2019年8月30日金曜日

21年 パシフィックvsタイガース 2回戦


4月30日 (火) 藤井寺

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 3 2 0 0 0 1 6 パ軍 2勝2敗 0.500 真田重蔵 
0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 タ軍 2勝2敗 0.500 野崎泰一 富樫淳 藤村冨美男 

勝利投手 真田重蔵 2勝0敗
敗戦投手 野崎泰一 0勝1敗 

二塁打 (パ)真田
三塁打 (タ)本堂

勝利打点 なし


タ軍、ミスを重ねて自滅

 本日の関西は藤井寺球場。その第1試合は後楽園と同時刻の午後1時ちょうど、パシフィックは真田重蔵、タイガースは野崎泰一の先発で、杉村正一郎主審の右手が上がりプレイボール。審判は杉村と金政の二氏。

 タ軍は1回裏、一死後金田正泰の当りは遊ゴロ、これをショート喜瀬正顕がエラー、喜瀬は前日の阪急戦で代打に起用されてプロ入り初出場、この日はスタメンショートに起用されて初プレーがエラーとなった。続く土井垣武が中前打、これをセンター富松信彦がファンブルする間に一走金田は三塁に進んで一死一三塁、本堂保次の投ゴロで三走金田が飛び出し三本間で挟殺、このプレーはスコアカードには「1-2-5-3」と記録されている。通常このケースでの本塁ベースカバーにはピッチャーが入るが、本堂の当りが真田の右か左を襲って真田は体勢を崩しながら本塁に送球したのか、それを見たファースト辻井弘が真田のホームベースカバーが遅れると見て自ら本塁に走って挟殺プレーに参加したものと考えられる。キャッチャー伊勢川真澄は、サードの平野徳松にトスした時点ではホームベースカバーには真田が入っていると思ったはず。この辻井の隠れたファインプレーで真田は命拾いした。続く御園生崇男は中飛に倒れて無得点。


 3回までノーヒットのパ軍は4回表、先頭の木暮力三は三振、ところがキャッチャー土井垣が捕球できず振り逃げ、通常振り逃げの場合ワイルドピッチかパスボールが記録されるが、この振り逃げには土井垣のエラーが記録されている。土井垣が捕球できなかったのを見て打者走者の木暮は一塁に走り、白球を拾い上げた土井垣の一塁送球が悪送球となったものである。続く辻井の右前打で無死一二塁、小島利男は中飛に倒れるが、森下重好が左前にヒット、レフト金田がファンブルする間に二走木暮が還って1点を先制、ワンヒットワンエラーによる得点で森下には打点は記録されていない。この間に一走辻井は三塁、打者走者の森下も二塁に進んで一死二三塁、伊勢川のニゴロで三走辻井がホームに突っ込み、セカンド乾国男がバックホームするがセーフ、野選が記録されて2-0、一死一三塁から喜瀬の左犠飛で3-0とする。



 パ軍は5回表、先頭の真田の当りは遊ゴロ、これをショート小林がエラー、トップに返り富松は四球、タ軍ベンチはここで先発の野崎から富樫淳にスイッチ、木暮は三塁へのヒットで無死満塁、辻井が押出し四球を選んで4-0、小島の左犠飛で5-0とする。

 タ軍は6回から三番手として藤村冨美男監督がマウンドに上がる。藤村はこの日はベンチスタートであった。

 パ軍は9回表、先頭の真田がライトに二塁打、トップに返り富松の一ゴロの間に真田は三進、藤村の三塁牽制が悪送球となって真田が生還、6-0とする。


 タ軍は9回裏、一死後本堂保次が左中間に三塁打、御園生崇男が左前にタイムリーを放ち1-6、小俣秀夫は中飛に倒れるが、乾に代わる代打渡辺誠太郎の左前打で二死一三塁と最後の反撃、しかし藤村は遊ゴロに倒れてゲームセット。


 真田重蔵は6安打2四球3三振で2試合連続完投勝利を飾る。


 パ軍の得点は全てタ軍のエラー絡みで野崎は5失点ながら自責点は1。藤村も失点1で自責点はゼロではあるが、これは自らの牽制悪送球によるもの。タイガースはミスを重ねて自滅した。


 攻走守に活躍し、特に初回の好守備で真田を助けた辻井弘は平安中学時代には昭和11年春夏の甲子園に出場、春は三番を打ちベスト4、夏は四番を打ち16打数8安打の活躍を見せて準優勝に貢献した。早稲田大学に進み昭和12年東京六大学野球秋季リーグ戦で打率3割9分1厘をマークして首位打者を獲得。プロ入り時点では29歳であったが3球団で主力打者として活躍を続け、通算837安打を記録することとなる。その最初の一歩が本日の活躍であった。



*右投左打の好打者・辻井弘。青田、小鶴、山本(鶴岡)、川上らと首位打者争いを繰り広げ、キャリアハイの2割9分8厘をマークした昭和23年大陽時代の選手名鑑より。


2019年8月29日木曜日

21年 ゴールドスターvs中部日本 2回戦


4月30日 (火) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 ゴ軍 1勝3敗 0.250 内藤幸三 
1 0 0 0 0 0 0 1 X 2 中部 3勝1敗 0.750 森井茂 

勝利投手 森井茂     3勝0敗
敗戦投手 内藤幸三 0勝2敗 

本塁打 (中)加藤正二 1号

勝利打点 (中)加藤正二 1


加藤正二、決勝ソロ

 後楽園の第1試合はゴールドスターが内藤幸三、中部日本が森井茂と両ベテラン投手の先発で午後1時ちょうど、池田豊主審の右手が上がりプレイボール。審判は池田、島の二氏。

 中部は1回裏、先頭の岩本章が四球を選んで出塁、続く金山次郎の三前送りバントをサード坂本勲がファンブル、犠打とエラーが記録されて無死一二塁、古川清蔵も四球を選んで無死満塁、小鶴誠の遊ゴロで一走古川が二封される間に三走岩本が還って1点を先制、これは併殺崩れであった可能性も高い。小鶴は二盗に失敗するが、服部受弘が四球を選んで二死一三塁、加藤正二の打席でダブルスチールを敢行するが、三走金山が「2-6-2」で刺されてスリーアウトチェンジ。


 ゴ軍は2回表、先頭の早川平一が四球を選んで出塁、内藤の一ゴロで早川は二封、大友一明が中前打を放って一死一二塁、坂本が左前に同点タイムリーを放ち1-1と追い付く。


 ゴ軍はこの後、3回から5回まで三者凡退と森井のスローボールが打てない。


 ゴ軍は6回表、先頭の田中宣顕が久しぶりのヒットとなる右前打で出塁するが二盗に失敗。7回、8回も森井に無安打に抑えられる。


 中部は3回裏、先頭の岩本が中前打、金山も四球を選んで無死一二塁とするが後続なく無得点。


 中部は7回裏、二死後岩本が四球から二盗に成功、金山は四球で二死一二塁、しかし古川が遊飛に倒れて無得点。


 中部は8回裏、二死無走者から加藤が起死回生のソロホームランをレフトスタンドに叩き込み2-1と勝ち越す。


 ゴ軍は最終回、先頭の坪内道則が四球を選ぶと果敢に二盗に成功、しかし菊矢吉男は三飛、早川に代わる代打石田光彦は左飛、最後は内藤が投ゴロに倒れて中部日本が接戦をものにする。


