2019年10月31日木曜日

21年 中部日本vsタイガース 2回戦


5月20日 (月) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計 
1 0 0 0 0 2 1 0 3   7  中部 5勝8敗2分 0.385 西沢道夫 
1 2 1 2 0 0 4 0 X 10 タ軍 7勝6敗 0.538 野崎泰一 渡辺誠太郎 

勝利投手 渡辺誠太郎 1勝4敗
敗戦投手 西沢道夫     0勝3敗 

二塁打 (中)木下、服部、藤原、西沢 (タ)呉、本堂、藤村
三塁打 (中)木下 (タ)藤村

勝利打点 (タ)呉昌征 1

猛打賞 (タ)藤村冨美男(4安打) 3


タ軍、打撃戦を制す

 今節最後の試合となる後楽園の第2試合は午後3時15分、池田球審の右手が上がりプレイボール。

 タ軍先発の野崎は立ち上がりからコントロールが定まらず、古川、岩本に連続四球、加藤は荒れ球に手こずり三振に倒れるが、小鶴も四球を選んで一死満塁、木下の遊ゴロ併殺崩れの間に1点を先制、服部もストレートの四球で二死満塁、しかし藤原は三ゴロに倒れてこの回1点止まり。ここは一気に崩しておきたかった。


 タ軍は1回裏、一死後金田が中前打で出塁、御園生がストレートの四球を選んで一死一二塁、藤村の三塁線タイムリーで1-1と追い付く。


 中部は2回表、一死後鈴木秀雄が四球で出塁、トップに返り古川の左前打で一死一二塁、タ軍ベンチはここで野崎をあきらめ、渡辺誠太郎をリリーフに送り、岩本は三ゴロ、加藤も投ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。


 藤村監督が早めに動いたことが功を奏した。渡辺は走者を出しながらも中部打線を無得点に封じ、この間にタ軍は着々と加点していく。


 タ軍は2回裏、二死後長谷川善三がストレートの四球で出塁、トップに返り呉昌征の右中間二塁打で長谷川が還り2-1と勝ち越し、金田がレフト線にタイムリーで続いて3-1とする。


 タ軍は3回裏、一死後本堂が左中間に二塁打、富樫が四球を選び、池端が中前にタイムリーを放ち4-1と小刻みに加点。


 タ軍は4回裏、先頭の金田が四球を選んで出塁、一死後藤村が左中間に三塁打を放ち5-1、本堂の中犠飛で6-1と突き放す。本堂は早くも今季4本目の犠飛、2位が1本で複数と、断トツの「犠飛王」。


 中部は6回表、先頭の西沢が中前打、鈴木の投ゴロでランナーが入れ替わり、トップに返り古川がレフトポール際にライナーで飛び込むツーランホームラン、3-6と追い上げる。


 中部は7回表、先頭の木下が3球ファウルで粘って9球目を右中間に三塁打、一死後藤原の遊ゴロの間に木下が還って4-6と詰め寄る。


 タ軍は7回裏、先頭の池端が中前打、渡辺の遊ゴロをショート藤原がエラー、長谷川は左飛に倒れるが、トップに返り呉はストレートの四で一死満塁、金田が押出し四球を選んで7-4、御園生が右前にタイムリーを放ち8-4、二走呉も三塁ベースを蹴ってホームを突くがライト加藤からの好返球にタッチアウト、二死一二塁となって藤村が左中間に二塁打を放ち二者を迎え入れてこの回4点、10-4と突き放す。


 中部は9回表、先頭の加藤がレフトスタンドに第3号ホームランを叩き込んで5-10、小鶴がレフト線にヒット、しかし木下の遊ゴロが「6-4-3」と渡ってゲッツー、ここから服部、藤原、西沢がレフトに3連続二塁打を放って7-10まで追い上げるが、最後は鈴木が遊ゴロに倒れて激戦に終止符を打つ。


 戦前にはなかなか見られなかった激しい打撃戦を制したのはタイガースのダイナマイト打線であった。中部も加藤がホームランダービー独走の第3号、終盤の3連続二塁打は迫力があった。


 一方で、西沢道夫は8回を完投して9四球、野崎泰一は1回3分の1で5四球、渡辺誠太郎も7回3分の2で4四球1死球の乱調。11安打7得点の中部は11残塁、14安打10得点のタ軍は12残塁の乱戦であった。


 にもかかわらず試合時間は1時間42分、試合終了は午後4時57分であった。両軍積極的に打っていった結果とも言える。



2019年10月29日火曜日

21年 ゴールドスターvs阪急 2回戦


5月20日 (月) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ゴ軍 6勝8敗1分 0.429 石田光彦 
0 0 0 3 0 1 0 1 X 5 阪急 11勝3敗 0.786 野口二郎 

勝利投手 野口二郎 2勝0敗
敗戦投手 石田光彦 2勝5敗 

二塁打 (ゴ)石田 (急)山田、下社
三塁打 (ゴ)田中

勝利打点 (急)野口二郎 1

猛打賞 (ゴ)田中宣顕 2


尾西信一が3打点の活躍

 西宮の第2試合は石田光彦と野口二郎の先発で午後3時5分、杉村主審の右手が上がりプレイボール。三塁塁審は阪急戦ながら第一試合に続いて阪急球団職員の片岡勝。公正性について信頼されているようだ。

 ゴ軍は3回表、先頭の石田がレフト線に二塁打、一死後坂本勲の遊ゴロをショート尾西が一塁に悪送球、二走石田は動けず一死一二塁、トップに返り酒沢は二飛に倒れるが、大友の二遊間ヒットで二死満塁、しかし期待の坪内は三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。


 ゴ軍は4回表、一死後田中宣顕がセンター左奥に三塁打、しかし末崎は三振、石田はニゴロに倒れて無得点。


 阪急は4回裏、先頭の青田の当りは遊ゴロ、これをショート酒沢がエラー、野口明の右前打で青田は三塁に進み、三木が3球ファウルで粘って四球を選び無死満塁、野口二郎が中前に2点タイムリーを放ち2-0、センター坪内がファンブルする間に一走三木は三塁に、打者走者の野口は二塁に進んで無死二三塁、二死後尾西が中前にタイムリーを放ち3-0とリードする。


 ゴ軍は6回表、先頭の大友が中前打で出塁、坪内は二飛に倒れるが、菊矢が中前打を放って一死一二塁、しかし田中の二ゴロが「4-6-3」と渡ってダブルプレー。


 阪急は6回裏、先頭の野口二郎がストレートの四球を選んで出塁、一死後坂田の三ゴロの間に野口は二進、ここで尾西が2打席連続のタイムリーをセンター左に放ち4-0と突き放す。


 ゴ軍は7回表、当たっている末崎が中前打で出塁、しかし石田は三振、吉川の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。


 阪急は8回裏、先頭の下社が左中間に二塁打、坂田の二ゴロが野選を誘って無死一三塁、尾西の二ゴロをセカンド大友がエラーして三走下社が還り5-0、尾西には打点が記録されてこの日これで3打点。


 野口二郎は最終回、二死一二塁のピンチを招くが、最後は石田を二ゴロに打ち取り、8安打1四球4三振で戦後初完封、2勝目をマークする。


 阪急は今節、前川、笠松、天保、野口二郎がオール完投で4連勝。主軸打者の迫力ではタイガースのダイナマイト打線が上であるが、つなぎ役の九番・尾西信一の活躍が目に付く。終戦直後から西宮球場が使えた関係で練習量が豊富であり、シーズン開幕前のオープン戦の結果からも優位が予想されていたが、2位以下を大きく引き離して独走態勢に入った。今後他チームが戦力を整えてきてからが本当の勝負になる。



2019年10月28日月曜日

白木-松永のバッテリー


 松永英一について、「白木とバッテリーを組んだのはこの日が初めてであった可能性が高い」と書かせていただいたところですが、「慶応義塾大学野球部史」に記載されている、昭和20年11月18日にステートサイドパークで行われたオール早慶戦のテーブルスコアに「投手・白木」、「捕手・松永」と書かれています。

 この「白木-松永のバッテリー」が揃ってセネタース入りし、昭和21年5月20日に、プロでは初のバッテリーを組んだようです。


 なお、「慶応義塾大学野球部史」によると、年明けの昭和21年12、13日にも西宮球場で全早慶戦が行われており、この時の全慶應のバッテリーは大島-加藤となっていて、大島信雄と加藤進のようです。年明けの時点では白木と松永は既にセネタース入りしていたことになります。


