2020年12月31日木曜日

21年 阪急vsグレートリング 10回戦

8月17日 (土) 福岡香椎

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計
2 0 0 0 0 0 0 0 0  0  2 阪急 38勝31敗 0.551 今西錬太郎 
0 0 0 0 0 2 0 0 0 1X 3 グ軍 39勝22敗 0.639 丸山二三雄 

勝利投手 丸山二三雄 14勝9敗
敗戦投手 今西錬太郎   2勝4敗

二塁打 (急)山田、野口明、今西、野口二郎 (グ)河西、堀井

勝利打点 (グ)岡村俊昭 3


丸山二三雄、ハーラー単独トップ

 福岡香椎球場の第2試合は今西錬太郎と丸山二三雄の先発で午後4時5分、杉村球審の右手が上がりプレイボール。

 阪急は初回、先頭の山田伝が左中間に二塁打、上田が左前にタイムリーを放ち1点を先制、バックホームの間に打者走者の上田は二塁に進み、野口二郎は遊飛に倒れるが、野口明が左中間にタイムリー二塁打を放ち2-0とする。

 2回に一死一二塁、3回も二死一三塁のチャンスを逃したグ軍は6回裏、先頭の田川が中前打で出塁、山本一人監督の中前打で田川が三塁に進み、センター山田からの三塁送球の隙をついて打者走者の山本も二塁を陥れて無死二三塁、ここで堀井が左前に同点の2点タイムリーを放ち2-2とする。堀井もバックホームの間に二塁に進み、岡村が送って一死三塁とするが、木村勉は遊ゴロ、丸山は二飛に倒れて同点止まり。

 グ軍は7回裏、一死後安井が四球で出塁、河西の中前打で一死一二塁、ここでダブルスチールを仕掛けるが、キャッチャー坂田清春からの三塁送球に安井の三盗は失敗、田川の一ゴロをファースト野口明がエラー、山本が四球を選んで二死満塁とするが、堀井は中飛に倒れて無得点。

 延長に入ってグ軍は10回裏、先頭の堀井が右中間に二塁打、岡村が中前にサヨナラタイムリーを放ち8連勝、首位タイガースに2ゲーム差で喰らい付いている。

 丸山二三雄は2回以降無失点で8安打2四球4三振の完投、ハーラー単独トップに立つ14勝目をマークする。

 ハーラー2位は13勝の近藤貞雄であるが近藤はこのところ勝ち星が伸び悩んでいる。3位タイは12勝の白木義一郎と先日1か月半ぶりの勝利で12勝とした真田重蔵、5位タイは11勝の呉昌征と内藤幸三、7位タイは10勝で並ぶ渡辺誠太郎、天保義夫、石田光彦となっている。

 面白いことに、二桁勝利投手を複数抱えている球団は、首位タイガース(呉、渡辺)と最下位ゴールドスター(内藤、石田)だけである。


2020年12月30日水曜日

21年 タイガースvsセネタース 10回戦

8月17日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 2 1 0 0 0 3 6 タ軍 39勝18敗 0.684 野崎泰一 
1 0 0 1 0 0 0 1 0 3 セ軍 24勝34敗 0.414 一言多十

勝利投手 野崎泰一 5勝6敗
敗戦投手 一言多十 5勝10敗

二塁打 (タ)金田、野崎、呉 (セ)大下
三塁打 (セ)一言
本塁打 (セ)長持栄吉 1号

勝利打点 (タ)長谷川善三 2

猛打賞 (タ)小林英一 2


藤村の代役、小林英一が活躍

 後楽園の第2試合は野崎泰一と一言多十の先発で午後2時58分、島球審の右手が上がりプレイボール。

 セ軍は初回、二死後飯島がストレートの四球で出塁、大下がライト線に二塁打を放って二死二三塁、長持栄吉の右前タイムリーで1点を先行、大下も三塁ベースを蹴ってホームに突っ込むが、ライト塚本からの好返球にタッチアウト。

