2019年12月31日火曜日

21年 第6節終了時点投手成績


 第6節終了時点の投手成績を発表します。

名前 球団 防御率 WHIP 奪三振率 セーブ
1 白木義一郎 セ軍 65.1 47 18 31 19 8 5 4 6 2 1.10 0.99 4.27
2 近藤貞雄 巨人 68.0 41 30 19 12 9 5 2 4 1 1.19 1.04 2.51
3 野口二郎 阪急 44.2 33 10 12 7 6 4 1 4 1 1.21 0.96 2.42
4 天保義夫 阪急 59.1 50 22 18 18 9 5 1 3 0 1.37 1.21 2.73
5 内藤幸三 ゴ軍 99.2 60 56 37 24 17 4 5 10 2 1.54 1.16 3.34
6 諏訪裕良 巨人 33.0 27 15 9 13 6 1 3 2 0 1.64 1.27 2.45
7 前川八郎 阪急 33.1 29 12 7 9 7 2 2 2 0 1.89 1.23 1.89
8 野崎泰一 タ軍 46.1 27 20 18 20 10 2 3 2 0 1.94 1.01 3.50 1
9 湯浅芳彰 ゴ軍 53.2 41 33 12 17 12 2 3 3 1 2.01 1.38 2.01
10 中尾輝三 巨人 35.1 28 17 12 13 8 1 1 2 0 2.04 1.27 3.06
森井茂 中部 95.0 83 27 19 39 23 6 4 9 1 2.18 1.16 1.80 1
藤本英雄 巨人 56.2 40 26 14 14 13 4 3 5 3 2.06 1.16 2.22
藤村冨美男 タ軍 25.2 14 11 15 3 2 3 0 1 0 0.70 0.97 5.26
石田光彦 ゴ軍 69.0 59 39 25 36 23 4 6 6 2 3.00 1.42 3.26
真田重蔵 パ軍 87.0 66 44 19 30 25 5 4 8 1 2.59 1.26 1.97
笠松実 阪急 52.2 42 25 14 17 13 3 3 3 0 2.22 1.27 2.39
呉昌征 タ軍 48.0 46 15 22 14 12 4 1 5 0 2.25 1.27 4.13

 防御率トップの白木義一郎は5月20日以降登板していない。「日本野球年鑑」には「白木が病んで」と書かれており、次の登板は6月8日のこととなる。怪我であるか病気であるかは判然としないが、この時期にきっちりと休んでいたことがこの年の30勝につながる。


 5月の月間MVP(対象期間4月27日~5月31日)に輝いた内藤幸三は5月末時点での防御率は1.19であったが、6月3日の阪急戦で自責点5を記録して1.54に落とした。

 藤本英雄は3完封を記録しているが防御率ランキングでは10傑に入っていない。すなわち、打たれる時は打たれる波の荒い投球ということ。通算成績だけを見て、藤本はコントロールが良く安定したピッチングであると99.9%以上の野球ファンは誤解しているが、藤本の「真実」は、当ブログだけが伝えている。

 隠れ防御率1位は藤村冨美男であるが、規定投球回に達していない。昭和21年の規定投球回は150回であり、この年の試合数は105試合であることから、途中経過での規定投球回は試合数×1.5とします。第6節終了時点で各チーム20試合強を消化しているので、この時点での規定投球回は30イニングとして発表していますのでご了承ください。

 なお、投手成績に関しては全て当ブログが独自に集計している成績に基づいています。間違っている可能性は否定できませんので、絶対に転載等のパクリはお断りします。当ブログの記事が至る所で利用されている点については許容しますが、途中経過の打撃成績及び投手成績の数字までは責任を持てませんのでご理解ください。


2019年12月29日日曜日

21年 セネタースvsゴールドスター 3回戦


6月6日 (木) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 セ軍 8勝14敗 0.364 黒尾重明 上口政 
0 0 4 0 3 0 1 0 X 8 ゴ軍 10勝11敗1分 0.476 石田光彦 

勝利投手 石田光彦 5勝6敗
敗戦投手 黒尾重明 2勝4敗 

三塁打 (ゴ)田中

勝利打点 (ゴ)坪内道則 1

猛打賞 (ゴ)大友一明 1、菊矢吉男 1


石田光彦、8奪三振の快投

 第7節の初日と二日目は西宮で2試合と後楽園で1試合。西宮の第1試合は午後1時丁度、金政主審の右手が上がりプレイボール。

 ゴ軍先発の石田光彦は立ち上がりから絶好調、3回までパーフェクトピッチングを続け、2回一死からは黒尾重明、鈴木清一、長持栄吉を3連続三振に打ち取る。


 ゴ軍は3回裏、先頭の坂本勲が四球を選んで出塁、トップに返り酒沢政夫がライトにヒット、大友一明も三塁線にヒットで続き無死満塁、坪内道則の右犠飛で1点を先制、田中宣顕が中越えに三塁打を放ち3-0、菊矢吉男もセンター右にタイムリーを放ちこの回一気に4点を先制する。


 セ軍は4回表、先頭の一言多十が中前にチーム初ヒット、横沢七郎は三振、飯島滋弥は四球を選んで一死一二塁、大下弘の一二塁間の打球が一走飯島に当たりインターフェアが宣告されて二死一二塁、二走一言が三盗を試みるがキャッチャー辻功からの送球にタッチアウト。


 ゴ軍は5回裏、先頭の田中が左前打で出塁、菊矢も左前打、末崎正隆は中前打を放ち無死満塁、一死後辻の中犠飛で5-0、阪本のニゴロをセカンド石原光男がエラーして二死満塁、トップに返り酒沢のニゴロを石原が連続エラー、三走菊矢が還って6-0、大友が中前にタイムリーを放ち7-0とする。


 セ軍は6回表、一死後一言が四球を選んで出塁、横沢の右前打で一二塁とするが、飯島は一邪飛、大下は三振に倒れて無得点。


 石田は中盤の3イニングで4安打を許すが無失点、しかし少し疲れが見えてきた。


 セ軍は6回から先発の黒尾に代わり上口政がマウンドに上がる。


 セ軍は7回表、先頭の上口が中前打で出塁、鈴木の左前打で上口は一気に三塁に進み、レフトからの送球の間に打者走者の鈴木も二塁を陥れて無死二三塁、長持が右前にタイムリーを放ち1-7として無死一三塁、しかし熊耳武彦は一ゴロ、根津弘司は一飛、トップに返り一言は三振に倒れて反撃もここまで。


 ゴ軍は7回裏、二死後大友の当りは三ゴロ、これをサード横沢が一塁に悪送球して二死二塁、坪内の三塁線のゴロを横沢が一塁に送球するがファースト北川圭太郎が後逸、この間に二走大友が還って8-1とする。坪内の記録はヒットだが大友の生還はエラーによるもので打点は記録されていない。