*昭和20年11月18日に行われた全早慶戦。全慶應のバッテリーは白木-松永となっている(「慶応義塾大学野球部史」より転載)。

21年 パシフィックvsセネタース 4回戦


5月20日 (月) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計 
0 0 0 0 0 0 0 1 0  1  0 パ軍 7勝8敗1分 0.467 藤村隆男 湯浅芳彰
0 0 0 0 0 1 0 1 X  2  9 セ軍 6勝8敗 0.429 白木義一郎

勝利投手 白木義一郎 5勝4敗
敗戦投手 湯浅芳彰     1勝2敗

二塁打 (パ)木暮

勝利打点 (セ)黒尾重明 1


横沢三郎監督、会心の采配

 西宮の第1試合は3,294人の観衆が見守る中、午後1時5分、金政主審の右手が上がりプレイボール。この試合は歴史に残ることになる。

 セ軍先発の白木は立ち上がりから落ち着いた投球でパ軍初回の攻撃を三者凡退に退ける。

 パ軍先発の藤村隆男は不安定な立ち上がり。初回、先頭の横沢に四球を与え、長持を二ゴロ併殺に打ち取りながら、続く大下にも四球、飯島を三ゴロに打ち取り何とか無失点で切り抜ける。

 パ軍は2回表、一死後辻井が右前打で出塁、伊勢川の遊ゴロは「6-4-3」と転送されるが二塁はセーフで二死二塁、松井の左前打で二死一三塁、しかし松井の二盗をキャッチャー熊耳が刺してスリーアウトチェンジ。

 セ軍は2回裏、先頭の白木が左前打から二盗を決めるが後続なく無得点。

 セ軍は3回表、鈴木清一、横沢が連続四球、長持が送って一死二三塁、大下の一ゴロで三走鈴木が飛び出したところ、ファースト辻井は三塁に送球、鈴木は三本間に挟まれ「3-5-2」でタッチアウト、二走横沢は三塁に進むが、打者走者の大下は一塁止まりなので鈴木はあまり粘れなかったようだ。一発勝負の「ゴロゴー」は構わないが、問題は挟まれた後の対処で、二三塁を作るまで粘らなければならない。尤も、打者走者の大下が全力走塁していなかった可能性は否定できないところ。二死一三塁から飯島がストレートの四球を選んで二死満塁、しかし白木は中飛に倒れて無得点。

 パ軍は5回表、伊勢川、松井の連打で無死一二塁とチャンス到来、しかし平野徳松は捕飛、続くシーンが問題の場面、藤村に代わって代打白石敏男が登場して右飛、トップに返り富松も中飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 パ軍は藤村に代打を出した関係で、5回から湯浅芳彰が二番手としてマウンドに上がり、代打に出た白石はベンチに引っ込む。

 セ軍は6回裏、一死後飯島が左前打で出塁、二死後一言多十はストレートの四球で一二塁、根津に代わる代打黒尾も四球を選んで二死満塁、熊耳に代わる代打上口政の三遊間タイムリーで均衡を破り1点を先制する。

 代打攻勢を掛けたセ軍横沢三郎監督は7回の守備を大幅に入れ替え、セカンド根津の代打に出た黒尾がレフトに入り、キャッチャー熊耳の代打に出た殊勲の上口がライトに入り、レフト大下に代わって石原光男が入ってセカンド、ライト長持に代わって松永英一が入ってキャッチャー。二番、三番を打つ長持と大下を残しておく選択肢もあったが、横沢三郎監督は代打に出て先制点を奪った黒尾と上口を残す用兵を選択した。これが功を奏すことになる。

 パ軍は8回表、二死後木暮がライトに二塁打、続く小島の当りは三ゴロ、これをサード横沢七郎が痛恨のエラー、二走木暮が還って1-1の同点とする。

 セ軍は8回裏、一死後白木が二遊間にヒット、一言の遊ゴロをショート松井がエラー、白木は三塁に、打者走者の一言は二塁に進んで一死二三塁、ここで大下を下げてまで残しておいた黒尾が左前に決勝打を放ち2-1と勝ち越す。

 白木義一郎は5安打4四球3三振の完投で5勝目、ハーラートップの森井に並んだ。

 大下を下げて残しておいた黒尾が決勝タイムリー、横沢三郎監督会心の采配であった。8回にタイムリーエラーを犯した弟の横沢七郎が一番ほっとしたのではないか。

 この横沢采配に絡んでキャッチャーとして途中出場した松永英一は、昭和11年のセネタース在籍時代以来10年ぶりの出場。10年前のセネタースと現在のセネタースは無関係の別チーム。松永英一は慶應商工の出身で白木義一郎の先輩となる。5年次離れているので白木とバッテリーを組んだのはこの日が初めてであった可能性が高い(前年のオール早慶戦でバッテリーを組んでいたようです。別掲にて詳述)。慶應商工は現・慶應義塾高等学校の前身とされているので、私の大先輩でもあります。詳しくは、2012年5月12日付け「幻の大先輩 その一」をご参照ください。

 さて、パ軍藤本定義監督が「無届け」の白石敏男を代打に起用したことで大問題に発展しますが、詳しいことは後日お伝えします。後にこの試合は「没収試合」となり、スコアは「9対0」に修正されることになります。

https://shokuyakyu.blogspot.com/2012/05/blog-post_12.html



2019年10月27日日曜日

21年 巨人vsグレートリング 2回戦


5月20日 (月) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 4 0 0 0 0 0 4 巨人 6勝7敗 0.462 藤本英雄 中尾輝三 
0 0 0 5 0 0 0 0 X 5 グ軍 6勝6敗 0.500 丸山二三雄 松川博爾 野口渉 清水秀雄

勝利投手 清水秀雄 2勝1敗
敗戦投手 藤本英雄 2勝2敗 

三塁打 (巨)千葉
本塁打 (グ)宮崎 1号

勝利打点 (グ)野口渉 1


野口渉が逆転打

 本日は後楽園と西宮で2試合ずつ。後楽園の第1試合は午後1時5分、島球審の右手が上がりプレイボール。

 巨人は2回表、先頭の黒沢が四球を選んで出塁、多田の左飛をレフト堀井が落球して無死一二塁、諏訪が送って一死二三塁、林の二ゴロで三走黒沢がホームに突っ込むがセカンド安井からの送球にタッチアウト、二死一三塁から林が二盗を試みるが、キャッチャー筒井からの送球にタッチアウト。



 巨人は3回表、先頭の藤本が中前打で出塁、しかし続く山田の中飛に藤本が戻れず、センター木村からの送球にタッチアウト。ここはエンドランだったのか、山田の当りが落ちそうだったので藤本がスタートを切ってしまったのか、いずれにしろ木村の好守が光った。

 ここまではグ軍の守り勝ち。

 巨人は4回表、先頭の山川がストレートの四球で出塁、千葉の二ゴロが進塁打となって一死二塁、黒沢の左前タイムリーで1-0、バックホームの間に打者走者の黒沢は二塁に進み、多田はセンター左にヒット、諏訪はストレートの四球で一死満塁、グ軍はここで先発の丸山から松川にスイッチ、ところが松川は林と藤本に連続押出し四球、3-0となったところでグ軍は松川を下げて三番手として野口渉をマウンドに送るが、山田も押出し四球を選んで4-0、トップに返り呉新亨は遊飛、山川は中飛に倒れて打者10人の攻撃でようやくスリーアウトチェンジ。


 グ軍は4回裏、先頭の安井がストレートの四球を選んで出塁、宮崎仁郎がレフトスタンドにツーランホームランを叩き込んで2-4として反撃の狼煙を上げる。続く木村が四球で出塁、山本は右飛に倒れるが、堀井の中前打で木村は三塁に進んで一死一三塁、岡村の右前タイムリーで3-4、更に一三塁を作ると岡村が二盗を決めて一死二三塁、野口がライト線に逆転の2点タイムリーを放ち5-4と試合をひっくり返す。


 巨人は5回表、先頭の千葉が四球を選んで出塁、黒沢は右飛に倒れ、千葉が二盗を狙うがキャッチャー筒井がこの試合2つ目の盗塁阻止、多田が四球で出塁するが、諏訪は三振に倒れて無得点。


 巨人は5回から先発の藤本に代えて中尾を二番手のマウンドに送る。


 巨人は6回表、一死後中尾が四球を選んで出塁、しかし山田の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。


