2014年11月30日日曜日

17年 阪神vs名古屋 3回戦


5月5日 (火) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 2 0 0 1 0 3 阪神   10勝10敗1分 0.500 藤村隆男 若林忠志
1 2 0 0 0 1 0 0 X 4 名古屋 6勝15敗 0.286 石丸進一

勝利投手 石丸進一 4勝4敗
敗戦投手 藤村隆男 2勝1敗

二塁打 (名)飯塚

勝利打点 なし


石丸進一、2安打完投

 名古屋は初回、一死後桝嘉一が中前打、古川清蔵の遊ゴロでランナーが入れ替わり、吉田猪佐喜の右前打で古川は三塁に向かい、ライト御園生崇男からのバックサードが悪送球となる間に古川が生還して1点を先制する。

 名古屋は2回、一死後石丸藤吉の遊ゴロをショート野口昇がエラー、石丸進一の中前打で一死一二塁、トップに返り木村進一のショートへの内野安打の間に二走石丸藤吉が還って2-0、石丸進一は「6-3-5-4-1」と送球されてタッチアウト、兄藤吉がホームに還る間に弟進一は二三塁間に挟まれた。桝が四球を選び、フォアボール目に二走木村が三盗、タイミングはアウトであったがサード玉置玉一が落球して二死一三塁、阪神ベンチはここで先発の藤村隆男に代えて若林忠志をマウンドに送り、サードの玉置に代わってカイザー田中義雄が入りキャッチャー、キャッチャー土井垣武がサードに回る。古川の三塁内野安打で三走木村が還って名古屋が3-0とリードを広げる。

 4回まで名古屋先発の石丸進一に無安打の阪神は5回、御園生が四球から二盗に成功、大島武も四球を選んで無死一二塁、野口昇は三振に倒れるが、若林の左前打で一死満塁、田中の二ゴロ併殺崩れの間に三走御園生が還って1-3、トップに返り塚本博睦の右前タイムリーで2-3と詰め寄る。

 名古屋は6回、先頭の飯塚誠が左前打で出塁、芳賀直一が送って一死二塁、ワイルドピッチで一死三塁、石丸藤吉の投ゴロでピッチャー若林がホームに送球するがセーフ、野選が記録されて4-2、犠打は記録されていないのでスクイズではない。

 阪神は8回、先頭の塚本が四球で出塁、金田正泰の二ゴロをセカンド石丸藤吉がエラー、松本貞一の遊ゴロで金田が二封されて一死一三塁、土井垣の遊ゴロの間に三走塚本が還って3-4とするが追い上げもここまで。


 石丸進一は2安打4四球5三振の完投で4勝目をあげる。ヒットを打たれたのは5回だけであった。

 阪神は6回にベテラン若林忠志が犯したワイルドピッチと野選の2つのミスが痛かった。





*石丸進一は阪神打線を2安打に抑え4勝目をマークする。







 

2014年11月29日土曜日

17年 大洋vs朝日 4回戦


5月5日 (火) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 0 1 0 0 0 0 0 3 大洋 12勝9敗1分 0.571 古谷倉之助 野口二郎
2 0 0 0 0 0 0 0 0 2 朝日   8勝13敗 0.381 林安夫

勝利投手 野口二郎 6勝4敗
敗戦投手 林安夫     4勝7敗

二塁打 (大)野口明 (朝)鬼頭
本塁打 (大)織辺 1号

勝利打点 織辺由三 2

猛打賞 五味芳夫 1


織辺由三、決勝アーチ

 大洋は初回、先頭の中村信一が四球を選んで出塁、濃人渉は遊飛に倒れるが、野口明が左中間に二塁打、センター坪内道則からの三塁送球が悪送球となる間に一走中村が生還して1点を先制、野口明には打点は記録されていない。この間に野口明も三塁に進み、村松長太郎は三ゴロに倒れるが、浅岡三郎が左前にタイムリーを放って2-0とする。

 朝日は1回裏、初回の守備で悪送球を犯した坪内が右前打を放って出塁、五味芳夫も右前打で続いて坪内は三塁に進み、送球の隙を突いて打者走者の五味も二塁に進んで無死二三塁、鬼頭政一の遊ゴロの間に三走坪内が還って1-2、五味も三塁に進み、伊勢川真澄の二ゴロの間に五味が還って2-2の同点とする。

 大洋は3回から先発の古谷倉之助に代えて野口二郎をマウンドに送り込む。

 大洋は4回、一死後織辺由三がレフトスタンドにホームランを叩き込んで3-2と勝越し、これが決勝打となった。


 3回からリリーフのマウンドに上がった野口二郎は7イニングを5安打無四球1三振無失点に抑え6勝目をマークする。4回は「1-6-3」、6回は「L-6-4」、9回は「4-6-3」と3つの併殺が効いた。6回のゲッツーは鬼頭に二塁打を打たれた後、伊勢川のショートライナーを捕球した濃人が二塁に送球したもの、この当りが抜けていたら試合はどちらに転ぶか分からなかった。

 林安夫は9回を完投したが11安打を打たれ、2四球2三振3失点であった。林は5月1日の大洋3回戦でも野口明にサヨナラ本塁打を打たれている。


 決勝ホームランを放った織辺由三はこれがプロ通算3本目の本塁打、前回は昭和16年9月21日の巨人戦で澤村栄治から放ったものである。



*野口二郎はロングリリーフで6勝目をあげる。









 

2014年11月27日木曜日

17年 南海vs巨人 3回戦


5月4日 (月) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 南海 15勝7敗 0.682 川崎徳次
2 0 0 0 0 0 0 0 X 2 巨人 15勝6敗 0.714 中尾輝三

勝利投手 中尾輝三 6勝3敗
敗戦投手 川崎徳次 3勝3敗

二塁打 (南)岩本 (巨)楠、呉、中島

勝利打点 川上哲治 2


首位交代

 首位を行く南海と半ゲーム差で追う巨人との首位攻防戦は川崎徳次と中尾輝三の先発で午後3時19分、川久保喜一主審の右手が上がりプレイボール。

 巨人は初回、先頭の白石敏男が四球を選ぶと二盗に成功、水原茂の右前打で無死一三塁、続く楠安夫の打席で三走白石が「2-4-5」でタッチアウト。ここは水原がディレードスチールを仕掛けたがセカンドの北原昇が巧く水原を一塁方向に追い詰めながらスタートの機会を窺う白石を刺したと見るのが妥当でしょう。水原が二塁に進んでいないところに北原の野球センスを感じるのは当ブログだけでしょうか。しかし楠が右中間に二塁打を放って一死二三塁、川上哲治の左犠飛で1点を先制、中島治康が中前にタイムリーを放って2-0とする。

