2012年6月4日月曜日

15年 セネタースvs名古屋 1回戦

3月16日 (土) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 セネタース 0勝1敗 0.000 金子裕 村松長太郎
1 1 0 0 4 0 0 0 X 6 名古屋       2勝0敗 1.000 西沢道夫

勝利投手 西沢道夫 1勝0敗
敗戦投手 金子裕     0勝1敗

二塁打 (名)中村 三塁打 (名)吉田

勝利打点 大沢清 1


吉田猪佐喜2試合連続三塁打

 セネタースは明日神戸でダブルヘッダーを控えているため野口二郎を温存して戦場から戻ってきた金子裕が先発。名古屋の2戦目は西沢道夫が先発。

 名古屋は初回、先頭の村瀬一三が中前打で出塁、石田政良が送って一死二塁、桝嘉一の三ゴロをサード横沢七郎がエラーして一死一三塁、大沢清の左犠飛で1点を先制する。

 名古屋は2回、先頭の中村三郎が左中間に二塁打、三浦敏一の左前打で無死一三塁、芳賀直一の当りはピッチャーを強襲し、バックアップのセカンド苅田久徳の好守により芳賀はアウトとなるが三走中村が還って2-0とする。

 セネタースは4回から金子に代えて二番手に村松長太郎をマウンドに送り込む。村松は昨年は野手としてしか出場しておらず、プロ入り初登板となった。昭和12年センバツでは浪華商業のエースとして優勝に貢献している。この大会の決勝では中京商業の野口二郎に投げ勝ったもので、この試合が野口二郎にとって甲子園で唯一の敗戦となった。

 名古屋は5回、先頭の村瀬が二遊間に内野安打、石田の三ゴロでランナーが入れ替わり、桝の左前打で一死一二塁、大沢が右前打で続いて一死満塁、吉田猪佐喜はここまで二打席連続三振であったが左中間に走者一掃の三塁打を放って5-0、中村の二ゴロの間に吉田が還って6-0として試合を決める。

 セネタースは2回、四球と敵失で二死一三塁とするが金子は二ゴロに倒れる。3回、二死後横沢七郎が左前打、苅田久徳が中前打で二死一二塁とするが野口二郎は一邪飛に倒れる。4回は一死後柳鶴震が右前打を放つが後続なく、5回も先頭の織辺由三が三塁内野安打、サード芳賀の悪送球が加わり無死二塁、トップに返り西岡義晴の遊ゴロの間に織辺は三進、横沢の遊ゴロで織辺由三がホームを突くがタッチアウト、苅田は中飛に倒れる。6回以降は西沢に無安打に抑え込まれる。

 西沢道夫は4安打2四球2三振の完封で1勝目をあげる。翌日の読売新聞に「西沢の長身から投げ下す直球とドロップ」と書かれているように西沢道夫は快速球と共に得意の低目の変化球が決まった。

 名古屋は昨年終盤の好調が年を跨いで続いているようで開幕2連勝を飾った。吉田猪佐喜の満塁走者一掃の三塁打で試合が決まった。加藤正二を戦場に送りだした名古屋では吉田のバットが加藤の穴を埋めるかに注目が集まっているが、吉田は2試合連続三塁打と結果を出している。






               *西沢道夫は4安打完封で1勝目をあげる。









     *西沢道夫に4安打に抑えたれた開幕戦のセネタース打線。









*開幕2連勝の名古屋打線。5回には二打席連続三振の吉田猪佐喜が満塁走者一掃の三塁打を放った。










2012年6月3日日曜日

15年 ジャイアンツvs阪急 1回戦

3月15日 (金) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 ジャイアンツ 0勝1敗 0.000 スタルヒン
0 0 0 1 0 0 0 1 X 2 阪急        1勝0敗 1.000 重松通雄

