2021年1月31日日曜日

死球王 辻功

 昭和21年のペナントレースも折り返し地点を過ぎて、各チーム60試合超を経過した。

 そんな中、現段階における「死球王」が辻功であるという事実は、当ブログが今回公表するまで知る人はいない。

 現段階における死球ランキングは、4個でトップが辻功、3個で2位タイは林清一、筒井敬三、白石敏男、坪内道則、菊矢吉男の5人となっている。

 林清一は昭和11年から控え外野手として巨人に在籍し続けてきた猛者であり、ボールに当たることなど屁とも思っていない。筒井敬三は後に「三原ポカリ事件」で有名となるが、昭和21年の時点でもボールにポカリとやられていた。白石敏男は視力が弱かったことが原因でしょう。坪内道則はしぶといバッティングが身上で、ボールに当たることなど屁とも思っていない。菊矢吉男は投手としても打者としても「豪快」を信条としており、死球が多くても不思議ではない。但し、菊矢は7月15日のグ軍戦で別所に2個ぶつけられたことが要因である。

 各チームの主力打者は「死球」が少ないことが明らかとなったが、この当時は主力打者には厳しい内角攻めが無かったとも言える。

 辻功はここまで58試合に出場して201打数38安打、打率1割8分9厘、四死球9個のうち「四球」は5個で「死球」が4個である。海草中学時代も下位を打っていた選手で、打力が弱いのは間違いない。但し、NPBホームページによると164センチ64キロと捕手らしいがっちりとした体型で、ボールに向かっていくファイトの持ち主であった。

 「辻功」は「辻勇夫」と表記されることが一般的であるが、昭和21年のスコアカードでは「辻功」の表記であり、「辻勇夫」と表記されるのは昭和22年からである。

 では、海草中学時代の「表記」はどうであったのか。ご安心ください、ちゃんと調べてあります。「和歌山県高校野球史」では、写真のとおり「辻功」と表記されている。

 海草中学の先輩・真田重蔵とはこれまで2試合で対戦して7打数1安打である。

*昭和17年「幻の甲子園」に出場した辻功。1回戦では二塁打を放っている。


2021年1月30日土曜日

21年 第16節・17節 週間MVP

 第16節はグ軍、阪急、ゴ軍、中部の4チームが5試合ずつ。第17節は前記4チームが九州遠征の3試合、残りの4チームが4試合という変則開催であったため、第16節・17節を合算して表彰対象とする。

週間MVP
 投手部門
 ゴールドスター 内藤幸三 2
 4勝0敗。3完投と好リリーフによるもの。ゴ軍4勝の全てで勝利投手となり、3勝をマークした溝部、松川、丸山を抑えて今季2度目の受賞。

 打撃部門
 グレートリング 岡村俊昭 1
 29打数10安打4得点11打点。V打2個、並列の殊勲打2個。断トツの打点数で有効打も多く、第16節・17節で8連勝のチームを引っ張った。

殊勲賞
 阪急 荒木茂 1
 33打数6安打と打率は低いが6得点8打点、V打1個の活躍。

 グ軍 松川博爾 1
 3勝0敗2完封でグ軍8連勝に貢献して週間MVP有力候補であったが、相手は全てゴ軍という点がマイナス材料。グ軍は上位チームには丸山と別所を当てている。

 阪急 坂田清春 2
 17打数8安打4得点4打点。日比野との併用で8試合中5試合の出場であるが、V打2個、猛打賞1回と内容が素晴らしい。その日比野も19打数7安打3得点4打点の活躍。選手層の薄いこの時代にキャッチャーを2枚使えるのは心強い。後に全盛期を迎える近鉄が梨田と有田を併用することになる。