 5回まで無得点の南海は6回、先頭の川崎が中前打で出塁、トップに返り国久松一が三前に送りバントを試みるがサード水原が二塁に送球して一走川崎を二封、猪子利男は右飛に倒れて二死一塁、北原が死球を受けて二死一二塁、岩本義行のレフト線二塁打で1点返してなお二死二三塁、中尾は岡村俊昭を敬遠して二死満塁、柳鶴震が右飛に倒れて1点差止まり。

 南海は8回、先頭の国久が中前打で出塁、猪子が送りバントを決めて一死二塁と一打同点のチャンス、しかし北原は左飛、岩本は三振に倒れてスリーアウトチェンジ。

 南海は9回、先頭の岡村が四球で出塁し最後の反撃を試みるが、柳は右飛、中野正雄の二ゴロが「4B-3」と渡ってダブルプレー、巨人が逆転首位に立った。

 中尾輝三は粘りのピッチングを見せて6安打4四球1死球5三振の完投で6勝目をあげる。

 首位攻防戦らしく両チームノーエラーの好ゲームであった。


 南海は6安打を放ち4四球1死球を得ながら1得点で6残塁であった。11人走者を出しながら1得点だと10残塁になるが、3つの併殺と1つの盗塁失敗があったため6残塁に過ぎなかったのである。


 当ブログは神田武夫を温存したことが南海の敗因であったと見る。巨人6回の攻撃、一死満塁の場面で川崎をリリーフした神田は白石を三振、水原を「1-6-3」のゴロに打ち取った。これは水原のピッチャー強襲の当りに飛びつきグラブに当てた打球をショート猪子がバックアップして一塁に水原を刺したものでしょう。7回は楠を三振、川上を三飛、中島を遊ゴロに打ち取り、8回は林清一を三振、呉も三振、坂本茂を三ゴロとパーフェクトに抑えている。神田は一昨日の阪急戦で延長13回を投げて完封しており、川崎もその前日の黒鷲戦で好投していることから川崎の先発で行ったが、病み上がりの川崎ではなく、神田の執念に賭けるべきではなかったか。


 一方、巨人の勝因は中尾の粘り強い投球と共に、水原の渋い活躍が見逃せない。初回は白石を二塁に置いて右打ちの結果右前打、6回の守備では国久の送りバントにダッシュよく飛び出して一走川崎を二塁に刺している。水原は今シーズン中に応召して65試合しか出場しないが最高殊勲選手賞を獲得することとなる。数字に表れない本日のようなプレーの積み重ねが評価されたものである。






*中尾輝三は粘り強いピッチングで6勝目を飾る。
















 

山田潔、プロ入り初の六番




 昭和13年のプロ入り以来イーグルス-黒鷲でショートのレギュラーとして活躍している山田潔が、昭和17年5月4日の阪急vs黒鷲3回戦でプロ入り初の六番に入りました。山田は主に九番を打ち、一番に入ることもあり、二番や八番に起用されることもあります。こう書いただけでどういうタイプの選手だったかすぐに分かりますね。


 この項は「日本プロ野球私的統計研究会」様のサイトを参照させていただいております。管理人様へ伝言。以前使用していたパソコンが壊れたためメールアドレスのデータ等を消失してしまい、当方のメールアドレスも変更しております。ご用の際はコメント欄にお願いいたします。



 1940年8月8日の金鯱戦で作った1試合16守備機会(刺殺9個、補殺7個) の記録は「Wikipedia」の「山田潔」の項で紹介されています。「吉田義男」の項では吉田の持つセリーグ記録1試合15守備機会の脚注として「但し非公式記録であるが、1リーグ時代の1940年8月8日に山田潔(イーグルス)が1試合16守備機会を記録している。」として当ブログの記事が紹介されています。公式戦で作られた記録が何故「非公式」なのか理解に苦しみますが(笑)。


 山田の記録については、千葉功さんや、野球殿堂博物館の方とも話しており、いずれ公式記録として認定されるかもしれません。




*山田潔はプロ入り初めて六番に起用された。






 

2014年11月26日水曜日

17年 阪急vs黒鷲 3回戦


5月4日 (月) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
3 0 0 0 0 0 0 1 0  0   0   0  4 阪急 12勝8敗1分 0.600 中田武夫 森弘太郎
2 0 0 2 0 0 0 0 0  0   0   0  4 黒鷲   5勝15敗1分 0.250 石原繁三

二塁打 (急)森田

勝利打点 なし

猛打賞 富松信彦 1


石原繁三、7度の三者凡退

 阪急は初回、一死後西村正夫がツースリーからファウルで4球粘って四球を選び二盗に成功、黒田健吾の中前打で一死一三塁、この日も四番に入った森田定雄がレフト線に二塁打を放って1点を先制、阪急は44イニングぶりに得点をあげた。なお一死二三塁から中島喬の中犠飛で2点目、上田藤夫が中前タイムリーで続き3点を先制する。

 黒鷲は1回裏、先頭の渡辺絢吾がレフト線にヒットを放つが二塁を欲張り「7-4-3」と転送されてタッチアウト、しかし玉腰忠義が三塁内野安打で出塁、富松信彦の右前打で一死一二塁、木下政文の投ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、鈴木秀雄は投ゴロに倒れて万事休す、と思われた瞬間、ピッチャー中田武夫が一塁に悪送球、三走玉腰に続いて二走冨松も還って2-3と追い上げる。

 阪急は2回、二死後フランク山田伝と西村正夫が連続して三前にセーフティバントを決める妙技を見せるが黒田が三邪飛に倒れて無得点。

 黒鷲は2回裏、先頭の木村孝平が左前打、杉山東洋夫も右前打で続き無死一二塁、次のプレーはスコアカードには「石原繁三の打席でキャッチャー池田久之がセカンド江口行男に送球して一走杉山はタッチアウトとなったが江口にエラーが記録されて二走木村が三塁に進塁」と書かれている。「一走杉山のサイン違い又は二走木村のサイン見逃しで杉山が一二塁間に挟まれ、キャッチャー池田からの送球をセカンド江口が一走杉山にタッチした際にボールがこぼれ、杉山にはアウトが宣告されたがインプレーなので二走木村が三塁に走った。」と実況中継しますがいかがでしょうか。石原は四球を選んで一死一三塁、阪急ベンチはここで先発の中田から森弘太郎にスイッチ、渡辺は三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 黒鷲は4回、先頭の鈴木が中前打で出塁、山田潔が送って一死二塁、木村の左前打で一死一三塁、杉山がライト線にタイムリーを放って3-3の同点、一走木村が三塁に走り、ライト西村からの三塁送球が悪送球となる間に木村がホームに還って4-3と逆転に成功する。

