリーで16-3、伊賀上良平が左中間に三塁打を放って17-3とする。

 タイガースは6回、山口が五打席連続出塁となる中前打、続く景浦も五打席連続出塁(本塁打を含む)となる中越え二塁打、奈良の中犠飛で18-3。名古屋は7回、小島のタイムリーで1点返すがタイガースはその裏、伊賀上四球、門前左翼線二塁打から岡田の2点タイムリーで20-4とする。名古屋は最終回、白木のタイムリーと捕逸で2点を返すが結局タイガースが20-6の最多得点新記録で圧勝する。

 景浦将は4打数4安打、二塁打2本、本塁打1本の7打点、恐らく今季最多打点だと思われます(暇があれば全試合見直してみます)。1試合9塁打は5月2日の門前真佐人(門前も4打数4安打、二塁打2本、本塁打1本でした)以来の最多タイ記録(こちらも恐らく、暇があれば全試合見直してみます)である。奈良友夫が6打数3安打4打点、岡田宗芳が4打数3安打2打点の活躍(このくらいいなければ20点は入りません)。

 試合開始13時57分、試合終了15時27分、すなわち試合時間は1時間30分です。現代であれば4時間はかかったでしょう。

2010年7月28日水曜日

12年春 イーグルスvsセネタース 7回戦

7月7日 (水) 上井草


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
0 0 0 0 0 1 0 0 2  0   0   3 イーグルス   8勝40敗 0.167 畑福俊英
0 0 0 0 0 0 0 3 0  0  1X  4 セネタース 27勝24敗 0.529 野口明


勝利投手 野口明  17勝6敗
敗戦投手 畑福俊英 5勝20敗


二塁打 (イ)杉田屋 (セ)綿貫、苅田
三塁打 (イ)高橋


苅田久徳、サヨナラ二塁打


 セネタースはショート苅田久徳、セカンド横沢七郎の布陣(中村信一欠場の理由は不明)。この布陣がドラマの伏線となる。

 前半戦は畑福俊英と野口明の投げ合いが続き5回まで0対0。イーグルスは押し気味に試合を進め、1回は野村実、杉田屋守のヒット、4回は無死からサム高橋吉雄、杉田屋の連打があったが得点無し。一方セネタースは1回苅田、5回尾茂田叶のシングル散発のみ。

 イーグルスは6回、この回先頭の田村稔が中前打で出塁、バッキー・ハリスの投ゴロはセネタースお得意の併殺網に掛かり二死無走者(ここは1-6-3、すなわち野口明からショート苅田久徳に送られてのゲッツー。苅田がセカンドに入っていれば1-4-3となったはず。苅田は突然のショート起用にも動じず。法政大学時代から昭和9年全日本、ジャイアンツ第1回アメリカ遠征までは名ショートで鳴らした。)。しかし四番高橋は左翼線に三塁打、杉田屋四球、ここで佐藤武夫に代わる代打太田健一が左前に流し打って1点を先制。
 セネタースは7回、岩田次男四球、大貫賢のヒットでチャンスを作るが無得点。セネタースは8回、二死から尾茂田が二塁内野安打から盗塁、中村民雄四球、岩田四球の二死満塁から綿貫惣司が右中間に走者一掃の二塁打を放ち3-1と逆転。

 野口明で逃げ切るかと見られた9回、イーグルスは先頭の杉田屋が右中間二塁打で出塁、二試合欠場していた中根之を代走に起用、佐藤の右飛で中根は三進、二死後漆原進に代わる代打石井秋雄が三遊間を破り2-3。金井清が右翼線に安打で続き二死一三塁、トップに返り野村の二ゴロを横沢七が痛恨のエラー、3-3の同点となる。久々スタメンの横沢七は4打数無安打ということもあり9回裏には青木幸造を代打に送られる。9回裏のセネタースは三者凡退に終わり延長戦に突入。

 10回表イーグルスは高橋のヒットがあるが無得点、その裏セネタースは三者凡退。イーグルスは11回表、大石綱と野村のヒットで二死一二塁とするが無得点。セネタースは11回裏、綿貫、大貫が倒れて二死無走者、家村相太郎中前打で二死一塁、野口明も中前打で続き二死一二塁、ここでトップに返り苅田久徳がセンターオーバーの二塁打を放ちセネタースがサヨナラでイーグルスを破る。

 野口明はイーグルス打線に14安打を許すも3四球6三振の力投で17勝目をあげる。一方畑福俊英は8安打5四球2三振と互角以上の投球を見せるが球運に恵まれず20敗目を喫す。イーグルスは二番田村稔が2安打、四番高橋・五番杉田屋が3安打ずつであったが三番バッキー・ハリスが5打数無安打でブレーキとなる。バッティングの良い七番畑福俊英も5打数無安打であったがこちらは責められない。


*7月26日付けブログジャイアンツvsイーグルス8回戦のイーグルスの戦績が8勝41敗となっておりましたが8勝39敗の間違いでした。お詫びして訂正させていただきます(本文は訂正済みです)。

12年春 ジャイアンツvs大東京 7回戦

7月7日 (水) 上井草


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 1 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0   1  ジャイアンツ 39勝11敗2分 0.780 澤村栄治
0 0 0 0 0 0 1 0 0  0   0   0   1  大東京    19勝28敗4分 0.404 近藤久-桜井七之助-菊矢吉男


三塁打 (ジ)中島 (大)浅原、鬼頭


大東京、見事な継投策で引分けに持ち込む


 ジャイアンツは2回、この回先頭の前川八郎四球から二盗、一死後筒井四球、ここでダブルスチールを決めて一死二三塁、内堀保の遊ゴロの間に前川が生還して1点を先制する。ジャイアンツは4回、先頭の中島治康が中越えの三塁打、前川四球で無死一三塁とするが前川の二盗は藤浪光雄の強肩に刺されて一死三塁、後続もなくこの回無得点。5回も先頭の内堀がヒットで出塁するが得点なし。6回は二死から前川、永澤富士雄の連打で二死一三塁とするが、先発近藤久に代わってリリーフに出た桜井七之助に抑えられる。


 6回まで澤村に2安打に抑えられていた大東京は7回、この回先頭の浅原直人が右中間に三塁打、中村三郎の右犠飛で1-1の同点に追い付く。


 ジャイアンツはいつでも追加点を取れる雰囲気であったが近藤に粘られ、リリーフの桜井は2回3分の1を1安打、9回から登板の三番手菊矢吉男は4イニングを無安打に抑える好投。桜井七之助はこの当時澤村栄治、野口明に次ぐ速球派。坪内道則著「風雪の中の野球半世記」によると「桜井の球は145キロ前後はあったと思える快速球であったが、軽くて、単調だった。」とのこと。長いイニングになると打たれて未だ勝星なしではあるがこのところリリーフで好投を続けている。当時ショートリリーフという概念があれば名セットアッパーとして名を残したかもしれない。


 澤村栄治は12回を6安打2四球7三振で投げきる。6回まで2三振と前半抑え目でスタートしたことが後半バテなかった要因であろう。8回二死から鬼頭数雄に三塁打を許したのがピンチらしいピンチ、後半6イニングで5三振の力投を見せるが小西徳郎監督快心の継投策にしてやられた。大東京は明日先発予定の菊矢まで注ぎ込み引分けに持ち込む。ジャイアンツのマジックナンバーは4のまま変わらず(引分けの場合、マジックナンバーは減ることもあれば変わらないこともある。マジック点灯チームの残り試合、マジック対象チームとの引分け数の差や残り試合数の差などが要因である。元々マジックナンバーの語源は点いたり消えたりするところから来ているので、マジック点灯チームとマジック対象チームの残り試合を見ながら計算していくことになる。)。

2010年7月27日火曜日

12年春 セネタースvs大東京 8回戦

7月4日 (日) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 2 0 1 0 1   4 セネタース 26勝24敗     0.520 金子裕-伊藤次郎-浅岡三郎-野口明
1 1 1 7 0 0 0 0 X 10 大東京    19勝28敗3分 0.404 菊矢吉男


勝利投手 菊矢吉男 4勝1敗
敗戦投手 伊藤次郎 4勝7敗


二塁打 浅原3


浅原直人、三打席連続二塁打


 大東京は初回、先頭の鬼頭数雄が中前打で出塁、大友一明四球から四番浅原直人が右翼線に二塁打を放ち1点を先制。2回には柳澤騰市四球と盗塁、これを鬼頭が中前タイムリーで還して2-0。3回は、先頭の浅原が三塁線に二塁打、中村三郎が送り坪内道則の遊ゴロの間に浅原が還り3-0とする。

 大東京は4回、一死後菊矢吉男が左中間に三塁打、鬼頭四球後盗塁、大友四球で一死満塁、ここから水谷則一右前、浅原右翼線二塁打、中村左前、坪内中前と四連続タイムリーで5点、更に藤浪光雄四球後菊矢に中前2点タイムリーが飛び出しこの回大量7点をあげて10-0とする。

 セネタースは5回から反撃に転じ、綿貫惣司、浅岡三郎のヒットと二つの押出しで2点、7回には北浦三男の右犠飛、9回には押出し四球で1点ずつを返すが10対4で大東京が快勝。菊矢吉男は5安打8四球6三振の完投で4勝目をあげる。浅原直人は第一打席から三打席連続二塁打を放つ。