 森井茂は3安打4四球2三振の完投で開幕から3連勝。


 内藤幸三も中部打線を3安打に抑えたが、加藤の一発に泣いた。


 中部日本打線は岩本(18)、金山(19)、古川(17、18)、小鶴(25)、服部(16)、加藤(18)と6人のホームラン王(括弧内は本塁打王獲得年度)がずらりと並ぶ強力打線。21年度は大下の20本が突出するが、中部打線からは小鶴、古川、杉浦清、岩本の4人が本塁打ランキングベストテンに入ることとなる。


 決勝ソロを放った加藤正二は中央大学時代、昭和12年春季東都大学リーグ戦で打率5割7分7厘を記録し、2019年現在においても東都大学リーグ戦シーズン最高打率記録として残されている(参照:一般財団法人 東都大学野球連盟ホームページより)。



*加藤正二の直筆サイン(大映時代)


2019年8月27日火曜日

1日に2度の二桁与四球完投勝利


 お伝えしたように、昭和21年4月29日、後楽園の第2試合で一言多十が13与四球で完投勝利を飾ると、西宮の第2試合でも丸山二三雄が10与四球で完投勝利。

 一言の記録は野茂に更新されましたが、「1日に2度の二桁与四球完投勝利」の記録は永遠に不滅のアンタッチャブルレコードではないでしょうか。


 後楽園の試合終了は午後4時50分、西宮の試合終了は午後4時58分でした。



*丸山二三雄も10与四球完投勝利。


21年 グレートリングvsタイガース 1回戦


4月29日 (月) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 0 2 0 0 0 2 グ軍 1勝2敗 0.333 丸山二三雄 
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 タ軍 2勝1敗 0.667 野崎泰一 渡辺誠太郎 

勝利投手 丸山二三雄 1勝0敗
敗戦投手 渡辺誠太郎 0勝1敗 

勝利打点 なし


グレートリング、2安打で勝利

 西宮の第2試合はグレートリングが丸山二三雄、タイガースが野崎泰一の先発で午後3時16分、杉村正一郎主審の右手が上がりプレイボール。審判は杉村、二出川、金政の三氏。

 グ軍は初回、先頭の安井亀和の当りは三ゴロ、これをサード藤村冨美男がエラー、宮崎仁郎は四球を選んで無死一二塁、ここでダブルスチールを敢行するがキャッチャー土井垣武からの三塁送球に安井はタッチアウト、岡村俊昭は三振、山本一人は左飛に倒れて無得点。


 タ軍は1回裏、一死後金田正泰の当りは二ゴロ、これをセカンド安井がエラー、しかし本堂保次の三ゴロがファースト山本からショート桶川隆、更に山本に転送されて「3-6-3」のゲッツー。


 タ軍は2回裏、先頭の藤村が四球を選ぶと二盗に成功、土井垣の右前打で無死一三塁、御園生崇男が四球を選んで無死満塁、高山泰夫が押出し四球を選んで1点を先制、野崎の投ゴロで三走土井垣は本封、続く小林英一の投ゴロが「1-2-3」と転送されてゲッツー。


 グ軍は3回表、先頭の丸山がストレートの四球で出塁、筒井敬三は左飛に倒れるが、トップに返り安井が四球を選んで一死一二塁、タ軍藤村監督は早くも先発の野崎から渡辺誠太郎にスイッチ、宮崎の投ゴロを渡辺が三塁に送球して二走丸山は三封、岡村もニゴロに倒れて無得点。


 藤村監督は2回の盗塁、3回の継投策と積極姿勢がうかがえ、ショーマンシップが発揮されてきた。藤村の晩年にはこのショーマンシップが「排斥運動」を引き起こす原因となるが、まだまだ先のことである。


 タ軍は3回裏、一死後金田が四球で歩き、二死後二盗を試みるがキャッチャー筒井からの送球にタッチアウト。


 5回まで野崎-渡辺のリレーにノーヒットに抑えられてきたグ軍は6回表、先頭の安井の当りは遊ゴロ、これをショート小林がエラー、更に安井が二盗に成功、宮崎が三塁にヒットを放ち無死一三塁、岡村の右飛で三走安井はタッチアップから同点のホームを狙うがライト御園生崇男からのバックホームにタッチアウト、この間に一走宮崎はタッチアップから二塁に進み、山本は四球で二死一二塁、堀井数男がセンター左に同点タイムリーを放ち1-1、一走山本は三塁に走って二死一三塁、櫛田由美彦の三ゴロをサード藤村監督がエラーする間に三走山本監督が逆転のホームを踏んで2-1と試合をひっくり返す。一走堀井が三塁に向かったところで守備妨害を取られてスリーアウトチェンジ、山本のホームインは認められている。


 タ軍は6回裏、一死後金田が四球を選んで出塁、本堂の投ゴロが「1-6-3」と転送されるが二塁はセーフで一塁はアウト、ここはエンドランがかかっていたか、藤村の遊ゴロをショート桶川がエラー、二走金田は三塁に進んで二死一三塁、続く土井垣の打席で一走藤村がディレード気味にスタート、ピッチャー丸山が二塁に送球すると三走金田もスタート、しかしショート桶川がキャッチャー筒井に転送すると金田は三本間に挟まれ「1-6-2-5」でタッチアウト、ここは藤村監督が調子に乗り過ぎたか。


 タ軍は7回裏、先頭の土井垣が四球で出塁、しかし御園生の遊ゴロが「6-4-3」と渡ってゲッツー、ここから高山と渡辺が連続ヒット、しかし小林はニゴロに倒れて無得点。


 タ軍は8回裏、先頭の呉昌征が四球で歩くと金田が送って一死二塁、本堂も四球で一死一二塁、しかし藤村はキャッチャーへのフェアフライ、土井垣もニゴロに倒れて無得点。
 タ軍は9回裏、二死後渡辺が中前打を放って出塁、小林は四球、トップに返り呉も四球を選んで二死満塁と一打サヨナラのチャンス、しかし金田の打球は右飛に終わりゲームセット。


 丸山二三雄は4安打10四球2三振の完投で戦後初勝利を飾る。


 攻め勝っていたタイガースはあと1本が出ず10残塁で敗退。


 グレートリングは2安打で勝利、その2安打を6回に集中したのである。


 タイガースは4失策、その内の3つは藤村冨美男で、6回の決勝点も藤村のタイムリーエラーであった。



21年 中部日本vsセネタース 1回戦


4月29日 (月) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 中部 2勝1敗 0.667 林直明 松尾幸造 
4 0 0 0 2 0 0 0 X 6 セ軍 2勝1敗 0.667 一言多十 

勝利投手 一言多十 1勝1敗
敗戦投手 林直明     0勝1敗 

二塁打 (セ)横沢、熊耳

勝利打点 (セ)飯島滋弥 1

猛打賞 (セ)熊耳武彦 1


両軍22四球

 後楽園の第2試合は中部日本が林直明、セネタースが一言多十の先発で午後3時14分、池田豊球審の右手が上がりプレイボール。審判は池田と島の二氏。

 なお、スコアカードには「林貞明」のスタンプが押されていますが、これは単純な間違いの可能性がありますので、以降、「林直明」でお伝えします。改名の事実が判明した場合は、自動的に「訂正」とさせていただきます。

 セ軍は1回裏、先頭の横沢七郎から5者連続四球、必然的に四番飯島滋弥と五番長持栄吉は押出し四球で2-0、上口政の遊ゴロの間に三走大下弘が還って3-0、熊耳武彦が左前にタイムリーを放ち4-0、続く根津弘司もストレートの四球で一死満塁、中部の竹内愛一監督はここで先発の林をあきらめ松尾幸造をリリーフに送り、一言の遊ゴロが「6-4-3」と渡ってダブルプレー。