 3回から7回まで三者凡退を続けた阪急は8回、先頭の山田伝が中前打で出塁すると二盗に成功、西村が送って一死三塁、黒田の遊ゴロの間に三走山田が還って4-4の同点に追い付く。山田伝の脚で稼いだ得点であった。

 延長に入って阪急は10回、一死後山田伝が四球から再び二盗に成功、西村の二ゴロの間に山田は三進、黒田が歩かされ二盗を決めて二死二三塁、しかし森田は遊飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 黒鷲は12回裏、先頭の山田潔が四球を選んで出塁、木村が送って一死二塁と一打サヨナラのチャンス、しかし杉山は中飛、石原に代わる代打吉水幸夫は遊ゴロに倒れて無得点。ここで金政卯一主審が試合終了を宣告、引分けに終わった。好投を続ける石原繁三に代打が送られたということは、この回で打ち切られることが事前に通告されていたのかもしれない。


 石原繁三は12回を完投して7安打3四球2三振、5イニング連続を含む7度の三者凡退を記録した。石原は4月23日の朝日戦でも9回で7度の三者凡退を記録している。9回の試合では昭和15年4月14日に浅野勝三郎が四球1個で準完全試合を達成して8度の三者凡退を記録しており、石原の記録は史上第二位となる(昭和17年5月4日現在)。戦後は完全試合が多発するので、9回で9度の三者凡退が複数回記録されることとなる。








*軍部からの圧力で「引き分け」は自粛していたが、この試合は12回で打ち切られた。試合開始は午後1時7分、試合終了は2時49分、第二試合を考慮したものでしょうか。











 

2014年11月25日火曜日

17年 阪急vs南海 4回戦


5月2日 (土) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0   0  0 阪急 12勝8敗 0.600 義川泰造
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0 1X  1 南海 15勝6敗 0.714 神田武夫

勝利投手 神田武夫 10勝2敗
敗戦投手 義川泰造   0勝1敗

二塁打 (急)森田、黒田

勝利打点 岩本義行 1

ファインプレー賞 (急)池田久之 1


阪急、3試合連続延長サヨナラ負け

 阪急は義川泰造がプロ入り初登板初先発。更に、森田定雄がプロ入り初の四番に入る。当ブログが「最も無名の最強打者」と認定する森田はこれまで三番と五番を打ったことはありますが四番は初めてです。


 本日の神田武夫はあまり調子が良くなかった。

 阪急は初回、先頭のフランク山田伝は三振に倒れるが西村正夫が四球を選んで出塁、黒田健吾も四球で一死一二塁、しかし森田定雄の三ゴロは「5-4-3」と渡ってダブルプレー。

 阪急は3回、先頭の池田久之が左前打で出塁、義川泰造の投ゴロで池田は二封、トップに返り山田の右前打で一死一二塁、西村の当りは左前に飛ぶが二走義川のスタートが遅れレフト国久松一からのバックサードに封殺される。試合経験の無い義川のボーンヘッドか、強肩国久のファインプレーかは定かではないが珍しいレフトゴロが記録された。黒田は三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪急は4回、先頭の森田がストレートの四球を選ぶが山下好一の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。江口行雄は遊飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪急は6回、二死後森田が左中間に二塁打を放つが山下好一は二飛に倒れて無得点。7回、一死後江口が三塁内野安打で出塁するが後続なし。8回も二死後黒田がレフト線に二塁打を放つが森田は三振に倒れてこの回も無得点。

 神田は走者を出しながらも何とか踏ん張ってきた。


 プロ入り初登板となる義川は初回、いきなり先頭の国久に四球を与えるが、猪子利男を三ゴロ併殺に打ち取る。

 2回、岩本義行、岡村俊昭に連続四球を与えて無死一二塁、九番から六番に上がった柳鶴震の一塁線送りバントにファースト森田がダッシュ良く飛び出し三塁に送球して岩本を刺す。これで落ち着いた義川は宮口美吉を三振、八木進を二ゴロに打ち取り無死点で切り抜ける。

 3回も一死後国久に四球を与えるが後続を断ち、4回は二死後柳に三塁内野安打を許すが宮口を一邪飛に打ち取る。

 5回も一死後神田、国久に連続四球を与えるが猪子を三ゴロ併殺に打ち取る。二走神田のアウトは「×5」と記録されているので打球に触れてアウト、その打球をサード黒田が捕球して一塁に送球しダブルプレーが記録されたようだ。

 6回は先頭の北原昇を三失で出すが岩本を遊ゴロ併殺に打ち取る。


 両軍走者を出しながら決め手に欠くまま延長戦に突入。

 南海は10回裏、一死後宮口、八木が連続四球で一二塁、義川は8個目の与四球、しかしここも神田の三ゴロが「5-4-3」と渡ってこの日4つ目の併殺。

 南海は12回裏、先頭の岡村が四球を選んで出塁、義川は9個目の与四球、柳鶴震の三前送りバントは成功するが一走岡村が二塁をオーバーランしてファースト森田からの二塁送球にタッチアウト、超珍しい「犠打と併殺」が記録された。筆者の長いスコアカード解読歴でもこのプレーは初めて見ました。

 阪急は13回表、先頭の山田が中前打で出塁、西村が得意の送りバントを決めて一死二塁、黒田の痛烈な当たりはサードライナー、二走山田が飛び出したのを見てサード柳は二塁に送球、ところがこれを二塁ベースカバーのセカンド北原が弾いて山田は三進、二死三塁のチャンスを迎えるが森田は遊飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 南海は13回裏、神田、国久が連続遊ゴロに倒れて二死無走者、猪子が三前にセーフティバントを決めて出塁、北原がストレートの四球を選んで二死一二塁、義川は10個目の与四球、このチャンスに岩本がレフト前にサヨナラタイムリーを放って激戦に終止符を打つ。


 神田武夫は延長13回を7安打4四球3三振に抑えて今季5度目の完封、ハーラー2位の広瀬6勝をを引き離す断トツトップの10勝目をあげる。


 プロ入り初登板の義川泰造は12回3分の2を完投して6安打10四球4三振1失点で涙を呑んだ。初勝利のチャンスを逃した義川はプロでは未勝利のまま球界を去ることとなる。


 阪急は昨日の巨人戦でも延長14回を無得点でサヨナラ負け、その前の試合となる4月29日の阪神戦も延長17回を戦い初回に2点を取っただけでサヨナラ負け、3試合連続延長サヨナラ負けを記録し、43イニングス無得点を継続中となった。









*神田武夫は今期5度目の完封でハーラー断トツトップの10勝目をあげる。
















 

