三冠への道 2012 ⑥

　まさかキャメロットが敗れるとは！これだから勝負はやってみないと分かりません。


　最も不向きと言われた2000ギニー（ニューマーケット競馬場 約1600m)をクビ差で制した時点でキャメロットの三冠達成は間違いなしと言われていました。8対13（1.62倍）という過去60年で最低オッズとなったダービー（エプソム競馬場 約2400m）を5馬身差で勝った時点で1970年のニジンスキー以来42年振りとなる英国三冠馬の誕生は既成事実として語られてきました。例年通りの少頭数（5頭立て）となったアイリッシュダービーを制してダービー・ダブルを達成、当ブログはアイリッシュダービーが最も強かったと見ています。オッズは1対5（1.2倍）でした。そのキャメロットが三冠を賭けたセントレジャー（ドンカスター競馬場 2937m）で2着に敗れたのです。


　ダービーではトッテナムコーナー（エプソム競馬場の最終コーナー）でも後方三番手だったように常に後方からレースを進めます。ニューマーケット競馬場の直線1600mコースで行われる2000ギニーでは道中どこにいるのかよく分かりませんでした。この脚質も長距離戦には不向きだったのかもしれませんが、最大の敗因は19歳のジョセフ・オブライエン騎手の経験不足でしょう。世界的名調教師として名高いエイドリアン・オブライエン調教師も19歳の息子には甘いようです。


　イギリスでは1970年のニジンスキー以来42年振りの三冠が期待されたキャメロットが敗れました。アメリカでも1978年のアファームド以来34年間三冠馬は出ていません。その間最も惜しかったのは1979年のスペクタキュラービッドですからビッドがベルモントステークスに勝って三冠を達成していたとしても33年間出ていないことになります。



　メジャーリーグでは1967年のカール・ヤストレムスキー以来45年間三冠王は出ていません。総合力に優るスラッガーが数多く出てきている現在、当ブログではそろそろ出てもいいのではないかと考えて一昨年から「三冠への道」シリーズをお届けしています。




　今年可能性が残るのはミゲール・カブレラだけですが、打率を落としたジョシュ・ハミルトンはホームランに専念できますので本日現在5本差を逆転するのは難しいでしょう。と言うことで今年もお預けとなりそうです。ついでにミゲール・カブレラとジョシュ・ハミルトンのバッティングについて当ブログの見解を述べさせていただきます。ミゲール・カブレラは懐の深いバッティングが特徴で線で捉えるタイプ、一方、ジョシュ・ハミルトンは点で捉えるタイプです。BS放送の解説でもハミルトンのバッティングについて「1、2の3で打つタイプ」という解説を聞かれた方も多いのではないでしょうか。今季のこれまでの三振数はカブレラの87個に対してハミルトンが144個である事実が両者のバッティングスタイルの違いを表しています。結局のところホームランではハミルトンが有利で打率ではカブレラが有利、打点は拮抗すると考えられますが今年の数字は正にその通りの結果となっています。








＊1978年ケンタッキー・ダービーにおける直線でのアファームドとアリダーによる叩き合い。アファームドに騎乗した天才ジョッキー  スティーブ・コーゼン騎手のサイン入りです。アリダーが「CF」の赤いブリンカーを着用しているところにご注目ください。「CF」は生産牧場であるカルメットファームのロゴです。

＊アファームドの三冠が懸かったベルモントステークスの直線でのアファームドとアリダーによる叩き合い。こちらもスティーブ・コーゼンのサイン入りです。アリダーに騎乗したホルヘ・ヴェラスケス騎手はどうしても勝てないアファームドを密着マークして直線で外から馬体を併せに行きました。右鞭のスティーブ・コーゼンのステッキを封じ込める作戦です。この時天才スティーブ・コーゼンは咄嗟に左鞭に持ち替えて内からアファームドを叩き出しました。その瞬間を捉えた歴史的名シーンです。このレースはアメリカ競馬史上最高のレースとして名高い。このレースでアリダー陣営はブリンカーを外してきました。アファームドの流星とアリダーの星が並んでいます。スティーブ・コーゼンが右鞭から左鞭にスイッチするシーンはユーチューブで見ることができます。

＊アファームドの前年、1977年の三冠馬シアトルスルー。ケンタッキーダービーの迫力ある写真がスポイラの表紙を飾りました。三冠レースに騎乗したジャン・クリュゲ騎手のサイン入りです。

＊1977年三冠馬シアトルスルーが三冠を達成したベルモントステークスの単勝的中馬券。

＊1978年三冠馬アファームドが三冠を達成したベルモントステークスの単勝的中馬券。

＊シアトルスルー、アファームドより強かったと言われているスペクタキュラービッドのベルモントステークスのレーシングプログラムです。1979年のケンタッキーダービーとプリークネスステークスを制したビッドは三冠間違いなしと言われていましたがレース当日ピンを踏んでしまい3着に敗れました。いまだにシアトルスルー、アファームドより強かったと信じている人が数多く存在しています（5番がスペクタキュラービッドです。）。