 タ軍は初回、二死一二塁のチャンスを作るが渡辺誠太郎の捕邪飛をキャッチャー熊耳が好捕、3回も二死二三塁から本堂の捕邪飛を熊耳がファインプレー。

 タ軍は4回表、一死後塚本が左前打で出塁、小林英一の右前打で一死一二塁、野崎が右中間に同点のタイムリー二塁打を放ち1-1、一死二三塁から長谷川善三のニゴロの間に三走小林が還って2-1と逆転に成功する。

 セ軍は4回裏、先頭の飯島が三塁に内野安打、しかし大下のニゴロが「4-6-3」と渡ってゲッツー、チャンスは潰えたかに見えたが、長持がライトスタンドに同点ホームランを叩き込んで2-2とする。

 タ軍は5回表、一死後土井垣が中前打で出塁、本堂の三ゴロの間に土井垣が二進、渡辺誠太郎が右前に勝ち越しタイムリーを放ち3-2とリードする。

 セ軍は6回裏、先頭の横沢七郎がツーストライクナッシングから粘って四球、飯島のレフト線ヒットで無死一三塁のチャンスを作るが、期待の大下は遊飛に倒れて一死一三塁、長持の中飛でセンター呉昌征が内野に返球、三走横沢はスタートせず、中継に入ったピッチャー野崎は一走飯島がタッチアップからスタートを切ったのを見て一塁に送球、飯島が一二塁間に挟まれると三走横沢がホームに突っ込み、セカンド本堂からのバックホームでタッチアウト、「8-1-3-4-2」の併殺が記録された。

 セ軍は7回裏、先頭の一言が右中間に三塁打、熊耳は四球を選んで無死一三塁、清水喜一郎は浅い左飛に倒れて一死一三塁、鈴木清一の遊ゴロは「6-4-3」と転送されてこの試合3つ目のダブルプレー。

 セ軍は8回裏、先頭の白木義一郎が四球を選んで出塁、横沢が送って一死二塁、野崎の二塁牽制悪送球で一死三塁、飯島の遊ゴロで三走白木がホームに突っ込み、ショート長谷川からのバックホームはタイミングはアウトであったがキャッチャー土井垣が落球、3-3の同点に追い付く。

 タ軍は9回表、先頭の小林が二遊間にヒット、野崎が送って一死二塁、長谷川が右前に決勝のタイムリーを放ち4-3、バックホームの間に長谷川は二塁に進み、トップに返り金田の右飛でタッチアップから三進、呉がライト線に鋭いライナーのタイムリー二塁打を放ち5-3、土井垣の中前タイムリーで6-3と突き放す。

 野崎泰一は9回裏のセ軍の代打攻勢を三者凡退に抑え、7安打5四球1三振の完投で5勝目をあげる。

 セ軍は熊耳の2度に亘る好守などでよく粘ったが、最後は選手層の差が出た。

 この試合は藤村冨美男監督が欠場してサードには小林英一が入っており、その小林が3安打猛打賞2得点で決勝のホームを踏む活躍を見せた。

 なお、松木謙治郎著「タイガースの生い立ち」には「八月中旬、藤村が家庭の不幸で一時欠場」と書かれており、「Wikipedia」では「最初の妻を1946年8月に失い」とされている。タ軍はこの試合を勝たねばならなかったのである。藤村は8月末まで欠場することとなる。

2020年12月28日月曜日

公式記録員

  戦前唯一の公式資料である「連盟公報」(第9号より「連盟ニュース」に改題)によると、昭和11年の公式記録員は同盟通信社の秋山慶幸、秋山與志己、読売新聞社の宇野庄治、小島六郎の4氏に「委嘱」されていた。

