2013年1月13日日曜日

15年 金鯱vsジャイアンツ 9回戦 満州リーグ


8月7日 (水) 新京 児玉公園球場

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 2 0 0 2 1 0 0 5 金鯱             15勝39敗7分 0.278 古谷倉之助 内藤幸三 長尾貞利
2 0 0 0 3 2 0 1 X 8 ジャイアンツ 42勝20敗 0.677 澤村栄治 中尾輝三 スタルヒン

勝利投手 スタルヒン 20勝11敗
敗戦投手 古谷倉之助 4勝12敗

二塁打 (金)濃人2、五味、室脇、柴田、黒澤 (ジ)中島
三塁打 (ジ)川上、呉

勝利打点 川上哲治 11


豪華リレー

 8月4日の大連での阪急戦以来の試合となるジャイアンツは初の新京での試合となった。但し、8月5日に吉林でライオンとの帯同試合(オープン戦)が組まれていたという記録もあります。確認は取れていませんが吉林は新京から東に約100キロの所なので日程的には可能性があります。4日の試合終了後、新京まで700キロを夜行列車で北上し、当日の昼前に吉林入りしている可能性が考えられます。ライオンは4日に鞍山でダブルヘッダーの予定があり雨のため中止となっていますが2日の新京の試合後3日には鞍山入りしているはずなので4日の試合中止が決まって鞍山から約100キロ北の奉天に行き、奉天から夜行列車で300キロ北上して新京に入り、吉林には当日の昼前に着いて夕方のオープン戦に臨んだ可能性が考えられます。ライオンは7日に奉天でセネタース戦が予定されていますので6日に吉林から新京、新京から奉天まで約400キロを移動しているはずです(以上、1月2日付けブログ「満州リーグ エトセトラ ①」に掲載した地図を参照してください。この地図には鞍山は出ていませんが大連から北に約300キロ、奉天から南に約100キロの大連と奉天の間に位置します。)。


 ジャイアンツは初回、一死後水原茂が死球で出塁、千葉茂の二ゴロでランナーが入れ替わり千葉が二盗に成功、川上哲治が四球を選んで二死一二塁、中島治康が右翼をライナーで襲う二塁打を放ち二者を迎え入れて2点を先制する。

 1日のイーグルス戦では9回一死まで無安打無得点をやってのけた澤村栄治はこの日はぴりっとせず、初回二死後濃人渉に左中間二塁打を許した場面は黒澤俊夫を右飛に打ち取ったが3回に捕まった。

 金鯱は3回、一死後佐々木常助の遊ゴロをショート白石敏男がエラー、トップに返り五味芳夫が中越えに二塁打を放って1-2、森田実の左翼線ヒットで一死一三塁、濃人の右犠飛で2-2の同点に追い付く。

 澤村は4回、一死後古谷倉之助に左前打を許すが柴田多摩男を二ゴロ併殺に打ち取る。5回は二死後五味に四球を与えて二盗を許すが森田を二ゴロに打ち取る。

 ジャイアンツは5回裏、二死後水原が左前打で出塁してワイルドピッチで二進、千葉が四球を選んで二死一二塁、川上が中越えに三塁打を放って4-2と勝ち越し、中島が中前にタイムリーを放って5-2とする。

 金鯱は6回、一死後黒澤が四球で出塁、室脇正信が左中間にタイムリー二塁打を放って3-5、送球の間に室脇は三塁に進み、古谷は三ゴロに倒れるが柴田が左翼線に二塁打を放って4-5、漆原進は四球、佐々木も四球を選んで二死満塁、ジャイアンツベンチはここで澤村をあきらめて中尾輝三をリリーフに送る。中尾は五味に対して一球、二球とボール、ツーボールナッシングとなったところでジャイアンツベンチは中尾を下げて三番手としてスタルヒンを投入する。スタルヒンは五味を三振に仕留めてスリーアウトチェンジ。現行ルールでは中尾は一人に対して投球完了しなければ降板できませんのでスタルヒンのリリーフは許されません。

 ジャイアンツは6回裏、先頭の白石敏男が右前打、平山菊二が中前打で続いて無死一二塁、吉原正喜の投ゴロで白石は三封、ここで重盗を決め、スタルヒンは三振に倒れて二死二三塁、トップに返り呉波が左中間に三塁打を放って7-4と突き放す。

 今季対戦成績5勝3敗とジャイアンツ戦に自信を持つ金鯱は7回、一死後濃人が左中間にこの日2本目の二塁打、黒澤も左中間に二塁打を放って5-7と追い上げる。

 ジャイアンツは8回、先頭の呉が四球で出塁するとボークで二進、水原は三ゴロに倒れるが千葉が中前にタイムリーを放って8-5とする。

 金鯱の反撃を抑えたスタルヒンは3回3分の1を3安打無四球3三振1失点に抑えて20勝目をあげる。先発の澤村栄治がリードを保ったまま5回3分の2で降板してその後ジャイアンツは同点に追い付かれていないので現行ルールでは澤村に勝利投手が記録されるが、公式記録ではスタルヒンに勝利投手が記録された。


 当ブログの古い読者であればノーツーからのスタルヒンリリーフの場面を見て昭和12年春、5月30日のタイガースvsジャイアンツ6回戦を思い起こされたことでしょう。3対3の同点で迎えた8回表、一死二三塁で松木謙治郎という場面で先発の前川八郎を下げてスタルヒンがリリーフに登板するがボールが3つ続いてノースリーとなり、澤村栄治が三番手としてリリーフに登場、初球ストライクでワンストライクスリーボールとなるが松木に決勝のスリーンホームランを打たれました。当時は一人に投球完了していなくても投手交代が許されていたようです。


 ジャイアンツは澤村栄治-中尾輝三-スタルヒンと殿堂入り投手3人による豪華リレーで苦手金鯱を降してシーズン通算首位の座を奪還した。










                *ジャイアンツは豪華リレーで苦手金鯱を降した。












             *中尾輝三が2球投げただけで降板した場面。















*「交代欄」には中尾からスタルヒンへのスイッチが記録されている。翌日の読売新聞には「中尾も2ボールを投げたのみで退き」、翌日の満州日日新聞には「中尾は満塁の灘場をボール二つを投じたのみで更にスタルヒンに引き継いで」と書かれています。










 

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