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6月13日 (火) 甲子園
1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
5 0 1 0 1 0 1 2 0 10 セネタース 20勝14敗2分 0.588 浅岡三郎 金子裕 野口二郎
5 0 0 2 0 0 0 1 0 8 名古屋 11勝22敗3分 0.333 繁里栄 西沢道夫 松尾幸造
勝利投手 野口二郎 12勝6敗
敗戦投手 西沢道夫 1勝3敗
二塁打 (セ)浅岡 (名)中村
大乱戦
劣悪となったボールの時代には珍しく点の取り合いとなった。
セネタースは初回、先頭の苅田久徳が右翼線にヒット、横沢七郎の三前送りバントが野選を誘い無死一二塁、尾茂田叶は二飛に倒れるが佐藤武夫の三ゴロをサード大沢清が失して一死満塁、野口二郎が中前に2点先制タイムリーを放って2-0、浅岡三郎が左翼線に2点タイムリー二塁打を放って4-0、柳鶴震の中前タイムリーでこの回5点を先制する。
名古屋は1回裏、一死後石田政良が中前打で出塁、桝嘉一の遊ゴロをショート柳が一塁に大暴投する間に一死二三塁、大沢の中犠飛で1-5、加藤正二、三浦敏一連続四球で二死満塁、芳賀直一の左前打で二者還って3-5、芳賀もレフト織部由三からのバックホームの隙を突いて二塁に進み二死二三塁、続く中村三郎の中前2点タイムリーで5-5の同点に追い付く。
名古屋は2回から先発の繁里栄に代わって4月10日以来約2カ月ぶりの登板となる西沢道夫がマウンドに上がる。セネタースも先発の浅岡三郎がレフトに回り金子裕がマウンドに上がる。
セネタースは3回、先頭の野口が四球で出塁して二盗に成功、浅岡四球、柳の一前送りバントが野選を誘い無死満塁、金子が押出し四球を選んでこの回無安打で1点を勝ち越して6-5とする。
名古屋は4回、先頭の芳賀が中前打で出塁、中村金次四球で無死一二塁、ここでセネタースはコントロールの定まらない金子が降板して野口二郎がファーストからマウンドに上がる。西沢の一前バントをファーストに回った浅岡がダッシュ良く捌いてサードに送球、タイミングはアウトであったがサード横沢が大きく逸らす間に二走芳賀に続いて一走中村までも生還して7-6と逆転に成功する。
セネタースは5回、二死後家村相太郎が四球で出塁して二盗に成功、森口次郎も四球を選んで二死一二塁、トップに返り苅田の三ゴロをサード大沢が二塁に送球するもセーフ、野選となる隙を突いて二走家村がホームに還り7-7の同点とする。
セネタースは7回、先頭の家村が四球で出塁、森口の打席で西沢がワイルドピッチを犯して家村は二進、森口三振後苅田の打席でも西沢のワイルドピッチで家村は三進して一死三塁、苅田が中犠飛を打ち上げて8-7と勝ち越す。5回と言いこの回と言い「元祖・意外性の男」家村相太郎が久々に見せてくれた。
名古屋は8回から4月19日以来の登板となる松尾幸造がマウンドに上がる。
セネタースは8回、一死後野口、浅岡が連続中前打、二死後家村が三打席連続四球を選んで二死満塁、森口が右前に2点タイムリーを放って10-7と突き放す。
名古屋は8回裏、一死後芳賀が右前打で出塁、中村の左翼線二塁打で芳賀が還って8-10とする。9回も二死後大沢の右前打と加藤の左前打で一二塁として最後の粘りを見せるが三浦敏一が投ゴロに倒れてゲームセットを告げるサイレンが高々と鳴り響く。
1時59分に始まった試合は4時1分に終了、戦前の試合としては珍しく2時間を超えるゲームとなった。セネタースは名古屋守備陣が犯した三つの野選を全て得点に結び付けた。
「元祖・意外性の男」家村相太郎が三打席連続四球、野選の隙を突いて二塁から生還したり、二度のワイルドピッチで二進、三進したりで2得点をあげる活躍を見せる。
近頃珍しい乱戦を締めたのは野口二郎のピッチングであった。野口は6イニングを投げて5安打無四球1三振1失点の好リリーフを見せて12勝目をあげる。