2014年11月24日月曜日

17年 黒鷲vs巨人 3回戦


5月2日 (土) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8  9  計
0 0 0 0 0 0 0 1  0  1 黒鷲   5勝15敗 0.250 松本操 石原繁三
0 0 0 1 0 0 0 0 1X 2 巨人 14勝6敗 0.700 多田文久三 広瀬習一

勝利投手 広瀬習一 6勝3敗
敗戦投手 松本操  0勝3敗

二塁打 (巨)川上、中島
三塁打 (黒)玉腰

勝利打点 白石敏男 2

松本操、好投空し

 松本操の左腕からの変化球が冴えわたった。

 3回まで無得点の巨人は4回、先頭の伊藤健太郎が四球で出塁、川上哲治が中前打を放って無死一二塁、中島治康のピッチャー返しが松本のグラブにスポリと収まり松本は一塁に送球、川上が戻れずダブルプレー、しかし楠安夫が左前打を放って二死一三塁、ここで楠が二盗を試みるとキャッチャー鈴木秀雄からの二塁送球が悪送球となる間に三走伊藤が還って1点を先制する。

 黒鷲は7回、先頭の山田潔が四球で出塁、巨人ベンチはここまで黒鷲打線を無失点に抑えてきた先発の多田文久三から広瀬習一にスイッチ、杉山東洋夫が送って一死二塁、宗宮房之助に代わる代打小松原博喜は三振、トップに返り渡辺絢吾も三ゴロに倒れてこの回も無得点。

 黒鷲は8回、先頭の玉腰忠義が右中間に三塁打、木下政文が右翼線にタイムリーを放って1-1の同点に追い付く。


 巨人は9回、先頭の中島が中越えに二塁打、楠が死球を受けて無死一二塁、呉波が送りバントを決めて一死二三塁、坂本茂に代わる代打林清一は四球で一死満塁、黒鷲ベンチはここで好投を続けてきた松本から石原繁三にスイッチ、広瀬の三ゴロは「5-2」と渡って三走中島は本封、二死満塁となってトップに返り白石敏男が押出し四球を選んで巨人がサヨナラ勝ち。


 松本操は8回3分の1を投げて4安打6四球1三振2失点、自責点1の好投を見せたが敗戦投手となった。




 

17年 阪神vs大洋 3回戦


5月2日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 0 0 1 0 0 2 阪神 10勝9敗1分 0.526 木下勇
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 大洋 11勝9敗1分 0.550 野口二郎

勝利投手 木下勇     2勝2敗
敗戦投手 野口二郎 5勝4敗

二塁打 (神)玉置 (大)濃人

勝利打点 上田正 1


御園生崇男1試合3盗塁

 阪神は3回、先頭の玉置玉一が左中間に二塁打、トップに返り塚本博睦の遊ゴロの間に玉置が三進、上田正の遊ゴロで玉置が還って1点を先制する。

 阪神は7回、一死後御園生崇男が四球を選ぶと二盗に成功、大島武に代わる代打カイザー田中義雄は遊飛に倒れるが、野口昇が左前にタイムリーを放ち2-0とする。

 阪神先発の木下勇は下手から変幻自在のピッチングを見せ、3安打2四球1三振で今季初完封、2勝目をあげる。


 阪神の2点目は御園生崇男の盗塁に起因しているが、御園生はこの試合3盗塁を記録した。御園生がピッチャーであることはご案内のとおりですが、野手としてもセンスに溢れ、今季は25個の盗塁を記録して盗塁ランキング第5位タイとなることとなります。並びの5位がフランク山田伝だというのが凄いですね。昭和19年にも18盗塁を記録して盗塁ランキング第3位、トップは呉波と萩原寛が並びで19個でした。






*木下勇は3安打完封で2勝目をあげる。







*御園生崇男は3盗塁を記録する。「O’」が盗塁を意味します。





 

「白眉の投手戦」と「白熱の投手戦」




 昭和17年に投げた投手では、その悲劇性において神田武夫、石丸進一、林安夫が突出していることは万人の認めるところでしょう。


 神田、石丸、林はこの年投げまくりましたが、お互いが完投した投げ合いは当ブログがお伝えした「白眉の投手戦」と「白熱の投手戦」の2試合しかないのが不思議です。「白眉の投手戦」では林安夫と神田武夫が、「白熱の投手戦」では林安夫と石丸進一が完投して何れも林安夫が1対0で投げ勝ちました。この年の南海vs名古屋戦で神田武夫と石丸進一が同一試合で完投した試合はありません。


 意外と簡単なようですが、当ブログが世に知らしめるまで伝わっていなかったことも不思議です(笑)。




 

17年 朝日vs名古屋 3回戦


5月2日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   1  1 朝日    8勝12敗 0.400 林安夫
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0  0 名古屋 5勝15敗 0.250 石丸進一

勝利投手 林安夫     4勝6敗
敗戦投手 石丸進一 3勝4敗

二塁打 (名)飯塚
本塁打 (朝)伊勢川 1号

勝利打点 伊勢川真澄 2


白熱の投手戦

 昭和17年の注目投手というとどうしても神田武夫、林安夫、石丸進一となってしまいます。4月29日の南海vs朝日4回戦では神田と林が「白眉の投手戦」を見せましたが、本日は林安夫と石丸進一が「白熱の投手戦」を演じました。


 朝日は初回、先頭の坪内道則は中飛、五味芳夫は三ゴロ、鬼頭政一は二飛に倒れる。

 名古屋はその裏、先頭の木村進一は三振、桝嘉一は中飛、古川清蔵は左飛に倒れる。

 朝日は2回、伊勢川真澄が左飛、広田修三は中飛に倒れるが内藤幸三が四球を選んで出塁、しかし室脇正信の三ゴロで内藤が二封される。

 名古屋はその裏、先頭の飯塚誠がレフト線にヒット、しかし岩本章の三ゴロで飯塚は二封、岩本が二盗を試みるが強肩伊勢川からの送球にタッチアウト、野口正明は遊ゴロに倒れて無得点。

 朝日は3回、先頭の景浦賢一は遊ゴロ、林安夫は右飛、トップに返り坪内は三ゴロに終わる。

 名古屋はその裏、先頭の山下実は二ゴロ、石丸藤吉が四球で出塁するが石丸進一は中飛、トップに返り木村も一ゴロに倒れて無得点。

 朝日は4回、先頭の五味が四球で出塁、石丸進一からの一塁牽制をファースト山下実が後逸する間に五味は二進、鬼頭は捕邪飛、伊勢川は左飛に倒れて二死二塁、ここで五味が三盗を試みるがキャッチャー古川からの送球にタッチアウト。

