2019年11月19日火曜日

史上最大の珍プレー


 「珍プレー」の元祖と言えば「おでこにぶつけた宇野」というのが定説となっていますが、当ブログは、宇野事件より35年前に起こった「山田伝と安井亀和との『鬼ごっこ』」こそが「史上最大の珍プレー」であることを「発見」しました。

 昭和21年5月27日、西宮球場で行われた阪急vsグレートリング4回戦における3回裏グ軍の攻撃でその「事件」は起こりました。


 グ軍は3回裏、先頭の安井亀和が左前打を放って出塁、筒井敬三は左飛に倒れますが、岡村俊昭も中前打を放って一死一二塁、ここで天保義夫の二塁牽制が悪送球となってセンターに抜けたところから物語は始まります。


 「雑記」欄には「天保の悪投に乗じて進まんとするを中堅山田、安井を挟んでアウトとした。この時二進した岡村、塁を離れたので併殺さる。」と書かれています。


 そして、スコアカードには「天保の悪送球で三塁に進んだ安井が一旦本塁方向に走ったが『8B』によりタッチアウト」、「岡村も『8B』によりタッチアウト」と書かれています。


 すなわち、一旦本塁方向に進んだ安井が追ってくる山田から逃れるため三塁ベースを踏んで二塁方向に逆走し、追い付いた山田が二塁ベース付近で安井にタッチ、更に、二塁に進んでいた一走岡村が離塁したところに山田がタッチしてこちらも「8B」によりアウトでダブルプレー。記録は山田伝の「無捕殺併殺」となりました。


*(注)「8B」とは、中堅手「8」が二塁「B」で刺殺を記録したことを意味します。


 天保には悪送球による「失策」が記録されているので、一旦安井が三塁に進塁したのは間違いありません。そこから本塁方向に進んで山田が追いかけてきたとしても、三塁ベースに戻って止まっていれば単なる「天保の二塁牽制悪送球による進塁」で済んでいた訳ですが、何故か安井は二塁方向に逆走しました。


 足に自信のある安井が、俊足として定評のあるベテラン山田に「挑戦」したのかもしれません。天保の二塁牽制悪送球で二走安井が三塁に進むのは当然の成行きですが、バックアップした山田がボールを持ったまま内野方向に走ってきたのを見て、チャレンジ精神がめらめらと燃え盛ったのではないでしょうか。三塁ベースに達していた安井は山田に挑戦を挑むかのように本塁方向に走り出し、山田がそれを追ってピッチャー方向から安井を追い詰め、「ヤバい!」と感じ取った安井が逆方向に逃げました。安井としては、野球のルールなどよりアスリートの本能として山田との「鬼ごっこ」に勝ちたかったのではないでしょうか。


 山田も近くの野手に送球すればよいものを、自ら安井を追いかけ回したのですから「役者」ですね。


 岡村は安井が二塁ベースに戻ったと判断し、占有権は安井にあるのだから自分はベースを離れたがその前に安井がタッチアウトになっていたというところでしょうか。

 岡村のアウトは付け足しとして、山田と安井の「鬼ごっこ」は、「宇野事件」を凌駕する「史上最大の珍プレー」に認定できると、当ブログは明言させていただきます!


*「雑記」欄には「天保の悪投に乗じて進まんとするを中堅山田 安井を挟んでアウトとした。この時二進した岡村 塁を離れたので併殺さる。」と書かれています。

*スコアカードには天保の二塁牽制悪送球(1’-4)で三塁に進塁した安井が一旦ホームに向かいかける(本塁方向への矢印)が、「8B」によりタッチアウト(センター山田に二塁ベースでタッチされた)と書かれています。
そして、一走岡村も「8B」によりタッチアウト、併殺が記録されました。

*この試合でセンター山田の刺殺は4個で併殺が1個。センターフライは2個だけで、「無捕殺併殺」による刺殺2個を加えて合計4個となります。


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