勝利投手 重松通雄  1勝0敗
敗戦投手 スタルヒン 0勝1敗

勝利打点 浅野勝三郎 1



浅野勝三郎代打決勝タイムリー

 ジャイアンツはエース・スタルヒンが先発。阪急は下手快速球の重松通雄で応戦する。ジャイアンツは主力の応召がなくフィリピンに帰ったアチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)に代わって呉波がセンターに入っただけで昨年からほぼ不動のオーダー。昭和15年3月14日付け読売新聞の「大リーグ春の覇権は?」によると阪急では門司鉄道局から入団した「知名の井野川利春」の加入が注目を集めている。「とりわけ勇猛果敢の闘将井野川を得た事は・・・井野川の加入が従来理智に走り過ぎて気概を欠いた阪急軍に一脈の勇猛心を吹き込むものと見られるからである」とのことである。阪急は三宅大輔監督以下村上実マネージャー、宮武三郎、山下実、山下好一、岸本正治と慶應閥であったことがスマートすぎて戦力の割にはジャイアンツ、タイガースの後塵を拝してきたきらいがある。ここに明大以来猛将として鳴る井野川利春に期待がかかる訳である。但しキャッチャーには気鋭の日比野武がおり、井野川の登場はもう少し先のこととなる。阪急は一番に井野川と同じく門司鉄道局から入団した中島喬、三番ファーストに新富卯三郎を起用する。新富もかつては門司鉄道局の主力打者であった。

 ジャイアンツは4回まで毎回走者を出すが無得点。

 1回、2回と無安打の阪急は3回、二死後中島喬が中前打、フランク山田伝が右前にエンドランを決めて二死一三塁とするが期待の新富は三振に倒れる。

 阪急は4回、一死後上田藤夫の遊ゴロをショート白石敏男がエラー、黒田健吾の右前打で上田は三塁を陥れ、ライト中島治康からの三塁返球の間に黒田も二塁に進んで一死二三塁、日比野がスクイズを決めて1点を先制する。

 5回に初めて三者凡退を記録したジャイアンツは6回、一死後千葉茂が中前打で出塁、中島治康の二ゴロの間に千葉は二進、川上哲治の中前タイムリーで1-1の同点に追い付く。

 5回~7回を三者凡退に抑えられていた阪急は8回、先頭の重松が右前打で出塁、トップに返り中島喬の投ゴロでランナーが入れ替わり、中島が二盗に成功、山田の二ゴロで二死三塁、新富に代わる代打浅野勝三郎が右前に決勝タイムリーを放って2-1とする。

 重松通雄は4安打4四球1三振の完投で1勝目をあげる。4安打のうち川上哲治に3本打たれた。高橋敏、荒木政公を応召で欠いた投手陣では重松の下手快速球が頼りとなる。

 昭和15年は鬼頭数雄と川上哲治による激しい首位打者争いが見られますので順次二人の成績を追っていきます。現在川上7割5分、鬼頭4割。





        *重松通雄はジャイアンツ打線を4安打に抑えてスタルヒンに投げ勝つ。







     *重松通雄に4安打に抑えられた開幕戦のジャイアンツ打線。








     *苦手のスタルヒンを攻略した開幕戦の阪急打線。

















15年 名古屋vsライオン 1回戦


3月15日 (金) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 4 0 0 0 0 6  10 名古屋  1勝0敗 1.000 村松幸雄
0 1 0 0 0 0 1 0 2  4   ライオン 0勝1敗 0.000 福士勇

勝利投手 村松幸雄 1勝0敗  
敗戦投手 福士勇     0勝1敗  

二塁打 (ラ)鬼頭2
三塁打 (名)村瀬、吉田

勝利打点 芳賀直一 1

名古屋15安打の猛攻

 名古屋は期待の2年目村松幸雄が先発、ライオンは福士勇で応戦する。主砲加藤正二を応召で欠いた名古屋では吉田猪佐喜が加藤の穴を埋めることができるかに注目が集まる。

 名古屋は初回、二死後桝嘉一が左前打で出塁、大沢清が四球を選び二死一二塁で吉田猪佐喜が登場、しかしここは遊ゴロに倒れる。

 ライオンは1回裏、二死後水谷則一が四球を選んで出塁、鬼頭数雄の左翼線二塁打で水谷は一気にホームを狙うがレフト吉田、サード芳賀直一の中継に本塁寸前タッチアウト。

 ライオンは2回、一死後山本尚敏が中前打で出塁、西端利郎が右前打で続きライト高木茂が逸らす間に山本は三塁に進んで一死一三塁、松岡甲二の右前タイムリーで1点を先制する。続く福士勇の遊ゴロは「6-4-3」と渡ってダブルプレー。

 名古屋は4回、先頭の吉田が四球で出塁、三浦敏一の送りバントはピッチャー小フライとなるが福士からの一塁送球が逸れる間に一走吉田は二塁に進む。中村三郎が中前にタイムリーを放って1-1の同点、センター坪内道則がこれを後逸する間に中村は三塁に進み、芳賀の中前タイムリーで2-1と逆転に成功、村松が中前打、トップに返り石田政良の左前打で二走芳賀はホームを突くがレフト鬼頭からのバックホームにタッチアウト、二死一三塁から村瀬一三が左中間に三塁打を放って4-1とする。