 セ軍先発の一言も荒れ模様で、初回は金山次郎、古川清蔵に連打を浴びるが後続を抑え、2回は松尾と鈴木秀雄に連続四球、3回、4回も四球の走者を出すが無失点で切り抜ける。

 中部は5回表、一死後岩本章がチーム5個目となる四球を選んで出塁、金山次郎が三塁線にバントヒットを決めて一死一二塁、古川清蔵の三ゴロをサード横沢が二塁に送球して金山は二封、セカンド根津がゲッツーを狙って一塁に転送するがこれが悪送球となる間に二走岩本がホームに還り1点返して1-4とする。

 セ軍は5回裏、飯島、長持が連続四球、上口が送って一死二三塁、熊耳が左中間に二塁打を放って二者を迎え入れ6-1と突き放す。この一打で勝負は決した。

 一言は相変わらずのピッチングで、6回は二死から3連続四球で満塁とするが岩本の当りがサードライナーとなって命拾い、7回は古川を四球で歩かせるが小鶴誠を三ゴロ併殺に打ち取り、8回も服部受弘を四球で出すが藤原鉄之助を投ゴロ併殺に打ち取る。

 8回まで10個の四球を与えてきた一言は9回、先頭の松尾をストレートの四球で歩かせると鈴木、岩本にも四球を与えて無死満塁、しかし金山を三振に仕留め、最後は一死満塁から古川を三ゴロ併殺に打ち取り完投勝利を飾る。

 一言多十の1試合13与四球完投勝利の記録は、1994年7月2日に野茂英雄が16与四球完投勝利で更新することになる。

 なお、2019年8月27日現在、「Wikipedia」には「中部日本が無死満塁などの場面で1試合で4併殺するなど拙攻に助けられ」と書かれているが、「4併殺」は事実であるが、実況のとおり「無死満塁」ではなく「一死満塁」の場面での併殺が事実である。

 林直明も先頭打者からの5連続を含む6個の与四球、松尾幸造も7回3分の2で3個の四球を与えて
おり、両軍22個の四球が入り乱れる乱戦となった。まともなピッチングをしたのは松尾だけであった。


*両軍22四球。「林直明」については「林貞明」のスタンプが押されているが、単純な間違いの可能性がある。



2019年8月26日月曜日

21年 阪急vsパシフィック 1回戦


4月29日 (月) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
1 0 2 0 0 0 0 2 0 5 阪急 2勝1敗 0.667 笠松実 天保義夫 
1 0 0 0 0 0 2 0 0 3 パ軍 1勝2敗 0.333 井筒研一 

勝利投手 天保義夫 2勝0敗
敗戦投手 井筒研一 0勝2敗 

二塁打 (急)下社

勝利打点 (急)前川八郎 1


西村監督の奇策的中、代打前川八郎、決勝死球を受く

 西宮の第1試合は午後1時5分、金政卯一主審の右手が上がりプレイボール。

 阪急は初回、先頭の上田藤夫が中前打で出塁、続く下社邦男も中前打、青田昇が死球を受けて無死満塁、三木久一は遊飛に倒れるが、野口明の中犠飛で1点を先制する。


 パシフィックは1回裏、先頭の富松信彦がストレートの四球で出塁、木暮力三の右前打で無死一三塁、辻井弘が中前に同点タイムリーを放ち1-1とする。


 パ軍は2回裏、松井信勝と平野徳松の連打で無死一三塁のチャンスを作るが、井筒研一は三邪飛、トップに返り富松は三振、木暮も右飛に倒れて無得点。


 阪急は3回表、二死後青田が2打席連続の死球を受けて出塁すると二盗に成功、三木は四球で二死一二塁、野口明が中前にタイムリーを放ち2-1と勝ち越し、髙橋敏も中前タイムリーを放って3-1とする。


 パ軍は5回裏、先頭の井筒が中前打で出塁、しかし富松の二ゴロで井筒は二封、木暮のセンター寄りのゴロをセカンド上田が捕球すると二塁ベースを踏んで一塁に送球しゲッツー。


 パ軍は6回裏、先頭の辻井が四球で出塁するが、小島利男の遊ゴロが「6-4-3」と渡ってゲッツー、直後に森下重吉が中前打、しかし伊勢川真澄は中飛に倒れて無得点。


 ちぐはぐな攻撃を続けてきたパ軍は7回裏、先頭の松井が中前打を放つと二盗に成功、キャッチャー坂田清春からの送球が悪送球となる間に松井は三進、平野が右前にタイムリーを放ち2-3、阪急の西村正夫監督はここで先発の笠松実から天保義夫にスイッチ、井筒が四球を選んで無死一二塁、トップに返り富松が送りバントを決めて一死二三塁、木暮の二ゴロの間に三走平野が還って3-3の同点に追い付く。


 阪急は8回表、先頭の野口明が中前打で出塁、高橋の右前打で野口が三塁に走り無死一三塁、坂田に代わる代打野口二郎は一飛、天保が四球を選んで一死満塁、ここで西村監督は尾西信一に代えて前川八郎を代打に起用、前川が押出しの死球を受けて4-3と勝ち越し、トップに返り上田の投ゴロは「1-2-3」と転送されるがキャッチャー伊勢川からの一塁送球が悪送球となる間に二走天保がホームに還って5-3とする。


 パ軍は8回裏、一死後森下の二ゴロをセカンド上田がエラー、伊勢川は右飛に倒れるが、松井がライト線にヒットを放ち二死一二塁、藤本定義監督はここで当たっている平野に代えて佐竹一雄を代打に起用、しかし佐竹は一飛に倒れて無得点。


 パ軍は9回裏、井筒に代わる代打喜瀬正顕が四球を選んで出塁、トップに返り富松に代わる代打湯浅芳彰は三振、木暮が右前打を放ち一死一二塁と最後の反撃を見せるが、辻井は投ゴロ、小島も投ゴロに倒れて試合終了。


 パシフィックは中盤のちぐはぐな攻撃が最後まで祟った。笠松がよく踏ん張ったとも言える。笠松は戦前からシュートを軸に内野ゴロを打たせるピッチングが持ち味、5回、6回と併殺に打ち取ったあたりにベテランの味が見え隠れする。


 藤本監督はここぞという場面で代打攻勢をかけてくるが、8回の二死一二塁の場面でここまで3打数2安打1打点1得点とラッキーボーイ的活躍の平野に佐竹を代打に送った采配には疑問が残る。


 尤も、佐竹と平野はこの後約10年プロで活躍し、佐竹は通算720安打、平野は通算359安打なので、打力の高い佐竹の素質を見抜いていた藤本の慧眼は評価できる。


 一方、西村監督は8回のチャンスに前川八郎を代打に送るという奇策がまんまと当たった。勝負の行方は、一寸先は闇ですね。



2019年8月24日土曜日

21年 ゴールドスターvs巨人 1回戦


4月29日 (月) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
1 0 0 0 0 1 0 0 0 2 ゴ軍 1勝2敗 0.333 石田光彦 
0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 巨人 1勝2敗 0.333 諏訪裕良 

勝利投手 石田光彦 1勝1敗
敗戦投手 諏訪裕良 0勝1敗 

二塁打 (ゴ)坂本、石田
三塁打 (ゴ)菊矢 (巨)山川

勝利打点 なし


石田光彦、戦後初勝利

 後楽園の第1試合はゴールドスターが石田光彦、巨人はプロ入り初登板となる諏訪裕良が先発。審判は島秀之助と池田豊の二氏。島主審の右手が上がり、午後1時ちょうどプレイボール。