 石田は最終回も三者凡退に抑えて、7安打3四球8三振の力投で完投、5勝目をマークする。ハーラートップは6勝の森井茂、5勝で石田、近藤貞雄、天保義夫、真田重蔵、白木義一郎が並んでいる。


 手抜き癖を見せない時の石田光彦は切れ味抜群のピッチング、一リーグ時代屈指の好投手である。



2019年12月26日木曜日

21年 第6節終了時点 打撃成績


  名前  球団 打数 安打 塁打 打率 四死 出塁率 長打率 OPS 得点 打点 盗塁
森下重好 (パ) 100 38 56 0.380  13 0.451 0.560 1.011  14  22    3
藤村冨美男 (タ) 67 25 36 0.373  13 0.475 0.537 1.012   8  14    3
田中宣顕 (ゴ) 82 26 32 0.317   3 0.341 0.390 0.731    8   6    6
青田昇 (急) 92 29 37 0.315   7 0.364 0.402 0.766  13   9    8
堀井数男 (グ) 80 25 29 0.313   9 0.382 0.363 0.745   9  12    4
加藤正二 (中) 71 22 40 0.310  19 0.456 0.563 1.019  16  16    6
金山次郎 (中) 69 21 25 0.304   9 0.385 0.362 0.747   9   3    8
山川喜作 (巨) 79 23 29 0.291  12 0.385 0.367 0.752   6  12    4
安井亀和 (グ) 79 23 28 0.291  18 0.423 0.354 0.777  18  11    6
土井垣武 (タ) 59 17 20 0.288   6 0.354 0.339 0.693  10   6    1














坪内道則 (ゴ) 72 16 16 0.222  15 0.356 0.222 0.579  11   3   11
富松信彦 (パ) 86 12 15 0.140  26 0.339 0.174 0.514  14   2    7
小島利男 (パ) 98 20 30 0.204  18 0.328 0.306 0.634  11  16    2
山本一人 (グ) 74 21 25 0.284   7 0.346 0.338 0.684  12  15    6
岩本章 (中) 81 13 18 0.160  20 0.327 0.222 0.549  13   8    6
大下弘 (セ) 80 18 24 0.225  11 0.319 0.300 0.619   8   8    3

 第6節終了時点の首位打者は森下重好。森下は打点もトップで現在二冠王。本塁打も2本で2位タイ。パシフィックは24試合と他チームより試合消化が多い。
 本塁打王は4本の加藤正二。加藤はOPS(出塁率+長打率)でもトップ。
 藤村冨美男は監督兼任でフル出場はできないが爆発力がある。序盤戦の主役はこの3人。

 打撃10傑以外では、坪内道則が11個で盗塁王。
 富松信彦は打率は低いが24試合で四球を26個選んでおりIsoD(出塁率-打率)は驚異の0.200(0.1998を四捨五入表記)。
 打点はトップが22点で森下、二位は16点の加藤と小島利男、三位が15点の山本一人。

 岩本章は四球20個でIsoDは0.166。

 注目の大下弘はようやく打率を2割台に乗せてきたところ。初本塁打も記録して、これから調子を上げていくのではないか。

 なお、打率は「日本野球年鑑」と照合していますが、四死球や長打は当ブログが独自に手入力していますので、シーズン終了時点でないと照合できません。入力作業は慎重を期していますが、間違っている可能性は否定できませんのでご了承願います。


2019年12月25日水曜日

21年 第6節 週間MVP


週間MVP

投手部門
 パシフィック 湯浅芳彰 1

 1勝0敗1完封。今節は17試合が行われ引分けが1試合で、延べ16人の勝利投手は全員が1勝。その中で1安打完封の湯浅が選出された。次点は2安打完封の内藤幸三となる。

打撃部門
 中部日本 木下政文 1

 19打数6安打3得点4打点、2本塁打。その内容が濃い。6月1日のタ軍戦で戦後初の2打席連続本塁打、翌日のセ軍戦では延長11回裏にサヨナラ打を放ち15対14の激闘に決着をつけた。数字的には他の候補者に劣るが、そのインパクトが強烈であった。


殊勲賞
 セネタース 大下弘 1
 23打数8安打4得点6打点、6月2日の中部戦でプロ入り初ホーマーとなる満塁本塁打。

 中部日本 加藤正二 1
 14打数6安打4得点8打点。数字的には週間MVP候補筆頭であったが、木下のインパクトには及ばなかった。

 阪急 青田昇 1
 19打数4安打5打点1本塁打。2試合連続V打と木下と同等の活躍であった。

 タイガース 藤村冨美男 1
 21打数8安打5打点。

 ゴールドスター 田中宣顕 1
 14打数7安打3得点2打点、6月1日のゴ軍戦で戦後初の無安打無得点を防ぐドラッグバントを決めた。

敢闘賞
 中部日本 服部受弘 1
 15打数7安打6得点4打点。

 パシフィック 森下重好 3
 16打数7安打6得点6打点。

 セネタース 鈴木清一 1
 18打数7安打2得点2打点、二塁打3本。

 タイガース 富樫淳 1

 17打数7安打2得点3打点。

 グレートリング 堀井数男 1
 16打数7安打1得点6打点。

技能賞
 パシフィック 辻井弘 3
 6月1日のゴ軍戦で「9-4-2」の送球の間に本盗を決める。元祖「曲者」。

 阪急 天保義夫 1
 6月1日の巨人戦でナックルボールを駆使して「秘術の好投」を見せる。

 パシフィック 富松信彦 1
 14打数5安打4得点、4盗塁、7四球。開幕から24試合で26四球を選んでおりIsoDは驚異の0.199。

21年 巨人vsパシフィック 3回戦


6月3日 (月) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計 
0 0 2 0 0 0 0 0 0  2  4 巨人 11勝9敗1分 0.550 中尾輝三 近藤貞雄 
1 0 0 0 0 1 0 0 0  0  2 パ軍 10勝12敗2分 0.455 真田重蔵 

勝利投手 近藤貞雄 5勝2敗
敗戦投手 真田重蔵 5勝4敗 

二塁打 (パ)森下
本塁打 (パ)木暮 1号

勝利打点 (巨)黒沢俊夫 2


黒沢が延長10回決勝打

 後楽園の第2試合は中尾輝三と真田重蔵の先発で午後3時11分、池田球審の右手が上がりプレイボール。

 パ軍は1回裏、先頭の木暮力三がワンボールワンストライクからの3球目をライトスタンドに先頭打者ホームラン、続く富松信彦もライト線にヒット、小島利男は遊飛に倒れ、森下重好の遊ゴロは「6-4-3」と転送されるがセカンド千葉からの一塁送球が逸れて打者走者の森下は二塁に進み、「曲者」辻井弘が三塁線にセーフティバントを決めて二死一三塁、しかし伊勢川真澄は遊ゴロに倒れて無得点。ここは一気に中尾を崩しておきたかったところであったが1点止まり。


