金鯱vs阪急4回戦の実況中継で述べた疑念について検証してみます。
1.検証項目
「プロ入り初先発となった高橋敏は5回を投げて6安打2四球4失点2自責点、・・・なお、自責点は2と記録されているが、1ではないかとの疑念が残るものである。」
対象となるプレーは金鯱2回の攻撃に起こります。
「金鯱は2回、この回先頭の松元三彦が左前打、一死後武笠茂男が中前打して一死一二塁、ここで岡野八郎が右前にヒットを飛ばす。二走松元は二塁から生還、ライトからの返球をカットしたセカンドキヨ野上清光がホームに悪送球する間に一走武笠も還り、打者走者の岡野は三塁に進み2-0、佐々木常助の遊ゴロの間に岡野が還り3-0とする。」
2.事実関係
このプレーにおいて、
① 野上にはホームへの悪送球でエラーが記録されている。
② 武笠の生還は野上のエラーによるものと記録されている。
③ 武笠の生還で高橋敏に自責点が記録されている。
④ 岡野には打点2が記録されている。
3.検証内容
一死一二塁から岡野が右前にヒットを放ち、ライトの西村正夫からセカンドの野上に送球され野上がホームに悪送球しました。スコアブックの記載は「4-2」の「-」の上に「・」が付されたうえで「’」野上のエラーが記録されていますので、野上の送球が高く逸れてバックネットまで転がっていったことを表します。二走松元の生還は野上からの返球が悪送球でなくてもセーフであったと判断されたことから自責点となり岡野にも打点1が記録されるところまでは良いでしょう。
問題はこの次の一走武笠の生還が「野上のエラーによるもの」と記録されているにも拘らず、自責点と岡野に打点1が加算されて2打点目が記録されている点です。シングルヒットで一塁ランナーが生還することはあり得ますし、実況中継の中でもお伝えしたことはあります。戦後に於いても日本シリーズで見せた西武・辻発彦の好走塁の事例などがあります。
翌日の読売新聞は「岡野の安打を右翼から中継した野上の本塁悪投がなければ充分に二走松元を刺し無得点に止め得たものであった」と伝えています。したがって、ライトからの返球を中継した野上が即座にホームに投げたと考えられます。
但し、ライトからの返球を受けた野上がもたもたしている隙に一走武笠が三塁を蹴ってホームを突き、野上が慌てて送球して悪送球になった場合は自責点と打点が記録されてもおかしくはありません。この場合、読売の記述と齟齬が生じますが、これまでも指摘しているとおり読売の記事は信ぴょう性に欠ける面もありますので、武笠の好走塁によるものという可能性は否定はできません。
4.結論
結論から先に言うと、結論は出ません。実際のプレーを見ておらず、ビデオ判定ができないことによる限界です。
読売の記載が正しければ、一走武笠の生還が野上のエラー(悪送球)によるものであると考えられ、高橋敏の自責点及び岡野の打点は1ずつ減じられる可能性があります。
一走武笠の好走塁によるものであれば、武笠の生還が「野上のエラーによるもの」というスコアブックの記載が間違っていることになります。この場合であっても岡野の三塁進塁は野上の悪送球によるのものとなりますので記録の間違いは生じません。
なお、野上の悪送球で三塁に進んだ岡野は続く佐々木常助の遊ゴロで生還していますが、エラーによる進塁が含まれているため自責点は記録されていません。この場合は佐々木には打点1が記録されます。
5.総括
当ブログは間違い探しを目的として実況中継している訳ではありません。人為的な集計ミスと思われる公式記録の間違いは、指摘しようと思えばいくつかありますが、エクセルもない当時の記録を人為的に集計する苦労は私も良く知っておりますのでそのような指摘をするつもりはありません。
但し、本件については記録そのものが間違っている可能性がありますので検証を行ったものです。
*金鯱2回の攻撃の問題のシーン。得点を表す丸印の中にEが記載されている場合は「アーンドラン=自責点」が記録されます。松元と武笠の得点は自責点、岡野の得点は自責点無しと記録されています。
松元の本塁進塁はh=岡野のタイムリーによるもの、武笠の本塁進塁は丸印で囲ったhの右上に「’」が付いていますので岡野の打席でのプレーにおけるエラーによる進塁を表します。
*高橋敏には自責点2が記録されています。問題のシーン以外の失点、自責点には疑問の余地はありません。
*キヨ野上清光の失策欄には二つの悪送球がエラーとして記録されています。
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