 ゴ軍は初回、二死後坪内道則の当りは遊ゴロ、これをショート山田潔が一塁に悪送球、坪内が二盗を決め、菊矢吉男は四球を選んで二死一二塁、五番に入った石田がセンターにクリーンヒットを放ち二走坪内は三塁ストップ、しかしセンター呉新亨からの本塁送球をキャッチャー多田が後逸、この間に坪内がホームに還って1点を先制、一走菊矢は三塁に進んで二死一三塁、早川平一の打席で石田がディレードスチールを敢行するが「2-6-3」と渡ってタッチアウト、この走塁で石田には盗塁死が記録されている。


 ゴ軍は2回表、先頭の早川の当りは三ゴロ、これもサード山川喜作が一塁に悪送球、しかし早川の二盗をキャッチャー多田文久三が刺して無得点。


 4回まで2安打無得点の巨人は5回裏、先頭の山川が中越えに三塁打、トップに返り山田が四球から二盗を決めて無死二三塁、呉新亨が左前に同点タイムリーを放ち1-1、なおも無死一三塁とチャンスが続くが、千葉茂の打席で一走呉がディレード気味に塁を離れてピッチャー石田は一塁に送球、ここで三走山田がホームを狙うが、「1-3-6-5」と転送されてタッチアウト、この間に呉は二塁に進んで一死二塁、石田からの牽制に呉が飛び出したか再びディレードスチールを仕掛けたか、「1-4-6」の転送で呉もタッチアウト、千葉は右飛に倒れて同点止まり。


 ゴ軍は6回表、一死後菊矢がレフトに三塁打、続く石田の打席でキャッチャー多田がパスボール、菊矢が還って2-1と勝ち越す。


 巨人は7回裏、一死後諏訪が中前にヒット、しかし山川の遊ゴロが「6B-3」と渡ってダブルプレー。


 巨人は8回裏、先頭の山田が四球を選んで出塁、続く呉の捕邪飛で一走山田が戻れず「2-3」と渡ってダブルプレー。これはバントエンドラン失敗の可能性が考えられるが、スコアカードに「BT」の記載はない。「BT」の記載があったりなかったり混在しているので判定は微妙ですが、打って出ての捕邪飛でのゲッツーは考えにくい。


 巨人は9回裏、先頭の多田が四球を選んで出塁、スタメンファーストで出場している中尾輝三は三振、林清一の打席で多田が二盗を敢行するがキャッチャー辻功からの送球にタッチアウト、林も三振に倒れてゲームセット。


 石田光彦は5安打6四球5三振の完投で戦後初勝利を飾る。


 実況のとおり巨人はちぐはぐな走塁と守備のミスで勝てた試合を落としたの感が強い。同点に追い付いた4回の場面は、無死一三塁で千葉、黒沢と続くところで余計な走塁ミス。あれがなければ勝っていたのではないか。


 プロ入り初登板の諏訪裕良は9回を完投して5安打4四球2三振、2失点であるが守備に足を引っ張られたもので自責点は0であった。後に養子に入って「高野」姓に変わり、昭和25年の大洋時代には25勝をあげることになる。高野投手の息子さんは早稲田大学野球部時代は神宮で活躍した選手で、現在私が所属している還暦野球「品川ベースボールクラブ」でチームメイトです。とても70歳とは思えない強打者ですよ。普通の球場ならフェンスまで飛ばしますし。そもそも素人とは素質が違う。当たり前ですが・・・。



2019年8月22日木曜日

21年 阪急vsタイガース 1回戦


4月28日 (日) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 阪急 1勝1敗 0.500 前川八郎 今西錬太郎
0 3 0 0 1 0 2 0 X 6 タ軍 2勝0敗 1.000 呉昌征

勝利投手 呉昌征     1勝0敗
敗戦投手 前川八郎 0勝1敗

二塁打 (急)荒木

勝利打点 (タ)高山泰夫 1

猛打賞 (急)青田昇 2 (タ)小林英一 1


タ軍、強気の攻めが奏功

 第1試合が2時間5分を要したため、西宮の第2試合は午後3時35分試合開始。阪急先発の前川八郎は昭和13年以来の登板、タイガース先発の呉昌征は昭和15年以来の登板となる。

 タイガースは初回、先頭の金田正泰が右前打で出塁、御園生崇男は投飛に倒れて一死一塁、「スコアカードに「BT」の記載がないので送りバント失敗ではないようですが、可能性は否定できない。続く藤村冨美男の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。8年ぶり登板の前川八郎は取り敢えず無難な立ち上がり。

 タ軍は2回裏、先頭の本堂保次が右前打で出塁、続く土井垣武は三遊間を破り無死一二塁、この攻撃ぶりからすると、初回の御園生も打って出ての投飛だったかもしれない。富樫淳も強硬策で二ゴロ、この間に二者進塁して一死二三塁、高山泰夫が右前に先制タイムリーを放ち1-0、小林英一もセンター右にタイムリーを放ち2-0、先発投手に起用されて九番に入っている呉は左飛に倒れるが、トップに返り金田が中前にタイムリーを放ってこの回3点を先制する。

 前川は3回、4回とタイガース打線を三者凡退に退ける。

 タ軍は5回裏、先頭の小林が中前打で出塁、続く呉の三ゴロで野選が記録されて無死一二塁、スコアカードには「二塁送球」の記載がないが、サード三木久一が二塁に送球して間に合わなかったケース以外に野選が記録される可能性はない。トップに返り金田の打席で前川が二塁けん制、ベースカバーに入ったショート尾西信一が小林にタッチしてアウト、金田は左飛に倒れるが、御園生が右前打を放って一死一二塁、藤村の左前タイムリーで4-0とリードを広げる。

 前川は6回でマウンドを降り、7回から今西錬太郎がリリーフに出てプロ入り初登板。

 タ軍は7回裏、先頭の金田が四球を選ぶと初球に盗塁成功、2球目にキャッチャー日比野武が二塁に送球するがこれが大暴投となる間に金田が一気にホームに還って5-0、御園生も四球を選ぶと二盗に成功、この時の日比野の送球も高く逸れて御園生は三進、藤村も四球から二盗に成功、本堂保次の中犠飛で6-0と大きくリードする。

 呉は快調なピッチングを続けて8回まで6安打無失点。

 阪急は9回表、二死後日比野武に代わる代打山田伝が右前打で出塁、今西に代わる代打森田定雄が中前に戦後初ヒット、荒木茂のレフト戦二塁打で1点返してなお二死二三塁とするが、トップに返り上田藤夫が中飛に倒れて万事休す。

 呉昌征は9安打1四球1三振の完投、プロ入り2度目の登板で初勝利をあげる。

 タイガースは初回から強気の攻撃に徹したが、前川の球威の衰えを見抜いての判断でしょう。但し、前川から奪った10安打は全てシングルでミートに徹していました。前川を舐めていたのではないことをスコアカードが語っています。

 前川八郎は昭和13年でプロ野球を去ってから滝川中学の監督となり、別所昭と青田昇をプロに送り込んでいる。昭和21年でプロ野球からは2度目の引退。富士鉄広畑の監督として都市対抗でベスト4に進出する。なお、2019年8月22日現在、「Wikipedia」には「都市対抗野球大会に4度出場し、1961年には準優勝を果たしている」と書かれているがこれは間違いで、1961年都市対抗では準決勝で優勝した日本石油に0対2で敗退、3位決定戦でも大昭和製紙に0対3で敗れた(参照:都市対抗野球60年史)。文筆家であり、沢村の優子さんへのラブレターを代筆していたことでも知られている。

