2015年9月30日水曜日

17年 朝日vs阪神 13回戦


10月5日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 2 0 0 0 0 1 3 朝日 37勝41敗5分 0.474 内藤幸三
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪神 40勝39敗5分 0.506 藤村隆男

勝利投手 内藤幸三 2勝4敗
敗戦投手 藤村隆男 2勝5敗

二塁打 (朝)坪内

勝利打点 内藤幸三 2


内藤幸三、9回一死まで無安打ピッチング

 翌日の読売新聞は「波に乗る朝日」の見出しで朝日の快進撃を伝えている。

 朝日は4回、先頭の原秀雄が四球を選んで出塁、広田修三は三振に倒れるが、浅原直人が左前打を放ち一死一二塁、内藤幸三が右前に先制タイムリーを放って1-0、一走浅原が陸上競技出身らしく快足を飛ばして三塁に進み、ライトからの返球を受けたピッチャー藤村隆男がホームに送球するとこれが悪送球となる間に浅原が還って2-0とする。浅原が一気にホームを狙うようなシチュエーションとも考えにくく、藤村の本塁送球は余計だった可能性がある。

 朝日は9回、先頭の岩田次男が四球を選んで出塁、早川平一の三ゴロでランナーが入れ替わり、斉藤忠二は中飛に倒れるが、酒沢政夫が左中間にヒットを放って二死一二塁、トップに返り坪内道則が中前にタイムリーを放って3-0と突き放す。


 朝日先発の内藤幸三は素晴らしいピッチングを見せて阪神打線を翻弄し、9回一死までノーヒットピッチング。無安打無得点が見えたかと思われた瞬間、門前真佐人の打球がライナーで右前に飛んで初ヒット、翌日の読売新聞は「曲球の曲りばなを叩かれて二越え安打され惜しくも記録を逃した」と伝えている。

 内藤幸三は1安打6四球6三振の完封で2勝目を飾る。打っても決勝打を放って勝利打点を記録した。


 内藤は昭和11年の、現在に続くプロ野球初年度の公式記録では、沢村栄治を抑えて初代奪三振王に輝いた快速球投手である。早くに応召して、復帰後はかつての速球が影を潜めていたが、このところのピッチング内容は昭和11年を凌いでいる可能性が高い。11年度は三振も多かったが四球も多く、公式記録とされる期間では133回3分の2で139奪三振ながら与四死球も111個を数えている。奪三振王である一方、与四球、失点、自責点でもトップであった。昭和17年秋季シーズンのピッチング内容の方が優っていると言えるでしょう。シーズン5勝10敗の数字だけを見ていては、「真実の内藤」を見ることはできない。真実は当ブログにあります。



*内藤幸三は9回一死まで無安打ピッチングを続けて1安打完封。





 

2015年9月29日火曜日

17年 阪急vs南海 12回戦


10月4日 (日) 中百舌鳥

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計
1 0 0 0 0 1 0 0 0  0  2 阪急 41勝38敗4分 0.519 天保義夫 小田野柏
0 0 0 2 0 0 0 0 0 1X 3 南海 41勝41敗 0.500 川崎徳次 神田武夫

勝利投手 神田武夫 22勝15敗
敗戦投手 小田野柏   0勝1敗

二塁打 (南)猪子
三塁打 (急)山田

勝利打点 岩本義行 6

猛打賞 (急)フランク山田伝 3

ファインプレー賞 (急)高柳常治 1、黒田健吾 3


八木進、山田伝を2度刺す

 阪急は初回、一死後フランク山田伝が左中間に三塁打、上田藤夫がセンター右に先制タイムリーを放ち1-0とする。

 阪急は3回、先頭の天保義夫が右前打で出塁、天保が二盗を決めて無死二塁、トップに返り西村正夫は捕飛に倒れるが、山田が三前にバントヒットを決めて一死一三塁と追加点のチャンス、ここで山田が二盗を試みるがキャッチャー八木進からの送球にタッチアウト、ホームをうかがっていた三走天保のリードが大きく、ショート柳鶴震からサード長谷川善三に送球されて天保は三本間に挟まれタッチアウト、記録は「6-5-2-5」であった。

 南海は4回、先頭の岩本義行が四球から二盗に成功、岡村俊昭の一ゴロの間に岩本は三進、中野正雄がレフト線に同点タイムリーを放って1-1、阪急ベンチはここで先発の天保に代えて小田野柏をマウンドに送る。川崎徳次が四球を選んで一死一二塁、八木は三振に倒れて二死一二塁、長谷川が四球を選び二死満塁、トップに返り柳が押出し四球を選んで2-1と逆転する。続く猪子利男は遊飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪急は6回、一死後西村正夫が一塁に内野安打、山田の右前打で西村は三塁に進んで一死一三塁、上田の中犠飛で2-2と同点に追い付く。

 阪急は7回、一死後池田久之がストレートの四球で出塁、高柳常治が左前打を放って一死一二塁、南海ベンチはここで先発の川崎から神田武夫にスイッチ、小田野の遊ゴロで高柳は二封、トップに返り西村は中飛に倒れて無得点、南海の継投策が成功する。

 この後、8回は南海、9回は阪急がスコアリングポジションに走者を送るが両軍無得点のまま延長戦に突入。

 南海は10回裏、先頭の猪子が左中間に二塁打、国久松一の三塁内野安打で無死一三塁、岩本が左前にサヨナラ打を放ち接戦をものにする。


 阪急はこのところ昭和13年以来のマウンドとなる小田野柏を使っているが、本日は負け投手。


 南海のキャッチャー八木進がフランク山田伝の盗塁を2度刺して勝利に貢献した。今節の技能賞候補ですね。


 

2015年9月27日日曜日

17年 名古屋vs大和 12回戦


10月4日 (日) 中百舌鳥

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 2 0 1 1 0 3 3 0 11 名古屋 30勝49敗4分 0.380 松尾幸造
0 0 0 0 1 0 0 0 1  2  大和     21勝52敗9分 0.288 松本操 広島清美

勝利投手 松尾幸造 4勝4敗
敗戦投手 松本操     1勝8敗

二塁打 (名)古川、吉田
三塁打 (名)小鶴
本塁打 (名)古川 8号

勝利打点 古川清蔵 10

猛打賞 (名)古川清蔵(5安打) 2、小鶴誠 5


古川清蔵5安打

 名古屋は初回、先頭の石丸藤吉が四球で出塁、岩本章は右飛に倒れるが石丸が二盗に成功、古川清蔵の左前タイムリーで1点を先制する。

 名古屋は2回、先頭の小鶴誠の三ゴロをサード鈴木秀雄がエラー、石丸進一が四球を選んで無死一二塁、松尾幸造の右前タイムリーで2-0、野口正明の投ゴロ併殺の間に三走石丸進一が還って3-0とする。

 名古屋は4回、先頭の小鶴がセンター左奥に三塁打、石丸進一は捕邪飛に倒れるが、松尾の二ゴロの間に小鶴が還って4-0とする。

 名古屋は5回、二死後古川の三ゴロをサード鈴木が一塁に悪送球、吉田猪佐喜の遊直をショート山田潔がエラー、桝嘉一の左前タイムリーで5-0とする。

 4回まで6安打を放ちながら無得点の大和は5回裏、先頭の杉江文二がショートに内野安打、杉江が二盗を決めて、山田も二遊間に内野安打を放ち無死一三塁、木村孝平の三ゴロで三走杉江がホームに突っ込み、サード小鶴がバックホームするがセーフ、野選が記録されて1-5とする。

 名古屋は7回、先頭の岩本の遊ゴロを又も山田がエラー、古川がレフトスタンドにツーランホームランを叩き込んで7-1、続く吉田が右中間に二塁打、桝の二ゴロの間に吉田が三進、小鶴の三塁内野安打で吉田が還り8-1とする。

 大和は8回から先発の松本操に代わって広島清美がマウンドに上がる。

 名古屋は8回、先頭の石丸藤吉がストレートの四球で出塁、岩本は左飛に倒れるが、古川がライト線にヒットを放ち一死一二塁、吉田の左前打で一死満塁、桝に代わる代打藤原鉄之助の中前タイムリーで9-1、小鶴が右前に2点タイムリーを放って11-1とする。

