2011年11月23日水曜日

10人目


 ジャスティン・バーランダーが史上10人目の同一年度サイ・ヤング賞及びMVP同時受賞(以下「W受賞」)と相成りました。2011年9月15日付けブログ「25勝」以降、何度かW受賞について触れてきましたが、矢張り打撃陣にこれといった候補がいなかったことが決め手となったようです。ホセ・バウティスタの打率がもう少し高ければバウティスタがMVPに選出されていたでしょう。

 W受賞第一号は1956年のドン・ニューカムです。この年からサイ・ヤング賞が制定され、キャリアハイの27勝をあげたニューカムが栄えある第一回サイ・ヤング賞と共にMVPも受賞しました。因みに沢村賞は1947年に制定されて別所毅彦が第一回の受賞者となっていますので日本の方が先輩です。

 第二号は1963年のサンディー・コーファックスです。コーファックスについては説明不要と思いますので省きますが、ナショナル・リーグの前後のMVP受賞者は、61年からフランク・ロビンソン、モーリー・ウィリス、63年がコーファックスでケン・ボイヤー(来日して大洋で守備の名手として鳴らしたクリート・ボイヤーの兄貴)、ウィリー・メイズ、ロベルト・クレメンテ、オーランド・セペダと名選手が続きます。今年のナショナル・リーグ サイ・ヤング賞にしてドジャースの後輩となるクレイトン・カーショウが、快速球とコーファックスに似た大きなカーブで「サンディー・コーファックスの再来」と言われています。

 第三号及び第四号は投手の年と言われた1968年、ア・リーグのデニー・マクレイン(現在のところ最後の30勝投手)とナ・リーグのボブ・ギブソン(この年の防御率は1.12)です。因みにサイ・ヤング賞は当初は受賞者は一人だけでしたが、1967年から両リーグ一人ずつ選出されるようになりました。

 第五号が1971年にセンセーショナルなデビューを飾ったバイダ・ブルーです。私が大リーグに興味を持つきっかけとなった選手であることは何度かお伝えしているとおりです。因みに以前のブログでバーランダーがW受賞すれば先発投手としてはバイダ・ブルー以来となると書かせていただいたと思いますが、ロジャー・クレメンスを忘れていましたので1986年のロジャー・クレメンス以来と訂正させていただきます。

 第六号が1981年のロリー・フィンガースです。カイゼル髭の名称はロリー・フィンガースで知りました。ご存じリリーフの切り札の元祖。

 第七号が1984年のウィリー・ヘルナンデスです。デトロイト・タイガースをワールドチャンピオンに導いたリリーフの切り札です。

 第八号が1986年のロジャー・クレメンスです。何と言ってもこの年の20奪三振が圧巻ですが、ESPNクラシックで放映されたこの試合をダビングしたCDを持っています。

 第九号が1992年のデニス・エカーズリーです。1988年のワールドシリーズで脚を痛めていたカーク・ギブソンにサヨナラホームランを打たれたシーンが思い出されますが、先発投手から名クローザーに転向した点は江夏豊と被ります。

 19年振りとなる第10号がジャスティン・バーランダーです。2006年のデビュー当時は160キロの速球がありながら奪三振が少なかったことからサイ・ヤング賞を獲れなかった訳ですが、抜く球を覚えて三振を取るコツもマスターしたようです。こうなると野球ファンとは現金なもので、早くも1944年、45年のハル・ニューハウザー以来となる「投手として二年連続MVP」を願う声が出てきています。


 ハル・ニューハウザーは1944年は29勝で最多勝、奪三振187で第一位、防御率は同僚のディジー・トゥロウトの2.12に次いで2.22で第二位でした。因みにこの年の奪三振ランキングではディジー・トゥロウトが144個で第二位です。ハーラー二位もディジー・トゥロウトの27勝で三位のセントルイス・ブラウンズのネル・ポッター19勝を断然引き離してタイガースの二枚エースが他を圧していましたが、アメリカン・リーグを制したのはセントルイス・ブラウンズでした。ニューハウザーは翌45年、前年惜しくも逸した投手三冠を達成して二年連続MVPに輝きました。45年はワールドシリーズも制して、ニューハウザーはワールドシリーズでは3試合に登板してチーム最多の20回3分の2を投げて2勝1敗、22奪三振を記録しました。このシリーズの奪三振第二位はディジー・トゥロウトの9個ですから如何に他を圧していたかが分かります。但し防御率は第一戦で2回3分の1を投げて8自責点と打ち込まれたため6.10でした。



*若かりし頃のハル・ニューハウザーのサインです。こちらは1940年にワールドチャンピオンになったデトロイト・タイガースのチームサインボールです。ニューハウザーはまだメジャーデビューしたばかりの頃でこの年は9勝9敗にすぎず、ワールドシリーズでは登板すらありませんでした。したがって良く流通している後年の商業用サインとは違い、こちらがオリジナルのサインとなります。ピート・フォックスの下は1943年の打点王ルディ・ヨークのサインです。

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