2011年9月29日木曜日

ラスト・スパート ⑪


 シティ・フィールドの観客は第一打席のホセ・レイエスをスタンディング・オベーションで迎えました。その第一打席で三塁前にセーフティ・バントを決めて打率を3割3分7厘0毛6糸に上げると代走が起用されてベンチに引っ込みました。このあからさまな逃げ切り行為に対して今度はブーイングです。まぁレッズのサード・フランシスコも前には出てきませんでしたが。日本ではこういうケースではかつては敬遠合戦が見られましたが、海の向こうでもいろいろあります。

 ライアン・ブローンは結局4打数0安打で最終戦を終え、3割3分2厘1毛5糸で二着に終わりました。

 マット・ケンプは第39号をレフトスタンドに叩き込みましたが4打数1安打1打点1本塁打。39本塁打、126打点で二冠に輝きましたが打率は3割2分3厘9毛2糸で少し離されての三着に終わりました。但し、二冠で首位打者との差が1分3厘ということがいかに凄いことであるのかは、歴史を勉強している方はご存じでしょう。この点については近く特集を組む予定です。ドジャースとナショナルズは161試合しか消化していないはずなので順延された試合がもう一試合あるとばかり思っていたのですが、これで終了のようです。したがって、39本塁打、40盗塁で「40-40」は来期以降のお楽しみとなりました。

 アルバート・プホルスの最終戦は5打数1安打1打点に終わり、2割9分9厘、37本塁打99打点。「チームがプレーオフに出られてうれしい。」と言うコメントを発表したようですが本当かなぁ。私なら「チームが負けてでももう1本ホームランを打ちたかった。」とコメントしますが。いずれにしろ、オフには10年3億ドルの交渉が待っています。アメリカン・リーグに移って3冠王を狙った方がいいのではないでしょうか。どうせ払えるのはヤンキースかレッドソックスしかないのですから。マーリンズ時代は子供扱いにしていたミゲール・カブレラがアメリカン・リーグに移った途端タイトルを獲りまくっているような低レベルのアメリカン・リーグに行けば、三冠でも四冠でも毎年のように獲れることでしょう。さらばプホルス!

 そのミゲール・カブレラは最終戦も4打数2安打。ナショナル・リーグ時代はプホルスやライアン・ハワードに歯が立たずタイトルに無縁だったのがアメリカン・リーグに移った途端、2008年に本塁打王、昨年は打点王、今年は首位打者です。アメリカン・リーグMVPは、私に投票権があればジャスティン・バーランダーに投票します。但し、打者でなければダメということであれば、玉砕覚悟で二年連続ミゲール・カブレラを本命とする予定です。数字よりもバッティングの内容を評価したいと考えるからです。

 ナショナル・リーグMVPは数字的にはマット・ケンプ有利は否めませんが、29年ぶり地区優勝のブルワーズを引っ張ったライアン・ブローンと五分五分と考えています。ブローンはプリンス・フィルダーと票が割れる可能性があり不利は否めないのですが。今やライアン・ブローンが打席に立つ時の球場の雰囲気はかつてのカービー・パケットを見ているようです。プリンス・フィルダーはFAで出ていくようですがブローンは生涯ミルウォーキーでしょう。第二のロビン・ヨーントとなる逸材を、何より地元ファンが理解しています。


14年 南海vs金鯱 3回戦


5月18日 (木) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 2 3 1 1 0 0 1 9 南海 10勝16敗1分 0.385 政野岩夫 宮口美吉
0 0 0 0 2 1 0 0 0 2 金鯱   6勝20敗       0.231 中山正嘉 常川助三郎


勝利投手 宮口美吉 3勝5敗
敗戦投手 中山正嘉 5勝7敗


二塁打 (南)鶴岡、岡村、伊藤、中村 (金)岡野、長島
三塁打 (南)国久

南海、全員安打で四連勝


 南海は初回、一死後国久松一の投ゴロを中山正嘉がエラー、国久二盗、鶴岡一人、中村金次が連続四球で一死満塁、岡村俊昭が押出し四球を選んで1点を先制する。

 南海は3回、鶴岡が中越えに二塁打、中村右前打で一三塁、岡村の左中間二塁打で二者還り、クリーンナップ三連打で3-0とする。

 南海は4回、二死後国久が左前打から二盗、鶴岡四球、中村右前タイムリーで4-0、岡村四球で二死満塁、伊藤経盛が左中間に二塁打を放って6-0とする。

 金鯱は5回から中山に代わって常川助三郎がマウンドに上がる。

 南海は5回、先頭の平井猪三郎が左前打で出塁するが常川助三郎の牽制球に引っ掛かりワンアウト、しかし小林悟楼四球、国久三塁内野安打、鶴岡の右飛で小林は三進、中村のタイムリーで7-0とする。

 金鯱は5回裏、佐々木常助、岡野八郎、野村高義が3連続四球で無死満塁、南海ベンチはここで政野岩夫に代えて宮口美吉を投入する。一死後常川が押出し死球を受けて1-7、瀬井清の左犠飛で2-7とする。

 南海は6回、中田道信、宮口の連打と小林のタイムリーで8-1。金鯱は6回裏、長島進四球、山本次郎右前打、佐々木一塁への内野安打で満塁とし、野村の遊ゴロの間に2-8とする。

 南海は9回、国久の三塁打と中村の二ゴロで1点を追加、9対2で大勝してこれで四連勝。

 南海は11人が出場して全員安打となる14安打に8四球で14残塁。一方、金鯱は4安打ながら12四球2死球でこちらも14残塁。試合時間は戦前の試合としては珍しく1時間53分を要した。両軍合わせて28残塁で2時間を切っているのですから凄いと言えば凄いですが。





        *両軍合わせて28残塁、1時間53分を要した。




14年 イーグルスvsタイガース 4回戦


5月17日 (水) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 0 0 0 0 0 1 0 3 イーグルス 11勝15敗1分 0.423 亀田忠 望月潤一
2 0 2 0 0 2 0 0 X 6 タイガース  18勝7敗1分    0.720 御園生崇男


勝利投手 御園生崇男 8勝1敗
敗戦投手 亀田忠        5勝6敗


三塁打 (イ)伏見 (タ)門前

タイガース、首位に浮上


 タイガースは初回、先頭の松木謙治郎が四球で出塁、本堂保次が送って、ジミー堀尾文人の遊ゴロの間に松木は三進、富松信彦が四球を選んで二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて1点を先制、更に富松が三盗を決めて御園生崇男が中前にタイムリーを放ち2-0とする。

 イーグルスは2回、先頭の杉田屋守が左翼線にヒット、伏見五郎も左前打を放って無死一二塁、辻信夫の記録は一飛であるがこれは送りバント失敗か。漆原進が四球を選んで一死満塁、トップに返り寺内一隆が右前に同点タイムリーを放って2-0とする。なお一死一三塁で山田潔はスクイズ失敗、「2-5-4」と渡ってダブルプレー。

 タイガースは3回、二死後伊賀上良平が左前打で出塁、門前真佐人が右中間に三塁打を放って3-2、松広金一が中前にタイムリーで続いて4-2とする。皆川定之四球で二死一二塁、左の松木を迎えたところでイーグルスベンチは先発の亀田忠をあきらめて左腕の望月潤一をマウンドに送り、松木は右飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 タイガースは6回、先頭の松木が四球を選んで出塁、本堂が中前打で続いて無死一二塁、堀尾のセーフティバントをピッチャー望月が一塁に大悪投する間に松木に続いて本堂も一塁からホームに還り6-2とする。

 イーグルスは8回、先頭の望月がセンター左にヒット、杉田屋の三ゴロでランナーが入れ替わり、伏見が左中間に三塁打を放って3-6とするが、9回一死一塁から太田健一の遊ゴロをショート皆川が二塁ベースを踏んで一塁に転送して「6B-3」のこの日4つ目のゲッツーでゲームセット。

 御園生崇男は8安打7四球2三振と不調であったが4併殺に助けられて完投で8勝目をあげる。

 タイガースは阪急を捕えて遂に首位に浮上した。




*御園生崇男が完投で8勝目をあげてタイガースは首位に浮上した。








2011年9月28日水曜日

ラスト・スパート ⑩


 本日の主役はプリンス・フィルダーでした。36、37、38号を放ってマット・ケンプと並びました。一本目は顔の高さのクソボールを引っ叩いてアッパーデッキの中断にぶち込みました。二本目はバックスクリーン直撃弾、三本目はようやく普通の右翼スタンドへのホームランでした。セシル・フィルダーにくっついて阪神タイガースのベンチで遊んでいた5歳のプリンス少年の22年後の姿です。

 ホセ・レイエスは6打数3安打2打点2本塁打。一本目はライトブルペンへの第6号、二本目はライトスタンドインの第7号、当てに行くどころか振り抜いています。三本目はチャップマンから右打席で三塁前へのボテボテのゴロを脚で稼いだ内野安打でした。3割3分5厘8毛2糸で首位打者をキープしています。

 ライアン・ブローンは2打数1安打、3割3分4厘5毛3糸で第二位。マット・ケンプは5打数2安打1打点で3割2分4厘4毛1糸。打点は124で本日5打点のプリンス・フィルダーに4点差と迫られています。

 ミゲール・カブレラは5打数2安打1打点1本塁打、3割4分3厘で首位打者をキープしています。レフトにライナーで叩き込んで30本塁打に乗せてきました。バッティング内容だけを評価すればMVP候補No1です。昨年は薬禍問題から立ち直ったジョシュ・ハミルトンに得票が流れ過ぎたきらいがありますのでその分今年はカブレラに票が回る可能性もありますが、単純に記者受けしないと言うことであれば、今年票が流れる先はジャスティン・バーランダーになる可能性があります。

 アルバート・プホルスは6打数1安打無打点で打率は3割をキープしていますが打点は98のまま。11年連続3割30本塁打100打点は最終戦に持ち越されることとなりました。


 黒田博樹が今季32回目の先発で投球回数を200回に乗せました。当ブログは日本人選手を避けているのではなく、語るべき数字を残す日本人選手が存在しないだけのことです。シーズンを通してローテーションを守って防御率9位はよくやったと言う評価もできるかもしれませんが、黒田より防御率が上位の投手の先発数と投球回数を見ると、防御率一位のクレイトン・カーショウが33先発で233回3分の1、二位のロイ・ハラデイが32先発で233回3分の2、三位のクリフ・リーが32先発で232回3分の2、八位のマット・ケインでも33先発で221回3分の2を投げています。同じ登板機会でありながら彼らと何が違うのか。簡単な算数の問題ですが、登板数が同じで投球回数が少ないのは一試合当たりの投球回数が少ないことを意味します。早い回でKOされることもありますが、一試合100球のメジャーでは無駄なボールを投げていれば投球回数が少なくなるのも簡単な算数の問題です。そしても一つ、黒田の今季の与四球は49個ですからカーショウの54個と比べても及第点と言えますが、一番の問題は被打率にあります。黒田は196本のヒットを許して被打率は0.254ですが、カーショウは0.207、マット・ケインは0.217、クリフ・リーが0.229、ロイ・ハラデイが0.239です(数字はSANSPO.COMを参考にさせていただいております。)。ヒットを多く打たれるから投球数が多くなり、一試合当たりの投球回数が少なくなっている訳です。来季はこの課題をクリアしてくれることを期待していますが、広島ファンが早く帰って来てくれと心待ちにしていることもお忘れなく。