 巨人は7回表、二死後千葉がセンター左奥に三塁打、グ軍はここで野口渉から四番手の清水にスイッチ、多田は左飛に倒れてスリーアウトチェンジ。


 清水は8回、9回の巨人の反撃を無安打に抑え、リリーフで2勝目をマークする。


 試合は接戦だったが、グ軍は守備力と機動力で巨人を圧倒した。


 4人の投手をつぎ込んだグ軍は、先発の丸山が3回3分の1で降板、二番手松川は一死も取れず降板、三番手の野口渉が3回3分の1を無失点に抑えてこの間に逆転、四番手の清水が2回3分の1を無失点に抑えて1点差を守って逃げ切り、公式記録では清水に勝利投手が記録された。現在であれば野口渉に勝利投手、清水にセーブが記録されるところでしょう。


 「野口四兄弟」の末弟である野口渉が逆転の決勝2点タイムリーを放った。昭和19年と21年の2年間プロ野球に在籍した渉の通算打点はこの「2点」のみ。渉は翌年、国民リーグの宇高レッドソックスに移ることとなる。


 2017年8月12日にNHKで放映された「野口四兄弟」が主役のテレビドラマ「1942年のプレイボール」は、放映される2年前から当ブログが制作に協力してきました。ドラマの最後に流れるテロップには、「資料提供」として当ブログの名前(実名)がクレジットされています。何度もやり取りをしてきた演出のK氏は、現在は「いだてん」の演出を手掛けています。



*追撃の口火を切る2点本塁打を放った宮崎仁郎の直筆サイン。写真は松竹の選手名鑑。宮崎も野口渉と一緒に宇高レッドソックスに移るが、後にプロ野球に復帰する。



21年 セネタースvsパシフィック 3回戦


5月19日 (日) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 セ軍 5勝8敗 0.385 大下弘 黒尾重明 
0 0 0 0 0 0 0 3 X 3 パ軍 7勝7敗1分 0.500 井筒研一 

勝利投手 井筒研一 3勝3敗
敗戦投手 黒尾重明 0勝1敗 

二塁打 (セ)飯島 (パ)小島、伊勢川2

勝利打点 (パ)伊勢川真澄 1


井筒研一、プロ入り初完封

 第1試合が長引いたため、西宮の第2試合は午後3時35分、杉村主審の右手が上がりプレイボール。第1試合の阪急vsゴ軍戦では審判のメンバーに入っていなかった阪急球団職員の片岡勝が三塁塁審を務める。

 セ軍は大下弘がプロ入り3度目の登板で初先発。大下の守備の評価は決して高くは無いようだが、「地肩」は強かったと見て良さそうだ。


 その大下は立ち上がりから不安定な投球で、初回いきなり富松、木暮に連続四球、左が2人続くことから横沢三郎監督は大下を先発起用したものと考えられるが逆効果となった。しかし小島の遊ゴロが「6-4-3」と渡ってダブルプレー、森下を二ゴロに打ち取り無失点。


 2回は先頭の辻井を遊ゴロに打ち取るがショート鈴木清一が大悪投して辻井は一気に三塁ん進み、伊勢川はストレートの四球、ここで大下はライトに下げられているので敬遠では無いでしょう。セカンド根津弘司に代わって黒尾重明が入って二番手ピッチャー、ライトの長持がセカンドに回る。


 替わった黒尾もいきなりワイルドピッチ、三走辻井は動かず無死二三塁、松井信勝はストレートの四球、当たっている松井なのでここは敬遠の可能性も僅かながらあるか、序盤なのでランナーは溜めたくないところですが。無死満塁となって平野は三振、井筒は三邪飛、トップに返り富松は中飛、セ軍はもらったチャンスを生かせなかった。


 この後、黒尾は何度かピンチを迎えるが無失点を続ける。3回は先頭の木暮を四球で歩かせ、小島の三塁へのヒットで無死一二塁、しかし森下、辻井を連続遊飛に打ち取り、重盗を決められて二三塁とするが、伊勢川を三振に仕留めて無失点。5回と6回には小島、伊勢川に二塁打を許すが後続を抑えて無失点。


 パ軍先発の井筒研一も好投を見せた。4回まで2四球のみで無安打無失点。5回、先頭の上口政に初ヒットを許すが、熊耳の当りは一塁後方ライト前にフラフラと上がり、ファースト辻井とライト木暮が追いかけて木暮が捕球、一走上口はハーフウェイから一塁ベースに戻るが、ピッチャー井筒がベースカバーに入っており木暮からの送球に上口は戻れず「9-1A」のダブルプレー、この井筒の守備は特筆される。


 6回も先頭の鈴木に右前打を許すが、一死後長持の二ゴロは「4-6-3」と渡ってダブルプレー。7回も2本のヒットと四球で一死満塁のピンチを迎えるが、熊耳の投ゴロを本塁に送球、キャッチャー伊勢川が一塁に転送して「1-2-3」のダブルプレー。8回は二死後トップの横沢七郎に四球、続く長持の中前打で二死一二塁のピンチを迎えるが、大下が先発ピッチャーで五番に下がった関係で三番に入った一言多十を一邪飛に打ち取り無失点。終盤ののピンチに大下を迎えていたらどうなっていたか、勝負の綾は微妙です。


 パ軍は8回裏、先頭の小島が四球を選んで出塁、森下が右前打を放って無死一二塁、辻井の遊ゴロが野選を誘い無死満塁、ここで伊勢川が左中間に二塁打を放ち二者を迎え入れて2点を先制、松井が四球を選んで再度無死満塁、平野が貴重な追撃の中犠飛を打ち上げて3-0とする。


 ここまで再三のピンチを切り抜けてきた井筒は、最終回も先頭の飯島に左中間二塁打を打たれるが、大下を中飛、上口を二ゴロ、飯島が三進して二死三塁とするが、最後は熊耳に代わる代打白木を遊ゴロに打ち取り逃げ切る。


 井筒研一は6安打4四球無三振の完封で3勝目をあげる。井筒は昭和14~16年にも登板しているが完封はおろか勝利もなく戦前は通算0勝5敗、戦後になってその素質を開花させた。本日のプロ入り初完封では、守備力も高く評価できる。戦前にもバッテリーを組んでいた女房役の伊勢川がバットで花を添えた。



*昭和26年頃の松竹ロビンス選手名鑑に残された井筒研一の直筆サイン。




*5回に見せた井筒の好守備の場面。ヒットで出た上口が熊耳の右飛で戻れず「9-1A」のダブルプレー。熊耳の当りがフラフラと一塁後方ライトの前に上がり、ライト木暮が捕球して一塁ベースカバーに入った井筒に送球したもの。




*決勝打を放った伊勢川真澄の直筆サイン入りカード。井筒とは戦前からバッテリーを組んでいた。写真は大映スターズ時代。


2019年10月25日金曜日

訂正のお知らせ④


 2019年9月13日付け「21年 中部日本vsパシフィック 1回戦」において、「井筒研一は大量点に守られ5安打5四球1三振の完投で戦後初勝利を飾る。」と記載していましたが、

「戦後初勝利にしてプロ入り初勝利を飾る。」


に訂正させていただきます。井筒は戦前にも勝利投手になっていたと、勝手に思い込んでいたことが原因です。



21年 タイガースvs巨人 2回戦


5月19日 (日) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計 
0 0 0 0 0 0 0 1 0  0   2  3 タ軍 6勝6敗 0.500 呉昌征 
0 0 0 0 0 0 0 1 0  0   0  1 巨人 6勝6敗 0.500 近藤貞雄 藤本英雄 

勝利投手 呉昌征     3勝0敗 
敗戦投手 近藤貞雄 2勝2敗 

二塁打 (タ)池端 (巨)山田、多田、呉新亨
三塁打 (巨)呉新亨

勝利打点 (タ)長谷川善三 1

猛打賞 (巨)呉新亨 1


呉昌征、又も完投で3連勝

 後楽園の第2試合は呉昌征、近藤貞雄の先発で午後3時13分、池田球審の右手が上がりプレイボール。


 タ軍は初回、一死後御園生がセンター左にヒット、藤村の三ゴロでランナーが入れ替わり、本堂が四球を選んで二死一二塁、しかし富樫は三ゴロに倒れて無得点。

 巨人は1回裏、先頭の呉新亨が左前打で出塁、山川の当りは右飛、これに呉が戻れずダブルプレー。エンドランでしょうか。

 タ軍は2回表、一死後土井垣の代役をソツなくこなしている池端忠夫がレフト線に二塁打、長谷川善三は遊飛に倒れ、ピッチャー近藤の二塁牽制が悪送球となって二死三塁、しかし呉昌征は遊ゴロに倒れて無得点。