 菊矢吉男はタイガース時代には大量リードの場面でしか出番はなく、このトレードは大成功。松木謙治郎著「タイガースのおいたち」によると、菊矢は八尾中学時代から剛球で鳴らしたがコントロールが悪くタイガースでは出番は無かったが、仮想澤村役としてプレート三尺前からの投球練習が菊矢には大きく役立ち大東京に移って主力投手になったと紹介されている。

 セネタースはこのカード5勝3敗と勝ち越す。浅岡三郎が5勝のうち3勝、大東京3勝のうち菊矢吉男が2勝をあげる。

12年春 阪急vsタイガース 7回戦

7月4日 (日) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 阪急     25勝22敗2分 0.532 笠松実-重松通雄
2 0 1 1 0 0 1 0 X 5 タイガース  38勝12敗1分 0.760 若林忠志-景浦将


勝利投手 景浦将 10勝4敗
敗戦投手 笠松実  7勝7敗


二塁打 (阪)宮武 (タ)門前、景浦、岡田
三塁打 (タ)松木、山口


景浦将、好リリーフで10勝目


 タイガースは初回、先頭の松木謙治郎がセンター左奥に三塁打、藤井勇の中犠飛で1点を先制、続く山口政信が左中間に三塁打、景浦将もセンターに犠牲フライを打ち上げ2-0とする。なお、昭和12年当時は公式記録では犠牲フライは記録されておらず単なる飛球(すなわち凡退)として扱われており、打数が1加算され打点は1記録されています。当ブログでは現行ルールに照らして犠飛と判断できる場合は犠飛としてお伝えしております(2010年3月24日付けブログ「解読」をご参照ください。)。

 阪急は3回、一死後西村正夫が四球で出塁、二死後宮武三郎が右中間に二塁打放ち西村が還って1-2。しかしタイガースはその裏、先頭の松木がセンター左にヒットを放ち二盗、藤井死球後松木が三盗、山口が右前にタイムリーを放ち3-1とする。タイガースは4回からライトの景浦が若林に代わってマウンドへ登場。

 タイガースは4回、先頭の伊賀上良平が四球で出塁、阪急は先発笠松実から下手投げの重松通雄にスイッチ、門前真佐人が重松の代わりばなを捉えて左翼線に二塁打を放ち伊賀上が還り4-1。更に7回、二死後山口の遊ゴロを4回の守備から宮武に代わってファーストに入った林信一郎が落球、山口二盗、景浦四球から本日奈良友夫に代わってセカンドスタメン出場の五番藤村富美男が左前にタイムリーを放って5-1とリードを広げる。

 景浦将は6イニングを2安打3四球5三振無失点で10勝目をあげる。ジャイアンツも負けないがタイガースも負けられない。その差1ゲームの死闘は続く。

2010年7月26日月曜日

12年春 ジャイアンツvsイーグルス 8回戦

7月4日 (日) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 2 0 0 0 0 0 3 ジャイアンツ 39勝11敗1分 0.780 澤村栄治
0 0 0 0 0 0 0 2 0 2 イーグルス    8勝39敗    0.170 松本操-藤野文三郎


勝利投手 澤村栄治 23勝3敗
敗戦投手 松本操    1勝5敗


二塁打 (イ)ハリス
三塁打 (ジ)中島


ジャイアンツ、マジックナンバー4


 ジャイアンツは2回、先頭の中島治康がピッチャー強襲ヒットで出塁、前川八郎の遊ゴロをショートサム高橋吉雄が失して永澤富士雄の送りバントが内野安打となり無死満塁、筒井修の遊ゴロで中島は本封となり一死満塁、内堀保の当りはショート後方への飛球、これが中前にポトリと落ちて前川が生還、しかし二走永澤はハーフウェイから三塁に走るがセンター杉田屋守からのバックサードに封じられて内堀の記録はセンターゴロ。矢張り杉田屋には外野を守らせるべきである。

 ジャイアンツは4回、先頭の中島が右中間に三塁打、前川四球で無死一三塁、ここで松本操の一塁牽制が悪送球となり中島が生還して2-0、前川も三塁に進み永澤の三遊間タイムリーで前川が還って3-0とリードを広げる。

 ジャイアンツ先発の澤村栄治は3回までパーフェクトピッチング、しかも3回は一死後連続三振で締める。これまで澤村栄治はイーグルス戦に二度登板して、5安打5四球6三振1失点の完投と3安打1四球4三振の完封勝利、残る5試合は前川とスタルヒンに任せており、イーグルス戦ではそれほど力を入れたピッチングは見せていない。しかし本日は優勝のカウントダウンの最中であり前日はスタルヒンがノーヒットノーランをやったばかり、この日は狙っている雰囲気である。

 イーグルスは4回、二死からバッキー・ハリスが右中間に二塁打を放ち初ヒットを記録、この直後四番のサム高橋吉雄に今季二個目となるデッドボールを与えているのが本日は狙っていた証拠である。裏を返せばいかに澤村と言えども狙ってノーヒット・ノーランはできるものではないということか。イーグルスは13イニング振りのヒットとなる。5、6回無安打が続き7回、二死から本日レフトでスタメン登場の畑福俊英中前打、佐藤武夫三塁内野安打漆原進四球で満塁とするが代打太田健一は三振に倒れる。

 イーグルスは8回、一死後田村稔が三塁線安打で出塁、ハリス、高橋連続四球で一死満塁、杉田屋守の右犠飛で1-3、ハリスも三塁に進む。更に畑福に代わる代打金井清が左前にタイムリーを放ち2-3と詰め寄るが佐藤は左飛に終わる。
 澤村栄治は最終回を三者凡退で締めて5安打4四球1死球9三振の完投で23勝目をあげ、ジャイアンツはマジックを4とする。

 このカードはジャイアンツが8戦全勝、両チームの実力差から致し方ないところか。6回戦ではイーグルスが8回に一挙8点をあげ一時は9対5とリードしたがジャイアンツが10対9でサヨナラ勝ち。本日も澤村を惜しいところまで追い詰めた。


 なお、昭和12年春季リーグ戦において澤村が与えた死球は、5月22日対セネタース3回戦2回表無死から伊藤次郎に対してと、本日のサム高橋吉雄に対しての2個となります。与四球は68個であり与四死球は70個ですが、澤村の与四死球は69個と伝えられているケースもあるようです(某書籍にも与四死球69となっています。日本プロ野球記録大全集では与四球が68となっており、私がスコアブックに残されている記録を集計しても与四球が68個、与死球が2個となっております)。数字のチェックは二三度しておりますので間違いは無いと思いますが、今季のアップが終了した時点でもう一度澤村登板時のスコアブックを全て洗い直して確認する予定です。

12年春 名古屋vs金鯱 7回戦

7月4日 (日) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 0 0 0 0 7 0 1 10 名古屋 19勝31敗    0.380 森井茂-田中実
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0  金鯱   20勝27敗1分 0.426 古谷倉之助


勝利投手 田中実     9勝6敗
敗戦投手 古谷倉之助 12勝12敗


二塁打 (名)小島 (金)小林茂
三塁打 (名)小島


森井茂-田中実、完封リレー


 名古屋は6月9日以来の登板となる森井茂が先発(この間の新聞には「名古屋は森井を怪我で欠き」などの記述がみられるが詳細は不明。)。森井は金鯱打線を4回まで1安打に抑える好投で勝利に貢献する。


 名古屋は初回、石丸藤吉がセンター右にヒットを放ち出塁、桝嘉一が送って小島茂男の遊ゴロで石丸は三塁へ走る、これを見たショート濃人渉はサードへ送球、しかしこれが悪送球となり石丸が還り1点を先制。名古屋は2回、先頭の森井が濃人のこの日3つ目のエラーで一塁に生き、三浦敏一が送って石丸の中前タイムリーで2-0。名古屋は5回に森井が連続四球を出したところで田中実にスイッチして併殺で切り抜けるなど、継投策が巧く決まり金鯱打線に得点を与えない。


 名古屋は7回、一死後大沢清中前打、白木一二中前打、ワイルドピッチ後前田喜代士四球で一死満塁、芳賀直一の一塁線スクイズはファースト小林利蔵のエラーを誘い大沢生還して3-0、芳賀には犠打と打点が記録される。更に昨日サヨナラヒットの田中実が中前に2点タイムリーを放って5-0、金鯱は古谷倉之助から中山正嘉にスイッチ。この場面を翌日の読売新聞は古谷が「自らマウンドを降りて」と伝えている。古谷倉之助は名前もそうだが残された写真からも古武士のような風貌、いかにも潔しと言う態度である。しかしリリーフの中山はこれでは準備ができない。三浦四球で再度満塁、石丸の二ゴロをセカンド安永正四郎が失して6-0、桝に代わる代打遠藤忠二郎の一ゴロはファースト小林利からセカンドベースカバーのショート濃人に渡り一走石丸は二封、しかし濃人からの一塁送球は間に合わずゲッツー崩れの間に三走田中に続き二走三浦もホームに還る好走塁を見せて8-0、遠藤にはファーストゴロによる2打点が記録される。続く小島茂男が右翼線にタイムリー二塁打を放ち9-0、大沢清がライトフライに倒れてようやく名古屋の長い攻撃が終了する。


 名古屋は9回にも小島の三塁打で1点追加して10対0、前田喜代士は3安打2四球の五打席連続出塁、復活森井茂-田中実による完封リレーで快勝する。

2010年7月25日日曜日

12年春 タイガースvs阪急 6回戦

7月3日 (土) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 2 0 0 2 0 1 0 5 タイガース 37勝12敗1分 0.755 御園生崇男
0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 阪急     25勝21敗2分 0.543 重松通雄


