セネタースvs阪急8回戦のコメント返しにも書かせていただいたとおり、満州リーグに入って7月31日~8月11日に行われた37試合で合計471安打、長打は96本で安打に占める長打の比率は20.4%。直前の内地で7月5日~7月22日に行われた37試合では合計432安打、長打は64本で安打に占める長打の比率は14.8%となっています。内地の試合では満州リーグに備えてニューボールを使わず、使い古しのボールを使用していたのではないかと推測しています。
夏季シリーズに入って内地の試合では打撃力低下が目立っていました。6月21日~7月7日に行われた41試合では完封試合が22試合あります(0対0の引分けと三輪八郎-若林忠志による完封リレーを含む。)。7月26日付け読売新聞に鈴木惣太郎による「“夏の陣”総評(下)」が掲載されています。「最も注目すべき重大原因の一つは“用球の品質低下”という事ではあるまいか?職業野球開始の当時使用球の品質という点には入念の注意が払われた。厳重な規格があった上に出来上ったボールを一個ずつ慎重に試験して合格品のみを試合に使用していた。・・・使用球を厳選した結果は所期の弾力を十分備えたものが得られたのであるが、事変後はボールの中心用材である木綿糸、羊毛等に“スフ”を混用することになり皮革も適品の入手が困難になったなど材料の品質が著しく低下した上に製造が間に合わぬとあって現在では使用球の検査を行わずして直ちに使用している有様である。」文中の“事変”とは昭和12年7月に勃発した盧溝橋事件のことでしょうか。
8月1日付け満州日日新聞に掲載されている“審判員”吉田要による「職業野球の特異性」には「満州リーグから初めて使用する再生品のボールにもなお不慣れな点もあり・・・」と書かれています。「再生品」と言うからには、スフが混在していないボールから材料を取り出して再生したニューボールということになります。現在で言うリサイクル品というところでしょうか。したがって、満州リーグではややボールの反発係数が上がったことが安打に占める長打の比率が上昇した要因ではないでしょうか。
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