2014年6月4日水曜日

空前の残塁合戦



 昭和16年10月9日、後楽園球場の第二試合は9回日没引分けとなりました。


 第一試合の開始時間は12時半、延長13回の試合は2時間8分かかって試合終了は2時38分でした。第二試合の開始時間は3時10分、9回までに1時間50分を要して9回裏終了は5時ということで日没引分け再試合が宣告されました。


 当時としては異例の長時間試合が続いた訳ですが、要因ははっきりしています。第一試合の名古屋vs阪神戦では名古屋が9残塁、阪神が17残塁。第二試合の朝日vs大洋戦では朝日が9残塁、大洋が12残塁。2試合4チーム合計47個の残塁を記録したことが長時間試合の要因です。この記録は同一球場で1日に記録された残塁数としては世界記録ではないでしょうか(一日3試合以上を除く)。


 因みに昭和17年5月24日の後楽園球場第三試合、朝日vs大洋戦は延長28回引分けでしたが朝日は17残塁、大洋は15残塁。第一試合の大洋vs巨人戦は大洋が4残塁で巨人は6残塁、第二試合の朝日vs名古屋戦は朝日が4残塁で名古屋は8残塁。この日は変則トリプルヘッダーでしたが多い方の第二試合と第三試合を足しても合計44残塁にしかなりません。




 

16年 朝日vs大洋 9回戦


10月9日 (木) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 2 0 0 2 0 0 5 朝日 22勝45敗1分 0.328 井筒研一 野村高義 福士勇
0 0 1 1 0 0 3 0 0 5 大洋 38勝28敗2分 0.576 三富恒雄 古谷倉之助 野口二郎 中山正嘉

二塁打 (大)濃人

勝利打点 なし

猛打賞 (大)森田実 4、濃人渉 2

ファインプレー賞 (大)濃人渉 6


日没引分け

 朝日は初回、先頭の五味芳夫の遊ゴロをショート濃人渉がエラー、坪内道則の送りバントが野選を誘って無死一二塁、戸川信夫は三振に倒れるが伊勢川真澄が中前に先制タイムリーを放って1-0、岩田次男の三ゴロは「5-4-3」と渡ってダブルプレー。

 朝日は早くも2回から先発の井筒研一に代わって野村高義がマウンドに上がる。

 大洋は3回、先頭の織辺由三が左前打で出塁、トップに返り苅田久徳が四球、中村信一が送って一死二三塁、森田実の打席でスクイズを敢行するが外されて三走織辺が三本間でタッチアウト、二死三塁からワイルドピッチの間に三走苅田が還り1-1の同点とする。

 朝日は4回、先頭の伊勢川がストレートの四球で出塁、岩田の三前送りバントをサード中村が失して無死一二塁、大洋ベンチはここで先発の三富恒雄からベテラン古谷倉之助にスイッチ、鬼頭政一は二飛に倒れるが広田修三が四球を選んで一死満塁、野村が押出し四球を選んで2-1と勝ち越し、ピッチャーが古谷から三番手の野口二郎に代わるが、室脇正信も押出し四球を選んで3-1とする。

 大洋は4回裏、石井豊、濃人が連続四球、佐藤武夫が送って一死二三塁、朝日は三番手の福士勇を投入、西岡義晴の一ゴロの間に三走石井が還って2-3とする。

 朝日は7回、先頭の五味がストレートの四球で出塁、坪内が送って一死二塁、戸川が右前にタイムリーを放って4-2、伊勢川の中前打で一死一二塁、岩田の三ゴロは「5-4-3」と転送されるが一塁セーフ、この間に二走戸川が三塁ベースを蹴って一気にホームを駆け抜け5-2とダメ押す、かに見えた。

 ところが大洋は7回裏、一死後中村が三塁に内野安打、森田が左翼線にヒット、野口の二ゴロをセカンド戸川が失して一死満塁、石井が押出し四球を選んで3-5、濃人が三塁線を破る同点二塁打を放って5-5と追い付く。


 その後は両軍無得点、9回裏終了時点で午後5時となり日没引分け再試合となった。2014年時点の東京の日の入りは5時15分、昭和16年当時もそう変わらなかったと考えられ、9回裏で5時であれば薄暗くなってきている筈でしょう。









 