 そして、昭和12年3月25日発行「連盟ニュース13号」に、3月5、6、16、17の4日間に東京銀座連盟事務局で開催された理事会で、「公式記録員の決定」の項に、「公式記録員任命」として、「広瀬謙三(元時事新報記者)」が連盟公式記録員に決定したと書かれている。

 「Wikipedia」などに「1936年(昭和11年)に職業野球が誕生すると同時に連盟から公式記録員としての依頼を受け就任」などと書かれているので世の中には誤って伝わっているが、広瀬謙三が正式に公式記録員に就任したのは昭和12年のシーズンからである。同時に、同盟通信社運動部も公式記録員として「委嘱」されており、関東の試合は広瀬、関西の試合は同盟の記者がスコアを付けることとなった。

 「連盟ニュース」は昭和14年で終了しているので、その後の公式記録員の人事は判然としないが、昭和17年から山内以九士が公式記録員として採用されて関西の試合のスコアを付けていることは確認できている。

 公式の人事記録から分かることは以上であるが、スコアカードの記載から読み取れる「推測」を以下に記する。

 昭和15年のスコアから、関東の試合にはカウントも記載され、投球数も記録されている。関東の公式記録員の人事に、非公式ながら何かの動きがあったことが「推測」されるのである。

 昭和17年に山内以九士が公式記録員に採用された事実と併せて推測すると、昭和15年から山内が広瀬の助手を務めていた可能性が考えられる。その働きぶりが認められて、昭和17年から正式に公式記録員として採用され、当ブログが解読しているスコアカードを残した可能性が考えられるのである。(文中敬称略)


2020年12月27日日曜日

21年 ゴールドスターvs中部日本 12回戦

8月17日 (土) 福岡香椎

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 2 0 0 0 1 0 0 5 ゴ軍 22勝37敗1分 0.373 内藤幸三 
2 0 0 1 1 0 0 0 0 4 中部 22勝36敗2分 0.379 森井茂 

勝利投手 内藤幸三 11勝14敗 
敗戦投手 森井茂      9勝11敗

二塁打 (ゴ)内藤、坪内 (中)古川
三塁打 (ゴ)坪内
本塁打 (中)岩本章 3号

勝利打点 (ゴ)坪内道則 3


ゴ軍、ピストル打線で快勝

 福岡香椎球場の第1試合は内藤幸三、森井茂両ベテランの先発で午後2時15分、金政球審の右手が上がりプレイボール。

 中部は1回裏、先頭の古川がストレートの四球で出塁、続く金山が一二塁間にヒット、杉浦清監督が送って一死二三塁、加藤正二は三振に倒れるが、大沢清が珍しくレフト線に引っ張る2点タイムリーを放ち2-0とリードする。

 ゴ軍は2回表、先頭の坪内の当りは遊ゴロ、これをショート杉浦が一塁に悪送球、末崎の右前打で坪内は三塁に進み、末崎が二盗を決めて無死二三塁、ここで内藤が右越えに同点の2点タイムリー二塁打を放ち2-2と追い付く。続く早川平一は四球、大崎欣一と辻功は連続三振、トップに返り坂本勲の遊ゴロを又も杉浦がエラーして二死満塁、しかし続く大友のショートライナーを杉浦がキャッチしてスリーアウトチェンジ。

 ゴ軍は3回表、先頭の酒沢が左前打で出塁、坪内が右中間に勝ち越しの三塁打を放ち3-2、森井のワイルドピッチで坪内が還って4-2とする。

 中部は4回裏、一死後岩本が中越えにホームランを放ち3-4と追い上げる。

 中部は5回裏、一死後金山の当りは遊ゴロ、これをショート酒沢が一塁に悪送球する間に打者走者の金山が二塁に進み、二死後加藤が左前に同点タイムリーを放ち4-4と追い付く。