6月13日 (火) 後楽園
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
2 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 4 南海 14勝18敗2分 0.438 政野岩夫 宮口美吉
1 0 0 0 0 0 3 0 0 0 1X 5 ジャイアンツ 26勝11敗 0.703 川上哲治 中尾輝三 スタルヒン
勝利投手 スタルヒン 17勝6敗
敗戦投手 宮口美吉 4勝6敗
二塁打 (南)国久 (ジ)水原、中尾、白石
三塁打 (ジ)川上、平山
中尾輝三好投、サヨナラを呼び込む
ジャイアンツは五番ピッチャー川上哲治が先発。
南海はその川上の立ち上がりを攻めて先頭の国久松一が右翼線に二塁打、平井猪三郎が左前にタイムリーを放って1点を先制、更に鶴岡一人の左前打と中村金次の右前打で無死満塁、岡村俊昭の一ゴロをファースト永澤富士雄が二塁に悪送球する間に三走平井が還って2-0とする。永澤の悪送球を見た二走鶴岡も三塁からホームを狙ったが三本間に挟まれてタッチアウト、なお一死二三塁で伊藤経盛は捕邪飛、これはスクイズ失敗の可能性が高いのではないか。中田道信も二直に倒れて2点止まり、一気に崩すチャンスだっただけにもう少し追加得点が欲しかったところである。
ジャイアンツは1回裏、先頭の白石敏男が四球で出塁、水原茂の左中間二塁打で白石が還り1-2とする。
ジャイアンツは2回から早くも川上をファーストに回して中尾輝三をマウンドに送る。中尾は2回~7回まで岡村に打たれた2安打のみ、3四球1死球で無失点に切り抜ける。
南海先発の政野岩夫も2回~6回は1安打無失点の好投を見せるが7回に捕まった。
ジャイアンツは7回、先頭の川上が右中間に三塁打、アチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)は二ゴロに倒れるが平山菊二が右中間に三塁打を放って2-2の同点、吉原正喜がスクイズを決めて3-2と逆転に成功する。更に中尾が左中間に二塁打を放って政野をKO、代わった宮口美吉から白石が右翼線に二塁打を放って4-2とする。
南海は8回、平井、鶴岡が連続四球、中村の送りバントが内野安打となって無死満塁、ジャイアンツベンチはここで中尾をあきらめスタルヒンを投入する。岡村の一ゴロをファースト川上が二塁に送球する間に三走平井が還って3-4としてなお一死一三塁、打球を見ていないので断言はできないがここはバックホームでしょう。伊藤に代わる代打岩出清が左犠飛を打ち上げて4-4の同点に追い付く。
スタルヒンは9回に小林悟楼に中前打を許したのみで10回、11回と三者凡退に抑える。一方宮口も8回~10回を無安打2四球無失点に抑えて試合は11回裏へ進む。
ジャイアンツは11回裏、川上が中前打で出塁、リベラは二直に倒れるが平山が右前打を放って一死一二塁、吉原の遊ゴロをショート小林が失して一死満塁、スタルヒンが右前にタイムリーを放ってジャイアンツが5A対4でサヨナラ勝ちをおさめる。
読売新聞の鈴木惣太郎の論評によると「藤本監督は『今日は楠に先発をさせようと思っていたのだが久しく出場していないから心配して急に川上に代えた』と投手起用に迷った顛末を述べた」とのこと。川上の談話は「どんな球もみんな打たれた、一昨日投げたばかりだから疲れているのです」とのこと。矢張り川上は打者に専念したいようで、8回の守備を見ても守りも得意ではなさそうである。
本日のお立ち台は好救援にサヨナラヒットのスタルヒンとなるが、見逃してならないのは2回から好リリーフを見せた中尾輝三のピッチングである。徐々に力を付けてきており、スタルヒン一人の状況から脱却できるかがジャイアンツの覇権の鍵を握っている。
6月13日 (火) 後楽園
1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 阪急 24勝10敗 0.706 荒木政公 石田光彦
