2019年11月29日金曜日

21年 阪急vsパシフィック 5回戦


5月30日 (木) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計 
0 0 0 0 0 0 0 0 4  4  阪急 12勝7敗 0.632 森弘太郎 野口二郎 鳥居兵治 
3 2 0 3 0 5 0 0 X 13 パ軍 9勝11敗1分 0.450 真田重蔵 

勝利投手 真田重蔵 5勝3敗
敗戦投手 森弘太郎 0勝1敗 

二塁打 (急)野口明 (パ)伊勢川
本塁打 (パ)森下 2号

勝利打点 (パ)伊勢川真澄 1

猛打賞 (パ)小島利男 1


伊勢川真澄、満塁走者一掃二塁打

 「日本野球年鑑」によると、「阪急は不運にも着京後直ちに試合をせねばならなかったので全員睡眠不足」とのこと。阪急は27日に西宮球場でグレートリングとの試合があったが、東京行の切符が手配できなかったのか、昨晩大阪発の夜行で今朝東京に着いたようだ。進駐軍の軍用機が使えればこんな事態に追い込まれることはなかったでしょうが、敗戦国ということでちょっと無理か。

 後楽園の第2試合は森弘太郎と真田重蔵の先発で午後3時20分、池田球審の右手が上がりプレイボール。


 パ軍は初回、先頭の木暮力三が四球を選んで出塁、富松信彦の二遊間ヒットで木暮は三塁に進み、富松が二盗を決めて無死二三塁、小島利男は三ゴロに倒れ、森下重好は歩かされて一死満塁、辻井弘は浅い左飛に倒れて二死満塁、ここで伊勢川真澄がライト線に鋭いライナーの二塁打を放ち走者を一掃、3点を先制する。


 パ軍は2回裏、先頭の平野徳松が中前打、真田も左前打で続き、トップに返り木暮が四球を選んで無死満塁、阪急ベンチはここで森から野口二郎にスイッチ、富松の二ゴロ併殺の間に三走平野が還って4-0、小島が左前にタイムリーを放ち5-0と突き放す。


 パ軍は4回裏、先頭の真田が三失に生き、二死後小島が左前打を放って一二塁、ここで森下がレフトスタンドに第2号スリーランホームランを叩き込み8-0として前半にして試合を決める。


 阪急は5回から鳥居兵治がプロ入り初登板。


 眠気が抜けきらない阪急は5回まで1安打無得点。6回表、ようやく三木久一の四球と野口明のヒットで一死一二塁のチャンスを作るが、上田藤夫は右飛、日比野武は左飛に倒れて無得点。


 パ軍は6回裏、一死後富松がストレートの四球、小島は右前打、森下もストレートの四球を選んで一死満塁、辻井は浅い左飛に倒れて二死満塁、ここで藤本定義監督は伊勢川に代えて代打に白石敏男を起用、白石がストレートの押出し四球を選んで9-0、松井信勝に代わる代打高須清の押出し四球で10-0、平野のニゴロでセカンド上田が二塁に送球するがベースカバーに入ったショート尾西信一が落球する間に三走森下に続いて二走白石も還って12-0、真田が中前にタイムリーを放ち13-0とする。


 阪急は9回表、鳥居、尾西が連続四球、トップに返り山田伝の左前打で無死満塁、下社邦男の押出し四球で1点目、青田の中犠飛で2点目、二死後野口明の左中間二塁打で2点を返して4点を取り返すが反撃もここまで。


 最終回は少しバテたが、真田重蔵は5安打8四球無三振の完投で5勝目をマークする。


 移動の不備という不運はあったが、阪急は勢いが落ちてきた。


 阪急が本調子を欠いていたととは言え、パ軍は伊勢川真澄が満塁走者一掃二塁打、森下重好がスリーランホームラン、小島利男が猛打賞の猛攻を見せた。



*初回に満塁走者一掃二塁打を放った伊勢川真澄。大映スターズ時代の選手名鑑に残された直筆サイン。

2019年11月28日木曜日

準優勝


 ほっともっとフィールド神戸で行われた還暦野球の全国大会に出場して準優勝してきました。

 初日の1回戦の相手は2年連続全国制覇の強豪でしたが、1対1からのタイブレークでサヨナラ勝ち。


 2日目は2試合で準々決勝は4対1、準決勝は4対2と接戦をモノにしました。


 3日目の決勝の相手は1975年夏の甲子園準優勝の新居浜商業OBを中心に結成された新居浜ビクトリーズ。残念ながら6対4で敗れて準優勝でしたが、安打数は我々品川エンジェルスが12本で相手は8本と打ち勝っていました。


 私も甲子園準優勝投手の村上さんから2本ヒットを打ちましたよ!


 「品川エンジェルス」は東京都還暦野球の強豪「全世田谷」、「杉並SS」、私が所属する「品川ベースボールクラブ」の混成チームです。「品川ベースボールクラブ」からは、日大一高時代に3年連続エースとして甲子園を沸かせた保坂さん、法政時代に江川の球を受けていた高浦さんの元プロ2名が参加しました。グラウンドでも飲み会でも仲良くしていただいています。


 この年齢で甲子園準優勝投手からヒットを打ったり、元プロの方々と懇意にさせていただいたり、「野球」という共通言語のおかげですね(笑)。



2019年11月25日月曜日

休載のお知らせ


 今週は野球の試合で神戸に行ってきますので、しばらく休載させていただきます。

 トーナメント戦なので、早く負ければ早く戻ってきます(笑)。



貫井函治の表記について


 11月22日付「21年 中部日本vsセネタース 3回戦でお伝えしたとおり、この日プロ入り初出場の貫井函治がいきなり猛打賞を記録しました。

 この貫井函治の表記ですが、「Wikipedia」では「貫井丞治」を採用しており、「貫井函治と表記される文献もある」としています。


 「日本プロ野球記録大全集」では「貫井丞治」、「日本プロ野球50年史」でも「貫井丞治」を採用しています。


 当時の資料では、昭和21年4月1日発行「体育週報」(日本体育週報社)第553号「春の日本野球」に8球団のメンバー表が掲載されており、ここでは「漢字ペディア」で「函」の異体字と説明されている「凾」の左右の棒がない文字(下の写真参照)になっています。


 スコアカードに押されているスタンプは判読しずらいのですが、「函」の異体字とされる「凾」のように見えます(下の写真参照)。


 当ブログはスコアカードに従っていますので、「貫井函治」と表記させていただいております。


*昭和21年4月1日発行「体育週報」に掲載されているメンバー表では「凾」の左右の棒がない文字が使われている。

*スコアカードに押されているスタンプでは「函」の異体字とされる「凾」のように見える。

2019年11月24日日曜日

21年 タイガースvsグレートリング 3回戦


5月30日 (木) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計 
1 1 0 0 0 0 0 0 1  0  3 タ軍 9勝8敗 0.529 渡辺誠太郎 
0 0 0 0 2 0 1 0 0 1X 4 グ軍 9勝8敗 0.529 丸山二三雄 

勝利投手 丸山二三雄 4勝2敗
敗戦投手 渡辺誠太郎 1勝5敗 

二塁打 (タ)藤村3、富樫 (グ)山本、安井、桶川、筒井
本塁打 (タ)本堂保次 1号

勝利打点 (グ)田川豊 1

猛打賞 (タ)藤村冨美男(4安打)4


田川豊、鮮烈デビュー

 西宮の第2試合は渡辺誠太郎と丸山二三雄の先発で午後3時10分、金政主審の右手が上がりプレイボール。

 グ軍は河西俊雄が二番ショートで復帰。タ軍は土井垣武が六番キャッチャーで5月12日以来の出場。両軍の四番サードは藤村監督と山本監督、これはこの3回戦が初めて。


 タ軍は初回、先頭の呉昌征が四球を選んで出塁、金田正泰が送って一死二塁、しかし丸山からの牽制にタッチアウト、ここは左の丸山ということで三盗を狙っていたか、直後に本堂保次がレフトスタンドに先制ホームランを叩き込んで1-0、続く藤村冨美男監督も右中間に二塁打、しかし御園生崇男は左飛に倒れて追加点はならず。