勝利投手 御園生崇男 8勝3敗
敗戦投手 重松通雄   6勝3敗


三塁打 (タ)伊賀上2、


伊賀上良平、三塁打2発


 タイガースは3回、一死後藤井勇中前打、山口政信の右前打で一死一三塁、景浦将の当りは三塁ゴロ、サード倉本信護のバックホームが暴投となり二者が還り2点を先制する。6月26日の試合途中から黒田健吾に代わって倉本がサードに入っている。恐らく黒田の怪我が原因と思われるが詳細は不明。阪急はその裏、先頭の西村正夫中前打、上田藤夫が送り宮武三郎四球で一死一二塁、四番北井正雄の当りは遊ゴロ、ショート岡田宗芳は自らセカンドベースを踏んで一塁に送球、俊足北井の足が優り一塁セーフでゲッツーならず、この隙に三塁に進んだ西村が本塁に突入、ファースト松木のバックホームが逸れて西村生還して1-2とする。更に北井が二盗に成功、山下好一の右前打で北井は三塁を蹴って本塁にに突入、しかし遠投140メートルの景浦将のレーザービームに北井はタッチアウト。「関西の早慶戦」と呼ばれる両チームの戦いらしい激しいプレーの応酬となる。

 タイガースは6回、先頭の伊賀上良平が右中間に三塁打、門前真佐人四球後二盗、御園生の中犠飛で3-1、松木謙治郎の右前タイムリーで4-1とリードを広げ、更に8回、又も先頭の伊賀上が今度は左中間に三塁打を放ち門前の左犠飛で5-1と突き放す。

 御園生崇男はいつもながらの安定した投球ぶり、5安打3四球6三振の完投で8勝目をあげる。タイガースは伊賀上良平の二本の三塁打をいずれも犠牲フライで還すという効率の良い攻撃が効を奏す。

12年春 大東京vsセネタース 7回戦

7月3日 (土) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 大東京    18勝28敗3分 0.391 近藤久
1 0 0 0 0 2 0 2 X 5 セネタース  26勝23敗    0.531 浅岡三郎-野口明


勝利投手 浅岡三郎 5勝11敗
敗戦投手 近藤久  11勝10敗
セーブ    野口明 2


二塁打 (セ)尾茂田、家村


家村相太郎が4打点


 本日二回戦にタイガースvs阪急戦が組まれており西宮には5,066人の観衆が集まる。矢張り利便性の高い綺麗な球場に人は集まるもの、東京にも今秋には後楽園イーグルスの本拠地として後楽園球場が完成する予定である。

 セネタースは初回、先頭の中村信一が三前バントヒットで出塁、北浦三男四球、苅田久徳が送って尾茂田叶の遊ゴロの間に中村信が還り1点を先制。セネタースは6回、二死から尾茂田が左中間に二塁打、大貫賢四球で二死一二塁から家村相太郎の左中間二塁打で2点を追加して3-0とする。

 セネタース先発の浅岡三郎は一昨日7イニングス無安打無得点の快投を演じたばかりであるがこの日も好調を持続、7回まで大東京打線を3安打に封じ込める。初回は2四球でピンチを迎えるが中村三郎を遊ゴロに仕留める。3回は先頭の鬼頭数雄に中前打で出塁を許すが北浦が鬼頭の二盗を刺してピンチを未然に防ぐ。4回もヒット、エラー、四球で満塁のピンチを招くがこれは二死からのものであり近藤久を右飛に打ち取る。5回は先頭の鬼頭が二失に生きるが大友一明、水谷則一、浅原直人をいずれも飛球に打ち取る。

 大東京は8回、この回先頭の大友が中前打で出塁、水谷も中前打で続き無死一二塁、ここでセネタースベンチは浅岡をあきらめて野口明をリリーフに送る。浅原の当りはセカンドゴロ、セネタース得意の併殺網に引っ掛かりゲッツーかと思われたがショート中村信の一塁送球が悪送球となり二走大友がホームに還り1-3とする。しかしセネタースは8回裏、苅田三塁内野安打、尾茂田叶中前打、大貫の一ゴロの間にそれぞれ進塁して一死二三塁、ここで家村相太郎が本日4打点目となる2点タイムリーを放って5-1と突き放し、野口明が9回大東京にヒットと四球で二走者を許すが後続を断って、ようやく5連敗の泥沼から抜け出す。

 「元祖・意外性の男」家村相太郎が本領発揮の4打点、浅岡三郎が二試合連続の好投、バイプレイヤーが活躍するチームは強い。

2010年7月24日土曜日

12年春 金鯱vs名古屋 6回戦

7月3日 (土) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
3 0 0 0 0 0 0 0 0  1   4 金鯱   20勝26敗1分  0.435 鈴木鶴雄-古谷倉之助
1 0 0 1 1 0 0 0 0 2X  5 名古屋 18勝31敗    0.367 木下博喜-田中実


勝利投手 田中実        8勝6敗
敗戦投手 古谷倉之助 12勝11敗


二塁打 (金)黒澤 (名)白木、田中


キャッチャー三浦敏一、三者連続補殺


 名古屋ダービー第六戦、五連勝と波に乗る金鯱を名古屋が止めることができるかどうか。

 金鯱は初回、先頭の濃人渉が遊撃内野安打、ショート芳賀直一の一塁悪送球で一挙に三塁に進む、ここで島秀之助が三塁線を破り1点を先制。小林利蔵が送り瀬井清の右中間三塁打で2-0、更に小林茂太の三塁強襲ヒットで3-0とし、勢いの違いを見せつける。
 名古屋は1回裏、先頭の石丸藤吉が一塁内野安打で出塁し二盗、キャッチャー悪送球で三塁に進み、小島茂男の遊ゴロの間に石丸が還り1-3。名古屋は4回、瀬井清が右前打で出塁すると白木一二の右中間二塁打で一挙ホームに還り2-3。更に5回、三浦敏一左前打、盗塁とワイルドピッチで三塁に進んだ三浦を桝嘉一が右犠飛で還して3-3の同点に追い付く。

 名古屋は8回、この回先頭の桝が遊失に生き、小島ピッチャー横のゴロは鈴木鶴雄から一塁ベースカバーに入ったセカンド江口に送球されるがこれを江口が落として無死一二塁、瀬井の右飛で二走桝はタッチアップから三塁に進み一死一三塁。ここで金鯱ベンチは先発の鈴木鶴雄から古谷倉之助にスイッチ、白木四球で一死満塁、バッターは前田喜代士に代わり代打遠藤忠二郎が登場、しかし遠藤はキャッチャー前のゴロに倒れキャッチャー相原輝夫はホームを踏んでから一塁に送球してゲッツー、金鯱はピンチを切り抜ける。

 名古屋は9回、先頭の三上良夫が四球で出塁、代走に五味芳夫を起用、江口行男死球で無死一二塁、名古屋ベンチは先発木下博喜から田中実にスイッチ、金鯱は相原に代わり代打安永正四郎を起用、ここで二走五味がキャッチャー三浦からの牽制に刺されて一死一塁、カウントツースリーから安永三振、スタートをきっていた一走江口は三浦からの送球に刺されて三振ゲッツー。三浦は8回にも二死からヒットで出塁した黒澤俊夫の二盗を刺しており、五番黒澤、六番五味、七番江口と三者連続補殺を達成する。

 名古屋は9回、三つの四球で一死満塁とサヨナラのチャンスを迎えるがここは古谷が踏ん張り延長戦に突入。

 金鯱は10回表、この回先頭の古谷が四球で出塁、濃人が送って一死二塁、佐々木常助のサードゴロをファースト小島が落球して一死一三塁、ここで勝負強い小林利蔵が左前にタイムリーを放って4-3とリードする。

 名古屋は10回裏、一死後白木が右中間に三塁打を放って出塁、高木茂の遊ゴロで白木がホームを突きショート濃人がバックホーム、これを相原に代打を出した関係で二番手マスクの松元三彦が落球、4-4の同点となる。小坂三郎の投ゴロで高木が二塁に進み二死二塁、ここで田中実が左中間に劇的なサヨナラ二塁打を放って金鯱の連勝を5でストップさせる。


*写真は三浦敏一捕手が三者連続補殺を記録したシーン


12年春 イーグルスvsジャイアンツ 7回戦

7月3日 (土) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 イーグルス   8勝38敗    0.174 藤野文三郎
1 0 0 0 0 0 3 0 X 4 ジャイアンツ 38勝11敗1分 0.776 スタルヒン


勝利投手 スタルヒン 12勝4敗
敗戦投手 藤野文三郎  1勝5敗


二塁打 (ジ)永澤、三原


スタルヒン、無安打無得点を達成


 イーグルスは7月2日付けで大東京から移籍してきた漆原進をサードスタメンに起用。これでようやく杉田屋守が外野に専念できる。

 ジャイアンツは初回、水原茂がショートへ内野安打、更にショートサム高橋吉雄が一塁に悪送球して二塁に進み、三原脩が右前にタイムリーを放ち1点を先制。その後はイーグルス先発の藤野文三郎に抑えられていたが、7回、先頭の呉波四球、水原のサードゴロを漆原がセカンドに悪送球する間に呉は三塁に進み無死一三塁、ここで又も三原が左中間にタイムリー二塁打を放ち呉に続き水原もホームに還り3-0。一死後前川八郎の左前タイムリーで4-0とリードを広げる。