 名古屋はその裏、桝はセカンドライナー、古川は右飛、飯塚は三振に倒れて三者凡退。

 朝日は5回、先頭の広田の三ゴロをサード木村がエラー、続く内藤は三振、スリーストライク目をキャッチャー古川が一塁に送球して広田はタッチアウト、‟変則三振ゲッツー”が記録される。室脇は三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 名古屋はその裏、先頭の岩本は左飛に倒れるが野口正明がレフト線にヒット、しかし林からの牽制球に戻れずタッチアウト、山下実は中飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 朝日は6回、景浦が左飛、林は三ゴロ、坪内も一邪飛に倒れて三者凡退。

 名古屋はその裏、石丸藤吉が遊飛、石丸進一が遊ゴロ、木村も遊ゴロに倒れてこちらも三者凡退。

 朝日は7回、五味、鬼頭、伊勢川と三者連続サードゴロに倒れて三者凡退。

 名古屋はその裏、桝は右飛、古川は左飛に倒れるが、飯塚が左中間に二塁打を放って初めてスコアリングポジションに走者を進めるが、岩本は三ゴロに倒れてこの回も無得点。


 石丸進一は7回まで無安打無失点、4度の三者凡退を記録した。一方、林安夫は3安打無失点、ここまでの勝負は石丸に軍配が上がる。


 朝日は8回、広田は二飛、内藤は一ゴロに倒れるが、室脇が左前にチーム初ヒット、しかし景浦は二直に倒れてこの回も無得点。

 名古屋はその裏、野口が中飛、山下実は二飛、石丸藤吉が中前打を放って二死一塁、しかし石丸進一は三ゴロに倒れる。

 朝日は9回、先頭の林の三ゴロをサード木村がこのひ2つ目のエラー、トップに返り坪内が捕前に送りバントを決めて一死三塁と絶好のチャンスを迎える。名古屋ベンチはここでサードの木村をショートに回し、ショートの飯塚をセンターに回し、センターの桝に代わって吉田猪佐喜が入ってレフト、レフトの岩本に代わって芳賀直一入ってサードと守備陣を大幅に入れ替える。ここはサードに芳賀を入れて守備を固めることが目的でしょう。木村進一を代えずにショートに回しているところが注目ポイントです。一死三塁から五味が放った打球はサードライナーとなって二死三塁、鬼頭は中飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 名古屋は9回裏、先頭の木村が三振、吉田は遊ゴロ、古川は二飛に倒れてスリーアウトチェンジ、「白熱の投手戦」は延長戦にもつれ込む。


 朝日は10回、伊勢川が中飛、広田が遊ゴロに倒れるが、内藤が中前打を放って出塁、しかし室脇は二飛に倒れて無得点。

 名古屋は10回裏、先頭の飯塚が猛打賞となる左前打、芳賀は三振、飯塚が二盗を試みるが又も伊勢川が刺してピンチの芽を摘む。野口は三ゴロに倒れてこの回も無得点。

 朝日は11回、景浦は中飛、林は三直、坪内は捕邪飛に倒れて三者凡退。

 名古屋は11回裏、山下実は一ゴロ、石丸藤吉は二ゴロ、石丸進一は中飛に倒れて三者凡退。

 朝日は12回、先頭の五味は二飛、鬼頭が遊ゴロに倒れて二死無走者、ここで伊勢川がレフトスタンドに決勝ホームランを叩き込み遂に1-0とする。

 名古屋は12回裏、先頭の木村は捕邪飛、吉田猪佐喜は三振、最後は古川が三邪飛に倒れてゲームセット。林は最後まで球威が衰えなかった。


 決勝の本塁打を放った伊勢川真澄は守備でも2つの盗塁を刺して力投を続ける林を援護した。


 林安夫は延長12回を5安打1四球5三振に抑えて今季3度目の完封、4勝目をマークする。


 神田武夫も延長12回を完投、3安打2四球1三振の好投を見せたが伊勢川の一発に泣いた。神田の被本塁打は今季4本目で、現在本塁打配給王となっている。神田の球質は軽かったと認定せざるを得ないでしょう。








*林安夫と石丸進一による「白熱の投手戦」を伝えるスコアカード。

















 

2014年11月23日日曜日

阪急vs巨人 3回戦


5月1日 (金) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0   0   0  0 阪急 12勝7敗 0.632 笠松実
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0   0 1X  1 巨人 13勝6敗 0.684 中尾輝三

勝利投手 中尾輝三 5勝3敗
敗戦投手 笠松実     5勝2敗

二塁打 (巨)水原、白石2

勝利打点 中島治康 3

猛打賞 (巨)白石敏男 1、中島治康 3


意地の巨人、苦手笠松を倒す

 現在12勝6敗で並び首位南海を追う二位同士の一戦。阪急の先発は巨人キラーの笠松実、巨人は中尾輝三が先発する。

 笠松と中尾の投げ合いは果てしない闘いとなった。


 阪急は7回まで2安打無得点、巨人は7回まで3安打無得点と互角の展開、この後は明暗を分けることとなる。

 阪急は8回、先頭の池田久之が左前打で出塁、笠松の二ゴロの間に池田は二進、トップに返りフランク山田伝は三振、西村正夫に代わる代打中島喬が四球を選んで二死一二塁、黒田健吾は三振に倒れてスリーアウトチェンジ。

 巨人は8回裏、一死後白石敏男がセンター左奥に二塁打を放つが水原茂は右飛、楠安夫は二ゴロに終わる。

 阪急は9回、一死後森田定雄がストレートの四球を選ぶが上田藤夫の捕邪飛に森田が返れずゲッツー。打って出ての捕邪飛でゲッツーは考えにくいのでここはバント絡みの攻撃を見せる予定だったのでしょう。

 巨人は9回裏、一死後中島治康が三塁に内野安打、伊藤健太郎がストレートの四球を選んで2イニング連続でスコアリングポジションに走者を進めるが呉波は中飛に倒れて二死一二塁、ここで重盗を試みるがキャッチャー池田からの送球に中島が刺されて失敗、延長戦に突入する。

 阪急は10回から12回まで無安打。

 巨人は10回裏、二死後白石が三塁線にセーフティバントを決めて出塁、水原の右前打で3イニング連続でスコアリングポジションに走者を送るが楠安夫は右飛に倒れて無得点。

 巨人は11回裏、一死後中島治康が三塁に内野安打、伊藤が中前打で続いて4イニング連続でスコアリングポジションに走者を進め、呉が三塁線にセーフティバントを決めて一死満塁と決定的なチャンス、阪急ファンはゾロゾロと席を立ったが坂本茂に代わる代打広瀬習一は捕邪飛、中尾は三ゴロに倒れてこの回無得点。阪急ファンは再び席に戻る。広瀬の捕邪飛は打って出たのかスクイズ失敗か、山内以九士のことですからスクイズ失敗ならどこかに書いているはずはずですがどこにも記述は認められない。

