2025年12月25日木曜日

22年 南海vs阪急 10回戦

8月4日 (月) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 0 2 0 0 0 0 0 4 南海 35勝30敗3分 0.538 中谷信夫
0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 阪急 32勝36敗2分 0.471 天保義夫 溝部武夫

勝利投手 中谷信夫 8勝9敗 
敗戦投手 天保義夫 5勝10敗

二塁打 (南)堀井
三塁打 (南)堀井

勝利打点(南)山本一人 1

猛打賞 (南)堀井数男 3


月曜日でも1万人越えの観衆

 第16節最終日、西宮の第1試合は中谷信夫と天保義夫の先発で午後1時33分、二出川球審の右手が上がりプレイボール。

 南海は初回、先頭の安井亀和が中前打で出塁、河西俊雄が送りバントを決めて一死二塁、田川豊の遊ゴロの間に安井は三進、山本一人監督が右前にタイムリーを放ち1点を先制する。

 南海は2回表、先頭の堀井数男が右中間に三塁打、朝井昇の右犠飛で2-0とする。

 阪急は2回裏、一死後坂元義一が右前打で出塁、日比野武が左中間にヒット、荒木茂は四球を選んで一死満塁、天保の中犠飛で1点返して1-2とする。

 南海は4回表、一死後飯田徳治が左前打で出塁、堀井がセンター右奥にタイムリー二塁打を放ち3-1、朝井の三塁内野安打で一死一三塁、坂田清春の投ゴロを天保は一塁に送球してアウト、二塁に進んだ朝井のオーバーランを見てファースト野口明が二塁に送球するが悪送球となる間に三走堀井が還って4-1と突き放す。

 南海は6回表、二死後堀井が3打席連続ヒットとなる中前打で出塁、朝井の右前打で二死一二塁と追加点のチャンスを迎え、坂田の一二塁間へのゴロをファースト野口明が捕球、ピッチャー天保が一塁ベースカバーに入って「3-1A」の一ゴロでスリーアウトチェンジ。

 阪急は7回から溝部武夫がリリーフのマウンドに上がる。

 南海は9回表、先頭の堀井はここまで3打席で三塁打、二塁打、シングルヒットを放っており、ホームランが出れば史上初の「サイクルヒット」であったが、溝部の下手からの食い込んでくる球を引っ掛けて三ゴロに倒れる。

 中谷信夫は8安打3四球2三振の完投で8勝目をマームする。

 山本一人監督が今季初の勝利打点を記録した。この22年後、1969年紅白歌合戦の審査員で登場した際に司会の宮田輝アナから「つるたかずんど」と呼ばれてしまうことになるのは既報のとおり。

 阪急6回の守備、ピッチャー天保義夫は坂田清春の一二塁間のゴロにファースト野口明が飛び付くのを見て一塁ベースカバーに走って野口明からのトスを受け、「3-1A」でアウトにした。右方向への打球でのピッチャーによる一塁ベースカバーは、後に巨人がベロビーチキャンプでドジャースに教えてもらって日本に導入したとする説もあるが、スコアカードを見ると戦前の試合でも見られており、かなり前から行われていたことが分かる。

 阪急二番手の溝部武夫が3イニングを9人で抑えるパーフェクトリリーフ。溝部は4月20日の大阪戦で「4連続押出し四球」の不名誉な日本記録を樹立してしまったが、この日は見事なリリーフを見せた。特に、史上初の「サイクルヒット」が懸かった堀井数男を三ゴロに打ち取った場面はあっぱれであった。

 随所に好プレーが見られた試合となり、月曜日にも拘らず集まった1万人を超える観衆の期待に応えた。

2025年12月22日月曜日

つるたかずんど

 先日、BSNHKで1969年紅白歌合戦のノーカット版が放映された。

 この年の目玉は、いしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」と弘田三枝子の「人形の家」だった。

 カルメン・マキの「時には母のない子のように」も圧巻である。「Wikipedia」には「ステージに裸足で登場して非難を浴びた」と書かれているが、画像を確認すると靴下を履いている。

 これだけだと単なる芸能ネタで終わってしまうので本題に入ろう。

 この年の審査員の一人には現在当ブログで活躍している山本一人が選ばれていた。当時は「鶴岡一人」である。ところが、司会の宮田輝アナは、冒頭の紹介で「つるたかずんど」さんと呼んでしまった。

 紅白歌合戦史上有名な言い間違い事件と言えば、加山雄三がやらかした「仮面ライダー」が圧倒的知名度を誇っているが、「つるたかずんど」も事件としてとらえて良いのではないか。

