2015年9月6日日曜日

17年 巨人vs大洋 12回戦


9月27日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 1 0 1 0 0 0 2 2 8 巨人 52勝23敗4分 0.639 藤本英雄 須田博
0 1 0 0 0 0 2 0 0 3 大洋 47勝26敗5分 0.644 野口二郎
 
勝利投手 藤本英雄   1勝0敗
敗戦投手 野口二郎 29勝12敗
セーブ     須田博    1

二塁打 (巨)中島、藤本、青田、伊藤、多田 (大)野口明
本塁打 (巨)中島 6号 (大)野口明 3号、佐藤 4号

勝利打点 中島治康 14

猛打賞 (巨)中島治康 7、坂本茂 3


英雄誕生

 明大から巨人入りした藤本英雄がデビューした。

 この試合は別の意味でも歴史に残る試合となった。巨人はここまで1引分けを挟んで4連敗で秋季リーグ戦3勝4敗1分、大洋は3連勝で秋季リーグ戦7勝1敗。夏季リーグ戦終了時点では7ゲーム差であったが大洋は3ゲーム差にまで詰め寄ってきており、エース野口二郎を立てたこの試合をモノにすれば2ゲーム差、ペナントレースの行方を左右する天王山となったのである。


 巨人は初回、一死後青田昇が打撃妨害で一塁に生き、白石敏男の右飛をライト中村民雄が落球、中村は昭和12年秋に応召して戦場から戻り、5年ぶりの出場である。一死一二塁となって中島治康が右中間に二塁打を放ち二者を迎え入れ2点を先制する。伊藤健太郎の三ゴロに中島が飛び出し「5-4」と送球されてタッチアウト、続く永沢富士雄に左前打が出たが追加点は奪えなかった。

 巨人は3回、藤本英雄のプロ入り初打席はライト線への二塁打、藤本は昭和25年に投手として7本塁打の日本記録を樹立することとなるが、その強打の片鱗を初打席で見せた。多田文久三の二ゴロの間に藤本は三進、トップに返り呉の中前タイムリーで3-0とする。

 大洋は2回裏、先頭の野口明がライトスタンドにホームランを放って1-3と追い上げる。

 巨人は4回、坂本茂、藤本が連続四球、多田の投前バントを野口二郎がお手玉、犠打とエラーが記録されて無死満塁、トップに返り呉の中犠飛で4-1と突き放す。青田は一邪飛、白石は二ゴロに倒れて追加点はならず。

 大洋は4回裏、先頭の野口明が左中間に二塁打、古谷倉之助はストレートの四球で無死一二塁、しかし浅岡三郎は中飛、中村民雄は三振、宇野錦次は二ゴロに倒れて無得点、チャンスを潰した。

 大洋は7回、先頭の中村民雄が四球を選んで出塁、宇野は左飛に倒れるが、佐藤武夫がレフトスタンドにツーランホームランを叩き込んで3-4と1点差に迫る。試合は風雲急を告げてきた。

 巨人は8回、先頭の伊藤が左中間に二塁打、永沢が送って一死三塁、坂本が中前にタイムリーを放って5-3、藤本は左飛に倒れて二死一塁、多田が右中間に二塁打を放って一走坂本が還り6-3と突き放す。
 巨人は8回から初登板の藤本に代えて須田博をマウンドに送り込んで逃げ込みを図る。
 大洋は8回裏、一死後野口明、古谷が連続四球、しかし浅岡は右飛、中村民雄は三振に倒れて無得点。


 巨人は9回、先頭の青田が中前打で出塁、白石の遊ゴロでランナーが入れ替わって一死一塁、中島がレフトにとどめのツーランを叩き込んで8-3として試合を決める。


 プロ入り初登板の藤本英雄は7回を投げて5安打3四球1三振3失点。2本の本塁打を浴びたが、これは偶然久保田製の飛ぶボールが使われていたためである。須田博が今季初セーブをあげてルーキーの初勝利を祝った。


 大洋は5年ぶりに戦場から還ってきた中村民雄をライトに起用したが、1回に落球があり試合を左右した。キャッチャーが本職の中村民雄がプロ野球の公式戦で外野を守ったのは5年ぶりの出場となったこの試合だけである。大洋は中村信一、濃人渉、野口明、中村民雄、宇野錦次とスタメンに5人の帰還兵が名を連ね、巨人はルーキーの青田昇と藤本英雄が活躍したのである。


 この試合は巨人が一度も大洋にリードを許さなかったので先制打の中島治康が14個目の勝利打点を記録したが、1点差に詰め寄られた8回に貴重なタイムリーを放った坂本茂と多田文久三こそが並列の殊勲者であった。


 昭和17年のペナントレースを左右する天王山に勝利した巨人は大洋に詰め寄られかけたが、この後独走態勢を築いていくこととなる。




*藤本英雄のプロ入り初登板を伝えるスコアカード。








*中村民雄は5年ぶりにグラウンドに戻ってきた。






 

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