 パ軍 松井信勝 1
 8月17日の巨人戦で決勝本塁打。

 阪急 山田伝 1
 37打数13安打6得点7打点、6四球。

敢闘賞
 グ軍 田川豊 2
 35打数14安打6得点6打点。

 ゴ軍 坪内道則 3
 33打数11安打5得点5打点。

 グ軍 丸山二三雄 2
 3勝0敗1完封。

 阪急 坂井豊司 2
 31打数12安打6得点4打点、6四球。

 巨人 山田潔 1
 16打数7安打2得点2打点、二塁打3本。打撃が弱いと言われるが、今節は巨人ではNo1の打撃ぶりであった。

技能賞
 セ軍 熊耳武彦 1
 8月19日の巨人戦で犠飛2本。

 阪急 溝部武夫 1
 3勝0敗。前節の週間MVPに続いての受賞。ここまで5勝0敗。

 セ軍 野村清 1
 一リーグ時代唯一の勝利。

2021年1月24日日曜日

80万円

 ヤフオクで、昭和10年アメリカ遠征時の秩父丸船上での直筆サイン集合写真が出品されて80万円で落札されたようです。

 写真自体は貴重な資料であり、ほとんどのサインが本人直筆だと思います。田部武雄と畑福俊英の直筆サインは特に貴重なものですが、肝心の沢村のサインは本人直筆とは思えません。スタルヒンもちょっと怪しいですね。他の選手は本人直筆と断定できると思いますが。


2021年1月23日土曜日

公認野球規則 9.10

 昭和21年8月20日、後楽園球場で行われた第2試合セネタースvsタイガース戦、2回表セ軍の攻撃で、タ軍守備陣は7個の補殺を記録した。

 この回先頭の白木義一郎が放った左中間を抜く当りをレフト金田正泰が中継に入ったショート長谷川善三に送球、長谷川は二塁ベースカバーのセカンド本堂保次に送球、白木は二塁をオーバーランしてタイミングはアウトであったが、本堂が落球して本堂にエラーが記録された。

 無死二塁から続く長持栄吉の放ったショートゴロに二走白木がスタートを切り、二三塁間に挟まれて挟殺プレーとなり、「6-5-4-6」と転送されてタッチアウト、ここでショート、サード、セカンドに1個ずつの補殺が記録された。

 更に、打者走者の長持が一塁ベースを大きく回り、それを見たショート長谷川がファーストの渡辺誠太郎に送球、長持が一二塁間に挟まれて挟殺プレーとなり、「6-3-4」と転送されてショートとファーストに1個ずつ補殺が記録された。

 この2つの挟殺プレイで合計5個の補殺が記録されたが、その前の本堂のエラーにより白木が二塁セーフとなったプレーで、レフトの金田と中継に入った長谷川にも補殺が記録されるのである。

 「公認野球規則」9.10(a)(1)には、「あるプレイでアウトが成立した場合、または失策がなければアウトにできたと思われる場合に、そのアウトが成立するまでに、またはその失策が生じるまでに、送球したり、打球あるいは送球をデフレクトした各野手に補殺を記録する」と規定されている。

 私は55年ほど野球を見てきていますが、本堂の二塁エラーで刺殺が無い場合でもレフトとショートに補殺が記録されることを知りませんでした。

 多くの方が同様ではないかと思うのですが恥じることはない。2013年4月29日、ヤンキースのライトを守っていたイチローが一死三塁の場面でライトフライを捕球してバックホーム、タッチアップからスタートした三走エンカーナシオンはアウトのタイミングであったが、キャッチャースチュワートが落球してセーフ。

 この際に補殺が記録されたと聞かされたイチローは「珍しいですね。初めてだね。ということは、アシスト(補殺)が付いたということですか?」と聞き返したらしい。日刊スポーツのネット記事に書かれているので本当でしょう。

 どうやらイチローも、この際に補殺が記録されることを知らなかったようなので、素人の我々が知らなくても恥じることはない(笑)。

 なお、2013年の時点では公認野球規則10.10が補殺に関する規程となっていました。現在は改定されて9.10となっています。


セネタースvsタイガース 11回戦

8月20日 (火) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 セ軍 25勝36敗 0.410 白木義一郎 
0 0 0 0 1 0 0 0 X 1 タ軍 40勝20敗 0.667 御園生崇男

勝利投手 御園生崇男   5勝2敗
敗戦投手 白木義一郎 12勝12敗

二塁打 (セ)飯島、白木、長持

勝利打点 (タ)金田正泰 5


タ軍、好守で連敗脱出

 第17節の最終戦、後楽園の第2試合は白木義一郎と御園生崇男の先発で午後2時28分、池田球審の右手が上がりプレイボール。

 セ軍は初回、先頭の横沢七郎が左前打で出塁、一言多十は中飛に倒れ、飯島の当りが右中間を抜くと一走横沢は二塁、三塁を回ってホームに向かうが、ライト塚本からの返球を中継したセカンド本堂がホームに送球してタッチアウト、飯島は二塁打で二死二塁、大下はニゴロに倒れて無得点。