 巨人は3回表、先頭の諏訪裕良がレフト線にヒット、中尾は四球を選び、山田潔の一塁線送りバントをファースト辻井がファンブル、犠打とエラーが記録されて無死満塁、トップに返り呉新亨の一塁線タイムリーで1-1の同点、山川喜作の右犠飛で2-1と勝ち越す。


 パ軍は3回裏、先頭の富松が四球を選ぶと二盗に成功、しかし小島、森下、辻井のクリーンナップトリオが何れも外野フライに倒れて無得点。


 パ軍は5回裏、一死後木暮が右前打を放つが二塁を欲張りタッチアウト、直後に富松が四球を選ぶと又も二盗に成功、しかし小島は三ゴロに倒れて無得点。


 パ軍は6回裏、先頭の森下がライト線に二塁打、辻井が送りバントを決めて一死三塁、伊勢川が左前にタイムリーを放ち、ようやく2-2の同点に追い付く。 


 巨人は7回表、先頭の山田が中前打で出塁、トップに返り呉が送りバントを決め、山川はストレートの四球で一死一二塁、しかし千葉の遊ゴロをショート松井信勝が二塁ベースを踏んで一塁に送球、「6B-3」のゲッツーが決まって無得点。


 パ軍は9回裏、一死後平野徳松が中前打で出塁すると代走に喜瀬正顕を起用、真田が四球を選んで一死一二塁、巨人ベンチはここで中尾から近藤貞雄にスイッチ、トップに返り木暮の打席で近藤からの二塁牽制が悪送球となって二走喜瀬は三塁に進み、木暮はストレートの四球で一死満塁、富松のニゴロで三走喜瀬は本封、二死満塁から小島は三ゴロに倒れて試合は延長戦へ。


 巨人は10回表、一死後山川がストレートの四球で出塁、千葉の左前打で山川は三塁に進み一死一三塁、千葉が二盗を決めて一死二三塁、ここで黒沢が中前に決勝の2点タイムリーを放ち4-2と勝ち越す。ピンチの後にチャンスありの格言通りの展開となった。


 近藤貞雄は10回裏のパ軍の反撃を三者凡退で切り抜け、5勝目をマークする。


 「日本野球年鑑」にはパ軍について「10回、池田主審の誤審が祟って再び惜しい試合を逸した」と書かれている。「再び惜しい試合」というのは押し気味に進めていた5月31日のパ-巨2回戦を延長12回引き分けたことを言っていると考えられる。「池田主審の誤審」については「雑記」欄にも何も書かれておらず、パ軍からの抗議があった形跡は確認できないが、千葉の4点目のホームインのことか山川の四球の判定のことを指しているのか判然としない。山川は先頭打者として出塁しただけで、千葉は4点目の得点なので、むしろ可能性が高いのは、10回ではなく9回裏パ軍の攻撃での一死満塁から富松のニゴロで三走喜瀬が本封された判定のことを言っているのではないか。「日本野球年鑑」は昭和23年12月5日に発行されたもので、試合内容については後日書かれたものである。喜瀬の本塁突入はセーフであったとも見える際どいタイミングっだったのかもしれない。



*昭和23年12月5日発行「日本野球年鑑」1947年版。1946年の全試合について短評が書かれている。「俺は2冊持っているから君に1冊やるよ」と、千葉功さんから頂いたものです。


2019年12月23日月曜日

21年 阪急vsゴールドスター 4回戦


6月3日 (月) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
3 1 1 0 0 0 0 0 1 6 阪急 14勝8敗 0.636 野口二郎 
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 ゴ軍 9勝11敗1分 0.450 内藤幸三 

勝利投手 野口二郎 4勝1敗
敗戦投手 内藤幸三 4勝5敗 

二塁打 (急)尾西、山田 (ゴ)田中
三塁打 (急)下社
本塁打 (急)青田 1号

勝利打点 (急)青田昇 3

猛打賞 (急)上田藤夫 3


青田が決勝スリーラン

 後楽園の第1試合は野口二郎と内藤幸三の先発で午後1時11分、島球審の右手が上がりプレイボール。

 阪急は初回、先頭の山田伝が一塁線にセーフティバントを決めて出塁、上田が右前打で続いて無死一二塁、ここで青田がレフトスタンドにスリーランを叩き込み3点を先制する。


 阪急は2回表、先頭の下社が左中間に三塁打、一死後尾西が左中間に二塁打、序盤から長打攻勢で4-0とする。


 ゴ軍は2回裏、先頭の田中宣顕が左中間に二塁打、菊矢がレフト線にタイムリーを放ち1点返して1-4とする。


 阪急は3回表、先頭の青田が右前打で出塁、野口明の投ゴロを内藤が二塁に送球するがベースカバーに入ったショート酒沢が落球して無死一二塁、三木の三ゴロはサード坂本勲が三塁ベースを踏んで一塁に送球し「5C-3」のゲッツー、二死二塁から野口二郎がレフト線にタイムリーを放って二走野口明を迎え入れ5-1と突き放す。


 3回以降野口二郎は快調なピッチングを続けて7回まで三者凡退の連続。この間奪三振は1個だけで、かつての快速球は影を潜めているがコントロールの良さは戦前から変わっていない。


 ゴ軍は8回裏、一死後内藤が三塁線にセーフティーバントを決めて久しぶりに走者を出すが、末崎正隆に代わる代打早川平一は左飛、辻功はキャッチャーへのフェアフライに倒れて無得点。


 阪急は9回表、先頭の尾西が四球を選んで出塁、トップに返り山田は左飛、ここはエンドランがかかっていたのかレフト田中からの送球をショート酒沢が中継して一塁に送球するがこれが悪送球となって一塁ベースに戻った尾西が二塁に進み、上田が左前にタイムリーを放ち6-1とダメ押す。


 野口二郎は最終回、二死後大友に中前打を許すが最後は坪内をショートライナーに打ち取り、5安打1四球2三振の安定した投球で完投、4勝目をあげる。


 青田昇は前日のサヨナラ打に続いて本日は決勝スリーラン、エンジン全開となってきた。


 このところ調子を落としていた阪急の九番尾西信一が活躍。下位打線が好調なチームは勝つ確率が高い。


 ゴ軍はショート酒沢が3失策、うち2つが失点につながったのが痛かった。3回の失点は記録上は内藤の自責点となっているが、1点返した直後だっただけにあそこでゲッツーを決めていれば試合は分からなかった。