 巨人は12回裏、先頭の白石がレフト線に二塁打を放ち5イニング連続でスコアリングポジションに走者を進める。しかし水原は三振ナットアウト、一塁ベースが空いているので一塁めがけて走るがキャッチャー池田からの送球が早く三振が成立する。勿論振り逃げが成功しても水原には三振が記録されますが。「振り逃げ」は完全な日本語で英語では「Uncaught third strike」となります。スコアカードの記載では通常の三振は「SO」、三振ナットアウト(スリーストライク目をキャッチャーが捕球できなかった)の場合は「K」が記録されて下に「2-3」と書かれます。楠の二遊間内野安打で二走白石は動けず一死一二塁、川上哲治の痛烈な当たりはセカンド江口行男が捕球して一塁に送球、一走楠は返れずダブルプレー。

 阪急は13回、一死後笠松が中前に延長戦チーム初ヒット、しかしトップに返り山田の二ゴロで笠松は二封、中島喬の遊ゴロで山田が二封されてスリーアウトチェンジ。

 巨人は13回裏、一死後伊藤が左前打で出塁、呉の投前バントはピッチャー笠松からセカンドベースカバーのショート上田に送られて一走伊藤は二封、呉が二盗を決めて6イニング連続でスコアリングポジションに走者を進めるが三好主が三進に倒れてこの回も無得点。

 巨人は14回裏、先頭の中尾が三塁線にセーフティバントを決めて出塁、トップに返り白石が送りバントを決めて一死二塁と7イニング連続でスコアリングポジションに走者を進める。水原の右飛で二走し白石はタッチアップから三進、楠はワンスリーから四球、川上も歩かされて一死満塁、ここで中島治康が左前にサヨナラタイムリーを放ち巨人が打っ棄る。試合は延長14回1対0の試合であったが巨人が押しまくった試合であった。


 中尾輝三は14回を投げて4安打7四球11三振で今季2度目の完封、5勝目をあげる。

 一方、笠松実は13回3分の2を完投して15安打5四球3三振。打たれながらもよく粘ったが、ここまで巨人キラー笠松にやられっ放しだった巨人が意地を見せた試合であった。






*中尾輝三は延長14回を投げて4安打完封。














 

ボルチモアチョップ




 昭和17年5月1日、黒鷲vs南海戦で勝利打点を記録した北原昇の遊ゴロを「ボルチモアチョップ」とお伝えしました。南海3回裏の攻撃一死二三塁の場面で、北原は叩き付けるバッティングで遊ゴロを放ち三走柳鶴震を還したのです。昭和17年5月2日付け読売新聞に掲載されている朝日vs大洋戦の記事にも「竹内監督は‟ベルトから下を打て”と頻りに連呼して・・・」と書かれています。


 1890年代のボルチモア・オリオールズが得意としたバッティングが叩き付けて高いバウンドの打球を放ち内野安打を稼ぐ戦法で、「ボルチモアチョップ」と呼ばれています。打球が飛ばなければ工夫をするという当たり前のことが行われていました。イチローもメジャーではパワーで通用しないことを悟り内野安打を量産する道を選択したことはご存知のとおりです。ちょっと飛ばないボールが導入されると「こんなのいやだぁ~」と駄々をこねるだけの現代の選手たちも爪の垢でも煎じて呑んでみてはいかがでしょうか。





*北原昇の叩き付けるバッティングは山内以九士の手で「バウンド高し」と書かれています。













 

17年 黒鷲vs南海 3回戦


5月1日 (金) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 黒鷲   5勝14敗 0.263 石原繁三
0 0 1 0 0 1 0 0 X 2 南海 14勝6敗 0.700 川崎徳次

勝利投手 川崎徳次 3勝2敗
敗戦投手 石原繁三 4勝7敗

二塁打 (黒)富松 (南)岩本
三塁打 (南)柳

勝利打点 北原昇 1


病を押しての好投

 南海は3回、先頭の柳鶴震がレフト線に三塁打、トップに返り国久松一はセカンドライナー、猪子利男の三ゴロをサード木下政文が弾くが三走柳はストップ、猪子が二盗を決めて一死二三塁、ここで北原昇がボルチモアチョップ、高く弾んだ白球がショート山田潔からファースト杉山東洋夫に送球されて北原は一塁アウトとなったが三走柳が生還し1点を先制する。

 南海は6回、一死後岩本義行がレフト線に二塁打、岡村俊昭が中前にタイムリーを放って2-0とする。

 南海先発の川崎徳次は4月21日以来の登板。初回、先頭の渡辺絢吾を一失で生かし山田の三ゴロの間に渡辺は二進、富松信彦の右飛で二走渡辺が三塁に向かうがライト岡村からの送球にタッチアウト、この併殺で川崎は波に乗り8回まで黒鷲打線を無失点に抑えた。

 黒鷲は9回、二死後富松が左中間に二塁打、木下が中前にタイムリーを放って1点を返すが、続く鈴木秀雄に代わる代打小松原博喜が三振に倒れてゲームセット。


 川崎徳次は5安打1四球6三振の完投で3勝目をあげる。シーズン開始前の「野球界」の記事には川崎は「病気」と書かれている。本日は約10日ぶりの登板であったが、川崎が投げないと神田武夫への負担は重くなるばかりということで無理して登板してきた可能性がある。春季優勝に向けて、南海の悲壮な戦いが続く。





*川崎徳次は病を押しての登板で5安打完投。







 

2014年11月19日水曜日

17年 名古屋vs阪神  2回戦


5月1日 (金) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 名古屋 5勝14敗 0.263 河村章
1 1 0 0 0 0 1 0 X 3 阪神    9勝9敗1分 0.500 御園生崇男

勝利投手 御園生崇男 1勝1敗
敗戦投手 河村章        1勝5敗

二塁打 (神)松尾、玉置
三塁打 (神)土井垣

勝利打点 土井垣武 2


御園生崇男、約3年ぶりの完封

 阪神は初回、一死後このところ当たっている松尾五郎が左中間に二塁打、この日プロ入り初めて三番に入った松本貞一は中飛に倒れるが、四番・土井垣武が右中間に三塁打を放って1点を先制する。

 阪神は2回、先頭の大島武が粘って四球を選び二盗に成功、ここでキャッチャー古川清蔵が捕逸、二走大島武は三塁に走り、白球を拾った古川が三塁に送球するがサード木村進一が後逸する間に大島武がホームに還り2-0とする。

 阪神は7回、先頭の塚本博睦が二塁に内野安打、松尾は右飛に倒れるが松本が右前打を放って一死一二塁、土井垣は中飛に倒れて二死一二塁、御園生崇男がレフト線にタイムリーを放って3-0とする。