 大和は9回、一死後杉江が四球を選んで出塁、トップに返り山田が右前打、木村が左前にタイムリーを放ち2-11とするが焼け石に水、最後は金子裕の二ゴロが「4-6-3」と渡ってゲームセット。


 名古屋は16安打を放って11得点、古川清蔵は6打数5安打3得点3打点、二塁打1本、本塁打1本の活躍であった。


 松尾幸造は13安打を打たれたが1四球2三振2失点の完投で4勝目をあげる。


 

2015年9月26日土曜日

背番号「14」



 千葉茂の応召により巨人の二塁を守ることとなった坂本茂は戦前の背番号が「6」。昭和21年に巨人に復帰すると背番号「14」を付けることとなります。翌22年に背番号「14」は永久欠番となりますので、坂本は巨人で最後に「14」を付けた選手となりました。


 坂本茂は日大三中時代春2回、夏2回と合計4度甲子園に出場しています。昭和13年センバツは四番セカンドで出場、この時の二番ファースト本田耕一は石丸進一の最後の投球を受けたキャッチャーで、共に特攻で散ることとなります。翌14年センバツではレフトに回って三番、四番ピッチャーに鬼頭政一が加わります。


 昭和13年夏に続いて15年夏の甲子園にも出場、四番セカンドに戻っています。この時の控えメンバーに巨人で同僚となる今泉勝義がいました。今泉は昭和19年には背番号「16」、21年には坂本の前に「14」と偉大な番号を背負っていましたがプロでは通算3打数無安打に終わりました。社会人野球に転向した今泉は昭和25年、山形ハッピーで都市対抗に出場します。山形代表が都市対抗に出場したのは、現在に至るまでこの時の山形ハッピーだけとなります。



*昭和13年センバツ出場時のメンバー。






*昭和14年センバツ出場時のメンバー。





*登録はライトでしたが試合には三番レフトで出場しています。








*巨人時代は背番号「16」と「14」を付けた今泉勝義は昭和25年に山形ハッピーで都市対抗に出場。




注)写真は「選抜高等学校野球大会50年史」及び「都市対抗野球大会60年史」より。


 

17年 阪神vs巨人 13回戦


10月4日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
0 0 0 0 0 1 0 2 0  0   0  3 阪神 40勝38敗5分 0.513 御園生崇男 若林忠志
0 0 0 0 1 0 0 0 2  0  1X 4 巨人 55勝24敗4分 0.696 藤本英雄 須田博

勝利投手 須田博     17勝6敗
敗戦投手 若林忠志 18勝12敗

二塁打 (神)藤井2、乾 (巨)坂本、多田
三塁打 (巨)白石、坂本

勝利打点 伊藤健太郎 6


坂本茂、‟走守”に活躍

 翌日の読売新聞が「藤本は完全に御園生に投げ敗けた」と伝えているように、藤本英雄は9回まで投げて阪神打線に10安打を許した。この試合も「飛ぶボール」が使われていた可能性がある。


 阪神は5回まで3安打を放ったが無得点。4回は併殺でチャンスの芽を潰し、5回は先頭の御園生崇男が左前打で出塁するが、野口昇の送りバントは一邪飛となって失敗、乾国雄も送りバントを試みるがこれも一邪飛、三輪裕章は右飛に倒れて走者を送れずスリーアウトチェンジ。

 巨人は5回裏、一死後藤本が中前打で出塁、スコアカードの記載によると続く小池繁雄の捕邪飛で一走藤本が二進し、キャッチャー田中義雄の二塁悪送球の間に藤本が三進した。小池のキャッチャーファウルフライで藤本はタッチアップからスタートを切り、田中の悪送球を誘ったことになる。二死三塁となって多田文久三のレフト線二塁打で藤本が還り1点を先制する。

 阪神は6回、二死後山口政信が中前打で出塁、藤井勇の右中間二塁打で山口が一塁から一気に生還、阪神は帰還兵の三四番コンビによる快打で1-1の同点に追い付く。

 阪神は8回、先頭の塚本博睦が中前打で出塁すると二盗に成功、二番田中が送って一死三塁、山口の左前タイムリーで2-1と勝越し、藤井が又も右中間を破り一走山口が快足を飛ばしてホームを駆け抜け3-1とリードを広げる。

 阪神は9回、一死後乾が左中間に二塁打、しかしここは藤本が踏ん張り三輪裕章は中飛、トップに返り塚本は遊ゴロに倒れて無得点。

 巨人は9回裏、永沢富士雄に代わる代打林清一がピッチャー強襲ヒットで出塁、坂本茂が中越えに三塁打を放って2-3、藤本の左犠飛で3-3と同点に追い付く。

 同点に追い付いた巨人は10回から須田博を投入。ここで巨人藤本定義監督が名采配を見せた。9回にサード小池の代打に出た伊藤健太郎をレフトに入れ、レフトの青田に代えて須田を入れてピッチャー、藤本が降板したところにサード三好主を入れる。代打の林はそのままファースト。須田は10回、11回を三者凡退に退けた。

 巨人は10回裏、先頭の呉波が二塁に内野安打、阪神ベンチはここで先発の御園生が降板して若林忠志監督がリリーフのマウンドに立つ。青田に代わって二番に入った須田の投前送りバントは若林が二塁に送球して快足呉を二封、白石敏男、中島治康は連続遊ゴロに倒れてこの回無得点。

 巨人は11回裏、先頭の林の当りは一ゴロ、ファースト門前真佐人からベースカバーに入った若林に送球されるが若林は落球、9回に殊勲の三塁打を放った坂本は四球を選んで無死一二塁、三好の投前送りバントを若林が三塁に送球して二走林は三封、巨人はここでダブルスチールを敢行、一死二三塁となって伊藤がライトにサヨナラ打を放ち逆転勝ち。


 青田を下げてまで残した伊藤がサヨナラ打を放った。前日の朝日戦ではことごとく起用が裏目に出て大敗したが、藤本定義監督としては快心の起用となった。


 藤本英雄はこの年10勝0敗で勝率10割を記録することとなるが、この試合は負け投手になる可能性が高かった。それを救ったのが坂本茂の三塁打である。坂本は11回には三盗を決めて決勝のホームを踏む活躍であった。


 

2015年9月24日木曜日

17年 朝日vs大洋 13回戦


10月4日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 3 0 0 3 0 6 朝日 36勝41敗5分 0.468 林安夫 大橋一郎
0 0 0 0 0 0 0 0 2 2 大洋 48勝29敗5分 0.623 野口二郎

勝利投手 林安夫     23勝18敗
敗戦投手 野口二郎 30勝13敗

二塁打 (朝)酒沢
三塁打 (朝)酒沢
本塁打 (朝)広田 1号、浅原 3号

勝利打点 酒沢政夫 1


広田修三、浅原直人が2者連続本塁打

 この試合では「飛ぶボール」が使用された。

 1回、2回と三者凡退の朝日は3回二死後酒沢政夫が二塁打、4回も二死後浅原直人が左前打を放つが後続なく無得点。

 朝日は5回、先頭の林安夫が左前打で出塁、早川平一も左前打で続き、斉藤忠二が送って一死二三塁、酒沢政夫がセンター右奥に三塁打を放って2点を先制、トップに返り坪内道則の中犠飛で3-0とする。

 朝日は8回、先頭の坪内が遊失に生きるが二盗に失敗、原秀雄の三塁内野安打で一死一塁、ここで広田修三が初球を叩いてレフトスタンドにツーランホームラン、更に浅原も初球を左翼席に叩き込んで2者連続本塁打、6-0と突き放す。

 朝日は9月16日の名古屋戦でも2者連続ホームランを放ったが、その時は鬼頭政一と浅原直人であった。浅原は2度目の連続本塁打を記録した。

 朝日先発の林安夫は大洋打線を8回まで4安打無失点に抑え込む。

 朝日竹内愛一監督9回から林をレフトに回しマウンドにはプロ入り初登板となる大橋一郎を送り込む。同時に急造キャッチャーの斉藤忠二をファーストに回して、キャッチャー経験豊富な広田をファーストから呼び寄せマスクを被らせる。

 大洋は9回、一死後濃人渉が四球を選んで出塁、野口二郎の三ゴロをサード岩田次男が一塁に悪送球して一死一三塁と若い大橋の足を引っ張る。野口明も四球を選んで一死満塁、古谷倉之助が押出し四球を選んで1-6としてなお一死満塁、ここで竹内監督はレフトから林を呼び戻して再びマウンドに送る。浅岡三郎の二ゴロ併殺崩れの間に三走野口二郎が還って2-6、最後は祖父江東一郎が中飛に倒れ、朝日が冷や汗をかいたが逃げ切る。