16年 名古屋vs阪神 9回戦


10月9日 (木) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13  計
0 1 0 1 0 0 2 0 0  0   0   0   0   4 名古屋 31勝37敗 0.456 森井茂 河村章 松尾幸造 西沢道夫
0 0 2 2 0 0 0 0 0  0   0   0  1X  5 阪神    33勝34敗 0.493 三輪八郎 若林忠志
 
勝利投手 若林忠志 15勝13敗
敗戦投手 西沢道夫   4勝10敗

二塁打 (名)吉田 (神)森、宮崎

勝利打点 御園生崇男 1

猛打賞 (神)森国五郎 3

ファインプレー賞 (神)宮崎剛 1


阪神6犠打で名古屋を振りきる

 名古屋は2回、先頭の服部受弘がレフト線にヒット、吉田猪佐喜の一ゴロでランナーが入れ替わり、芳賀直一が中前打、石丸進一の三ゴロをサード野口昇がエラーして一死満塁、森井茂の打席でスクイズを試みるがウエストされて三走吉田は三本間に挟まれタッチアウト、二死二三塁から森井の投ゴロをピッチャー三輪八郎がエラーする間に三走芳賀が還って1点を先制する。

 阪神は3回、先頭の宮崎が三前にバントヒットを決めて出塁、皆川定之の送りバントが内野安打となって無死一二塁、カイザー田中義雄が投前に送りバントを決めて一死二三塁、松下繁二の三ゴロで三走宮崎がホームに走り、サード芳賀からのバックホームが悪送球となる間に生還して1-1の同点、名古屋は先発の森井から二番手の河村章にスイッチ、土井垣武の右犠飛で2-1と逆転に成功する。

 名古屋は4回、先頭の服部が中前打で出塁するとワイルドピッチで二進、吉田の左中間二塁打で2-2の同点に追い付く。芳賀が四球を選び石丸進一は捕邪飛に倒れて一死一二塁、三輪の牽制球に二走吉田が刺されて二死一塁、更に一走芳賀がディレードスチールを試みるが三輪からセカンド宮崎に送球されてタッチアウト。

 阪神は4回裏、一死後三輪に代わる代打山根実がストレートの四球で出塁、森国五郎の左中間二塁打で山根が還り3-2と勝ち越し、トップに返り宮崎も左中間を抜いて4-2とする。

 阪神は5回から若林忠志が二番手としてマウンドに上がる。

 阪神は5回裏、先頭の土井垣がストレートの四球で出塁、名古屋は三番手の松尾幸造にスイッチ、しかし上田正もストレートの四球、野口が送って一死二三塁、若林が四球を選んで一死満塁、森がスクイズを敢行するがピッチャー松尾から「1-2」と送球されて三走土井垣はフォースアウト、トップに返り宮崎も投前にセーフティバントを試みるが又も「1-2」と送球されてスリーアウトチェンジ。

 名古屋は6回、先頭の古川清蔵が左前打で出塁、大沢清のセカンドライナーを宮崎がファインプレー、飛び出していた一走古川も刺されてゲッツー。

 名古屋は7回、先頭の吉田がストレートの四球で出塁、芳賀は遊直に倒れるが石丸進一に代わる代打木村進一が右前打、松尾に代わる代打本田親喜監督が四球を選んで一死満塁、トップに返り石丸藤吉が左前に同点の2点タイムリーを放って4-4とする。

 名古屋は7回から四番手として西沢道夫を注ぎ込む。

 阪神は7回裏、先頭の野口が左前打で出塁、若林が送って一死二塁、森の左前打で二走野口は三塁ベースを蹴ってホームに向かうがレフト古川からのバックホームにタッチアウト。


 この後は若林と西沢の投げ合いが続き試合は延長13回に進む。

 阪神は13回裏、先頭の皆川の遊ゴロをショート木村が一塁に悪送球、皆川が二盗を決めて無死二塁、田中の三前バントが内野安打となって無死一三塁、ここで松尾五郎に代わる代打御園生崇男が右前にサヨナラ打を放って決着を付ける。


 阪神は11安打に加えて10四球を選んで17残塁であったが何とか押し切った。森国五郎が6打数3安打で猛打賞を獲得する。カイザー田中義雄が3犠打を記録するなど阪神は6個の送りバントを決めた。







 