 ゴ軍は7回表、先頭の大友が左前打で出塁、酒沢のニゴロが進塁打となって一死二塁、ここで坪内が左中間に決勝の二塁打を放ち5-4とリードする。

 内藤幸三は9安打5四球5三振の完投で11勝目をマークする。

 ゴ軍の四番にはこの九州遠征までは菊矢吉男と田中宣顕が起用されていたが、前日から菊矢と田中はスタメンから外されて坪内監督が自ら四番に座っている。その坪内が2本の長打で勝利を呼び込んだ。坪内の四番は昭和15年最終戦以来6年ぶりとなる(日本プロ野球私的統計研究会様「スタメンアーカイブ」参照)。

 菊矢、田中の大砲を下げたゴ軍はトップから坂本勲、大友一明、酒沢政夫、坪内と並ぶ「ピストル打線」で長距離砲を揃える中部に競り勝ったのである。坪内監督としては会心の勝利ではなかったか。

2020年12月19日土曜日

1打席19球

 昭和22年11月11日、後楽園の太陽ロビンスvs金星スターズ戦。ロビンスの松井信勝が第二打席で13球ファウルで粘り、1打席19球の日本記録を樹立しましたが、山内以九士氏は「雑記」欄に「バントらしいファウルを13個も放つ」と書いています。

 高校野球ではバントと判定されて三振となるところですね。

 山内氏のサインは昭和21年には書かれていませんが、昭和22年の関東の試合では「記録者署名」欄にサインされています。


21年 パシフィックvs巨人 11回戦

8月17日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 3 0 0 0 0 4 パ軍 22勝36敗2分 0.379 真田重蔵 
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 巨人 33勝25敗1分 0.569 多田文久三

勝利投手 真田重蔵  12勝12敗
敗戦投手 多田文久三 1勝2敗

本塁打 (パ)松井信勝 1号

勝利打点 (パ)松井信勝 1


松井信勝が決勝本塁打

 第16節2日目、後楽園の第1試合は真田重蔵と多田文久三の先発で午後1時5分、国友球審の右手が上がりプレイボール。パ軍と巨人は8月5日の札幌円山球場での試合以来の登場となる。

 パ軍は初回、先頭の白石敏男が四球を選んで出塁、富松信彦もストレートの四球で無死一二塁、藤井勇が左前にタイムリーを放ち1点を先制する。

 巨人は初回、先頭の呉新亨が四球を選んで出塁、山田潔の右前打で無死一三塁のチャンスを作り、千葉は浅い右飛に倒れるが、川上が中前にタイムリーを放ち1-1の同点とする。続く黒沢の難しい三邪飛をサード平野徳松が好捕、ここで流れを断ち切ったことが勝利につながる。

 2回から4回まで両軍無安打。

 パ軍は5回表、先頭の松井信勝がライトスタンドにホームランを叩き込んで均衡を破り2-1と勝ち越し、一死後真田がストレートの四球、トップに返り白石のニゴロを千葉が痛恨のエラー、富松がファウルで粘って四球を選び一死満塁、藤井が中前に2点タイムリーを放ち4-1とリードを広げる。

 真田重蔵は7安打2四球4三振の完投、7月4日に11勝目をマークしてから6連敗を続けていたが、1か月半ぶりの勝利で12勝目をあげる。終盤はショート松井、センター富松の好守にも助けられた。

 決勝本塁打を放った松井信勝は3年間のプロ野球在籍で唯一の本塁打となった。松井は昭和22年11月11日の金星戦の第二打席で13球ファウルで粘り、1打席19球の現在も残る日本記録を樹立することとなる。

 松井以外では藤井勇が2本のタイムリーで3打点の活躍。

 パ軍守備陣は3つのファインプレーを含む無失策で真田を助けた。一方、巨人は千葉のエラーが痛かった。

2020年12月13日日曜日

21年 阪急vs中部日本 13回戦

8月16日 (金) 熊本水前寺

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 5 1 1 0 0 0 0 8 阪急 38勝30敗 0.559 笠松実 溝部武夫 
4 0 0 0 0 0 0 0 0 4 中部 22勝35敗2分 0.386 星田次郎 松尾幸造