 先発して勝利投手となった林安夫はセーブシチュエーションで再登板して抑えたので、勝利投手とセーブを同時に達成したこととなるが、現在ではこのケースではセーブは記録されない。


 1974年8月18日の日本ハム対近鉄戦で高橋直樹が勝利投手とセーブを同時に記録したが、これをきっかけとしてルールが改正されてセーブの条件に「勝利投手にならなかった場合」が加えられた。したがって、昭和17年の段階では勝利投手とセーブを同時に記録しても構わないこととなりますが、ここは現行ルールに従うこととします。


 2011年1月8日付けブログ「13年春 阪急vs金鯱 3回戦 」において、中山正嘉が勝利投手とセーブを記録しています。プロ野球史上初の快挙は1974年の高橋直樹ではなく、昭和13年春の中山正嘉でした。この時は高橋直樹同様、「勝利投手とセーブ」としてお伝えしていますが、その後は同様のケースでは勝利投手のみを記録してお伝えしています。まぁ、三原監督時代は西鉄時代、毎日戦で稲尾が苦手の葛城を迎えると稲尾を一塁に回してワンポイントリリーフに下手投げを送り、再び稲尾を登板させたり、大洋時代はアンダーハンドの秋山が左バッターを迎えるとレフトに回して左腕・権藤を送って打ち取り、再び秋山を戻すなどの三原マジックをやっていましたので、「高橋直樹のケースは」セーブが記録として制定されたから顕在化しただけのことで、探せばいくらでも同様のケースがあるのでしょう。点差だけでセーブが付くかが判別できる試合もありますが、本日の試合のようにスコアカードを調べないと判別できないケースもあります。






*「雑記」欄に「飛ぶ球使用」と書かれている。







 

2015年9月23日水曜日

17年 阪急vs名古屋 12回戦


10月3日 (土) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 阪急     41勝37敗4分 0.526 森弘太郎
0 0 0 3 0 0 0 0 X 3 名古屋 29勝49敗4分 0.372 西沢道夫

勝利投手 西沢道夫   5勝8敗
敗戦投手 森弘太郎 18勝15敗

二塁打 (急)森 (名)石丸藤吉

勝利打点 吉田猪佐喜 2


吉田猪佐喜が決勝打

 阪急は4回まで無安打、名古屋は3回まで無安打と、序盤戦は名古屋先発・西沢道夫と阪急先発・森弘太郎との投合いが続いた。

 名古屋は4回裏、先頭の石丸藤吉がライト線に二塁打、岩本章の二ゴロをセカンド上田藤夫がエラーして無死一三塁、岩本が二盗を決めるが古川清蔵は三振に倒れて一死二三塁、吉田猪佐喜の右前タイムリーで1点を先制、吉田が二盗を決めて再度一死二三塁、桝嘉一の投ゴロの間に三走岩本が還って2-0、小鶴誠が中前タイムリーで続きこの回3点を先制する。

 西沢は5回以降毎回走者を出しながら無失点で切り抜ける。

 阪急は8回、先頭の森が右中間に二塁打、トップに返り西村正夫が死球を受けて無死一二塁、フランク山田伝の遊ゴロが「6-4-3」と渡って二死三塁、上田の遊ゴロをショート石丸進一がエラーする間に三走森が還って1-3とするが反撃もここまで。

 西沢道夫は5安打2四球2死球2三振1失点、自責点ゼロの完投で5勝目をあげる。2死球でも分かるように、この日は思い切って内角を突いていったようで4併殺を記録している。その内一つはレフト吉田猪佐喜のバックホームによるものでしたが。吉田の補殺の多さは、当ブログをきちんと読んでいらっしゃる方にはご理解いただけるのではないでしょうか。


 決勝打を放った吉田猪佐喜が勝利打点を記録したが今季僅かに2個目。吉田の勝利打点は昭和15年は11個で昭和16年は7個と、強肩と共に勝負強さでも目立っているが、今季は打数がほとんど変わらないにもかかわらず打点そのものも少ない。吉田猪佐喜はシベリア抑留後、吉田和生と改名して松竹水爆打線に名を連ねることとなる。


 

三冠への道 2015 その15 混沌



 両リーグのサイ・ヤング賞争いが混沌としてきました。


 ナショナル・リーグはメッツ、カージナルス、ドジャースが独走と、80年代の大リーグ黄金時代に戻ったような感じ、ワイルドカードも中地区のパイレーツ、カブスで決まっていますので、個人タイトル争いに興味が絞られています。

 MVPはブライス・ハーパーで決まりだと思いますが、サイ・ヤング賞争いは最後まで分からない。

 現在防御率1.65でトップのザック・グリンキーは年間を通じて安定した投球を見せており、2009年ロイヤルズ時代以来となる両リーグでの受賞を狙います。松坂の大リーグデビュー戦の対戦相手で、こんな線の細いピッチャーが大リーグで通用するのかこちらが心配になるほどでしたが、ポシャった松坂とは逆にここまで成長してきました。リトルリーグ時代に来日した時のホームステイ先で貰った「五円玉」をネックレスにして首にかけていたので「五円玉くん」と呼んでいたのも懐かしい思い出と思っていましたが、現在が全盛期かもしれません(笑)。


 当ブログの本命は防御率1.96で二位のジェイク・アリエタ。8月30日にはライバル二人が在籍するドジャース相手にノーヒットノーランを達成、ボールの勢いではグリンキーより上と見ますので、下馬評では劣勢ながら十分ありえる(このネタを使うために本命にしているのではありません(笑))。

 防御率2.18で三位のクレイトン・カーショウは現在272個の奪三振をどこまで伸ばしてくるかが鍵を握っています。前半戦が不安定だったことと、3年連続4回目となるとそれなりの成績が求められることから今年は厳しいと見ていますが、今季はレギュラーシーズンが10月4日まであるのであと2回の登板は確実、ローテーション的には3回も可能ですがプレーオフを見据えて2回の登板で止めるでしょう。290個くらいまでは伸ばしてくるので、3回登板すれば300個乗せも十分狙えます。




 アメリカン・リーグは中地区のロイヤルズは独走、東地区二位のヤンキースと西地区二位のアストロズにはまで逆転の目が残ります。ワイルドカード争いでもツインズとエンゼルスにチャンスが残っており順位争いは最後まで目が離せない。

 一方、サイヤング賞争いはアストロズ旋風の立役者であるダラス・カイケルで行けると考えていましたが、デビッド・プライスの目が出てきてこちらも混沌としてきました。

 プライスは7月までのデトロイト・タイガースでは9勝4敗防御率2.53、146ニングスで138奪三振、被打率2割4分1厘、WHI1.11で全く候補にあがっていませんでしたが、7月末にワールドシリーズ二連覇した1993年以来のプレーオフ進出を狙うトロント・ブルージェイズに移籍してから獅子奮迅の活躍で、8勝1敗防御率1.95、69回3分の1で81奪三振、被打率2割0分0厘、WHI0.98。アストロズ旋風も大きな話題ですが、ブルージェイズが東地区を制すとなるとこちらもフィーバーしますので、その立役者としての得票を集める可能性があります。

 これまで1シーズンで2チームに在籍した投手のサイ・ヤング賞はない(ハズ、正確にはお調べください)のですが、同一リーグでの移籍であれば問題はないでしょう。2009年にクリフ・リーがインディアンスからフィリーズに移籍してフィリーズでは79回3分の2で与四球僅か10個という歴史的快投を見せましたが、さすがに両リーグにまたがる移籍だったのでサイ・ヤング賞の声は出ませんでした。

 ということで、ア・リーグのサイ・ヤング賞はデビッド・プライスが2012年以来2度目の受賞と予想を変更させていただきます。朝令暮改は世の常ですのでお許しください(笑)。MVPはジョシュ・ドナルドソンで予想は変わりません。




 

2015年9月22日火曜日

17年 南海vs大和 12回戦


10月3日 (土) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 1 0 0 0 0 2 南海 40勝41敗 0.494 石田光彦 神田武夫
0 0 2 1 1 0 0 0 X 4 大和 21勝51敗9分 0.292 畑福俊英 石原繁三

