１２年春 金鯱vsセネタース ３回戦

5月19日（水）上井草


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 0 0 0 2 0 0 0 4　金鯱　　　　　 ９勝１４敗１分　0.391　古谷倉之助
0 0 0 0 0 0 0 0 2 2　セネタース　１５勝９敗　　　　 0.625　伊藤次郎-浅岡三郎


勝利投手　古谷倉之助　５勝５敗
敗戦投手　伊藤次郎　　３勝２敗


古谷倉之助、会心の投球ぶり


　金鯱の先発古谷倉之助、セネタースの先発伊藤次郎と好調同士の対決とあって興味が尽きない。金鯱は2回、二死から小林利蔵が四球で出塁、瀬井清の右翼線二塁打で小林が一挙ホームを陥れて1点を先制。更に江口行男が右中間に三塁打を放ち下位打線の活躍で2点を先制する。尤も下位打線と言っても小林利蔵は古谷倉之助が四番に入っているため六番に下がっているだけであり、瀬井清、江口行男は一二番も打てる、と言うことは金鯱打線は切れ目のない好打線となっていきたということか。この日の打線は四番を打つこともある黒澤俊夫が一番に入り二番相原輝夫、三番三上良夫、五番小林茂太で、これなら豪華な下位打線が組める。セネタースはこの回で伊藤をあきらめ3回から浅岡三郎をリリーフに送り伊藤はライトに入る。

　金鯱は6回、相原、三上が連続四球、四番古谷は三遊間を破り相原本塁を狙うもレフト大貫賢のバックホームに刺される、この間に三上は三塁、打者走者の古谷は二塁へ進む。続く小林茂の三ゴロをサード今岡謙次郎が一塁に悪送球する間に二者が還って4-0となり小林茂は二塁へ、小林利中前に弾き返すがセンター尾茂田叶のバックホームに小林茂が刺されてチェンジ。金鯱の積極的な走塁とセネタース外野陣の好返球及びキャッチャー北浦三男の好ブロックが目立つ。

　エースで四番の古谷倉之助はこの日も快調なピッチングでセネタース打線を手玉にとり4回まで無安打1四球、5回に中村民雄、大貫賢（後述参照）に二本のヒットを許すも無得点に切り抜ける。6回から8回も無安打。セネタースは9回裏、ヒットの苅田と四球の中村民雄を塁上に置いてライトに残しておいた伊藤次郎が左翼線に2点タイムリー二塁打を放ち4-2と追い上げるがここまで。結局古谷倉之助は4安打4四球3三振の完投で5勝目をあげる。

　翌日の読売新聞誌上で市岡忠男は古谷倉之助の投球について、「古谷は徹頭徹尾チェンジ・オブ・ペースを武器とし、これによく曲る大きなアウドロ（筆者注：アウトドロップ、右打者の外角に曲がり落ちるカーブのこと）を加えて打者の目先を変え鮮やかにも勝因を作った、前半戦に与えた安打は僅か5回の二本で中村民の一本はクリーンヒットであったが大貫の安打は守備妨害による記録上のものという整然たるピッチングであった。」と論じている。