2014年6月3日火曜日

三冠への道 2014 その5



 5月の月間MVP予想といきましょう。


 ナ・リーグ打撃部門はヤシエル・プイグと予想します。5月は108打数43安打25打点8本塁打、3割9分8厘、OPS1.224。全部門でトップですからプイグ意外に投票する記者はいないのでは?ジャンカルロ・スタントンも8本塁打20打点3割6分7厘と健闘しましたが無理でしょう。トロイ・トゥロウィツキーは終盤失速しました。シーズン通算打率でもプイグに抜かれるのは時間の問題となっています。


 ア・リーグ打撃部門はエドウィン・エンカーナシオンと予想します。打率は2割8分1厘ですが16本塁打のインパクトは大きい。オリオールズのネルソン・クルーズも13本塁打27打点3割3分9厘と健闘しました。34打点でエンカーナシオンの33打点を抑えたミゲール・カブレラは打率も3割8分ですが8本塁打では苦しいか。


 ナ・リーグ投手部門はサンフランシスコ・ジャイアンツのマディソン・バンガーナーと予想します。5月は5勝0敗、48奪三振、防御率2.08、WHIP0.85でした。長い左手がサイドに近い角度からアーム式に遅れて出てきますので、左打者には背中から来るように見えるはずです。球持ちがいいので右打者も手元で食い込まれます。高い身体能力からトルネード投法を見せるレッズのジョニー・クエトも受賞に値するピッチングを見せました。3勝2敗ですが42奪三振、防御率2.25、WHIP0.75でした。被打率は0.168で、バンガーナーの0.203よりはるかにいい。内容的にはクエトでもおかしくないのですが月間MVPは勝利数が優先される傾向にありますのでバンガーナーと予想します。



 さぁ皆さん、お待ちかねのア・リーグ投手部門です。今月こそ田中と言いたいところではありますが、客観的事実に基づき客観的評価により判断することを旨としている当ブログはクリーブランド・インディアンスのコーリー・クルーバーと予想します。田中とクルーバーの数字を並べて見ましょう。

 田中マー君は6試合に登板して43イニングスを投げて5勝1敗、42奪三振、防御率1.88、WHIP0.98、被打率0.229。

 クルーバーは6試合に登板して43イニングスを投げて4勝0敗、60奪三振、防御率2.09、WHIP0.98、被打率0.217。


 田中は5勝で防御率もいいのですが、決定的な差ではありません。逆に、クルーバーは43イニングスで60奪三振とアウトのほぼ半分が三振です。こういう記録が全米の野球記者には好まれるのです。

 ピッチング内容を見ても、田中の完成度の高い投球は逆に言うと魅力に欠ける爺むさいピッチング。一方、クルーバーのスライダーのキレは剛球ピッチャーだからこそのキレ味で、当ブログは現在メジャーでは最も打者の近くで変化していると見ています。

 したがって、日本中を敵に回すことを承知の上で、クルーバーと予想させていただきます。












 

2014年6月2日月曜日

対決! その7



 「ルーミンのたてがみ」に書いた前日予想は

 「・・・今年の牡馬クラシック路線はそのフジキセキが出走できなかった1995年を踏襲しようと考えています。すなわち、95年は皐月賞が1着ジェニュイン、2着タヤスツヨシでダービーは1着タヤスツヨシ、2着ジェニュインであったことから、今年も皐月賞と1着、2着が入れ替わって1着トゥザワールド、2着イスラボニータと予想します。
 95年の皐月賞はジェニュインとタヤスツヨシで勝負して大儲けしました。ダービーも馬連1点で仕留めました。今年もその再現を狙っています。
 イスラボニータはピューマのような走りと言われます。股関節の可動範囲が広く、通常の馬では70度の角度までしか上がらない前脚が90度まで上がることから「ネコ科」のピューマのような走りができるのです。この点に関してはトウカイテイオーを想起させます。トウカイテイオーは繋ぎが柔らかくパドックの歩きも「ヒョコッ、ヒョコッ」という感じでした。1991年のダービーは「レース中骨折競走中止」と読んで無印にしましたが圧勝でした。但し「レース中骨折」の予想だけは当たりました。トウカイテイオーはその後骨折と復活を繰り返すドラマチックな競争人生を送ることとなります。イスラボニータもこの股関節の柔らかさがいつの日か裏目に出る時が来ると読んでいます。それが明日のダービーである可能性も否定はできません。
 皐月賞は枠順の有利不利があったことも否めません。皐月賞は大外を引いたトゥザワールドも明日は絶好の5番枠です。距離適性から見てもダービーではトゥザワールドを本命に推すのが妥当ではないかと考えます。
 95年は皐月賞もダービーも3着はオートマチックだったことから3着は皐月賞同様ウインフルブルームと予想していたところ“左肩ハ行”のため出走取り消しとなり、風雲急を告げてきました。繰り上がりのワンアンドオンリーとダービーでも勝負になりそうなレッドリヴェールは無視しませんが、これでは「匠の視点」と変わりませんので3着候補としてはキングカメハメハ産駒のスズカデヴィアスとタガノグランパ、ゼンノロブロイ産駒のアズマシャトルを考えています。・・・」