 グ軍は1回裏、一死後河西が三塁へのヒットで出塁すると二盗に成功、しかし後続なく無得点。


 タ軍は2回表、一死後富樫淳が右前打で出塁、渡部の遊ゴロをショート河西がファンブル、白球を拾い上げて二塁に送球するが悪送球、この間に富樫は一気にホームに還って2-0とする。


 タ軍は3回表、一死後本堂が四球を選んで出塁、グ軍山本一人監督はここでショートをWエラーを犯した河西から桶川隆に交代、これは丸山に一息入れさせる効果も狙ったか、藤村監督は三塁にヒット、御園生も右前打で続いて一死満塁、しかし土井垣武のニゴロがセカンド安井-ショート桶川-ファースト別所と渡ってダブルプレー、ショックを引きずる河西だったらこうは行ったか、ここは山本監督のファインプレー。


 グ軍は5回裏、先頭の丸山の当りはニゴロ、これをセカンド本堂がエラー、筒井敬三は中飛に倒れるが、トップに返り安井が中越えに二塁打を放って丸山を迎え入れ1-2、桶川も左中間に二塁打を放ち2-2の同点に追い付く。河西にポジションを取られそうな桶川も必死。


 タ軍は6回表、先頭の富樫の当りは右中間を破り、富樫は二塁ベースを蹴って三塁に向かうが、ライト岡村俊昭からの返球を中継したセカンド安井の三塁送球にタッチアウト、山本監督はここでライトを岡村からプロ入り初出場となる田川豊に交代、岡村に何かアクシデントがあったのか、あるいは岡村の拙守により富樫の打球が頭上を越えたのを見て俊足の田川に代えたのか、この交代で丸山は落ち着きを取り戻し、渡辺は三振、長谷川善三は四球を選ぶが、トップに返り呉昌征も三振。


 タ軍は7回表、先頭の金田が二遊間にヒット、本堂の三ゴロをサード山本監督がエラー、藤村監督の打席で丸山がボークを犯して無死二三塁、しかし丸山が踏ん張り藤村は三振、御園生が四球を選んで一死満塁、土井垣の当りは二遊間へ、しかしセカンド安井がこの打球に追い付くと自ら二塁ベースを踏んで一塁に送球、「4B-3」のダブルプレーでタ軍のチャンスは潰える。


 グ軍は7回裏、先頭の別所が四球を選んで出塁、しかし丸山のニゴロが「4-6-3」と渡ってダブルプレー、チャンスは潰えたかに見えたが、筒井が左中間に二塁打を放って二死二塁、トップに返り安井が中前に勝ち越しタイムリーを放ち3-2とリードする。


 グ軍は8回の守備からエラーを犯した山本監督がサードからファーストに回り、別所に代わって宮崎仁郎が入ってサード。


 タ軍は9回表、先頭の金田が四球を選んで出塁、本堂の一ゴロの間に金田は二進、藤村監督が左中間に二塁打を放ち3-3の同点、御園生は四球を選んで一死一二塁、土井垣の当りはセカンドライナー、二走藤村は戻れずダブルプレーとなって同点止まり。


 グ軍は9回裏、先頭の木村勉が三塁にヒット、宮崎の三ゴロでランナーが入れ替わり、丸山の右前打で一死一二塁と一打サヨナラのチャンス、しかし筒井の三ゴロをサード藤村監督が三塁ベースを踏んで一塁に送球して「5C-3」のダブルプレー、試合は延長戦に突入する。


 グ軍は10回裏、先頭の安井が四球を選んで出塁、桶川の投ゴロで安井は二封されて一死一塁、ここでこの日初登場の田川が右中間にサヨナラ三塁打を放ちグ軍が激戦を制す。


 丸山二三雄は10回を完投して10安打8四球7三振、崩れかかる場面を何度も凌いで4勝目をマークする。


 タ軍は久々登場の土井垣武が二塁へ3つの併殺打、セカンド安井の好守に阻まれた。藤村冨美男はこの日の4安打で今季51打数21安打、打率を4割に乗せてきた。


 グ軍は安井亀和が攻守にわたって活躍、河西俊雄と田川豊も戦列に加わり役者が揃ってきた。


*サヨナラ三塁打で鮮烈デビューを飾った田川豊。近鉄初年度の選手名鑑に残された直筆サイン。


訂正のお知らせ⑥


 11月23日付け「巨人vsゴールドスター 3回戦」の実況について、一部誤りがありましたので訂正させていただきます。

 藤本英雄監督の登場場面を最終回に「近藤貞雄に代わる代打」とお伝えしていましたが、これは誤りで、正しくは6回裏ゴ軍の攻撃で田中宣顕が同点二塁打を放った場面で諏訪裕良をリリーフして二番手としてマウンドに上がり、直後に菊矢吉男に決勝打を打たれたものです。この時諏訪が近藤に代わってファーストに回り、近藤に代わって藤本が入りピッチャーという布陣となりました。


 以上、訂正のうえお詫び申し上げます。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。本文は訂正済みです。


2019年11月23日土曜日

21年 巨人vsゴールドスター 3回戦


5月30日 (木) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 1 2 0 0 0 0 3 巨人 10勝8敗 0.556 諏訪裕良 藤本英雄 
2 0 0 0 0 3 0 1 X 6 ゴ軍 8勝9敗1分 0.471 石田光彦 

勝利投手 石田光彦 4勝5敗
敗戦投手 諏訪裕良 1勝3敗 

二塁打 (巨)多田 (ゴ)田中

勝利打点 (ゴ)菊矢吉男 2

猛打賞 (ゴ)酒沢政夫 1、田中宣顕 3


石田光彦、2試合連続完投勝利

 後楽園の第1試合は諏訪裕良と石田光彦の先発で午後1時7分、島球審の右手が上がりプレイボール。

 ゴ軍は初回、先頭の酒沢政夫がセンター右にヒット、大友一明が右翼線にヒット、これをライト林清一が後逸する間に一走酒沢は一気にホームに還り1点を先制、打者走者の大友は二塁に進み、坪内が送って一死三塁、田中宣顕のニゴロの間に三走大友が還ってこの回2点を先制する。


 前の試合で3安打完封の石田はこの日も快調な立ち上がりを見せ、3回までパーフェクトピッチング。


 ゴ軍は3回裏、先頭の酒沢が三前にセーフティバント、サード山川喜作の一塁送球が悪送球となる間に酒沢は三塁に進み、大友の遊ゴロで三走酒沢がホームに突っ込むがショート山田潔の本塁送球にタッチアウト、この守備があるから藤本英雄監督は打てなくても山田を使い続けている。


 巨人は4回表、二死後千葉茂が四球を選んで出塁、石田のワイルドピッチで千葉は二進、黒沢俊夫も四球で二死一二塁、多田文久三のライト線二塁打で1-2と1点差に迫る。


 ゴ軍は4回裏、先頭の田中が中前打で出塁、しかし菊矢のサードライナーに田中が飛び出しゲッツー。


 巨人は5回表、一死後諏訪が四球で出塁、山田の中前打で諏訪は三塁に進み、センター坪内の三塁送球の間に打者走者の山田も二塁に進んで一死二三塁、トップに返り呉新亨は三ゴロに倒れるが、山川が四球を選んで二死満塁、千葉が中前に逆転2点タイムリーを放ち3-2とリードする。


