2020年4月5日日曜日

21年 巨人vsパシフィック 5回戦


6月30日 (日) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
2 0 0 0 0 0 0 0 4 6 巨人 24勝12敗1分 0.667 近藤貞雄 
2 3 0 0 0 0 1 1 X 7 パ軍 16勝19敗2分 0.457 真田重蔵 

勝利投手 真田重蔵 10勝6敗
敗戦投手 近藤貞雄 10勝3敗 

二塁打 (巨)三好、呉新亨
三塁打 (巨)山川 (パ)真田、木暮、森下

勝利打点 (パ)真田重蔵 1

猛打賞 (パ)木暮力三 2


パ軍の積極策が効を奏す

 後楽園の第2試合は真田重蔵と近藤貞雄の先発で午後3時43分、島球審の右手が上がりプレイボール。

 西宮の第1試合と第2試合のインターバルは30分で第2試合は2時45分に開始されたが、後楽園の第1試合は2時40分に終了しているのに第2試合とのインターバルは1時間3分である。この日の天気は「晴」なので天気が原因ではない。西宮の観客7,599人に対して後楽園は13,866人の観衆を集めており、野球熱が日ごとに増してきたことから応援団も出現していた可能性があり、その入れ替えに時間がかかった可能性は否定できない。因みに、今季最多観客数は5月26日の西宮球場で記録された14,930人であり、先週23日(日)の東西の観客数は後楽園の8,006人に対して西宮は12,655人なので、必ずしも関東の方が観客数が多い訳ではない。


 この試合で、28日に復帰した川上哲治が戦後初の四番に入った。


 ここまでハーラーダービートップは近藤の10勝で、真田は9勝でこれを追う。3位タイは8勝の呉昌征と石田光彦。この日は真田と近藤の直接対決となった。試合前の予想では安定味に勝る近藤有利か。


 巨人は初回、先頭の呉新亨がレフト線ヒットで出塁、山川喜作が中越えに三塁打を放ち早くも1点を先制、千葉茂は三ゴロに倒れ、川上は四球を選んで一死一三塁、黒沢俊夫のニゴロ併殺崩れの間に三走山川が還って2-0とする。


 パ軍は1回裏、先頭の木暮が初球を叩いて中前打、白石敏男も初球を打って左前打、これをレフト黒沢がファンブルして無死二三塁、藤井勇も初球を狙うが浅い右飛に倒れて一死二三塁、森下重好はストレートの四球、これは敬遠か、小島利男の遊ゴロ併殺崩れの間に三走木暮が還って1-2、小島が二盗を決めて二死二三塁、ここでキャッチャー多田文久三が痛恨のパスボールを犯して2-2の同点とする。


 巨人は2回表、先頭の多田が中前打で出塁、しかし近藤の投ゴロは「1-6-3」と渡ってダブルプレー、直後に三好主が左前打、しかしトップに返り呉新亨は遊ゴロに倒れて無得点。


 パ軍は2回裏、先頭の伊勢川真澄がストレートの四球で出塁、八番平野徳松はノーボールツーストライクから打って出てライト線にライナーのヒット、無死一三塁となって真田が初球をセンターオーバーの三塁打、二者還って4-2、トップに返り木暮が2球目を右前にタイムリー、5-2とリードを広げる。


 近藤は3回から本来の安定味を取り戻し、5回まで三者凡退の連続、6回一死から辻井弘に四球を与えるが、伊勢川を三ゴロ併殺に打ち取る。この間、5回の白石の一邪飛は「雑記」欄に「好捕」と書かれており、ファースト川上のファインプレーがあったようだ。


 一方、真田は3回以降も毎回走者を出すが、4回の三好主の二塁打は二死からのもので無失点、5回は先頭の山川に中前打を打たれるが牽制で釣り出して「1-3-6-3」でタッチアウト、6回と8回も先頭打者を出すが何れも併殺で切り抜け8回まで無失点。


 パ軍は7回裏、一死後真田がボール、ファウルからの3球目を中前打、トップに返り木暮がファウル、ボールからの3球目を中越えに三塁打して真田が還り6-2とする。


 パ軍は8回裏、先頭の森下がスリーボールワンストライクから右中間に三塁打、小島もワンボールからの2球目をレフト線にタイムリー、7-2とリードを広げて試合は9回へ。


 巨人は最終回、先頭の黒沢が右前打で出塁、藤本英雄は中飛に倒れるが、多田は四球を選び、近藤の中前打で一死満塁、三好は浅い右飛に倒れて二死満塁、トップに返り呉新亨が左中間に二塁打を放ち二者還って4-7と3点差、山川の遊ゴロで勝負あったかと思われた瞬間、ショート白石が一塁に悪送球して三走近藤が生還し5-7と2点差、二死一三塁から千葉の中前タイムリーで6-7と1点差として、二死一二塁で打席に川上を迎えるこの試合一番のハイライト、しかし真田は渾身の力を振り絞って川上を三振に打ち取りゲームセット。


 真田重蔵は11安打4四球2三振の完投で10勝目をマークして近藤と並ぶハーラートップタイに踊り出る。但し、5月26日のグ軍戦の勝利は後に没収試合となって取り消される。没収試合の個人記録はそのまま残るが、5月26日のグ軍戦だけ勝ちと負けがひっくり返ったので、真田の「勝利投手」だけは取り消されるのである。したがって、「日本プロ野球記録大全集」ではこの試合時点の真田重蔵の成績は9勝6敗と記載されているが、これは後付けで修正した数字である。当ブログは「実況中継」なので、その時点で各選手が認識していた成績を踏襲しています。


 実況のとおり、パ軍のヒットは全てファーストストライクを狙い打ったものであった。藤本定義監督はコントロールの良い近藤に対して「初球から狙え!」の指示を出していたとみて間違いないでしょう。「日本野球年鑑」にも「近藤に対して積極打撃策戦に出て」と書かれている。勝ち越した2回裏無死一塁で、八番の平野が送りバントではなくノーストライクツーボールから打って出てチャンスを広げた場面が象徴している。このパ軍の積極策が効を奏した好ゲームであった。



*八番打者ながら積極的に打って出てチャンスを広げた平野徳松の直筆サイン入り選手名鑑。平野謙二に改名後のもの。この名鑑では「海草中」出身となっているが、「海南中」の間違いでしょう。


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