2019年12月22日日曜日

21年 セネタースvsタイガース 4回戦


6月3日 (月) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 0 2 4 0 0 6 セ軍 8勝13敗 0.381 黒尾重明 
0 2 1 0 0 2 0 0 0 5 タ軍 11勝10敗 0.524 野崎泰一 渡辺誠太郎 藤村冨美男 

勝利投手 黒尾重明     2勝3敗
敗戦投手 渡辺誠太郎 1勝6敗 

二塁打 (セ)大下、横沢 (タ)土井垣、御園生、金田、呉、本堂、長谷川
三塁打 (セ)黒尾 (タ)藤村

勝利打点 (セ)黒尾重明 2


黒尾重明、自らの逆転打を守り切る

 本日は後楽園で2試合と西宮で1試合。西宮の試合は雨の中で行われたので、第2試合は中止になった可能性が高い。西宮の第1試合は午前10時35分、金政主審の右手が上がりプレイボール。

 タ軍は2回裏、先頭の本堂が二遊間にヒット、土井垣のライトへの二塁打で無死二三塁、御園生が右越えに先制の二塁打を放ち2-0とリードする。


 タ軍は3回裏、先頭の金田が左中間に二塁打、呉は中飛に倒れるが、藤村が中越えに三塁打を放ち3-0とリードを広げる。


 タ軍先発の野崎泰一は5回まで1安打無失点、しかし6回に捕まった。


 セ軍は6回表、先頭の一言多十が中前打で出塁、一死後飯島が四球を選んで一二塁、大下が中越えに二塁打を放ち1-3、黒尾は四球を選んで一死満塁、タ軍ベンチはここで野崎から渡辺誠太郎にスイッチ、長持の一ゴロをファースト御園生が本塁に悪送球して2-3、続く熊耳の当りは痛烈なサードライナー、第2リードを取った三走大下が戻れずサード藤村がベースに入ってダブルプレー。


 タ軍は6回裏、先頭の本堂がレフト線に二塁打、土井垣の遊ゴロの間に本堂は三進、御園生の三ゴロをサード横沢がエラーする間に三走本堂が還って4-2、御園生が二盗を決め、富樫に代わる代打小俣のニゴロが進塁打となって二死三塁、4割バッター渡辺が右前にタイムリーを放ち5-2とリードを広げる。更に長谷川善三がライトに二塁打を放ち二死二三塁、しかしトップに返り金田はニゴロに倒れて追加点はならず。


 試合展開からこのままタ軍が逃げ切るかと思われたが勝負は下駄を履くまで分からない。


 セ軍は7回表、先頭の石原光男が四球を選んで出塁、横沢の右越え二塁打で一走石原が還って3-5、中継の間に横沢は三塁に進み、トップに返り一言は三振、鈴木清一は一ゴロに倒れて二死三塁、飯島がライト線にタイムリーを放ち4-5、大下のニゴロをセカンド本堂がエラーして二死一二塁、ここで五番ピッチャー黒尾が右越えに逆転の三塁打を放ち6-5と試合をひっくり返す。


 セ軍先発の黒尾重明は7回裏を三者凡退に抑え、8回は先頭の土井垣に右前打を許すが、一死後小俣を二ゴロ併殺に仕留めて無失点。


 黒尾は最終回、最後の力を振り絞って乾国雄を三振、長谷川を三飛、金田を三振に打ち取り、自ら放った逆転打のリードを守り切る。


 タ軍ダイナマイト打線は6本の二塁打と1本の三塁打で得点を積み重ねたが、これだけ長打が出た割には5点しか取れなかったことが敗因、どこかでもう1本が出ていたら結果は違っていた。「日本野球年鑑」には7回タ軍の攻撃で「渡辺がベースを踏み忘れる失態」と書かれており、長谷川の二塁打でホームに還れたところを三塁止まりになってしまったようだ。


 黒尾重明は10安打無四球6三振の完投で2勝目をあげる。7本の長打を浴びたが、四球を出さなかったことが勝因である。



2019年12月20日金曜日

21年 グレートリングvsタイガース 4回戦


6月2日 (日) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 2 0 2 0 0 0 1 5 グ軍 11勝9敗 0.550 丸山二三雄 
0 4 0 0 1 0 0 3 X 8 タ軍 11勝9敗 0.550 呉昌征 

勝利投手 呉昌征        4勝1敗
敗戦投手 丸山二三雄 4勝3敗 

二塁打 (グ)堀井 (タ)呉、長谷川、本堂
三塁打 (タ)本堂

勝利打点 (タ)藤村冨美男 1

猛打賞 (グ)岡村俊昭 1、堀井数男(4安打)1


呉昌征、オール完投で4勝目

 第1試合が2時間30分かかったため、西宮の第2試合は午後1時15分、杉村主審の右手が上がりプレイボール。この試合は杉村と金政の二氏審判。

 タ軍は渡辺誠太郎を五番ファーストに起用。渡辺は本職の投手ではここまで1勝5敗と冴えないが、打撃では35打数14安打で打率4割をマークしている。これまでも代打や一塁の守備で起用されてきたが、スタメン野手はこの試合が初めてで、いきなり五番に起用されることとなった。


 また、タ軍は土井垣を二番キャッチャーで起用。土井垣のスタメン二番はプロ入り初のこととなる(日本プロ野球私的統計研究会様「スタメンアーカイブ」参照)。


 グ軍は初回、二死後岡村が右前打で出塁するとワイルドピッチで二進、山本一人監督は四球を選んで二死一二塁、ここで岡村がディレード気味にスタートを切るがに三本間の挟殺プレーでタッチアウト。


 グ軍は2回、先頭の堀井数男が三遊間に内野安打、堀井は一塁ベースを蹴って強引に二塁を狙うが「6-4」と渡ってタッチアウト。


 タ軍は2回裏、先頭の藤村がストレートの四球で出塁、渡辺の三ゴロでランナーが入れ替わり、富樫淳もストレートの四球、小俣秀次は三振に倒れて二死一二塁、長谷川善三が右前に先制タイムリーを放ち1-0、呉昌征の左中間二塁打で2-0、トップに返り金田が右前に2点タイムリーを放ちこの回4点を先制する。


 グ軍は3回表、先頭の筒井敬三が左前打で出塁、トップに返り安井が送りバントを決め、河西が四球を選んで一死一二塁、岡村のライト線ヒットで一死満塁、山本は三飛に倒れるが、堀井がレフト線に2点タイムリー二塁打を放ち2-4と追い上げる。