2011年9月27日火曜日

ラスト・スパート ⑨


 本日はお休みの予定だったライアン・ブローンは終盤代打に出てきて左中間フェンス直撃のタイムリー二塁打を放って今季通算557打数186安打で3割3分3厘9毛3糸。このバッティングこそが私の知っているブローンのスウィングですが、センターから右にもあれだけ長打が飛ばせるようになってきたとは今回の「ラスト・スパート」シリーズのための画像チェックを行うまで気づきませんでした。ホセ・レイエスは4打数3安打、こちらは相変わらずのコンパクトなスウィングで日本人が見習うべきはレイエスのスウィングでしょう。今季通算530打数177安打で3割3分3厘9毛6糸となり、ライアン・ブローンを3糸抜いて首位打者に返り咲きました。「糸」まで表示することとした当ブログの先見性が光ります(笑)。ブルワーズとメッツは共に残り2試合となりました。

 マット・ケンプは第一打席で第38号スリーランを放ち本塁打、打点で単独トップに立ちました。今季通算593打数192安打で3割2分3厘7毛8糸となり流石に三冠王は遠のきましたが可能性は残ります。残り3試合で2本叩き込めば「40-40」となります。本日のホームランはバックスクリーン横奥のテラスに飛び込む特大弾でした。

 アルバート・プホルスは5打数2安打で打率を3割1厘に上げましたが四試合連続打点無しで「98」のまま止まっています。11年連続3割30本100打点に残り2試合となりました。今季五試合連続以上打点がなかったのは5月12日~5月22日までの六試合連続打点無しがあるだけで、4月9日~12日、5月2日~5日、5月19日~22日、7月31日~8月3日、9月4日~7日と四試合連続打点無しが5回ありましたが五試合目には打点をあげています。騰落レシオ的には明日は打点が出るとデータは示しています。


 アメリカン・リーグMVP争いが混沌としてきました。ミゲール・カブレラが3割4分2厘8毛1糸で首位打者に立ち、エイドリアン・ゴンザレスはマイケル・ヤングにも2糸抜かれて三位に落ちました。レッドソックスはワイルド・カード争いでもレイズに並ばれ、二冠王候補だったゴンザレスはタイトル無しではMVPは苦しくなってきました。ミゲール・カブレラは記者には人気がありませんので、またしてもジャスティン・バーランダーにチャンスが巡ってきました。マイケル・ヤングも逆転首位打者となればチャンスはあります。マイケル・ヤングのようなタイプは意外と得票が伸びる傾向にあります。

2011年9月26日月曜日

14年 セネタースvsライオン 4回戦


5月17日 (水) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 1 0 0 1 0 3 セネタース 12勝12敗       0.500 野口二郎
0 0 0 0 2 0 0 0 0 2 ライオン     11勝10敗3分 0.524 近藤久


勝利投手 野口二郎 7勝5敗
敗戦投手 近藤久     0勝2敗


二塁打 (ラ)近藤


セネタース5犠打


 ライオンは鬼頭数雄が怪我から復帰して四番に入る。

 セネタースは3回、先頭の織辺由三が四球を選んで出塁、森口次郎の投前送りバントをピッチャー近藤久が失して犠打エラー、トップに返り苅田久徳が一塁線に送りバントを決めて一死二三塁、横沢七郎の中犠飛で1点を先制する。二走森口もバックホームの隙を突いてタッチアップから三塁に向かうが「8-2-5」と転送されてタッチアウト。セネタースはこの回3犠打で1点を奪う。

 セネタースは5回、先頭の織辺がピッチャー強襲ヒット、森口が捕前に送りバントを決めて一死二塁、苅田が左前にタイムリーを放って2-0とする。

 ライオンは5回裏、先頭の岡本利之が四球で出塁、松岡甲二に代わる代打山本尚敏も四球を選んで無死一二塁、近藤久が左中間に同点二塁打を放って2-2と追い付く。

 セネタースは8回、先頭の苅田が四球を選んで出塁、苅田が二盗を決めて無死二塁、横沢七郎は三振に倒れてる一死二塁、苅田が三盗を決めて一死三塁、尾茂田叶が右犠飛を打ち上げて3-2と勝ち越す。

 野口二郎は8回には鬼頭のヒットと玉腰年男の四球で二死一二塁のピンチを迎えるが中野隆雄は遊ゴロ。最終回は三者凡退に退けて両軍4安打ずつの試合は試合巧者セネタースに軍配が上がる。

 野口二郎は4安打5四球2三振の完投で7勝目をあげる。

 セネタースは3つの送りバントと2つの犠飛で4安打ながら3点をあげる。






ラスト・スパート ⑧



 ライアン・ブラウンについてはライアン・ブローンの表記も見られるようになってきました。どう聞いても「ブローン」に聞こえますので、本日より当ブログでもライアン・ブローンの表記に改めさせていただきます。本日は3打数2安打1打点1本塁打、3割3分2厘7毛3糸で首位打者をキープしています。OPSも0.995となって0.981に下げたマット・ケンプを抜いて再びトップに立ちました。第33号は右中間最深部に叩き込んでいます。もう1本は右中間へ糸を引くようなライナーの二塁打でした。ブローンについてはもう少し引っ張るバッティングのイメージが強かったのですが、このところ見る画像はセンターから右への長打ばかりです。画像チェックは怠っていてはだめですね。

 MVP争いも再び混沌としてきた訳ですが、マット・ケンプの皆勤賞と40盗塁のアドバンテージは大きいのではないでしょうか。本日のケンプは5打数1安打1打点で3割2分4厘2毛8糸。ブルワーズは残り3試合、ドジャースは残り4試合なのでまだ逆転の目は残っています。ケンプには僅かながら「40-40」の可能性も残されています。


 クレイトン・カーショウが今季最終登板で21勝目をあげてサイ・ヤング賞を確定的にしています。本日はいつもよりチェンジアップを多投していたようで、来季に向けてのピッチングという位置付けだったのではないでしょうか。昨年のウバルト・ヒメネスとは違って1年でぽしゃるような投手ではありません。

 一方、アルバート・プホルスは4打数無安打、二試合連続無安打で打率は3割ちょうど。打点が98で止まっているためどの道最後まで出なくてはならないので途中経過の打率はあまり気にする必要はないのですが、余裕はあるに越したことはありませんので厳しくなってきましたが、このくらいの方が見る方にとっては面白いのも事実です。こちらも残り3試合となりました。

2011年9月25日日曜日

14年 阪急vs南海 4回戦


5月17日 (水) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8  9  計
0 0 1 0 0 0 0 1  0   2 阪急 17勝7敗         0.708 石田光彦
1 1 0 0 0 0 0 0 1X  3 南海   9勝16敗1分 0.360 平野正太郎 宮口美吉


勝利投手 宮口美吉 2勝5敗
敗戦投手 石田光彦 4勝1敗


二塁打 (阪)山下好
三塁打 (阪)山田
本塁打 (南)鶴岡 2号


鶴岡一人、三試合連続先制打


 南海は初回、二死後鶴岡一人が左翼スタンドにホームランを放って1点を先制する。鶴岡はこれで三試合連続の先制打となった。このホームランは今季甲子園球場初のホームランである。

 南海は2回、先頭の岡村俊昭が四球で出塁、伊藤経盛の遊ゴロの間に岡村は二進、中田道信の左前タイムリーで2-0とする。

 阪急は3回、一死後石田光彦が中前打で出塁、トップに返り西村正夫の二ゴロでランナーが入れ替わって二死一塁、フランク山田伝が左中間に三塁打を放って1-2と詰め寄る。

 阪急は4回、先頭の山下好一が四球で出塁すると南海ベンチは先発の平野正太郎を下げて宮口美吉をリリーフに送る。黒田健吾が送りバントを決めるが田中幸雄、森弘太郎が連続中飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪急は8回、一死後西村正夫が三塁に内野安打、西村が二盗を決めて山田が四球を選んで一死一二塁、上田藤夫は捕邪飛に倒れて二死一二塁、ここで山下好一が右越えに二塁打を放ち西村が還って2-2の同点、一走山田も三塁ベースを蹴ってホームを狙うが岡村から国久松一に送球されて国久がバックホーム、間一髪アウトとなってスリーアウトチェンジ。国久のバカ肩が快足山田を制した。

 南海は9回裏、先頭の岡村がこの日3つ目の四球を選んで出塁、山尾年加寿が三前に送りバントを決めて一死二塁、中田は四球で歩いて一死一二塁、宮口は三振に倒れて二死一二塁、ここで九番平井猪三郎が左前に殊勲のサヨナラヒットを放ってゲームセットを告げるサイレンが高々と鳴り響く。南海はこれで三連勝。


 鶴岡一人のホームランは翌日の読売新聞によると「(カウント)1-1後左翼観覧席に入る今シーズン二本目の本塁打」とのことでレフトスタンドに叩き込んだオーバーフェンスであったことは間違いないでしょう。狭い後楽園ですらホームランが出なくなるほど劣化した使用球による甲子園のオーバーフェンスはとても価値が高い。




     *鶴岡一人は甲子園でオーバーフェンスのホームランを放つ。




ラスト・スパート ⑦


 ジャスティン・バーランダーは昨日中四日では投げず、本日中五日できましたのでこれが今季最終登板となります。結局、1990年ボブ・ウェルチ以来の25勝はなりませんでした。防御率もトップはキープしていますがジェレッド・ウィーバーに0.01差となりましたのでこちらもどうなるか分からなくなってきました。と言うことで、サイ・ヤング賞は不動でしょうが、MVPは厳しくなってきたかもしれません。こうなるとエイドリアン・ゴンザレスに注目が集まる訳ですが、こちらはラスト・スパートがかからず、本日ミゲール・カブレラが28号を含む4打数3安打で打率1厘差と迫ってきましたのでどうなることやら。ボストン・レッドソックスもワイルドカードを争うレイズに1.5ゲーム差に迫られてきましたのでますますどうなることやら。まぁ今年のレイズには魅力を感じませんのでボストンがこのまま行くとは思いますが。と言うことで、MVP争いはエイドリアン・ゴンザレスが一歩リードと言うところでしょう。それでも私に投票権があれば、ジャスティン・バーランダーに清き一票を投じます。今季通算251回を投げて250奪三振と、奪三振率が9.00を切ってしまったのはとても残念ではありますが。

 ジェレッド・ウィーバーにはあと一試合登板機会がありますので防御率逆転一位を懸けてくるでしょう。但し防御率一位が確定したところで降板するようなセコイ真似はやめて最後まで投げ切ってもらいたい。昨年のカルロス・ゴンザレスのような最終二試合を休んでの逃げ切り首位打者のようなセコイ真似はやめましょう。高い給料をもらっているのだから、最後まで全力を尽くすという至極あたりまえの社会的責任を果たしましょう。果たしていないプレイヤーの何と多いことか。もちろん当ブログの登場人物には関係のない話ではありますが。