勝利投手 石原繁三 15勝22敗
敗戦投手 石田光彦   6勝11敗

二塁打 (和)木村、木下、金子
三塁打 (南)岡村
本塁打 (南)岩本 7号

勝利打点 木村孝平 4


石原繁三、無安打リリーフ

 南海は徳島忠彦が先発のマスクを被った。徳島のキャッチャーは2年間のプロ生活でこの試合のみとなる。

 大和は3回、一死後畑福俊英が四球を選んで出塁、トップに返り山田潔は右飛に倒れるが、木村孝平の二塁打で一走畑福がホームに還り1点を先制、バックホームの間に打者走者の木村は三塁に達する。スコアカードの記載によると、木村の当りはショートへの打球がセンターに抜けたように見える。また、センター岩本義行から直接バックホームされた間に木村が三塁に進んでいることも確認できる。駿足とは考えにくい畑福が一塁からホームに還っていることと併せて考えてみると、変則的な打球がセンターに抜けたものでしょう。この後、急造キャッチャー徳島がパスボールを犯して三走木村も還り、この回2点を先制する。

 南海は4回、一死後岩本がレフトスタンドに第7号ソロホームランを叩き込んで1-2とする。岩本はこれで古川清蔵に並んで本塁打王争いトップタイとなった。6本で中島治康が追っている。

 南海は4回裏の守備からキャッチャーを徳島からレギュラー捕手の八木進に交代する。

 大和は4回裏、先頭の木下政文が左越えに二塁打、富松信彦の遊ゴロで二走木下が三塁に走ってしまい、ショート柳鶴震からサード長谷川善三に送球されてタッチアウト、しかし富松が二盗に成功、小松原博喜の投ゴロの間に富松は三進、鈴木秀雄が四球から二盗を決めて二死二三塁、杉江文二の右前タイムリーで3-1と突き放す。二走鈴木も三塁ベースを蹴ってホームを狙うが、ライト岡村俊昭からの好返球にタッチアウト。

 南海は5回、先頭の石田光彦が左前打で出塁、長谷川が四球を選んで無死一二塁、トップに返り柳を打席に迎えたところで大和は先発の畑福から石原繁三にスイッチ、これは畑福代理監督が自ら判断したのでしょうか。柳が送りバントを決めて一死二三塁、猪子利男の右犠飛で2-3と追い詰める。

 南海は5回から先発の石田に代えて神田武夫をマウンドに送り込む。

 大和は5回裏、石原の当りは遊ゴロ、これをショート柳がエラー、トップに返り山田が四球を選んで無死一二塁、木村の投前送りバントをピッチャー神田が三塁に送球して二走石原は三封、キャッチャー八木の二塁牽制が悪送球となって二走山田が三塁に進み、木村が二盗を決めて一死二三塁、金子裕が四球を選んで一死満塁、木下の左邪犠飛で4-2と突き放す。ここはレフト猪子利男の「頭脳的エラー」と言えるでしょう。白線を超えたところで見送らなければならない場面ですが、猪子も内野が専門でお家の事情でレフトに入っている。名二塁手北原昇の離脱の穴は外野から万能選手国久松一がセカンドに回って埋めており、そのあおりを食って猪子がレフトに回っているのですが、既にレフトを1ヶ月やっているので猪子のセンスであればファウルと判断して見送らなければならない。但し、物資不足で外野まで白線が引かれていなかった可能性も考慮すべきかもしれませんが、いくら何でもそれはないでしょうね。


 この貴重な追加点が効いて大和が逃げ切る。リリーフの石原繁三は無安打3四球2三振無失点のピッチングであった。


 

2015年9月21日月曜日

17年 大洋vs阪神 12回戦


10月3日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 大洋 48勝28敗5分 0.632 野口明 重松通雄
0 0 0 0 0 1 3 0 X 4 阪神 40勝37敗5分 0.519 若林忠志

勝利投手 若林忠志 18勝11敗
敗戦投手 野口明       0勝1敗

勝利打点 野口昇 2


野口明、5年ぶりの登板

 大洋は野口明が先発。野口明の登板は昭和12年以来のこととなる。打っては四番に入り、「四番ピッチャー野口明」。

 阪神先発の若林忠志は安定した投球で4回まで三者凡退を続けるパーフェクトピッチング。5回、二死後浅岡三郎に初安打を許すが、佐藤武夫を遊飛に打ち取る。6回、先頭の祖父江東一郎に左前打を許し、宇野錦次は三振に打ち取るが、トップに返り中村信一に中前打を打たれて一死一二塁とこの試合初めてのピンチ、しかし濃人渉を浅い中飛、野口二郎を二ゴロに打ち取る。

 5年ぶりのマウンドに上がった野口明は5回まで阪神打線を無得点に抑える。

 阪神は6回、先頭の山口政信が四球を選んで出塁、藤井勇は左飛に倒れるが山口は二盗に成功、門前真佐人も四球を選んで一死一二塁、若林は右飛に倒れて二死一二塁、野口昇が左前にタイムリーを放ち1点を先制する。

 阪神は7回、一死後塚本博睦の遊ゴロをショート濃人がエラー、この日二番に入ったカイザー田中義雄が左前打を放ち一死一二塁、山口が四球を選んで一死満塁、藤井の二ゴロでセカンド宇野はバックホームするがセーフ、野選が記録されて2-0としてなお一死満塁、門前が追撃の2点タイムリーを左前に放って4-0として試合を決めた。

 野口明は7回で降板し、8回から重松通雄が登板する。

 若林忠志は7回以降の3イニングを三者凡退に抑え、3安打無四球3三振で今季2度目の完封で18勝目、三者凡退は7度を記録した。


 野口明から決勝打を放って勝利打点を記録した野口昇について、翌日の読売新聞に掲載された鈴木惣太郎の論評は「強肩を利した野口(阪神)の遊撃大活躍は素晴らしかった」と論じている。野口昇はこの試合6個の補殺を記録している。


 野口明は昭和12年春季リーグ戦において、全盛期の沢村栄治 にも見劣りしない投球を見せた。当ブログが選出する12年春の月間MVP投手部門は、第一期・沢村栄治 、第二期・西村幸生、第三期・野口明、第四期・沢村栄治であった。(12年春は約1ヶ月毎に第一期~四期のスケジュールで行われました。)



*若林忠志は3安打完封、野口明は5年ぶりの登板であった。



 

2015年9月20日日曜日

17年 巨人vs朝日 12回戦


10月3日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 2 0 0 1 0 2 5 巨人 54勝24敗4分 0.692 川畑博
0 3 0 0 1 3 0 2 X 9 朝日 35勝41敗5分 0.461 林安夫 内藤幸三 林安夫

勝利投手 内藤幸三 1勝5敗
敗戦投手 川畑博     0勝4敗
セーブ    林安夫   3

勝利打点 なし

猛打賞 (朝)広田修三 1、浅原直人 2


先発の林安夫がセーブ

 巨人は川畑博、朝日は林安夫の先発で午後0時30分、沢東洋男主審の右手が上がり試合開始。


 朝日は初回、先頭の坪内道則の当りは左飛、これをレフト伊藤健太郎が落球、原秀雄は二飛に倒れるが、広田修三の遊ゴロもショート白石敏男がエラーして一死一二塁、浅原直人の三ゴロは一塁に送られてツーアウト、ここで二走坪内が三塁ベースを蹴ってホームに突進、しかしファースト永沢富士雄は落ち着いてホームに送球してタッチアウト、ファーストが若手の小暮力三であれば面白い狙いであったかもしれないが、ベテランの永沢には通じなかった。

 朝日は2回、一死後岩田次男が中前打で出塁、早川平一の遊ゴロを白石が二塁に送球するがセーフ、野選が記録されて一死一二塁、酒沢政夫のライト線ヒットで二走岩田が三塁ベースを蹴ってホームを突くが、ライト中島治康からの返球にタッチアウト、二死一三塁から斉藤忠二の三ゴロをサード青田昇が一塁に悪送球する間に三走早川が還って1点を先制、一走酒沢は三塁に進み、斉藤が二盗を決めて二死二三塁、坪内の遊ゴロをショート白石が一塁に悪送球する間に三走酒沢が還って2-0、一走酒沢は三塁に進み、坪内が二盗を決めて再度二死二三塁、原秀雄の中前タイムリーで3-0、二走坪内も三塁ベースを蹴ってホームを狙うがセンター呉波からの返球をカットしたピッチャー川畑がホームに送球して「8-1-2」の中継プレーでタッチアウト、結局3点止まりであった。