*前川は8年ぶり、呉は6年ぶりの登板。今西はプロ入り初登板であった。



2019年8月20日火曜日

21年 巨人vs中部日本 1回戦


4月28日 (日) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計 
0 2 0 0 0 1 0 0 0  1  4 巨人 1勝1敗 0.500 藤本英雄 
0 0 0 0 2 0 0 0 1 3X 6 中部 2勝0敗 1.000 西沢道夫 森井茂 

勝利投手 森井茂  2勝0敗
敗戦投手 藤本英雄 0勝1敗 

二塁打 (巨)藤本 (中)古川、金山
本塁打 (中)岩本章 1号

勝利打点 (中)岩本章 1

猛打賞 (中)岩本章 1


岩本章、逆転サヨナラスリーラン

 後楽園の第2試合は藤本英雄と西沢道夫の先発で午後2時55分試合開始。

 巨人は2回、一死後諏訪裕良が四球を選んで出塁、林清一が死球を受けると藤本も四球を選んで一死満塁、山川喜作が押出し四球を選んで1点を先制、トップに返り山田潔は二飛に倒れるが、呉新亨も押出し四球を選んで2-0とする。


 中部日本は1回裏、先頭の岩本章がストレートの四球で出塁、しかし金山次郎の送りバントは捕邪飛となって失敗、古川清蔵は左前打、小鶴誠は四球を選んで一死満塁、しかし服部受弘は遊飛、加藤正二も遊飛に倒れて無得点。


 中部は3回裏、先頭の岩本が左前打で出塁、しかし金山の三ゴロが「5-4-3」と渡ってゲッツー、ここで古川が左中間に二塁打、しかし小鶴は三振。4回裏も二死から連続四球でチャンスをもらうが後続なく無得点。


 ちぐはぐな攻撃を続けてきた中部は5回裏、先頭の岩本が四球で出塁すると今度は金山が送りバントを決めて一死二塁、古川は遊邪飛に倒れるが、小鶴が三塁にヒットを放って二死一三塁、服部受弘の打席で岩本が単独ホームスチールを決めて1-2、服部は初球を打って左前打、この打球の処理をレフト黒沢俊夫がもたつく間に一走小鶴が一気に生還して2-2の同点、黒沢にエラーが記録されているので服部に打点は記録されない。「服部は初球を打って」の実況はスコアカードのとおり、ということは、岩本の本盗は投球の間ではなく、藤本が服部に第一球を投じる前にディレードスチールを決めたことになる。


 巨人は6回、先頭の山川喜作がストレートの四球で出塁、トップに返り山田も四球、呉の一塁線バントが内野安打となって無死満塁、千葉茂は初球ボール、2球目ストライク、3球目ファウル、ここで中部日本の竹内愛一監督は西沢から森井茂にスイッチ、千葉が中犠飛を打ち上げて3-2とリードする。


 中部は6回から8回まで毎回ヒットを放つが無得点。


 中部は9回裏、先頭の岩本が四球を選ぶと二盗に成功、金山がレフト線に二塁打を放って同点に追い付き、試合は延長戦に突入。


 巨人は10回表、一死後藤本が左中間に二塁打、山川の二ゴロの間に藤本は三進、トップに返り山田は四球を選んで二死一三塁、呉が左前にタイムリーを放ち4-3と1点リード、山田は三塁に進んで二死一三塁、こでダブルスチールを敢行するが「2-6-2」と渡って山田は本塁タッチアウト。


 中部は10回裏、先頭の加藤が左前打で出塁、藤原鉄之助は左邪飛に倒れ、森井の遊ゴロの間に加藤は二進、8回に代走に出てからセカンドの守備に入っている鈴木秀雄がストレートの四球を選んで二死一二塁、ここでトップに返り岩本がレフトスタンドに本塁打、戦後初のホームランは劇的な逆転サヨナラスリーランとなった。



*岩本章の逆転サヨナラスリーランを伝えるスコアカード。5回の単独ホームスチールは小鶴の三塁ヒットで三塁に進んで服部の初球の前に記録された。服部の初球の前にディレードスチールを敢行したか、小鶴のヒットで三塁に進んだ流れでホームに還って「盗塁」が記録されたかのどちらかです。本来であれば、岩本の盗塁の場面のカウント欄に「’」が記されているべきなのですが。




2019年8月19日月曜日

21年 ゴールドスターvsセネタース 1回戦


4月28日 (日) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ゴ軍 0勝2敗 0.000 内藤幸三 
0 0 1 0 0 0 0 0 X 1 セ軍 1勝1敗 0.500 白木義一郎 

勝利投手 白木義一郎 1勝0敗
敗戦投手 内藤幸三     0勝1敗 

勝利打点 (セ)大下弘 1


白木義一郎、初勝利初完封!

 後楽園の第1試合は内藤幸三と白木義一郎との新旧両投手の先発で午後1時5分プレイボール。「旧」の内藤は30歳、白木は「新」と言っても26歳のベテランである。

 白木は3回までゴールドスター打線をパーフェクトに抑える立ち上がり。


 内藤も初回、先頭の横沢七郎と二番鈴木清一を連続三振、大物ルーキーの呼び声が高い大下弘も投ゴロに打ち取る。


 セネタースは3回裏、一死後白木がストレートの四球で出塁、こちらも前評判の高い白木に対して内藤は力が入ったか。トップに返り横沢もストレートの四球、鈴木もスリーボールツーストライクから四球を選んで一死満塁、内藤は続く大下にもストレートの四球、セ軍は押出しで1点を先制する。


 内藤は4回までに6四球を出すが5回以降は無四球ピッチング。


 ゴ軍は4回表、一死後田中宣顕がセンターにクリーンヒット、坪内道則も三遊間にヒットを放ち一死一二塁、しかし菊矢吉男は投ゴロ、早川平一はサードライナーに倒れて無得点。


 ゴ軍は5回表、先頭の大友一明の当りはレフトへのフライ、これを家村相太郎が落球、続く内藤幸三は初球ファウル、2球目ストライクでツーストライクナッシング、ここでセ軍横沢三郎監督はレフトを家村から一言多十に交代、内藤は三ゴロに倒れサード坂本勲が二塁に送球して大友は二封、横沢三郎監督が何を思ってレフトを家村から一言に代えたのかは歴史の闇に隠れてしまっているが、白木のスピードを内藤は引っ張り切れずと見て直前に落球したレフト家村を交代させた可能性は考えられる。実際、内藤の打球は反対方向のサードに飛んだ。続く辻功の遊ゴロををショート鈴木が二塁に送球するがセーフ、野選が記録されて一死一二塁、しかし坂本は右飛、トップに返り酒沢は一直に倒れて無得点。


 ゴ軍は8回表、先頭の辻がレフトにクリーンヒット、しかし坂本の送りバントは投飛となり白木が一塁に送球して辻は戻れずダブルプレー、粘るゴ軍はトップに返り酒沢が中前打を放つと二盗に成功、田中のスウィングが熊耳武彦のミットに当たって打撃妨害、二死一二塁と一打同点のチャンスを作るが期待の坪内は右飛に倒れる。


 白木義一郎は9回のゴ軍の反撃も三者凡退に抑えて、4安打無四球3三振でプロ入り初勝利を完封で飾る。


 勝利打点は押出し四球の大下弘、大下は第4打席でプロ入り初ヒットを放った。


 家村相太郎の名前を聞いて懐かしく感じる読者の方も多いのではないでしょうか。2010年3月17日、「ライパチ君の意地」で紹介して12年春第1節の「殊勲賞」に選出した「元祖・意外性の男」。開幕戦で昭和14年以来の出場を果たし、この日は七番レフトでスタメン出場した。


