8月19日 (月) 新京 児玉公園球場
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
1 1 0 1 0 2 1 0 2 0 0 8 阪急 40勝25敗5分 0.615 森弘太郎
0 0 1 0 2 0 0 1 4 0 0 8 セネタース 37勝24敗9分 0.607 村松長太郎 金子裕
二塁打 (阪)山下好、山田 (セ)金子2、柳
三塁打 (阪)中島
勝利打点 なし
俺に代打
阪急は初回、先頭の中島喬が左翼線に三塁打、これはレフト山下好一がクッションボールを誤ったものでしょう。上田藤夫の左犠飛で1点を先制する。
阪急は2回、先頭の井野川利春が四球で出塁すると黒田健吾が送って一死二塁、新富卯三郎は左飛に倒れるが、下村豊が中前打を放って二死一三塁、森弘太郎の中前タイムリーで2-0とする。セネタースはここで先発の村松長太郎から金子裕にスイッチ、トップに返り中島は遊飛に倒れてスリーアウトチェンジ。
セネタースは3回、先頭の柳鶴震がセンター右にヒット、織辺由三が送って一死二塁、金子がセンター左奥に二塁打を放って1-2とする。
阪急は4回、二死後新富が四球で出塁、下村が中前打、森が右前に2打席連続のタイムリーを放って3-1とする。
セネタースは5回、先頭の柳が2打席連続の中前打、織辺の遊ゴロをショート下村がエラーする間に一走柳は三塁、打者走者の織辺は二塁に進んで無死二三塁、金子が右前に2点タイムリーを放って3-3の同点に追い付く。
阪急は6回、先頭の黒田が四球を選んで出塁、新富は一邪飛に倒れるが、黒田が二盗に成功して一死二塁、更に黒田がディレードスチール、ピッチャー金子からの送球をサード横沢七郎が後逸する間に黒田が還って4-3、翌日の満州日日新聞には「黒田二盗、オーバーランして二三塁に挟まれたが三塁の後逸に一挙生還」と書かれているが、スコアカードには「((1))5’」と書かれているので盗塁の際のオーバーランではなく、盗塁成功後のディレードスチールでピッチャーの送球をサードがエラーしたものです。満州日日新聞の記事は貴重な資料ですがこのような単純な誤記載が数多く見られるのは以前にもお伝えしたとおりですのでご注意ください。下村は中飛に倒れるが森が四球で出塁、トップに返り中島が中前打を放って二死一二塁、上田の右前タイムリーで5-3とする。
阪急は7回、先頭の山下好一が左翼線に二塁打、井野川利春の三ゴロの間に山下は三進、黒田の中犠飛で6-3とする。
セネタースは8回、二死後柳が三塁に内野安打、ここで柳が二盗に成功、キャッチャー井野川の送球がセンターに抜けると柳は三塁からホームに突進、バックアップのセンターフランク山田伝からのバックホームを井野川が後逸する間に柳がホームイン、井野川の珍しいダブルエラーで4-6とする。
阪急は9回、先頭の上田が中前に本日3本目となるヒットを放って出塁、山田が右中間に二塁打を放って無死二三塁、山下好一の右前タイムリーで三走上田に続いて二走山田も三塁ベースを蹴ってホームを狙い、ライト山崎文一からのバックホームが悪送球となる間に山田が還って8-4と突き放し勝負は決したかに見えた。
ところがセネタースは9回裏、先頭の苅田久徳に何と西岡義晴が代打に起用される。西岡の三ゴロをサード黒田がエラー、黒田は「黒田の蟻地獄」と呼ばれる守備の名手であるが流石に苅田に代打が起用されて面喰ったか。筆者の記憶でも苅田に代打が起用されたのは初めてだと思います。更に横沢七郎の代打に高橋輝彦が登場、高橋は昭和11年限りで兵役に就いていましたが先日復帰したばかりです。高橋の中前打で無死一二塁、野口二郎が四球を選んで無死満塁、小林茂太にも代打小島二男が起用されて小島の二ゴロをセカンド上田がショート下村に送球するがこれを下村が後逸する間に二者還って6-8としてなお無死二三塁、山崎の遊ゴロの間に三走野口が還って7-8としてなお一死三塁、佐藤武夫の左犠飛で小島二男が同点のホームを踏み8-8とする。
9回まで、毎回どちらかが得点する大混戦も10回、11回は両軍無得点、試合開始は午後5時46分、試合終了は午後7時43分、1時間57分の熱戦は8対8の同点に終わった。
セネタースが最終回に見せた代打攻勢が引き分けた最大要因であった。果たして苅田に代打を起用したのは苅田監督自身の決断だったのでしょうか。「代打俺」の元祖は藤村富美男とも言われていますが、ヤクルトの古田が有名です。これはベンチにいるプレイングマネージャーが代打に登場する時のフレーズですが、試合に出ているプレイングマネージャーにプレイングマネージャー自信が代打を起用するとなれば、「俺に代打」ということとなります。
*9回に代打攻勢で8対8の同点に追いついたセネタース打線。
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