 ゴ軍は5回裏、二死後坂本勲が四球を選んで出塁、トップに返り酒沢の右前打で一走坂本が三塁に向かうが、ライト林からの送球にタッチアウト。


 無駄な走塁が続いて追加点を奪えなかったゴ軍は6回裏、先頭の大友がストレートの四球で出塁、坪内が死球を受けて無死一二塁、田中が右中間に二塁打を放ち3-3の同点、ここで諏訪が近藤に代わってファーストに回り、近藤に代わって藤本英雄監督が入り二番手のマウンドに上がるが、菊矢が中前に2点タイムリーを放ち5-3と試合をひっくり返す。



 ゴ軍は8回裏、一死後坪内が中前打、田中の中前打で坪内は三塁に進んで一死一三塁、菊矢の左犠飛で6-3とダメ押す。


 巨人は最終回、一死後林が左前打で出塁、藤本の遊ゴロでランナーが入れ替わり、諏訪がストレートの四球を選んで二死一二塁と一発出れば同点の場面で九番山田に代えて中尾輝三を代打に起用、しかし石田が最後の踏ん張りを見せて中尾は三振、試合終了。


 石田光彦は4安打6四球4三振の完投で4勝目をマークする。



 好調田中宣顕がこの日も4打数3安打を記録。田中は第3節終了時点では打率1割9分6厘と低迷していたが、その後の7試合で26打数13安打と爆発、打率も3割に乗せてきた。

 その田中が四番に座ってから五番に下げられた菊矢吉男が意地の決勝打を放つ。菊矢は打率こそ1割台だが、ベテランらしい勝負強さを見せている。


2019年11月22日金曜日

21年 中部日本vsセネタース 3回戦


5月30日 (木) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
5 0 0 0 1 1 8 0 0 15 中部 6勝9敗2分 0.400 森井茂 
0 0 1 1 1 0 0 0 2  5  セ軍 7勝10敗 0.412 上口政 大下弘 

勝利投手 森井茂 6勝4敗
敗戦投手 上口政 0勝1敗 

二塁打 (中)笠石、古川、服部

勝利打点 (中)古川清蔵 1

猛打賞 (中)古川清蔵 1、金山次郎(4安打) 1 (セ)貫井函治 1、鈴木清一 1


森井茂、中部の全6勝をマーク

 第6節の初日は後楽園で2試合と西宮で2試合。西宮の第1試合は午後1時丁度、杉村主審の右手が上がりプレイボール。

 中部は依然小鶴誠が欠場、金山次郎が復帰して九番ショートに入る。


 セ軍は大下が2試合連続四番、バッテリーは初登板の上口政に初出場の貫井函治、五番ライトも初出場の北川圭太郎と、目先を変えてきた。


 中部は初回、先頭の岩本章の当りは二飛、これをセカンド長持栄吉が落球、藤原鉄之助はストレートの四球で無死一二塁、古川清蔵が中前に先制タイムリーを放ち1-0、藤原が三盗に成功、一走古川は動いていないので、慣れない上口-貫井の隙を見て藤原がノーサインで走ったものか、加藤正二もストレートの四球で無死満塁、木下政文のライト線タイムリーで2-0、服部受弘の三ゴロの間に三走古川が還って3-0、笠石徳五郎が左中間に二塁打を放ち二者還ってこの回5点を先制する。


 セ軍先発の上口は、2回、3回もピンチを迎えるが何とか無失点で切り抜ける。


 セ軍は3回裏、一死後プロ入り初打席の貫井が中前に初ヒット、鈴木清一の右前打で一死一二塁、トップに返り一言多十が右前にタイムリーを放ち1-5とする。


 セ軍は4回裏、先頭の大下が右前打で出塁、北川のニゴロ、長持の遊ゴロの間に大下は二進、三進して二死三塁、森井茂のワイルドピッチで大下が還り2-5と追い上げる。


 中部は5回表、服部、笠石が連続中前打、森井が送って一死二三塁、金山の右前タイムリーで6-2とする。金山が二盗を決め、岩本が死球を受けて一死満塁、しかし藤原の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。


 セ軍は5回裏、先頭の貫井の当りは遊ゴロ、これをファースト笠石が落球、鈴木の右前打で貫井は三塁に走りかけるがストップ、しかし打者走者の鈴木は前を見ていなかったようで二塁に向かって走り続け、「9-1-5-6」と転送されて鈴木がタッチアウト、一死二塁となってトップに返り岩本が右前打を放って一死一三塁、横沢の右飛をライト加藤が落球、更に白球を拾った加藤からの返球が悪送球、三走貫井が生還して3-6と追い上げる。貫井の得点について横沢に打点が記録されているので、当時は公式記録では「犠牲フライ」は記録されていなかったが、現代風に言うと「犠牲フライには十分な飛距離」と判断されて横沢に打点が記録されたものと考えられるところから、当ブログの記録では横沢の「右犠飛」となる。加藤には落球と悪送球の2つのエラーが記録されて一死二三塁、しかし飯島は浅い左飛、大下も三振に倒れて追加得点はならず。セ軍はここで試合の流れを掴みきれず、この回はこの試合の大きな分岐点となった。


 中部は6回表、先頭の古川が中前打、一死後古川が二盗に成功、二死後服部の左中間二塁打で7-3と再度突き放す。


 中部は7回表、先頭の金山が三塁線にヒット、トップに返り岩本は四球、藤原の二直をセカンド長持が落球して無死満塁、古川の遊ゴロをショート鈴木がエラー、三走岩本の生還について古川に打点が記録されて8-3、なおも続く無死満塁から加藤が中越えに走者一掃の三塁打を放ち11-3、木下に代わる代打三村勲が中前にプロ入り初ヒットとなるタイムリーを放ち12-3、服部の遊ゴロをショート鈴木が再びエラー、セ軍ベンチはここでようやく上口をレフトに回しレフトの大下がマウンドに上がるが、大下は肩が出来ていなかったか、笠石は四球、森井は押出し四球、金山と岩本の内野安打が連続タイムリーとなってこの回8点、15対3と大きくリードする。


 大下は8回、9回は無失点。


 12点を追うセ軍は9回裏、先頭の上口に代わる代打宮下義雄が三遊間にプロ入り初ヒット、貫井が中前にこの日3本目のヒット、センター古川が後逸する間に一走宮下が還って4-15、打者走者の宮下は一気に三塁に向かうが、「8-1-5」の中継にタッチアウト、鈴木が左前打、トップに返り一言は四球、二死後飯島が左前にタイムリーを放ち最後の抵抗を見せるが、大下が三邪飛に倒れてゲームセット。


 森井茂は13安打1四球1三振で完投、ハーラー単独トップの6勝目をあげる。開幕から1か月以上が経過して、中部日本の勝利は全て森井茂のもの。


 セ軍が初登板の上口政を引っ張りすぎたのは否定できないが、エース白木が投げられない現状では致し方のない面も認められる。結果からみると、白木はこの年440イニングスを投げているので年がら年中投げていると勘違いされている方もいらっしゃるかもしれませんが、この時期2週間以上白木は登板していない。何らかの故障が考えられる。大下の登板がこの時期に集中しているのも、そういう事情によるもの。


 いいところのなかったセ軍であるが、初出場の貫井函治が猛打賞を記録。打率1割台と当りの出ていなかった大下も2試合連続2安打、ようやく光明が見えてきた。


 中部は初回に笠石徳五郎が放った追撃の2点タイムリー二塁打が大きかった。セ軍も中盤で追い付いていたら黒尾重明をリリーフに送る手も残されていたが、笠石の追撃打による序盤の大量失点がそうさせなかったのである。


*笠石徳五郎の直筆サイン入りカード。昭和25年西鉄クリッパース時代のもので、「笠原捕手」は明らかに誤植。1年だけ存在した西鉄クリッパースのユニフォームの資料としても貴重ですね。
綱島理友著「日本プロ野球ユニフォーム大図鑑」によると「ウールのグレーで、左胸に小さくCLIPPERSの文字」とのこと。この写真では見えずらいですが、帽子のマークは「西」の字をデザイン化したもの。


