2014年8月13日水曜日

バンビ



 高校野球ファンであれば‟バンビ”の愛称は1977年夏の甲子園で東邦高校を準優勝に導いた1年生投手・坂本佳一である事は先刻ご承知のことでしょう。


 アサヒグラフの論評で坂本のピッチングを振り返ってみましょう。


 初登場となった2回戦の高松商業戦は「東邦の坂本投手の荒れ球にほんろうされ・・・」、「坂本の高めのボール球に、各打者は的をしぼれぬまま手を出し・・・」高松商業は最終回に三番黒坂が左中間にホームランを放って一矢を報いたが坂本の捉えどころのないピッチングに翻弄されたようです。東邦6対2高松商業。


 3回戦は黒沢尻工業を完封しますが坂本のコメントは「今日のピッチングはやや不満です。ボールの数が少し多かったから。・・・先輩が併殺にとって助けてくれ、楽になりました。途中からスライダーがよく決まったので、これで三振がとれました。」東邦8対0黒沢尻工業。


 準々決勝も熊本工業を完封。「お客さんが多い方が投げやすい」・・・「負けるつもりで放っています」と無欲に投げる。マウンドでは笑顔を絶やさず・・・自分のペースを崩さない。・・・甲子園にやってきて、大矢捕手のリードのままに投げ続けるうちに、「黒鶴」のあだ名のある坂本は、好投手へと飛翔した。このコメントからも分かるように、坂本佳一は真っ黒に日焼けした首の長い容貌から「黒鶴」と呼ばれていたのです(笑)。大矢捕手のコメントは「今日の坂本の出来は最高、・・・とくにシュートのきれがよくなっています。投げるたびに成長しているので、驚いているんですよ。」。東邦4対0熊本工業。


 準決勝の大鉄戦は苦戦となりました。「初戦は2失点、二戦目が6安打完封、三戦目は2安打完封と、投げるたびに恐ろしいほど自信をつけて、準決勝にのぞんだ」坂本は7回に大鉄の鍛冶本にホームランを浴びてこの時点で1対3と2点のビハインド、8回に三番大矢捕手の同点タイムリーなど先輩の活躍で逆転してもらいました。坂本も送りバントで逆転劇に貢献しています。東邦5対3大鉄。



 決勝の東洋大姫路戦は結構有名なので詳しくは書きません。東洋大姫路の四番・安井のサヨナラスリーランの前、二死二塁の場面で東邦ベンチは三番松本を歩かせました。この場面をアサヒグラフは「三番松本に対するとき坂本-大矢のバッテリーが歩み寄り、そこへベンチの指示を伝える背番号10の宮本賢が駆け寄った。松本との勝負を避ける戦術だった。ベンチを振り返って、坂本がニコッと笑った。白い歯が見える可愛い笑顔は、幼い。」。


 
 何故坂本が「バンビ」と呼ばれたかが良く分かる場面ですね。


 東洋大姫路のエース剛腕サウスポーの松本正志(阪急入団後の1979年~83年は松本祥志)の控えがヤクルトの準エースとして活躍した宮本賢治でした。少しややこしいですが東邦のベンチにも控えの「宮本賢」がいたようです。



 筆者の大学1年の時で、この頃には小学生時代や中学生時代ほど野球を見るヒマが無かったので準決勝までは見ていません。但し、坂本の人気ぶりは知っていました。筆者が坂本の名前をはっきりと認識したのは夜の音楽関係のラジオ番組でした。ここで「バンビ坂本」がアイドル並みに語られているのを聞いて認識したのです。


 決勝戦は自宅のテレビで見ていた記憶があります。8月の甲子園の頃は夏合宿のはずですが何故かこの日は自宅のテレビで見ていました。安井のサヨナラホームランの時は、何かが起きそうな雰囲気がありましたね。生まれが神戸なので東洋大姫路を応援していたからかもしれませんが。東洋大姫路4対1東邦。



 2014年、甲子園に出てきた東邦高校は一年生投手・藤嶋健人の好投で1回戦を突破しました。本日のスポニチに掲載されている坂本佳一のコメントは「藤嶋投手は期待される中で先発し、それに応えたのは素晴らしい。勝つために厳しい練習をしてきたと思う。チーム全体として優勝という大きな目標に向かってほしい。」。


 藤嶋は‟アンパンマン”と呼ばれる丸々とした愛くるしい風貌で、‟バンビ”坂本のようなアイドルにはなれないでしょう。坂本は藤嶋に‟バンビ”超えを期待しているようですが、甲子園のアイドル‟バンビ坂本”は永久に不滅です(笑)。


 昨日の第四試合で藤代高校に初回に8点取られながら12対10で逆転勝ちした大垣日大の坂口慶三監督はバンビが活躍した時の東邦高校の監督でした。‟鬼の坂口”も37年の時を経て‟仏の坂口”に変貌を遂げています。坂口監督は今年70歳です。一年生投手をよくリードした大矢捕手は法政大学に進んで東京六大学で活躍し、国鉄名古屋鉄道管理局でも都市対抗で活躍、JR東海の監督を務め、現在はNHK甲子園中継の解説者として活躍しています。


*毎度のことですが、当ブログでは野球人については敬称略とさせていただいておりますのでご了承ください



*禁じ手ではありますが、アサヒグラフの写真を掲載させていただきます。肖像権等に抵触するようでしたら削除させていただきます。


*東洋大姫路松本投手の豪快なピッチングフォーム。






‟バンビ坂本”を捉えた一瞬。グローブが異様に大きく見えたのが印象的でした。





*いいシーンでしょう(笑)。






 

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