6月12日 (土) 甲子園
1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 名古屋 14勝22敗 0.389 田中実
2 2 0 0 0 1 1 0 X 6 阪急 17勝17敗1分 0.500 北井正雄
勝利投手 北井正雄 2勝3敗
敗戦投手 田中実 7勝6敗
二塁打 (名)田中実 (阪)宇野
三塁打 (阪)山下好一
北井正雄、今生の快投
投げられる体ではない北井正雄が快投を見せた。サイドに近いスリークオーターから繰り出される切れ味鋭いシュート、ストレート、十字架球は全盛期に近いものであった(翌日の読売新聞には「随所に北井が昔日の球威の片鱗を窺わせた」と記されている。)。昨年「東の澤村、西の北井」と呼ばれた球威が戻ったのである。
名古屋は初回、志手清彦四球、石丸藤吉の遊ゴロでランナーが入れ替わり桝嘉一の投ゴロは北井からセカンド宇野錦次に送球されるが宇野が落球、大沢清の中前タイムリーで1点を先制する。続く小島茂男は三振、前田喜代士四球で二死満塁とするが芳賀直一も三振。
名古屋は2回、田中実二ゴロ、三浦敏一三振、志手三振。3回、石丸左飛、桝嘉一左飛、大沢清三振。北井正雄は3回までに5三振を奪う力投を見せる。
阪急は山下実を短期の兵役で欠き三番ファースト宮武三郎がスタメン出場。阪急は初回、トップの西村正夫が中前打で出塁、西村二盗黒田健吾遊失後、宮武が左前にタイムリー、中継ミスもあって2-1と逆転する。更に2回、この回先頭の北井正雄が左前打で出塁、西村も左前打で続き山下好一の右翼線三塁打で二者還り4-1とリードを広げる。
阪急は6回、左翼線二塁打の宇野錦次を二塁に置いて北井が左前にタイムリーを放ち5-1。更に7回、西村がバントヒットで出塁、黒田のバントも内野安打となり宮武四球、山下好一押出し四球で6-1とする。
名古屋は4回、小島投ゴロ、前田が四球に歩くが小坂三郎の投ゴロは1-6-3と渡りゲッツー。5回、田中実左飛、三浦三振、志手左飛。北井はこれで6奪三振。更に6回、石丸中飛、桝捕邪飛、大沢清三振。北井の奪三振は7つに達する。7回、小島中飛、前田遊ゴロ、小坂右飛。2回から7回を北井正雄はノーヒットに抑える。
名古屋は8回、田中実左中間二塁打、三浦四球で無死一二塁、志手に代わる代打白木は一邪飛、石丸中前打で一死満塁、桝の三ゴロをサード黒田が好捕して5-4-3のゲッツー。最終回、大沢清三ゴロ、小島三失に生きるが前打三振、小坂に代わる代打服部一男中飛でゲームセット。
北井正雄は3安打4四球8三振の快投、打っても4打数2安打1打点。約2カ月後に胸の病に腸チフスを併発してこの世を去る男の最後の晴れ舞台であった。
*北井正雄の足跡を記した唯一の著作
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