*当時の「笠原」姓は、南海の笠原和夫。こちらが本物の笠原の直筆サイン入りカード。


2019年11月21日木曜日

21年 第5節 週間MVP


週間MVP

投手部門
 巨人 藤本英雄 1

 2勝1完封。今節4連勝で首位阪急に迫ってきた巨人の投の主役。
 戦前の荒れ球とは打って変わってコントロールが良くなった。


打撃部門
 巨人 多田文久三 1

 16打数5安打2得点4打点。
 数字だけなら森下重好や山本一人の方が上だが、多田は巨人の4勝中3試合で勝利打点を記録、山田潔がサヨナラ打を放った試合も多田の二塁打からサヨナラにつながった。



殊勲賞
 巨人 山田潔 1
 26日の阪急戦でサヨナラ打。山田はこの前の打席まで49打数4安打、打率0割8分2厘の不振に喘いでいた。

 グ軍 丸山二三雄 1
 27日の阪急戦で延長11回裏に代打サヨナラ二塁打。

 タ軍 御園生崇男 1
 23日のセ軍戦で戦後初登板で2安打完封。

 パ軍 藤井勇 1
 無届け出場ながら19打数8安打6打点。

敢闘賞
 巨人 呉新亨 1
 16打数9安打6得点。好調巨人を引っ張るリードオフマン。

 グ軍 山本一人 1
 18打数6安打5得点7打点5盗塁。強打もさることながら、山本監督自ら「走る野球」を率先している。

 パ軍 森下重好 2
 18打数10安打4打点。26日のグ軍戦では藤井勇と2者連続ホームラン。

技能賞
 パ軍 辻井弘 2
 23日のグ軍戦で戦後最初の「隠し球」。

 阪急 山田伝 1
 27日のグ軍戦で外野から安井亀和を追いかけ二塁ベースで無捕殺併殺を記録。

 ゴ軍 坪内道則 2
 24日のタ軍戦でオール内野安打での4安打(うち2本はバントヒット)。

21年 第5節 トピックス


 第5節は変則日程で合計12試合。巨人が4戦全勝で、1勝3敗の首位阪急に1.5ゲーム差と迫ってきた。

 パシフィックの23、24、26日の試合は後に「没収試合となり、パ軍に「放棄試合」が宣告されることとなる。


 グレートリングは2勝2敗であったが、4対7で敗れた26日のパ軍戦が後に9対0の勝利に訂正される。結果的にこの1勝がペナントレースの行方を左右することになる。
 
 藤井勇は23日のグ軍戦で無届け出場ながら戦後初登場し、5打数3安打2打点の活躍。


 森下重好は26日のグ軍戦で3安打、27日の巨人戦で4安打と2試合連続猛打賞。


 その藤井と森下は、26日のグ軍戦で2者連続ホームラン。


 御園生崇男は23日の対セ軍戦で戦後初登板して2安打完封。


 辻井弘が23日のグ軍戦で戦後最初の「隠し球」。

 坪内道則は24日のタ軍戦でオール内野安打での4安打(うち2本はバントヒット)。


 タ軍は23日のセ軍戦で富樫淳がサヨナラ打、24日のゴ軍戦で金田正泰がサヨナラ打と、2試合連続サヨナラ勝ち。この他にも、24日の阪急戦で巨人の山田潔が、27日の阪急戦でグ軍の丸山二三雄がサヨナラ打を放ち、4試合でサヨナラ決着。


 タ軍は24日のゴ軍戦で9盗塁を記録。


 阪急は27日のグ軍戦で10失策を記録。


2019年11月19日火曜日

打球鬼ごっこ


 さて、山田伝と安井亀和との「鬼ごっこ」をお伝えしたところですが、そもそもベースボールが日本に伝来した当時、「打球鬼ごっこ」と呼ばれていたことは多くの方もご存じのことと思います。

 ベースボールが急速に日本中に普及していった理由は、当時の小学校の教科書にベースボールが「打球鬼ごっこ」として紹介され、プレーの仕方などを教わった子供たちに大人気となったというのが「定説」となっています。


 明治18年3月に刊行された「西洋戸外遊戯法」にベースボール「打球鬼ごっこ」が解説されています。「西洋戸外遊戯法」は「国立国会図書館デジタルコレクション」で電子化されており、簡単にインターネットで観ることができますのでご確認ください。


 「西洋戸外遊戯法」以外にも、当時の教科書の「指導書」が複数残されています。当ブログが所有しているのは明治19年10月に刊行された「小学遊戯法」で、ここでは「打球鬼」としてベースボールのやり方等が解説されています。既にこの時点では、「打球鬼ごっこ」は「打球鬼」と略して普及していたようです。


 中馬庚がベースボールを「野球」と訳したのは明治27年のことで、翌28年2月に「一高野球部史」が発行され、明治30年に「野球」が刊行されることとなります。



*明治19年10月に刊行された、当時の小学校の教科書の「指導書」です。

*打球鬼(ベースボール)のルールややり方が解説されています。

*こちらはバッティングの指導法。どうも打率が上がらないので、当ブログも見習わなければ(笑)。


*こちらは明治30年に刊行された中馬庚の名著「野球」。


*当ブログが所有しているのは増補第八版で、青井鉞夫により「技術論」が増補されています。
但し、初版でも「技術論」は青井が書いていたと考えられます。中馬は教育者であり「野球」は素人レベル、青井は日本野球史初期の名投手です。

*第八版は明治35年10月1日に刊行されました。中馬の印鑑が貴重ですね(笑)。

史上最大の珍プレー


 「珍プレー」の元祖と言えば「おでこにぶつけた宇野」というのが定説となっていますが、当ブログは、宇野事件より35年前に起こった「山田伝と安井亀和との『鬼ごっこ』」こそが「史上最大の珍プレー」であることを「発見」しました。

 昭和21年5月27日、西宮球場で行われた阪急vsグレートリング4回戦における3回裏グ軍の攻撃でその「事件」は起こりました。


 グ軍は3回裏、先頭の安井亀和が左前打を放って出塁、筒井敬三は左飛に倒れますが、岡村俊昭も中前打を放って一死一二塁、ここで天保義夫の二塁牽制が悪送球となってセンターに抜けたところから物語は始まります。


 「雑記」欄には「天保の悪投に乗じて進まんとするを中堅山田、安井を挟んでアウトとした。この時二進した岡村、塁を離れたので併殺さる。」と書かれています。


 そして、スコアカードには「天保の悪送球で三塁に進んだ安井が一旦本塁方向に走ったが『8B』によりタッチアウト」、「岡村も『8B』によりタッチアウト」と書かれています。


 すなわち、一旦本塁方向に進んだ安井が追ってくる山田から逃れるため三塁ベースを踏んで二塁方向に逆走し、追い付いた山田が二塁ベース付近で安井にタッチ、更に、二塁に進んでいた一走岡村が離塁したところに山田がタッチしてこちらも「8B」によりアウトでダブルプレー。記録は山田伝の「無捕殺併殺」となりました。


*(注)「8B」とは、中堅手「8」が二塁「B」で刺殺を記録したことを意味します。


 天保には悪送球による「失策」が記録されているので、一旦安井が三塁に進塁したのは間違いありません。そこから本塁方向に進んで山田が追いかけてきたとしても、三塁ベースに戻って止まっていれば単なる「天保の二塁牽制悪送球による進塁」で済んでいた訳ですが、何故か安井は二塁方向に逆走しました。


 足に自信のある安井が、俊足として定評のあるベテラン山田に「挑戦」したのかもしれません。天保の二塁牽制悪送球で二走安井が三塁に進むのは当然の成行きですが、バックアップした山田がボールを持ったまま内野方向に走ってきたのを見て、チャレンジ精神がめらめらと燃え盛ったのではないでしょうか。三塁ベースに達していた安井は山田に挑戦を挑むかのように本塁方向に走り出し、山田がそれを追ってピッチャー方向から安井を追い詰め、「ヤバい!」と感じ取った安井が逆方向に逃げました。安井としては、野球のルールなどよりアスリートの本能として山田との「鬼ごっこ」に勝ちたかったのではないでしょうか。


 山田も近くの野手に送球すればよいものを、自ら安井を追いかけ回したのですから「役者」ですね。


 岡村は安井が二塁ベースに戻ったと判断し、占有権は安井にあるのだから自分はベースを離れたがその前に安井がタッチアウトになっていたというところでしょうか。

 岡村のアウトは付け足しとして、山田と安井の「鬼ごっこ」は、「宇野事件」を凌駕する「史上最大の珍プレー」に認定できると、当ブログは明言させていただきます!