 グ軍は5回表、先頭の安井が四球から二盗に成功、土井垣の悪送球もあって安井は三進、河西も四球を選び、岡村の二遊間タイムリーで3-4、山本の投ゴロで河西は二封されて一死一三塁、堀井が中前に同点タイムリーを放ち4-4と追い付く。なおも一死一三塁のチャンスが続き、木村勉のニゴロで三走山本がホームを狙うが三本間に挟まれタッチアウト、山本が時間を稼いだため二死二三塁とするが、丸山は三振に倒れて逆転はならず。


 タ軍は5回裏、一死後本堂が左中間を深々と破る三塁打、藤村が左前にタイムリーを放ち5-4と勝ち越す。


 タ軍は6回に長谷川、7回に本堂が先頭打者として二塁打を放つが、長谷川は呉の投ゴロに飛び出して三塁タッチアウト、本堂は丸山からの牽制に刺されてタッチアウトと走塁ミスが続いて無得点。


 タ軍は8回、先頭の小俣が四球を選んで出塁、長谷川が送りバントを決め、呉の三塁内野安打で一死一三塁、ここで呉がディレード気味にスタートを切るが「1-6-3」と渡ってタッチアウト、ここも走塁ミスでチャンスを潰したかに見えたが、金田は四球、土井垣も四球を選んで二死満塁、本堂の当りは遊ゴロ、これをショート宮崎仁郎がエラー、三走小俣に続いて二走金田も還って7-4、二死一二塁から藤村が右前にタイムリーを放ち8-4と突き放す。


 グ軍は9回表、安井と河西の連打で無死一二塁、岡村は一飛に倒れ、山本に代わる代打別所の遊ゴロで河西は二封されて二死一三塁、堀井がレフト線にこの日4本目のヒットを放ち5-8としてなお二死一二塁、しかしここで二走別所が呉の牽制に釣りだされて「1-6-5」と渡って試合終了。


 グ軍は10安打5打点9残塁、タ軍は11安打6打点9残塁と試合内容は互角であったが、グ軍は自慢の守備と走塁が乱れての敗戦となった。序盤の走塁ミスと、8回に宮崎の2点タイムリーエラーで決定的な追加点を与えたのが響いた。


 藤村冨美男は開幕から63打数24安打15打点と猛打を振るっているが、この試合が初の勝利打点。


 呉昌征は10安打6四球9三振で完投、4勝目をマークする。



2019年12月19日木曜日

21年 セネタースvs中部日本 4回戦


6月2日 (日) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11  計 
0 0 8 2 2 0 0 1 1  0   0  14 セ軍 7勝13敗 0.350 大下弘 上口政 一言多十 
1 2 3 0 3 0 5 0 0  0  1X 15 中部 8勝10敗2分 0.444 林貞明 森井茂 西沢道夫 

勝利投手 西沢道夫 1勝3敗
敗戦投手 一言多十 1勝4敗 

二塁打 (セ)鈴木、長持、横沢、飯島、一言、石原 (中)笠石、加藤
三塁打 (中)藤原
本塁打 (セ)大下 1号 (中)加藤 4号

勝利打点 (中)木下政文 2

猛打賞 (セ)大下弘(4安打)2、熊耳武彦 4、横沢七郎 1 (中)加藤正二(4安打)1、藤原鉄之助 1


壮絶な打撃戦

 本日は西宮で2試合のみ。第1試合は大下弘と林貞明の先発で午前10時25分、金政主審の右手が上がりプレイボール。

 大下は今季3度目の先発で初めての「四番ピッチャー」。


 セ軍は初回、一死後鈴木清一が左中間に二塁打、しかし飯島と大下が共に中飛に倒れて無得点。鈴木は前日の試合でも二塁打を2本放っており、これが今季13本目のヒットとなるが二塁打4本、三塁打2本と長打が約半分、打率こそ2割そこそこであるが長打力があり、昭和21年のリーグ最多三塁打14本をマークすることになる。


 中部は1回裏、岩本、金山が連続四球、古川が送って一死二三塁、加藤正二の左前タイムリーで1点を先制する。


 中部は2回裏、先頭の服部がライト線にヒット、笠石徳五郎は四球、林が送りバントを決めて一死二三塁、藤原鉄之助の右犠飛で2-0、トップに返り岩本の右前タイムリーで3-0とする。


 セ軍は3回表、先頭の横沢七郎が中前打で出塁、トップに返り一言多十も右前打、鈴木のニゴロで一言が二封されて一死一三塁、鈴木が二盗を決め、飯島が四球を選んで一死満塁、ここで大下がライトスタンドにプロ入り初ホーマー、大下の初本塁打は逆転満塁弾であった。4-3と試合をひっくり返すと長持もライト線に二塁打、北川圭太郎、熊耳武彦が連続四球で再度一死満塁、中部ベンチはここで先発の林から森井茂にスイッチ、しかしキャッチャー服部からの三塁牽制が悪送球となって三走長持が還り5-3、一死二三塁から根津弘司の遊ゴロをショート金山が一塁に悪送球する間に三走北川が還り6-3、更に横沢の右越え二塁打で二者還って8-3とリードする。


 中部は3回裏、先頭の古川は四球、加藤が左前打で続いて無死一二塁、木下政文は三振に倒れるが、服部が左前にタイムリーを放ち4-8、笠石がセンター右奥へ二塁打を放って二者還り6-8、セ軍ベンチはここで大下をレフトに回し、レフトの北川に代わり上口政が入ってマウンドに上がり後続を抑える。


 セ軍は4回表、3回の守備から鈴木に代わってショートに入っている石原光男の当りは遊ゴロ、これを金山がエラー、飯島の左越え二塁打で無死二三塁、大下はニゴロ、長持は三振に倒れて二死二三塁、ここで上口の遊ゴロを又も金山がエラー、三走石原が還って9-6、熊耳のレフト線タイムリーで10-6とリードを広げる。


 セ軍は5回表、先頭の横沢が中前打で出塁、トップに返り一言の右越え二塁打で無死二三塁、石原の右犠飛で11-6、二走一言はタッチアップから三塁に進み、飯島の中犠飛で12-6と突き放す。


 中部は5回裏、服部、笠石の連続四球で無死一二塁、森井に代わる代打西沢道夫は三振に倒れるが、藤原が右中間に三塁打を放ち8-12、トップに返り岩本の三ゴロの間に藤原が還って9-12と追い上げる。


 中部は6回から森井の代打に出た西沢がそのままマウンドに上がる。


 中部は7回裏、笠石、西沢が連続四球で無死一二塁、セ軍は上口がセンターに回りセンターの一言がマウンドに上がる。藤原がライトにタイムリーを放ち10-12としてなお無死一三塁、藤原が二盗を決め、岩本は遊ゴロに倒れるが、金山が四球を選んで一死満塁、古川の三ゴロの間に三走西沢が還って11-12、二死二三塁から加藤がレフトスタンドに逆転スリーランを叩き込み14-12と大逆転に成功する。