 巨人はここまで4エラーで川畑は3失点ながら自責点はゼロ、ベテラン永沢の落ち着いたプレーと、中島、呉の2つの好返球で何とか3失点に止めた。

 3回まで無安打の巨人は4回、2回にタイムリーエラーを犯した青田が右前打で出塁、同じくタイムリーエラーの白石も左前打を放って無死一二塁、好返球の中島がレフトにタイムリーを放って1点返し1-3、無死一二塁のチャンスが続くがピッチャー林からの牽制に二走白石が刺されて一死一塁、伊藤の遊ゴロの間に中島は二進、永沢に代わる代打小暮が右前にタイムリーを放って2-3と追い上げる。

 朝日は5回から先発の林をライトに回して内藤幸三をマウンドに送り込む。内藤は5回に2四球を出したが無失点。

 朝日は5回裏、先頭の広田が左前打、浅原のバントは内野安打となって無死一二塁、ライトに回った林の送りバントは一飛となって失敗、岩田が四球を選んで一死満塁、リリーフ内藤の初打席は左前タイムリーとなって4-2と突き放す。

 これで気を良くした内藤は6回を三者凡退に抑える。

 朝日は6回裏、先頭の坪内が三塁線にセーフティバントを決めて出塁、原が三前に送りバントを決めて一死二塁、広田の左前タイムリーで5-2、浅原のセンター左奥への二塁打で広田が還り6-2、センター呉からの返球が乱れる間に浅原は三塁に進み、林の三ゴロの間に生還して7-2と大きくリードする。

 巨人は7回、二死後6回に悪送球した呉がレフト線に二塁打、青田がライトにタイムリーを放って3-7、白石は四球、中島も四球を選んで二死満塁の大チャンス、しかし6回の守備から伊藤に代わってレフトに入っていた林清一は一ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。ここは代打須田博の手があったのではないか。巨人は7回の守備からサードを青田から小池繁雄に代えたが、青田は外野もできるので林の次のレフトに回せばよいのである。

 巨人は8回、先頭の小暮力三がストレートの四球で出塁、坂本茂の二ゴロの間に小暮は二進、多田文久三は遊飛に倒れるが、川畑が中前打、トップに返り呉も四球を選んで二死満塁、しかし小池は捕邪飛に倒れて無得点。ここも7回裏の守備から青田を小池に代えた策が裏目に出たと言える。(ここで翌日の読売新聞を読んでみたら、鈴木惣太郎の論評も「それにしても7回青田を小池にかえたのは頗る拙なく8回に得点機を失ていた」と論じている。)

 朝日は8回裏、先頭の広田が左前打、浅原が左中間に二塁打を放って無死二三塁、ここで林が左前に2点タイムリーを放って9-3とダメ押す。朝日は林を残しておいた策が成功した。

 しかし巨人は9回に粘りを見せた。先頭の白石がストレートの四球で出塁、中島は三振に倒れるが、林がショートに内野安打、小暮も四球を選んで一死満塁、ここで坂本の二ゴロをセカンド原が痛恨のエラー、三走白石に続いて二走林も還って5-9、多田文久三も四球を選んで再度一死満塁、巨人はここで川畑に代えて代打須田を送る。須田の初球がボールになると朝日竹内愛一監督は内藤に代えてライトに入っていた林安夫に再登板を命じる。林は須田を三振に打ち取り、最後は呉を投ゴロに抑えて朝日が逃げ切った。


 巨人は9安打10四球5得点で14残塁、朝日は16安打3四球9得点で12残塁、試合終了は2時半で試合時間は2時間ちょうどであった。


 内藤幸三は4回3分の1を投げて4安打9四球3三振と四球を連発しながらぎりぎり凌いで今季初勝利をあげる。このところ投球内容が良いので勝利投手となるのも時間の問題であった。林安夫は先発して4イニングを投げてからライトに回り、9回4点差で一死満塁の場面に再登板して後続を抑え、セーブを記録した。


 

17年 名古屋vs南海 13回戦


10月1日 (木) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0  0 名古屋 28勝49敗4分 0.364 石丸進一
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0  1X 1 南海    40勝40敗 0.500 川崎徳次

勝利投手 川崎徳次 13勝12敗
敗戦投手 石丸進一 12勝15敗

勝利打点 中野正雄 3

猛打賞 (名)桝嘉一 1


川崎徳次、粘りの完封

 川崎徳次と石丸進一による投げ合いは南海が延長11回サヨナラ勝ちしたが、試合は名古屋が押し気味に進行した。

 名古屋は2回、二死後ではあるが桝嘉一が左前打、石丸進一が四球を選んで走者をスコアリングポジションに進めたが田中金太郎は左飛に倒れる。

 名古屋は5回、先頭の桝が四球で出塁すると石丸進一がバントで送って一死二塁、しかし田中は三振、芳賀直一も連続三振に倒れて無得点。

 名古屋は6回、一死後岩本章が四球で出塁、古川清蔵は中飛に倒れるが、吉田猪佐喜の右前打で二死一三塁、しかし小鶴誠は中飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 名古屋は7回、先頭の桝が左前打で出塁、石丸進一の三前送りバントをサード増田敏が二塁に送球するがセーフ、犠打と野選が記録されて無死一二塁、田中の投前送りバントをピッチャー川崎が三塁に送球、今度は二走桝を三封して一死一二塁、芳賀は右飛に倒れるが、トップに返り石丸藤吉の中前打で二死満塁、しかし岩本章が二ゴロに倒れてこの回も無得点。

 名古屋は8回、一死後吉田が右前打で出塁、小鶴の二ゴロの間に吉田は二進、ここまで3安打の桝が敬遠されて二死一二塁、石丸進一は遊ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 名古屋は10回、先頭の岩本章が中前打で出塁、しかし古川は右飛、吉田の遊ゴロが「6-4-3」と渡ってダブルプレー。

 名古屋は11回、先頭の小鶴が四球を選んで出塁、桝がこの日3安打目となる右前打を放って無死一二塁、しかし石丸進一は一邪飛、二走小鶴がタッチアップから三塁を狙うがファースト中野から三塁に送球されてダブルプレー、田中は投飛に倒れてここも無得点。

 名古屋先発の石丸進一は6回まで無安打ピッチング。7回、二死後岡村俊昭が四球から二盗、中野に初安打となる左前打を許して二死一三塁、ここは川崎を中飛に打ち取る。9回、先頭の猪子利男に左前打を許し、国久松一に送られ、岩本義行を歩かせて一死一二塁、岡村に右前打を許して一死満塁の大ピンチを迎えるが、中野を三飛に打ち取り、川崎の三ゴロでサード芳賀が三塁ベースを踏んで延長に突入。

 南海は10回裏、一死後八木進が左前打で出塁するが、トップに返り柳鶴震の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。

 南海は11回裏、先頭の猪子がツースリーから四球を選んで出塁、国久の一塁線バントが内野安打となって無死一二塁、岩本義行が送りバントを決めて一死二三塁、石丸進一は岡村を敬遠して一死満塁、中野がワンスリーからサヨナラの押出し四球を選んで南海が辛勝する。


 川崎徳次は11回を7安打5四球4三振に抑えて今季4度目の完封、13勝目をあげる。

 石丸進一は10回3分の1を投げて5安打8四球1失点、最後はスタミナ切れとなった。


 強打の名古屋打線は飛ぶボールであると真価を発揮するが、飛ばないボールには対応しきれていない。


 

2015年9月18日金曜日

17年 大和vs阪急 13回戦


10月1日 (木) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 大和 20勝51敗9分 0.282 石原繁三
0 0 0 1 0 0 1 0 X 2 阪急 41勝36敗4分 0.532 天保義夫 森弘太郎

勝利投手 天保義夫   6勝4敗
敗戦投手 石原繁三 14勝22敗
セーブ     森弘太郎  6

二塁打 (急)山下好一、日比野

勝利打点 山下好一 6


2本の二塁打

 阪急は4回、一死後上田藤夫の当りは二塁をライナーで襲うが、これをセカンド木村孝平がエラー、黒田健吾は遊飛に倒れて二死一塁、山下好一の左中間二塁打で一走上田がホームインして1点を先制する。