 名古屋は5回、一死後吉田が右中間に三塁打、しかしここは三浦、中村金次が凡飛に倒れて追加点はならず。

 ライオンは6回から先発の福士に代えて井筒研一をマウンドに送る。井筒は昨年はサードを守ることが多かったが一度だけ登板があり、5月22日の阪急戦で3イニングを投げている。強肩を活かして今年から本格的にピッチャーとしてマウンドに上ることとなり、戦前は勝ち星は記録されていないが戦後は3年連続二けた勝利をあげることとなる。二リーグ分裂後、松竹では9勝をあげてセ・リーグ初優勝に貢献することとなる。

 ライオンは7回、西端に代わる代打近藤久が四球を選んで出塁、松岡が左前打、井筒の三塁内野安打で無死満塁、しかしトップに返り坪内は捕邪飛、玉腰年男の右犠飛で2-4とするが水谷四球の二死満塁から期待の鬼頭は二ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。ライオンはこの回の1点止まりが敗因となった。

 名古屋は9回、先頭の村松が右前打、トップに返り石田が三塁に内野安打、村瀬の左前打で無死満塁、桝が左前タイムリー、大沢が中前タイムリー、吉田の遊ゴロで大沢が二封される間に村瀬が生還、三浦が右前にタイムリーを放ちなお一死一三塁、中村金次の投ゴロで二死二三塁、芳賀が左前に2点タイムリーを放ってこの回一挙6点をあげて試合を決める。更に村松が中前打で続くが石田が左飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 ライオンは9回裏、一死後井筒が一塁に内野安打、トップに返り坪内は四球、玉腰の二ゴロをセカンド中村がエラーして一死満塁、水谷は三飛に倒れて二死満塁、鬼頭が右中間に二塁打を放って2点を返すが広田修三四球後、山本が二ゴロに倒れて万事休す。鬼頭の当りが7回に出ていたら試合の流れはどう変わっていたか分からない。

 村松幸雄は11安打を浴びながら6四球4三振の完投で1勝目をあげる。

 名古屋は15安打を放つ猛攻を見せた。今季の名古屋打線の鍵を握る吉田猪佐喜が加藤正二の穴を埋めることができるか注目を集めたが、吉田は三塁打を1本放ち及第点であった。

 名古屋の小西得郎監督は飄々としているように見えるが2回の守備で右前打を逸らしたライトの高木茂を3回にスパッと石田政良に交代、その石田が効果的なつなぎの2安打を放った。




               *期待の2年目村松幸雄が完投で1勝目をあげる。






     *15安打を放った開幕戦の名古屋打線





     *開幕戦のライオン打線


15年 イーグルスvs南海 1回戦


3月15日 (金) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 イーグルス 0勝1敗 0.000 亀田忠
0 0 0 1 0 0 0 1 X  2 南海          1勝0敗 1.000 清水秀雄

勝利投手 清水秀雄 1勝0敗
敗戦投手 亀田忠    0勝1敗

二塁打 (南)吉川、岩出

勝利打点 山尾年加寿 1


清水秀雄颯爽とデビュー

 昭和15年開幕戦はイーグルスがエース亀田忠、南海が期待のルーキー清水秀雄の先発で午後0時5分、プレートアンパイア池田豊の右手が上がってプレイボール。

 イーグルスは初回、先頭の岩垣二郎が四球を選んで出塁、岡田福吉の投前送りバントを清水が二塁に送球するがセーフ、犠打野選となって無死一二塁、中河美芳が四球を選んで清水はプロ入り早々無死満塁のピンチを迎える。しかし四番寺内一隆は三振、亀田忠の三ゴロは「5-4-3」と渡ってダブルプレー。因みに南海のサードは鶴岡一人が兵役で抜けたため上田良夫が守っています。

 イーグルスは2回、先頭の谷義夫の投ゴロをファースト伊藤経盛が落球、谷が二盗を決めて、木下政文の右飛でタッチアップから三塁に進み、清家忠太郎が四球を選んで一死一三塁、しかし清家が清水の牽制球にタッチアウト、山田潔は三振に倒れる。3回は岩垣が三振、岡田は二ゴロ、中河が遊ゴロで三者凡退。4回は先頭の寺内の三ゴロをサード上田がエラー、しかし亀田は三振、寺内の二盗をキャッチャー吉川義次が刺し、谷は右飛に倒れて無得点。