 この日のスタルヒンはストレート、カーブともにイーグルス打線を翻弄し、打者31人に対して3四球6三振(味方の失策が2個記録されたがスタルヒンが1人を牽制で刺す。併殺はなし。)、澤村栄治以外では初となる無安打無得点を達成する。タイガースと激しい優勝争いを繰り広げるジャイアンツにとって勢いづく1勝となりマジックナンバーを5とする。

 曇り空の洲崎に集まった観衆は土曜日ながら265人、昨日澤村が完投しているので今日の登板は無く、両チームの実力差からみて勝負の行方は見えているからか。第二試合の金鯱vs名古屋戦は面白い試合が予想されるのですが。

 昭和30年まで投げ続け、通算303勝、83回の完封(現在も日本記録、恐らく永久に破られることはないでしょう)を記録することになるスタルヒン生涯唯一のノーヒットノーランの目撃者は265人であった。


*写真は昭和10年、第1回アメリカ遠征時のスタルヒンのサイン







12年春 タイガースvs大東京 8回戦

7月2日 (金) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 1 0 0 6 0 1 2 2 14 タイガース 36勝12敗1分 0.750 若林忠志-藤村富美男
1 0 0 0 2 0 0 0 0  3  大東京    18勝27敗3分 0.400 桜井七之助-村田重治


勝利投手 藤村富美男 4勝1敗
敗戦投手 桜井七之助 0勝5敗


二塁打 (タ)景浦、奈良2、藤村 (大)鬼頭2
三塁打 (タ)奈良、門前、藤井
本塁打 (タ)岡田 1号


タイガース、うっ憤を晴らす圧勝


 どうやら石本秀一監督のカミナリが落ちたようだ。前日6失策でゲームを落としたタイガースは初回から攻撃の手を緩めず16安打14得点、守っても無失策。

 タイガースは初回、松木謙治郎四球、藤井勇右前打、山口政信が送り景浦将四球で一死満塁、五番に下げられた奈良友夫が中前に2点先制タイムリーを放ち2-0。大東京はその裏、トップの鬼頭数雄が右翼線二塁打、大友一明右前打、水谷則一の三前内野安打で無死満塁、浅原直人の左犠飛で1点を返し1-2。しかしここは若林忠志が踏ん張り後続を抑える。

 タイガースは2回、一死後石本監督は一回を投球しただけの若林に代えて藤村富美男を代打に送る。石本監督の気魄にタイガースナインは震え上がったのではないか。藤村中前打と盗塁、更にキャッチャー悪送球で三塁に進み岡田宗芳の中犠飛で3-1。2回から藤村がマウンドに上る。

 タイガースは5回、山口四球、景浦左翼線二塁打、奈良左中間二塁打、門前真佐人左越え三塁打、藤村四球、岡田が右翼スタンドにスリーランホームランを放ちこの回一挙6点。大東京はその裏鬼頭、大友、水谷の三連打で2点を返すがタイガースは終盤に5点を追加して14-3で圧勝。

 このカードはタイガースが6勝1敗1引分であったが近藤久が健闘して本日の8回戦以外は好ゲームに持ち込んでいる。

12年春 阪急vsセネタース 7回戦

7月2日 (金) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 1 0 2 0 0 0 4 阪急     25勝20敗2分 0.556 笠松実
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 セネタース 25勝23敗    0.521 伊藤次郎-野口明


勝利投手 笠松実   7勝6敗
敗戦投手 伊藤次郎 4勝6敗


二塁打 (阪)宮武 (セ)家村


北井正雄、2安打2打点の活躍


 ここまで阪急が25勝22敗2引分勝率5割3分2厘、セネタースが26勝24敗勝率5割2分、ゲーム差は0.5ゲーム。一時はセネタースが三位の座を固めたかに見えたが金鯱に三連敗してジャイアンツ、タイガースの首位争い並みの三位争いとなってきた。

 阪急は初回は宮武三郎の左中間二塁打と四球、2回は笠松実の右前打と四球とランナーを出しながらも無得点。阪急は3回、上田藤夫が三失に生き山下好一の右前打で一死一三塁、ここで北井正雄が左犠飛を打ち上げて1点を先制。一方セネタースは3回まで笠松に牛耳られて三者凡退を繰り返す。
 阪急は4回、倉本信護の左前打だと2四球で満塁とし、西村正夫のスクイズで2-0。セネタースは4回裏、中村信一が遊失と盗塁で二塁に達し、北浦三男の中前タイムリーで1-2とする。しかし阪急は6回、笠松四球、西村バントヒット、上田右翼線安打で満塁とし、山下好一と北井の連続タイムリーで4-1と突き放す。
 セネタースは8回は家村相太郎の二塁打、9回は3四球で反撃のチャンスを掴むが笠松に抑えられ阪急が1.5ゲーム差に突き放す。笠松実は2安打5四球6三振の完投で7勝目を飾る。

2010年7月22日木曜日

12年春 イーグルスvs金鯱 6回戦

7月2日 (金) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 イーグルス 8勝37       0.178 畑福俊英
0 2 0 0 0 1 0 0 X 3 金鯱    20勝25敗1分  0.444 古谷倉之助


勝利投手 古谷倉之助 12勝10敗
敗戦投手 畑福俊英    5勝19敗


二塁打 (イ)畑福、高橋 (金)小林茂


金鯱5連勝



金鯱は2回、古谷倉之助左前打、黒澤俊夫遊失、小林茂太の三ゴロで黒澤二封、相原輝夫が右前に先制タイムリーを放ち1-0。江口行男四球、島秀之助も押出しの四球を選んで2-0。金鯱は6回、瀬井清が左前打で出塁するも古谷の遊ゴロでゲッツー。しかし黒澤が二塁内野安打で出塁すると小林茂が中越えに二塁打を放ち3-0とする。
 イーグルスは9回、古川正男に代わる代打田村稔が四球、畑福俊英の二ゴロで田村二進、中根之が中前にはじき返して漸く1点を返すが時すでに遅し。
 古谷倉之助は6安打6四球5三振で完投、12勝目をあげる。

12年春 ジャイアンツvs名古屋 7回戦

7月2日 (金) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 2 1 0 0 0 0 0 5 ジャイアンツ   37勝11敗1分 0.77  澤村栄治
0 0 0 0 0 0 0 2 0 2 名古屋     17勝31敗   0.354-遠藤忠二郎 田中実


二塁打 (ジ)呉、筒井、澤村


澤村栄治 22勝3敗
遠藤忠二郎 3勝4敗


ジャイアンツ、マジック6


 四日間の休みが入ったジャイアンツは澤村栄治の先発、記録上は三試合連続先発となる。ジャイアンツは2回、二死から永澤富士雄が右前打で出塁、筒井修の右中間二塁打で永澤が還り1点を先制。内堀保も右前タイムリーで続き2-0、澤村栄治左前打、呉波の二失で満塁とするが水原茂は遊ゴロに倒れる。ジャイアンツは3回、先頭の三原脩が四球で出塁すると、中島治康が左越えに5月9日以来となる第4号ツーランホームランを放ち4-0、更に4回、水原、三原、中島の三連打で満塁とし、前川八郎が押出し四球を選び5-0とする。ジャイアンツは5回には澤村が中越え二塁打、8回には前川の代打山本栄一郎が中前打など攻撃の手を緩めないが追加点はならず。
 澤村栄治は1、2回に一安打ずつを許すが3回から7回まで無安打ピッチング。名古屋は8回、田中実、三浦敏一、代打白木一二、石丸藤吉と4安打を集めて2点を返すがここまで。澤村は7安打2四球7三振の完投で22勝目をあげ、ジャイアンツはマジックナンバーを6とする。
 澤村は26日のタイガース7回戦1回二死から本日の8回二死まで28イニングス連続無失点を記録。現在、34と3分の1イニングス連続自責点ゼロの記録を継続中である。

2010年7月21日水曜日

12年春 セネタースvs阪急 6回戦

7月1日 (木) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 セネタース 25勝22敗     0.532 野口明-浅岡三郎
4 0 0 0 0 0 0 0 X 4 阪急     24勝20敗2分  0.545 重松通雄


勝利投手 重松通雄 6勝2敗
敗戦投手 野口明  16勝6敗


二塁打 (セ)浅岡


浅岡三郎、一世一代の快投も空し


 阪急初回、先頭の西村正夫中前打、上田藤夫四球、二死後宮武三郎四球で二死満塁、ここでサードに入る倉本信護が中前に2点タイムリー、キャッチャー島本義文右前打で再び満塁、重松通雄が中前に2点タイムリーを放ち4-0とする。セネタースは2回から先発野口明に代わり浅岡三郎をマウンドに送る。

 その浅岡が快投、2回から8回を無安打2四球2三振、打っても4回、本日セネタース唯一の得点となるタイムリー二塁打を放つ。もし本日先発していたらどのような結果となったのであろうか。恐らく浅岡三郎一世一代の快投と言っても過言ではないであろう。先日「野球小僧」に現在も御存命でいらっしゃる浅岡三郎氏のインタビュー記事が掲載されましたが(既報の通り)、その内容はほとんど記憶にないとの返答ばかりで、ただ御自宅を訪問しただけでとてもインタビューと言える内容ではなかった。もしこの試合のスコアブックを見ていただきながらのインタビューであったなら、何らかの記憶を呼び覚ますことができたかもしれない。

 一方、重松通雄もセネタース打線を浅岡のタイムリーによる1点に抑え、2安打3四球2三振の完投で6勝目をあげる。

12年春 大東京vsタイガース 7回戦

7月1日 (木) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 3 0 0 2 4 0 0 0 9 大東京   18勝26敗3分 0.409 近藤久
0 1 0 0 0 0 4 0 0 5 タイガース 35勝12敗1分 0.745 西村幸生-青木正一-御園生崇男


