2015年12月29日火曜日

17年 大和vs名古屋 15回戦


11月2日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 3 0 0 0 0 0 0 3 大和     24勝61敗10分 0.282 石原繁三
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 名古屋 36勝55敗5分 0.396 石丸進一

勝利投手 石原繁三 17勝24敗
敗戦投手 石丸進一 15勝18敗

二塁打 (和)木下

勝利打点 小松原博喜 4


石原繁三、今季5度目の完封

 大和は初回、先頭の苅田久徳が三塁線にバントヒット、山田潔が右前打で続いて無死一二塁、しかし木下政文は二飛、小松原博喜も二飛、鈴木秀雄は右飛とクリーンナップトリオが凡飛を打ち上げて無得点。

 大和は3回、先頭の渡辺絢吾がストレートの四球を選んで出塁、トップに返り苅田もストレートの四球で無死一二塁、山田は三ゴロ、これをサード芳賀直一が二塁に悪送球して無死満塁、木下は二直に倒れて一死満塁、小松原が押出し四球を選んで1点を先制、鈴木の二ゴロでセカンド石丸藤吉はゲッツーを狙って二塁に送球するがショート小鶴誠が落球、三走苅田がホームイン、二走山田もホームに還ってこの回3点を先制する。

 初回を三者凡退に抑えた大和先発の石原繁三は2回、先頭の吉田猪佐喜を四球で歩かせるが、続く小鶴の遊ゴロが「6-4-3」と渡ってダブルプレー。3回も先頭の野口正明に二遊間内野安打を許すが、続く石丸進一の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。セカンド苅田のピボットプレーが冴える。4回も先頭の石丸藤吉を四球で歩かせ、岩本章はツースリーから三振、この時石丸藤吉が二盗に成功して一死二塁とするが、古川清蔵を右邪飛、吉田を二ゴロに打ち取る。5回は先頭の小鶴の投ゴロを自らエラー、本田親喜の遊ゴロで小鶴は二封、野口正明はレフトライナー、石丸進一に中前打を打たれて二死一二塁とするが、芳賀を三邪飛に抑えて前半戦は無失点。崩れそうで崩れない粘りの投球を見せた。

 石原繁三は6回以降、名古屋打線を1安打無失点に抑え込み、3安打3四球5三振で今季5度目の完封、17勝目をマークする。


 石原は千葉県の成田中学、埼玉県の川越中学、岩手県の遠野中学と転校し、昭和6年夏の岩手県大会準決勝で福岡中学と対戦するはずであったが、福岡中学から「転校間もない石原繁三には出場資格がない」と抗議されて出場できず、福岡中学が遠野中学を20対0で破って甲子園に出場する。当時は甲子園以外にも全国各地で中学野球大会(現在の高校野球に相当)が盛んに行われており、金で有力中学生選手を売買して転校させるブローカーが各地で暗躍していた。このような状況を背景とした福岡中学の抗議である。但し、石原繁三の転校は父親の仕事の関係であった。石原は卒業後「鉄道省」に進んでいることから、父親も鉄道関係の仕事で転勤が多かったのではないでしょうか。


 当時福岡中学に在籍してこの試合に出場していた小田野柏は、「石原投手が出てきたならば試合はどうなっていたか分からない。・・・後年プロ野球で見た石原投手は球も速く、弱小球団の中で孤軍奮闘という感じだった。プロでも味方打線がもっと打ってくれれば相当の勝ち星を挙げたと思う。」(福岡高校野球部創部100週年記念誌「陣場台熱球録」より)と語っている。


 石原は昭和11年にセネタースに入団して1年で応召し、昭和15年に戦場から復帰した。小田野は昭和13年に阪急に入団してすぐに応召、昭和17年に戦場から復帰してくる。石原は昭和17年を最後に再度応召しているので、小田野柏が見た「プロ野球選手・石原繁三」とは、昭和17年のこととなります。


 石原が入団した昭和11年のセネタースには川越中学出身の家村相太郎や綿貫惣司も入団してきた。この綿貫は、埼玉県の豊岡物産の監督兼選手として昭和22年の都市対抗に出場、豊岡物産には奇遇にも小田野柏も在籍しており、1回戦の大日本土木戦で日本野球界初の「天覧ホームラン」を放つこととなる。石原繁三は終戦後昭和21年4月に日本に引き揚げてきたが、寄港3日後に病没したと伝えられている。


 

2 件のコメント:

  1. 石原繁三が没したのは、別府港とも下関港とも伝わっていますが、部史の『遠野高等学校野球部創部百年史』によりますと、別府港のようです
    部史に載っている実弟石原照夫(東映)の話では、昭和20年10月6日に南方から復員しましたが、極度の栄養失調が原因で、3日後の10月9日に大分県別府陸軍病院で亡くなったそうです。石原家は繁三復員の連絡を受けていたのですが……。

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    1. 岩手県立福岡高等学校 野球部創部100周年記念誌「陣場台熱球録」では「下関港」となっていますね。二つの説が混在しているのも両誌が原因でしょう。本家の方が正確でしょう。

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