 南海は初回、先頭の岩出清が四球で出塁するが無得点。2回は二死後山尾年加寿が中前打を放つが伊藤は三振。3回は先頭の藤戸逸郎が三塁に内野安打、トップに返り岩出が送りバントを決めて一死二塁、しかし上田は投ゴロ、国久松一は遊ゴロに倒れて無得点。

 南海は4回、先頭の四番吉川が左前打で出塁、岡村俊昭が三前に送りバントを決めて一死二塁、捕逸で吉川が三進、清水が四球を選んで一死一三塁、ここで山尾がスクイズを決めて1点を先制する。

 イーグルスは5回、先頭の木下が左前に初ヒット、しかし清家は三振、山田の投ゴロで木下は二封、ワイルドピッチで山田が二進するが岩垣は右飛に倒れて無得点。6回は岡田が遊直、中河は三振、寺内が四球を選ぶが亀田は三ゴロに倒れる。7回は先頭の谷がチーム2本目となるヒットを中前に弾き返して無死一塁、しかし木下、清家は連続三振、山田が四球を選んで二死一二塁とするが岩垣が中飛に倒れて無得点。8回は岡田が遊ゴロ、中河が一ゴロ、寺内は四球を選ぶが亀田が本日3本目の三ゴロに倒れて無得点。

 南海は8回裏、先頭の岩出が右翼線に二塁打、上田は右飛に倒れて一死二塁、国久の投ゴロに二走岩出が飛び出し二三塁間で挟殺札プレー、「1-5-6-5」と渡って岩出はタッチアウトとなるがこの間に打者走者の国久は二塁に達する。続く吉川の打席で国久が三盗、キャッチャー清家の送球が悪送球となる間に国久が還って2-0とする。挟まれたものの国久が二塁に進む時間を稼いだ岩出の粘りが追加得点に結び付いた。

 イーグルスは最終回、先頭の谷は遊ゴロ、木下に代わる代打玉腰忠義が四球を選んで一死一塁、しかし清家に代わる代打竹内功は三振、玉腰忠義が二盗を決めて二死二塁、山田に代わる代打宗宮房之助が三振に倒れて試合終了を告げるサイレンが高々と鳴り響く。

 清水秀雄は2安打7四球10三振の完封でデビューを飾った。







            *清水秀雄は2安打10三振の完封でデビューを飾る。










     *開幕戦のイーグルス打線。清水秀雄に2安打10三振に抑え込まれた













     *開幕戦の南海打線。応召が相次ぎ大幅にメンバーが変わった。












2012年6月2日土曜日

序説 その2


 序説にその2とはおかしな話ではありますが、新しい読者の方もいらっしゃるかもしれませんので当ブログで解読している職業野球公式スコアブックについてお知らせいたします。

 当ブログがこのスコアブックを入手したのは2010年1月のことです。神田神保町の野球専門古書店の店頭に並んでいたものを偶然見つけたものです。この時はスコアブックと共に昭和初期の野球記事10数年分のスクラップも店頭に並んでいました。一週間迷った挙句スコアブックの方を購入しました。1カ月後にスクラップも買いに行きましたが既に売却済みでした。

 店主の話ではいずれも故・福室正之助氏が所有していたものとのことです。報知新聞の蛭間豊章記者のブログ「Baseball Inside」2009年2月4日付けブログに「日本一の野球関係書籍蒐集家で、懇意にしていただいていた福室正之助さんが大会期間中に亡くなった事も忘れられない。」と書かれています。更に、「Baseball Journal」2012年5月3日付け記事に蛭間記者は「昔、福室正之助さんという方がいらっしゃいました。練馬のお漬物屋さんでしたが、この方が戦前の『野球界』などの雑誌を全部そろえて持っておられた。宇佐美さんのお友達で、良く報知に来られて話していました。この方は神田の古書街などで古い野球の本をみつけていたんですね。そして「福室野球資料館」を開いておられた。もうずいぶん前に亡くなって、息子さんが興味がなかったので蔵書はBIBLIO(古書買取サイト)にほとんど行ってしまいましたが。この方によく本を見せていただきました。」と書かれています。福室野球資料館を閉鎖する際、店主が整理するお手伝いをした関係で店頭に並んでいたようです。福室氏の資料の多くは野球体育博物館に寄贈されているようです。



 当ブログではこれまで昭和12年~14年の公式試合1,182試合(昭和12年王座決定戦、無効試合、昭和13年王座決定戦を含む)を解読してきました。昭和24年まで、残り3,668試合の解読作業を続けていきます。明日から昭和15年公式戦の模様を実況中継させていただきます。







