2011年6月26日日曜日

13年秋 タイガースvsイーグルス 5回戦

11月16日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 タイガース   26勝13敗      0.667 青木正一
0 0 0 0 0 0 2 0 X 2 イーグルス 15勝20敗4分 0.429 望月潤一


勝利投手 望月潤一 3勝4敗
敗戦投手 青木正一 1勝1敗


二塁打 (イ)ハリス、大貫

望月潤一、1安打完封


 第一試合でジャイアンツが川上哲治を先発させたからなのかタイガースの先発は青木正一。今季1勝0敗であるがその1勝は開幕戦のセネタース1回戦での完封勝利である。一方イーグルスはローテーション入りした望月潤一が先発。

 タイガースは初回、トップの松木謙治郎二ゴロ後、奈良友夫がファウル、見逃し、ファウルのツーゼロからの4球目をピッチャー強襲ヒット、藤村富美男の遊ゴロで奈良は二封、山口政信は二飛に倒れて無得点。2回は本堂保次二直、門前真佐人二飛、藤井勇が二ゴロに倒れる。3回、青木正一右飛後、皆川定之がツースリーから四球を選ぶが松木の二ゴロで4-6-3のゲッツー。

 イーグルスは初回は三者凡退。2回、この回先頭のバッキー・ハリスがボール、見逃し、ボールから6球ファウルを続けて10球目を中越えに二塁打、センター山口からの返球が逸れる間にハリスは三塁に進む。しかし太田健一は浅い左飛、杉田屋守は投ゴロ、望月潤一も三邪飛に倒れて得点ならず。3回も三者凡退。

 タイガースの4回は奈良投ゴロ、藤村左飛、山口は見逃し三振。5回は本堂左飛、門前遊ゴロ、藤井は捕邪飛。6回は先頭の青木がストレートの四球、皆川のカウントワンワンのところでハリスが一塁に牽制、青木が釣り出されて2-3-6と渡ってタッチアウト。皆川は見逃し三振、松木は三打席連続二ゴロに倒れる。

 イーグルスは4回、この回先頭の大貫賢が左中間を抜く二塁打、しかし中根之中飛、ハリス遊ゴロ、太田遊ゴロで無得点。5回、6回と三者凡退に終わる。

 タイガースは7回、奈良は初球を投ゴロ、藤村は2球目を右飛、山口は初球を叩いて左飛に倒れて4球で三者凡退。

 イーグルスは7回、この回先頭の中根がツースリーからセンターにクリーンヒット、ハリスの三ゴロで中根は二封、ハリスが二盗を決めて太田がストレートの四球を選んで一死一二塁、杉田屋に代わる代打亀田忠の遊ゴロを名手皆川が一塁に悪送球する間にハリスが還って均衡が破れてなお一死二三塁、二塁ランナーは亀田に代わって寺内一隆が代走に起用される。続く望月の投ゴロは青木の逆を突く形となり三走太田が突っ込み青木はホームに投げるが間に合わず野選となって2-0。望月も送球の隙を突いて二塁に達してなお一死二三塁、山田潔の打席2球目に三走寺内がホームスチールを敢行するがタッチアウト。望月は二塁に止まっているのでサインではなく寺内自らの判断での単独スチールのようだ。山田は四球を選び漆原進の三塁内野安打で二死満塁、しかしトップに返り野村実は二飛に倒れてこの回2点に終わる。

 タイガースは8回、本堂がボール、ファウル、ファウル、ボールからの5球目を一邪飛、門前は初球を遊ゴロ、藤井も2球目を中飛に倒れる。

 タイガースは最終回、青木に代わる代打伊賀上良平がツースリーから三ゴロ、皆川に代わる代打カイザー田中義雄がツーワンから二ゴロ、松木はツーナッシングから4球ボールを選んで四球で出塁、8回からセカンドに入っている岡田宗芳がボール、ボール、見逃し、見逃しからの5球目をセンターに打ち上げて白球は寺内一隆のグラブに収まり試合終了を告げるサイレンが高々と鳴り響く。


 翌日の読売新聞・宇野庄治記者の論評は「イ軍望月投手は無安打無得点の記録を惜しくも逸する程の快投に強打者揃いのタ軍をして顔色なからしめた、1回奈良に与えた投手強襲安打が唯一のものであるが守備に巧みなれば十分止め得たものだけに心残りであろう。この日の望月は直球の速力、カーブの制球力等、一として可ならざるものなくタ軍打者の虚を衝いてビシビシ決めて○○殊に杞憂された後半の疲労もなく全く快刀乱麻のごとき切れ味を見せた。この見事な投球は恐らく今秋最初にして最後のものと言ってよかろう。」というものです。宇野記者は何度かお伝えしているとおり後の巨人軍代表となるお方です。

 望月潤一は1安打3四球2三振、99球の完封で今季3勝目。イーグルスでは亀田忠が春季リーグ戦で4回、秋季リーグ戦で1回1安打ピッチング(完封は3回)をやっており、チームとして今年6回目となる。宇野記者の「この見事な投球は恐らく今秋最初にして最後のものと言ってよかろう。」と言うのは「望月の投球のうち」では無く、「宇野記者が見た今季の全ての試合の中で」のものではないでしょうか。

 タイガースはジャイアンツとの決戦を控えており青木正一を先発させたとはいえとても手を抜ける状況に無い。お伝えしているとおりこのところのタイガース打線は海内無双(かいだいむそう)と呼ばれた頃に匹敵する打撃力を見せています。それだけに本日の望月潤一投手の快投は価値が高く、全打席を実況中継させていただきました。



*望月潤一が許した唯一のピッチャー強襲ヒット。宇野記者によると捕れた当たりとのことであるがそれよりもツーナッシングから打たれたことが痛い。







*望月潤一の1安打完封を伝えるスコアブック。青木正一も好投している。青木は2失点ながら自責点はゼロ。これはショート皆川定之のエラーによるものであるが皆川は青木とは桐生中学の同期。イーグルスの2点目のホームを踏んだ太田健一も望月と早稲田実業の同期。太田はビルマで戦死することとなる。青木は2004年まで生きて長寿を全うする。皆川は息子がプロ入りして新人王を獲ることとなる。





2 件のコメント:

  1. 望月がこの秋リーグで、1度完封する事は分かっていましたがそれが何時になるかと待っていましたが、私の期待以上の内容で、嬉しい限りです。親父が、「俺も内野安打1本のノーヒットノーランに近い完封をしたことがある。」と言っていましたが、それが、この試合だったんですね。相手が強力打線のタイガースであり、嬉しさも2倍です。詳細にわたる実況深謝します。ありがとうございます。

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  2. 貴重なエピソードをありがとうございます。
    当時の読売新聞の論評は全て署名入り記事となっていますが、宇野庄治記者の論評は最も信頼できるものと考えています。

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