 ライアン・ブラウンが3打数2安打2打点で首位打者に返り咲きました。これで3割3分0厘9毛2糸、マット・ケンプは4打数1安打で3割2分5厘3毛4糸、5厘5毛8糸の差がつきました。ホセ・レイエスは3打数1安打で3割2分9厘5毛0糸。ホセ・レイエスは5年前には大リーグNo1のエキサイティング・プレイヤーでした。松井稼頭央がショートのポジションが獲れなかったのはホセ・レイエスに勝てなかったからです。三年連続盗塁王の脚もさることながら、あの肩にはPL学園時代速球投手だった松井稼頭央もかないませんでした。

 ミルウォーキー・ブルワーズは昨日1982年以来の地区優勝を果たしたとあって昨晩はドンチャン騒ぎだったでしょうが、プリンス・フィルダーもライアン・ブラウンも本日はフル出場しています。最後まで全力を尽くすという社会的責任を理解しているようです。アメリカ式バッティングを理解するには本日のライアン・ブラウンの第一打席の三塁打の画像を見ることをお薦めします。打球はライト線に飛びましたがバットは三塁ファウルグラウンドに飛んでいます。最初はバットが折れたのかと思いましたが、MLB.comの画像ではスローモーションも映してくれています。このスローモーションによると、まず左手が離れますが右手はまだバットを押し込んでいます。それから右手も離れたバットが三塁側に飛んでいきます。もう一度言いますがこれはライト線への打球です。ある程度バッティングを理解されている方であればこの拙い文面だけで何が起こったのかを理解していただけるでしょうが、百聞は一見に如かず、まずはこの画像を是非見てみてください。


*1982年にワールドシリーズに出場したミルウォーキー・ブルワーズを牽引したポール・モリターとロビン・ヨーントのWサインカードです。このワールドシリーズではこの年オジー・スミスが加入したセントルイス・カージナルスに敗れましたが、ホワイティ・ボールのカージナルス、ジョージ・ブレッドのカンザスシティ・ロイヤルズと並んで、スピードの時代であった80年代を代表するチームでした。



14年 ジャイアンツvsライオン 3回戦


5月16日 (火) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 2 0 0 1 0 0 4 ジャイアンツ 17勝9敗       0.654 スタルヒン
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 ライオン     11勝9敗3分 0.550 菊矢吉男



勝利投手 スタルヒン 12勝4敗
敗戦投手 菊矢吉男    8勝5敗


三塁打 (ジ)白石

スタルヒン、完投で12勝目


 ジャイアンツは初回、先頭の白石敏男が右中間に三塁打、水原茂が右前にタイムリーを放って1点を先制する。続く千葉茂も右前打、中島治康は投ゴロ、川上哲治は浅い(浅いと判断した理由は一死一三塁で三走水原が還っていないからです。)左飛とここまで全員センターから逆方向へのバッティング、恐らく藤本定義監督からの指示でしょう。アチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)は遊ゴロでアメリカ式バッティングのリベラの前では藤本監督の指示も関係無しというところか。

 ジャイアンツは4回、先頭の中島が四球で出塁、川上が右前打、捕逸で二者進塁してリベラ四球で無死満塁、井上康弘のセンター返しはピッチャー菊矢吉男を強襲するがセカンド西端利郎がバックアップして二塁ベースカバーのショート松岡甲二に送球されて一走リベラが二封される間に中島が還って2-0とする。リベラのアウトは「1・4-6」と記録されている。一死一三塁から吉原正喜は三ゴロ、サード中野隆雄から二塁ベースカバーのセカンド西端に送球されると三走川上がホームに突進、二塁フォースアウトから西端がホームに送球するとタイミングはアウトであったがキャッチャー岡本利之が落球して川上ホームインとなり3-0、とする。

 ジャイアンツは7回、一死後吉原四球、スタルヒン右前打、白石四球で一死満塁、水原の遊ゴロ併殺崩れの間に吉原が還って4-0とする。

 ライオンは8回、先頭の井筒研一が左前打で出塁、トップに返り坪内道則も左前打で続いて無死一二塁、しかし西端の二直に一走坪内が飛び出してゲッツー、水谷則一の中前打で二塁に残った井筒を還して1-4、水谷が二盗を決めて四番玉腰年男四球で二死一二塁と粘るが菊矢が三振に倒れて万事休す。

 ライオンは3回の攻撃で、井筒、坪内が連続内野安打、西端の三ゴロをサード水原が一塁に悪送球して無死満塁のチャンスを迎えるが水谷のスクイズ失敗により三走井筒が三本間に挟まれてタッチアウト、なお一死二三塁から水谷の左飛で三走坪内がタッチアップからホームを狙うがレフト千葉からのバックホームに刺されてゲッツー。結局、坪内が二度刺されたのが響いた訳である。ジャイアンツの初回の攻撃で三走水原が川上の左飛で自重したのと好対照であった。

 スタルヒンは7安打3四球1死球2三振の完投で12勝目をあげる。ようやく軌道に乗ってきた。





          *スタルヒンは完投で12勝目をあげる。




2011年9月24日土曜日

ラスト・スパート ⑥


 マット・ケンプは第三打席で外角球を右中間最深部に第37号を放ちアルバート・プホルスと並び打点、本塁打でトップに立ちました。注目の第四打席は凡退に終わり4打数1安打。フィリーズvsメッツ戦は順延となりホセ・レイエスはお休み、ライアン・ブラウンは優勝決定スリーランを放って4打数1安打。レイエスが変わらずの3割2分9厘4毛8糸 、ブラウンが3割2分9厘0毛9糸で二位に下がり、マット・ケンプは3割2分5厘8毛6糸でレイエスに3厘6毛2糸差で三位につけています。ミクロの争いとなってきましたので、本日から「毛」、「糸」までお伝えいたします。最終戦の最終打席まで目が離せない展開となりそうです。

 本日までブルワーズは157試合を消化、メッツとドジャースは156試合を消化しております。順延の試合がどこに組み込まれるのか、ダブルヘッダーが組まれるのか予備日にずれ込むのかが分からないのですが、ホセ・レイエスの最終戦に勝負がかかってくるような気がしてなりません。仮にの話ですが、マット・ケンプが本塁打、打点の二冠を確定した上で最終戦を終了し、ホセ・レイエスが一試合を残して二位のケンプと僅差で打率が首位であった場合、試合に出場するのかしないのか、仮に出た場合にこの打席で凡退したらケンプに逆転されるというシチュエーションを迎えた場合引っ込むのか打席に立つのか、その場合相手ピッチャーはどういう対応をとるのか。
 また、ケンプが首位打者にも立って三冠で最終戦を終了してホセ・レイエスが一試合を残していた場合、欠場して44年ぶりの三冠王を確定させるのか、逆転首位打者に賭けて出場するのか。マット・ケンプ以上に難しい立場にホセ・レイエスが追いやられる可能性も否定できなくなってきました。


 このような状況にありながら何故全く騒がれないのかについて考察してみましょう。マット・ケンプは7月以降約3カ月間、極めて安定した成績で打率は3割飛び台後半から3割2分台で滞留時間が長かったのは3割1分台でした。この間ホセ・レイエスが3割4分台をキープしておりライアン・ブラウンも3割3分台で安定していたため、マット・ケンプが打率で首位に立つなどなどと言うことは想定すらされませんでした。日経ダウ平均がたまに1万円に乗っかるけれど1万2千円に行くのは全く想定されていないのと似ています。それが1週間大暴騰を続けて1万2千円台に近付いてきてしまったというのが今のマット・ケンプの打率の状況で、誰もその真意を正確に呑みこめていないというのが現状ではないでしょうか。

 打点においても何しろ争っていたのがライアン・ハワードとプリンス・フィルダーであり、常にその下にいた訳ですから可能性としては抜くこともありえたとしても誰も本気でハワードとフィルダーを抜き去っていくとは考えていなかったのではないでしょうか。

 本塁打にしてもトップにいるのがアルバート・プホルスであり、好位に付けていたとは言え追い付くと本気で思っていた人はいなかったのではないでしょうか。私もプホルスを抜くのはダン・アグラだと思っていましたので。


 すなわち、一般論としてはマット・ケンプが3冠王を獲れるだけの潜在能力があることは多くの人が論じていた訳ですが、今年の状況下における現実論として、今年3冠王を獲ると本気で考えていた人が全くいなかったというエア・ポケット状態に陥っていたことが最大の原因でしょう。


 恐らく、獲った後に「だから俺が言ってたじゃないか」と、後だしジャンケンでしゃしゃり出てくる輩が多発することでしょう。

14年 名古屋vs南海 4回戦


5月16日 (火) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 名古屋 9勝15敗2分 0.375 繁里栄
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 南海   8勝16敗1分 0.333 劉瀬章


勝利投手 劉瀬章 2勝2敗
敗戦投手 繁里栄 2勝4敗


二塁打 (名)鈴木 
三塁打 (南)国久


鶴岡の決勝打を劉瀬章が守りきる


 南海は初回、一死後国久松一が右翼線に三塁打、鶴岡一人が中前にタイムリーを放って1点を先制する。

 劉瀬章がこの貴重なスミ一を守りきって、4安打2四球1死球2三振の完封勝利を飾った。名古屋先発の繁里栄も5安打3四球1三振の完投で2回以降無失点の投球を見せたが、前回の堺大浜球場でのダブルヘッダーに二試合連続完投負けを食らった雪辱に燃える南海の執念が上回ったようである。

 鶴岡一人は二試合連続で先制&決勝打を放った。


 翌日の読売新聞は「南海投手・劉は専ら球速の変化に意を用い、珍しくも上手投の速球を真っ向から投げ込むかと見れば例の通り下手投げの緩球をフワリと落し込む等チェンジ・オブ・ペースの妙諦を発揮して名軍を・・・抑え、1回の1点を死守して過ぐる堺大浜の雪辱をなし遂げ・・・」と伝えている。

 劉瀬章は本牧中学から法政大学に進んで神宮で活躍した。この経路は若林忠志と同じである。若林が日本で投げることになったのはハワイ選抜チームの日本遠征の際のピッチングが法政大学野球部関係者の目にとまり、法政にスカウトされた訳であるが、日本の中学を卒業しておかないと法政大学には入れないため、本牧中学に籍を置いて卒業証書をもらってから法政に進んだものであることはよく知られている史実である。これからすると、劉瀬章も法政大学野球部関係者の目にとまり、本牧中学を経由して法政大学野球部に進んだものと推測される。

 本牧中学は現在の横浜高校となりますので、横浜高校OB一覧には、涌井や愛甲や永川や松坂や筒香や成瀬や苅田や荒波や多村と並んで、劉瀬章の名前も載っています。




     *国久松一の三塁打と鶴岡一人の決勝タイムリーの場面。








               *劉瀬章が4安打完封。



14年 タイガースvs金鯱 4回戦


5月16日 (火) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 4 1 0 0 3 0 3 0 11 タイガース 17勝7敗1分 0.708 青木正一 西村幸生 木下勇
0 2 0 0 0 0 0 0 0  2 金鯱             6勝19敗     0.240 大宮清 磯部健雄


