2011年11月13日日曜日

14年 金鯱vs南海 5回戦


6月14日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  2  2 金鯱 11勝26敗       0.297 古谷倉之助 中山正嘉
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0  0 南海 14勝19敗2分 0.424 劉瀬章 宮口美吉


勝利投手 中山正嘉 8勝10敗
敗戦投手 宮口美吉 4勝7敗


二塁打 (金)佐々木 (南)小林
三塁打 (金)五味 (南)国久

古谷倉之助、気魄のピッチング


 金鯱先発・古谷倉之助のドロップ、南海先発・劉瀬章のアンダースローが冴えわたり3回まで金鯱は1安打、南海は無安打で0対0のまま4回を迎える。

 金鯱は4回、この回先頭の古谷倉之助が劉瀬章の内角球を避けきれず右手首にデッドボールを受ける。この後森田実、瀬井清、長島進が凡退してスリーアウトチェンジ。古谷の右手首は翌日の読売新聞によると「鶏卵大に膨れ上がって武器とするドロップが投げられない」状況であったが4回のマウンドにも古谷の姿があった。古谷は4回の南海の攻撃も無安打に抑え、4回を無安打1四球3三振無失点で切り抜け、5回からマウンドを中山正嘉に譲ることとなった。

 4回の古谷のピッチングを翌日の読売新聞は次のように伝えている。「古谷は・・・負傷後の4回裏の投球には流石に苦しみ抜いた。先頭打者の国久が三ゴロエラーに出ると・・・犠打で二塁に送り・・・この時古谷が(次打者)鶴岡に三個のボールを故意に与え敬遠するかと見えたがベンチの岡田監督は『・・次の岡村の方が怖いから歩かせるな』と注意した。すると古谷はびしびしと二球ストライクを投げ込み・・・次の一球で遊ゴロに討ち取り、続く岡村を見事三振に屠って危機を切り抜けた。」

 古谷からマウンドを引き継いだ中山正嘉にも古谷の気魄が乗り移ったようで、南海打線を無得点に抑える。

 劉瀬章も金鯱打線を抑え、初回の野村高義の右前打と5回の五味芳夫の右中間三塁打の2安打無失点で7回を終了する。

 金鯱は8回、先頭の好調野村が中前打で出塁、南海ベンチは好投の劉から左腕宮口美吉にスイッチ、小林茂太は三飛、パスボールで野村が二進するが中山は三振に倒れて二死二塁、ここで森田に代わって代打で小林利蔵が登場する。小林利蔵は昭和12年秋季リーグ戦の途中で兵役に就き、1年半ぶりの打席となる。しかしここは左飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 金鯱は9回、先頭の瀬井が左前打で出塁、長島四球で無死一二塁、しかし山本次郎の送りバントは捕邪飛となって更にキャッチャー吉川義次から二塁ベースカバーのショート小林悟楼に送られて飛び出していた二走瀬井が戻れずダブルプレー、五味も右邪飛に倒れてこの回も無得点。南海の9回裏も三者凡退で終わり試合は延長戦に突入する。

 金鯱は10回、先頭の佐々木常助が左翼線に二塁打、野村は四球で無死一二塁、小林茂太が右翼にヒットを放ち佐々木が生還、ライト岩出清が後逸する間に一走野村もホームに還り2-0とする。

 南海は10回裏、先頭の小林悟楼が四球で出塁するが吉川は左直、宮口は中飛、岩出に代わる代打伊藤経盛も中飛に倒れてゲームセットを告げるサイレンが高々と鳴り響く。


 金鯱は球団結成以来、今がもっともチーム状態が良いのではないか。右手首に死球を受けながらの古谷倉之助が見せた気魄のピッチングはリリーフに出た中山正嘉も受け継いで5回~10回の6イニングを2安打3四球2三振無失点で投げ抜き完封リレーを達成した。

 当ブログが「戦前随一のクラッチヒッター」と認める小林茂太が久々に勝負強さを発揮して延長10回に決勝打を放った。そして元四番の小林利蔵が戦地から戻って1年半ぶりに打席に立った。夏季リーグに入って4勝1敗でジャイアンツと並んで首位の座に躍り出た。「丸刈り効果」がここまで波及することもあるのである。




          *古谷倉之助、中山正嘉による完封リレー








     *戦地から戻った小林利蔵が1年半ぶりに打席に立つ



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