*「雑記」欄には「天保の悪投に乗じて進まんとするを中堅山田 安井を挟んでアウトとした。この時二進した岡村 塁を離れたので併殺さる。」と書かれています。

*スコアカードには天保の二塁牽制悪送球(1’-4)で三塁に進塁した安井が一旦ホームに向かいかける(本塁方向への矢印)が、「8B」によりタッチアウト(センター山田に二塁ベースでタッチされた)と書かれています。
そして、一走岡村も「8B」によりタッチアウト、併殺が記録されました。

*この試合でセンター山田の刺殺は4個で併殺が1個。センターフライは2個だけで、「無捕殺併殺」による刺殺2個を加えて合計4個となります。


2019年11月18日月曜日

21年 阪急vsグレートリング 4回戦


5月27日 (月) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11  計 
2 0 0 0 2 2 4 0 0  0   0  10 阪急 12勝6敗 0.667 天保義夫 笠松実 前川八郎 
1 0 0 0 6 2 0 1 0  0  1X 11 グ軍 8勝8敗 0.500 別所昭 清水秀雄 

勝利投手 清水秀雄 4勝2敗
敗戦投手 前川八郎 2勝2敗 

二塁打 (急)三木、青田、坂田 (グ)別所、安井、丸山

勝利打点 (グ)丸山二三雄 1


丸山のサヨナラ打で決着

 第1試合に1時間53分を要したことから、西宮の第2試合は午後3時25分、天保と別所の先発で試合開始。

 阪急は初回、一死後上田が左前打で出塁、青田の三遊間ヒットで上田は三塁に進み一死一三塁、野口明のニゴロで三走上田がホームに突っ込むが、セカンド安井からのバックホームにタッチアウト、二死一二塁から三木のレフト戦二塁打で二者還り2点を先制する。


 グ軍は1回裏、先頭の安井の当たりは遊ゴロ、これをショート尾西がエラー、筒井敬三の当りは右前に抜けるがライト髙橋敏が一塁に送球してアウト、このライトゴロの間に安井は三進、岡村の右犠飛で1-2と追い上げる。高橋が記録したライトゴロが波乱の展開の幕開けとなった。


 グ軍は2回裏、先頭の堀井が中前打、木村の遊ゴロで堀井は二封、別所の遊ゴロが「6-4-3」と転送されるがファースト野口明が落球してゲッツーならずアウトは木村の二封だけ、八番ファーストに入っている清水秀雄が四球を選んで二死一二塁、天保の二塁牽制が悪送球となって二死一三塁、桶川隆の遊ゴロで清水が二封されてスリーアウトチェンジ。この回のアウトは全て「6-4」の二塁フォースアウトであった。阪急のショート尾西には既に5個の打球が飛んでいる。


 グ軍は3回裏、先頭の安井が左前打を放って出塁、筒井は左飛に倒れるが、岡村も中前打を放って一死一二塁、ここで天保の二塁牽制が又も悪送球となってセンターに抜け、二走安井は三塁に進み、バックアップしたセンター山田伝が内野に走ってくると安井はホームに向かって走り出す。これを山田が快足を飛ばして追走、山田はピッチャー方向から回り込んだのか、今度は安井が三塁から二塁ベースに逃げるが山田の方が足が速くタッチアウト、一走岡村は二塁ベースを回っていたが、二塁を踏まずに一塁に戻ってしまいアウトが宣告されてスリーアウトチェンジ。山田に「無捕殺併殺」が記録されたこのプレーは「史上最大の珍プレー」の可能性が高いので、別掲で詳述することとして実況中継を続けます。


 阪急は5回表、先頭の天保が四球で出塁、尾西の三ゴロをサード山本一人がエラー、トップに返り山田が四球を選んで無死満塁、上田はストレートの押出し四球を選んで3-1、青田の三ゴロをサード山本が三塁ベースを踏んで二走山田を三封する間に三走尾西がホームインして4-1とリードを広げる。なお一死一二塁から野口明のセカンドライナーに二走上田が戻れず「4-6」と渡ってダブルプレー。


 グ軍は5回裏、先頭の清水が右前打で出塁、桶川の投ゴロを天保がこの日3つ目の二塁への送球ミス、トップに返り安井が一塁線にバントヒットを決めて無死満塁、筒井の遊ゴロをショート尾西がエラーする間に三走清水が還って2-4と反撃開始、岡村は三振に倒れて一死満塁、山本の三塁への緩いゴロをサード三木が一塁に送球するがセーフ、山本には内野安打が記録され、この間に三走桶川がホームイン、二走安井も快足を飛ばしてホームに突っ込み、ファースト野口明が本塁に送球するが悪送球となって安井が生還し4-4の同点、一走筒井は三塁に、打者走者の山本は二塁に進んで一死二三塁、堀井の右前タイムリーで5-4と逆転、木村の三ゴロの間に三走山本が還って6-4、別所が左中間にタイムリー二塁打を放ちこの回6点、7-4とする。阪急ベンチはここで先発の天保をあきらめ笠松をリリーフに送り後続を抑える。


 阪急は6回表、一死後下社の当りはニゴロ、これをファースト野口明が落球、二死後笠松が四球を選び、尾西に代わる代打荒木茂もストレートの四球で二死満塁、トップに返り山田が中前に2点タイムリーを放ち6-7と1点差に迫る。続く上田に代打野口二郎が起用されるが三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。


 阪急の二遊間は、ショートには代打の荒木がそのまま入り、セカンドには代打した野口二郎に代わって今西錬太郎が入る。昭和22年から2年連続20勝投手となる今西は、この年は内野手として登録されている。4月28日に前川のリリーフで投手としてプロ入り初出場、この日が野手デビューとなった。10月6日の対グ軍15回戦ではスタメンセカンドで出場することになる(日本プロ野球私的統計研究会様「スタメンアーカイブ」参照)。


 グ軍は6回裏、先頭の桶川が中前打で出塁、トップに返り安井が右中間に二塁打を放って無死二三塁、筒井は三振に倒れるが、岡村が四球を選んで一死満塁、山本の中犠飛で8-6、二走安井もタッチアップから三進、岡村が二盗を決めて二死二三塁、堀井のニゴロをセカンド今西がファンブル、白球を拾って一塁に送球するがセーフ、今西にエラーが記録される間に三走安井が還って9-6、二走岡村も三塁ベースを蹴ってホームを狙うがファースト野口明からの送球にタッチアウトとなってスリーアウトチェンジ。


 阪急は7回表、先頭の青田が中越えに二塁打、一死後三木のスウィングがキャッチャー筒井のミットに当たり打撃妨害、続く下社のカウントがツーボールナッシングとなったところでグ軍ベンチは先発の別所に代えてファーストから清水をマウンドに送るが、下社は四球を選んで一死満塁、坂田のレフト戦二塁打で二者還り8-9と1点差、なお一死二三塁から前川が右前に逆転の2点タイムリーを放ち10-9と試合をひっくり返す。