工程表見直し


 以前お伝えした工程表を以下のように訂正させていただきます。ご理解のほどよろしくお願いいたします。


2010年 3月 昭和12年・春 224
2010年 8月 昭和12年・秋 195
2010年 12月 昭和13年・春 140
2011年 3月 昭和13年・秋 180
2011年 7月 昭和14年 432
2012年 6月 昭和15年 469
2013年 6月 昭和16年 340
2014年 3月 昭和17年 420
2015年 1月 昭和18年 336
2015年 10月 昭和19年 105
2016年 1月 昭和21年 420
2017年 1月 昭和22年 476
2018年 1月 昭和23年 560
2019年 4月 昭和24年 542
2020年 7月 終了

14年 講評


 日本野球史上空前となる長期一シーズン制を終了した。

 優勝したジャイアンツは強力打線で打ち勝った。川上哲治が猛打を見せてシーズン首位打者となったがスタミナ切れから後半戦は精彩を欠いた。逆に前半戦は絶不調であった中島治康が後半になって復活した。優勝の鍵を握ったのは三番・千葉茂の活躍であった。平山菊二も波はあるが印象的な活躍を見せた。一シーズン限りでフィリピンに帰国するアチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)は巨人軍史上初の満塁ホームランを放つなど勝負強さを印象付けた。42勝を記録したスタルヒンは終盤調子を崩したが気力を振り絞って優勝を掴み取った。一時はタイガースに逆転されるのは必至の状況まで追い込まれたが最終盤を“大和魂”で乗り切った。主力が温存され、応召は三田政夫と井上康弘だけなので黄金時代の継続は必至であろう。

 三連覇を逃したタイガースは“巨星墜つ”の感が強い。前半戦を引っ張った御園生崇男の応召が痛かった。西村幸生の衰えを若林忠志がカバーして一時は逆転優勝を狙えるところまでジャイアンツを追い込んだが一歩足りなかった。守備の名手として名高い皆川定之は9月の月間首位打者に輝いた。シーズン終了後景浦将、門前真佐人、岡田宗芳等が応召することとなり、来季の苦戦は免れないであろう。

 九球団随一の投手陣を誇る阪急は余裕のローテーションでシーズンに臨んだが、逆に軸になる投手が不在で終盤失速した。西村正夫、フランク山田伝の快足コンビと上田藤夫、黒田健吾、伊東甚吉の内野陣は健在であるが、4月、5月の月間MVPに輝いた高橋敏と安定した投球を見せた荒木政公が応召で抜ける投手陣の立て直しが急務である。

 しぶとい試合ぶりで勝率5割をキープしたセネタースは苅田久徳の踏ん張りと野口二郎の投打に渡る活躍が光った。野口はまだ若さを覗かせる場面が見られるが今後の成長に期待がかかる。来期は強打の尾茂田叶を応召で欠くこととなるのが痛い。

 鶴岡一人の加入でダークホースに躍り出た南海はその鶴岡を筆頭に宮口美吉、中田道信、平井猪三郎、小林悟楼、栗生信夫、海蔵寺弘司と主力選手を大量に戦場に送り込むこととなり来季の苦戦は必至である。

 名古屋は終盤の10試合に限れば7勝2敗1分で最強チームであった。序盤戦の三本柱松尾幸造、西沢道夫、村松幸雄を故障で欠いて繁里栄が孤軍奮闘、4月23日の堺大浜球場における南海とのダブルヘッダーに2試合連続完投勝利を飾った。これは現在でも残る日本記録である。大沢清と中村三郎がマウンドに上って巧投を見せた。来期は9月の月間MVPに輝いた強打者加藤正二を応召で欠くこととなる。

 春季シリーズを7勝25敗と大きく負け越した金鯱は岡田源三郎監督が丸坊主になるやチーム一丸となって勝ち進み夏季シリーズでは優勝争いを繰り広げた。中山正嘉は4試合連続完封を含む10連勝を記録するなどの活躍で25勝をあげた。戦地から戻ってきた小林利蔵が神懸り的な猛打を見せて7月の月間MVPに輝いた。

 ライオンは内野守備が崩壊することが多いが、一方豪快な強打が魅力でもある。水谷則一が10月の月間MVP、鬼頭数雄が秋季シリーズ首位打者に輝いた。

 イーグルスは貧打に泣いた。秋季シリーズでは中河美芳が謎の休場を続けたのが響いた。亀田忠は不振が続いたが11月13日のライオン戦では通算6度目の1安打ピッチングを記録した。亀田に代わってエース的活躍を見せた望月潤一は勝ち星に恵まれず7勝に終わったが11月の月間MVPに輝いた。