勝利投手 西村幸生 4勝2敗
敗戦投手 大宮清     0勝4敗


二塁打 (タ)西村、堀尾、伊賀上

本堂保次が3打点


 神戸市民球場シリーズ(と言っても1日だけでしたが)が終了して本日から九球団が集結して甲子園シリーズが始まります。

 初回に二死二三塁のチャンスを逃したタイガースは2回、門前真佐人が中前打で出塁、松広金一の二ゴロでランナーが入れ替わり、青木正一の右前打で一死一三塁、皆川定之の投前スクイズをピッチャー大宮清がバックホームするがセーフ、犠打野選となって1点を先制する。パスボールで青木が三進、皆川が二盗を決めて松木謙治郎四球で一死満塁、本堂保次が右前に2点タイムリーを放って3-0としてなお一死一三塁、ジミー堀尾文人の一ゴロの間に松木が還って4-0とする。

 金鯱は2回、先頭の古谷倉之助が左前打で出塁、中山正嘉の左前打をレフト松広が後逸、更にバックアップに入ったセンター堀尾もこれを後逸するダブルエラーの間に古谷と中山が相次いでホームに還り2-4とする。

 タイガースは3回、伊賀上良平が遊失に生きると二盗に成功、キャッチャー野村高義の送球がセンターに抜けるとセンター佐々木常助がこれを後逸する間に伊賀上が悠々とホームに還って5-2とする。両軍共に草野球のようなプレーが続く。

 タイガースは3回から先発の青木に代えて西村幸生を投入、これでようやく試合が締まった。西村は5イニングを投げて4安打2四球4三振無失点のピッチング、ようやく復調してきたようである。

 西村が好投を続ける間にタイガースは6回、松広の右前打を西村の左翼線二塁打で還して6-2、皆川の四球と松木の内野安打で無死満塁、本堂の中犠飛で7-2、堀尾のタイムリー二塁打で8-2とリードを広げる。

 タイガースは8回、二死後本堂が右前打から二盗に成功、堀尾の三ゴロをサード山本次郎がエラーして一三塁、堀尾が二盗を決めて富松信彦の二ゴロをセカンド岡野八郎がエラーする間に二者生還、伊賀上が止めの二塁打を放って11-2とすると、8回から西村に代えて木下勇をマウンドに送る余裕の継投で11対2で快勝する。

 西村幸生は14日の完封を挟んで5試合、22回3分の1連続無失点を続けて4勝目をあげる。










2011年9月23日金曜日

14年 南海vsジャイアンツ 3回戦


5月14日 (日) 神戸市民


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 4 1 0 0 0 0 6 南海          7勝16敗1分 0.304 政野岩夫
0 0 0 0 0 1 2 0 0 3 ジャイアンツ 16勝9敗         0.640 中尾輝三 川上哲治


勝利投手 政野岩夫 4勝6敗
敗戦投手 中尾輝三 2勝2敗


二塁打 (南)鶴岡 (ジ)川上

伊藤経盛、3安打を放つ


 南海は初回、先頭の小林悟楼が四球で出塁、国久松一は三振に倒れるが鶴岡一人が中越えに先制の二塁打を放って1-0とする。

 南海は4回、先頭の岡村俊昭が四球で出塁、伊藤経盛の右前打で無死一三塁、中田道信が右前にタイムリーを放って2-0、政野岩夫の投前送りバントをピッチャー中尾輝三が一塁に大悪投、これをライト中島治康がバックアップに入らずセカンド井上康弘がボールを追う間に二走伊藤に続いて伊藤に続いて中田もホームに走り井上からのバックホームが悪送球となって二者生還して4-0として打者走者の政野も三塁に進む。山尾年加寿は投ゴロに倒れるが小林が左翼線にタイムリーを放って5-0とする。

 ジャイアンツは先発の中尾を降板させて5回からファーストの川上哲治がマウンドに上る。

 南海は5回、一死後中村金次が四球で出塁、岡村は二飛に倒れるが伊藤が右前打を放って二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて6-0とする。

 ジャイアンツは6回、先頭の川上が左中間に二塁打、白石敏男四球で無死一二塁、三田政夫の遊ゴロで白石は二封されて一死一三塁、井上に代わる代打平山菊二の三ゴロの間に川上が還って1-6とする。

 ジャイアンツは7回、一死後水原茂が四球で出塁、千葉茂の左前打で一死一二塁、中島のピッチャー強襲ヒットで水原が還って2-6、川上が四球を選んで一死満塁、白石の遊ゴロ併殺崩れの間に千葉が還って3-6とする。

 南海先発の政野岩夫は8回、先頭の三田を三振に打ち取り三者凡退。9回は先頭の永澤富士雄に代わる代打山本次郎栄一郎を四球で歩かせアイル度ピッチで無死二塁のピンチを迎えるが水原、千葉を連続三振、中島を歩かせて二死一二塁とするが最後は川上を二ゴロに打ち取る力投を見せて完投勝利を飾る。


 南海の得点は全て先頭打者の四球に端を発したもの、四球は出さないに限ります。

 本日も四番に入った川上哲治は4打数2安打二塁打1本と四番の働きをした。南海では鶴岡一人が先制二塁打、伊藤経盛が4打数3安打の活躍であった。


 政野岩夫は結局、6安打9四球5三振の完投で4勝目をあげる。政野が鹿児島実業出身であることは2011年3月15日付けブログ「13年秋 南海vs金鯱1回戦」でお伝えした通りです。そこから発展させて同日付で鹿児島実業vs東海大相模戦で鹿実のセカンド中村孝選手が見せた超美技について「ファインプレー」で書かせていただきましたが、追加の資料を入手できましたので近日中に「ファインプレー その2」をアップさせていただく予定にしております。

緊急告知 ラスト・スパート ⑤


 大変なことになってきました。本日マット・ケンプは5打数4安打2打点、二塁打3本、本塁打1本。今季通算576打数188安打118打点、3割2分6厘、36本塁打となり、打点はライアン・ハワードに5打点差を付けてのトップ、本塁打は本日37号を放ったアルバート・プホルスに1本差の二位、打率はトップのライアン・ブラウンに4厘差、二位のホセ・レイエスに3厘差の三位に上げてきており、三冠王が現実味を帯びてきました。今のところ日本でマット・ケンプ三冠を報じているのは当ブログだけですので独占報道状態となっております。

 ここ6試合で25打数15安打8打点3本塁打、打率を一気に1分2厘押し上げてきたことが三冠王への可能性を高めた要因ですので、各種報道が追い付けないのも致し方のないところでしょう。当ブログですら一週間前には全くのノーマークでしたので。どうせ明日の各紙も黒田の13勝というあまり報道価値のないニュースのみが取り上げられることは分かりきった話なので当ブログでは全く興味を示さないであろうことも予言させていただきます。

 マット・ケンプに話を戻しまして、本日の第一打席は低目のスライダーを左翼線にラインドライブ、脚から滑り込んでの二塁打。5回の第三打席は内角球を右中間に運びフェンス直撃、二塁にはヘッドスライディングを見せての二塁打。あの体でのダイブには迫力があります。6回の第四打席は左中間最深部への当りでスタンディングング・ダブル。8回の第五打席は走者を一塁に置いて外角の力のない球をバックスクリーンに第36号ツーランを叩き込みました。打たれたのは敗戦処理に出てきたかつてのサイ・ヤングピッチャーのバリー・ジトでした。

 ドジャー・スタジアムには「MVPコール」が響き渡っていますが、もうMVPどころではなくなってきました。1967年のカール・ヤストレムスキー以来44年ぶりの快挙が成るか否か、全ては残り7試合に懸かってきました。ヤストレムスキーの次の三冠はアルバート・ベルが最も近いと言われていましたが達成できず、次いでアルバート・プホルスが三冠に最も近いと言われ続けてきましたが、漁夫の利をさらわれそうな雰囲気が漂ってきました。

 マット・ケンプの画像チェックは行ってこなかったのであまり偉そうなことは言えませんが、34号がバックスクリーン直撃、35号がセンターオーバー、本日の36号がバックスクリーンであることは確認しておりますので、今のブレのないスウィングから見ると、今日でばったり止まってしまうということは考えにくいと見ているのですがいかがでしょうか。かつての荒っぽいイメージは全く見られません。画像はMLB.comのホームページからドジャースのマークをクリックして入っていき、マット・ケンプの画像を見つければ誰でも無料で見ることができます。

14年 タイガースvsライオン 2回戦


5月14日 (日) 神戸市民


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 2 0 1 0 2 0 0 5 タイガース 16勝7敗1分 0.696 西村幸生
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ライオン     11勝8敗3分 0.579 菊矢吉男 近藤久


勝利投手 西村幸生 3勝2敗
敗戦投手 菊矢吉男 8勝4敗


西村幸生、今季初完封


 タイガースは3回、先頭の皆川定之が四球で出塁、トップに返り松木謙治郎が右前打を放って一三塁、本堂保次が四球を選んで無死満塁、ジミー堀尾文人の遊ゴロをショート松岡甲二がバックホームするがセーフ、フィルダースチョイスとなって1点を先制、富松信彦の二ゴロは「6-4-3」と転送されるが一塁はセーフ、2-0とする。一塁セーフなので富松には打点が記録されている。一塁アウトで併殺が完成されても無死満塁なので1点は入るが、4月21日以前の旧ルールでは富松に打点が記録されるが4月22日のルール改正後は富松には打点は記録されず、この新ルールが2011年現在まで続いている。

 タイガースは5回、先頭の松木が四球で出塁して二盗に成功、本堂四球、堀尾は中飛に倒れるが富松信彦が四球を選んで一死満塁、門前真佐人に代わる御園生崇男が中犠飛を打ち上げて3-0とする。

 タイガースは7回、先頭の松木が左前打で出塁、本堂の送りバントが内野安打となって無死一二塁、堀尾が四球を選んで無死満塁、富松の遊ゴロは「6-4-3」と転送されるが一塁セーフで4-0、ここでも富松に打点が記録される。続く御園生が二打席連続の中犠飛を打ち上げて5-0、タイガースはこの回ノーヒットで2点をダメ押して試合を決める。

 西村幸生がようやく本来のピッチングを見せつけた。翌日の読売新聞によると「西村は鋭く切れるカーブをはじめ多種多様の球を巧みに配合してライオン打者を幻惑せしめ、与えた安打3、四球2、二塁を踏ましめた走者僅か二人という会心の出来栄えを飾った。」とのこと。この「鋭いカーブ」というのは恐らくスライダーのことではないかと考えられます。スライダーの元祖は藤本英雄と言われていますが、これは後世の巨人主導の歴史の捏造であって、北井正雄が投げていた十字架球は現在のスライダーであったと言われています。関西大学で北井と同じ釜の飯を食った西村幸生がスライダーを投げていても何の不思議もありません。「多種多様の球」には若林忠志に教わったナックル・ボールも含まれていたかもしれません。若林が法政大学時代からナックルを投げていたことも史実として伝わっております。西村が若林から教わったかどうかは分かりませんが。

 西村幸生は3安打2四球5三振の完封で3勝目をあげる。


 御園生崇男が二打席連続犠飛を記録しました。4月22日に新ルールに移行していなければ2打席とも凡打として記録されるところでした。私事で恐縮ですが、高校3年の最後の夏の大会(神奈川軟式です、念のため)、直前に右足首を捻挫して1回戦はベンチスタートでしたが途中出場すると二打席連続犠牲フライを打ちました。全力疾走できなかったので「助かったー」と思った覚えがあります。