 巨人は3回裏、二死後不振の山田が三塁線に二塁打、しかしトップに返り呉新亨は左飛に倒れて無得点。

 巨人のショートには4回の守備から山田に代わって宮下信明が入る。山田の走塁の際に何かあったのか。代走ではなく守備から替わっている。

 タ軍は5回表、一死後呉昌征が中前打で出塁するとピッチャーながら二盗に成功、しかしトップに返り金田は左飛、御園生も一ゴロに倒れて無得点。

 タ軍は7回表、一死後池端、長谷川が連続四球、呉昌征のセーフティバントは捕邪飛となって失敗、トップに返り金田もニゴロに倒れて無得点。

 巨人は7回裏、二死後復調の兆しが見える多田が左中間に二塁打、諏訪のストレートの四球は敬遠か、林清一は一邪飛に倒れて敬遠策が成功する。

 タ軍は8回表、一死後藤村の当りは右前に飛び、ライト林はライトゴロを狙って一塁に送球するが悪送球、打者走者の藤村は一気に三塁へ、記録はワンヒットワンエラー、本堂はストレートの四球、これは敬遠でしょう。一死一三塁から富樫が投前にスクイズ、近藤は本塁に送球するがセーフ、この時代にグラブトスがあったかどうかは不明、犠打と野選が記録されてタ軍が1点を先制する。

 1点を追う立場になった巨人はその裏、二死後呉新亨が左中間に三塁打、好調山川が期待に応えて一塁線に同点タイムリーを放ち1-1と追い付く。

 巨人は9回裏、先頭の千葉が左前打で出塁、黒沢の二ゴロでランナーが入れ替わり、多田の三ゴロで再度ランナーが入れ替わり、諏訪はストレートの四球を選んで二死一二塁と一打サヨナラのチャンス、しかし二走多田がピッチャー呉昌征からの牽制球に引っ掛かりタッチアウト、試合は延長戦に突入。

 10回は両軍三者凡退。

 タ軍は11回表、先頭の富樫が中前打で出塁、小俣に代わる代打渡辺誠太郎は左飛に倒れ、池端が四球を選んで一死一二塁、巨人ベンチはここで先発の近藤から二番手藤本にスイッチ、藤本の二塁牽制が悪送球となって一死一三塁、長谷川の一塁線ヒットが決勝タイムリーとなって2-1と勝ち越し、キャッチャー多田からの一塁牽制で長谷川はタッチアウトとなって二死二塁、呉昌征は右前打、これをライト林が弾く間に二走池端が還って3-1とする。呉には打点が記録されているが、呉の二進に対して林にエラーが記録された。

 巨人は11回裏、先頭の呉新亨が左中間に二塁打を放って反撃、しかし山川は右飛、タッチアップから呉は三進、千葉は三ゴロ、黒沢は二ゴロと、当たっている二番、三番、四番が倒れてタ軍が競り勝つ。

 呉昌征は8安打2四球1死球、3三振の完投で3連勝。11回を131球と、この日もテンポのいい投球であった。打・守・走にも活躍。

 巨人は不振の山田と多田が二塁打、本来の当りが出ていなかった呉新亨も二塁打と三塁打を放ち、明るい兆しが見えてきた。

 一方、ベテラン林清一が手痛い2つのエラーを犯した。8回の悪送球は直接失点につながり、11回のエラーは記録上は直接の失点につながったものではないが、正確に捕球していれば本塁クロスプレーになっていた可能性は否定できない。選手生命の晩年になると、それまで捕れていた打球が捕れなくなって「引退」を意識するようになる。1才年上の黒沢も頑張っており、林も先日は戦後最初の満塁本塁打を放ったばかり、もうひと踏ん張りを期待したいところ。

2019年10月24日木曜日

21年 グレートリングvs中部日本 2回戦


5月19日 (日) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 2 1 2 0 2 0 0 4 11 グ軍 5勝6敗 0.455 清水秀雄 
0 0 0 0 2 0 0 0 0  2  中部 5勝7敗2分 0.417 森井茂

勝利投手 清水秀雄 1勝1敗
敗戦投手 森井茂     5勝3敗 

二塁打 (グ)安井
三塁打 (グ)山本 (中)岩本

勝利打点 (グ)筒井敬三 1

猛打賞 (グ)安井亀和 1、清水秀雄 1


グ軍、機動力で圧勝

 後楽園の第1試合は清水、森井の豪柔対照的な二人の先発で午後1時5分、島球審の右手が上がりプレイボール。

 1回は両軍1四球ずつで無得点。


 グ軍は2回表、先頭の堀井がレフト線にヒット、岡村の捕ゴロでランナーが入れ替わり、清水の右前打で一死一三塁、桶川はストレートの四球で一死満塁、筒井の中犠飛で1点を先制、二走清水と一走桶川もタッチアップから進塁と隙のない走塁を見せ、トップに返り安井が三遊間を破って2-0、二走桶川も三塁ベースを回ってホームを狙うが、レフト岩本からのバックホームにタッチアウト。


 グ軍は序盤から積極的な走塁が目に付く。


 グ軍は3回表、二死後山本が左中間に三塁打、堀井の遊ゴロをショート金山が一塁に悪送球する間に山本が還って3-0とする。ここも左中間の当りで三塁を陥れた山本の積極的走塁が効いた。


 グ軍は4回表、一死後清水が右前に2打席連続ヒット、桶川の当りが右前に落ちるが一走清水は自重してハーフウェイ、ライト加藤からの二塁送球はタイミングはアウトであったが二塁ベースカバーの金山が落球、桶川の記録はライトゴロエラーとなって一死一二塁、筒井は死球を受けて一死満塁、トップに返り安井の中犠飛で4-0、ここでも二走桶川と一走筒井がタッチアップからそれぞれ進塁、二死二三塁となって中部の竹内愛一監督は2エラーの金山に代えて三村を入れてセカンド、セカンドの木下をサードに、サードの藤原をショートに回す布陣を敷くが、続く宮崎の遊ゴロを替わったばかりの藤原が一塁に悪送球する間に三走桶川が還って5-0として試合の主導権を握る。


 グ軍は2回に続いて4回も満塁からの犠飛で一走と二走もタッチアップから進塁する積極的な走塁を見せた。


 中部は5回裏、先頭の藤原がストレートの四球で出塁、森井の三ゴロでランナーが入れ替わり、岩本が左中間に三塁打を放ち1-5、トップに返り古川が左前にタイムリーを放ち2-5と追い上げる。


 グ軍は直後の6回表、宮崎のセーフティバントをキャッチャー服部が一塁に悪送球する間に一走安井が一気にホームに還って6-2、ヒットが記録された打者走者の宮崎も三塁に進み、木村勉の三塁線タイムリーで7-2と突き放す。


 グ軍は9回表、先頭の山本が中前打で出塁、堀井の二ゴロでランナーが入れ替わり、櫛田由美彦の二ゴロをセカンド三村が二塁に悪送球して一死一三塁、清水が四球を選んで一死満塁、桶川の一ゴロの間に三走堀井が還って8-2、筒井がセンター右に2点タイムリーを放ち10-2、トップに返り安井が左中間にタイムリー二塁打を放ち11-2する。


 清水秀雄は4安打7四球7三振の完投で戦後初勝利をあげる。打っても4打数3安打3得点の「二刀流」ぶりを見せつけた。


 この試合のグ軍は記録だけを見ると1盗塁、2盗塁失敗。しかしながら、実況でも分かるとおり積極的な盗塁を得点に結びつけた。まだ河西俊雄と田川豊は戦列に加わっていないが、グレートリングの機動力野球が動き出した。



*本日は4打数3安打1得点3打点。グレートリング機動力野球の中核、安井亀和の直筆サイン入りカード。胸のマークからすると写真のユニフォームは昭和24~25年のものか(綱島理友著「日本プロ野球ユニフォーム大図鑑」参照)。