 阪神先発の御園生崇男は2回までに3安打を許す危なげな立ち上がりであったが、味方の先取点に気を取り直して3回以降は7回まで1安打無失点。8回一死後木村に左前打を許すが芳賀直一に代わる代打井上次平を投ゴロ併殺に打ち取る。

 9回も1四球無失点に抑えた御園生崇男は5安打2四球2三振の完封で今季初勝利をあげる。


 御園生崇男の完封勝利は昭和14年7月28日の対ライオン8回戦以来約3年ぶりのこととなります。勿論この間不振だった訳ではなく、応召され戦地で活躍していたからです。因みに昭和14年7月28日の時点では御園生崇男の応召は既に報道されていました。昭和17年になると情報管理が徹底され選手の応召を報じる記事は全く見られません。








*御園生崇男は名古屋打線を5安打に抑えて約3年ぶりの完封勝利を飾る。






















 

2014年11月18日火曜日

信頼





 昭和17年5月1日、朝日vs大洋3回戦11回裏一死無走者、竹内愛一監督は何を思ったのか、前の打席で同点二塁打を打たれた野口明を警戒してここまで好投を続けてきた福士勇に代えてとっておきの林安夫をマウンドに送ったが、野口明にサヨナラホームランを打たれて裏目に出た。


 林安夫はよく知られているように今季541回3分の1を投げることとなります。林安夫は何故そこまで投げまくったのか知っている人はいらっしゃいますでしょうか?


 昭和17年2月15日発行「野球界」に鈴木惣太郎による「春の新陣容展望」が掲載されており、そこには林安夫について「稀代の新人投手『どうしても竹内さんの処へ行くんだ』と監督の熱意にぞっこん惚れ込んで、他の方面からいくら勧誘されても、ふりむきもせず、ひたむきに朝日軍に加盟」と書かれています。


 林安夫は尊敬する竹内愛一監督の期待に応えるために投げまくりました。本日は見事に期待を裏切った訳ですが、竹内愛一監督の林安夫に対する信頼は揺らぐことはなく、林安夫は竹内愛一監督の期待に応えるべく投げまくったのです。



 林安夫が記録したシーズン最多投球回数541回3分の1の記録は、他人には窺い知ることのできない竹内愛一監督と林安夫の間の信頼関係によって成し遂げられたのです。




 

17年 朝日vs大洋 3回戦


5月1日 (金) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
1 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0  1 朝日   7勝12敗 0.368 福士勇 林安夫
0 0 0 0 0 0 0 0 1  0 1X  2 大洋 11勝8敗1分 0.579 三富恒雄

勝利投手 三富恒雄 4勝3敗
敗戦投手 林安夫     3勝6敗

二塁打 (大)村松、野口明
本塁打 (大)野口明 1号

勝利打点 野口明 1


野口明、大爆発

 朝日は初回、一死後五味芳夫が四球から二盗に成功、鬼頭政一の遊ゴロの間に五味が三進、伊勢川真澄が中前に先制タイムリーを放って1-0。

 4月26日の南海戦で完投勝利を飾った福士勇が本日も好投を見せた。

 大洋は初回、先頭の中村信一が三塁に内野安打、織辺由三が送って一死二塁、濃人渉は右飛に倒れるが村松長太郎、浅岡三郎が連続四球で二死満塁、ここでキャッチャー伊勢川が二塁に牽制、その隙を突いて三走中村がホームに走るがショート五味からのバックホームにタッチアウト。

 この後福士はランナーを許しながらも1イニングに打たれたヒットは1本だけ、2回、3回、6回は三者凡退に抑えた。8回は先頭の中村の遊ゴロをショート五味がエラー、織辺に四球を与え、濃人に送られて一死二三塁、村松を三振に打ち取り、浅岡三郎を歩かせて二死満塁、古谷倉之助を中飛に打ち取り無失点。

 完封目前の9回裏、一死後三富恒雄に中前打を許し、野口明に左中間を破られ三富が還り1-1の同点となる。

 10回裏には先頭の村松に左中間二塁打を打たれるが、浅岡を左飛、古谷を三振、祖父江東一郎を遊ゴロに打ち取り無失点。

 大洋は11回裏、先頭の三富は中飛に倒れて一死無走者、朝日・竹内愛一監督はここでここまで好投を続けてきた福士を下げて林安夫を注ぎ込む。ところが野口明がレフトスタンドにサヨナラホームランを放ち接戦にケリをつけた。


 野口明が9回裏の同点二塁打、11回裏のサヨナラホームランと爆発した。


 今季好調の三富恒雄は11回を投げ抜き4安打5四球7三振、4勝目をあげる。





*三富恒雄は延長11回を完投して4勝目をあげる。












*延長11回裏、野口明がサヨナラホームランを打った場面。






 

2014年11月16日日曜日

ダイブ Ⅱ



 本日はドームで日米野球を見てきました。


 ライトスタンドにした理由はヤシエル・プイグの守備を目の前で見たかったからです。今回の日米野球は人気がないと思っていたので直前ならヤフオクで半値で買えると考えていたのですが、定価4,000円の外野指定席券の落札価格は3,201円もしてしまいました。そもそも高すぎますが(笑)。


 筒香の第2打席がハイライトでしたね。第1打席でレフト線に鋭い二塁打を打っていたからでしょう、プイグはセンターに守備位置を左中間に寄せるように指示し、自分も右中間寄りに構えていました。ところがぎっちょん、筒香の打球は一塁線を鋭く抜けるが惜しくもファウル、ライト線に転がって行った打球は当然ボールボーイが捕りに行くのですが、何と右中間寄りに守っていたプイグが捕りに行ってあげたのです。4列目に座っていましたのでこのシーンはフェンスの影に隠れて見えなかったのですが、ファウルボールを拾ったプイグがライトスタンドに投げ返して何が起こったのかが理解できました。「いい奴だなぁ~」と思った矢先、問題のシーンに遭遇します。


 筒香の打球は右前を襲う猛ライナー、ヤシエル・プイグの巨体が一瞬浮いてダイビングキャッチ、キャッチする直前に立ち上がって大拍手を送りました。日本選手にしか興味のない周りの若い連中もこの時ばかりは立ち上がって大拍手でした。



