8月23日 (金) 奉天 満鉄球場
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計
0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 3 南海 19勝48敗5分 0.284 劉瀬章 清水秀雄
0 0 0 3 0 0 0 0 0 1X 4 タイガース 42勝27敗3分 0.609 三輪八郎 木下勇 若林忠志
勝利投手 若林忠志 15勝12敗
敗戦投手 清水秀雄 9勝16敗
二塁打 (南)岩本2、伊藤、前田 (タ)田中
本塁打 (タ)本堂 3号
勝利打点 カイザー田中義雄 6
結びの一番
いよいよ満州リーグ第72戦、この試合一番にて千秋楽にござりまする~。
金鯱の濃人渉は満州リーグ通算63打数23安打、3割6分5厘で全日程を終えている。南海の岡村俊昭はここまで54打数19安打で3割5分2厘。この最終戦で3打数2安打か6打数3安打以上であれば逆転首位打者となる。
南海は初回、岡村の第一打席はショートライナー。
南海は3回、一死後岩本義行が左翼線に二塁打、藤戸逸郎の二ゴロの間に岩本は三進、岡村が左翼線に先制タイムリーを放って1点を先制する。翌日の満州日日新聞によると「左前テキサス」とのことであるが、これで満州リーグ通算56打数20安打、3割5分7厘となった。第一打席のショートへの当りがどちらかに抜けていれば56打数21安打、3割7分5厘となって濃人を抜いているところであった。但し次の打席でヒットを放てば逆転首位打者となる。
タイガースは4回、先頭の本堂保次が左翼スタンドにホームランを叩き込んで1-1の同点とする。翌日の満州日日新聞によると「本堂左翼に高く立木の間に遠く打込み本塁打」とのこと。本堂は満州リーグ2本目の本塁打となり、満州リーグホームラン王を決定付けた。更にカイザー田中義雄の二ゴロをセカンド上田良夫がファンブル、伊賀上良平は左飛に倒れるが松木謙治郎が中前打、宮崎剛の投ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、森国五郎が中前に2点タイムリーを放って3-1と逆転する。
南海は6回、二死後伊藤経盛が左中間に二塁打、前田貞行も左中間を抜く二塁打を放って2-3と追い上げる。
注目の岡村の第三打席は二ゴロ、第四打席は捕邪飛となってこの時点で58打数20安打、3割4分5厘となって満州リーグ首位打者の座は絶望的に見えた。
南海は9回、先頭の清水秀雄は二ゴロに倒れるが、トップに返り岩本がこの日2本目の二塁打を中越えに放つ。藤戸逸郎は三ゴロに倒れて二死二塁、ここで岡村がセンター左に同点タイムリーを放って3-3とする。岡村はこれで59打数21安打、3割5分6厘として濃人に9厘差とする。このまま延長戦に突入し第六打席が回ってきてヒットを放てば3割6分7厘となって逆転首位打者となる。岡村は自らのバットで僅かなチャンスを手繰り寄せた。
タイガースの9回裏は三者凡退。南海の10回表は二死後伊藤が四球で出塁するが前田は中飛に倒れる。
タイガースは10回裏、先頭のジミー堀尾文人の遊ゴロをショート前田がエラー、皆川定之の捕前バントをキャッチャー吉川義次が二塁に送球するがこれをショート前田が後逸する間に堀尾は三塁、皆川は二塁に進んで無死二三塁、皆川には内野安打が記録されている。本堂は敬遠四球で無死満塁、田中が三前にサヨナラスクイズを決めてタイガースが南海を降す。田中には内野安打が記録される。試合開始は午後6日15分、試合終了は午後7時37分、翌日の満州日日新聞は「薄暮れゆく秋空にサイレンの音は一際高く響き渡り」と伝えている。ここに満州リーグ公式戦全日程72試合は終了したのである。
タイガースのサヨナラ勝ちにより満州リーグの首位打者は3割6分5厘の濃人渉に決定した。延長11回に突入していたら、南海は走者が一人出れば岡村俊昭に回るところであった。ここで岡村にヒットが出ていれば3割6分7厘で逆転首位打者となるところであったが岡村の最終成績は3割5分6厘で二位であった。因みに8月25日付の読売新聞には満州リーグの首位打者は岡村と伝えているように見える記事が見られるますがこれは間違いです。集計ミスか、濃人の成績に気が付いていなかったのかは分かりません。翌26日付け読売新聞には「満州戦首位打者は濃人」の記事が見られます。
*タイガースは三輪八郎、木下勇、若林忠志のリレーで満州リーグ最終戦に快勝する。
*最終戦の南海打線。延長11回に進んでいれば岡村俊昭に打順が回る可能性があった。
*延長10回サヨナラ勝ちしたタイガース打線。
*最後のシーンはこれだけではスクイズであったかどうかは分かりませんが、翌日の読売新聞に「田中のスクイズ・バントは三塁側に飛んで堀尾の生還」と書かれています。
0 件のコメント:
コメントを投稿