 セ軍は8回表、先頭の横沢の当りはニゴロ、これをセカンド木下がエラー、トップに返り一言の遊ゴロでランナーが入れ替わり、、石原の左越え二塁打で一死二三塁、飯島が四球を選んで一死満塁、大下のライト線タイムリーで13-14と1点差に追い上げる。


 セ軍は9回表、先頭の熊耳が左前打で出塁すると代走に宮下義雄を起用、根津が送りバントを決めて一死二塁、ここで横沢が左前に同点タイムリーを放ち14対14と追い付く。


 中部は9回裏、一死後古川が四球を選ぶと二盗に成功、加藤は当然敬遠、木下は捕邪飛に倒れるが、服部はストレートの四球で二死満塁、続く笠石の打席で三走古川がホームスチールを試みるがタッチアウト、試合は延長戦に突入する。


 セ軍は10回表、二死後長持が四球で出塁すると二盗を試みるがキャッチャー服部からの送球にタッチアウト。


 中部は10回裏、二死後藤原が左前打で出塁すると二盗に成功、しかし岩本は捕邪飛に倒れて無得点。


 セ軍の11回表は三者凡退。


 中部は11回裏、先頭の金山が二遊間にヒット、金山が二盗を決め、古川は三振に倒れて一死二塁、加藤は敬遠で一死一二塁、ここでダブルスチールを決めて一死二三塁、木下が左前にサヨナラヒットを放ち15対14で激闘を制す。



2019年12月17日火曜日

秘術の好投


 巨人打線を延長10回1点に抑え切った天保義夫のピッチングについて、「日本野球年鑑」に「秘術の好投」と書かれている。

 昭和17年から19年に合計24勝をあげた天保は、戦時中の勤労奉仕で右手中指を欠損したため、ナックルボールを習得して戦後のプロ野球界に復帰してきた。


 そのピッチングスタイルを、「日本野球年鑑」は「秘術」と表現しているのである。ここから今西錬太郎と共に、天保・今西時代を築いていくこととなる。


 阪急は伝統的に巨人に分が悪く、長期リーグ戦が始まった昭和12年以降の10シーズン(12年、13年は春秋2シーズン制)通算で31勝65敗と大きく負け越している。阪急が勝ち越したのは石田光彦が2勝をあげた13年春(4勝1敗)と笠松実が巨人キラーぶりを発揮して3勝をあげた19年(5勝1敗)の2度だけで、16年も笠松が4勝をマークして6勝6敗1分けの五分であった。その他のシーズンは巨人が圧勝、特にスタルヒンが阪急をカモにしており、14年は対阪急戦11勝1敗のうちスタルヒンは10勝0敗、戦前の巨人の65勝のうち41勝はスタルヒンがマークした。スタルヒンが300勝投手になれたのは阪急のお蔭であると言える。


 戦後阪急が巨人と対戦するのは1リーグ時代の4年間だけ(日本シリーズ、オープン戦等を除く)であるが、22年は今西が対巨人戦9勝をあげて9勝8敗、24年は天保が7勝をあげて11勝8敗と、2度勝ち越すことになる。4年間通算では28勝43敗と相変わらず分が悪いが、今西と天保が巨人キラーとして活躍する。



*「秘術の投球」を見せた天保義夫の直筆サイン入りカード。ユニフォームは21年、22年に使用されたもののようだ(綱島理友著「日本プロ野球ユニフォーム大図鑑」参照)。


21年 巨人vs阪急 5回戦


6月1日 (土) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計 
0 0 0 0 1 0 0 0 0  0  1 巨人 10勝9敗1分 0.526 藤本英雄 
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1X 2 阪急 13勝8敗 0.619 天保義夫 

勝利投手 天保義夫 5勝1敗
敗戦投手 藤本英雄 4勝3敗 

二塁打 (巨)藤本 (急)野口明

勝利打点 (急)青田昇 2


青田がサヨナラ打

 後楽園の第2試合は藤本英雄と天保義夫の先発で午後3時11分、池田球審の右手が上がりプレイボール。

 巨人は初回、一死後山川が四球を選んで出塁、続く千葉の打球は右翼後方へ、これをライト野口二郎がナイスキャッチ、このプレーについて「雑記」欄にわざわざ「背走好捕」と書かれている。ウィリー・メイズのような背面キャッチであったかどうかは不明。二死一塁から黒沢の右前打で山川は三塁に進むが、多田は三ゴロに倒れて無得点。


 阪急は1回裏、先頭の山田伝がストレートの四球で出塁、野口二郎と青田は共に初球を叩いて外野飛球に終わるが、野口明の右中間二塁打で一走山田が一気にホームに還って1点を先制する。


 2回から4回まで無安打の巨人は5回表、先頭の林清一が左前打で出塁、諏訪裕良は左飛に倒れるが、藤本の右中間三塁打で林が還って1-1の同点とする。


 その後は天保、藤本の投げ合いで9回まで両軍無安打。


 巨人は10回表、先頭の藤本がレフト線にヒットを放って出塁、続く山田潔のカウントがノーボールツーストライクのところで天保が一塁に牽制、藤本は釣りだされて一二塁間に挟まれるが、ファースト野口明からの送球が悪送球となる間に藤本は三塁まで進んで無死三塁、山田が四球を選んで無死一三塁、トップに返り呉新亨の打席で山田が二盗を決めて無死二三塁、呉は一邪飛に倒れて一死二三塁、山川も投ゴロに倒れて二死二三塁、千葉も遊ゴロに倒れて絶好のチャンスを逃す。


 ピンチの後にはチャンスあり、阪急は10回裏、先頭の山田伝が四球を選んで出塁、野口二郎は一飛に倒れて一死一塁、続く青田の打席で山田が勝負の二盗を決めて一死二塁、青田が期待に応えて右翼線にヒット、二走山田がサヨナラのホームを駆け抜け阪急が接戦をものにする。


 阪急は5回戦にして対巨人戦で初勝利。


 天保義夫は4安打6四球2三振の完投で5勝目をマークする。


 藤本英雄は9回3分の1を完投して6安打6四球4三振。2つの失点は何れも先頭打者を四球で歩かせたもの、力任せのピッチングから徐々に脱皮してきてはいるが、依然として悪い癖が抜けきらない。


 10回の攻防で両軍の「山田」が見せた「盗塁」が明暗を分けた。9回裏の山田伝の二盗は勝負を賭けたもので賞賛されるが、10回表の山田潔の二盗はどうか。一三塁だと守備側は複数のパターンに対応する必要があるが、二三塁だと選択肢が狭まり開き直って守ることができる。1点勝負のあの場面では、敢えて一塁走者を動かさない手があったのではないか。