 この年でプロ野球の世界を去る家村はその後長きにわたってアマチュア球界の指導者として活躍する。天理高校監督として甲子園出場、1958年には母校川越高校監督に就任し翌59年に夏の甲子園出場、習志野高校でもコーチを務めて同校を全国屈指の強豪校に導くこととなる。


*家村相太郎がスタメンに名を連ねたこの試合、大下と飯島がプロ入り初ヒット、白木はプロ入り初勝利&初完封。



2019年8月18日日曜日

21年 パシフィックvsグレートリング 1回戦


4月28日 (日) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計 
3 0 1 0 0 0 0 0 0  0   0   3  7 パ軍 1勝1敗 0.500 真田重蔵 
1 0 2 0 1 0 0 0 0  0   0   1  5 グ軍 0勝2敗 0.000 清水秀雄 野口渉 

勝利投手 真田重蔵 1勝0敗
敗戦投手 清水秀雄 0勝1敗 

二塁打 (パ)木暮、小島、森下、湯浅、真田 (グ)岡村2

勝利打点 (パ)湯浅芳彰 1

猛打賞 (パ)松井信勝(4安打)1 (グ)岡村俊昭(4安打)1


湯浅芳彰、雪辱の代打決勝打

 西宮の第一試合は真田重蔵、清水秀雄の重量級投手同士の先発で午後0時55分試合開始。

 パシフィックは初回、先頭の富松信彦が四球を選んで出塁、木暮力三がセンター右後方に二塁打を放ち二三塁、辻井弘は二飛に倒れるが、小島利男がセンター左後方に二塁打を放ち2点を先制、森下重好は四球を選び、伊勢川真澄の三ゴロで森下は二封、二死一三塁から松井信勝が左前にタイムリーを放ち3-0とする。


 グレートリングは1回裏、一死後宮崎仁郎が左前にタイムリーを放ちを放つと二盗に成功、岡村俊昭の中前打で一三塁、山本一人が中前にタイムリーを放ち1点を返す。


 パ軍は3回表、一死後森下が左中間に二塁打、伊勢川の遊ゴロの間に森下は三進、松井の三ゴロをサード宮崎がエラー、森下が還って松井には打点が記録され4-1と突き放す。


 グ軍は3回裏、先頭の安井亀和がストレートの四球で出塁、宮崎は投飛に倒れる。バント失敗の場合はスコアカードに「BT」と書かれるがこのプレーには書かれていない。但し、送りバント失敗の可能性は否定できない。岡村がレフト線に二塁打を放って一死二三塁、山本の遊ゴロの間に三走安井が生還して2-4、堀井数男の三ゴロをサード平野徳松が一塁に悪送球する間に三走岡村が還って3-4と追い上げる。堀井には打点は記録されていない。


 グ軍は5回裏、先頭の安井がレフト線にヒット、宮崎の三ゴロをサード平野がエラーして無死一二塁、ここでダブルスチールを敢行するがキャッチャー伊勢川からの三塁送球に安井はタッチアウト、重盗失敗の片割れには盗塁は記録されないので一走宮崎は送球の間の進塁となって一死二塁、岡村が中前に同点タイムリーを放ち4-4と追い付く。


 この後、真田と清水の投げ合いが続き両軍追加点のないまま延長戦に突入。


 パ軍は12回表、先頭の森下がレフト線にヒット、伊勢川の投ゴロでランナーが入れ替わり代走に藤村隆男を起用、松井信勝がこの日4本目のヒットを中前に放ち一死一二塁、ここで藤本定義監督は昨日代打で併殺打に終わった湯浅芳彰を再び代打に起用、湯浅は期待に応えて昨日の雪辱を果たす二塁打をレフト線に放ち1点を勝ち越し、更に真田もレフト線に二塁打を放って2点を加え7-4とリードする。グ軍はここで清水を下げて野口渉をマウンドに送り、野口は連続四球で一死満塁のピンチを迎えるが、辻井弘の一ゴロが「3-6-3」と渡ってダブルプレー。


 グ軍は12回裏、先頭の桶川隆は遊ゴロに倒れ、野口に代わる代打筒井敬三はストレートの四球で出塁、吉川義次に代わる代打櫛田由美彦も四球を選んで一死一二塁、トップに返り安井が中前にタイムリーを放ち5-7、一走櫛田も三塁に走るが「8-1-5」の中継にタッチアウト、宮崎に代わる代打阪本政数も中前打を放って二死一二塁と最後の反撃、しかし期待の岡村が二飛に倒れてパシフィックが競り勝つ。


 昨日はリリーフで期待を裏切った真田重蔵が、この日は13安打7四球1三振で12回を投げ切り戦後初勝利。勝利打点は湯浅芳彰に記録されるが、12回に追撃の2点タイムリー二塁打を放った真田が打でも「並列の殊勲者」となる。


 昨日代打に起用されて併殺打に倒れた湯浅芳彰はこの日も重要な場面で代打に起用されて決勝の二塁打を放った。湯浅は滝川中学時代に春夏合計3回甲子園に出場、昭和製鋼時代はエースとして都市対抗にも出場した名投手である。本職のピッチングでは、7月26日にタイガースの渡辺誠太郎と投げ合い試合時間55分の最短記録を樹立することとなる。


2019年8月17日土曜日

21年 巨人vsセネタース 1回戦


4月27日 (土) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
6 0 2 0 1 1 1 0 1 12 巨人 1勝0敗 1.000 近藤貞雄 
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0  セ軍 0勝1敗 0.000 一言多十 黒尾重明 

勝利投手 近藤貞雄 1勝0敗
敗戦投手 一言多十 0勝1敗 

二塁打 (巨)千葉、近藤、諏訪、林 (セ)黒尾、横沢、長持
三塁打 (巨)千葉

勝利打点 (巨)千葉茂 1

猛打賞 (巨)千葉茂 1、黒沢俊夫 1、林清一 1


巨人、16安打12得点の猛攻

 後楽園の第2試合は午後3時17分、池田豊主審の右手が上がりプレイボール。この試合も審判は池田と島の二氏。

 巨人は初回、先頭の山田潔がストレートの四球で出塁、続く呉新亨もスリーボールツーストライクから四球、スコアカードによるとこのフォアボール目にキャッチャー熊耳武彦が二塁に悪送球、一走山田は三塁に進んだ。スリーボールツーストライクから山田がスタートを切っていたと考えられるが、フォアボール目に二塁に送球した熊耳のミスである。呉が二盗を決めて無死二三塁、ここで千葉茂が左中間をライナーで抜く二塁打を放ち2点を先制、続く黒沢俊夫はストレートの四球、セネタース先発の一言多十は一死も取れず降板して二番手として黒尾重明がマウンドに上がる。多田文久三はスリーボールツーストライクまで粘って四球を選び無死満塁、諏訪裕良がストレートの押出し四球を選んで3-0、林清一の中犠飛で4-0、近藤貞雄が四球を選んで一死満塁、山川喜作が右前に2点タイムリーを放ちこの回6点を先制する。


 巨人は3回、二死後呉がストレートの四球、千葉が得意の右打ちを見せてライト線にヒット、黒沢が四球を選んで二死満塁、多田が左前に2点タイムリーを放ち8-0とする。



 巨人先発の近藤貞雄は3回までパーフェクトピッチング、4回に2四球を与えるが無安打、5回も無安打に抑えて戦後開幕日にいきなりノーヒットノーランかという投球を見せる。

