2013年3月3日日曜日

満州リーグ エトセトラ ⑨



 7月26日に神戸港から出発した一行は29日大連港に到着、その足で奉天に向かい30日の開会式から満州各地を転戦して8月25日に奉天で閉幕式を迎え、奉天、大連、旅順でオールスターチームによる紅白戦を4試合行い、いよいよ帰国の途につきます。8月16日までの移動距離は⑤でお伝えしましたが、全移動距離をご報告させていただきます。


 一位 ジャイアンツ  7,100キロ
 二位 阪急        6,300キロ
 三位 金鯱        6,000キロ
 四位 イーグルス     5,300キロ
 五位 名古屋       4,900キロ
 六位 タイガース      4,850キロ
 七位 セネタース    4,100キロ
 七位 ライオン       4,100キロ
 九位 南海         4,000キロ



 移動に南満州鉄道の三等列車が使われたことは松木謙治郎著「タイガースの生いたち」に書かれていますが、8月25日付け読売新聞に掲載されている進藤鎮雄による「満州大リーグ戦の印象」の「列車による往来が全部三等」という記事で裏付けられています。


 南京虫については流石に満州日日新聞には記述が見られませんが、8月24日付け読売新聞に掲載されている河野安通志による「ファンよ、褒めて下さい! 成功だった満州遠征」に移動の困難と共に「宿屋の飯は殆ど選手の好まざる魚ばかりの副食物であり、南京虫には攻撃され初めて満州へ来た連中としては相当の苦難であったと思う。」と書かれています。但し食い物については白石敏男の自伝「背番号8は逆シングル」によると「われわれはどこでも歓迎された、中国なのに、食事は中国料理より和食が多かったが、まんじゅうを御馳走になった時、さすがに本場のまんじゅうはおいしいわい、と思ったことを記憶している。」とのことで、白石は満足していたようです。白石は「川上君だったか、列車で南京虫にやられたといっていたが、ぼくには全然気がつかなかった。」とも書いています。同じ事象であっても、とりようによって評価は180度変わるものです。


 白石敏男は自伝に「くたびれると文句をいっている人もいたが、ぼくは辛いとは思わなかった。どこも満員で、ファンが熱狂的に迎えてくれるのには感激した。」とも書いています。2013年3月2日付けスポニチは、第84回宮様国際大会ジャンプノーマルヒルに凱旋圧勝した高梨沙羅について、「最近1カ月の移動距離は地球半周分」の見出しと共に「この1カ月は、日本と海外を往復するハードな日程が続き、移動距離は、地球半周分に当る2万1000キロ。約9600キロ離れたイタリアから2日前に帰国したばかりで、体調は万全ではなかった。」と伝えています。「疲れを知らない子供のように」は「シクラメンのかほり」の歌詞の一節ですが、疲れを感じないのは若さの特権です。随行するおじさん記者にはきついかもしれませんが、高梨にとっては「こんなのへっちゃらー」というところではないでしょうか。ソチオリンピックでは、札幌の日の丸飛行隊や長野の原田の大ジャンプのような感動を与えてくれることを期待しましょう。









*満州リーグの長距離移動も苦にならず、食い物にも満足して南京虫にも襲われなかった白石敏男のサイン。サインは戦後間もない頃のものです。









 

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