 グ軍は8回裏、先頭の安井が二塁に内野安打、筒井の左飛で安井がタッチアップから二塁に進む好走塁、岡村も左飛に倒れて二死二塁、山本の三ゴロをサード三木が一塁に悪送球する間に二走安井が還って10対10 の同点に追い付く。更に山本が二盗を決め、キャッチャー坂田の二塁送球が悪送球となって山本は三進、しかし堀井は三振に倒れて同点止まり。


 9回からは試合が落ち着き11回裏へ。


 グ軍は11回裏、先頭の岡村が二塁に内野安打、山本が中前打で続いて無死一二塁、堀井の投ゴロをピッチャー前川は三塁に送球して岡村は三封、一死一二塁となってグ軍ベンチは櫛田由美彦に代えて代打に丸山二三雄を起用、丸山のカウントは1球、2球と外れてツーボールノーストライク、次の3球目に狙いを定めた丸山がバットを振り抜くと打球は右中間を抜けるサヨナラ二塁打、グ軍が激闘を制す。


 投手・丸山二三雄はこの年25勝をマークして全盛期を迎えるが、打者・丸山二三雄もこの一打で強烈な印象を残すこととなった。


 この試合で阪急は10失策を記録した。その内6個が悪送球、グ軍の足を警戒した結果であろう。10個は全て実況でお伝えしていますので確認してみてください。


 色々なことがあって試合時間は2時間5分、試合終了は午後5時30分であった。5月後半の日の入りは午後7時3分くらいなので、まだ球は見える。



2019年11月17日日曜日

21年 セネタースvsタイガース 2回戦


5月27日 (月) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 1 0 0 1 0 2 セ軍 7勝9敗 0.438 黒尾重明 
0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 タ軍 9勝7敗 0.563 呉昌征 

勝利投手 黒尾重明 1勝2敗
敗戦投手 呉昌征     3勝1敗 

二塁打 (セ)長持、一言

勝利打点 (セ)飯島滋弥 4


飯島が勝負強さを見せる

 後楽園の第2試合は、第1試合終了から47分後の2時52分開始。この時点で西宮の第1試合はパ軍最終回の攻撃中でまだ終了していない。

 セ軍は開幕から四番には飯島滋弥が座っていたが、この日大下弘がプロ入り初の四番に入った。大下はここまで53打数8安打、打率1割5分1厘で現在5試合連続無安打と低迷を続けており、大下が当たってきたから四番に据えたというよりも、チームが6勝9敗と調子が上がってこないので、横沢三郎監督が何らかのテコ入れが必要と判断して飯島と大下の三、四番を入れ替えたと見るのが妥当であろう。セネタースで四番を打てるのは飯島と大下しかおらず、実際、シーズン終了まで四番を張ったのは飯島と大下だけである(日本プロ野球私的統計研究会様「スタメンアーカイブ」参照)。


 セ軍は初回、先頭の一言多十が四球を選んで出塁、横沢七郎は三邪飛に倒れるが、一言が二盗に成功、飯島は左邪飛に倒れて二死二塁、大下のカウントがワンボールツーストライクとなったところで一言が三盗を試みるがキャッチャー池端忠夫からの送球にタッチアウト。ここはツーストライクになったところなので左の大下とは言えこの三盗はあり得る。この辺りにも横沢三郎監督のチーム状況打開策がうかがわれる。


 セ軍は2回表、打ち直しとなった大下が中前に6試合ぶりのヒットで出塁、しかし黒尾重明の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。3回も一死後熊耳武彦が中前打、4回も先頭の横沢が四球で歩くが後続なく無得点。


 セ軍は5回表、一死後長持栄吉がライト線にライナーの二塁打、熊耳が左前にタイムリーを放ち1点を先制する。


 タ軍は5回裏、一死後小俣が四球を選んで出塁、二死後長谷川が右前打、黒尾がボークを犯して二死二三塁、ここで呉昌征が投前にセーフティバント、しかし三走小俣のスタートが遅れて三本間に挟まれ「1-2-5」と転送されてタッチアウト、打者と走者の意思疎通を欠いていたようだ。


 タ軍は7回裏、先頭の藤村が四球を選んで出塁、富樫の右前打で藤村は三塁に進んで無死死一三塁、小俣に代わる代打渡辺誠太郎が左前に同点タイムリーを放ち1-1と追い付く。なおも無死一二塁のチャンスが続くが、池端の投前送りバントは正直過ぎて黒尾が三塁に送球、二走富樫は三封され、サード横沢が一塁に送球して池端もアウト、ダブルプレーで二死二塁、長谷川は四球を選んで二死一二塁、呉の捕邪飛をキャッチャー熊耳が落球、呉は命拾いしたが、ここは黒尾が踏ん張り呉は三振、同点止まりに終わる。


 セ軍は8回表、一死後一言が右中間をライナーで抜く二塁打、呉の二塁牽制が悪送球となって一死三塁、横沢は投飛に倒れて二死三塁、ここで三番飯島が左前にタイムリーを放ち2-1と勝ち越す。


 タ軍は8回裏、一死後御園生が左前打で出塁するが、二死後キャッチャー熊耳が御園生の二盗をを刺してスリーアウトチェンジ。


 タ軍は9回裏、先頭の藤村が右前打で出塁、富樫の当りも右前に抜けるが、ライト上口政が一塁に送球して富樫はアウト、ライロゴロが記録されて一死二塁、渡部は四球を選んで一死一二塁、池端の遊ゴロで渡辺は二封されて二死一三塁、代走小林英一が二盗を決めて二死二三塁、しかし長谷川の打球は頭上高く上がり、今度はキャッチャー熊耳ががっちり捕球して試合終了。


 黒尾重明は5安打6四球2三振の完投でプロ入り初勝利を飾る。崩れかかる場面もあったが、同点に追い付かれた7回裏二死一二塁で、呉の捕邪飛を熊耳が落球したところで踏ん張り呉を三振に切って取ったところが最大の見せ場であった。


 横沢三郎監督は飯島と大下の三、四番を入れ替え、その飯島が決勝打を放った。飯島は4個目の勝利打点を記録して巨人の多田文久三と並んで現在勝利打点トップ。セ軍の新四番大下も2安打を記録して復調の兆しが見えてきた。


*飯島滋弥の連続写真直筆サイン入り。二リーグ分裂後、全盛期の頃の打撃フォーム。

2019年11月15日金曜日

21年 中部日本vsゴールドスター 4回戦


5月27日 (月) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 中部 5勝9敗2分 0.357 森井茂 
0 0 1 0 0 0 0 0 X 1 ゴ軍 7勝9敗1分 0.438 石田光彦 

勝利投手 石田光彦 3勝5敗
敗戦投手 森井茂     5勝4敗 

勝利打点 (ゴ)大友一明 2


石田光彦、3安打完封

 後楽園の第1試合は西宮に遅れること4分、森井茂、石田光彦両ベテランの先発で午後1時4分、島球審の右手が上がりプレイボール。

 中部は5月20日以来1週間ぶりの試合、開幕2戦目から四番を打ち続けてきたファースト小鶴誠が欠場し、20日のタ軍戦に続いてショート金山次郎も欠場する。四番には加藤正二が入り、二番ファースト笠石徳五郎、五番サード木下政文、七番ショート藤原鉄之助のオーダーとなる。このあたり、赤嶺軍団のきな臭い動きが見え隠れする。


 序盤は中部が押し気味に試合を進める。初回こそ三者凡退であったが、2回表、一死後木下が左前にライナーのヒット、二死後木下が二盗を決めるが、藤原は投ゴロに倒れて無得点。


 中部は3回表、先頭の森井が四球を選んで出塁、鈴木秀雄のニゴロでランナーが入れ替わり、石田からの一塁けん制をファースト菊矢が逸らす間に鈴木は二進、岩本が四球を選び、笠石は二飛に倒れるが、古川もストレートの四球を選んで二死満塁、しかし四番加藤は中飛に倒れて無得点。