でした。



 池江泰郎元調教師の「匠のオッズ」失礼!「匠の視点」は一番人気のイスラボニータが◎、二番人気のトゥザワールドがO、三番人気のワンアンドオンリーが▲で三連複ということで、当然ヒモにはマイネルフロストを入れてませんので筆者と同様ハズレ、結果は引分けに終わりました。


 問題はハズし方です。三強又はレッドリヴェールを含む四強を中心に据えるのは筆者も「匠の視点」も同じでした。問題は穴候補の選び方で、「匠の視点」は五番人気のトーセンスターダム(16着)、六番人気のベルキャニオン(8着)、九番人気のショウナンラグーン(6着)でした。筆者の穴候補は十五番人気のスズカデヴィアス(9着)、十六番人気のタガノグランパ(4着)、十七番人気のアズマシャトル(15着)で、ブービー人気のタガノグランパは三着マイネルフロストにクビ差の4着でした。「匠の視点」の予想を頼りに買った方は「惜しかった~」という感触すら味わえなかったと思いますが、タガノグランパを買っていた筆者は東京競馬場のスタンドから観戦してゴール前でオレンジの帽子が二つ見えた時「やった~」と叫びそうになりました。結果はクビ差4着でしたが、自分の予想には十分満足して家路についたものです。


 そもそも三着馬を理論的に当てようなどという行為は、人間のような下等動物には不可能なのです。3連複や3連単がなかった時代には、余程の複勝マニアでもない限り三着馬などには誰も目もくれなかったのです。競馬予想の基本は勝つ馬を予想することにあります。中には勝ちきれない馬もいる訳なので二着馬を予想する行為は競馬予想の範囲として許容される考えます。しかし、三着馬など、何が来てもおかしくないのが競馬なのです。もちろん一番人気から三番人気で1着から3着を占めるレースが存在することは否定しませんが、それは例外と言ってよい確率でしか具現しません。筆者が実際に購入する馬券は、三着は総流しにするのが通例です。でないと当たらないと確信しています。


 再度申し上げますが、三着馬を理論的に当てようなどという行為は愚挙であると断言できます。三着馬を当てることに費やすエネルギーは、勝つ馬を探すことに振り向けるべきです。あとは総流しにして運を天に任せる、それが馬券の極意です。




*対戦成績 「さすらいの馬券師」2勝vs「匠の視点」0勝 4分け


*今週も撃沈しました。













 

16年 第14節 週間MVP



 今節は黒鷲、南海、名古屋、阪神が3勝1敗、巨人が2勝2敗、朝日が1勝3敗、阪急が1勝3敗、大洋が0勝4敗であった。


週間MVP

投手部門は3勝をあげた4チームでそれぞれ2勝をマークした4人が選出された。

 南海 神田武夫 2

 いよいよ“化けた”という感じ。神田の投手人生では最も重要な一週間となった。


 名古屋 村松幸雄 2

 今節2勝0敗1完封。


 黒鷲 石原繁三 1

 今節2勝0敗1完封。


 阪神 若林忠志 2

 今節2勝0敗。





打撃部門

 名古屋 大沢清 1

 今節15打数7安打。今季は調子が出ていなかったが久々に猛打爆発。


 名古屋 吉田猪佐喜 2

 
 14打数3安打ながら2個の勝利打点を記録。



殊勲賞

 巨人 中尾輝三 1

 10月2日の朝日戦で1安打完封。


 阪神 松本貞一 2

 5日の巨人戦では緩球を駆使して完封勝利。


 阪神 上田正 1

 6日の朝日戦で試合を決める“真の殊勲打”となるセンターオーバーの2点タイムリー二塁打を放つ。





敢闘賞

 名古屋 桝嘉一 1

 今節13打数5安打の活躍。


 黒鷲 清家忠太郎 1

 こちらも今節13打数5安打の活躍を見せる。



技能賞

 中河美芳 4

 2試合連続「ファインプレー賞」を獲得する。


 森井茂 2
 

 4日の阪急戦で阪急変幻自在の投球で勝利投手。











 
 