 タ軍は初回からビッグプレーで失点を防いだ。

 セ軍は2回表、先頭の白木の当りは左中間を破り一塁から二塁も回るが、センター呉昌征からの返球を中継したショート長谷川が二塁に送球、オーバーランしていた白木は戻れずタイミングはアウトであったが二塁ベースカバーに入ったセカンド本堂が落球してセーフ、無死二塁から長持の遊ゴロに白木が飛び出して二三塁間に挟まれ、「6-5-4-6」と送球されてタッチアウト、打者走者の長持は二塁を狙っていたが、ショート長谷川が一塁に送球して一二塁間に挟まれ、こちらも「6-3-4」でタッチアウト。

 タ軍守備陣は2回表の守備で「7個」の「補殺」を記録した。これは間違いではありません。詳細は別項でお知らせします。

 タ軍は5回裏、先頭の塚本がレフト線にヒット、乾国雄は投邪飛、これは送りバント失敗の可能性が考えられる。長谷川は右飛に倒れて二死一塁、トップに返り金田の当りは左中間を破り、一走塚本は二塁、三塁を回ってホームに突っ込み、レフト大下からの返球をカットしたピッチャー白木は打者走者の金田が二塁に向かったのを見て本塁送球を諦めて二塁に送球して金田を刺した。この一連のプレーから類推するとエンドランが掛かっていた可能性が考えられる。金田の二塁アウトは塚本の本塁生還をアシストしたもの。

 この日のタ軍のサードは家庭の不幸で欠場が続く藤村冨美男監督に代わる乾国雄であったが、その乾が守備で活躍を見せた。5回の守備から3イニング連続で「5-4-3」のゲッツーを決めたのである。

 御園生崇男は味方の好守に支えられて9安打3四球1三振で今季3度目の完封、5勝2敗となった。相変わらず勝率が高い投手である。

 タ軍は3連敗は免れたもののここ3試合で1得点、ダイナマイト打線に陰りが見えてきた。


2021年1月18日月曜日

言いかけて・・・

 2021年全日本卓球選手権女子決勝は「史上最高の名勝負」となることが分かっていましたので、試合開始から石川佳純の優勝インタビューまで全て録画していました。予想どおりフルセットの第7ゲームも9-9までもつれ込む熱戦を石川佳純が制しました。

 最初は「伊藤選手」でしたが、2度目は「美誠、あっ」と言いかけて「伊藤選手」と言い換えましたね。普段は「美誠ちゃん」と呼んでいるのでしょうが、公式インタビューでは「伊藤選手」とリスペクトする石川佳純の姿勢に感動させられました。

 当ブログでは、「野球人」に関しては、プロ野球選手から少年野球プレイヤーに至るまで例外なく「呼び捨て」とさせていただいております。「ベースボールプレイヤー」に対するリスペクトの気持ちを、当ブログは「呼び捨て」として表現させていただいております。一部、個人的に関係する方については「敬称付き」で表記している例外もありますが・・・。

 この考えは、伊達正男著「私の昭和野球史 戦争と野球のはざまから」も参考にさせていただいております。巻末の言:「文中敬称は、早大野球部以外の方には〇〇君、または〇〇さんと呼ばせて頂きました。早大野球部では、一年どころか、一ヶ月先に入部した人でも、先輩・後輩の序列が厳格についていまして、だれだれさんと呼んでいました。しかし同僚・後輩に対しては呼び捨てにするというのが慣例となっていますので、それに従いました。ご諒承をお願いいたします。伊達」

 慶應体育会出身の当ブログも、早大野球部の伝統を参照させていただいております。やっぱり「ベースボールプレイヤー」には、「呼び捨て」が似合う。「ベーブ・ルース氏」はないでしょ(笑)。



2021年1月11日月曜日

21年 巨人vsパシフィック 12回戦

8月20日 (火) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 6 1 0 0 0 1 0 9 巨人 35勝26敗1分 0.574 中尾輝三 
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 パ軍 24勝37敗2分 0.393 井筒研一