勝利投手 近藤久  11勝9敗
敗戦投手 西村幸生 9勝3敗


二塁打 (大)鬼頭 (タ)岡田、松木、景浦、山口
三塁打 (タ)山口


タイガース、守乱による敗戦


 大東京は2回、煤孫伝の二ゴロをセカンド奈良友夫がエラー、奈良は初回にも水谷則一のゴロをエラーしており本日二個目、柳澤騰市、近藤久が安打で続き二死満塁と先制のチャンス、トップに返り鬼頭数雄が左中間に二塁打を放ち2点を先制、更に大友一明の一飛をファースト松木謙治郎が落球する間に近藤が還り3-0とする。タイガースは2回、山口政信の中越え三塁打と門前真佐人の左前打で1点を返し1-3 。タイガースは3回からセカンドを奈良から藤村富美男に交代。石本秀一監督は広島商業時代の教え子である奈良には、三番に抜擢しているだけに特に厳しい。

 大東京は5回、鬼頭の二ゴロを今度は藤村がエラー、大友が中前に落として俊足鬼頭は三塁へ、ここでセンター山口がサードに悪送球して鬼頭ホームに生還、大友も三塁に進み煤孫の右前タイムリーで還って5-1とリードを広げる。大東京は6回、二死から近藤四球、鬼頭右前打、大友四球で二死満塁、ここで水谷則一が右翼線に2点タイムリーを放ち7-1。浅原直人も三遊間にタイムリーを放ち8-1、傷が癒えて5回から煤孫に代わってセンターに入った坪内道則の遊ゴロをショート岡田宗芳が一塁に悪送球する間に水谷がセカンドからホームに還り9-1と大量リードする。タイガースは7回から西村幸生を下げて青木正一をマウンドに送る。

 タイガースは7回、ようやく目覚めて伊賀上良平左前打、青木右前打松木右前タイムリー、藤井勇左翼線安打、藤村右犠飛、景浦将タイムリー内野安打、山口右越えタイムリー二塁打で4点を返すが前半の失点が大き過ぎた。

 近藤久は12安打を許すも4四球5三振の完投で11勝目、タイガースは6エラーと守備が破綻をきたし打っても10残塁、首位ジャイアンツを追う立場となっただけにこの敗戦は痛い。タイガースは5月13日の対名古屋3回戦においても6失策でゲームを落としているが、守乱による敗戦は今季二度目となる。これで首位との差は1ゲーム差、前日点灯したジャイアンツのマジックナンバーは7となった。

山本栄一郎と三原脩

 6月27日のジャイアンツvsタイガース8回戦は稀にみる名勝負となり、延長12回表、四球に歩いた内堀保に代わって山本栄一郎が代走に起用され、三原脩の右中間二塁打で山本がホームを踏み、この貴重な1点を澤村栄治が守り切りジャイアンツが1対0でタイガースを破り半ゲーム差で首位に躍り出ることとなりました。


 山本栄一郎は何度かご紹介しているように日本運動協会からのプロ野球選手であり、昭和11年の澤村の一度目のノーヒットノーラン試合では決勝の代打タイムリーを放つなど、勝負強いバッティングと俊足により貴重な戦力となっています。


 その生涯は「もうひとつのプロ野球  山本栄一郎の数奇な生涯」に詳しく、山本栄一郎に関するWikipediaの記述はほとんど同著に書かれている内容が転載されています。


 同著205ページ及びWikipediaの最後には山本の死の直前について、「昭和54年12月15日、山本栄一郎は77歳で亡くなった。死の寸前、混濁した意識の中で、しきりに「車を呼べ。成城の三原(脩)の家へ行くんだ」といい張った。三原に伝えなければならない、どんな大事な用があったのだろう。」と記述されている。

 戦後は不遇な人生であった山本が、功なり名を遂げた三原と交流があったとは考えにくい(同著によると山本はジャイアンツのOB会に一度出席したが、何か厭なことでもあったのかその後は出席していないとのこと)。

 恐らく山本は死の直前、野球史に残る名勝負に参加して三原の二塁打により決勝のホームを踏んだ場面が甦り、三原に会いに行くと言い張ったのではないだろうか。

 同著を読むにつれ、少ない出場場面をスコアブックから解読していくにつれ、山本栄一郎が野球に懸けてきた執念がひしひしと伝わってくる。


*写真左は昭和29年頃西鉄ライオンズ時代の三原のサイン。
  写真右は昭和9年全日本時代の山本のサイン(右端・再掲載)





2010年7月20日火曜日

12年春 第14節 週間MVP

 最終第四期に突入した今節は、ジャイアンツvsタイガースの激闘以外にも好勝負が目白押しとなった。ジャイアンツと金鯱が4勝1敗、金鯱はセネタースに三連勝。阪急が3勝1敗、タイガース、大東京、名古屋、セネタースが2勝3敗で並び、イーグルスは4戦全敗であった。


週間MVP

 ジャイアンツ 澤村栄治 6

 6月25日の試合前の練習で右眼に打球を受け、タイガース戦の登板は不可能とまで言われた澤村は、宿舎としている日本橋布袋家で生馬肉と氷で熱を冷ます看病を徹夜で受けて26、27日のタイガース戦に連投、初戦の初回に3点を失った以降、9回まで零封、第二戦は延長12回を3安打完封。ジャイアンツが逆転優勝に向けて大きく前進する。

 ジャイアンツ 三原脩 1

 タイガース8回戦延長12回、試合を決する二塁打を放つ。



 激戦が続いた今節の三賞は受賞候補者が続出、選考委員会は口角泡を飛ばしての議論噴出、灰皿が飛ぶ激論の末大量八人が受賞する事態となった。


殊勲賞

 名古屋 遠藤忠二郎 1
 
 タイガース打線を2安打に抑える完投勝利。


 大東京 桜井七之助 1
 
 公式記録では勝利投手は記録されなかったが、今季最高のピッチングでジャイアンツを破る。


 大東京 浅原直人 2
 
 ジャイアンツを破った試合では初回に先制スリーランホームラン。大東京7回戦では牽制に釣り出されながら挟殺プレーで時間を稼ぎ決勝点をアシストする。

 金鯱 小林利蔵 1

 奇跡の逆転サヨナラにつなげる満塁走者一掃の同点二塁打を放つ。


敢闘賞

 阪急 北井正雄1
 
 今節17打数8安打、打率4割7分8厘。打者に専念して以降快打連発。

 金鯱 岡田源三郎 1

 セネタース5回戦、延長12回裏、自ら代走として出場してサヨナラのホームを踏む。チームはここから三連勝。


技能賞

 金鯱 松元三彦 1

 セネタース5回戦では岡田源三郎監督を迎え入れるサヨナラタイムリー、セネタース7回戦では奇跡の逆転勝利を呼び込む好リリーフ。時にはマスクも被る。

 名古屋 木下博喜 1

 大東京8回戦で6回を無安打無得点に抑える。












 







 

12年春 セネタースvs金鯱 7回戦

6月27日 (日) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8  9   計
0 3 1 1 1 0 0 0  0   6 セネタース  25勝21敗      0.543 浅岡三郎-野口明
0 0 0 0 0 1 0 0 6X  7 金鯱      19勝25敗1分  0.432 古谷倉之助-中山正嘉-松元三彦


勝利投手 松元三彦 1勝1敗
敗戦投手 浅岡三郎 4勝11敗


二塁打 (セ) 中村信 (金) 島、松元、小林利
三塁打 (セ) 中村信、青木、尾茂田


奇跡の逆転勝利


 セネタースは2回、尾茂田叶、家村相太郎が連続左前打、浅岡三郎の三前送りバントが内野安打になって無死満塁、一死後横沢七郎の遊ゴロで二走家村が三封される間に尾茂田が還って1点先制。二死一塁となり中村信一が右翼線に二対打を放って二者を迎え入れ3-0とする。更に3回、中村民雄右前打後二盗、家村中前打、浅岡左前タイムリーで4-0として古谷倉之助をKO、金鯱は中山正嘉をマウンドにん送り古谷はファーストに回りファースト小林利蔵がセカンドに入りセカンド江口行男が退く。

 セネタースは4回、この回先頭の中村信一が右中間に三塁打、北浦三男の右犠飛で5-0。更に5回、家村が四球で歩き青木幸造の左中間三塁打で6-0。セネタースの一方的ペースで試合は進む。金鯱は6回から三番手に松元三彦を送る。
 金鯱は6回、一死後瀬井清が四球で出塁、古谷がレフト戦にヒットを放ち一死一三塁、しかし期待の黒澤俊夫は三飛に倒れて二死一三塁、ここで瀬井と古谷が重盗を成功させてようやく1点を返す。松元は6回以降5四球を与えるもセネタース打線を2安打無得点に封じこんで9回裏を迎える。