               *西村幸生は今季初完封。








*御園生崇男は二打席連続の中犠飛。「f-8」が四角で囲っているので「犠飛」になります。





ラスト・スパート ④


 本日はマット・ケンプが4打数2安打3打点1本塁打、今季通算571打数184安打116打点35本塁打40盗塁、打率3割2分2厘としてきました。予定通り打点はトップに立って本塁打はプホルスの36本に1本差、打率は首位のホセ・レイエスに8厘差まできました。9月に入って19試合で71打数24安打、打率3率3分8厘ですが、ここ5試合が20打数11安打と正にラスト・スパートに入ってきました。OPSも0.969で、MVP争いのライバルであるライアン・ブラウンの0.977と差が詰まってきましたので、こうなると皆勤賞と40盗塁のアドバンテージがあり、2年ぶりのゴールド・グラブも可能性がありますので、断然有利となってきます。まぁ、一気に三冠王まで行ってしまえば何も考える必要はなくなりますが。今の勢いであれば十分に可能性はあります。34号はバックスクリーン直撃、本日の35号もセンターオーバーと、以前の荒っぽさに確実性が加わってきています。本日現在においては、三冠に一番近い存在となっています。

 元祖・三冠に一番近い男・アルバート・プホルスは4打数2安打で打率を3割5厘に上げてきました。後は残り7試合で3打点をクリアすることのみですので11年連続3割30本100打点はまぁ行けるでしょう。問題は、100打点をクリアして打率が3割ぎりぎりとなって、休むべきか出るべきかの選択を迫られた場合です。そうならないためには、打率に余裕を持っておくことが不可欠となりますので、この二日で7厘上げておいたことが効いてくるでしょう。プホルスも9月に入って19試合で75打数32安打、4割2分7厘、ここ6試合で26打数13安打のラスト・スパートを見せております。


2011年9月22日木曜日

ラスト・スパート ③


 クレイトン・カーショウが期待通りやってくれました。しかも相手はティム・リンスカムです。7回3分の1を投げて6安打2四球6三振1失点1自責点で20勝目をあげて投手三冠に戻りました。MLB.comの画像では珍しくフォークも見ることができます。カーブの切れはこれまで見た中では一番でした。このピッチングを見せられてはフィリーズの帯に短し襷に長しトリオも片なしで、サイ・ヤング賞はほぼ決定と言ってよいのではないでしょうか。

 あまり騒がれてはいませんが、マット・ケンプに三冠王の可能性が出てきました。打率が伸びていなかったので三冠の声は全く聞こえていなかったのですが、本日の4打数2安打で首位打者ライアン・ブラウンの3割3分2厘に1分1厘差に迫る3割2分1厘に伸ばしてきました。打点はライアン・ハワードと並ぶ113点でトップですが、今の勢いであればこちらはタイトルを獲るのではないでしょうか。本塁打はアルバート・プホルスの36本、ダン・アグラの35本に次ぐ34本なのでこちらはトップに並びまで行ける可能性はあると思います。プホルスは3割をキープしなければならないので、ホームラン一本に絞っているダン・アグラが最大の難関となります。

 ダン・アグラはここ5試合で18打数3安打1本塁打7三振。恐らく全打席ホームランを狙っているのでしょう。本塁打一本に絞れる立場にあるダン・アグラがタイトルを獲る可能性は70%と見ます。

 アルバート・プホルスが又も5打数4安打とやってくれました。打率を3割4厘に上げて、36本塁打97打点と11年連続3割30本100打点に王手がかかってきました。1本目は外のカットボールを二遊間をグラウンダーで抜く中前打、2本目はキャッチャーは外に構えましたが少し中に入ってくるところを見逃さずショートの右を抜いて中前打、3本目は外に逃げるスライダーをボルチモア・チョップ、ワンバウンドでサードの頭を越えて左前に転がりました。アナウンサーは「ハイチョップ」と言っています。因みにボルチモア・チョップとはジョン・マグローやウィリー・キーラーが1900年代に開発した叩きつける打法のことですが、21世紀になっても活きています。4本目は完ぺきに捕えて三遊間を破りますが、打球の速さは人間業を超えています。本日の打球を見ても分かる通り、無理に打球を上げようとしていませんのでまずは打率3割をキープすることに主眼を置いたスウィングをしています。拠って、本塁打はダン・アグラが有利と判断している訳です。画像はMLB.comで見ることができます。

2011年9月21日水曜日

14年 ジャイアンツvs阪急 3回戦

5月14日 (日) 神戸市民


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 ジャイアンツ 16勝8敗 0.667 スタルヒン
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急         17勝6敗 0.739 高橋敏


勝利投手 スタルヒン 11勝4敗
敗戦投手 高橋敏         7勝1敗


二塁打 (ジ)中島


スタルヒン、今季三度目の完封


 本日は一日限りで神戸市民球場での開催となります。ジャイアンツ・スタルヒン、阪急・高橋敏の先発と今季最高のカードとなった。ジャイアンツは本日変則ダブルを組まれており、第三試合では南海と対戦する。神戸市民にジャイアンツを見てもらおうという配慮からであろう。尤も甲子園球場がある西宮市は小さな芦屋市を挟んで神戸のお隣ですので神戸市民の多くは甲子園に見に行くのはさして支障がある訳ではありませんが、私の生まれ故郷の須磨からはちょっと遠いので長田区にある神戸市民球場の方が便利です。

 神戸市民球場は昭和7年に完成し、両翼96メートル中堅114メートルの立派な球場です。本日以降も何試合かプロ野球公式戦が行われているようですが、今は取り壊されたそうです。

 ジャイアンツは6回、一死後水原茂が左前打から二盗を決めて一死二塁、千葉茂は遊飛に倒れるが中島治康がタイムリーを放って1-0としてそのまま押し切る。

 打撃不振に喘ぐ中島治康が4打数3安打1打点と、今季初めてと言ってもよい活躍を見せた。

 スタルヒンは4安打4四球6三振の完封で11勝目。今季最高と言ってもよいピッチングを見せた。勝星の割には内容が伴ってこなかった今シーズンであるが、本日はこれぞエースと言える投球であった。

 高橋敏は9回を完投して5安打3四球1三振であったが1点に泣いて今季初黒星を喫す。



 

2011年9月20日火曜日

ラスト・スパート ②


 本日はダブルヘッダーでエイドリアン・ゴンザレスが4打数2安打2打点と3打数3安打と爆発。昨日はミゲール・カブレラがゴンザレスを抜いて首位に立つ可能性について言及しましたが、打率二位のカブレラに一気に7厘差を付けました。ここで私の持論を一つ。ナショナル・リーグの方がアメリカン・リーグよりレベルが高い。アメリカン・リーグ中心に放映を続けるNHK(流石に本日はフィリーズvsカージナルス戦を放映していましたが)や、アメリカン・リーグを記事にしないとスポンサーに逃げられるスポーツ新聞は私の持論を抹殺せざるを得ないでしょうが、ナショナル・リーグではタイトルに無縁であったミゲール・カブレラがアメリカン・リーグに移った途端タイトルを獲りまくり、ナショナル・リーグではタイトルに無縁であったエイドリアン・ゴンザレスがアメリカン・リーグに移った途端首位打者はおろかMVPまで獲りそうな勢いである事実が私の持論を証明しています。

 近年のオールスターではアメリカン・リーグの方が勝っているじゃないかと言う反論が来るのは目に見えていますが、ピッチャーが1イニングずつしか投げない(先発ピッチャーは2イニング投げることがありますが)お遊び試合の結果には、私は興味はありません。ピート・ローズがキャッチャーに激突してノックアウトした頃のオールスターゲームは高く評価していますが(写真参照)

 明日はクレイトン・カーショウが20勝をかけて登板することになるかと思います。本日はロイ・ハラデイが8イニングで4点取られて負け投手となっています。矢張り今年はハラデイの年では無いようです。史上最高の左腕と言われるサンディー・コーファックスの名前を知っていてもそのピッチングを見た方は極めて少ないのではないかと思います。知人がアメリカ在住時にシーズオフのESPNクラシックを数百本録画してきており、サンディー・コーファックスの1965年ワールドシリーズ第七戦の画像をダビングさせてもらいましたのでコーファックスのピッチングを1回から9回まで全て見ることができます。これはもちろん商業用ビデオではありません。

 この年のワールドシリーズ第一戦はユダヤ教の祭日であったため、ユダヤ教徒のコーファックスは安息日であることから登板を拒否します。「炎のランナー」のような話ですが両方とも史実です。と言うことで第一戦と第四戦はドン・ドライスデールが登板し、コーファックスは第二戦と第五戦に投げることとなりました。このシリーズは第七戦にもつれ込みました。ローテーションでは中三日のドライスデールの登板となりますが、ウォルター・ウォルストン監督は中二日のサンディー・コーファックスを先発させ、コーファックスはミネソタ・ツインズを3安打完封します。画像にはブルペンで準備するドン・ドライスデールの姿が何度も映し出されています。この画像ではコーファックスの最大の武器である大きなカーブを見ることができます。

 前置きが長くなりましたが、クレイトン・カーショウの武器は1時の方向から7時の方向に落ちると言われる大きなカーブです。私がカーショウをコーファックスの再来と見る理由はこのカーブにあります。カーショウの画像は現代であれば見ることも容易かと思いますので、是非ご覧ください。スライダー、ツーシーム、カットボール全盛の今だからこそ、クレイトン・カーショウのカーブには価値があると考えています。





*1970年オールスター延長12回、ピート・ローズがホームに突っ込みレイ・フォッシーと激突したシーンです。ホームベースめがけて突き出したローズの右手を、現代の選手諸君はどう見る?





2011年9月19日月曜日

ラスト・スパート



 今年の各地区の順位争いは早くから大差がついてしまい、ワイルドカードもボストンとアトランタでほぼ決まりと言うことで全く盛り上がりません。対照的に個人タイトル争いは例年以上に面白くなっております。決まっているのはアメリカン・リーグのサイ・ヤング賞のジャスティン・バーランダーだけで、バーランダーは本日8回を無失点で24勝目をあげ、MVPとのW受賞の可能性があります。中四日でいけばあと2回投球チャンスがありますので1990年のボブ・ウェルチ以来の25勝越えが現実味を帯びてきました。但し投手はサイ・ヤング賞、打者はMVPという棲み分けが確立してきている昨今ではW受賞が至難の業であることも事実です。

 アメリカン・リーグのMVP争いはエイドリアン・ゴンザレスが一歩リードしていますが9月18日現在(以下、数字は9月18日現在)OPSは0.949でバウティスタの1.071と比較して大きく見劣りします。ならばバウティスタがMVP候補かと言うとそう簡単でもありません。バウティスタは本塁打こそ42本でトップに立っていますが打率は3割4厘、打点は100でとてもMVPを論じる域に達しておらず、四球123個によってOPSが嵩上げされているだけで(OPS=出塁率+長打率)、バウティスタが選ばれるようでは四球王が必ずMVPになってしまいます。成績のバランスがいいのはミゲール・カブレラで、カブレラのOPSは0.997でゴンザレスを凌いでいます。首位打者争いでゴンザレスを抜いて首位に立つ可能性も十分です。

