先月は亀田忠が圧倒的な投球で文句なしの選出であったが、亀田は投げ過ぎの弊害から調子を崩し、今月は選考が難航した。各選手のレベルが上がってきた証左であろう。
月間MVP(対象期間6月27日~7月17日)
投手部門
セネタース 浅岡三郎 1
第一候補は西村幸生とスタルヒンであった。西村は今月4勝1敗、7試合に登板して48回3分の2を投げて防御率1.48。しかし再三指摘してきたとおり走者を出し過ぎておりWHIPは1.46と極めて悪く、月間MVPの贈呈は無理との結論に至った。もちろん松坂や野茂のように走者を出しながら抑えていくピッチングスタイルもあるが、西村の場合は緻密なピッチングができる投手であり、今季に限っては呑み過ぎの弊害が出ていると言われても弁明はできないであろう。
WHIPは(被安打+与四球)÷投球回数で算出し、1イニング当りヒットと四球で何人の走者を出したかを見る指標であり、当然数字が低い方がよい。走者を出さないことが良い投球と言う考えは昭和13年であっても2011年であっても変わらないが、一方で菊矢吉男、亀田忠や松坂、野茂等にはあてはまらない。1.20が一つの基準とも言われるが、月間MVPの受賞には1.00以下であることが望ましい。
スタルヒンは今月8試合に登板して3勝2敗、51回3分の1を投げて防御率1.05、WHIPは0.86であり完封も2試合あって数字だけ見れば文句なしの受賞と言いたいところなのだが、どうしても肝心なところで精神的脆さを露呈する。今月はここで負ければタイガースの優勝という7月13日の阪急5回戦では7回3分の1で降板しており、負け投手にこそなってはいないもののエースとしてはいかにも頼りない。相手投手の石田光彦は延長11回を完投しているのである。藤本監督がマウンドに来てもボールを放さず「ボク、ナゲルヨ」くらいは言ってほしかった。16日の1安打完封は消化試合に入ってのもの、四万大観衆を集めた最終日のタイガース5回戦でも負け投手となっており、月間MVPの贈呈は無理と判断した。
と言うことで、三番手候補の浅岡三郎、中山正嘉、近藤久の争いとなった。近藤は今月2勝2敗、7試合46回を投げて防御率1.57、WHIP1.24、負けた2試合も完投して自責点2、3に抑えており4勝0敗の可能性もあった。中山は3勝2敗、8試合48回を投げて防御率1.88、WHIP1.31、奪三振率が4.21で候補の五人の中で一番高かった。浅岡は3勝2敗、6試合48回を投げて防御率1.69、WHIP1.23、登板した試合は全て試合を作っており負けた2試合も完投して自責点は1、2であり5勝0敗の可能性もあった。
近藤久は今季序盤戦は不調で中盤以降投げられず、終盤に来て復帰して好調なピッチングを見せたがシーズンを通じての活躍がなかった点もマイナス要因となった。中山はいかにも将来性を感じさせるがまだ波があり、安定味に欠ける。浅岡三郎の安定味は十分月間MVPに値するものであり、選考は難航したが浅岡の受賞に決定した。
浅岡三郎は澤村栄治やスタルヒンのような素質に恵まれている訳でもなく、西村幸生や御園生崇男のように打戦に援護される訳でもない。こつこつと地道に努力するタイプが、素質や打戦に恵まれている投手にマイナス要因が見られた月に安定した成績を残したことからチャンスが転がり込んできたものである。
浅岡三郎氏は昨年「野球小僧」のインタビューに登場されているようにお元気のようであった。昨年のインタビュー時点で96歳とのことである。
打撃部門
イーグルス バッキー・ハリス 1
最終2試合で4本のホームランを放ったバッキー・ハリスが受賞した。
ハリスは今月11試合に出場して42打数17安打13打点4本塁打、打率4割5厘、出塁率4割5分7厘、長打率7割3分8厘、OPS1.195という立派な成績であった。OPS1.195は昭和12年以降の月間の記録としては、12年春季7月の黒澤俊夫1.191を上回り過去最高である。4本塁打を放った最後の2試合を除くと打率3割8分2厘、出塁率4割4分7厘、長打率4割4分1厘、OPS0.889であった。
OPSは出塁率+長打率で算出されますので何も目新しい指標ではなく昭和13年であっても2011年であっても十分使える指標です。但し試合数が少ないと異常値が出やすいので注意が必要です。今月のハリスの場合、最後の二試合を除いた数字も検討材料とさせていただきました。
景浦将は今月13試合に出場して55打数16安打16打点2本塁打、打率2割9分1厘、OPS0.799であった。
今季首位打者に輝いた中島治康は今月10試合に出場して42打数13安打7打点1本塁打、打率3割1分、OPS0.784であった。
景浦は迫力満点の打棒を見せて月間MVP候補No1であったがハリスにしてやられた。一方今季の中島は迫力に欠けていた。タイガース優勝、ジャイアンツ二位という結果は、結局のところ景浦と中島の迫力の差であったと言える。
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