 金鯱は9回裏、小林茂太に代わる代打三上良夫が三遊間を破って出塁、代走に佐々木常助を起用、相原輝夫四球、松元の遊ゴロをショート中村信が三塁に悪送球して佐々木が生還してまず1点。無死二三塁からトップに返り島秀之助が左翼線にタイムリーを放ち2点目、安永正四郎に代わる代打濃人渉が四球を選んで無死満塁、ここで三番小林利蔵が左中間に起死回生の走者一掃となる二塁打を放ってこの回一挙5点、何と6-6の同点に追い付く。セネタースは浅岡三郎を諦めて急遽エース野口明をリリーフに送る。瀬井清が投前に送りバントを決めて一死三塁、セネタースは満塁策を選択、古谷、黒澤を敬遠して一死満塁とする。迎えるバッターはこの回代走に出た佐々木常助、佐々木の当りは平凡なピッチャーゴロ、野口明はホームに送球、ゲッツーなったかと思われた瞬間併殺を焦ったキャッチャー北浦がこれを後逸、最後はあっけなく金鯱が奇跡的な逆転サヨナラで勝利を収める。

 6月20日の西宮での大東京戦に次ぐ相手キャッチャーのポロリでサヨナラ勝ちを収めた金鯱はこれでセネタース戦に三連勝、三連戦の緒戦延長12回の裏に岡田源三郎監督自ら代走となりサヨナラのホームを踏んでから、チームに勢いが出てきた。
 なお、甲子園の第二試合は雨のため2回コールドゲームとなり順延された。

2010年7月19日月曜日

12年春 大東京vs名古屋 8回戦

6月27日 (日) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 2 0 0 2   大東京 17勝26敗3分 0.395 桜井七之助
0 0 1 2 0 0 0 5 X 8   名古屋 17勝30敗    0.362 木下博喜-田中実


勝利投手 木下博喜   3勝10敗
敗戦投手 桜井七之助 0勝4敗
セーブ    田中実 3


二塁打 (名)小島、三浦


木下博喜、無安打ピッチング


 名古屋は3回、二死から志手清彦が中前打で出塁、石丸藤吉四球後、桝嘉一の三ゴロをファースト浅原が落球する間に志手が還り1点を先制。更に4回、先頭の大沢清四球、石田政良の三前送りバントをサード柳澤騰市が悪送球して無死二三塁、大東京先発の桜井七之助は快速球で芳賀直一二ゴロ、木下博喜三振に打ち取るが三浦敏一が右前に2点タイムリーを放って3-0。

 木下博喜は大東京打線を6回までノーヒットに抑える好投。しかし7回、無死から中村三郎、藤浪光雄に連続四球を与えたところで無安打無得点のまま降板、田中実に後事を託す。桜井左飛で一死一二塁、大友一明中前打で一死満塁、ここで鬼頭数雄が右前に2点タイムリーを放ち木下に自責点2が記録される。田中実はこの後を8回の中村の1安打だけに抑えているだけに鬼頭への投球は悔いの残るところ。この晩田中実と木下博喜はどのような会話を交わしたのであろうか。

 名古屋は8回、大東京守備陣の乱れを突いて5点を追加、すなわち、石丸四球、桝の三ゴロをサード柳澤が本日二つ目の悪送球、小島茂男の右中間二塁打でまず2点、大沢清の一ゴロで小島三進、石田四球と盗塁で一死二三塁、芳賀直一の遊ゴロをショート中村三郎が悪送球(前日当ブログで中村はショートにコンバートされて無難にこなしていると褒めたばかり、得てしてこんなもんです。)して2点、田中中前打、三浦敏一右中間タイムリー二塁打で都合5点をあげて試合を決める。この回のアーンドラン(自責点)は間にエラーが入っていない石丸の得点のみ、桜井七之助は8失点ながら自責点はこの1点のみ、大東京の4失策がことごとく失点に結びついたゲームであった。脆さと強さが大東京の魅力ではありますが。

 このカードは大東京の5勝3敗。ロースコアの投手戦は一度もなく打ち合いになるゲームが多く、打力に優る大東京が二度の二桁得点が効いて勝ち越した。名古屋投手陣は森井、木下、遠藤と軟投派が多くタイミングさえ合えば炎上する。5月29日の延長12回9対6で名古屋が勝利した試合が印象深い。

12年春 ジャイアンツvsタイガース 8回戦

6月27日 (日) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   1   1 ジャイアンツ    36勝11敗1分 0.766 澤村栄治
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0   0 タイガース       35勝11敗1分 0.761 西村幸生-景浦将


勝利投手 澤村栄治 21勝3敗
敗戦投手 景浦将    9勝4敗


二塁打 (ジ)筒井、三原


澤村と心中


 藤本定義監督はスタルヒン-澤村の継投策ではなく、澤村と心中する道を選んだ。首位タイガースに0.5ゲーム差と迫ったジャイアンツは今季初の二試合連続先発となる澤村栄治を建てて必勝を期す。一方タイガースは25日の大東京戦を4イニングで切りあげた西村幸生が万全の状態で先発。宇治山田の生んだ両雄により雌雄が決することとなった。
 試合開始午後1時ちょうど。主審二出川延明、塁審池田豊、沢東洋男。この日のスコアブックには観衆の数は未記載となっているが、日曜の洲崎は超満員であったと伝えられている。天候の欄には「曇 風強し 時々雨あり」と記載されている。センターからの強風で澤村の速球が威力を増し、西村の変化球が曲がらなかったとも伝えられている。大和球士氏著「真説日本野球史」では「名勝負六花撰」その一としてこの試合を詳細に伝えている。日本野球史に残る名勝負である。


 ジャイアンツは初回三者凡退。2回、永澤富士雄に初ヒットが出るが無得点。3回、先頭の内堀保が四球を選ぶが澤村は強攻策に出てレフトフライ、呉波三振、水原茂2ゴロで無得点。
 タイガースは3回まで3者凡退が続く。2回先頭の景浦将と3回最終打者の岡田宗芳が三振。門前真佐人と伊賀上良平が捕邪飛に打ち取られており澤村の速球の伸びを窺わせる。


 ジャイアンツは4回、二死から前川八郎が四球を選ぶが永澤は左飛に倒れる。5回、この回先頭の筒井修が右中間に二塁打を放ち出塁、内堀の三前送りバントが内野安打となり無死一三塁のチャンスを迎える。タイガースベンチは西村を諦めライトから景浦がマウンドへ、ライトには玉井栄が入る。今日の風では西村の変化球よりも景浦の剛球が合っているという判断も働いたのではないか。続く澤村の投ゴロで一死二三塁、しかし呉は二ゴロ、水原は左飛に打ち取られて得点はならず。6回、二死から又も前川が四球で歩くが永澤遊ゴロでチェンジ。
 タイガースは4回、二死から藤村富美男が中前に痛打を放ち初ヒットを記録するが景浦は遊ゴロに倒れる。5回も一死後門前が中前打を放つが伊賀上三ゴロ、玉井遊ゴロでチェンジ。6回は三者凡退に終わる。


 ジャイアンツは7回、先頭の筒井が左前打で出塁、内堀の送りバントをキャッチャー門前は二塁に送球するがこれが野選となり無死一二塁、澤村が送って一死二三塁、しかし呉は一邪飛、水原は一ゴロに倒れて無得点。8回、一死後中島治康が四球で出塁、前川の遊ゴロで二死二塁、永澤の二球目に捕逸で二死三塁とするが永澤三振。9回、二死から澤村がショートへの内野安打で出塁するが呉は二ゴロでチェンジ。
 タイガースは7回から9回まで三者凡退を繰り返し延長戦に突入。この試合は第一試合のため延長は12回で打ち切られる(翌日の読売新聞市岡忠男の論評の中で「第一試合は十二回までで無勝負の場合は引分」と説明されている。)。


 10回表、ジャイアンツは三者凡退。10回裏、タイガースは一死後景浦が右前打を放ち出塁、しかし山口政信は遊ゴロ、門前は左邪飛に倒れる。11回表、ジャイアンツは三者凡退、11回裏、タイガースは伊賀上捕邪飛、玉井三振、岡田も三振で三者凡退。いよいよ規程により打ち切られる最終回へ突入。

 12回表、ジャイアンツは先頭の内堀が四球で出塁、代走にベテラン山本栄一郎を起用する。澤村は三塁前に送りバントを決めて一死二塁、呉に代わる代打平山菊二は一邪飛に倒れて二死二塁、タイガースはライトを玉井から塚本博睦に交代、水原の当りは三塁内野安打となり二死一三塁、ここで三原脩が右中間に二塁打を放ち山本が還って遂にジャイアンツが1点を先制する。中島は遊ゴロでタイガース最後の攻撃へ。
 12回裏のタイガースはトップの松木謙治郎からの攻撃。現在首位打者の松木はライトフライ、藤井勇は二ゴロに倒れてツーアウト、最後は藤村が二ゴロに倒れ、澤村は延長12回を投げ抜きタイガース打線を散発の3安打無四球8三振に抑えて今季7度目の完封で21勝目。ジャイアンツはタイガースを逆転して0.5ゲーム差で首位に躍り出ると共に直接対決が終了し、ジャイアンツにマジックナンバー8が点灯する。

 職業野球を代表するこのカードは結局ジャイアンツ5勝タイガース3勝という結果であった。ジャイアンツの5勝は全て澤村栄治によるものであり、タイガースが今春行った投手版半尺手前からの打撃練習は遂に春季リーグ戦においては実ることがなかった。しかしこの後夏のオープン戦、秋季リーグ戦においてタイガース打線が澤村を打ち崩していくことは御承知の通り。相撲界では「3年先の稽古」ということが言われますが、野球のトレーニングは半年先に効果が出てきます。現役諸君はオフのトレーニングを怠らないように。

2010年7月18日日曜日

12年春 金鯱vsセネタース 6回戦

6月26日 (土) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 4 0 2 0 1 0 0 1 8 金鯱     18勝25敗1分 0.419 鈴木鶴雄
1 0 0 0 0 1 0 0 0 2 セネタース 25勝20敗    0.556 伊藤次郎