 なお、「一人」の呼び方は「かずと」と思われがちであるが、当時は「かずんど」と呼ばれることも多く、こちらは問題ない。


2025年12月21日日曜日

22年 大阪vs南海 9回戦

8月3日 (日) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
3 0 0 0 0 0 0 0 2 5 大阪 45勝20敗3分 0.692 渡辺誠太郎 
0 0 0 0 0 1 0 1 1 3 南海 34勝30敗3分 0.531 別所昭

勝利投手 渡辺誠太郎 3勝3敗 
敗戦投手 別所昭      18勝11敗

二塁打 (南)小林、安井
三塁打 (大)藤村2
本塁打 (大)山本一人 6号

勝利打点(大)富樫淳 6

猛打賞 (大)藤村富美男 7 (南)河西俊雄 3


藤村が2本の適時三塁打

 西宮の第2試合は渡辺誠太郎と別所昭の先発で午後3時32分、二出川球審の右手が上がりプレイボール。

 大阪は初回、先頭の呉昌征が中前打で出塁、金田正泰のライト線ヒットで無死一三塁、金田がディレードスチールを仕掛けるが「2-6-3」と送球されてタッチアウト、三走呉は動けず一死三塁、富樫淳の二ゴロで三走呉がホームを狙い、セカンド安井亀和からの本塁送球はセーフ、野選が記録されて1点を先制、藤村富美男が中越えにタイムリー三塁打を放ち2-0、土井垣武の左犠飛で3-0とリードする。

 大阪先発の渡辺は前半好投を見せて5回まで無失点。

 南海は6回裏、先頭の小林悟楼が左中間に二塁打、トップに返り安井の遊ゴロの間に小林は三進、河西俊雄の中前タイムリーで1点返して1-3と追い上げ開始。

 南海は8回裏、先頭の坂田清春に代わる代打丸山二三雄が左前打で出塁すると代走に筒井敬三を起用、一死後トップに返り安井の当りは右中間に落ちる二塁打、一走筒井は三塁ベースで一旦止まるがホームに向かい、それを見たセンター呉昌征は直接本塁に送球する強肩を見せ、筒井は本塁寸前タッチアウト、二死二塁となって河西の三塁線内野安打で二死一三塁、河西が二盗を決めて二死二三塁、田川豊の一二塁間内野安打がタイムリーとなって2-3と1点差、三塁に河西、一塁に田川と俊足の走者を置くと、山本一人監督の打席で予想どおり田川が同点を狙うディレードスチールを仕掛け、キャッチャー土井垣はセカンド本堂保次に送球、一二塁間で挟殺プレーとなって本堂はファースト玉置玉一に送球、その瞬間三走河西がホームに突っ込み、この動きを読んでいた玉置が本塁送球、河西は本塁寸前タッチアウトとなって同点を狙ったダブルスチールは失敗。

 8回の守備を凌ぎ切った大阪は9回表、先頭の渡辺が左前打で出塁、トップに返り呉が送りバントを決めて一死二塁、金田の左前打で一死一三塁、今度は大阪がディレードスチールを仕掛けて一走金田がスタートを切り、キャッチャー筒井はセカンド安井に送球、一二塁間で挟殺プレーとなって安井はファースト飯田徳治に送球、その瞬間三走渡辺がホームに突っ込み、この動きを読んでいた飯田が本塁送球、渡辺は本塁寸前タッチアウトとなって二死二塁、富樫が四球を選んで二死一二塁、ここで藤村が試合を決める2点タイムリー三塁打を右越えに放ち5-2とする。

 南海は最終回、先頭の山本がレフトスタンドに第6号ホームランを放ち3-5と2点差に迫るが追い上げもここまで。

 渡辺誠太郎は13安打を浴びるが無四球4三振の完投で3勝目をマークする。

 お互いディレードスチールを仕掛けてダブルスチールを狙うケースが3回あったが、全て走者をアウトにする内野陣の好守が見られた。

 藤村富美男の2本のタイムリー三塁打が勝負を決めた。長打力不足が目立つ大阪であるが、打撃方法の転換期に来ている。

2025年12月14日日曜日

22年 中日vs巨人 9回戦

8月3日 (日) 桐生新川

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 3 3 中日 39勝24敗1分 0.619 清水秀雄
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 巨人 32勝33敗1分 0.492 長原孝治 多田文久三