 ピンチの後にはチャンスあり、ゴ軍は3回裏、一死後九番坂本勲がライトにヒット、トップに返り酒沢の右前打で坂本は三塁に進んで一死一三塁、ここはエンドランでしょう。大友一明の中飛で三走坂本はタッチアップからスタート、一走酒沢も少し遅れてタッチアップからスタート、センター古川からの返球をカットしたピッチャー森井は二塁に送球して酒沢はタッチアウト、しかし坂本の本塁生還の方が早く得点が認められて1点を先制する。記録は併殺であるが大友には打点が記録されており、これが決勝点となったため大友には「犠飛」による「勝利打点」が記録される。


 ゴ軍先発の石田光彦は尻上がりに調子を上げていき、4回と7回に藤原にヒットを許しただけ、結局3安打4四球無三振で今季2度目の完封、3勝目をマークする。本領を発揮しないことの方が多い石田であるが、この日は本来の力を発揮、まだまだ切れ味鋭いピッチングは健在である。


 森井茂も8回を完投して5安打1四球1三振1失点であった。


 「日本野球年鑑」によると、3回表中部の攻撃で、二死満塁からの加藤の中飛はセンター坪内の美技に阻まれたものであったとのこと。また、石田はシュートが冴えていたとのことである。


 ゴ軍の決勝点の場面については「日本野球年鑑」では触れていないが、一走酒沢政夫は、センター古川がキャッチした位置から坂本の本塁突入がクロスプレーになると判断して、少し遅れてスタートを切ったのではないか。センター古川からの返球を中継したピッチャー森井は、まだ序盤であったことから本塁で無理には勝負せず、確実に二塁でアウトを取ったと見るべきか。ベテラン酒沢による坂本のホームインをアシストする好走塁と評価したいところ。これが本塁生還より早くアウトになっていれば単なる凡走であるが、計算ずくであったでしょう。


 後楽園のこの試合は1時間1分で終了、西宮は乱戦となっており、まだ5回頃か。


*大映時代の選手名鑑に残された酒沢政夫の直筆サイン。この試合では味のある走塁を見せた。「昨年大映に残った唯一の選手」ということは、この選手名鑑は昭和25年のものということになる。「年齢」は「数え年」で書かれることもあるので、年度の特定には使いにくい。

2019年11月14日木曜日

訂正のお知らせ⑤(重要)


 2019年10月15日付け「21年 第3節終了時点 打撃成績 」において、藤村冨美男の成績について重要な変更がありますのご報告いたします。

 藤村の塁打数を「14」、長打率を「0.519」、OPSを「1.003」とお伝えしていましたが、間違いがあり、正しくは
 塁打数「13」
 長打率「0.481」
 OPS   「0.966」
でした。 


 当ブログでは、全選手の個人記録をエクセルシートに打ち込みながら実況中継を続けておりますが、集計用シートの関数設定に一部不備があったことが原因です。本文は訂正済みです。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い申し上げます。

代走 高山泰夫


 実況でお伝えしたとおり、昭和21年5月24日、後楽園球場で行われたゴールドスターvsタイガース4回戦は、タ軍が1対3のビハインドで迎えた9回裏に3点を取って逆転サヨナラ勝ちをおさめました。

 もう一度タ軍9回裏の攻撃を振り返ってみましょう。


「先頭の池端忠夫の遊ゴロをショート酒沢政夫が一塁に悪送球、打者走者の池端は二塁に進んで代走に小林英一が起用され、野崎泰一に代わる代打渡辺誠太郎の遊ゴロを再びショート酒沢がエラー、この間に二走小林が還って2対3、無死一塁から長谷川善三が送りバントを決めて一死二塁、トップに返り呉昌征が四球を選んで一死一二塁、ここでダブルスチールを決めて一死二三塁、金田正泰が右前に決勝の2点タイムリーを放ち、タ軍が劇的な逆転サヨナラ勝ちを飾る。」


 実況でお伝えするのを忘れていたのですが、遊失で一塁に生きた渡辺誠太郎に代えて代走に高山泰夫が起用され、金田の逆転サヨナラタイムリーの引き金となったダブルスチールにおいて、二塁走者として貴重な三盗を成功させたのが高山でした。


 高山は岐阜商業時代、昭和15年の第17回センバツ大会では控え選手でしたが、代打で3打数3安打を記録、特筆されるのは決勝戦で、0対0で迎えた8回裏一死満塁で代打に起用され、京都商業の神田武夫から決勝打を放って岐阜商業に優勝をもたらしました。


 高山はこの活躍により、控え選手としては異例の大会表彰選手に選ばれ、「美技賞」を獲得しています。プロに入っても、「代走」として大仕事をやってのけました。


 高山がプロで記録した通算盗塁数は2個だけ、昭和21年はこの1個のみとなります。大一番で大仕事をする選手ですね。

 なお、当日の実況中継は、高山泰夫が代走に起用された部分を加筆・訂正させていただいております。


 高山泰夫については、2014年11月15日付け「勝負度胸」もご参照ください。
https://shokuyakyu.blogspot.com/search?q=%E9%AB%98%E5%B1%B1%E6%B3%B0%E5%A4%AB


*昭和15年第17回センバツで表彰選手に選ばれ「美技賞」を獲得した高山泰夫。(「選抜高等学校野球大会 50年史より)





2019年11月13日水曜日

21年 巨人vsパシフィック 1回戦


5月27日 (月) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 1 2 3 0 0 0 6 巨人 10勝7敗 0.588 諏訪裕良 近藤貞雄 
1 0 0 3 0 0 0 0 0 4 パ軍 8勝11敗1分 0.421 湯浅芳彰 井筒研一 

勝利投手 近藤貞雄 4勝2敗
敗戦投手 井筒研一 3勝5敗 

二塁打 (巨)黒沢、多田 (パ)森下

勝利打点 (巨)多田文久三 4

猛打賞 (巨)呉新亨 3、山川喜作 2 (パ)森下重好(4安打) 4


多田が値千金の決勝二塁打

 第5節の最終日は後楽園と西宮で2試合ずつ。西宮の第1試合は諏訪と湯浅の先発で午後1時丁度、金政主審の右手が上がりプレイボール。この試合の審判員は金政と杉村の二氏。関西で同日に西宮と藤井寺で試合がある時は二氏審判となるが、西宮で2試合の日に二氏審判は今季初めてである。人繰りがつかなかったのか。

 第5節に入ってこのカードはようやく初対戦。


 巨人は初回、先頭の呉新亨が右前打で出塁、しかし続く山川の一二塁間のゴロが一走呉に当たって守備妨害、千葉と黒沢が倒れて無得点。


 パ軍は1回裏、今季初めてスタメン一番に起用された木暮が3球ファウルで粘って四球で出塁、辻井と小島は共に中飛に倒れるが、藤井の右前打で二死一三塁、森下がレフト線に二塁打を放ち1点を先制する。


 巨人は3回表、先頭の山田潔の当たりはニゴロ、これをセカンド小島がファンブル、無死一塁となったが記録はエラーでこの時点で山田は「ブ男」に逆戻り、トップに返り呉の中前打で山田は三塁に進んで無死一三塁、山川は三振に倒れて一死一三塁、千葉の遊ゴロで三走山田がスタート、ショート松井は山田を追い詰め三本間で挟殺プレー、松井がキャッチャー伊勢川に送球して伊勢川は山田を三塁ベースに追い詰める。するとここに一走呉が駆け込んできて三塁ベースに「雪隠詰め」、三塁ベース上の二人に対して伊勢川はセオリーどおり山田、呉の順にタッチ、山田は占有権が自分にあることを理解しており三塁ベースから離れなかったため呉が「6-2C」でタッチアウト、打者走者の千葉は二塁に進んでおり二死二三塁となる。山田がルールに疎くて先にタッチされた自分がアウトと勘違いしてベースを離れたら、伊勢川が透かさず山田に再度タッチすればダブルプレーとなるところだが、山田はルールを理解していた。この「解読」にはある程度の「想像」も加味していますが、ベテラン伊勢川と山田であればこうであったであろうことは容易に「想像」できる。スコアカードの解読とは、単に記号の意味を覚えるだけではなく、そのプレーの当事者の特性を考慮しながらどのようなプレーが行われたかを想定する「想像力」が必要となる。「慶応式スコアカード」では、「早稲田式スコアカード」以上に「想像力」が試される。続く黒沢はストレートの四球で二死満塁、多田は三邪飛に倒れて無得点。