 巨人は5回も千葉の右中間三塁打と多田の一ゴロで加点、6回は山田のバントヒットと黒沢のタイムリー、7回は諏訪と林の連続二塁打で1点追加、11-0とする。

 セネタースは6回裏、先頭の黒尾がライト線に二塁打を放って初安打、トップに返り横沢七郎の当りもライト戦にフラフラと上がり二塁打、ハーフウェイからスタートを切った二走黒尾は三塁ストップ、続く鈴木清一の遊ゴロの際に守備妨害で二走横沢がアウト、打者走者の鈴木は二塁に進んでおり記録は遊ゴロなので、横沢に打球が当たったのではなく二三塁間に挟まれている間に守備を妨害した模様、後続も抑えられて無得点。


 巨人は9回表、先頭の林が三遊間にヒット、近藤も左前打、山川はストレートの四球で無死満塁、セ軍は前進守備を取らず、山田の遊ゴロが「6-4-3」と転送されてゲッツーとなる間に三走林が還って12-0とする。


 セ軍は最終回、一死後飯島滋弥がストレートの四球で出塁、長持栄吉が右中間に二塁打を放って一死二三塁と最後の反撃を試みるが、上口政に代わる代打白木義一郎は捕邪飛、熊耳は三振に倒れて万事休す。


 近藤貞雄は3安打4四球5三振で戦後の公式戦初の完封勝利を飾る。打たれた3安打は全て二塁打であった。


 千葉茂がシングル、二塁打、三塁打の3安打、黒沢俊夫は3安打3四球で出塁率10割、林清一も3安打を記録するなど、巨人は開幕戦から16安打の猛攻を見せた。四球は3回までの10個を含めて15個で、17残塁を記録した。昭和18年10月16日に阪神が記録した18残塁に次ぐ記録である。1987年7月17日に近鉄が18残塁で並び、2014年7月15日にDeNAが19残塁で記録を更新し、2017年9月29日に日ハムが19残塁で並ぶこととなる。なお、昭和17年5月24日に名古屋が延長28回で記録した残塁も17個であった。


 セネタースは全くいいところなし、注目のルーキー大下弘は4打数無安打2三振のデビューであった。



*大下のデビュー戦。




2019年8月16日金曜日

21年 タイガースvsパシフィック 1回戦


4月27日 (土) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 1 0 0 0 1 0 0 4 6 タ軍 1勝0敗 1.000 渡辺誠太郎 野崎泰一 藤村冨美男 
0 0 0 0 0 0 4 1 0 5 パ軍 0勝1敗 0.000 井筒研一 真田重蔵 

勝利投手 藤村冨美男 1勝0敗
敗戦投手 井筒研一     0勝1敗 

二塁打 (タ)高山、乾 (パ)森下

勝利打点 (タ)土井垣武 1

猛打賞 (パ)森下重好 1


タイガース逆転勝利

 西宮の第2試合は午後3時16分、金政卯一主審の右手が上がりプレイボール。

 タイガースは初回、先頭の呉昌征は左飛、金田正泰は捕邪飛、藤村冨美男が二遊間ヒットで出塁するが、本堂保次は左飛に倒れて無得点。


 パシフィックは1回裏、先頭の富松信彦は一ゴロ、木暮力三が四球を選ぶと二盗に成功、しかし辻井弘は投飛、小島利男は三ゴロに倒れて無得点。


 タ軍は2回表、先頭の土井垣武が二塁にヒット、御園生崇男の遊ゴロの間に土井垣は二進、更に富樫淳の遊ゴロの間に三進、渡辺誠太郎の左前タイムリーで1点を先制する。


 タ軍は6回、先頭の金田が中前打で出塁、一死後本堂の遊ゴロの間に金田は二進、土井垣が中前にタイムリーを放ち2-0とする。


 タイガース先発の渡辺誠太郎は第1打席の先制タイムリーに続いて第2打席も左前打を放ち、本職のピッチングでもパシフィック打線を6回まで無得点に抑える好投を続けたが、7回に捕まった。


 パ軍は7回裏、先頭の井筒研一がストレートの四球で出塁、トップに返り富松の二ゴロでランナーが入れ替わり、木暮の右前打で一死一二塁、辻井は捕邪飛に倒れるが、小島が四球を選んで二死満塁、このチャンスに森下重好が左中間に走者一掃の二塁打を放ち3-2と逆転、伊勢川真澄も左前タイムリーで続き4-2とする。ここでタイガースベンチは先発の渡辺に代えて野崎泰一をマウンドに送り、松井信勝は三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。


 タ軍は8回から藤村冨美男監督がサードの守備位置からマウンドに上がり、セカンドの本堂がサードに回り、ピッチャー野崎に代わって乾国男が入ってセカンド。


 パ軍は8回裏、先頭の平野徳松が四球で出塁、井筒も四球を選んで無死一二塁、トップに返り富松の右飛で二走平野がタッチアップから三塁に進み、木暮もストレートの四球で一死満塁、藤村投手は何とか辻井を三邪飛に打ち取るが、小島が押出し四球を選んで5-2とリードを広げる。


 タ軍は9回表、先頭の富樫に代わる代打高山泰夫がライト線に二塁打、8回の守備からセカンドに入った乾の当りは左中間への飛球、これがポトリと落ちて乾は二塁に進み記録は二塁打、スタートが遅れた高山泰夫は三塁止まりで無死二三塁、小林英一の左犠飛で3-5と追い上げ開始、トップに返り呉がここまで無四球ピッチングを続けてきた井筒から四球を選んで一死一二塁、金田のカウントがスリーボールツーストライクとなったところでダブルスチールに成功、ここでパシフィック藤本定義監督は井筒から真田重蔵にスイッチ、金田は3球ファウルで粘って四球を選び、この場合の与四球は井筒に記録されて一死満塁、藤村が押出し四球を選んで4-5、本堂も押出し四球で5-5の同点、土井垣の二ゴロの間に三走金田が還って6-5と逆転に成功する。


 パ軍は9回裏、先頭の伊勢川は三振、松井がストレートの四球を選んで出塁、しかし平野に代わる代打湯浅芳彰の遊ゴロをショート小林がベースを踏んで一塁に送球、ダブルプレーが完成してタイガースが逆転勝利をおさめる。


 藤村冨美男監督は終盤に高山泰夫と乾国男の戦前からの強者を起用、この二人が9回に連続二塁打を放つ活躍を見せた。2イニングで5四球を与えた投手・藤村には、大逆転により勝利投手が転がり込んだ。


 一方、パシフィックは満を持して送り込んだ真田が誤算。9回代打に起用した湯浅も併殺打と、この日は藤本定義監督の日ではなかった。


2019年8月15日木曜日

21年 中部日本vsゴールドスター 1回戦


4月27日 (土) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 1 0 0 0 2 2 0 5 10 中部 1勝0敗 1.000 森井茂 
0 0 0 0 0 0 4 0 0  4  ゴ軍 0勝1敗 0.000 石田光彦 

勝利投手 森井茂    1勝0敗
敗戦投手 石田光彦 0勝1敗 

二塁打 (中)加藤
三塁打 (ゴ)田中

勝利打点 なし


ゴールドスター、6失策で自滅

 昭和21年4月27日午後1時10分、3,725人の観衆が見守る中、西宮に遅れること6分、島秀之助主審の右手が上がりプレイボールのコールが後楽園球場に鳴り響く。審判は島と池田豊の二氏。

