日本野球史上空前となる長期一シーズン制を終了した。
優勝したジャイアンツは強力打線で打ち勝った。川上哲治が猛打を見せてシーズン首位打者となったがスタミナ切れから後半戦は精彩を欠いた。逆に前半戦は絶不調であった中島治康が後半になって復活した。優勝の鍵を握ったのは三番・千葉茂の活躍であった。平山菊二も波はあるが印象的な活躍を見せた。一シーズン限りでフィリピンに帰国するアチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)は巨人軍史上初の満塁ホームランを放つなど勝負強さを印象付けた。42勝を記録したスタルヒンは終盤調子を崩したが気力を振り絞って優勝を掴み取った。一時はタイガースに逆転されるのは必至の状況まで追い込まれたが最終盤を“大和魂”で乗り切った。主力が温存され、応召は三田政夫と井上康弘だけなので黄金時代の継続は必至であろう。
三連覇を逃したタイガースは“巨星墜つ”の感が強い。前半戦を引っ張った御園生崇男の応召が痛かった。西村幸生の衰えを若林忠志がカバーして一時は逆転優勝を狙えるところまでジャイアンツを追い込んだが一歩足りなかった。守備の名手として名高い皆川定之は9月の月間首位打者に輝いた。シーズン終了後景浦将、門前真佐人、岡田宗芳等が応召することとなり、来季の苦戦は免れないであろう。
九球団随一の投手陣を誇る阪急は余裕のローテーションでシーズンに臨んだが、逆に軸になる投手が不在で終盤失速した。西村正夫、フランク山田伝の快足コンビと上田藤夫、黒田健吾、伊東甚吉の内野陣は健在であるが、4月、5月の月間MVPに輝いた高橋敏と安定した投球を見せた荒木政公が応召で抜ける投手陣の立て直しが急務である。
しぶとい試合ぶりで勝率5割をキープしたセネタースは苅田久徳の踏ん張りと野口二郎の投打に渡る活躍が光った。野口はまだ若さを覗かせる場面が見られるが今後の成長に期待がかかる。来期は強打の尾茂田叶を応召で欠くこととなるのが痛い。
鶴岡一人の加入でダークホースに躍り出た南海はその鶴岡を筆頭に宮口美吉、中田道信、平井猪三郎、小林悟楼、栗生信夫、海蔵寺弘司と主力選手を大量に戦場に送り込むこととなり来季の苦戦は必至である。
名古屋は終盤の10試合に限れば7勝2敗1分で最強チームであった。序盤戦の三本柱松尾幸造、西沢道夫、村松幸雄を故障で欠いて繁里栄が孤軍奮闘、4月23日の堺大浜球場における南海とのダブルヘッダーに2試合連続完投勝利を飾った。これは現在でも残る日本記録である。大沢清と中村三郎がマウンドに上って巧投を見せた。来期は9月の月間MVPに輝いた強打者加藤正二を応召で欠くこととなる。
春季シリーズを7勝25敗と大きく負け越した金鯱は岡田源三郎監督が丸坊主になるやチーム一丸となって勝ち進み夏季シリーズでは優勝争いを繰り広げた。中山正嘉は4試合連続完封を含む10連勝を記録するなどの活躍で25勝をあげた。戦地から戻ってきた小林利蔵が神懸り的な猛打を見せて7月の月間MVPに輝いた。
ライオンは内野守備が崩壊することが多いが、一方豪快な強打が魅力でもある。水谷則一が10月の月間MVP、鬼頭数雄が秋季シリーズ首位打者に輝いた。
イーグルスは貧打に泣いた。秋季シリーズでは中河美芳が謎の休場を続けたのが響いた。亀田忠は不振が続いたが11月13日のライオン戦では通算6度目の1安打ピッチングを記録した。亀田に代わってエース的活躍を見せた望月潤一は勝ち星に恵まれず7勝に終わったが11月の月間MVPに輝いた。
0 件のコメント:
コメントを投稿