2014年3月1日土曜日

理想郷




 タケノベルベット号の訃報が伝えられています。


 1992年にエリザベス女王杯を制しましたが18頭立ての17番人気で単勝91.3倍の人気薄でした。89年に同レースを制したサンドピアリスの430.6倍には敵いませんが、「荒れるエリ女」の代表格の一頭です。


 その実力は中々のもので、同レースの後に鳴尾記念を制し、日経新春杯3着、阪神大賞典2着ということで天皇賞でも穴人気となりましたが10着に敗れて引退することとなりました。


 ちょうど大阪に住んでいた頃関西で活躍していた馬で、阪神大賞典は阪神競馬場のゴール前で見ていました。一番人気のナイスネイチャを競り落とし、メジロパーマーとの馬連870円を一点で仕留めたのがいい思い出です。



 繁殖生活を引退後はイーハトーヴ・オーシァンファームに引き取られていたようです。「イーハトーヴ」とは宮沢賢治の「理想郷」を言います。同牧場は競走馬の“養老牧場”として知られており、第一回エリザベス女王杯を制したディアマンテ号もけい養されていました。因みにエリザベス女王杯の前身はヴィクトリアカップでしたが、1975年に英国から本物のエリザベス女王が来日したことを記念して1976年から「エリザベス女王杯」に改称されて牝馬三冠の三冠目の位置付けとされたものです。筆者が競馬を始めた年の出来事なので、筆者の競馬歴とエリザベス女王杯の歴史は同一ということになります。1995年までは3歳牝馬限定でしたが96年からは3歳以上牝馬による争いに変更され、新たに秋華賞が牝馬三冠の最終レースとして創設されたのはご存知のところでしょう。


 「荒れるエリ女」を代表するサンドピアリスとタケノベルベットの共通項は、チャイナロックの血を引くところです。サンドピアリスの父ハイセイコーの父がチャイナロック、タケノベルベットの母タケノダンサーの父がチャイナロックです。父系のゲインズボローと母系のサンインローからスタミナと底力を受け継ぐチャイナロックは時として大物を輩出し、アカネテンリュウ(現在でも3歳夏から力を付けてきて菊花賞で既成勢力を打ち破る馬のことを“第二のアカネテンリュウ”と呼びます)、タケシバオー(東京ダート1700mのレコードは37年間破られませんでした)、ハイセイコー(この馬の人気は不滅です)などが歴史に名を残しています。



 

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