2019年11月2日土曜日

21年 第4節 週間MVP


週間MVP

投手部門
 パシフィック 井筒研一 1

 今節2勝をマームしたのは清水秀雄のみ。清水の勝利は19日の中部戦は味方の大量得点に恵まれたもので、20日の巨人戦は4人の継投によるもの。巨人戦の勝利投手は、現行基準であれば野口渉で清水にはセーブが記録された可能性が高い。
 完封勝利は井筒研一と野口二郎が記録した。井筒は7回まで0対0の重苦しい展開を粘り切ったもので、5回表の守備では走者一塁の場面で右前にフラフラと上がる打球でがら空きとなった一塁ベースカバーに走り、捕球したライト木暮からの送球をキャッチして併殺を完成させた好守が高く評価されて、井筒研一が受賞した。

打撃部門
 ゴールドスター 田中宣顕 1

 16打数9安打3得点2打点。前節終了時点の打率1割9分6厘を2割9分まで上げて打撃ベスト10までもう一歩の勢いである。4連勝阪急の尾西信一と山田伝のライバルを抑えて受賞した。
 昭和19年の「田中豊一」時代には、同年に4安打を記録した9人のうちの一人であり、昭和19年7月16日に近畿の清水秀雄から戦前最後の満塁本塁打を放った。この一打は、同年に甲子園球場で記録された2本の本塁打のうちの1本でもあった。
 田中はこの強打が評価されて、この後四番を打つことになるが、この年46試合に出場しただけでプロ野球を去ることとなる。このような強打者が全く無名というのが不思議ですね。

殊勲賞
 巨人 林清一 1
 16日の中部戦で戦後最初の満塁本塁打。
 戦前最後の満塁本塁打を放った田中宣顕と、戦後最初の満塁本塁打を放った林清一という、二人のバイプレイヤーが表彰対象となった。

 阪急 三木久一 1
 19日のゴ軍戦で、9回表に満塁走者一掃逆転二塁打。

 グレートリング 野口渉 1
 20日の巨人戦で逆転の決勝2点タイムリー。野口渉がプロで記録した通算打点はこの「2点」だけである。

敢闘賞
 阪急 尾西信一 1
 11打数4安打2得点3打点。九番打者としてつなぎ役で好調阪急を引っ張る。

 阪急 山田伝 1
 18打数7安打3得点3打点3盗塁。前節終了時点まで打率1割7分6厘と開幕から不振が続いていたが、本領を発揮してきた。

 グレートリング 安井亀和 1
 10打数4安打2得点3打点4四球。グ軍機動力野球の核弾頭。

 パシフィック 伊勢川真澄 1
 11打数4安打1得点2打点5四球。戦前からバッテリーを組む井筒が完封した19日のセ軍戦で8回裏に決勝打を放つ。

技能賞
 中部日本 森井茂 1
 17日のグ軍戦で芸術的ピッチングを見せる。次の試合で打たれたため惜しくも週間MVPを逃した。

 タイガース 呉昌征 1
 19日の巨人戦で完投勝利、20日の中部戦では勝利打点の「二刀流」。

4 件のコメント:

  1. 田中宣顕についてはベースボールニュース昭和27年12月709号の「思い出の名選手今いづこ」末崎正隆の項に次のような一文があります。
    (前略)惜しいことに精神的な面に難点があり、私生活にも乱れがあったうえ、石田、田中らとあらぬ事件に連座して金星を半年あまりで退団(後略)
    9月14日の阪急11回戦(後楽園)を境に彼らの名前は見当たりません。ことの真偽は不明ですが、プロ野球の世界から足を洗ったことは間違いないでしょう。

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  2. 昭和21年当時の「八百長問題」については鈴木龍二、鶴岡一人、藤本定義らの著書にもはっきりと書かれているので、当ブログでも避けては通れない時期に来ました。実力のある惜しい選手が消えていったようです。西鉄等の時にも見られたように、実力があるから狙われる訳ですが・・・。

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    1. 野球雑誌にもそういった事柄を述べた記事が出てくるようになります(あくまで否定的、初めから存在しない前提の書き方ですが)。関西発行の雑誌には西宮球場のスタンドにたむろしている「例の集団」についてのミニ潜入ルポがありました。

      補足ですが、戦後1リーグ時代は昭和26年から27年に野球界で鈴木惣太郎が連載していた「プロ野球太平記」を参考にしてみてはいかがでしょうか。
      終戦直後からのプロ野球全体の動向を細かく記録してあります。

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    2. ご教示ありがとうございます。

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