 昨年の最終予想でもジョシュ・ハミルトンでは無くミゲール・カブレラにして大はずれとなりましたが、懐の深いバッティングは現在世界No1です。但し得票が集まりにくいのも事実です。フロリダ・マーリンズ時代の三塁守備で見せていた手抜きプレーのイメージが強いのでしょう。タイガース移籍後は一塁に回りましたので手抜きプレーは影を潜めているかもしれませんが守備は巧くありません。昨年アルマンド・ガララーガが世紀の誤審で完全試合を逃したプレーも、カブレラが追わずにセカンドに任せておけばなんでもないセカンドゴロで終わっていました。この件では審判のミスばかりが喧伝されていますがお門違いも程々にしろと言いたい。あれは明らかにカブレラの判断ミスでした。

 40本塁打に乗せてきたグランダーソンは打点でもトップに立っていますが打撃30傑にも入っていないのでどうでしょうか。仮に本塁打でトップに立ってもこの手の二冠王は得票が集まりにくい傾向にあります。アメリカン・リーグの打撃陣はどれを見ても帯に短し襷に長しで、バーランダーのMVPは十分可能性があると考えています。投手のMVPは92年のデニス・エカーズリー以来のこと、先発投手としては1971年のバイダ・ブルー以来のこととなります。


 ナショナル・リーグのサイ・ヤング賞はクレイトン・カーショウで行けるでしょう。フィリーズ・トリオはカーショウの前では帯に短し襷に長しです。

 ナショナル・リーグのMVP争いが一番面白い。ライアン・ブラウンが予定通りホセ・レイエスを抜いて首位打者に立ちました。本日は4打数3安打、昨日は5打数3安打4打点1本塁打、一昨日は4打数2安打2打点2本塁打です。現在3割3分6厘、103打点31本塁打31盗塁です。一方のマット・ケンプは3割2分(三位)、34本塁打(二位タイ)、113打点(一位タイ)、40盗塁(二位)です。マット・ケンプは全試合出場と言うアドバンテージを持っています。しかしながらOPSはブラウンの0.997に対してケンプは0.963。ブラウンの90三振に対してケンプは149三振と相変わらず三振が多い。全試合出場と40盗塁でマット・ケンプが55対45で有利と見ますがいかがでしょうか。

 もう一つ、アルバート・プホルスは本日36号ツーランを放ち、533打数160安打、3割ちょうど、36本塁打、95打点まで来ました。こちらも11年連続3割30本塁打100打点に向けて、ラストスパートに入ってきました。

訂正のお知らせ 14年 ⑤

8月21日付けブログ、4月15日のジャイアンツvs阪急戦のタイトルが「3回戦」となっていましたが「2回戦」の間違いでしたので、お詫びして訂正させていただきます。本文は訂正済みです。

14年 名古屋vsセネタース 3回戦


5月14日 (日) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 1 0 0 1 0 0 0 3 名古屋         9勝14敗2分 0.391 繁里栄 中村三郎
0 0 1 0 0 0 0 1 0 2 セネタース 11勝12敗       0.478 金子裕 浅岡三郎


勝利投手 中村三郎 2勝1敗
敗戦投手 金子裕     3勝6敗


二塁打 (名)加藤、服部 (セ)柳
三塁打 (名)芳賀 (セ)野口




ベンチワークの勝利


 翌日の読売新聞によると「両軍とも救援投手には不向きな金子、繁里に先発させ続ける所まで続けて、前者は浅岡、野口で、後者は中村に救援させようとの投手起用作戦であった。」とのこと。因みにこれは公式記録員でもある広瀬謙三の署名入り記事である。


 名古屋は初回、二死後大沢清が右翼線に痛打、加藤正二の左中間二塁打で大沢が一塁から鈍足を飛ばして生還、1点を先制する。


 名古屋は3回、先頭の芳賀直一が左中間に三塁打、広瀬の記事によると1回の加藤と同じところに飛んだとのこと。トップに返り石田政良の中前タイムリーで2-0とする。


 セネタースは3回裏、一死後森口次郎が左前打で出塁、トップに返り苅田久徳が四球を選んで一死一二塁、二死後尾茂田叶が中前にタイムリーを放って1-2とする。


 1点差としたところでセネタースは予定通り4回から金子裕を下げて浅岡三郎をマウンドに送る。
 セネタースは4回裏、一死後浅岡が左前打、柳鶴震が右翼線に二塁打を放って一死二三塁とすると名古屋も繁里栄を下げて中村三郎をマウンドに送る。本日の名古屋はファーストに三浦敏一をスタメンで起用しているので中村投入は広瀬の言うとおり予定の行動であったようだ。と言うより、広瀬は三浦のスタメン起用を見て中村のリリーフを予想していたのであろう。中村は期待に応えて織辺由三を投ゴロ、森口次郎を三邪飛に打ち取りピンチを防ぐ。


 名古屋は6回、二死後加藤が左前打、三浦が中前打を放って二死一二塁、服部受弘は四球を選んで二死満塁、名古屋ベンチはここで鈴木秀雄に代えて怪我から復帰の桝嘉一を代打に起用して勝負を賭ける。桝はストレートの押出し四球を選んで3-1、ここは桝嘉一の貫録勝ちと言ったところ。桝の代走に牧常一が起用されてそのままレフトに入っているので桝はまだ完全復活では無いようである。


 セネタースは8回、一死後四番ファースト野口二郎が右中間に三塁打、佐藤武夫が左前にタイムリーを放って2-3とするが最終回は中村に三者凡退に打ち取られてゲームセットを告げるサイレンが鳴り響く。


 広瀬謙三の記事によると「中村が得意のスロー・ドロップを連発して・・・」とある。また、「浅岡は一週間に一回位の投球でないと疲労が回復しないらしい。」とのこと。更に桝嘉一については「足部負傷で休養していた・・・」とのことである。公式記録員である広瀬謙三は時々読売新聞に論評を寄せているが、まぁ、聯盟と読売新聞は一蓮托生だったのでしょう。

 いずれにしても本日の名古屋の勝利は中村三郎をリリーフに送ったのと桝嘉一を代打に起用したベンチワークの勝利であったことには間違いない。まだ根本行都監督だと思います(5月30日まで在籍していたようですので)が、シーズン途中で小西得郎監督と交代することとなります。但しこの頃は桝嘉一主将が指揮をとっていたのかもしれません。

14年 イーグルスvs金鯱 4回戦


5月14日 (日) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 0 0 1 0 0 2 イーグルス 11勝14敗1分 0.440 中河美芳
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 金鯱        6勝18敗      0.250 中山正嘉


勝利投手 中河美芳 4勝3敗
敗戦投手 中山正嘉 5勝6敗


二塁打 (イ)中河 (金)佐々木、古谷

イーグルス、4併殺で守り勝ち


 細かい雨が降り続きグラウンドコンディションは悪かったが、イーグルス守備陣が悪条件の中で守り抜いた勝利であった。

 イーグルスは初回、先頭の寺内一隆が四球で歩き山田潔が送りバントを決めたが後続無く、2回も杉田屋守のヒットと辻信夫の四球で一二塁とするが無得点。3回、先頭の寺内が中前打で出塁、山田の送りバントは強すぎてファースト古谷倉之助が二塁に送球してフォースアウト、しかし中山正嘉が太田健一、中河美芳に連続四球を与えて一死満塁、菅利雄が押出し四球を選んで1点を先制する。

 4回~6回は無安打に終わったイーグルスは7回、先頭の寺内が中前打で出塁、山田が本日2つ目の送りバントを決めて一死二塁、太田は二飛に倒れるが中河が前進守備のレフトの頭上を抜く二塁打を放って2-0とする。

 金鯱は8回、先頭の山本次郎に代わる代打岡野八郎が四球で出塁、佐々木常助が送って一死二塁、武笠茂男が左前打を放って一死一三塁、野村高義の右邪犠飛で岡野が還って1-2とする。

 金鯱は9回、一死後中山が四球を選んで出塁、浅井太郎に代わる代打磯部健雄が右前打を放ち、磯部の代走に永井正尚が起用されて一死一二塁と一打同点のチャンスを作るが、荒川正嘉は三ゴロに倒れてサード漆原進が三塁ベースを踏んで二死一二塁、岡野が投ゴロに倒れて試合終了を告げるサイレンが高々と鳴り響く。

 イーグルスのトップバッター寺内一隆が4打数2安打1四球2得点、2本の中前打で出塁するといずれもホームに還ってきた。

 イーグルス守備陣は4つの併殺を完成させた。2回の一死一二塁で「1-4-3」、4回の無死一塁で「6-4-3」、6回の一死一塁で「1-6-3」、7回の一死満塁で「5-2-3」と、バッッテリーを含む内野陣全員が関与した。

 中河美芳は9安打を浴びながら4四球1死球3三振で三試合連続完投勝利を飾った。


 このところ金鯱の三番に定着してきた野村高義が右邪犠飛を記録した。ファウルフライが犠牲フライとして記録されたのは公式記録ではこれが史上初となる。野村は花の13年組として享栄商業からジャイアンツに入団したが13年は春秋合計で17打数1安打に終わり今季金鯱に移ってきた。巨人を出たのは大正解で金鯱の三番に定着してきた。今季は13本の二塁打を打つこととなるが、一位の中島治康の22本には敵わないが吉原正喜の14本と比べても遜色はない。三塁打は6本打つこととなるが、一位の川上哲治の12本には敵わないが中島治康の8本と比べても遜色はない。


 巨人を出て成功したピッチャーは山内、松原等多いのですが打者では船田和英が成功事例として知られています。巨人で燻ぶっていた船田は1966年、田中久寿男とのトレードで西鉄ライオンズに移り主力打者に成長します。ヤクルトに移ってからも主力打者として活躍し続け、特に1978年の日本シリーズでも活躍してヤクルト初の日本一の立役者となり、紅白歌合戦では角、若松と共にゲスト出演しています。審査員は山本浩二でしたが。因みにこの年の紅組のトリを務めた山口百恵はプレイバックPart2を歌う際、他のNHKの番組では「真っ赤なポルシェ」を「真っ赤な車」と歌っていたところ、紅白の場で「真っ赤なポルシェ」と歌いました。「いいのかよー」と思った覚えがあります。徐々に世の中に商業主義が押し寄せてきた頃のことです。

 巨人と西鉄間は意外とトレードが多く、巨人はONの後ろの五番打者を西鉄のベテランに求める傾向がありました。船田との交換で獲った田中久寿男もそうですが、最大の成功事例は宮寺勝利との交換で獲った高倉照幸でしょう。ONが不振の時にホームランを連発し、当時の読売新聞に高倉がダイヤモンドを回る写真と共に「ONが打たなくても」という見出しが躍っていました。

 黒い霧後に川上が稲尾に同情して高橋明を譲ったという美談が伝わってますが、この時も交換で広野功を獲っています。私は川上が広野を狙っていただけと踏んでいます。広野はこの年、代打逆転サヨナラ満塁本塁打を打っています。正確には、この時のトレードは高橋明・田中章・梅田邦三と広野功・浜村健史の三対二の交換トレードです。巨人でも準エースだった高橋明には不満があったようですが、田中章は巨人では全く出番は無く西鉄でリリーフエースに成長し、梅田も巨人では出番が無く西鉄に移って球界随一のフィールディングを誇る守備の名手として活躍しました。広野は慶大時代からスラッガーとして知られており、浜村もドラフト一位の大型内野手ですから巨人は全く損をしておらず、美談が権力者サイドによる作り話であることは見え見えです。