 阪急は7回、一死後森田定雄の当りは三ゴロ、これをサード鈴木秀雄がエラー、森田が二盗を決めて一死二塁、日比野武の右中間二塁打で森田が還り2-0とする。4回と同じような得点経過であった。

 阪急先発の好調・天保義夫はヒットを打たれながらも無失点。9回、先頭の木村に四球を与え、金子裕に中前打を許して無死一二塁、阪急ベンチはここでリリーフに森弘太郎を送る。木下政文は中飛、富松信彦は三振、最後は小松原博喜が三ゴロに倒れて阪急が完封リレー。

 大和戦発の石原繁三は8回を完投して5安打無四球無三振、2失点であったが自責点はゼロであった。

 天保義夫は8回3分の0を投げて8安打2四球無三振無失点で6勝目、でリリーフの森弘太郎は6セーブ目を記録した。


 阪急はエラーのランナーを山下好一、日比野武が放った2本の二塁打で還して快勝した。



*天保義夫-森弘太郎で完封リレー。



 

2015年9月16日水曜日

17年 巨人vs阪神 12回戦


10月1日 (木) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
3 0 3 0 2 0 1 1 0 10 巨人 54勝23敗4分 0.701 須田博
1 0 0 0 0 0 0 0 0  1  阪神 39勝37敗5分 0.513 御園生崇男 渡辺誠太郎

勝利投手 須田博        16勝6敗
敗戦投手 御園生崇男 11勝12敗

二塁打 (巨)呉

勝利打点 白石敏男 6

猛打賞 (巨)呉波 4、白石敏男 4


巨人打線15安打10得点

 この日のスコアカードには「用球の反発力普通となる」と書かれている。

 第一試合の野口二郎は2安打完封、第二試合の須田博は1安打1失点完投で、確かに用球の反発力は普通に戻ったようである。一方、第二試合の巨人は15安打10得点。ところが、15安打のうち長打は呉波の二塁打1本で14本はシングルヒット、やはり用球の反発力は普通に戻ったようである。


 巨人は初回、先頭の呉が初球を叩いてレフト線に二塁打、青田昇も初球を三遊間ヒットして無死一三塁、白石敏男も初球を左前に運び3球で1点を先制、なお無死一三塁から中島治康の二ゴロで白石が二封される間に三走青田が還り2-0、伊藤健太郎の左前打で一死一二塁、永沢富士雄の二ゴロをセカンド三輪裕章がエラーする間に二走中島が還ってこの回3点を先制する。

 阪神は1回裏、二死後山口政信の遊ゴロをショート白石がエラー、門前真佐人の左飛をレフト伊藤が落球して二死一三塁、ワイルドピッチで三走山口が還って1-3とする。

 巨人は3回、先頭の白石が三塁に内野安打、中島の三ゴロをサード乾国雄がエラー、伊藤が送って一死二三塁、永沢は捕飛に倒れるが坂本茂が四球を選んで二死満塁、須田博の左前打で白石、中島に続いて一走坂本までもが生還して6-1、須田にはこの一打で3打点が記録された。

 巨人は5回、先頭の永沢が中前打、坂本の二ゴロをセカンド三輪裕章が又もやエラー、須田は遊飛に倒れるが、ボークで二者進塁、多田文久三の左前タイムリーで7-1、トップに返り呉のピッチャー強襲ヒットもタイムリーとなって8-1とする。


 巨人は7回、二死後呉が四球を選んで出塁、青田が中前打で続いて二死一二塁、白石の中前タイムリーで9-1とする。更に8回、一死後7回から永沢に代わってファーストに入っている小暮力三が四球で出塁、坂本が送って二死二塁、須田の中前タイムリーで10-1と大差を付ける。

 須田博は1安打3四球3三振1失点、自責点ゼロで完投、16勝目をあげる。打たれた1本は公式記録では「ショートへの内野安打」、翌日の読売新聞には「7回山口に遊撃右を抜かれた」と書かれている。


 ミッドウェー海戦の敗北から約3か月、国民には伏せられていたが危機感を抱いた軍部は大量の人員を戦地に送り込み、9月にはプロ野球からも各球団大量応召となってメンバーが大幅に入れ替わった。阪神は内野陣の補充ができず、本日もサード乾国雄が1エラー、セカンド三輪裕章が2エラーで全て失点に結びついた。巨人も川上哲治、水原茂、楠安夫、広瀬習一、中尾輝三らが抜けたが、川上の穴をベテラン永沢富士雄と新鋭小暮力三が埋め、水原の穴をルーキー青田昇が埋め、楠に代わってマスクを被る多田文久三も大過なく役目を果たし、投手陣の穴を藤本英雄が埋めることにより、一時大洋に追い詰められたもののこの後独走態勢を築いていくこととなる。


 

2015年9月15日火曜日

17年 大洋vs朝日 12回戦


10月1日 (木) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 2 0 0 0 0 0 0 2 大洋 48勝27敗5分 0.640 野口二郎
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 朝日 34勝41敗5分 0.453 内藤幸三

勝利投手 野口二郎 30勝12敗
敗戦投手 内藤幸三   0勝5敗

勝利打点 野口二郎 9


野口二郎、三者凡退7度で14回目の完封、30勝に乗せる

 このところ後楽園の第一試合は午後1時開始であるがこの試合の開始時間は1時32分であった。「雑記」欄によると「警戒警報が解除」されてから試合開始となって予定より遅れたようだ。この日、米機が来襲したかは不明。


 大洋は3回、先頭の祖父江東一郎は4球ファウルで粘るが空振り、キャッチャー斉藤忠二が捕れず祖父江は一塁に走る。白球を拾いあげた斉藤が一塁に送球、タイミングはアウトであったが悪送球となって一塁セーフ、更にパスボールで祖父江は二進、宇野錦次は一飛に倒れて一死二塁、トップに返り中村信一は四球、濃人渉も四球を選んで一死満塁、野口二郎の右前タイムリーで祖父江が還って1点を先制、野口明が3球ファウルで粘って押出し四球を選び2-0とする。

 朝日先発内藤幸三の無失点記録は26回3分の1でストップした。

 朝日は4回まで三者凡退。3回、4回は2三振であった。5回、先頭の浅原直人が四球を選んで初めての走者を出すが、内藤は右飛、広田修三は捕邪飛、岩田次男は二飛に倒れる。

 6回も三者凡退の朝日は7回、二死後浅原が二塁に初安打となる内野安打、内藤の中前打で二死一三塁、内藤が二盗を決めて二死二三塁と一打同点のチャンス、しかし広田は2打席連続の捕邪飛に倒れて無得点。8回、9回は三者凡退に終わった。


 野口二郎は2安打1四球5三振で今季14度目の完封、30勝に乗せた。三者凡退7度を記録した。打っても決勝打を放ち勝利打点をあげた。


 朝日は伊勢川真澄が応召して斉藤忠二がマスクを被ったが悪送球と捕逸で失点につながった。この後広田修三との併用となる。


 

2015年9月14日月曜日

17年 第18節 週間MVP



 今節は朝日が2勝0敗2分、阪急が3勝1敗1分、大洋が2勝2敗、南海が2勝2敗、名古屋が2勝3敗、巨人が2勝3敗、阪神が1勝2敗2分、大和が1勝2敗1分であった。

 9月24日から後楽園球場では久保田製のニューボールが使用された。この結果、24日~28日の後楽園での8試合では合計73得点であったが、飛ばないボールを使用した甲子園での8試合では合計25得点に過ぎなかった。個人記録にも大きく影響を与えているので、この点を考慮した上で選考した。


週間MVP

投手部門

 朝日 林安夫 5

 今節2勝0敗2完封。

 朝日 内藤幸三 1

 今節2試合に登板して23回3分の1を投げて失点0。2試合とも引分けであった。

 大洋 古谷倉之助 1

 9月26日の後楽園球場での南海戦で、久保田製の飛ぶボールながら南海打線を完封。今節は5試合の完封試合と2試合の0対0引分け試合があったが、後楽園での完封は古谷だけであった。