 サヨナラ打の青田昇はこの試合まで82打数26安打、打率3割1分7厘と開幕から好調を続けてきたが、打点は20試合で僅かに「5」とチャンスにからっきし打てなかった。ようやく本領発揮というところか。なお、5月の月間MVP発表時に「8個で現在盗塁王」とお伝えしていましたが、5月31日現在では坪内道則が11個で盗塁王でした。この場をお借りして訂正させていただきます。



*野口二郎のキャッチについて、「雑記」欄には読みずらいですが「背走好捕」と書かれている。


2019年12月13日金曜日

21年 パシフィックvsゴールドスター 3回戦


6月1日 (土) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 3 0 1 0 0 4 0 8 パ軍 10勝11敗2分 0.476 湯浅芳彰 
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ゴ軍 9勝10敗1分 0.474 石田光彦 江田孝 

勝利投手 湯浅芳彰 2勝3敗
敗戦投手 石田光彦 4勝6敗 

二塁打 (パ)小島
三塁打 (パ)森下

勝利打点 (パ)森下重好 4

猛打賞 (パ)森下重好 5


湯浅芳彰、1安打完封

 後楽園の第1試合は午後1時8分、島球審の右手が上がりプレイボール。

 パ軍は3回表、先頭の木暮力三が右前打で出塁、富松信彦も右前打で続いて、無死一二塁、小島利男は中飛に倒れるが、森下重好が中前に先制タイムリーを放ち1-0、辻井弘の当りはセカンドライナー、捕球した大友一明が一走森下が飛び出したのを見て一塁に送球するが悪送球、この間に二者進塁して二死二三塁、伊勢川真澄が左前に2点タイムリーを放ち3-0とする。


 パ軍は5回表、一死後辻井がスリーボールツーストライクから2球ファウルで粘って四球で出塁、続く伊勢川が右前打を放つと辻井は三塁に進み、送球の隙をついてホームを陥れ4-0とする。この走塁に対して「本盗」が記録された。スコアカードによると、辻井の三塁進塁は伊勢川の右前打による進塁、そして本塁へのホームスチールが記録され、「雑記」欄に「盗塁は9-4-2の間に行われた」と補記されている。送球ミスがあったのならば辻井のホームインは誰かの「失策」によるものと記録されるが、「本盗」が記録されているということは、守備側にミスがあったのではなく、辻井が守備側の隙をついてホームベースに駆け込んだことを意味する。6回の守備からライトの末崎正隆は早川平一と交代しているので、ゴ軍の坪内監督としては、末崎の送球に不満があったのかもしれない。


 パ軍は8回表、一死後木暮が四球で出塁、富松の左前打で一二塁、続く小島の当りは三塁線に飛びベースに当たってラッキーな二塁打となり5-0、一死二三塁から森下がセンター左奥を深々と破る三塁打を放ち7-0、辻井は一ゴロに倒れるが、伊勢川の左飛をレフト田中宣顕が落球する間に辻井が還って8-0として試合を決める。


 パ軍先発の湯浅芳彰が快投を見せた。


 初回と2回は先頭打者を四球で歩かせたが後続を打ち取り、3回は三者凡退。4回、一死後田中宣顕に一塁線にドラッグバントを決められ初ヒット、ワイルドピッチで田中を二進させるが、菊矢吉男を三飛、石田光彦を左飛に打ち取り無失点。


 5回以降はゴ軍打線を無安打に封じ込め、1安打3四球無三振の完封で2勝目をあげる。


 湯浅芳彰は滝川中学時代は戦前にプロ入りした三田政夫、田中幸男、伊東甚吉と共に甲子園で活躍、卒業後は満州に渡り昭和13年の都市対抗には鞍山市代表の昭和製鋼のエースとして出場した。昭和15年の「満州遠征」時にも昭和製鋼に在籍していたならば、鞍山の昭和製鋼球場で行われた試合を観戦していたはずである。プロでの成績は2年間で4勝15敗であるが、この年の7月には渡辺誠太郎と歴史的な投手戦を繰り広げることとなる。



*湯浅が許した唯一のヒットは田中のバントヒットであった。左打者による一塁線へのバントヒットはドラッグバントの可能性が高い。


2019年12月11日水曜日

21年 中部日本vsタイガース 3回戦


6月1日 (土) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 2 1 0 1 0 1 0 0 5 中部 7勝10敗2分 0.412 井上嘉弘 森井茂 
0 0 0 0 0 0 1 0 2 3 タ軍 10勝9敗 0.526 野崎泰一 富樫淳 藤村冨美男 

勝利投手 井上嘉弘 1勝0敗
敗戦投手 野崎泰一 2勝3敗
セーブ     森井茂 1 

二塁打 (中)古川、加藤、金山
三塁打 (中)古川
本塁打 (中)木下 1号、2号

勝利打点 木下政文 1


木下政文、戦後初の2打席連続本塁打

 西宮の第2試合は午後零時20分、金政主審の右手が上がりプレイボール。第1試合は杉村、金政、片岡の三氏審判であったが、この試合は金政、杉村の二氏。片岡勝は球団の用事があったのかもしれない。後楽園の第1試合は午後1時開始予定で、まだ始まっていない。

 中部は2回表、先頭の木下政文がレフトスタンドにホームランを叩き込んで1点を先制、続く服部受弘は四球、笠石徳五郎のニゴロをセカンド本堂が一塁に悪送球して無死一三塁、井上嘉弘は二飛、金山次郎は浅い左飛に倒れて二死一三塁、トップに返り岩本章の三ゴロをサード藤村が一塁に悪送球する間に三走服部が還って2-0とする。


 中部は3回表、二死後木下がレフトに2打席連続ホームラン、3-0とリードする。


 タ軍は4回から先発の野崎泰一に代えて富樫淳をマウンドに送る。


 中部は5回表、先頭の岩本が四球を選んで出塁、二死後岩本が二盗を決めると、加藤正二が左中間に二塁打を放ち4-0、続く木下の三遊間の当りが二走加藤に当たって守備妨害。


 中部は7回表、先頭の金山が左越えに二塁打、トップに返り岩本の打席で金山が三盗を試みるがキャッチャー土井垣からの送球にタッチアウト、岩本は四球、藤原もストレートの四球を選んで一死一二塁、タ軍ベンチはここで富樫をライトに回してサードから藤村がマウンドに上がり、古川清蔵も四球を選んで一死満塁、鈴木秀雄の右犠飛で5-0と突き放す。


 タ軍は7回裏、先頭の御園生が死球を受けて出塁、土井垣のニゴロでランナーが入れ替わり、乾国雄に代わる代打渡辺誠太郎のライト線ヒットで一死一三塁、富樫の遊ゴロ併殺崩れの間に三走土井垣が還って1点を返す。