勝利投手 清水秀雄     9勝5敗 
敗戦投手 多田文久三 7勝5敗

二塁打 (中)藤原、大沢 (巨)呉新亨、中島

勝利打点(中)藤原鉄之助 2

猛打賞 (中)藤原鉄之助 3


藤原鉄之助が土壇場で決勝打

 桐生新川の第2試合は清水秀雄と長原孝治の先発で午後2時10分、池田球審の右手が上がりプレイボール。

 巨人先発の初登板ルーキーサウスポー長原は、先頭の杉江文二を三振に打ち取り順調な立ち上がりかと見えたが、二死後大沢清、加藤正二、小鶴誠のクリーンナップトリオに3連続四球、続く杉浦清監督のカウントもスリーボールワンストライク、ここで巨人ベンチは長原に代えて多田文久三をマウンドに送り、杉浦を三振に打ち取ってピンチを防ぐ。

 中日先発清水の軟投を打ちあぐねていた巨人は6回裏、先頭の多田が一塁線に内野安打、トップに返り山川喜作の送りバントは清水が二塁に送球して多田は二封、田中資昭の右前打で一死一三塁、千葉茂の左前タイムリーで1点を先制する。続く川上哲治は二ゴロ併殺に終わる。

 8回まで無得点の中日は9回表、一死後大沢がレフト線に二塁打、代走に山本尚敏を起用、加藤の左前打で一死一三塁、小鶴は四球で一死満塁、杉浦が右前に同点タイムリーを放ち1-1、同点の一死満塁と言う場面で巨人内野陣は当然前進守備、二遊間は併殺も狙える中間守備でショート田中はほぼ二三塁間の走塁線場に構えていたところ、清水の当りは遊ゴロ、この時真っ直ぐ走ってきた二走小鶴がショート田中に衝突、この場合は守備が優先されるため守備妨害のインターフェアが宣告されて小鶴はアウト、ホームに駆け込んだ三走山本は三塁に戻されて二死満塁、ここで藤原鉄之助が左前に2点タイムリーを放ち3-1と勝ち越す。

 清水秀雄は9回裏巨人の反撃を三者凡退に退け、9安打無四球4三振の完投で9勝目をマークする。

 殊勲の決勝打を放った藤原鉄之助は猛打賞の活躍であった。

 桐生新川球場での2日間4試合で、7人が猛打賞を記録した。ホームランは大下弘の2本だけなので特に球場が狭かった訳ではない。グラウンド状態からイレギュラーヒットが多かったのかもしれない。

 巨人投手陣で左腕は中尾輝三だけなので、この日先発のサウスポー長原孝治が使えれば貴重な戦力となるところであったがちょっと厳しいようだ。実際、長原は巨人ではこの日の登板だけで、翌年は大阪タイガースに放出されることになる。

 スポーツ報知のXの配信(2020年11月30日付け)によると、巨人と阪神間のトレードは非常に珍しいそうで、交換トレードは1979年江川卓と小林繁、84年鈴木弘規と太田幸司、91年鶴見信彦と石井雅博の3事例だけで、巨人から阪神への直接移籍も呉昌征、長原孝治、広沢克実の3人だけ(2020年現在)とのことである。

 小林と江川のトレードは説明するまでもなく特殊なケース。太田幸司は近鉄から巨人に移籍したが一軍では出番が無く、関西に戻る形で阪神に移籍。石井雅博も簑島高校の出身で関西に戻ったもの。呉昌征の場合は台湾に帰るために巨人を退団したが特殊事情で阪神に移籍。広沢克実はヤクルトから巨人に移籍したが巨人の水が合わず、ヤクルト時代の恩師野村克也が阪神に呼び寄せたものだった。長原孝治は呉港中学の出身なので、藤村富美男の線で大阪タイガースに呼ばれたのかもしれない。

2025年12月13日土曜日

続・代走の代走

  昭和22年8月3日の太陽vs阪急11回戦において、太陽の藤本定義監督が8月1日の南海戦に続いて「代走の代走」を起用したことをお伝えしました。

 先日お伝えした3事例に加えて4事例目が判明しましたが、更にもう一つ「代走の代走」が起用された事例がありました。

 昭和15年10月7日、西宮球場で行われた阪急vs金鯱11回戦において、金鯱の石本秀一監督が「代走の代走」を起用していました。詳しくは2013年4月27日付け記事をご参照ください。

 当ブログも更新が5,000回を超え、筆者もいつどこに何を書いたかを忘れています。当ブログは検索機能が充実しており、左上の検索用タブに検索ワードを入力すると過去記事を検索することができます。「代走の代走」を入力してヒットしました。自分で書いておいて自分で単語検索するのもおかしな話ですが、15年間続けていますので悪しからず。

