9月27日 (土) 後楽園
1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 0 0 0 0 0 0 0 2 黒鷲 20勝41敗 0.328 畑福俊英 金子裕
1 3 0 2 0 1 0 0 X 7 巨人 45勝16敗2分 0.738 中尾輝三
勝利投手 中尾輝三 17勝7敗
敗戦投手 畑福俊英 6勝10敗
二塁打 (巨)水原、筒井、中尾
勝利打点 中尾輝三 2
猛打賞 (巨) 水原 4、筒井 2
ファインプレー賞 (黒)中河美芳 10
筒井修、最後の試合で猛打賞
黒鷲は23日の朝日戦で坪内道則の本塁打を追った際にフェンスに激突して途中退場した玉腰忠義が欠場。玉腰の定位置であった三番レフトには富松信彦が入り、九番ライトに渡辺絢吾が起用された。
巨人もスタメンに中島治康と吉原正喜の名前がない。翌日の読売新聞によると「中島癒えず、新たに吉原が指の化膿手術で休場する」とのこと。
黒鷲は初回、巨人先発中尾輝三の立上りを攻めて先頭の山田潔が左前打、宗宮房之助も左前打で続いて無死一二塁、富松の一ゴロで宗宮が二封されて一死一三塁、ここでダブルスチールを決めて1点を先制する。
巨人は1回裏、一死後水原茂が左中間に二塁打、千葉茂が左前に同点タイムリーを放って1-1とする。
黒鷲は2回、一死後清家忠太郎が四球で出塁、畑福俊英は三振に倒れるが清家が二盗に成功、渡辺絢吾が右翼線にタイムリーを放って2-1と勝ち越す。
巨人は2回裏、一死後平山菊二がツースリーから3球ファウルで粘って四球で出塁、筒井修の右中間二塁打で一死二三塁、呉波の右犠飛で2-2の同点、中尾が左翼線に二塁打を放って3-2と逆転、トップに返り白石敏男の遊ゴロをショート山田がエラー、水原が左前にタイムリーを放って4-2とする。
巨人は4回、先頭の呉が四球で出塁、中尾は左飛に倒れるが続く白石の打席で呉が二盗に成功、キャッチャー清家の二塁送球がセンターに抜けて呉は三進、センター寺内一隆からの三塁送球が悪送球となる間に呉がホームに還って5-2、白石が四球、水原の右前打で一死一三塁、千葉が左前にこの日2本目となるタイムリーを放って6-2と突き放す。
巨人は6回、一死後川上哲治が中前打、楠安夫は三振に倒れるが平山も中前打、筒井がこの日3本目のヒットを中前に放って川上を迎え入れ7-2として試合を決める。
序盤打たれた中尾輝三は徐々に立ち直り、5回以降は全て三者凡退のパーフェクトピッチングで17勝目をあげる。
中島の欠場で千葉がライトに入ったことからセカンドには筒井修が起用され、筒井は期待に応えて4打数3安打1得点1打点、二塁打1本の猛打賞の活躍を見せた。
この試合が筒井修にとってプロ野球選手としての最後の試合となった。この後筒井は試合に出場することなく二度目の兵役に就き、戦場で右手の指を吹き飛ばされてプロ野球選手としての生命を奪われる。戦後は審判員として長く活躍し、1991年に野球殿堂入りすることとなる。
*中尾輝三は尻上がりに調子を上げて5回以降はパーフェクトピッチング、完投で17勝目をあげる。
*筒井修は現役最後の試合で猛打賞の活躍を見せた。
『ベースボールマガジン・1978年9月号』に筒井修の懐旧談があります。
返信削除以下引用
・・・たしか9月26日、その日後楽園で、相手チームは忘れましたが、4打数3安打(うち二塁打一)試合には勝つし、名前は忘れましたがある新聞記者に「ようやく昔のように打てだしたな、頑張れよ」と声をかけてくれたし、大いに気をよくして夕方中野の家に帰りますと、赤紙! 徴兵検査の時に甲種合格といわれて、世の中が暗くなる思いをしましたが、この時はそれに加えて寒気までしたのを覚えております。
近所に住んでおられた藤本監督にすぐ連絡をとりましたら、「どうだ、明日からの試合は?」といわれましたが、そんな気持ちにはとてもなれず(その当時は召集をうけますと球場で発表し盛大な拍手をいただき、うれしそうにゲームに参加されていた人達がおられましたが……)「出来ましたらご勘弁を」と出発するまでの4日間を身辺整理に充てさせていただきました。
今にして思えば負傷して、野球が出来なくなるのが分かっていたら、たとえぶざまなゲームをしていても出場させてもらっておけばよかったと思いましたが、呆然自失の様な状態ではまともなことは出来るはずもなく、藤本監督もそれを考えて、心よくわがままを聞いて下さったのだろう、と今でも思っております。
もし、「出して下さい」といっても、人の心を読まれるのがうまかった監督のことですから、「まあまあ無理をするな」ととめられたことと思っております。
それが私の短いプロ野球生活の最後の試合になりましたが、考えてみますと、大した成績も残せなかった私としたら、最後に4の3の好打、とはちょっとしたものと自分でなぐさめております。・・・
ちなみに筒井は一度目の応召から復帰する直前に急性盲腸炎にかかり、開腹手術をうけますが、執刀医は耳鼻咽喉科の医師でそれまで3人の手術を経験していましたが、1人は死亡、2人は再入院。筒井は強運の持ち主だったのでしょう。大きな傷跡が残りましたが、無事手術は成功して退院になったそうです。
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今季限りで応召して戦死することとなる吉原正喜も終盤異様な活躍を見せますので乞うご期待!
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