勝利投手 鈴木鶴雄 4勝6敗
敗戦投手 伊藤次郎 4勝5敗


二塁打 (金)黒澤
三塁打 (金)島


鈴木鶴雄、投打に活躍


 セネタースは初回、二死後四球を選び盗塁と敵失で三塁に進んだ苅田久徳を尾茂田叶が中前タイムリーで還して1点を先制。しかし金鯱は2回、先頭の瀬井清四球、黒澤俊夫右中間二塁打、小林茂太左前同点タイムリー、相原輝夫右前タイムリー、更に小林茂がライトからの三塁返球が悪送球となる間にホームに還り相原も三塁へ、江口行男がセンターに犠飛を打ち上げて4-1とする。

 金鯱は4回、先頭の小林茂が二失に生き、相原左前打、江口が送って一死二三塁と追加点のチャンス。鈴木鶴雄の一塁内野安打で小林茂が還り5-1、島秀之助の二直で三走相原が飛び出しセカンド苅田はサードに送球するがこれが低投となり相原ホームに還り6-1。名手苅田の二つの失策により2点を追加する(但し、一つ目のエラーは翌日の読売新聞によると「小林茂の二塁難ゴロを苅田失策し」とあり、名手ならではのエラーの可能性もある。)。

 金鯱は6回、相原四球、江口行男の右前打で一三塁とし、鈴木鶴雄が本日2打点目となる犠飛をセンターに打ち上げて7-1。セネタースはその裏中村民雄、尾茂田の連打と家村相太郎の中前タイムリーで1点を返すが、金鯱は9回、中越え三塁打で出た島を安永正四郎の左翼線タイムリーで還して8-2とする。

 着実に追加点を積み重ねる理想的な攻撃を背景に鈴木鶴雄は6安打4四球3三振の完投で4勝目、打っても2打点の活躍を見せる。

12年春 イーグルスvs阪急 7回戦

6月26日 (土) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 0 0 0 0 0 0 0 2 イーグルス 8勝36敗    0.182 藤野文三郎
1 0 1 2 0 0 1 0 X 5 阪急    23勝20敗2分  0.535 笠松実


勝利投手 笠松実    6勝6敗
敗戦投手 藤野文三郎 1勝4敗


二塁打 (阪)山下好


北井正雄、連日の快打


 イーグルスは五番にライト杉田屋守が入る。杉田屋は4月29日以来の外野スタメン、当ブログでは再三にわたって杉田屋を外野に戻すべきと提言してきたが流石に前日の3失策に懲りたか。
 イーグルスは初回、トップの野村実中前打、中根之の一塁線ドラッグバントが内野安打となり無死一二塁、バッキー・ハリスはセオリー通り三塁前に送りバントを決めて一死二三塁。基本に忠実な攻撃に好感がもてる。この回は後続がなく無得点に終わるがこの姿勢が大事。

 阪急は1回裏、トップの黒田健吾がピッチャー強襲ヒット、西村正夫の一塁前バントが内野安打となりこちらも無死一二塁、宮武三郎は当然強攻策に出て中飛に倒れるが山下好一のタイムリーで1点を先制。
 イーグルスは2回、一死後杉田屋に代わってサードに入る辻信夫が中前打で出塁、二死後野村四球、中根中前打で二死満塁、ここでハリスが中前に2点タイムリーを放って2-1と逆転。しかし阪急は3回、山下好一右前打、北井正雄が送って上田藤夫の左前タイムリーで2-2の同点。

 阪急は4回、一死後西村中前打、二死後山下好一が右中間に二塁打を放ち西村が生還、更に北井が右前タイムリーで続き4-2とする。阪急は7回、一死後笠松実四球、2回の黒田の四球の際に代走に起用されそのままサードに入る倉本信護が四球を選び二死後宮武が中堅左にタイムリーを放って5-2とする。
 笠松実は8安打を許すも2四球4三振の完投で6勝目。藤野文三郎は8安打9四球、阪急は大量に走者を出しながら15残塁を記録する。


 北井正雄は6月12日の奇跡の快投以降打撃に専念している。15日の大東京戦以降9試合で36打数15安打5打点5盗塁、打率4割1分7厘。今節は17打数8安打、打率4割7分1厘と快打を飛ばしている。

2010年7月17日土曜日

12年春 タイガースvsジャイアンツ 7回戦

6月26日 (土) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
3 0 0 0 0 0 0 0 0 3 タイガース   35勝10敗1分 0.778 若林忠志-御園生崇男
1 3 0 0 1 0 0 0 X 5 ジャイアンツ 35勝11敗1分 0.761 澤村栄治


勝利投手 澤村栄治  20勝3敗
敗戦投手 御園生崇男 7勝3敗


二塁打 (ジ)三原、筒井
本塁打 (ジ)水原 1号


ジャイアンツ0.5ゲーム差に迫る


 いよいよ今シーズンの天王山。ここまでタイガース35勝9敗1分勝率7割9分5厘、ジャイアンツ34勝11敗1分勝率7割5分6厘、その差1.5ゲーム。タイガースvsジャイアンツの対戦成績は3勝3敗の五分。ジャイアンツの3勝はいずれも澤村栄治があげたもの。澤村がタイガースを抑えられるか、タイガースが澤村を打ち崩せるかに全てがかかっている。ジャイアンツの先発は昨日練習中にボールを右眼に受けて徹夜の馬肉治療を受けた澤村栄治、タイガースは老練若林忠志。第二試合とあって試合開始は午後3時45分、少しでも休養の欲しい澤村に吉と出るか。
 
 タイガースは初回、トップの松木謙治郎三振、藤井勇が澤村キラーぶりを見せて左前打、藤村富美男三塁内野安打、景浦将四球で一死満塁、山口政信の遊ゴロをショート筒井修が痛恨のエラー、藤井に続き藤村もホームに還り2-0。伊賀上良平一飛後門前真佐人が三遊間を破り景浦が還ってタイガースが3点をリードする。

 ジャイアンツは1回裏、トップの呉波三振、水原茂は左翼観覧席に叩き込む第1号ホームラン、1-3とする。続く三原脩の投ゴロを若林忠志がはじくがバックアップのショート岡田宗芳が三原を刺してツーアウト、中島治康三塁内野安打、前川八郎投ゴロでチェンジ。

 ジャイアンツは2回、永澤富士雄二ゴロ、筒井修遊ゴロの二死から内堀保四球、澤村栄治が右前打で二死一二塁、呉の遊ゴロをショート岡田は二塁に送球するがこれが悪送球となり白球が右翼ファウルグラウンドを転々とする間に内堀と澤村がホームに還り3-3の同点、打者走者の呉も三塁に進む、白球はライト景浦将からようやくサード伊賀上良平に返るが送球を受けた伊賀上が呆然としている隙に呉がホームを陥れてこの回3点、4-3と逆転する。

 タイガースは4回から若林に代えて御園生崇男をマウンドに送る。ジャイアンツは5回、三原が左中間に二塁打、中島の右飛で三原が三進、ここで前川が投前にスクイズバントを決めて5-3とする。

 2回以降澤村は立ち直った。許したヒットは5回岡田の左前打と7回御園生崇男の右前打のみ。5回の岡田のヒット後、松木の右翼後方への当りはホームランかと思われたがライト中島が背走してファインプレーを見せて澤村を助ける。澤村は結局5安打1四球8三振の完投で20勝目をあげ、ジャイアンツは0.5ゲーム差に詰め寄る。明日の先発は澤村連投か、あるいはスタルヒン先発で澤村リリーフか。タイガースは西村幸生の先発でくるであろう。

12年春 名古屋vs大東京 7回戦

6月26日 (土) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 1 0 0 0 1 0 3 名古屋 16勝30敗    0.348 木下博喜 田中実
0 0 0 0 0 1 3 0 X 4 大東京 17勝25敗3分 0.405 近藤久


勝利投手 近藤久 10勝9敗
敗戦投手 木下博喜 2勝10敗


二塁打 (名)小島 (大)浅原
三塁打 (大)鬼頭


示唆に富んだ好ゲーム


 名古屋は初回、トップの志手清彦の当りは一塁ゴロ、ファースト浅原直人はベースカバーに入ったピッチャー近藤久に送球するがこれが悪送球となり無死一塁、一死後桝嘉一右前打、小島茂男四球で満塁、大沢清が押出し四球を選んで1点を先制。続く前田喜代士の三ゴロは「5C-3」(サード柳澤騰市が三塁ベースを踏んで一塁に送球)のダブルプレーでチェンジ。

 名古屋は4回、先頭の小島茂男四球、大沢清得意の右打ちを見せ一二塁間を破る、前田喜代士の投前送りバントは三塁アウトのタイミングであったがサード柳澤が落球して無死満塁。しかし芳賀直一のショートライナーで二走大沢清とショート中村三郎の競走となるが中村が早く二塁ベースに入って無補殺併殺となる。中村三郎はこのところショートに回って無難にこなしている。しかし二死一三塁となったところで重盗を敢行、これが見事に決まって2-0とする。

