満州リーグで用いられた使用球については度々触れてきたところですが、客観的数字に基づき検証してみます。
再生ボールが使用されたと考えられる8月14日までの45試合では合計573安打、二塁打92本、三塁打23本、本塁打1本で安打数に占める長打の比率は20.2%。皮制ボールが使用されたと考えられる8月16日からの27試合では合計429安打、二塁打93本、三塁打29本、本塁打6本で安打数に占める長打の比率は29.8%に跳ね上がっています。
因みに7月2日~22日に内地で行われた45試合では合計519安打、二塁打51本、三塁打13本、本塁打10本で安打数に占める長打の比率は14.3%でした。
7月の内地の試合は使用球の劣化、猛暑の中の連戦で貧打傾向が顕著でした。本塁打が10本出ていますが全て両翼80メートルにも満たない後楽園球場でのものです。満州リーグは貧打戦が続いたと伝わっていますが、大連から新京の緯度は仙台から札幌に該当しますので内地よりは涼しかったと考えられ各打者のスウィングも鋭さを増し、再生ボールとは言えニューボールが使われて反発係数も上がったと考えられます。後半戦の皮制ボールを使用した27試合では活発な打撃戦が展開されました。このような事実を無視して「満州リーグでは使用球の劣化により貧打線が続いた」などという事実誤認が伝わっています。
8月26日付け読売新聞は「解けた貧打の謎“球”」の見出しで「打撃貧困は全くボールのせいであることがよく判った、聯盟が持参した使用球が大会開始当初連日の雨のため大半破損した結果、南海が持っていた球を大連と新京で使用してみるとまるで奉天と当りが違っている、南海の準備してあった球がたまたま良質のものでいわゆるライブリー・ボール(よく飛ぶ球)と判り以後全試合にこの球を使用するようになったので救われて打撃も活発になり・・・」と伝えています。2013年2月7日付けブログ「セネタースvs阪急 8回戦」に「Unknown」様(「商売人と言われた職業野球」様)から「満州リーグ戦開始当初の悪天候によって、連盟が持参したボールの大半が使用不可能になったそうです。使い古しのボールは未曽有の打撃貧困を招き、後半になって大連、新京での試合から、南海軍がフリー打撃に使用していた飛ぶボールを使用してから、ようやく内地での試合と同じような当たりが戻ったとの事です。」とコメントをいただきました。この記事のことだったようです。
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