0 2 1 0 0 2 0 0 X 5 金鯱 10勝26敗 0.278 中山正嘉
勝利投手 中山正嘉 7勝10敗
敗戦投手 荒木政公 3勝1敗
二塁打 (金)山本
中山正嘉、完投で7勝目
金鯱は2回、一死後中山正嘉が三塁に内野安打、瀬井清が右翼線にヒットを放ち中山は三塁に進む。瀬井が二盗を決めて一死二三塁、長島進の左犠飛で1点を先制、山本次郎が左中間に二塁打を放って2-0とする。
金鯱は3回、先頭の野村高義が中前打で出塁、阪急ベンチは先発の荒木政公を下げてリリーフに石田光彦をマウンドに送る。小林茂太の遊ゴロをショート田中幸雄が二塁に悪送球、古谷倉之助の右翼線タイムリーで3-0とする。
阪急は6回、先頭の西村正夫が四球で出塁、一死後黒田健吾の三ゴロをサード山本が一塁に悪送球する間に西村が快足を飛ばしてホームに還り1-3とする。
金鯱は6回裏、先頭の瀬井が四球で出塁、長島が送って山本の二ゴロの間に瀬井は三塁に進む。ここで瀬井がホームスチールを企てるとキャッチャー日比野武が前に出過ぎて打者・五味芳夫を妨害。この場面を翌日の読売新聞は「沢主審の『三塁走者がスティール・ホームを企てている時に捕手が打撃を妨害したのだから打者に一塁を与え三塁走者の生還を許した』という判定によって瀬井の生還が認められた。」と伝えている。更に五味が二盗に成功、佐々木常助が左前にタイムリーを放って5-1として試合を決める。
中山正嘉は3安打7四球5三振の完投で7勝目をあげる。中山は過去においても岡田源三郎監督がマスクを被ると好投を見せるように、人生意気に感じるタイプタイプなのではないでしょううか。全員五分刈りに燃えているようである。
金鯱打線は12安打の猛攻を見せる。野村高義が5打数3安打、九番の山本次郎が4打数2安打1打点の活躍であった。
*中山正嘉は完投で7勝目をあげる。
6月11日 (日) 後楽園
1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 3 0 0 0 0 4 セネタース 19勝14敗2分 0.576 野口二郎
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 ジャイアンツ 25勝11敗 0.694 スタルヒン
勝利投手 野口二郎 11勝6敗
敗戦投手 スタルヒン 16勝6敗
二塁打 (セ)浅岡
三塁打 (セ)苅田、尾茂田 (ジ)リベラ、川上
野口二郎、スタルヒンに投げ勝つ
セネタース・野口二郎、ジャイアンツ・スタルヒンの両エースが先発。両人が先発でぶつかるのは1回戦以来であるが両人は多くの試合でリリーフでも登板するので過去三回投げ合っている。上位三チームを追うセネタースとしては負けられない一戦となった。
野口二郎は4回まで一人の走者も出さずパーフェクトピッチング。スタルヒンは初回、先頭の苅田久徳に左前打から盗塁を許すが後続を抑え、2回は一死後浅岡三郎に左中間二塁打を打たれるが無失点で切り抜ける。3回は三者凡退。
序盤戦を押し気味に進めていたセネタースは4回、先頭の佐藤武夫が左翼線にヒット、続く野口が中前打を放って無死一二塁、しかし佐藤がキャッチャー吉原からの牽制に掛かり「2-6-5」と渡ってタッチアウト、この間に一走野口は二塁に進む。三塁フォースアウトの場面だけに二走佐藤は浅岡の送りバントに備えてリードを大きくしていたようだ。浅岡は三ゴロに倒れて二死二塁、ここで柳鶴震が中前にタイムリーを放って1点を先制する。
セネタースは5回、一死後苅田が中越えに三塁打、横沢七郎が右前にタイムリーを放って2-0、尾茂田叶が左中間に三塁打を放って3-0、佐藤の遊ゴロの間に尾茂田も還って4-0とする。
ジャイアンツは5回、二死後アチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)が中越えに三塁打を放つが平山菊二は遊ゴロに倒れる。6回、7回は三者凡退でここまで野口の前に1安打に抑えられる。