 タ軍は9回裏、先頭の小林英一の当りは投ゴロ、これをピッチャー井上が一塁に悪送球、小林が二盗に成功、キャッチャー服部の悪送球が加わり小林は三進、土井垣が四球を選んで無死一三塁、渡辺が右前にタイムリーを放ち2-5、土井垣は三塁に進んでなおも無死一三塁、渡辺に代えて代走高山泰夫を起用、富樫の二遊間タイムリーで3-5としてなおも無死一二塁、中部ベンチはここで井上からエース森井茂にスイッチ、長谷川善三の投ゴロを森井は三塁に送球して二走高山は三封、トップに返り呉昌征は投ゴロに倒れて二死二三塁、金田正泰はツーストライクナッシングと追い込まれてから四球を選んで二死満塁、打席に主砲藤村冨美男監督を迎えるが、藤村は遊ゴロに倒れてゲームセット。


 井上嘉弘は戦前に1勝しておりこれが通算2勝目、今季はこの1勝だけとなる。中部は井上が森井以外では初勝利。その森井は好リリーフで初セーブをマーク、依然として中部の全勝利に貢献している。


 木下政文の「back to back」は戦後初の2打席連続本塁打である。木下はこの年この2本しか本塁打を放っていない。


 中部は8安打中6本が長打、木下の2発以外にも、古川、加藤、金山の本塁打王経験者が二塁打を放つなど、「ダイナマイト打線」以上の迫力を見せた。



2019年12月10日火曜日

21年 セネタースvsグレートリング 2回戦


6月1日 (土) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8  9  計 
0 0 3 1 0 1 0 0  5 セ軍 7勝12敗 0.368 黒尾重明 大下弘 黒尾重明 
0 0 0 0 0 0 0 1 5X 6 グ軍 11勝8敗 0.579 松川博爾 

勝利投手 松川博爾 2勝3敗
敗戦投手 黒尾重明 1勝3敗 

二塁打 (セ)鈴木2
三塁打 (グ)堀井

勝利打点 (グ)丸山二三雄 2


グ軍、大逆転勝ち

 本日から3日間、西宮の試合は午前10時半試合開始予定。

 西宮の第1試合は黒尾重明と松川博爾の先発で午前10時30分、杉村主審の右手が上がりプレイボール。


 セ軍は初回、一死後横沢七郎が四球を選んで出塁、飯島のニゴロをセカンド安井が二塁に送球するがショート桶川隆が落球して一死一二塁、本日はレフトに入り四番に復帰した大下の一ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、黒尾は三振に倒れて無得点。


 セ軍は3回表、一死後一言多十が四球で出塁、横沢は三飛に倒れるが、一言が二盗に成功、飯島のニゴロをセカンド安井がエラーする間に二走一言がホームに還って1点を先制、大下の右前打で二死一三塁、ここで大下が二盗に成功、キャッチャー筒井敬三からの二塁送球が悪送球となって三走飯島が生還、大下は三塁に向かい、バックアップのセンター木村勉からの三塁送球も悪送球となって大下が一気に生還、この回3点を先制する。


 守備が固いグ軍としては珍しくミスが重なりこの回3失策。


 セ軍は4回表、先頭の熊耳武彦が四球で出塁、石原光男が送りバントを決めて一死二塁、この時ファースト別所が二塁に送球するが悪送球となって一死三塁、鈴木清一が中越えに二塁打を放ち4-0とリードを広げる。


 セ軍は5回表、先頭の大下が四球で出塁、しかし黒尾の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。ここまで5失策のグ軍守備陣がようやくまともなプレーを見せた。


 セ軍は6回表、先頭の熊耳が四球で出塁、石原が送って一死二塁、鈴木が左中間にこの日2本目のタイムリー二塁打を放ち5-0と突き放す。


 セ軍は7回表、一死後飯島が左前打で出塁すると二盗に成功、しかし大下は三振、黒尾は二飛に倒れて無得点。


 グ軍は8回裏、二死後5回の守備から岡村に代わってライトに入っている田川豊がストレートの四球で出塁するとプロ入り初盗塁に成功、堀井数男が中前にタイムリーを放ち1点返して1-5とする。山本一人監督は続く別所に代打丸山二三雄を起用、しかし丸山はニゴロに倒れてこの回1点止まり。


 グ軍は最終回、先頭の木村が左前打で出塁、桶川に代わる代打阪本政数の遊ゴロをショート鈴木が二塁に悪送球して無死一二塁、阪本の代走に野口渉を起用、松川の遊ゴロで野口は二封、筒井が四球を選んで一死満塁、トップに返り安井が押出し四球を選んで2-5、河西に代わる代打清水秀雄も押出し四球を選んで3-5と2点差、セ軍ベンチはここで黒尾をレフトに回してレフトの大下をマウンドに上げる。しかし大下も田川にストレートの押出し四球を与えて4-5と1点差、セ軍は黒尾を再びマウンドに戻して大下はレフトへ。ところが黒尾はストライクが入らず堀井も押出し四球を選んで遂に5-5の同点、そして丸山がライトにサヨナラヒットを放ち、グ軍が6-5と大逆転サヨナラ勝ち。


 松川博爾は5安打7四球5三振の完投で2勝目をあげる。


 グ軍は前半5失策を犯したが、松川が4度も先頭打者を四球で歩かせ守備のリズムが乱れたことが原因。


 黒尾も合計7個の四球を出したが7回までは2四球。8回に田川を四球で歩かせプロ入り初盗塁を許したのが痛かった。田川の盗塁が試合の流れを一気に変えたとも言える。


 山本一人監督は終盤選手を入れ替えながら粘り強くセ軍を追いかけ、最後は別所に代えて起用した丸山が期待に応えた。丸山は5月27日の阪急戦に続いて今季2本目のサヨナラヒット。近い日にちで2本のサヨナラヒットは、昭和14年11月5日と9日にスタルヒンも記録している。


 グ軍はこれが今季3度目のサヨナラ勝ち。「鶴岡野球」らしいえげつない勝ち方である。


阪本政数の表記について


 グレートリング「阪本政数」の表記について、これまで「坂本政数」と誤って記載していました。大変失礼いたしました。訂正のうえ謝罪させていただきます。

 昭和18年の1個所も含めて気が付いた範囲で全て訂正したつもりですが、未訂正の表記が残されている可能性もありますのでご了承ください。


 なお、ゴ軍の「坂本勲」と巨人の「坂本茂」は「坂本」姓となりますので、グ軍vsゴ軍戦、グ軍vs巨人戦では混同しないようにご注意ください。