2019年10月22日火曜日

訂正のお知らせ③


 「補殺」を「捕殺」と記載している箇所がいくつか見つかりましたので気付いた範囲で訂正させていただきました。単純な変換ミスが原因です。

 当ブログの読者の方々であれば特に問題はないと考えられますが。



21年 阪急vsゴールドスター 1回戦


5月19日 (日) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 1 0 0 0 1 1 4 7 阪急 10勝3敗 0.769 天保義夫 
4 0 0 0 0 0 0 0 0 4 ゴ軍 6勝7敗1分 0.462 内藤幸三 石田光彦 

勝利投手 天保義夫 4勝1敗
敗戦投手 石田光彦 2勝4敗 

二塁打 (急)日比野、三木 (ゴ)木崎

勝利打点 (急)三木久一 1

猛打賞 (ゴ)田中宣顕 1、内藤幸三 1


阪急、三木の一打で大逆転

 本日と明日は後楽園と西宮で2試合ずつ。西宮の第1試合は天保、内藤の先発で午後1時丁度、金政主審の右手が上がりプレイボール。

 阪急は初回、一死後上田がストレートの四球を選んで出塁、上田は青田の3球目に二盗を決め、青田はスリーボールツーストライクからファウルの後の7球目をセカンドライナー、これに上田が飛び出しておりダブルプレー。


 ゴ軍は1回裏、一死後大友がストレートの四球を選んで出塁、坪内は中前打、菊矢の遊ゴロをショート尾西がエラーして一死満塁、田中宣顕が左前に先制の2点タイムリーを放ち2-0、バックホームの間に一走菊矢は三塁に、打者走者の田中は二塁に進んで一死二三塁、内藤が中前に2点タイムリーを放ちこの回4点を先制する。


 阪急は3回表、先頭の日比野がライトに二塁打、天保の左前打で一三塁、尾西がツーボールツーストライクから4球ファウルで粘って四球を選び無死満塁、トップに返り山田の左犠飛で1点返して1-4とする。


 阪急は5回表、一死後尾西が四球を選んで出塁、しかし尾西の二盗をキャッチャー辻功が阻止、トップに返り山田、上田が連続四球、ここでダブルスチールを仕掛けるが又も辻が山田の三盗を阻止。内藤はこの回3四球を出しながら辻に助けられた。


 ゴ軍は5回裏、一死後田中が一塁線にヒット、内藤は右前打、ライト下社がファンブルするのを見て一走田中は三塁に進み、内藤が二盗を決めて一死二三塁、早川の遊ゴロで三走田中はホームに突っ込むがショート尾西からのバックホームにタッチアウト、二走内藤は中途半端な走塁で二三本間に挟まれ、挟殺プレーをかいくぐって二塁ベースに戻るが、何とセンター山田が快足を飛ばして二塁ベースカバーに入っており「2-5-4-8」でタッチアウト、刺殺は山田に記録された。古くからの当ブログの読者であれば、かつてジミー堀尾がレフトから挟殺プレーに参加して刺殺を記録したことを覚えていらっしゃるのではないでしょうか(2010年5月28日付け「12年春 阪急vs大東京 3回戦」参照)。


 阪急は6回表、青田、森田定雄の連打で無死一二塁、しかし三木のサードライナーに二走青田が飛び出しておりゲッツー、下社に代わる代打荒木茂は捕邪飛に倒れて無得点。


 ゴ軍は6回裏、辻、坂本勲の連打で無死一二塁、トップに返り酒沢は一飛、大友の二ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、次のプレーは珍しい。坪内はスリーボールツーストライクからの6球目に四球を選んで出塁が記録されたが、この時三走辻は「2-5」でタッチアウト、二三塁からの四球なのでインプレーであるが辻が三塁ベースを離れたところをキャッチャー日比野が見逃さず三塁に送球したようだ。


 阪急は7回表、先頭の日比野が左前打を放つと代走に坂田を起用、活躍の目立つ日比野ではあるが追いかける立場の阪急としては鈍足日比野に代走を出さざるを得なかった。天保は死球を受けて無死一二塁、尾西の三ゴロで天保は二封されて一死一三塁、トップに返り山田の打席で尾西が二盗を試みるが辻が3つ目の補殺を決めて二死三塁、しかし山田が三塁線にタイムリーを放ち2-4とする。


 阪急は8回表、先頭の青田が3球ファウルの末四球で出塁、森田はストレートの四球で無死一二塁、ゴ軍はここでセンター坪内をレフトへ、レフト田中をライトへ、ライト早川をセンターに入れ替え、三木の初球がボールになったところでバッテリーを内藤-辻から石田-吉川にWスイッチ、三木の投ゴロは「1-4-3」と転送されるが、セカンド大友からの一塁送球が悪送球となる間に三塁に進んでいた二走青田が還って3-4、じわじわと追い詰める。


 ゴ軍は9回の守備からレフト坪内がセンターに戻り、センター早川がレフトに回る。


 阪急は9回表、先頭の尾西が中前打で出塁、トップに返り山田は左前打、上田が送りバントを決めて一死二三塁、青田は四球を選んで一死満塁、森田は三振に倒れて二死満塁、ゴ軍はここで三度坪内と早川の守備位置をを入れ替えるが、三木がワンボールツーストライクからの4球目を左中間に二塁打、満塁の走者が一気に還って6-4と大逆転、更に髙橋敏が四球、坂田が中前にタイムリーを放ち7-4と突き放す。


 ゴ軍は9回裏、先頭の坪内が粘って四球で出塁、菊矢は右飛に倒れて一死一塁、田中の二ゴロでゲッツーを焦ったセカンド上田が二塁に悪送球、このボールをカバーしたレフト青田からの二塁への返球も悪送球となって坪内は三塁へ、このボールをカバーしたファースト森田が三塁に送球、これを見た打者走者の田中は二塁に向かうが、サード三木からの二塁送球にタッチアウト、最後は石田が二飛に倒れて阪急が大逆転勝利。


 天保義夫は11安打5四球4三振の完投で4勝目をマークする。


 ゴ軍投手陣は合計10四球。阪急は10残塁、ゴ軍は毎回の11残塁。実況のとおり色々なことが起こり、9回終了の試合としては異例の2時間2分を要し、午後3時2分ゲームセット。



*劇的な一打を放った三木久一は昭和20年秋の東西対抗にも出場している(写真は昭和20年12月1日発行「体育週報」臨時号)。

訂正のお知らせ②


 2019年8月22日付け「阪急vsタイガース 1回戦」において、山田の右前打の後、「今西が中前にプロ入り初打席初ヒット」とお伝えしていましたがこれは間違いで、正しくは
「今西に代わる代打森田定雄が中前に戦後初ヒット」でした。


 単純な解読ミスが原因です。ご迷惑をおかけしますが、訂正の上謝罪させていただきます。本文は訂正済みです。


 森田定雄については2012年9月9日付け「最も無名の最強打者」をご参照ください。ヤフーやグーグルで 「最も無名の最強打者」を検索すればすぐに見つかります。

https://shokuyakyu.blogspot.com/2012/09/blog-post.html

2019年10月21日月曜日

21年 中部日本vsグレートリング 1回戦


5月17日 (金) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計 
0 0 0 0 0 0 1 0 0  1  2 中部 5勝6敗2分 0.455 森井茂 
0 0 0 0 0 1 0 0 0  0  1 グ軍 4勝6敗 0.400 丸山二三雄 

勝利投手 森井茂   5勝2敗
敗戦投手 丸山二三雄 3勝2敗 

本塁打 (グ)筒井 1号

勝利打点 (中)藤原鉄之助 1


森井茂、芸術的ピッチング

 後楽園の試合は午後3時丁度、池田球審の右手が上がりプレイボール。

 中部先発の森井茂が芸術的ピッチングを見せた。


 初回、先頭の安井に左前打を許すが、宮崎を三ゴロ併殺に打ち取って波に乗った。2回は三者凡退。3回、一死後桶川を四球で歩かせるが、筒井の遊ゴロで桶川は二封、キャッチャー服部が筒井の二盗を刺してスリーアウトチェンジ。


 4回にこの試合唯一のピンチを迎える。先頭の安井を四球で歩かせ、宮崎は捕邪飛に打ち取るが、安井に二盗を許し、木村も四球で歩かせて一死一二塁、山本を遊ゴロに打ち取り木村は二封、二死一三塁堀井の打席でグ軍が重盗を仕掛けたが、服部-金山-服部と折り返して安井の本盗を防ぎスリーアウトチェンジ。三走安井、一走山本のシチュエーションなのでダブルスチールを読んでいた可能性が高い。