ジャイアンツは8回、先頭の川上哲治が左中間に三塁打、一死後平山の三ゴロの間に川上が生還して1点を返すが吉原正喜は二飛に倒れる。最終回は二死後水原茂が左前打を放って粘りを見せるが千葉茂の代打楠安夫が遊飛に倒れてゲームセットを告げるサイレンが高々と鳴り響く。
野口二郎、スタルヒンの一騎打ちの模様を翌日の読売新聞・鈴木惣太郎の論評は「スタルヒン、野口の一騎打ちは互いに三振の奪い合いに鎬を削って展開した。4回までにスタルヒンが5打者を三振に討ち取ると野口も劣らじと4人をストラック・アウトして両軍共に快速球投手を打ちあぐんで苦しみ抜いた。」と伝えている。
野口二郎は3安打無四球5三振の快投で11勝目をあげる。スタルヒンは10安打3四球6三振であった。両軍無失策の引き締まった試合で失点=自責点であった。3時55分開始、5時5分終了、1時間10分の見応えのある好ゲームであった。両軍とも三塁打が2本ずつ出ているが、両投手の投球から外野陣も浅目の守備体形をとっていたのかもしれない。
*野口二郎とスタルヒンによる投げ合い。
6月11日 (日) 後楽園
1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 イーグルス 13勝21敗1分 0.382 中河美芳 望月潤一
0 1 1 0 0 2 0 1 X 5 名古屋 11勝21敗3分 0.344 繁里栄
勝利投手 繁里栄 3勝8敗
敗戦投手 中河美芳 4勝5敗
二塁打 (イ)辻 (名)加藤、繁里
名古屋、伸び伸びと快勝
打てないイーグルスは現在平井猪三郎、中島治康、苅田久徳と並んでホームラン王(2本)の寺内一隆を三番に入れて一番には高須清を配す。
名古屋は2回、先頭の加藤正二が四球で出塁、三浦敏一は三邪飛に倒れるがこれは送りバント失敗か。加藤が二盗を決めて服部受弘三振で二死二塁、ここで芳賀直一が左前にタイムリーを放ち1点を先制する。
名古屋は3回、先頭の石田政良が三塁に内野安打、桝嘉一四球で無死一二塁、大沢清が右前にタイムリーを放って2-0とする。イーグルスは先発の中河美芳をファーストに回しファーストの菅利雄に代わって望月潤一がマウンドに上がる。ここは望月が踏ん張って加藤は一飛、三浦は中飛、服部は二打席連続の三振で追加点はならず。
名古屋は6回、先頭の芳賀が左中間にヒット、繁里が送って一死二塁、トップに返り村瀬一三が左前にタイムリーを放って3-0、村瀬はレフトからのバックホームの隙に二塁に進む。村瀬が三盗を決めて一死三塁、石田の中犠飛で4-0とする。
名古屋は8回、二死後繁里が右中間に二塁打、村瀬が二打席連続となるタイムリーを右翼線に放ち5-0と突き放して勝負を決める。
繁里栄は5安打1四球2三振で今季二度目の完封勝利を飾る。翌日の読売新聞の鈴木惣太郎の論評でも「何はともあれ繁里は実によく投げた。名古屋の快勝は彼に負う所頗る多大である。」とのこと。
鈴木惣太郎の論評では「根本監督時代の名軍は箍(たが)を締め過ぎた桶の観があってチーム全般が何となく窮屈だったが小西新監督はこの締め過ぎた箍を少し緩めて選手の特徴を存分に発揮させようとしている、この手心の相違がこの日の試合によく現れたものでる。」としている。
また、イーグルスの辻信夫について「劈頭桝の猛遊ゴロが不規則バウンドして遊撃辻の眉間に当り鵞鳥(ガチョウ)の卵大の瘤を作った、剛毅の辻だからこそ最後まで頑張ったが、“眼が眩んで球が見えなくなった”と言っていた。」とのことである。当ブログが辻信夫に最初に目を付けたのは2010年4月30日付けブログ「イーグルスvs大東京 2回戦」において、遊ゴロで三塁ランナーを刺したプレーに着目した時です。スコアブックの記載を見てすぐに浅村栄斗が甲子園の決勝の常葉菊川戦で見せたプレーが思い浮かびました。この時「因みに浅村は現若手では私の一押しの選手」と書いていることが今年の浅村栄斗シリーズに結び付いている訳です。辻信夫は本日イーグルス打線では唯一のマルチヒットとなる3打数2安打を記録している。