 阪急 天保義夫 1

 今節2勝0敗1完封。27日の大和戦は4安打完封であったが、4本とも内野安打であった。


打撃部門

 大和 木村孝平 2

 飛ばないボールの甲子園で18打数7安打。

 阪神 塚本博睦 1

 飛ばないボールの甲子園で25打数9安打。

 巨人 中島治康 4

 久保田製の飛ぶボールで20打数8安打3本塁打。

 名古屋 古川清蔵 1

 久保田製の飛ぶボールで20打数7安打2本塁打。

 大洋 野口明 1

 久保田製の飛ぶボールで17打数8安打1本塁打。


殊勲賞

 朝日 室脇正信 1

 9月27日の阪神戦で延長13回サヨナラ打。

 巨人 青田昇 1

 今節19打数9安打。28日の南海戦では決勝の逆転二塁打。

 大洋 佐藤武夫 1

 24日の巨人戦で満塁走者一掃逆転二塁打。



敢闘賞

 朝日 五味芳夫 1

 応召直前の2試合で9打数4安打を記録する。生き延びた五味は戦後、昭和23年に大洋
ロビンスに復帰するが、1試合に出場したのみで1盗塁を記録してプロ野球界を去ることとなる。

 大洋 野口二郎 1

 今節19打数7安打。

 南海 岩本義行 3

 今節12打数5安打。



技能賞

 朝日 伊勢川真澄 6

 26日の阪神戦で4つの盗塁を刺して4補殺を記録する。

 南海 柳鶴震 2

 27日の名古屋戦まで13試合連続安打を記録する。


 
 

2015年9月13日日曜日

17年 阪急vs朝日 12回戦


9月28日 (月) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
1 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0  1 阪急 40勝36敗4分 0.526 小田野柏 森弘太郎
0 0 0 0 0 0 0 1 0  0   0  1 朝日 34勝40敗5分 0.459 渡辺時信 内藤幸三

二塁打 (朝)内藤
三塁打 (急)山下好一 (朝)広田

勝利打点 なし


内藤幸三、この日も8回3分の1を無失点

 阪急は初回、先頭の西村正夫が四球から二盗に成功、フランク山田伝は三振、上田藤夫の二ゴロの間に二走西村は三進、黒田健吾が四球を選んで二死一三塁、ワイルドピッチで三走西村が還り1点を先制する。

 2回は三者凡退に終わった阪急は3回、先頭の中村栄が四球で出塁、トップに返り西村の三前バントが内野安打となって無死一二塁、山田の中飛に二走中村が飛び出しておりセンター坪内道則からセカンド原秀雄に送球されてダブルプレー、上田が四球を選んで二死一二塁、朝日竹内愛一監督はここで先発の渡辺時信から内藤幸三にスイッチ、黒田健吾の三ゴロをサード岩田次男がベースを踏んでスリーアウトチェンジ。

 阪急は6回、一死後山下好一がライト線に三塁打を放って一死三塁、しかし山下は「2-5-1C」でタッチアウト。スクイズが外されたか、サインの見間違いかは定かではない。関西の試合ではスコアカードの「雑記」欄に山内以九士が経緯を記載することが多いが、この試合では何も書かれていない。

 阪急は8回、山田がセーフティバントを決めて出塁、上田が送って一死二塁、黒田は中飛に倒れるが山下好一が4球ファウルで粘って四球を選び二死一二塁、森田定雄も四球を選んで二死満塁とするが、日比野武は中飛に倒れてこの回も無得点。

 朝日は8回裏、先頭の内藤がレフト線に二塁打、酒沢政夫の二ゴロをセカンド上田がエラーして無死一三塁、トップに返り坪内の右犠飛で1-1と追い付く。

 9回以降は両軍無安打、延長11回引き分けた。


 朝日二番手の内藤幸三は26日の阪神戦でも延長15回を無失点に抑えて引き分けているが、この日も8回3分の1を投げて3安打6四球3三振無失点。これで24回3分の1無失点を継続中である。打っても8回に貴重な二塁打を放って同点のホームを踏んだ。


 

三冠への道 2015 その14 サイ・ヤング予想



 ナ・リーグのサイ・ヤング賞争いが激烈になってきました。

 当ブログの年初予想ではゲリット・コールでしたが現在16勝8敗、防御率2.54、奪三振175、被打率2割4分1厘、WHIP1.12と数字が上がらず脱落。メッツ期待のジェイコブ・デグロムは13勝7敗、防御率2.40、奪三振184、被打率2割1分0厘、WHIP0.97と健闘していますが少し足りない。但し、両人は5年以内にサイ・ヤング賞を受賞するのではないでしょうか。

 候補筆頭のザック・グリンキーは16勝3敗、防御率1.68、奪三振174、被打率1割9分2厘、WHIP0.86と抜群の安定感。クレイトン・カーショウは259奪三振が光りますが今年はないでしょう。

 ここにきて急浮上してきたのがジェイク・アリエタで、19勝6敗、防御率1.99、奪三振204、被打率1割9分4厘、WHIP0.92と、20勝&防御率1点台が見えてきましたので十分あり得る。アリエタを「アリエッタ」の表記にしてしまうとこのネタが使えなくなるので、当ブログでは「アリエタ」の表記にしています(笑)。



 ア・リーグはダラス・カイケルで行けそうですね。現在17勝7敗、防御率2.22、奪三振192、被打率2割1分2厘、WHIP1.00。奪三振の少なさが気になっていましたが、200個に乗せてくれば問題ないでしょう。ヒューストン・アストロズの快進撃を支えてきたカイケルはMVPの方が相応しいのですが、MVPはジョシュ・ドナルドソンで動きそうにない。

 スクリューボールのようなチェンジアップを駆使する技巧派でサイ・ヤング賞投票では不利になりますが、アストロズ快進撃の立役者としての得票を集めるでしょう。「Keuchel」を「カイケル」とする日本語表記の難しさは、「Cuellar」以来ではないでしょうか。1969年サイ・ヤング賞のマイク・クエイヤーは「キュエラー」などと表記されることもあるようですが、1971年の日米野球でボルチモア・オリオールズ20勝カルテットの一員として来日した時から「クエイヤー」と呼ばれていました。

 日本人が初めてスクリューボールを見たのは、マイク・クエイヤーが1971年の日米野球で投げた時です。ダラス・カイケルのチェンジアップがスクリューボールのように見えるのも何かの因縁でしょうか。


 

2015年9月12日土曜日

17年 阪神vs大和 12回戦


9月28日 (月) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 3 0 0 0 0 0 0 5 阪神 39勝36敗5分 0.52 玉置玉一 木下勇 渡辺誠太郎 御園生崇男
1 1 0 0 0 3 0 1 X 6 大和 20勝50敗9分 0.286 畑福俊英 石原繁三
 
勝利投手 石原繁三     14勝21敗
敗戦投手 御園生崇男 11勝11敗

二塁打 (神)藤井、塚本、野口
三塁打 (神)藤井

勝利打点 木村孝平 3

猛打賞 (神)塚本博睦 3、藤井勇 2 (和)木村(4安打) 4


木村孝平5打数4安打

 阪神は初回、一死後御園生崇男が左前打で出塁、カイザー田中義雄の三ゴロをサード鈴木秀雄がエラー、ダブルスチールを決めて一死二三塁、四番・山口政信の遊ゴロの間に三走御園生が還って1点を先制する。

 大和は1回裏、一死後木村孝平が二遊間に内野安打、金子裕の投ゴロの間に木村は二進、木下政文の右翼線タイムリーで1-1の同点に追い付く。

 阪神は2回、先頭の藤井勇がライト線に二塁打、門前真佐人は四球を選んで無死一二塁、玉置玉一の投ゴロは「1-4-3」と渡ってダブルプレー、二死三塁となって野口昇が左前にタイムリーを放ち2-1と勝ち越す。

 大和は2回裏、一死後鈴木が四球から二盗に成功、渡辺絢吾も一塁内野安打から二盗を決めて一死二三塁、畑福俊英の遊ゴロをショート野口がエラーする間に三走鈴木が還り2-2の同点とする。

