11月28日 (日) 甲子園
1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 3 0 0 0 0 0 0 0 3 金鯱 21勝25敗1分 0.457 鈴木鶴雄 古谷倉之助
0 0 0 0 0 0 3 0 0 3 ライオン 18勝28敗1分 0.391 桜井七之助 近藤久
二塁打 (ラ)桜井
三塁打 (ラ)鬼頭
盗塁王島秀之助、現役最後のホームスチール
ライオンの先発は四番ピッチャー桜井七之助。坪内道則著「風雪の中の野球半世記」によると「桜井の球は145キロ前後はあったと思える快速球ではあったが、軽くて、単調だった。」とのこと。この記述は「澤村の球速は?」議論の一助になるかもしれない。澤村の球速については「160キロ説」から「せいぜい135キロ程度」までさまざまであるが、どの説をとる人でも桜井よりは速かった考えるであろう。坪内道則は職業野球創設期(芝浦協会、宝塚協会、天勝野球団を除く)から戦後は西鉄コーチ時代の稲尾、ロッテ二軍監督時代の村田、中日寮長時代の小松を間近で見ており、「桜井の145キロ」は信ぴょう性が高いと判断できる。となれば、澤村のスピードは少なくとも150キロは超えていたとみて良いのではないか。
金鯱は2回、一死後瀬井清が中前打で出塁、鈴木鶴雄の右翼線ヒットで一死一三塁、トップに返り島秀之助が左翼線に先制タイムリーを放ち1-0、江口行男の二ゴロで二死二三塁、パスボールで鈴木が還り2-0として島秀之助も三塁に進み、黒澤の打席で島が単独ホームスチールを決めて3-0とする。左打者である黒澤の打席での単独ホームスチールは、島秀之助がいかに優秀な走者であったかを物語っている。因みに早慶戦におけるピッチャー水原の時の三原のホームスチールも左打者弘世の打席であった。更に因みに弘世は草創期の日本生命社長一族であり、当時の野球エリートのスケールを物語っている。
金鯱先発の鈴木鶴雄に6回まで散発の4安打に抑えらていたライオンは7回、先頭の中野隆雄四球、安藤之制(ゆきのり)左前打、一死後原一朗の左前タイムリーで1-3、坪内が右前にタイムリーで続き2-3、藤浪光雄の当りはサードゴロ、サード矢野槇雄からセカンド江口に渡って坪内は二封、江口は一塁に転送するがこれが暴投となる間に安藤が還って遂に3-3の同点となる。金鯱ベンチは鈴木から古谷倉之助にスイッチ、古谷は続く鬼頭数雄に四球を与えるが本日2安打の四番ピッチャー桜井七之助を遊ゴロに仕留めてチェンジ。古谷倉之助も金鯱のエースにして昨年の打点、ホームランの二冠王にして打率二位の準三冠王であり体調さえ戻れば通常は五番、時に四番を打つ両刀使いであり、桜井には負けられないところ。
ライオンは8回からリリーフに出た近藤久が最後まで締め、古谷も得点を許さず、この試合は第二試合であるため9回引分けとなった。来季から審判に転ずることとなる島秀之助にとって、2回は現役最後のタイムリーヒット、更に現役最後の盗塁がホームスチールであり今季22個目の盗塁となり、鬼頭数雄と盗塁王を分け合うこととなる。本日最後の因みに、島がホームスチールを決めた時打席に立っていた黒澤俊夫は通算10個のホームスチールを記録した本盗の名人である。
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