 大東京は6回、浅原三失、煤孫伝遊失、中村四球で満塁とし、近藤久が押出し四球を選びノーヒットで1点を返す。さらに7回、この回先頭の鬼頭数雄が右翼線に三塁打、一死後水谷則一左前タイムリーで2-2の同点、浅原が左越えに逆転二塁打を放ち3-2、ここで名古屋ベンチは木下博喜から二番手に田中実を送る。煤孫四球で一死一二塁、田中の二塁牽制に二走浅原が釣り出される。しかし浅原は巧く二三塁間に挟まれて時間を稼ぎその間に煤孫が二塁に進み二死二塁。これが効いて、中村の三ゴロをファースト小島が落球する間に煤孫がホームに還り4-2とする。

 名古屋は8回、先頭の石丸が四球で出塁、桝の一ゴロでファースト浅原はゲッツーを狙って二塁へ送球、石丸が二塁に封殺される際に石丸に守備妨害が宣告されて、桝もイリーガル・プレイでアウトとなり二死無走者となる。打球が走者に当った場合はイリーガル・プレイは走者のみに宣告されて打者には安打が記録されるが、本件の場合、石丸の守備妨害がなければ併殺が完成していたと判断されたものである。続く小島は右中間に二塁打、大沢清中前打で小島が還り3-4、しかし鈍足大沢が二塁を欲張り8-2-6と転送されてチェンジ。これを状況判断に優れた走者(たとえばタイガースの岡田宗芳:4月6日発表の第2節週間MVP・技能賞参照)がやれば二塁ランナーのホームインを助ける好走塁と判断できるが大沢清の場合、単に足が遅かっただけであろう。更に、今は1点差に詰め寄る大事な反撃機であり、無謀な走塁は避けるべき状況である。

 名古屋は最終回、二死から田中実に代わる代打遠藤忠二郎が左前打で出塁、代走に高木茂を起用、三浦敏一に代わる代打服部一男四球、代走に鈴木秀雄を起用と粘りを見せるが志手が投ゴロに倒れてゲームセット。近藤久は8安打5四球4三振の完投で11勝目をあげる。
 名古屋は1、4回の得点機にいずれもゲッツーがあり1点ずつしか取れなかった。石丸の守備妨害、大沢の二度の走塁ミスなど大量得点のチャンスを自ら潰している。一方大東京は浅原が牽制に釣り出されながら時間を稼いで煤孫を進塁させ得点に結びつけた。結局この1点が試合を決める得点となったのである。

2010年7月16日金曜日

12年春 イーグルスvs阪急 6回戦

6月25日 (金) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
1 2 0 2 0 2 0 0 0   7 イーグルス 8勝35敗    0.186 松本操-古川正男
7 0 0 7 0 0 0 0 X 14 阪急     22勝20敗2分 0.524 中田武夫-宮武三郎-丸尾千年次


勝利投手 中田武夫 5勝2敗
敗戦投手 松本操  1勝4敗
セーブ    丸尾千年次 1


二塁打 (阪)上田、黒田、宮武


イーグルス、守備が破綻


 イーグルスは初回、トップの寺内一隆四球で出塁、一死後バッキー・ハリス四球、二死後杉田屋守の中前タイムリーで1点を先制。更に野村実も三遊間を破り二死満塁とするが太田健一は遊飛に終わる。
 阪急は1回裏、トップの黒田健吾が左前打で出塁、西村正夫の三前送りバントをサード杉田屋が一塁に悪送球して無死二三塁。しかしここでイーグルス先発の松本操が粘り三番宮武三郎、四番山下好一を連続三振に討ち取る。ところがここで弱気になり五番北井正雄を敬遠して二死満塁、六番上田藤夫はこの隙を見逃さず初球を狙い打って左中間に二塁打を放ち二者を迎え入れてなお二三塁、宇野錦次の投ゴロを松本が一塁に悪送球したところに動揺が見られる。更に大原敏夫四球、中田武夫押出し四球、打者一巡して黒田が三塁線を突破し、西村も内野安打で続き、結局この回大量7点をあげる。初回の両軍の二死満塁からの差がこの試合の明暗を分けることとなった。

 イーグルスは2回、二死から寺内二打席連続四球、中根右前打からハリスが今季初タイムリーを放ち2-7、サム高橋吉雄の遊ゴロをショート上田がエラーする間に中根が還り3-7としてなお二死一二塁、杉田屋が三遊間を破り二走ハリスは三塁を蹴ってホームを狙うがレフト北井正雄の渾身のバックホームにタッチアウト。

 阪急は3回から宮武をマウンドに送りファーストに林信一郎が入る。イーグルスは4回、この回先頭の寺内が三打席連続の四球で出塁、中根四球、捕逸で無死二三塁、ハリスの遊ゴロをファースト林がエラーして4-7、杉田屋が左翼線にタイムリーして5-7と2点差に迫る。

 阪急は4回裏、山下好一、北井が連続ヒット、上田の投前送りバントを又も松本が悪送球、一死後大原に代わる代打倉本信護(倉本は前日の試合で二度ランナーとしてチョンボしているので先発を外されたのであろう。全体的に言えることだが当時は拙走や拙守に対して意外と厳しい措置が取られるケースが多い)内野安打でまず1点、ここで三走北井がキャッチャーからの牽制に刺されて二死となるが林四球、黒田の遊ゴロをショート高橋がエラーして2点目、西村が押出し四球を選んで3点目、ピッチャー松本から古川正男に交代、宮武がその代わりばなを叩いて右中間に二塁打して満塁の走者一掃、この回6点目、山下好一が右前打で続き北井の三ゴロを杉田屋がエラーして1回に続いて7点をあげる。

 阪急は6回から丸尾千年次をリリーフに送る。イーグルスは6回、ハリスの右前打、杉田屋が四打席連続ヒット、野村のタイムリーなどで2点を返す粘りを見せるが阪急が快勝。イーグルス失点14のうち自責点は僅かに2点であり、6つのエラーが響く。サードを守る杉田屋守は4安打を放ち打では殊勲甲であるが3失策、ショート高橋もタイムリーエラーが多い。ショートを固めて高橋をサードに回し杉田屋を外野に戻すことがイーグルス浮上の鍵となる。

 阪急では北井正雄が5打数4安打、守っても好返球で補殺を記録、残された日が少なくなっていることを知っているかのような活躍ぶりである。

12年春 セネタースvs金鯱 5回戦

6月25日 (金) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
1 1 0 0 0 0 2 0 1  0   0   0  5 セネタース  25勝19敗   0.568 野口明
1 0 0 2 0 1 0 1 0  0   0  1X 6 金鯱      17勝25敗1分  0.405 鈴木鶴雄-古谷倉之助


勝利投手 鈴木鶴雄 3勝6敗
敗戦投手 野口明  16勝5敗


二塁打 (セ)中村信、綿貫 (金)瀬井、小林利
三塁打 (セ)中村信 (金)黒澤、相原
本塁打 (セ)北浦 1号


岡田源三郎監督自ら出陣


 セネタースは初回、トップの中村信一が左翼線二塁打、北浦三男の遊ゴロをショート瀬井が一塁悪送球、三塁に進んだ中村信が尾茂田叶の二ゴロの間に生還して1点を先制。金鯱は1回裏、島秀之助遊失、安永正四郎左前打でチャンスを作り、四番瀬井が汚名挽回の左中間同点二塁打を放ち1-1とする。

 セネタースは2回、二死満塁から中村信の投ゴロをピッチャー鈴木鶴雄がホームに悪送球して2-1。金鯱は4回、五番ファーストに入る古谷倉之助が三失に生き、黒澤俊夫四球、相原輝夫中前タイムリー、鈴木も内野安打で3-2と逆転。金鯱は6回、黒澤が左中間を破る三塁打、小林茂太の二ゴロで黒澤がホームに突っ込み、セカンド苅田久徳は黒澤の脚を意識しすぎて焦ったか本塁悪送球、金鯱が4-2とリードを広げる。

 セネタースは7回、この回先頭の北浦三男が右越えに第1号ホームラン、苅田左前打、綿貫惣司四球から野口明が右前に同点タイムリーを放ち4-4。金鯱は8回、古谷四球、黒澤左前打、相原右前打の満塁で鈴木に代わる代打濃人渉が押出し四球を選び5-4と1点勝ち越す。9回表セネタースの攻撃、金鯱は古谷倉之助をファーストからマウンドに送るが明らかに準備不足、北浦四球、苅田が送り綿貫に代わる代打今岡謙次郎四球、野口明四球で二死満塁、伊藤次郎が押出しの四球を選び5-5の同点となる。9回裏、金鯱は二死満塁と詰め寄るが小林茂太が二飛に倒れて延長戦に突入。

 10回は両軍三者凡退、11回裏金鯱は一死後小林利蔵左越え二塁打、二死後古谷左前打、黒澤死球で二死満塁、しかし小林茂太は遊ゴロに倒れる。小林茂は二打席連続二死満塁で凡退。金鯱は12回裏、この回先頭の相原が右中間に三塁打を放つと、監督兼選手の42歳岡田源三郎御大が自ら代走として出陣、佐々木常助四球後、岡田監督の執念が乗り移ったか松元三彦が殊勲の中前打を放ち岡田御大がサヨナラのホームを踏む。このとき4時23分、点が入らなければ試合は続行していたはずであり、その時は岡田源三郎監督自らマスクを被る腹づもりだったのではないか。

*2010年7月17日追記:第一試合の場合は延長12回までという規程があったと考えられますので「岡田監督がマスクを被る腹づもり説」は誤りで、最終回なので士気を高めるために出場したと考えるべきだと思います。5月16日上井草のジャイアンツvs金鯱4回戦は第一試合で延長12回引分け、6月10日甲子園の阪急vs大東京6回戦は第二試合で延長16回まで行われ日没引分けとなっております。