勝利投手 溝部武夫 5勝0敗 
敗戦投手 松尾幸造 1勝11敗

二塁打 (中)岩本、金山
三塁打 (急)野口明

勝利打点 (急)大平茂 1

猛打賞 (急)大平茂 1


好リリーフの溝部が無傷の5連勝

 熊本水前寺球場の第2試合は笠松実と星田次郎の先発で午後4時丁度、杉村球審の右手が上がりプレイボール。

 星田は5月4日に二番手でプロ入り初登板、この試合が2試合目の登板でプロ入り初先発となった。

 阪急は初回、先頭の山田伝の当りはニゴロ、しかしこれをセカンド金山がエラー、山田が二盗を決め、上田の投ゴロも星田がエラーして無死一三塁、野口二郎の左犠飛で1点を先制する。

 中部は1回裏、先頭の古川が左前打で出塁、金山が四球を選んで無死一二塁、杉浦清監督の二塁へのヒットがタイムリーとなって1-1の同点、無死一三塁から加藤正二の中犠飛で2-1と逆転、大沢清が得意の右打ちで一二塁間を破り一死一三塁、藤原鉄之助の一ゴロの間に三走杉浦が還って3-1、二死二塁から岩本が中越えにタイムリー二塁打を放ち4-1とリードする。

 阪急は2回表、一死後日比野が左前打で出塁、荒木茂は中飛に倒れるが、大平茂がレフト線にヒット、笠松はストレートの四球で二死満塁、しかしトップに返り山田は中飛に倒れて無得点。

 中部は2回裏、先頭の三村が右前打で出塁、トップに返り古川の打席で笠松の一塁牽制に三村が釣り出されて「1-3-6-3」と渡ってタッチアウト、阪急ベンチはここで笠松に代えて溝部武夫にスイッチ、古川は三ゴロ、金山も投ゴロに倒れて無得点。

 溝部vs星田のアンダーハンド対決となった3回表、阪急は先頭の上田が四球を選んで出塁、野口二郎の遊ゴロをショート杉浦が一塁に悪送球、野口明のカウントがスリーボールナッシングとなったところで中部ベンチは星田から松尾幸造にスイッチ、野口明はストレートの四球で無死満塁、この場合の与四球は星田に記録される。坂井豊司の遊ゴロの間に三走上田が還って2-4、一死二三塁から日比野が左前に同点の2点タイムリーを放ち4-4、荒木の右前打で日比野は三塁に進んで一死一三塁、大平が逆転の左前タイムリーを放ち5-4、一死一二塁から溝部のニゴロをセカンド金山は二塁に送球するがベースカバーに入ったショート杉浦が落球して一死満塁、トップに返り山田の左犠飛でこの回5点、6-4とする。

 阪急は4回表、一死後野口明が中越えに三塁打、坂井の中犠飛で7-4とする。

 阪急は5回表、先頭の荒木の三ゴロをサード三村が一塁に悪送球して打者走者の荒木は二塁に進み、大平の三遊間ヒットで無死一三塁、溝部のニゴロで大平が二封される間に三走荒木が還って8-4とリードを広げる。

 2回途中からロングリリーフとなった溝部武夫は7回3分の2を3安打2四球1三振無失点の好投で無傷の5連勝をマークする。

 中部は5失策で自滅、特に2回にショート杉浦監督が犯した2つのエラーが痛かった。序盤は中部ペースで進んでいたが、杉浦の2失策で試合の流れが変わり、溝部に抑え込まれたのである。

 好調阪急は8月に入って8勝3敗。この日は3本の犠牲フライが効果的であった。

 大平茂が今季初の猛打賞と勝利打点を記録した。8月12日のゴ軍戦では荒木茂が今季初の猛打賞と勝利打点を記録するなど、伏兵が活躍するチームは強い。


2020年12月6日日曜日

21年 ゴールドスターvsグレートリング 9回戦

8月16日 (金) 熊本水前寺

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ゴ軍 21勝37敗1分 0.362 江田孝 
0 0 3 0 0 0 0 0 X 3 グ軍 38勝22敗 0.633 松川博爾