 阪神は3回、先頭の塚本が中越えに二塁打、大和ベンチはここでセンターを渡辺から杉江文二に交代、大和は寺内一隆監督が応召して苅田久徳が監督兼選手として入団するのはもう少し先のことで、この頃は畑福が代理監督を務めている。果たして畑福投手が自らセンター交代の指示をしたのか、続く高齢者の石原繁三か金子裕が指示を出しているのか微妙である。御園生は三ゴロに倒れ、田中がストレートの四球を選んで一死一二塁、山口の三ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、藤井の一塁内野安打で3-2、藤井が二盗を決めて二死二三塁、門前の三塁内野安打で三走田中も還り4-2、二死一三塁から一走門前がディレードスチール、一二塁間に挟まれて「1-4-3-6-1」と渡る粘りを見せる間に三走藤井がホームに還り5-2、門前はタッチアウトとなり盗塁失敗が記録されたが好走塁であった。

 大和先発の畑福は3回まで5点を失ったが4回以降阪神に得点を許さず味方の反撃を待つ。

 阪神は細かな継投で大和打線に得点を許さない。5回、先頭の畑福に左前打を許すと勝利投手の権利を有する先発の玉置玉一を下げて木下勇を投入し後続を抑える。6回、木下勇が木下政文、富松信彦に連続四球を与えると三番手として渡辺誠太郎を投入、しかしこれは裏目に出た。小松原博喜の投ゴロで一走冨松が二封されて一死一三塁、小松原が二盗を決めて一死二三塁、鈴木の一ゴロで三走木下がホームに突っ込み、ファースト藤井がバックホームするがセーフ、野選が記録されて3-5、鈴木も二盗を決め、杉江は浅い中飛に倒れて二死二三塁、畑福が左前に同点の2点タイムリーを放ち5-5と追い付く。

 阪神は7回裏からライトの御園生をマウンドに送り込む。更に、ここまで4盗塁を許している門前をファーストに回して、サードの田中がマスクを被る。

 阪神は8回、先頭の山口が四球を選んで出塁、大和ベンチはここで畑福から石原繁三にスイッチ、石原は後続の3人を抑える。

 大和は8回裏、一死後杉江がストレートの四球で歩くと二盗に成功、石原の遊ゴロの間に杉江は三進、トップに返り山田潔は四球から二盗に成功して二死二三塁、木村が二遊間にタイムリーを放って6-5と勝ち越す。

 阪神は9回、先頭の野口が左中間に二塁打、しかし三輪裕章に代わる代打若林忠志監督の送りバントは一邪飛となって失敗、トップに返り塚本の左前打で二走野口は三塁にストップして一死一三塁、御園生の遊ゴロが「6-4-3」と渡って試合終了、大和が見事な逆転勝利を飾った。


 大和は6盗塁を決めて快勝。決勝打を放った木村孝平は5打数4安打で猛打賞を獲得した。並列の殊勲者は6回に同点タイムリーを放った畑福俊英代理監督であった。


 大和の勝因の一つが8回の継投策であった。代理監督を務める畑福が自らマウンドを降りる決断をしたのか定かではないが、畑福は監督としての資質が高かった可能性が高い。畑福は戦後、専修大学松戸高等学校野球部の監督に就任することとなる。畑福の教えは2015年に花開き、専大松戸は甲子園に初出場することとなる。


 

2015年9月10日木曜日

17年 名古屋vs大洋 11回戦


9月28日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
0 0 0 1 1 0 0 0 0  0   3  5 名古屋 28勝48敗4分 0.368 石丸進一 西沢道夫 森井茂
0 0 1 1 0 0 0 0 0  0   0  2 大洋     47勝27敗5分 0.635 重松通雄 古谷倉之助

勝利投手 森井茂        2勝8敗
敗戦投手 古谷倉之助 3勝3敗

二塁打 (名)石丸進一、吉田、芳賀 (大)古谷、濃人
三塁打 (大)中村
本塁打 (名)古川 7号

勝利打点 古川清蔵 9

猛打賞 (名)岩本章 2


古川清蔵決勝スリーラン

 大洋は3回、先頭の中村信一は右中間に三塁打、濃人渉の三ゴロをサード芳賀直一がエラーする間に中村が還って1点を先制する。

 名古屋は4回、先頭の吉田猪佐喜が中越えに二塁打、小鶴誠は四球、桝嘉一の左前打で無死満塁、田中金太郎の三ゴロで三走吉田は本封、石丸進一に代わる代打西沢道夫の遊ゴロの間に三走小鶴が還って1-1の同点に追い付く。

 大洋は4回裏、二死後重松通雄が左前打、宇野錦次が四球を選んで二死一二塁、トップに返り中村の中前タイムリーで2-1と勝ち越す。

 名古屋は5回、先頭の石丸藤吉が中前打、大洋ベンチはここで先発の重松から古谷倉之助にスイッチ、岩本章の左前打で無死一二塁、古川清蔵が中前に同点タイムリーを放って2-2とする。

 名古屋は二番手の西沢、7回から登板した三番手の森井茂が好投を続けて大洋打線は無得点が続く。

 大洋二番手の古谷も名古屋打線を抑えて試合は延長11回へと進む。

 名古屋は11回表、一死後石丸藤吉が四球で出塁、岩本章もとが左前打を放って一死一二塁、ここで古川がレフトに決勝の第7号スリーランを放ち5-3とする。古川はこの一発で本塁打王争い単独トップに立った。


 名古屋は久保田製の飛ぶボールが採用されてから打線が好調、戦前では最強のホームランバッターが並ぶ打線が機能している。


 

2015年9月9日水曜日

17年 南海vs巨人 11回戦


9月28日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 1 0 0 0 0 0 2 南海 39勝40敗 0.494 石田光彦 川崎徳次 神田武夫
1 0 0 0 0 0 3 0 X 4 巨人 53勝23敗4分 0.697 川畑博 須田博

勝利投手 須田博     15勝6敗
敗戦投手 川崎徳次 12勝12敗

二塁打 (南)岩本 (巨)青田

勝利打点 青田昇 2


青田昇、逆転二塁打

 南海は初回、先頭の柳鶴震の遊ゴロをショート白石敏男がエラー、猪子利男が四球を選んで無死一二塁、続く国久松一の当りはライトライナー、ライト中島治康は一塁に送球してツーアウト、ファースト永沢富士雄が二塁に送球してスリーアウト、三重殺が記録された。翌日の読売新聞は「劈頭中島が国久の右前難球を好捕して三重殺に斥ける美技」と伝えている。

 巨人は1回裏、先頭の呉波がツーナッシングと追い込まれながら四球を選んで出塁、青田昇は中飛、白石は三飛に倒れるが呉が二盗に成功、中島が左前に先制タイムリーを放って1-0とする。初回は中島の好守に亘る活躍が目に付いた。

 南海は2回、先頭の岩本義行が左中間に二塁打、岡村俊昭の一ゴロの間に岩本は三進、中野正雄は四球を選んで一死一三塁、石田光彦の右犠飛で1-1の同点に追い付く。

 巨人は3回から先発の川畑博に代わって須田博がマウンドに上る。

 南海も3回裏巨人の攻撃で先頭の多田文久三が四球で歩くと先発の石田から川崎徳次にスイッチ。

 南海は4回、先頭の岩本がストレートの四球で出塁、岡村が投前に送りバントを決めて一死二塁、ここで岩本が三盗に成功、中野は三振に倒れて二死三塁、川崎の二ゴロをセカンド坂本茂がエラーする間に三走岩本が還って2-1と勝ち越す。

 須田は代わってから南海打線を無安打に抑える好投を続けて味方の反撃を待つ。

 巨人は7回、一死後須田が左前打を放って出塁、多田文久三もレフト線にヒットで続いて一死一二塁、ここで南海ベンチは川崎から三番手の神田武夫にスイッチ、トップに返り呉の二ゴロをセカンド国久がエラーして一死満塁、青田が左中間に二塁打を放ち3-2と逆転、レフト猪子からの返球が乱れる間に一走呉も還って4-2として勝負を決める。


 2打点をあげた青田昇が早くもプロ入り2個目の勝利打点を記録。


 巨人は初回の守備で昭和14年6月17日の名古屋戦以来となる三重殺を記録した。


 南海はセカンド国久松一とレフト猪子利男の失策が響いた。名セカンド北原昇を欠いた南海は国久をセカンドに戻し猪子を外野に回しているが、本日はそのツケが回ってきたのである。


 須田博は7回を無安打3四球4三振1失点、自責点1の力投で15勝目をあげる。敗戦投手は残した2走者が得点したため川崎徳次に記録されたが、青田に逆転の二塁打を許したのは神田武夫であった。