*西鉄時代の船田のサイン。船田が28を着けていたのは1966年の一年間だけですから貴重なものです。








*高倉のライオンズ・メモリアルのサイン入りカード。高倉氏は地元でリトルシニアの指導者をされているようです。福岡南リトルシニアのホームページによると、現在は会長兼総監督を務めておられるようです。







*船田、広野、高橋明のカバヤ・リーフ ベースボールカード







*カバヤ・リーフは1960年代ですから40年以上前のカードがこれだけの状態で残っているのは貴重でしょう。







          *広野は中日時代になります。








*高橋明が西鉄に移籍してきた時、同姓同名の「高橋明」外野手がいました。あまり試合には出ていませんが、出場した時はスコアボードには「高橋外」と表示されました。



2011年9月18日日曜日

14年 第6節 週間MVP


 今節は阪急が4勝0敗、ライオンが2勝0敗、イーグルスが4勝2敗、タイガースが2勝1敗、セネタースが3勝3敗、ジャイアンツが3勝3敗、南海が1勝2敗、名古屋が1勝4敗、金鯱が0勝5敗であった。



週間MVP

投手部門

 イーグルス 中河美芳 1

 1完封を含む二連続完投勝利でイーグルス破竹の四連勝を引っ張る。今節は野口二郎とスタルヒンが勝ち星では共に3勝ではあったが、内容に優る中河の受賞となった。



打撃部門

 イーグルス 山田潔 1

 再三打撃好調をお伝えしているので予想通りだったのではないでしょうか。今節18打数6安打3得点5打点、9四球、打率3割3分3厘、出塁率5割5分6厘、得点力の乏しいイーグルスにあって、とにかくよく得点に絡む。
 鈴木惣太郎の論評によると定評のある守備にも一段と磨きがかかってきたようだ。山田は歴史的には打力に乏しいことで有名ですが、間違いなく今は一番当っているバッターです。



 タイガース 門前真佐人 1

 タイガースは今節前半の3試合だけであったが、12打数7安打1得点3打点、三塁打1本、本塁打1本と爆発した。流石は「地震・雷・火事・門前」。




殊勲賞

 ライオン 山本尚敏 1

 二試合連続の決勝サヨナラ押し出し四球と決勝犠飛でこちらも予想通りでしょう。


 イーグルス 望月潤一 1

 7日の名古屋戦で2安打完封勝利を飾る。


 ジャイアンツ 平山菊二 1

 足踏みが続くジャイアンツにあって9日の名古屋戦で起死回生の同点タイムリーを放つ。ここで中村三郎に二試合連続でやられていたらズルズルと行っていた可能性が高く、正に歴史的一打とも言える殊勲打です。





敢闘賞 

 イーグルス 太田健一 1

 今節20打数8安打4四球、イーグルス快進撃の一方の立役者。


 ジャイアンツ 白石敏男 1

 最後の試合は肩痛のため欠場したが今節20打数9安打1得点1打点、4四球、二塁打3本、本塁打1本。


 セネタース 横沢七郎 1

 今節21打数8安打2得点3打点。セネタース三連勝の貢献度No1。





技能賞

 阪急 西村正夫 1

 今節12打数5安打2得点1打点、4四球3盗塁。破竹の九連勝を続ける阪急の核弾頭。


 名古屋 中村三郎 1

 諏訪蚕糸時代に取った杵柄でジャイアンツ相手に完投勝利を飾る。






14年 ジャイアンツvsイーグルス 4回戦


5月11日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 0 0 1 2 0 0 1 6 ジャイアンツ 15勝8敗         0.652 中尾輝三 スタルヒン
0 1 1 0 2 0 0 0 X 4 イーグルス   10勝14敗1分 0.417 望月潤一 亀田忠


勝利投手 スタルヒン 10勝4敗
敗戦投手 望月潤一    1勝4敗


二塁打 (ジ)千葉
三塁打 (ジ)吉原

スタルヒン、10勝


 ジャイアンツは中尾輝三、イーグルスは前回名古屋戦で完封勝利の望月潤一と両左腕投手が先発。

 ジャイアンツは当っている白石敏男が肩痛のため欠場。(五)水原茂、(四)千葉茂、(九)中島治康、(三)川上哲治、(八)アチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)、(七)平山菊二、(六)井上康弘、(二)吉原正喜、(一)中尾輝三の新オーダーを組む。ショートには井上が回り千葉がセカンドに入る。川上が初の四番起用となったが、これは白石が欠場したため水原以下が一つずつ繰り上がったにすぎない。

 ジャイアンツは初回、先頭の水原が四球、千葉の二ゴロでランナーが入れ替わり、中島治康の右前打で一死一三塁、中島が二盗を決めた際、キャッチャー伏見五郎の二塁送球をショート山田潔がエラーする間に三走千葉が還って1点を先制、新四番川上は遊飛に倒れるがリベラの右飛をライト太田健一がエラーする間に中島が還って2-0とする。

 イーグルスは2回、一死後杉田屋守が右翼線にヒット、伏見は二飛に倒れるが望月潤一が中前打を放って二死一三塁、辻信夫が右前にタイムリーを放って1-2とする。好調山田の影に隠れているが、山田よりも更に打力が落ちると言われる辻もこのところよく当っている。

 イーグルスは3回、一死後山田が四球で出塁、太田が中前打で続いて一二塁、中河美芳は三振に倒れるが杉田屋が左前にタイムリーを放って2-2の同点に追い付く。

 ジャイアンツは5回、二死後水原がキャッチャーの打撃妨害に生き、千葉が右中間に二塁打を放って水原が一塁から長駆生還、3-2とする。

 イーグルスは5回裏、先頭の山田が四球で出塁、太田が送って一死二塁、中河の投ゴロで山田は二三塁間に挟まれるがジャイアンツ内野陣の凡プレーで三塁セーフ。このシーンを翌日の読売新聞は「水原の二塁へ追い込みすぎに加えて千葉、井上と共に塁を空にして呆然と追撃に眺め入った不覚あって・・・走者を生かす。」と伝えている。ここは白石欠場の影響でしょう。更に杉田屋が四球を選んで一死満塁、伏見への初球がボールとなったところでジャイアンツ藤本定義監督は中尾をあきらめてスタルヒンを投入する。しかし伏見が右前に同点タイムリーを放って3-3、望月が押出し四球を選んで4-3と逆転に成功する。辻信夫は三振、漆原進は左飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 ジャイアンツは6回、一死後平山が四球で出塁、井上の三ゴロをサード漆原が二塁に悪送球して一死一二塁、続く吉原は一飛に倒れるがこの当りで走者二人がタッチアップから進塁して二死二三塁、スタルヒンが中前にタイムリーを放ち4-4の同点、二走井上も三塁ベースを蹴ってホームに突っ込む。センター寺内からのバックホームはアウトのタイミングであったが伏見が落球して5-4と再度逆転に成功する。水原が左前打で続き一死一二塁となったところで望月が退き亀田忠がリリーフのマウンドに上がる。千葉が四球を選んで二死満塁、しかし中島は右飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 ジャイアンツは9回、四球の井上を吉原の左中間三塁打で還して6-4とする。

 スタルヒンは6回以降2安打無失点に抑え、最後は中河、杉田屋を連続三振に斬って取って10勝一番乗りを果たす。


 望月潤一は5失点で降板したが自責点はゼロであった。望月投手のご子息のブログによると、望月とスタルヒンは仲が良かったそうです。望月投手は当時としては珍しく英語が得意でバッキー・ハリスとも親しかったそうです。戦時中はフィリピンで帰国していたアチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)とも親交があったそうで、戦前の純然たるカタカナ表記の選手としては昭和11年のみ在籍したジミー・ボンナ、ハーバート・ノース以外とは全員親交があったようです。但しスタルヒンは英語は得意ではなかったので、純粋に人間的なつながりだったのでしょう。





         *スタルヒン好リリーフを見せて10勝一番乗り。



14年 金鯱vsセネタース 3回戦


5月11日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 金鯱       6勝17敗 0.261 古谷倉之助
0 0 0 0 1 0 0 0 X 1 セネタース 11勝11敗 0.500 浅岡三郎 野口二郎


勝利投手 野口二郎     6勝5敗
敗戦投手 古谷倉之助 1勝4敗


二塁打 (金)野村、古谷 (セ)苅田


野口二郎三連投!


 金鯱は古谷倉之助、セネタースは浅岡三郎と両ベテランが先発。

 セネタースは5回、先頭の苅田久徳が四球で出塁、二盗を決めて無死二塁、横沢七郎が左前にタイムリーを放ち、これが決勝点となった。

 スコアブックの天候欄には「晴 南強風」、「砂塵あり」と記載されている。翌日の読売新聞にも「この日スコアボードの両脇を抉(えぐ)って吹き込んでくる烈風は球場に砂塵を巻き上げて両軍選手の試合運行頗る困難であった。」と書かれている。当時は黄色いビルも後楽園ゆうえんちも無く、吹きっさらしだったのでしょう。当時の文献にも砂塵は「後楽園名物」などと書かれています。
 古谷倉之助は追い風を利してストレートの走りが良かったようで、久々の好投を見せたが1点に泣いた。カーブを武器とする浅岡三郎は追い風に弱く、洲崎球場時代はカーブが曲がらずに苦労していたが、その時の経験を生かして風対策も万全だったのであろう。

 鈴木惣太郎の論評によると「この試合こそ走塁の巧拙によって決せられたもの」とのこと。セネタースの得点の場面は横沢七郎の送りバントが決まらず、カウントツーツーとなったところで苅田が二盗を決めて横沢のタイムリーで還ったものであった。金鯱は7回、古谷の内野安打から送りバントとワイルドピッチで一死三塁としたが長島進の投ゴロに古谷が飛び出しタッチアウト、浅井太郎が四球を選んで二死一二塁としたがキャッチャー佐藤武夫の一塁牽制に浅井は戻れず一二塁間に挟まれ、二走長島は三塁に走ったがファースト野口二郎からの送球に刺された。

 金鯱は最終回、古谷が左翼線に二塁打を放ち、瀬井清の遊ゴロを柳鶴震がエラーして一死二三塁、ここでセネタースは好投の浅岡から野口二郎にスイッチ、金鯱は長嶋に代えて武笠茂男を代打に送る。覚えておられる読者の方もいらっしゃるかと思いますが、武笠は野口二郎のデビュー戦で4打数3安打しています。野口は苦手の武笠との勝負を避けて一死満塁、追い風に乗って野口の球速はいつもよりも増して代打高久保豊三を二飛、岡野八郎を遊ゴロに抑えてセネタースは三連勝を飾る。野口二郎は三日連投で三連勝。“北の狼”火浦健みたいです(詳しくは「水島新司著「野球狂の詩」をお読みください。“北の狼・南の虎”の方ではなく“狼の恋”(このタイトルもうろ覚えで申し訳ありませんが)の方ではなかったかと思います。)。