 5回を三者凡退に抑えて6回、一死後筒井に左翼本塁打を許して1点を先行される。


 中部は直後の7回表、先頭の森井が左前にライナーのヒットを放って意地を見せると後続が奮起、鈴木秀雄の一ゴロで森井茂は二封、トップに返り岩本は遊飛に倒れるが、金山が左前打でつなぎ、加藤がストレートの四球を選んで二死満塁、小鶴が粘って押出し四球を選び1-1の同点とする。


 森井は7回裏二死後、堀井に左前打を許すが岡村を一ゴロに抑える。8回は三者凡退、9回は先頭の俊足安井がセーフティバントを試みるが森井が巧く捌いてアウト、後続を抑えて延長戦に突入。



 中部は10回表、一死後小鶴、古川、服部、藤原が4連続四球、押出しで決勝点をあげた。

 森井茂はグ軍最終回の攻撃も山本を三振、堀井を三ゴロ、岡村に代わる代打清水秀雄を三飛に打ち取り、3安打3四球1三振1失点の完投でハーラー単独トップに立つ5勝目をマークする。116球のリズムの良いピッチングに応えて中部守備陣はノーエラーであった。

 一方、丸山二三雄は10回を完投して163球で12四球、最後は4連続四球で決勝点を与えた。四球が多いと守備陣のリズムが崩れるものだが、グ軍守備陣もノーエラー。これは評価できる。


 筒井敬三はプロ入り4本目のヒットが初本塁打となった。筒井は神奈川大学の前身となる横浜専門学校出身、笠松実の後輩になる。



2019年10月20日日曜日

21年 阪急vパシフィック 3回戦


5月17日 (金) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計 
0 0 0 0 1 0 0 0 0  0   0   1  2 阪急 9勝3敗 0.750 笠松実 
0 0 0 0 0 0 0 0 1  0   0   0  1 パ軍 6勝7敗1分 0.462 湯浅芳彰 

勝利投手 笠松実     3勝1敗
敗戦投手 湯浅芳彰 1勝1敗 

勝利打点 (急)日比野武 1


日比野武が延長12回決勝打

 西宮の第2試合は午後2時50分、杉村主審の右手が上がりプレイボール。三塁塁審は第一試合に続いて阪急球団職員の片岡勝。片岡は阪急戦でも審判を務めることがある。この場合はグレートリング球団職員ではないかと考えられる加藤を起用した方が公正性を担保できるのではないか。

 ここまで阪急外野陣はレフト青田、センター山田でライトは髙橋敏と野口二郎が多かったが、この日は六番ライトに下社が戦後初スタメン。阪急は終戦直後から西宮球場が使えたため練習量が豊富で選手層も厚い。


 阪急は4回まで3四球は選んだもののノーヒット。パ軍先発の湯浅芳彰に無得点に抑えられる。


 阪急は5回表、先頭の三木が中前打で出塁、下社の投ゴロの間に三木は二進、更に坂田に代わる代打野口二郎の投ゴロの間に三進、笠松はストレートの四球、尾西も四球を選んで二死満塁、トップに返り山田が二遊間にタイムリーを放ち1点を先制する。


 阪急先発の笠松は6回まで4安打を許すもパ軍打線を無得点に抑え込み、7回、8回は三者凡退、試合は最終回を迎える。


 追加点の奪えない阪急は9回表、先頭の下社の当りは遊ゴロ、これをショート松井がエラー、続く日比野は送りバントを決めるが守備妨害を取られてアウト、ここはバントの後に走らず伊勢川の守備を妨害したと判定されたか、バントは有効で犠打が記録されて一死二塁、笠松の三ゴロをサード平野が一塁に悪送球して一死一三塁、尾西の二ゴロで三走下社がホームに突っ込むがセカンド小島からの本塁送球にタッチアウト、トップに返り山田が四球を選んで二死満塁、しかし期待の上田は三振に倒れて無得点。


 1点を追うパ軍は最終回、一死後伊勢川の当りは三ゴロ、これをサード三木がエラー、代走に喜瀬正顕を起用、続く湯浅の三ゴロも三木がエラーして一死一二塁、松井に代わる代打として昭和14年以来の復帰となる高須清を起用、しかし高須は左飛に倒れて二死一二塁、ここで平野に代わる代打佐竹一雄が中前に起死回生の同点タイムリー、1-1と追い付き延長戦に突入。


 パ軍はショート松井の代打に出た高須がサードに入り、キャッチャー伊勢川の代走に出た喜瀬がショートに入り、サード平野の代打で殊勲の同点打を放った佐竹がマスクを被る。


 阪急は10回表、二死後三木の三ゴロをサード高須が一塁に悪送球、打者走者の三木は二塁に進み、下社の三遊間ヒットで二死一三塁、しかし日比野の三ゴロを今度は高須が正確に送球してスリーアウトチェンジ。


 阪急は11回表、一死後尾西が四球を選ぶと二盗に成功、しかしトップに返り山田は左飛、上田は左邪飛に倒れて無得点。


 パ軍は10回、11回と1人ずつ走者を出すが無得点。


 阪急は12回表、二死後三木がストレートの四球で出塁、下社が三遊間を破って二死一二塁、ここで日比野が三遊間にタイムリーを放ち2-1と勝ち越す。


 パ軍は12回裏、二死後小島が四球を選んで最後の粘りを見せるが、森下は中飛に倒れて力尽く。


 湯浅芳彰は12回で175球の熱投を見せたが9四球が災いした。


 笠松実は12回を6安打4四球1三振で完投、3勝目をマークする。


 決勝打を放った日比野武はこの後も長く名捕手として活躍を続ける。二リーグ分裂後は西日本パイレーツから西鉄ライオンズに移り、和田にレギュラーの座を奪われた選手生活晩年に迎えた昭和33年の日本シリーズでは、第四戦からマスクを被って稲尾を蘇らせ、3連敗から4連勝の奇跡の逆転優勝の陰の立役者となる。



*日比野の直筆サイン入りカード。このユニフォームは昭和24年まで使われた。

2019年10月19日土曜日

21年 セネタースvsゴールドスター 2回戦


5月17日 (金) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 0 0 0 3 0 3 セ軍 5勝7敗 0.417 白木義一郎 
0 0 0 4 0 0 0 0 X 4 ゴ軍 6勝6敗1分 0.500 江田孝 石田光彦

勝利投手 江田孝        1勝0敗
敗戦投手 白木義一郎 4勝4敗
セーブ    石田光彦  1 

勝利打点 (ゴ)菊矢吉男 1


江田孝、粘りのピッチング

 本日も昨日に続いて西宮で2試合と後楽園で1試合。西宮の第1試合は午後0時58分、金政主審の右手が上がりプレイボール。

 調子の出ないセ軍は鈴木清一を九番に下げ、これまで外野で起用していた長持をセカンドに入れて二番に起用、ベテラン家村相太郎が久々にスタメン復帰というオーダーを組んできた。


 ゴ軍の先発投手はこれまで内藤幸三と石田光彦だけであったがこの日は江田孝が今季初先発。


 その江田が粘りのピッチングを見せた。初回、一死後長持の二ゴロをセカンド大友がエラー、しかし長持を牽制球で釣り出しピンチの目を摘む。2回も一死後白木の一ゴロをファースト菊矢がエラー、しかし続く田中宣顕を三振、当たっている末崎を投ゴロに打ち取る。3回はヒットと2個の四球で自ら二死満塁のピンチを招くが勝負強い飯島を左飛に打ち取り無失点。4回、5回は三者凡退と、尻上がりに調子を上げてきた。


 ゴ軍は4回裏、先頭の大友が右前打で出塁、坪内も中前打で続いて無死一二塁、菊矢が二遊間をゴロで抜くヒット、これをセンター大下が後逸、二走大友に続いて一走坪内もホームに還って2-0、打者走者の菊矢は二塁に進み、田中の右前打で無死一三塁、ここで田中がスタート、キャッチャー熊耳の二塁送球が悪送球となって三走菊矢が生還し3-0、田中は三塁に進み、辻功のピッチャー返しが白木のグラブを弾き、ショート鈴木がバックアップして辻は一塁アウトとなるが、この間に三走田中が還って4-0とリードする。