勝利投手 中尾輝三 6勝5敗
敗戦投手 井筒研一 9勝13敗

二塁打 (巨)山田、川上
三塁打 (巨)多田 (パ)森下
本塁打 (巨)千葉茂 2号

勝利打点 (巨)千葉茂 3

猛打賞 (巨)川上哲治 2、黒沢俊夫(4安打)4


両軍8併殺のタイ記録

 第17節最終日、後楽園の第1試合は中尾輝三と井筒研一の先発で午後零時33分、桝球審の右手が上がりプレイボール。

 巨人は前日1回3分の0で4四球降板の中尾を再度先発に起用した。

 巨人は初回、二死後千葉がレフトスタンドに先制ホームランを叩き込んで1-0とする。

 パ軍は1回裏、先頭の白石がライト線にヒット、一死後藤井のニゴロが「4-6-3」と渡ってダブルプレー。

 パ軍は2回裏、一死後木暮が四球を選んで出塁、しかし伊勢川の遊ゴロが「6-4-3」と渡って2個目のダブルプレー。

 巨人は3回表、先頭の九番呉新亨が左前打で出塁、トップに返り山田潔がレフト線にタイムリー二塁打を放ち2-0、山川の投ゴロの間に山田は三進、千葉の右犠飛で3-0、川上が右中間に二塁打を放って二死二塁、黒沢の中前タイムリーで4-0、中島の中前打で二死一二塁、多田が右中間に2点タイムリー三塁打を放ち6-0、中尾の中前タイムリーで7-0と大きくリードする。

 巨人は4回表、先頭の山田が中前打で出塁、山川喜作の遊ゴロでランナーが入れ替わり、千葉のニゴロが進塁打となって二死二塁、川上の右前タイムリーで8-0とする。

 パ軍は4回裏、一死後藤井が右前打で出塁、しかし森下のニゴロが「4-6-3」と渡って3個目のダブルプレー。

 パ軍は6回裏、一死後井筒が四球を選んで出塁、トップに返り白石は三振、スタートを切っていた井筒もキャッチャー多田からの送球に刺されて盗塁失敗で三振ゲッツー、これで4個目の併殺。

 巨人は7回表、先頭の多田が四球を選んで出塁、中尾は三振に倒れるが、呉新亨が左前打を放って一死一二塁、しかしトップに返り山田の遊ゴロが「6-4-3」と渡ってダブルプレー。

 巨人は8回表、先頭の山川が右前打で出塁、千葉は遊飛に倒れるが、川上の中前打で一死一三塁、黒沢の右前タイムリーで9-0、一死一二塁から中島の三ゴロが「5-4-3」と渡って2個目のダブルプレー。

 パ軍は8回裏、先頭の佐竹一雄がストレートの四球で出塁、一死後平野徳松の投ゴロが「1-6-3」と渡って5個目のダブルプレー。

 パ軍は9回裏、一死後白石が中前打で出塁、しかし富松のファーストライナーに白石が飛び出しており、川上が一塁ベースを踏んで「L3A」で6個目の併殺を記録した。

 中尾輝三は6安打3四球3三振で今季初完封、6勝目をマークする。

 千葉の右犠飛は今季7個目の犠牲フライで、現在犠飛数ではトップである。打つだけの川上と比べて、千葉が実戦的なプレイヤーであったことが、こういう数字に表れている。

 実況のとおり巨人守備陣が6個の併殺を完成させた。「雑記」欄には「ジャイアンツの6併殺はタイ。合計8併殺もタイ。」と書かれている。

 現在残されいる公式記録は2リーグ分裂後だけであり、1試合最多併殺記録「6個」は3回記録されている。すなわち、1970年4月30日阪急(対近鉄戦)、1995年5月17日巨人(対横浜戦)、1996年8月18日横浜(対広島戦)の3回である。

 昭和21年8月20日の段階で認識されていた「1試合最多併殺6個」の記録とは、昭和15年11月6日に阪急が対巨人戦で記録したもの(2013年6月23日付けブログ「15年 阪急vs巨人13回戦」参照)である。しかしこの試合での巨人の併殺数は1個だけなので合計は7個。「合計8併殺」の試合は他にあるはずだが不明で、全試合を見直せばどこかにあるはず。戦後だと、「プロ野球審判員物語」とうサイトに「1979年7月29日のヤクルト対中日戦でヤクルトが5個、中日が3個、合計8個の併殺を記録した」と書かれている。

*2013年6月23日付けブログ「15年 阪急vs巨人13回戦」では、当時は「併殺記録」と「併殺打記録」を混同していたようなので、記載内容を修正しています。

*「雑記」欄には「ジャイアンツの6併殺はタイ。合計8併殺もタイ。」と書かれている。