 この試合も現行ルールでは勝利投手は浅岡三郎ですが公式記録では野口二郎に記録されています。浅岡は8回3分の1を投げて6安打2四球2三振の好投を見せていますので野口を勝利投手とする理由は見当たりません。三連投を評価したのでしょうか。当時の記録員の証言によると、「当時はリリーフ投手に有利に勝利投手を記録していた思う」とのことなので、この試合などは典型事例でしょう。ここからは全くの推測にすぎませんが、投手の数が少なかった当時は「投手を潰さないよう、なるべく継投策を取るように」というムードが醸成されていたのではないでしょうか。そのためリリーフ投手重視の雰囲気が醸し出され、勝利投手の記録もリリーフ投手に有利に働いていたのではないでしょうか。或はその奨励策という意味もあったかもしれません。





               *野口二郎は三連投三連勝。





14年 ジャイアンツvsセネタース 3回戦


5月10日 (水) 後楽園



1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 2 0 0 0 0 2 ジャイアンツ 14勝8敗   0.636 川上哲治
1 0 3 0 0 0 0 0 X 4 セネタース   10勝11敗 0.476 金子裕 野口二郎


勝利投手 野口二郎 5勝5敗
敗戦投手 川上哲治 3勝3敗


二塁打 (ジ)吉原 (セ)苅田

甲子園決勝以来の対決


 ジャイアンツは川上哲治、セネタースは金子裕と両左腕軟投派が先発する。

 セネタースは初回、先頭の苅田が左翼線に二塁打、続く横沢七郎が中前にタイムリーを放って1点を先制する。

 セネタースは3回、一死後苅田の遊ゴロをショート白石敏男がエラー、横沢の右翼線ヒットで一死一三塁、尾茂田叶が一二塁間を抜いて2-0としてなお一三塁、野口二郎の三ゴロの間に横沢が還って3-0として二死二塁、佐藤武夫が中前にタイムリーを放て4-0とリードを広げる。

 ジャイアンツは5回、アチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)が右前打で出塁、井上康弘が四球を選んで無死一二塁、吉原正喜の三ゴロをサード横沢がエラーする間にリベラが還って1-4、永澤富士雄が中前にタイムリーを放って2-4としてなお無死一二塁する。セネタースベンチはここで先発の金子をあきらめてファーストの野口二郎をマウンドに送る。白石が送りバントを試みるが野口が読んでいたようで三塁に送球してフォースアウト、水原茂は左飛に倒れ、キャッチャー佐藤が捕逸を犯して二死二三塁とするが、千葉茂は三振に倒れてスリーアウトチェンジ。

 ジャイアンツは6回、一死後川上が二遊間に内野安打を放つがリベラ、井上が凡飛に倒れ、7回は先頭の吉原が左翼線に二塁打を放つが永澤の左直に飛び出してダブルプレー。8回も2つの四球で一死一二塁とするが後続無く、9回も吉原の四球と白石の左前打で一死一二塁とするが水原の遊ゴロが「6-4-3」と渡って試合終了を告げるサイレンが高々と鳴り響く。

 昨日完投勝利の野口二郎は5回を投げて3安打4四球とランナーを出しながら要所を締めて5勝目をあげる。


 この試合で5回から投げ合った野口二郎と川上哲治は2年前の夏の甲子園決勝で中京商業と熊本工業のエースとして投げ合った。野口二郎は自伝でこの試合に触れている。「甲子園以来初めて見るマウンドの川上君であったが、腰のひねりで投げるというより、腕をこねて投げるような投げかたも、甲子園の時と変わらず、それほど速い球もない。チェンジアップ気味の球とカーブ主体で怖い、という感じはなかった。」

 甲子園の決勝で投げ合った投手がプロで再対決するところはマー君と佑ちゃんのようですが、野口二郎は戦前では澤村栄治、スタルヒンと並ぶ大投手となり、川上哲治は弾丸ライナーで打撃の神様となりました。マー君は野口二郎に大分近付いてきましたが、佑ちゃんはどうなる?






*野口二郎と川上哲治は2年前の甲子園決勝以来の投げ合いとなった。





2011年9月17日土曜日

14年 金鯱vsイーグルス 3回戦


5月10日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 金鯱        6勝16敗       0.273 常川助三郎 磯部健雄
0 4 0 0 1 0 0 0 X 5 イーグルス 10勝13敗1分 0.435 中河美芳


勝利投手 中河美芳     3勝3敗
敗戦投手 常川助三郎 0勝4敗


中河美芳、二試合連続完投勝利


 イーグルスは2回、先頭の杉田屋守が三前にセーフティバントを決め、伏見五郎の投前送りバントをピッチャー常川助三郎が二塁に悪送球、辻信夫が四球を選んで無死満塁、ここで漆原進が常川の内角球を思い切って引っ張り三塁線を破るタイムリーで2点を先制する。トップに返り寺内一隆が送りバントを決めて一死二三塁、当っている山田潔が右翼線に2点タイムリーを放って4-0とリードする。

 6日のタイガース戦に完封した中河美芳はこの日も金鯱打線を寄せ付けず、8回、五味芳夫が四球から盗塁、小林茂太四球後、古谷倉之助の三ゴロをサード漆原がエラーする間に1点を失うがこの1点に抑えきる。

 中河美芳は4安打5四球3三振、自責点ゼロの完投で3勝目、イーグルスは四試合連続完投勝利で四連勝。


 翌日の読売新聞で鈴木惣太郎は「この日の中河は主としてスローカーブを用いたものであるが殆ど一球毎に球速又は球道の変化を示し、例えば同じ球道を通る球も一つはカーブの屈曲に鋭き変化を示し、次は球速の増減を以て打者の虚を衝くなど巧緻の限りをつくして金鯱の打者を封じ、先日タイガースを降したときと○○を分ち難き絶妙の投球に終始したものである。」と評している。

 また、鈴木惣太郎は「更に一筆を加うれば中河をして時に大胆不敵の投球をなさしめ得たものは遊撃山田の堅実なる大活躍であり、これに信頼する中河は走者を出塁せしめても少しも驚かず山田を中心とする併殺陣を以て容易に破綻を免れ得たもので、山田近来の進境と活躍は大いに賞賛すべきものがある。」と書いている。当ブログでも山田潔の打撃好調ぶりはお伝えしているところですが、定評のある守備にも一段の進境を見せているようです。この日も5回に「4-6-3」、6回に「6-4-3」の併殺を決めています。


 イーグルスの課題を一つ、この日も金鯱に4盗塁を決められるなど、バッキー・ハリスが抜けた穴を伏見五郎が埋められていません。この日の9回は三振ゲッツーで締めましたが、打力に乏しいイーグルスにとっては失点を最小限に抑える必要があり、大きな課題となっています。












14年 ジャイアンツvs名古屋 4回戦



5月9日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 0 0 4 0 5 ジャイアンツ 14勝7敗        0.667 中尾輝三 スタルヒン
0 0 0 3 0 0 0 0 0 3 名古屋        8勝14敗2分 0.364 中村三郎


勝利投手 スタルヒン 9勝4敗
敗戦投手 中村三郎  1勝1敗


二塁打 (ジ)白石、平山、吉原 (名)石田


平山菊二、起死回生の一打


 ジャイアンツは初回、当っている白石敏男が左前打で出塁、水原茂の中前打で無死一二塁、この日三番に入った川上哲治の遊ゴロをショート芳賀直一が弾いたのを見て白石は三塁ベースを蹴ってホームに向かうがこれは芳賀からの送球にタッチアウトとなって一死一二塁、四番中島治康が左前にタイムリーを放って1点を先制する。

 中尾輝三の前に3回まで1安打に抑えられていた名古屋は4回、先頭の村瀬一三がこの日2本目のヒットを右前に放って出塁、大沢清は右飛、加藤正二が中飛に倒れると村瀬が二盗に成功、三浦敏一の右前タイムリーで1-1の同点に追い付く。翌日の読売新聞によるとここは二走村瀬がスタートを切ってのエンドランであったとのこと。更に三浦も二盗に成功、鈴木秀雄が三塁線にヒットを放って二死一三塁、鈴木が二盗に成功、服部受弘が左前タイムリーを放って2-1と逆転してなお二死一三塁、更にここでダブルスチールを決めて3-1とする。

 名古屋はこの回5盗塁を決める。左の中尾と強肩吉原のバッテリーでここまで走られるとは不思議であるが、読売新聞によると中尾は牽制球を全く投げず(というより不得意だったのかもしれない)、服部の次の「中村(三郎)打者のファウルフライ後初めて一塁に牽制を送っているが、投手の愚鈍は勿論、これに注意を与えなかった巨人軍ベンチの怠慢迂闊は大いに責任を問われるべきである。」と手厳しい。読売新聞による巨人に対するこういう歯切れのいい論評は、もちろん鈴木惣太郎の署名入り記事です。服部と鈴木秀雄による重盗はこの牽制球の返球の隙を突いて一走服部が二塁に走り、セカンド井上康弘にボールが渡ると三走鈴木がホームに突っ込んだもので、「鈴木は井上の返球の粗雑高投の下を潜って巧みに生還し」たものだったようです。

 名古屋の先発は6日のジャイアンツ戦で完投勝利を飾った中村三郎が二匹目のドジョウを狙ってきたものであるが、鈴木惣太郎によると「中村はこの日も頗る怜悧のピッチングを示して巨人軍の打者をよく抑え・・・正に“巨人軍殺し”の綽名をさえ奪わんとしたものであるが・・・」とのこと。

 しかしジャイアンツは8回、水原の三ゴロをサード大沢がエラー、川上がピッチャー強襲ヒット、中島は捕邪飛に倒れるが千葉茂が四球を選んで一死満塁、ここで6回にリベラの代打に出てレフトに入っている平山菊二が右翼線に起死回生の二塁打を放って二者を迎え入れて3-3の同点、井上に代わる代打楠安夫は三振に倒れて二死二三塁、吉原正喜が左翼線に決勝の二塁打を放って5-3と逆転する。

 中尾を7回まで引っ張ってきたジャイアンツは8回からスタルヒンを投入、スタルヒンは8回、9回を無安打に抑えてジャイアンツが辛くも勝利を収める。


 平山菊二の一打によってジャイアンツは甦った。この試合を落とすとズルズル行って第一期黄金時代のスタートはもう少しずれ込んでいたかもしれない。当ブログでしか知りえない話をひとつ。この日はリベラがセンター、千葉がレフトで先発、6回に平山がリベラの代打に出ると平山がレフトに入って千葉はセンターに回る。8回の平山の同点打の後セカンドの井上に代打楠が起用されると8回裏の守備から呉波がセンターに入って千葉がセカンドに回る。藤本監督の用兵は、千葉茂の使い勝手の良さに依拠していることがよく分かる。


 試合経過からも分かる通り、現行ルールでは中尾輝三が勝利投手でスタルヒンにはセーブが記録されるが公式記録ではスタルヒンが勝利投手となっている。スタルヒンの今季の42勝は、戦後山内以九士が戦前の記録を洗い直して40勝に改められたが、稲尾が昭和36年に42勝を記録した時にスタルヒンの記録について再論議され、当時のコミッショナー裁定によって42勝に再訂正されたものである。山内以九士が減じた二つの記録のうちの一つがこの日のものでしょう。但し、これを減じるのであれば他に訂正すべき記録が山ほどあることはこれまでもお伝えしてきているとおりです。当ブログは、これをもって記録の訂正を求めることはしないことは2010年3月24日付けブログ「解読」にて宣言しているとおりです。