2010年12月8日水曜日

12年秋 講評

 昭和12年秋季リーグ戦はタイガースが圧倒的強さを見せつけた。春季リーグ戦終了後の読売新聞誌上座談会でジャイアンツ藤本監督が「タイガースは若林を使ってこなかったので助かった。」と手の内をばらしてしまったためか、七戦中、若林忠志が4回先発して2勝、西村幸生が3回先発して4勝、ジャイアンツ戦7勝0敗であった。
 ジャイアンツ戦に一度も登板が無かった御園生崇男は阪急戦のローテーションの柱となり御園生が3勝、西村が2完封を含む3勝でこちらも7勝0敗、セネタースにも西村が3勝して7勝0敗と、春季上位3チームに全勝であった。

 打戦は首位打者の景浦将、二番セカンドに定着した進境著しい藤村富美男、49安打48四死球の山口政信、36打点で中島治康と打点王を分けあった藤井勇に加え、九番岡田宗芳の活躍が目立った。

 聯盟選出の最高殊勲選手はイーグルスのバッキー・ハリスであったが、当ブログからMVPを選出するとすれば山口政信に贈呈したい。



 ジャイアンツはシーズン序盤、澤村栄治が打ちこまれたことが敗因の全てであった。スタルヒンが15勝をあげて西村と最多勝を分けあったが、シーズン終盤全く勝てず、まだまだ発展途上である。
 澤村はシーズン終盤ローテーションに余裕を持たせたことにより復活し、11月は4試合に登板して3勝1セーブ、防御率0.29、WHIP0.68という驚異的成績であった。

 打戦は水原茂、中島治康の三四番に得点源が偏っており、タイガース、イーグルスに比して見劣りする。



 今季の殊勲No1は春季12勝44敗とダントツ最下位から28勝19敗2分で二位ジャイアンツに1.5ゲーム差まで迫ったイーグルスの活躍であった。
 無名の新人中河美芳、畑福俊英の左右の二枚エースで28勝中25勝をあげた。畑福はタイガース戦に1完封を含む3完投で3勝0敗、中河も2完投で2勝、タイガース戦は5勝2敗。タイガースのシーズン9敗のうち5敗はイーグルスに喫したものである。
 
 最高殊勲選手に輝いた三番バッキー・ハリスと四番サム高橋吉雄が打戦の中心である。ハリスは200打数62安打19四死球、高橋は167打数51安打49四死球で出塁率4割6分3厘であり、高橋三番、ハリス四番であったら更に得点能力が増していたであろう。



 金鯱はエース古谷倉之助が病気で長期休養となり苦しい台所事情であったが鈴木鶴雄が代役を務めて四位に食い込んだ。トップの島秀之助、主に五番を打つ黒澤俊夫と攻撃の起点を二枚有しているが、島は肩が治らず引退し、来季から審判に転ずることとなった。


 セネタースは中村信一を兵役で欠き苅田久徳が孤軍奮闘、エース野口明にも春季程のキレがなく五位に順位を落とした。横沢三郎監督が辞任し、大貫賢主将も殉じたことにより、苅田がプレイングマネージャーに就任することとなった。


 ライオンは菊矢吉男がエースとして一本立ちし、時折見せる豪打が魅力である。近藤久が春ほど通用しなったのが痛かった。


 阪急も三宅大輔監督が退任、来季から山下実が監督に就任して再起を図ることとなった。投手陣の立て直しが急務であり、宮武三郎が投手に復帰する模様である。


 名古屋は投打ともに一段落ちる。松尾幸造が出てきたことにより、遠藤忠二郎を外野に配して主に五番に起用、田中実をサードに起用するが、抜本的なチーム改造が不可欠である。



 昭和13年春季リーグ戦は4月29日からスタートします。澤村栄治を始め入営が相次ぎ登場メンバーも刻々と変わっていくこととなります。一方、川上、吉原、千葉等のニューフェースもお目見えし、秋季リーグ戦からは南海が加わり九球団となります。

 約4ヶ月のシーズンオフを迎えることとなりますが、当ブログにシーズンオフはありません。週末から昭和13年春季リーグ戦の模様を実況中継させていただきます。

 
 

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