勝利投手 松川博爾 7勝3敗
敗戦投手 江田孝    1勝8敗

二塁打 (ゴ)坂本、辻

勝利打点 (グ)岡村俊昭 2


グ軍、松川の完封で虎の尻尾を捕える

 第16節は4チームがプロ野球公式戦としては初めてとなる九州遠征。

 熊本水前寺球場の第1試合は江田孝と松川博爾の先発で金政球審の右手が上がりプレイボール。

 ゴ軍は初回、一死後大友が四球を選んで出塁、酒沢は二飛に倒れるが、坪内の中前打で二死一三塁、しかし末崎はニゴロに倒れて無得点。

 グ軍は1回裏、先頭の安井が左前打で出塁、河西の遊ゴロでランナーが入れ替わり、田川の遊ゴロで再びランナーが入れ替わり、田川が二盗に成功、鶴岡は四球で二死一二塁、しかし堀井の遊ゴロで鶴岡が二封されて無得点。

 グ軍の初回のアウトは全て「6-4B」であった。これはプロ野球史上初の可能性がある。

 ゴ軍は2回表、二死後大崎欣一が右前打で出塁、しかし江田は捕邪飛に倒れて無得点。

 グ軍は2回裏、一死後木村勉が四球を選んで出塁、松川の中前打で一死一二塁、しかし宮崎は左飛、トップに返り安井はショートライナーに倒れて無得点。

 ゴ軍は3回表、この日プロ入り初めてトップに起用された坂本がレフト線に二塁打を放ち無死二塁、大友は捕邪飛、酒沢は中飛、キャッチャー木村の二塁牽制が悪送球となって二死三塁、坪内は二飛に倒れて無得点。

 グ軍は3回裏、先頭の河西が中前打で出塁、しかし江田の牽制に釣り出されて「1-3-6」でタッチアウト、田川が左前打から捕逸で二進、鶴岡は四球で一死一二塁、堀井の遊撃内野安打で一死満塁、岡村の一ゴロが野選を誘って1点を先制、なおも一死満塁から木村が左前に2点タイムリーを放ち3-0とリードする。

 松川博爾は4回以降もゴ軍打線を無得点に抑え、6安打3四球無三振の完封で7勝目をマークする。

 この試合の勝利打点は一ゴロ野選の岡村俊昭であるが、「真の殊勲打」を放ったのは追撃の2点タイムリーの木村勉であった。木村は粉河中学時代は投手であり、外野を守ることが多いが強肩を活かしてキャッチャーを務めることもある。今季でグ軍を離れて国民リーグに移るが、昭和23年には大洋ロビンスでプロ野球に復帰、昭和25年の松竹水爆打線にも名を連ねることとなる。その後も大洋、広島、近鉄で主軸打者として活躍を続け、無名ではあるが名選手であった。

 グ軍はこれで7連勝、いつの間にかタ軍に2ゲーム差と迫ってきており、虎の尻尾を捕らえた。

*この試合で「真の殊勲打」を放った木村勉の直筆サイン入りカード。


2020年12月5日土曜日

5円20銭

  現在日本経済新聞に連載されている福川伸次氏の「私の履歴書」では、福川氏は昭和21年の後楽園球場によく通っていたと記されており、入場料金は「1日2試合制で5円20銭だった。」とのことです。

 2019年9月5日付けブログ「入場料金」では、「昭和21年4月21日発行『体育週報』に『1試合5円、2試合10円』という記述が認められます。」と書かせていただきました。

 福川氏の記憶が正しいのか、「体育週報」の記述が正しいのか、謎は深まるばかりとなりました。