*繁里栄は4月23日、堺大浜球場のダブルヘッダーに連投で完投した時(第一試合は完封、第二試合は完投)以来の完封勝利を飾る。
菊花賞も無事オルフェーヴルの三冠達成で終了し、今年ほど「三冠」が多く活字になったことは無かったのではないしょうか。アメリカン・リーグ投手三冠を達成したジャスティン・バーランダーは日増しに1992年のデニス・エカーズリー以来19年ぶりの投手のMVPの声も高まってきました。ナショナル・リーグでもクレイトン・カーショウが投手三冠を達成し、サンディ・コーファックスの再来と言われています。日本でも三冠タイトルに勝率を用いる化石人的発想で吉見と田中が投手三冠だという活字が躍っていましたが、流石に恥ずかしくなったのか奪三振をタイトルとして扱い投手三冠の声は聞かれなくなってきました。
ナショナル・リーグバットマンレースではマット・ケンプが本塁打・打点の二冠を達成し、打率でもホセ・レイエスに1分3厘差の三位でした。150試合を超えた時点で二冠をキープしながら首位に3厘6毛2糸差に迫った時には、1967年のカール・ヤストレムスキー以来44年ぶりの三冠達成の期待が大きく膨らんだことは既報のとおりです。
1968年以降、ア・ナ両リーグで本塁打・打点の二冠を達成した打者は意外なほど多く、31人で延べ41回あります。マイク・シュミットは1980、81、84、86年と4回達成しています。ウィリー・マッコビー、ジョニー・ベンチ、ジョージ・フォスター、ジム・ライス、セシル・フィルダー、アレックス・ロドリゲス、ライアン・ハワードが各2回達成しています。
本塁打・打点の二冠の場合、残る打率において二冠達成者とその年の首位打者との打率差が小さいほど三冠達成に近付く訳です。1968年以降の41回では、二冠達成者とその年の首位打者との打率差の平均は実に5分(0.050)もあり、本塁打・打点と打率は全くカテゴリーの違う争いとなっていることが分かります。1999年にマーク・マグワイアが65本塁打、147打点で二冠を達成しましたが打率は2割7分8厘で首位打者のラリー・ウォーカー3割7分9厘とは1割1厘の差があり、2008年のライアン・ハワードは48本、146打点の二冠でしたが2割5分1厘で首位のチッパー・ジョーンズと1割1分3厘の差がありました。4回二冠に輝いたマイク・シュミットも、首位との差は3分8厘、2分5厘、7分4厘、4分4厘で三冠のチャンスは皆無でした。
1968年以降の本塁打・打点の二冠達成者の中で、その年の首位打者との打率差が最も小さかったのは1972年のディック・アレン(ホワイトソックス)です。この年37本塁打、113打点で二冠に輝いたアレンは打率も3割8厘で首位のロッド・カルー(ツインズ)3割1分8厘とは1分差、二位のルー・ピネラ(ロイヤルズ)3割1分2厘に次ぐ第三位でした。この年のア・リーグは三割打者が6人で投高打低の時代のようですが、ディック・アレンの強打ぶりは日本ではあまり馴染みはないかもしれませんが有名です。三年前に49本で本塁打王のハーモン・キルブリューが26本と衰えていたこと、翌年初の本塁打王となるレジー・ジャクソンが25本で本格化する前だったことがアレンの二冠にプラスに作用した訳ですが、この後レジー・ジャクソンと隔年毎に本塁打王を分けあうこととなります。因みにこの年打率3割で六位のリッチー・シェインブラム(ロイヤルズ)は1975年に来日して広島では「シェーン」を名乗り、広島初優勝に貢献しました。神宮球場に見に行った時、スタンドから「アラン・ラッド!」と声が掛かっていましたが、映画「シェーン」からであることは言うまでもないところです。
今年のマット・ケンプの「二冠にして首位打者と1分3厘差」は、ディック・アレンに次いで1968年以降では二番目に三冠に近付いた記録です。1977年のジョージ・フォスターと1978年のジム・ライスが1分8厘差、昨年のアルバート・プホルスが2分4厘差、前述の1981年のマイク・シュミットが2分5厘差で続きます。歴史的記録の割にはあまり大きく騒がれなかった(当ブログを除く)ようですね。