 7回まで江田に抑えられてきたセ軍は8回表、一死後大下の当りは二ゴロ、これをセカンド大友がこの日2個目のエラー、飯島が四球を選んで一死一二塁、白木が左前打を放って一死満塁、ここで一言がカウントワンボールツーストライクからの4球目をセンターにヒット、三走大下に続いて二走飯島も生還、更に一走白木まで一気にホームに還る好走塁を見せて3-4と1点差、一言はシングルヒットで3打点を記録した。センターは坪内なのでクロマティのような緩慢プレーがあったとも考えられず、カウントからは考え辛いが勝負を賭けた満塁エンドランの可能性もあるか。バックホームの間に打者走者の一言は二塁に進んで一死二塁、ここでゴ軍ベンチは先発の江田から石田にスイッチ、熊耳の一飛に一言が飛び出しており「3-6」と送球されてタッチアウト、ダブルプレーでスリーアウトチェンジ。


 セ軍は最終回、先頭の上口政が中前打で出塁すると代走に大木薫四郎を起用、鈴木が二前に送りバントを決めて一死二塁、二前なので自らも生きようとしたプッシュバントか、トップに返り横沢の二ゴロで大木は三塁に進んで二死三塁、しかし長持は一飛に倒れてゲームセット。


 初先発の江田孝は戦後初勝利、石田は戦後初セーブを記録する。


 昨日6失策で惨敗したセ軍はこの日も大下と熊耳のエラーで敗れた。早急に守備を立て直す必要がある。


 対照的にゴ軍の江田は立ち上がりから味方のエラーの連続にも腐らず粘りのピッチング、最後は少しバテたが石田の好リリーフで逃げ切った。



*江田孝の直筆サイン入りカード。大陽ロビンス「江田貢一」時代です。 


2019年10月18日金曜日

21年 セネタースvs阪急 2回戦


5月16日 (木) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 セ軍 5勝6敗 0.455 白木義一郎 大下弘 
0 0 0 0 4 2 0 0 X 6 阪急 8勝3敗 0.727 前川八郎 

勝利投手 前川八郎     2勝1敗
敗戦投手 白木義一郎 4勝3敗 

二塁打 (セ)白木 (急)尾西

勝利打点 (急)上田藤夫 2

猛打賞 (急)上田藤夫(4安打) 2



セ軍6失策で惨敗

 西宮の第2試合は白木と前川の先発で午後3時5分、金政主審の右手が上がりプレイボール。

 セ軍は1回、2回と三者凡退。3回表二死後、白木がレフトに二塁打を放つが、トップに返り横沢は左飛に倒れて無得点。


 阪急は1回裏、先頭の山田伝のピッチャー返しは白木のグラブをかすめ、ショート鈴木清一がバックアップして一塁に送球してアウト、記録は「1-6-3」。これはまだ、白木が平凡な投ゴロを野手に転がしてアウトにしたのではない。白木のお得意のプレーは、昭和22年になってから行われることになります。基本的にはピッチャーゴロをキャッチャーに転がして「1-2-3」でアウトにするもの。そこからの発展形がいくつかあったようですが、昭和22年になってから詳しく実況する予定です。一死無走者から上田が中前打で出塁、続く青田は打撃妨害で出塁、青田は5月5日の中部戦ではスウィングしたバットがキャッチャー服部のミットに触れながらヒットしたのは当時の実況中継でお伝えしたとおりです。相当引き付けて打っているのが分かりますね。それだけスウィングスピードが速いことを証明しています。一死一二塁となりましたが白木が踏ん張って野口明、髙橋敏は連続三振。


 阪急は3回裏、一死後山田が中前打で出塁、しかし白木の牽制球に引っ掛かりタッチアウト、直後に上田が左前打、しかし青田は左邪飛に倒れて無得点。


 阪急は4回裏、二死後三木が四球から二盗に成功、前川も四球を選んで二死一二塁、しかし日比野は遊ゴロに倒れて無得点。


 セ軍は5回表、一死後大木薫四郎が左前打を放って出塁、石原光男が四球を選んで一死一二塁、白木の当りは中飛、これに二走大木が戻れずセンター山田からの送球でダブルプレー。


 阪急は5回裏、開幕から渋い働きを見せている九番尾西がライト線に二塁打、トップに返り山田が中前打から二盗を決めて無死二三塁、このチャンスに当たっている上田がこの日3本目のヒットを中前にはじき返して二者還り2点を先制、バックホームの隙を突いて打者走者の上田は二塁に進み、青田がセンター左にヒットを放って無死一三塁、青田が二盗を決めて無死二三塁、野口明は投ゴロに倒れて一死二三塁、高橋に代わる代打下社は三振に倒れて二死二三塁、三木の三ゴロで万事休す、と思われたところサード横沢がエラー、三走上田に続いて二走青田も還って4-0とする。


 この横沢の2点タイムリーエラーは痛かった。


 セ軍は6回から白木に代わって大下弘がレフトからマウンドに上がってプロ入り2度目の登板。


 阪急は6回裏、先頭の日比野が右前打で出塁、尾西は左飛に倒れるが、トップに返り山田の遊ゴロをショート鈴木がエラーして一死一二塁、上田の中前打をセンター一言多十がファンブルして二走日比野がホームに還り5-0、日比野の得点は一言のエラーによるもので上田には打点は記録されず、一走山田は三塁に進んで一死一三塁、青田の遊ゴロで三走山田が飛び出したのを見てショート鈴木は三塁に送球、しかしこれをサード横沢が後逸する間に山田が生還して6-0とする。


 セ軍は6回の守備でも横沢のタイムリーエラーを含む3エラー。


 阪急は7回裏、一死後前川が四球で出塁、日比野の右前打で一死一二塁、7回表の守備から尾西に代わってショートの守備に入っている荒木茂の三ゴロをサード横沢が三塁ベースを踏んで二塁に送球、ダブルプレーでスリーアウトチェンジ。ここは横沢が好守備を見せた。


 セ軍は8回表、一死後白木が中前打で出塁、トップに返り横沢に代わる代打長持が中前打を放って一死一二塁、ピッチャー前川からの二塁牽制が悪送球となって一死二三塁、鈴木の遊ゴロの間に三走白木が還って1点返し1-6とするが反撃もここまで。


 前川八郎は5安打2四球2三振1失点、自責点ゼロの完投で2勝目をマークする。


 阪急の無失策に対してセ軍は6失策。これでは勝てない。



2019年10月17日木曜日

21年 中部日本vs巨人 2回戦


5月16日 (木) 後楽園
1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 2 0 0 0 0 0 3 中部 4勝6敗2分 0.400 西沢道夫 
0 0 2 4 0 0 0 0 X 6 巨人 6勝5敗 0.545 中尾輝三
勝利投手 中尾輝三 1勝1敗
敗戦投手 西沢道夫 0勝2敗 

二塁打 (中)服部、小鶴 (巨)呉新亨
本塁打 (巨)林(満塁) 1号

勝利打点 (巨)林清一 1


林清一、戦後初のグランドスラム

 後楽園の試合は午後3時2分、西沢道夫と中尾輝三の先発で、島球審の右手が上がりプレイボール。

 中部は初回、いきなり岩本、金山が連続四球、相変わらず中尾はコントロールが悪い。古川の三前内野安打で無死満塁、巨人内野陣はここで中間守備、小鶴の遊ゴロでショート山田はゲッツー狙いを選択し二塁に送球、千葉からの一塁転送でダブルプレーが完成、この間に三走岩本が還って1点を先制する。


 巨人は3回裏、一死後山田の当りは遊ゴロ、これをショート金山がエラー、トップに返り呉新亨の三ゴロをサード藤原が一塁に悪送球して一死二三塁、このチャンスに現在首位打者の山川がライト線に2点タイムリーを放ち2-1と逆転、山川は二塁を欲張り「9-3-6」と転送されてタッチアウト。


 中部は走者二塁のケースでの右前打でファースト小鶴がカットに入った。しかしこれは山川の当りがライト線への打球であったことが理由でしょう。戦前からこの時期にかけて、ごく一部の例外を除いてピッチャーがカットに入るのが慣例となっている。


 中部は4回表、一死後小鶴が死球を受けて出塁、加藤はストレートの四球で一二塁、服部が左中間に二塁打を放ち2-2の同点、一死二三塁から藤原の遊ゴロの間に三走加藤が還って3-2と逆転に成功する。


 巨人はその裏、先頭の黒沢が四球を選んで出塁、多田の左前打で一二塁、諏訪が死球を受けて無死満塁、ここで林清一がレフトスタンドに戦後初の満塁本塁打、6-3と逆転に成功する。