 中部日本は初回、先頭の岩本章がワンストライクからの2球目を左前打、金山次郎が送りバントを決めて一死二塁、しかし古川清蔵は三ゴロ、服部受弘も一邪飛に倒れて無得点。


 ゴールドスターは1回裏、先頭の坪内道則は遊飛、続く田中宣顕は左中間を鋭いライナーで破る三塁打、しかし酒沢政夫の遊ゴロで三塁ストップ、菊矢吉男も遊ゴロに倒れて無得点。


 中部は2回、先頭の小鶴誠が左前打で出塁、加藤正二の三ゴロの間に小鶴は二進、藤原鉄之助は四球、森井茂の中前打で一死満塁と先制のチャンス、木下政文の投ゴロは「1-2-3」と転送されるがキャッチャー辻功からの一塁転送が悪送球、この間に二走藤原が還って1点を先制する。


 ゴ軍は4回まで毎回の5安打を放つが無得点。


 中部は6回表、先頭の小鶴が左前打で出塁、加藤が四球を選んで無死一二塁、藤原の遊ゴロをショート酒沢が二塁に送球するがベースカバーに入ったセカンド大友一明が落球、この間に二走小鶴がホームに還って2-0、無死一二塁から森井が一塁線に送りバントを決めて一死二三塁、木下の中犠飛で3-0とする。


 中部は7回表、一死後古川が三塁にヒット、服部はストレートの四球で一二塁、小鶴の遊ゴロで服部は二封、小鶴が二盗を決めて二死二三塁、ここで加藤がレフト線に二塁打を放ち5-0と突き放す。


 ゴ軍は7回裏、先頭の大友は遊ゴロ、続く辻の当りも遊ゴロ、これをショート金山が一塁に悪送球する間に打者走者の辻は二進、坂本勲が四球を選んで一死一二塁、トップに返り坪内の打席で辻が三盗を決めて一死一三塁、坪内が左前にタイムリーを放ち1-5、田中の中前打で一死満塁、酒沢の中前タイムリーで二者還り3-5、一走田中は三塁に進むが、二塁を狙った打者走者の酒沢は「8-1-4」の中継にタッチアウト、この送球の隙を突いて三塁に進んでいた田中が一気にホームに還る好走塁を見せて4-5と1点差に詰め寄る。


 中部日本の中継プレーで確認できるとおり、この時期においても走者二塁での外野からの中継にはピッチャーが入っている。現在のセオリーでは、このプレーではピッチャーはホームベースカバーに回り、ファーストがカットの位置に入るのはご存じのとおり。草野球レベルではピッチャーがカットに入るケースは多々見られるところですが。


 ゴ軍先発の石田光彦は7回まで5失点であるが味方の拙守に足を引っ張られてのものであり自責点は2点、8回以降も続投する。


 中部は9回表、先頭の金山が三塁線にセーフティバントを決めて出塁、古川と服部が連続ストレートの四球で無死満塁、小鶴の三ゴロをサード坂本がバックホームするが悪送球、三走金山に続いて二走古川が還って7-4、無死二三塁から加藤が右前にタイムリーを放って8-4、無死一三塁から藤原は投ゴロ、これを石田が二塁に悪送球する間に三走小鶴が還って9-4、一死後木下が右前にタイムリーを放ち10-4として試合を決める。


 森井茂はスローボールが冴えて9安打5四球1三振で完投、戦後初勝利を飾る。


 石田光彦は10失点であったが自責点は7回の2点のみ。但し、9回は連続ストレートの四球から自らの悪送球で決定的な失点があり責任は免れない。ゴールドスターは6失策を記録して前途多難なスタートとなった。


 中部日本は10安打で10得点と一見効率の良い攻めのようにも見えるが、実際は10残塁と、ゴ軍の自滅に救われたものであった。



2019年8月14日水曜日

21年 阪急vsグレートリング 1回戦


4月27日 (土) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 2 0 2 1 0 5 阪急 1勝0敗 1.000 天保義夫 
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 グ軍 0勝1敗 0.000 松川博爾 長谷川治 

勝利投手 天保義夫 1勝0敗
敗戦投手 松川博爾 0勝1敗 

二塁打 (急)上田、青田、野口二郎 (グ)丸山

勝利打点 (急)野口明 1

猛打賞 (急)上田藤夫 1、青田昇 1


阪急、確実に加点

 昭和21年4月27日午後1時4分、5,016人の観衆が見守る中、杉村正一郎主審の右手が上がり戦後最初のプレイボールのコールが西宮球場に響き渡る。審判員は杉村、金政卯一、片岡勝の三氏。

 阪急は初回、先頭の上田藤夫が3球ファウルで粘ってフルカウントからレフト線に二塁打、続く青田昇は右飛、野口二郎は遊ゴロ、髙橋敏が四球を選ぶが、野口明も遊ゴロに倒れて無得点。


 阪急先発の天保義夫は快調な滑り出し、グレートリング打線を3回まで3人ずつで片づける。


 グ軍は4回裏、二死後岡村俊昭の当りは一ゴロ、これをファースト野口明がエラー、岡村が二盗を決めて二死二塁、四番・山本一人が左前に先制タイムリーを放ち1-0とする。山本のヒットは昭和14年11月12日「鶴岡一人」時代以来のこととなる。


 阪急は5回表、先頭の上田が三遊間を破って出塁、青田の右前打で上田は三塁に進み無死一三塁、青田が二盗を決め、野口二郎は浅い左飛、高橋は三振に倒れるが、野口明が右前に2点タイムリーを放ち2-1と逆転に成功する。野口明はバックホームの間に二塁を狙うがタッチアウト。


 グ軍は5回裏、先頭の丸山二三雄がライト線に二塁打を放って同点のチャンス、桶川隆の二ゴロの間に丸山は三進、ところが松川博爾の打席で「2-5-1-5」で挟殺、チャンスを潰した。これはスクイズを外された可能性が高い。


 阪急は7回表、先頭の上田が投前に内野安打、青田の右前打で無死一二塁、野口二郎がセンターオーバーの二塁打を放ち3-1、5回の守備からレフトに入っている下社邦男が四球を選んで無死満塁、野口明は浅い右飛に倒れるが、三木久一が左前にタイムリーを放ち4-1と突き放す。



 阪急は8回表、先頭の天保がストレートの四球で出塁、尾西信一の二ゴロの間に天保は二進、トップに返り上田は右飛に倒れるが、青田がライト線に二塁打を放ち5-1とダメ押す。

 天保義夫は5回以降グレートリング打線を無得点に封じ、5安打1四球4三振、自責点ゼロの完投で戦後初勝利を飾る。

 グレートリングは5回裏の攻撃で三塁に進んだ丸山二三雄が三本間に挟殺されて試合の流れをつかめなかったことが敗因となった。戦前のスコアカードには「雑記」欄に「スクイズを外される」などの記載も見られたが、この日のスコアカードには何の記載もない。スクイズを外されたのか、打者か走者のサインミスにより三走丸山が飛び出したことが原因である。この試合ではまだ河西俊雄と田川豊は出場しておらず、グ軍の機動力が機能するのはもう少し先のこととなる。


 阪急は一番の上田藤夫と二番の青田昇がそれぞれ3安打2得点を記録。近年のメジャーではマイク・トラウトに代表されるようにチームの最強打者を「二番」に起用することが常識になっており、日本の高校野球でも好打者を「二番」に配すチームが見られるようになってきた。阪急は、昭和21年4月の段階で、強打の青田昇を「二番」に据えている。