 さて、昭和15年10月7日の阪急vs金鯱11回戦、0対2と2点のビハインドで迎えた9回裏金鯱の攻撃、先頭のピッチャー中山正嘉がレフト線ヒットで出塁すると、石本秀一監督は代走に山本次郎を起用、一死後飯塚達雄に代わる代打古谷倉之助が中前打で一死一二塁、トップに返り五味芳夫が四球を選んで一死満塁となります。山本が二塁に進んだときか三塁に進んだときかは分かりませんが、石本監督は代走山本に代えて「代走の代走」として新井一を起用、二死後農人渉が左前に同点の2点タイムリーを放って追い付き、その後2四球を得てサヨナラ勝ちしました。

 石本秀一監督も藤本定義監督と並んで「策士」として知られています。矢張り、「代走の代走」は深い作戦であることは間違いないでしょう。

 なお、新井一はプロ野球に在籍したのはこの年だけ(戦後は国民野球連盟の大塚アスレチックスに在籍した模様)で、通算成績は17打数2安打1得点1打点。この試合で「代走の代走」に起用されてホームに還ったのがプロ野球で記録した唯一の得点でした。

 当ブログは今後も、世界で唯一の「代走の代走」研究機関として邁進していく所存です(笑)。

2025年12月12日金曜日

22年 太陽vs阪急 11回戦

8月3日 (日) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 0 0 1 0 1 2 5 太陽 26勝38敗3分 0.406 井筒研一 真田重蔵 
0 1 0 0 2 0 0 0 0 3 阪急 32勝35敗2分 0.478 今西錬太郎

勝利投手 井筒研一       6勝6敗 
敗戦投手 今西錬太郎 14勝8敗 
セーブ     真田重蔵    1

二塁打 (急)青田
三塁打 (太)辻井

勝利打点(太)辻井弘 2

猛打賞 (太)藤井勇 8


辻井弘、9回に決勝三塁打

 西宮の第1試合は井筒研一と今西錬太郎の先発で午後1時32分、杉村球審の右手が上がりプレイボール。

 太陽は2回表、先頭の伊勢川真澄が中前打で出塁、荒川昇治はストレートの四球で無死一二塁、一死後松井信勝の右前打で一死満塁、井筒の二ゴロの間に三走伊勢川が還って1点を先制する。

 阪急は2回裏、先頭の野口明が左前打で出塁、坂元義一の左前打で無死一三塁、楠安夫の中前タイムリーで1-1の同点に追い付く。

 阪急は5回裏、一死後上田藤夫が中前打で出塁、青田昇のレフト線二塁打で無死二三塁、ワイルドピッチで三走上田が生還して2-1と勝越し、野口明の遊ゴロをショート松井が失して三走青田が還り3-1とする。

 太陽は6回表、先頭の藤井勇が二遊間にヒット、森下重好の中前打で無死一二塁、中谷順次の遊ゴロは「6-4-3」と渡ってゲッツー、二死三塁から伊勢川が中前にタイムリーを放ち2-3と1点差に迫る。

 太陽は8回表、一死後辻井が一塁線に内野安打、藤井の右前打で無死一二塁、森下がレフト線にタイムリーを放ち3-3の同点に追い付く。

 太陽は9回表、先頭の荒川が四球を選んで出塁、佐竹一雄の三ゴロでランナーが入れ替わり、佐竹の代走に池田善蔵を起用、松井の三ゴロをサード荒木茂がエラーして一死一二塁、池田が二塁に進んだところで藤本定義監督は8月1日の南海戦に続いて又も「代走の代走」として湯浅芳彰を起用、二死後トップに返り辻井が右中間に殊勲の2点タイムリー三塁打を放ち5-3とリードする。 

 阪急は9回裏、先頭の日比野武が中前打で出塁すると代走に天保義夫を起用、下社邦男に代わる代打山田伝が四球を選んで無死一二塁、太陽の藤本監督はここで先発の井筒に代えて真田重蔵をリリーフに起用、荒木茂に代わる代打野口二郎の遊ゴロは「6-4-3」と渡ってゲッツー、真田は続く今西も抑えて今季初セーブをあげる。

 真田重蔵のリリーフ登板は今季4回目であるが、4月22日の近畿戦、5月8日の中日戦、6月13日の阪急戦と、過去3回は何れもリリーフに失敗して敗戦投手になっていた。藤本定義監督は真田の状態が上がってきていることを見抜き、4度目のリリーフに起用して成功したのである。

2025年12月11日木曜日

22年 金星vs東急 9回戦

8月3日 (日) 桐生新川

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計
1 1 0 0 3 0 2 0 1  2  10 金星 25勝40敗1分 0.385 江田孝 内藤幸三 
2 1 1 0 1 0 3 0 0  0   8  東急 24勝37敗2分 0.393 白木義一郎