*左がディックアレン、右がマット・ケンプのサインボール。
6月10日 (土) 甲子園
1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
3 0 1 0 3 0 1 0 0 8 阪急 24勝9敗 0.727 浅野勝三郎 重松通雄
0 0 2 3 0 0 0 0 0 5 ライオン 13勝16敗4分 0.448 菊矢吉男 近藤久
勝利投手 重松通雄 4勝5敗
敗戦投手 菊矢吉男 9勝7敗
田中幸雄、神がかり
阪急は初回、先頭の西村正夫が四球で出塁、フランク山田伝が三前に送りバントを決めて一死二塁、黒田健吾が中前に先制タイムリーを放つ。黒田の二盗後山下好一は四球、上田藤夫は三邪飛に倒れるが山下実が四球を選んで二死満塁、ここで田中幸雄の二ゴロをセカンド西端利郎が一塁に悪送球する間に三走黒田に続いて二走山下好一も還って3-0とする。
阪急は3回、先頭の山下好一が四球で出塁、上田が送って一死二塁、山下実は三振に倒れるが田中が三塁に内野安打、更にサード中野隆雄が一塁に悪送球する間に山下好一が還って4-0とする。
ライオンは3回、先頭の井筒研一が四球で出塁、中野の遊ゴロでランナーが入れ替わり、トップに返り水谷則一が中前にタイムリーを放って1-4、坪内道則が左前打、二死後鬼頭数雄が右前にタイムリーを放って2-4と追い上げる。
阪急は4回から先発の浅野勝三郎に代えて重松通雄をマウンドに送る。
ライオンは4回、先頭の岡本利之が四球で出塁、西端の右翼線ヒットで無死一三塁、井筒は投邪飛に倒れる。打ちあげたファウルフライをピッチャーが追いかけるとは考えにくいのでこれはスクイズが小飛球となって重松が捕球した地点がファウルグラウンドであったということでしょう。しかしここでダブルスチールを決めて3-4、スクイズがダメなら重盗がある。中野は三振に倒れるが水谷の遊ゴロをショート田中が一塁に悪送球する間に二走西端が還って4-4の同点に追い付き水谷も二塁に進む。更に坪内が中前にタイムリーを放って5-4と逆転に成功する。
阪急は5回、先頭の黒田が四球で出塁、山下好一の三前バントが内野安打となって無死一二塁、上田の投前送りバントはピッチャー菊矢吉男が三塁に送球してフォースアウト、ところが菊矢がワイルドピッチを犯して労せずして一死二三塁、山下実の右犠飛で5-5の同点とする。更に田中が右前にタイムリーを放って6-5と逆転、田中が二盗を決めてキャッチャー岡本からの送球が悪送球となる間に三塁に進み、日比野武の右前タイムリーで7-5とする。
阪急は7回、一死後山下実が四球で出塁、田中が三前に送りバントを決めてサード中野の悪送球の間に一死二三塁、日比野の左犠飛で8-5と突き放す。
阪急二番手の重松通雄は代わりばなは逆転を許したが5回以降2安打に抑える好投を見せて味方の逆転を呼び込み4勝目をあげる。
田中幸雄が4打数3安打の活躍で決勝打を放った。しかも第一打席の二ゴロはセカンド西端利郎が悪送球、第二打席の三塁内野安打はサード中野隆雄が悪送球、第三打席の決勝タイムリーで出塁して二盗を試みればキャッチャー岡本利之が悪送球、第四打席の三前バントはサード中野が悪送球と、神がかり的なラーッキーボーイであった。
両チーム共に8安打ずつで全てシングルヒットであったがライオンは5失策で墓穴を掘る。阪急は1失策で、エラーの差が得点の差となったゲームであった。
*田中幸雄の神がかり的ラッキーボーイぶりを記録するスコアブック。第一打席の「4”」は「二失でテイクツーベース」を意味する。第二打席は三塁内野安打とサードの悪送球で二進、第三打席は決勝タイムリーを打った後、二盗の際にキャッチャーの悪送球で三塁に進む。第四打席は三前送りバント(一死後なのでセーフティバントに犠打が記録されたかもしれない。)とサードの悪送球で二塁に進んだもの。第五打席の左前打のみ何事も起こらなかった。