 「これで元が取れた」ということで5回でドームを後にしました。元々8時には上がるつもりでしたので。ジャスティン・モーノーのスリーランは筆者の頭上3メートルのところに飛んできました。後ろからはね返ってきたようでホームランボールをゲットしたのは筆者の3列ほど後ろの野郎でした。思わず8年前の第1回WBC東京ラウンドを思い出しました。福留が放ったホームランはレフトスタンドで見ていた筆者の頭上1メートルに飛んできたのです。コロコロと転がってきたホームランボールは筆者の席の下に来て、筆者の右隣りと左隣りの奴の捕り合いとなり、右の野郎がゲットしたのです。あの時左手にレモンサワーさえ持っていなければ争奪戦に加わっていたのですが、こぼれるのが惜しくて体が動きませんでした(笑)。


 本日のモーノーのホームランシーンをテレビでご覧になると、落下地点の少し下にパーカー部分が黄色の紺のジャケットを着た野球オタクを見つけることができます。それが筆者であるかどうかは定かではありませんが(笑)。ということで、やっぱり野球は現場で見るに限ります。


 *以前「ダイブ」のタイトルがありましたので、本日のタイトルは「ダイブ Ⅱ」とさせていただきました。

http://shokuyakyu.blogspot.jp/2012/06/blog-post_14.html

















 

17年 4月 月間MVP



月間MVP

投手部門

 南海 神田武夫 1

 今月の月間MVPは神田武夫が満票で受賞した。

 19試合中15試合に登板して9勝2敗2セーブ、101回3分の2を投げて防御率0.44、WHIP0.85、奪三振率3.51の圧倒的な成績を残した。これまで日本のプロ野球が経験した最高の月間成績である。

 過去には、昭和13年6月に亀田忠が5月28日から6月26日にかけて12試合に登板して85回3分の1を、昭和14年8月に野口二郎が8月2日から8月27日にかけて11試合に登板して84回を投げたことがある。神田は3月28日から4月29日にかけて101回3分の2を投げた。月間記録の場合、試合数が異なることから単純な数字の比較には意味がないが、神田の成績には中身が伴っているところに意味がある。

 神田は4月4日から25日にかけて11連投を記録した。日程の関係で13日から18日は元々空いており、4月18日にはドーリットル空襲があったことから更に日程が空いたことが要因である。

 昭和19年に若林忠志が14連投を記録することになるが、これは春季と夏季にかけて記録されたものであり5月22日の次の登板は7月1日であった。

 昭和47年に南海の後輩となる佐藤道郎が6月29日から7月18日にかけて11連投を記録したが、佐藤はリリーフ投手なのでその間の投球回数は21回に過ぎない(こちらは「クラシックSTATS」たばともデータを参照させていただいております)。



打撃部門

 朝日 坪内道則 1

 18試合に出場して70打数24安打9得点7打点9四球1死球10盗塁。打率3割4分3厘、出塁率4割2分5厘、長打率4割1分4厘、OPS0.839の成績であった。

 打率2位は南海の国久松一で3割1分6厘、3位は巨人の中島治康で3割6厘、4位は南海の岩本義行で3割。3割打者は4人であった。

 10盗塁が物語っているように体がよく動いている。二塁打も5本打っており、長打率でも中島治康に引けをとらない。




 

17年 第4節 週間MVP



 今節は巨人が3勝1敗、名古屋、朝日、大洋、南海、阪急、阪神の6チームが2勝2敗、黒鷲は1勝3敗という混戦であった。



週間MVP

投手部門

 朝日 林安夫 1

 4月29日の南海戦では神田武夫と投げ合い4安打完封、神田の連勝を9でストップさせた。


 南海 神田武夫 2

 4月25日の阪神戦は5安打完封、27日の阪急戦は1安打完封。29日の朝日で林安夫に投げ負け10連勝を逃した。


 阪神 若林忠志 2

 4月29日の阪急戦で阪急延長17回完投勝利。



打撃部門

 巨人 伊藤健太郎 2

 今節16打数7安打2得点5打点、二塁打3本、本塁打1本の活躍。


 南海 岡村俊昭 1

 今節18打数6安打4得点1打点、二塁打3本、三塁打1本の活躍。




殊勲賞

 黒鷲 寺内一隆 1

 25日の大洋戦で代打決勝スリーランを放つ。


 名古屋 木村進一 1

 26日の黒鷲戦で延長11回サヨナラホームランを放つ。


 大洋 古谷倉之助 1

 28日の黒鷲戦で2安打完封。


 朝日 早川平一 1

 29日の南海戦で9回、神田武夫から代打サヨナラ打を放つ。



敢闘賞

 南海 岩本義行 1

 今節15打数6安打2得点2打点3四球1死球の活躍。


 巨人 水原茂 1

 
 今節16打数5安打3得点2打点の活躍。


 阪神 松尾五郎 1

 今節19打数6安打2打点の活躍。


 黒鷲 渡辺絢吾 1

 
 
 今節18打数6安打1打点2盗塁の活躍。



技能賞

 阪神 松本貞一 1

 投手登録ながらセカンドに起用されて今節16打数5安打の活躍。


 朝日 伊勢川真澄 3

 今節4試合連続7補殺を記録する。


 名古屋 石丸進一 1

 29日の黒鷲戦で好フィールディングを見せて2併殺を記録する。





 






 

2014年11月15日土曜日

無安打無得点



 日本チームがノーヒットノーランをやりました。1962年11月17日の日米野球、村山実がデトロイト・タイガース戦で8回ツーアウトまでノーヒットノーランをやって完封、日米野球における日本人投手として初完封でしたがノーヒットノーランは逃しました。


 日米野球でノーヒットノーランといえば何と言っても1971年11月2日、富山でやったパット・ドブソンでしょう。この頃はV9時代の巨人の全盛期で、「日米決戦だ~」と騒いでいましたがダイナスティと言われたボルチモア・オリオールズに2勝12敗2分けに終わり、夢は潰えました。その象徴がドブソンのノーヒットノーランだったのです。


 1990年11月11日にはチャック・フィンリーとランディ・ジョンソンの継投でノーヒットノーランをやりました。


 本日の日本は日米野球史上3回目、継投としては2回目のノーヒットノーランとなりました。投球数に制限が設けられましたのでパット・ドブソン以来の一人でノーヒットノーランはもう見ることができません。




1971年11月2日、富山でノーヒットノーランをやったパット・ドブソンの直筆サインボール。11月2日は筆者の誕生日ですが、1934年11月2日にはベーブ・ルースが来日、1943年11月2日には景浦将が生涯最後のホームランを放ち、1958年11月2日には筆者が産まれ、1971年11月2日にはパット・ドブソンが日米野球史上唯一の一人でノーヒットノーランを達成と、野球史においてエポックメイキングな特異日となっています。





 
 偽物だろ~とお疑いの場合はPSA/DNAのauthentication画面で「G90145」を入力して確認してください。

Item: Baseball
Primary Subject: PAT DOBSON
Result/Grade: Authentic

と表示されますのでご安心ください。


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