勝利投手 内藤幸三       8勝9敗 
敗戦投手 白木義一郎 12勝14敗

二塁打 (金)小前、大友、坪内 (東)大下、長持
三塁打 (金)酒沢
本塁打 (東)大下弘 6号、7号

勝利打点 なし

猛打賞 (金)酒沢政夫 3、坪内道則 8 (東)鈴木清一(4安打)2、大下弘(4安打)5


白木と大下のWエラーでシーソーゲームに決着

 第16節4日目、桐生新川の第1試合は江田孝と白木義一郎の先発で午後零時2分、国友球審の右手が上がりプレイボール。

 いつもより1時間早い試合開始となった。恐らく第2試合終了後に東京に帰る列車の時間の都合であろう。桐生での試合は2日間だけなので、前夜は近くで一泊して本日は帰京するはずである。今夜も宿泊であれば試合時間を早める必要は無い。

 桐生までの交通手段は、東京から高崎線で高崎に出て、高崎から新前橋を経由して上毛線で西桐生まで行く方法以外には考えにくい。高崎と新前橋は上越線で接続されている。待ち時間を考慮すると、新幹線が無かった当時だと桐生から東京までは3時間近くかかったのではないか。

 金星は初回、先頭の酒沢政夫が右越えに三塁打、一死後坪内道則監督の左犠飛で1点を先制する。

 東急は1回裏、先頭の鈴木清一が左前打で出塁、一言多十も三遊間を破り、レフト小前博文がこの打球を後逸する間に一走鈴木が一気にホームに還って1-1の同点、打者走者の一言は三塁に進み、一死後大下弘がセンターにタイムリー二塁打を放ち2-1と逆転に成功する。

 金星は2回表、前の回にタイムリーエラーを犯した先頭の小前が右越えに二塁打、門馬祐の中前タイムリーで2-2の同点に追い付く。

 東急は2回裏、二死後苅田久徳監督がノーボールツーストライクから粘って四球で出塁すると二盗に成功、鈴木の2打席連続ヒットが右前タイムリーとなって3-2と勝ち越す。

 東急は3回裏、二死後大下が右越えに豪快な第6号ホームランを放ち4-2とリードを広げる。

 金星は5回表、一死後江田が三塁線に内野安打、トップに返り酒沢が右前打、大友はストレートの四球で一死満塁、坪内の右前タイムリーで3-4と1点差、西沢道夫が左前に逆転の2点タイムリーを放ち5-4とリードする。

 東急は5回裏、先頭の鈴木清一が3打席連続ヒットとなる中前打で出塁、金星ベンチはここで先発の江田から内藤幸三にスイッチ、一死後飯島滋弥の当りはセンター後方に飛ぶが坪内が名人芸を見せてホームランキャッチ、二死一塁から大下の当りはライトの石壁を直撃する当りとなって一走鈴がホームインし5-5の同点、大下は一塁にストップとなったが打点は記録されており、一塁走者を還すタイムリーシングルヒットとなった。

 金星は7回表、先頭の酒沢が中前打で出塁、大友が右中間にタイムリー二塁打を放ち6-5、坪内の三塁内野安打で無死一三塁、一死後清原初男が中前にタイムリーを放ち7-5とリードする。

 東急は7回裏、先頭の苅田が遊失で出塁、トップに返り鈴木清一が4打席連続ヒットとなる右前打を放って無死一二塁、一言の送りバントは捕邪飛となって失敗、飯島は三振に倒れて二死一二塁、ここで大下が右越えに豪快な第7号逆転スリーランを放ち8-7と試合をひっくり返す。

 金星は9回表、一死後大友が左前打で出塁、坪内のライト線二塁打で一死二三塁、西沢のレフトへの痛烈なライナーが犠飛となって8-8の同点に追い付く。

 金星は10回表、先頭の小前が三塁線に内野安打、門馬に代わる代打坂本勲が右前打を放って無死一二塁、中村信一の送りバントはピッチャー白木の守備範囲に転がり白木は三塁に送球、しかしこれが悪送球となって二走小前はホームイン、白木の悪送球をカバーしたレフト大下からの返球も悪送球となって一走坂本もホームに還り10-8と2点をリードする。

 東急は10回裏、一死後長持栄吉が左中間に二塁打、鈴木圭一郎は4球ファウルで粘って四球を選び一死一二塁、しかし白木の二遊間へのゴロをセカンド大友が捕球すると自らベースを踏んで一塁に転送、「4B-3」の併殺が完成してシーソーゲームに終止符を打つ。

 大下弘は4安打2本塁打6打点と爆発したが、肝心なところで悪送球。東急は白木と大下の2大スター選手によるWエラーで痛い星を落とした。