2014年5月3日土曜日

6アウト連続センターフライ



 昭和16年9月23日、大洋vs南海10回戦において、野口二郎が16個のフライアウトで今季8度目の完封を記録した試合を実況中継させていただいたところですが、この試合の8回、9回の南海が記録したアウトは全てセンターフライでした。


 南海8回の攻撃、先頭の前田貞行はツースリーから四球を選びましたが、川崎徳次はワンボールからの2球目をセンターフライ、柳鶴震が左前打を放って一死一二塁、トップに返り国久松一がワンツーから1球ファウルの5球目をセンターフライ、安井鍵太郎も初球を叩いてセンターフライに終わりました。


 南海最終回の攻撃、岩本義行がワンスリーからの5球目をセンターフライ、村上一治はワンツーからの4球目をセンターフライ、木村勉が三塁内野安打で出塁、岡村俊昭のカウントワンワンの場面で野口二郎がボークを犯して二死二塁、しかし岡村が3球目を叩いてセンターフライに終わってゲームセットとなりました(カウントは旧方式で表記しています)。


 6アウト連続センターフライの記録は世界記録である可能性があると考えられますが、検証できる方は是非お願いいたします。この記録が世界記録であるか否かはともかくとして、この記録が達成されるにはいくつかの条件が必要になるでしょう。


 一つ目はピッチャーの投球に伸びがあること、野口二郎は終盤になってもストレートの伸びを欠いておらずこの条件を満たしていました。

 二つ目は攻撃側がバッティングの基本であるセンター返しに徹すること、南海のいやらしい攻撃は戦後まで続くチームの特色であり、センター返しを基本にしていたことがこの記録が達成された要因となりました。

 三つめはセンターが好守の選手であること、大洋の中堅手である森田実は好打好守の選手として知られています。鈴木惣太郎は森田実を高く評価しており昭和15年12月12日付け「日本野球総評」において自身が選ぶベストナインを公表しており、昭和15年のベストナイン外野手部門を「左翼鬼頭、中堅森田、右翼中島」として鬼頭数雄、森田実、中島治康を選出しています。


 鈴木惣太郎は「金鯱の中堅森田に関しては相当の異論があると思う。たとえば阪神の堀尾、阪急の山田、名軍の桝、翼軍の小林などが候補者に挙げられるに相違ない。勿論これ等の人々は練達の良選手で打力に守備に秀で特に堀尾は野球術を知る事にかけて一頭地を抜いている。しかし練達は老境を意味して覇気に乏しく、技術の停頓をさえ来たしている。然るに森田近来の進歩は洵に目覚ましく断然頭角を現してきている。」として森田実を絶賛しているのです。



 鈴木惣太郎の残した記述からも、森田実のプレーぶりは若者らしい溌剌としたものであったことがうかがわれますが、残念なことに森田実は今季を限りに戦場に旅立ち、戦死することとなります。








*南海8回、9回の攻撃で6アウト連続センターフライ(F-8)が記録された場面。













 

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