 中尾輝三は5回以降中部打線を無得点に抑え、5安打4四球1死球5三振の完投で戦後初勝利をあげる。


 西沢道夫も5回以降は無失点、6回以降は無安打であった。しかし8回を完投して6四球1死球、戦地で肩を痛めたことが原因なのか、コントロールが悪すぎる。林清一に打たれた満塁本塁打も、その前の諏訪に死球をぶつけて思い切った投球ができなかったことが要因として考えられる。ベテラン林はそこを見逃さず、ワンボールからの2球目を積極的に狙っていったのである。


 林の本塁打は昭和11年7月15日、猛暑の山本球場で行われた連盟結成記念全日本選手権名古屋大会以来10年ぶり2本目。林の通算本塁打はこの2本だけである。



*林清一の第1号本塁打。日本職業野球連盟公報第四号(昭和11年7月25日発行)より。


*林清一が放った戦後初のグランドスラム。

21年 パシフィックvsゴールドスター 2回戦


5月16日 (木) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 1 0 1 0 0 0 0 0 2 パ軍 6勝6敗1分 0.500 井筒研一 
0 3 0 0 1 0 0 0 X 4 ゴ軍 5勝6敗1分 0.455 内藤幸三 

勝利投手 内藤幸三 3勝3敗
敗戦投手 井筒研一 2勝3敗 

勝利打点 なし




打撃好調の松井がWエラー

 本日は西宮で2試合と後楽園で1試合。西宮の第1試合は午後1時丁度、杉村主審の右手が上がりプレイボール。三塁塁審は阪急球団職員の片岡勝が務める。

 パ軍は2回表、一死後森下の当りは三ゴロ、これをサード坂本勲がエラー、伊勢川が一二塁間を破ると一走森下は三塁に走り、ライト木崎からのバックサードが悪送球となる間に森下が還って1点を先制する。打者走者の伊勢川は二塁に進み、続く松井信勝が三遊間を破って一死一三塁とチャンスが続くが、平野徳松は浅い右飛、井筒は三ゴロに倒れて追加得点はならず。下位打線とは言えここはもう1点欲しかったところ。


 ゴ軍は2回裏、一死後田中宣顕が左前打で出塁、木崎も左前打で続いて一二塁、内藤が右前に同点タイムリーを放ち1-1、一走木崎は三塁に進んで一死一三塁、辻功の遊ゴロをショート松井がエラーする間に三走木崎が還って2-1と逆転、一走内藤は三塁に進んで再度一死一三塁、続く坂本の打席で三走内藤が「2-5-6」でタッチアウト、この間に一走辻が三塁に進んでいることと坂本の打力を考えると、「雑記」欄には記載は無いものの、ここはスクイズを外されたか内藤のサインミスでホームに走ったところを三本間に挟まれたと見るのが妥当でしょう。ということで二死三塁で試合再開、坂本は四球を選んで二死一三塁、トップに返り酒沢の遊ゴロを又も松井がエラー、この間に三走辻が還って3-1とする。


 パ軍は3回表、先頭の富松の当りは二ゴロ、これをセカンド大友がエラー、木暮の遊ゴロの間に富松は二進、辻井が四球を選んで一死一二塁と、出塁率の高い上位打線でチャンスを作り、第3節終了時点で打点ランキング二位と一位の四、五番を迎えるが、小島は三ゴロ、森下は一ゴロに倒れて無得点。


 パ軍は4回表、先頭の伊勢川が四球を選んで出塁、打撃好調の松井がレフトに2打席連続ヒット、平野の二ゴロを大友がこの日2つ目のエラーして無死満塁、井筒が中前にタイムリーを放ち2-3と1点差にしてなお無死満塁で上位につなぐが、トップの富松は捕邪飛、木暮は遊飛、辻井は三振に倒れて追加得点はならず。


 ゴ軍は5回裏、先頭の大友が右前打で出塁、坪内の投ゴロの間に大友は二進、菊矢がセンター左にタイムリーを放ち4-2と突き放す。続く田中が中前打を放って一死一二塁、末崎のカウントスリーボールツーストライクで走者一斉にスタート、しかし三振ゲッツーでスリーアウトチェンジ。


 パ軍先発の井筒研一は6回以降無安打ピッチング。


 パ軍は8回表、一死後伊勢川が四球を選んで出塁、二死後平野の中前打で伊勢川は三塁を狙うが、「8-6-5」の中継プレーにタッチアウト、センター坪内からの三塁送球にショート酒沢がカットに入っているので、坪内がジャッグルしたのを見て伊勢川が三塁に走ったのではないか。普通に捕球していれば坪内ならダイレクトで三塁に送球しているはず。


 パ軍は9回表、一死後富松が一二塁間にヒット、しかし木暮は三飛、辻井は三振に倒れてゲームセット。


 内藤幸三は6安打4四球5三振の完投で3勝目をマークする。


 パ軍3つ、ゴ軍4つと両軍合わせて7失策。中でも打撃好調の松井信勝が2回にWエラー、これが何れもタイムリーエラーであったことがパ軍の敗因となった。




2019年10月15日火曜日

21年 第3節終了時点 打撃成績


   名前  球団 打数 安打 塁打 打率 四死 出塁率 長打率 OPS 得点 打点 盗塁
山川喜作 (巨) 36 14 16 0.389   5  0.463  0.444  0.908   4   5   3
土井垣武 (タ) 39 15 17 0.385   4  0.442  0.436  0.878   6   6   1
藤村冨美男 (タ) 27 10 13 0.370   6  0.485  0.481  0.966   5   5   3
森下重好 (パ) 49 18 25 0.367   7  0.446  0.510  0.957   4  12   3
青田昇 (急) 40 14 16 0.350   4  0.409  0.400  0.809   5   2   5
山本一人 (グ) 32 11 12 0.344   4  0.417  0.375  0.792   5   7   0
松井信勝 (パ) 35 12 13 0.343   6  0.439  0.371  0.810   5   1   2
千葉茂 (巨) 37 12 15 0.324   7  0.432  0.405  0.837   5   3   3
加藤正二 (中) 41 13 21 0.317   8  0.429  0.512  0.941  10   7   2
黒沢俊夫 (巨) 36 11 11 0.306   8  0.432  0.306  0.737   5   2   5
富松信彦 (パ) 44 4 7 0.091  15  0.322  0.159  0.481   9   2   2
木暮力三 (パ) 52 11 13 0.212   8  0.317  0.250  0.567   7   5   2
辻井弘 (パ) 49 13 15 0.265  10  0.390  0.306  0.696   9   5   2
小島利男 (パ) 47 9 15 0.191  11  0.345  0.319  0.664   5  10   1
森下重好 (パ) 49 18 25 0.367   7  0.446  0.510  0.957   4  12   3
(藤村冨美男の「塁打数」、「長打率」、「OPS」について、2019年11月14日に訂正済み)

 第3節終了時点の首位打者は山川喜作。山川は開幕から10試合でノーヒットは1度だけという安定感が光ります。

 藤村冨美男は長打もあって四球も選んでおりOPS(出塁率+長打率)も0.966でトップです。


 青田昇は打率上位ですが、10試合でノーヒットが5回、ヒットを打った5試合は4度の猛打賞を含めて全てマルチヒットという波の荒さ、じゃじゃ馬ぶりを如何なく発揮しています。意外なことに現在盗塁王。


 勝負強さが光る森下重好は現在打点王。2本塁打の加藤正二は打率は低いながらもOPSは0.941。OPSは打率が二重に掛かりますので価値が高い。


 打撃10傑以外に、好調なパシフィック打線をスタッツから分析してみましょう。トップの富松信彦は打率は0割9分1厘ながら四球が断トツの15個で出塁率は3割2分2厘、Isod(出塁率-打率)は驚異の0.231、したがって9得点をあげています。二番小暮力三と三番辻井弘も出塁率が高く7得点と9得点。そして四番小島利男は打率こそ1割9分1厘と低いながら10打点、勝負強い森下重好が12打点と打点ランキング1位と2位(小島は加藤と同数)を占めています。

 なお、打率については「日本野球年鑑」と照合していますが、四死球や長打は当ブログが独自に手入力していますので、シーズン終了時点でないと照合できません。入力作業は慎重を期していますが、間違っている可能性は否定できませんので悪しからず。しかしながら、途中経過を分析していくという試みは全宇宙の歴史で初めてのこととなります。今後は投手成績も掲載していきますのでお楽しみに。