2014年6月1日日曜日

16年 朝日vs阪神 10回戦


10月6日 (月) 中百舌鳥

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 朝日 22勝45敗 0.328 福士勇
0 1 0 0 0 0 0 4 X 5 阪神 32勝34敗 0.485 若林忠志

勝利投手 若林忠志 14勝13敗
敗戦投手 福士勇  17勝21敗

二塁打 (神)上田

勝利打点 若林忠志 4


上田正、試合を決める一打

 阪神は2回、一死後土井垣武が四球を選んで出塁、若林忠志は三飛に倒れるが上田正が左前打を放って二死一二塁、野口昇の左前タイムリーで1点を先制する。

 朝日は初回、先頭の五味芳夫が二塁への内野安打で出塁するが二死後盗塁失敗、その後は5回まで若林の術中に嵌って無安打を続ける。

 朝日は6回、二死後五味が中前打で出塁、室脇正信の左前打で二死一二塁、戸川信夫が中前に同点タイムリーを放って1-1と追い付く。

 阪神も3回以降は7回まで朝日先発の福士勇に無安打に抑え込まれる。

 阪神は8回、先頭の皆川定之が死球を受けて出塁、カイザー田中義雄が送って一死二塁、松下繁二は左前打、土井垣武は四球を選んで一死満塁、ここで若林が二前にスクイズを決めて2-1、セカンド戸川からの一塁送球が悪送球となる間に二走松下も還って3-1、なお一死二三塁から上田が中越えに2点タイムリー二塁打を放って5-1とする。

 朝日最終回の攻撃、阪神先発の若林が先頭の室脇正信、続く戸川信夫に連続四球を与えると阪神ベンチはライトを上田から松尾五郎に交代させる。これは若林に一息入れさせることが狙いでしょう。すかさず若林が二塁牽制球で室脇を刺して一死一塁、伊勢川真澄が左前打を放って一死一二塁、岩田次男はセカンドライナー、そして二走戸川は「4-1-6」でタッチアウトとなって試合終了、「雑記欄」には「併殺を取消す」の記載、翌日の読売新聞は「9回は重なる拙走を繰り返し」の記述が見られる。

 これらから総合的に判断すると、一死一二塁から岩田の二直で一旦試合が途切れて二死一二塁、セカンド宮崎剛から白球がマウンドの若林に返球されたが二走戸川が何を思ったか離塁したところに若林が送球し、二塁ベースカバーに入ったショート皆川がタッチして試合終了、一度は併殺が記録されたがプレーが途切れたと判断されて併殺が取り消され、読売新聞の記者は朝日の度重なるボーンヘッドにあきれて「重なる拙走を繰り返し」という記事にした、と見るのが真相ではないでしょうか。


 若林忠志は5安打2四球4三振の完投で14勝目をあげる。決勝のスクイズで勝利打点も記録する。若林がスクイズで勝利打点を記録したのは9月27日の大洋戦で“代打決勝スクイズ”を決めて以来今季2度目のこととなる。

 福士勇も5安打6四球1死球3三振で完投したが味方に足を引っ張られた。最多勝を狙える位置に付けている福士としては痛い敗戦であった。


 試合を決めたのは9回に阪神が2点リードから二走者を残した場面でセンターオーバーの2点タイムリー二塁打を放った上田正の一打であった。勝利打点は若林に記録されるが“真の殊勲打”は上田正に記録される。上田の今季の二塁打はこの1本だけ、通算では2本の二塁打を放って戦死することとなる。昭和12年に阪神に入団してすぐに応召、今季戦場から復帰してきたが再度兵役に就いて今度は戻らなかった上田正にとって、短い生涯で最も思い出に残る一打であったかもしれない。








*若林忠志は5安打完投で14勝目をマークする。










*上田正は9回の第四打席で“真の殊勲打”となる試合を決める一打を放った。