 巨人は4回表、二死後諏訪が右前打で出塁、山田はストレートの四球を選び、トップに返り呉も四球を選んで二死満塁、山川の中前タイムリーで1-1の同点、二走山田も三塁ベースを蹴って逆転のホームを狙うが、センター森下からのバックホームにタッチアウトとなって同点止まり。


 パ軍は4回裏、先頭の湯浅が中前打で出塁、松井の遊ゴロの間に湯浅は二進、平野の中前打で一三塁、トップに返り木暮が3打席連続の四球を選んで一死満塁、キャッチャー多田がパスボールを犯して三走湯浅が還り2-1、二死後小島が四球を選んで満塁、藤井がセンター左に2点タイムリーを放ち4-1とリードを広げる。


 巨人は5回表、一死後黒沢がレフト線に二塁打、パ軍藤本定義監督はここでレフトを木暮から富松に交代、多田が中前にタイムリーを放ち2-4、パ軍は更にセンター森下とレフト富松を入れ替え、林は遊直に倒れるが、ショート松井からの二塁送球が大きく逸れる間に一走多田は一気に三塁に進む。松井の二塁送球がどのような意味を持つかは不明、無駄な送球であった可能性が高い。藤本の遊ゴロを又も松井がエラーする間に三走多田が還って3-4と1点差に迫る。開幕から活躍を続けてきた松井だが、このところちょっと様子がおかしい。


 1点差に追い上げたところで、巨人は5回から先発の諏訪に代えて近藤をマウンドに送る。


 巨人は6回表、先頭の山田が四球で出塁、トップに返り呉が左前打、山川が送りバントを決め、千葉が四球を選んで一死満塁、黒沢は一邪飛に倒れて二死満塁、ここで当りを取り戻してきた多田が左中間に走者一掃の二塁打、6-4と大逆転に成功する。


 リリーフの近藤は5イニングを2安打3四球2三振無失点にまとめて、4勝目をマークする。


 巨人は今節4戦4勝、多田文久三が3つの勝利打点を記録する活躍を見せる。昨日の山田潔のサヨナラ打も多田の二塁打からで、多田は4勝全ての決勝打に絡んだ。



*巨人3回の攻撃、「雪隠詰め」のシーン。


*「雑記」欄には「始め山田挟まれ結局呉が三塁でアウトする。」と書かれている。この解説がなくてもスコアカードだけで「雪隠詰め」が読み解ければ、「慶応式スコア」をマスターしたと言えます。

2019年11月12日火曜日

21年 阪急vs巨人 4回戦


5月26日 (日) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8  9  計 
0 0 0 0 0 0 0 0  0  0 阪急 12勝5敗 0.706 野口二郎 天保義夫 
0 0 0 0 0 0 0 0 1X 1 巨人 9勝7敗 0.563 藤本英雄 

勝利投手 藤本英雄 4勝2敗
敗戦投手 野口二郎 3勝1敗 

二塁打 (巨)多田

勝利打点 (巨)山田潔 1

猛打賞 (巨)近藤貞雄 1


打撃不振の山田潔がサヨナラ打!

 西宮の第2試合は野口二郎と藤本英雄の先発で午後3時7分、杉村主審の右手が上がりプレイボール。第1試合で三塁塁審を務めた阪急球団職員の片岡勝はこの試合では外された。

 試合は両投手による息詰まる投手戦となった。


 藤本は初回、一死後下社にレフト戦ヒットを許すが、青田を二ゴロ併殺に打ち取り波に乗った。2回、3回は三者凡退。4回、先頭の山田伝に四球を与え、一死後青田のスウィングがキャッチャー多田のミットに当たる打撃妨害で一二塁のピンチを招くが、野口明を一ゴロ、野口二郎を二飛に打ち取り無失点。5回も1四球を与えただけでここまで無失点。


 野口二郎は走者を出しながらのピッチング。初回、上田、尾西の二遊間が1つずつエラーを犯して二死一二塁のピンチを招くが、当たりの出てきた多田を左飛に打ち取り無失点。2回は近藤、3回は千葉にヒットを許すが無失点で切り抜け、4回は初めての三者凡退。5回は二死後呉新亨にヒットを許すが、呉の二盗をキャッチャー坂田が阻止してここまで無失点。


 後半に入っても藤本は快調なピッチング、6回は二死後青田に中前打を打たれて二盗を許すが、野口明を遊ゴロに打ち取る。7回、8回は三者凡退。


 野口二郎は6回、一死後千葉に四球を与えるが、ここも千葉の二盗を坂田が阻止、続く黒沢の投ゴロを野口が弾くがバックアップのショート尾西が黒沢を一塁に刺してバックが野口を盛り上げる。7回は二死後近藤と藤本に連打を浴びて一二塁のピンチを招くが、当たりの出ない山田潔を投ゴロに打ち取り無失点。8回も一死後山川に中前打から二盗を許すが、千葉を右飛、黒沢を左飛に打ち取り何とか無失点で切り抜ける。


 阪急は9回表、一死後青田が左前打を放って出塁、しかし野口明のニゴロが「4-6-3」と渡ってダブルプレー。


 巨人は9回裏、先頭の多田がレフト線に二塁打、林は三邪飛に倒れるが、近藤の左前打で一死一三塁、強打の藤本、当たっていない山田潔と続くここは藤本を敬遠して一死満塁、阪急ベンチはここで野口二郎に代えて天保義夫をマウンドに送り、巨人は諏訪を代打に起用する手もあったが山田がそのまま打席に向かい、天保の初球を二遊間にヒット、三走多田がサヨナラのホームを駆け抜け藤本の好投に報いる。


 藤本英雄は3安打2四球1三振で今季3度目の完封、4勝目をマークする。


 戦前は力任せのピッチングで四球から崩れるケースが目立った藤本は、戦後になってピッチングスタイルが変わった。一般には昭和22年の中日時代に肩を壊してから軟投派に移行したと言われているが、昭和21年の時点で戦前と投球内容が変わっていることは、「実況中継」を聞いている当ブログの読者であればご理解いただけるでしょう。


 開幕からショートで使われ続け、この試合まで46打数4安打、打率0割8分7厘と全く当りの出ていなかった山田潔がサヨナラ打を放った。内野の控えには戦前からのベテラン坂本、宮下、渡部がいるので諏訪の代打は当然考えられる場面であったが、藤本英雄監督は余程山田の守備を信頼しているのでしょう。因みにまだ中島治康は復帰していないので、開幕からこの時点での巨人の監督は藤本英雄。


 打率1割に満たない打者のことを、球界では「ブ男」と呼びます。私も東京六大学準硬式野球リーグ戦で、2年秋は開幕から使われ続けながらシーズン途中まで打率1割を切っていましたので身に沁みます。山田はこの一打で50打数5安打となり、打率を1割に乗せてきました。


*大映時代の選手名鑑に残された山田潔の直筆サイン。山田はこの年で巨人を去り国民リーグに移り、昭和23年から金星-大映で長く活躍を続ける。このユニフォームは昭和24~25年に使われたもの。(綱島理友著「日本プロ野球ユニフォーム大図鑑」参照)