2010年9月30日木曜日

12年秋 阪急vsジャイアンツ 3回戦

10月9日 (土) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急              10勝11敗2分  0.476  笠松実 中田武夫
0 6 1 0 0 0 1 0 X 8 ジャイアンツ  16勝7敗          0.696  スタルヒン


勝利投手 スタルヒン 8勝2敗
敗戦投手 笠松実   3勝5敗


二塁打 (ジ)筒井
本塁打 (ジ)永澤 1号、2号
 
スタルヒン、完封でハーラー単独トップ


 ジャイアンツは2回、先頭の白石敏男が中前打で出塁、永澤富士雄が右翼スタンドにホームランを放ち2-0。内堀保中前打、スタルヒン右前打、トップに返り前川八郎中前タイムリーで3-0として笠松実をKO、中田武夫がリリーフに登場、筒井修の左翼線二塁打で4-0、水原茂が中前に2点タイムリーを放って6-0とする。ジャイアンツはここまで無死から7連続安打、中島治康の遊ゴロで記録は途切れるが新記録を樹立する。
 ジャイアンツは3回にキャッチャー大原敏夫の悪送球で1点、7回には永澤がこの日二本目のホームランを右翼スタンドに叩き込んで8-0。
 スタルヒンは6安打2四球7三振の完封で8勝目。西村幸生、野口明、畑福俊英と7勝で並んでいたが一歩抜け出す。

12年秋 名古屋vs金鯱 3回戦

10月9日 (土) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 1 0 0 0 0 0 1 0  2   名古屋   6勝15敗2分  0.286  森井茂 田中実 繁里栄
1 3 5 0 0 0 3 1 X 13  金鯱    11勝12敗         0.478  鈴木鶴雄


勝利投手 鈴木鶴雄 5勝3敗
敗戦投手 繁里栄   0勝3敗


二塁打 (名)芳賀 (金)相原、江口
本塁打 (金)小林茂 1号
 


金鯱9盗塁


 金鯱は初回、先頭の島秀之助が四球から二盗、一死後矢野槇雄の中前タイムリーが出て1点を先制する。小林利蔵の右前打で一三塁から小林利も二盗を決めるが追加点はならず。名古屋は2回、大沢清が遊失に生き高木茂の投ゴロで大沢二進、白木一二の右前タイムリーで1-1の同点に追い付く。

 金鯱は2回裏、瀬井清四球、相原輝夫中越え二塁打で無死二三塁、鈴木鶴雄の遊ゴロに二走相原が飛び出しショート芳賀直一からセカンド石丸藤吉に送球されるが石丸が落球する間に三走瀬井が還って2-1、名古屋は早くも森井茂から田中実にスイッチ。島が中前にタイムリーを放って3-1、二走鈴木はピッチャー牽制に刺されるが島が二盗を決めて一死二塁、江口行男が右前にタイムリーを放ち4-1とする。

 金鯱は3回、先頭の小林茂太が左翼スタンドにホームラン、一死後相原四球、鈴木左翼線安打、島中前タイムリーと続き6-1としたところで三番手繁里栄が登場、繁里はコントロールが定まらず江口四球、矢野押出し四球、小林利右前タイムリー、黒澤俊夫押出し四球でこの回5点、9-1とする。金鯱は4~6回は無得点ながら4回には島秀之助がこの日三つ目の盗塁、6回には瀬井が二盗、三盗を決めるなど積極的な走塁。

 金鯱は7回、先頭の島がこの日四本目のヒットで出塁、江口の右中間二塁打で無死二三塁、ワイルドピッチで島が生還、矢野が中前タイムリー、小林利右前打、黒澤中前タイムリーでこの回3点、なお無死一三塁とし、名古屋は四番手に西沢道夫を投入、黒澤が二盗、小林茂四球で無死満塁とするがここは西沢が抑える。

 名古屋は8回、石田政良、白木のヒットと小島茂男のタイムリーで1点を返すが、金鯱は8回裏、8回から島に代わりセンターに入っている佐々木常助が四球から二盗、一死後五味芳夫の中前タイムリーで13点目、五味はパスボールで三進、小林利四球で一三塁から小林利がこの日チーム九つ目の盗塁を決める。

 大量得点に守られて鈴木鶴雄は8安打3四球2三振の完投で5勝目をあげる。島秀之助は4打数4安打1四球、4得点2打点3盗塁、今季通算3割4分9厘で首位打者に躍り出る。

2010年9月29日水曜日

一騎討ち ⑧

 ロイ・ハラデーが2安打無四球の完封で21勝目、地上最強軍フィラデルフィア・フィリーズがナショナル・リーグ西地区の優勝を決めました。

 ハラデーは今季9回目の完投、4度目の完封(完全試合1を含む)、サイ・ヤング賞はもちろんのこと、MVPの可能性も出てきたと思います。

 今季のフィリーズはチェース・アトリーの長期離脱、後半に入ってのライアン・ハワードのDL入りと飛車角落ちの戦いが続き、決して強力打線の援護に助けられたものではありません。

 今季のナショナル・リーグは投高打低の傾向が強く、打撃陣のMVP候補はジョーイ・ボット、カルロス・ゴンザレス、アルバート・プホルスに絞られていますが、ボット、ゴンザレスはこれまでの実績が無いに等しくいきなりのMVPまではどうでしょうか。

 若く勢いのあるゴンザレスには票が集まる可能性はありますが、打者有利なクアーズ・フィールドを本拠地とするロッキーズの打者にはMVP投票で票が集まった例がありません。クアーズ・フィールドでは高地による飛び過ぎを制御するため使用球の湿度管理を行っていますが、先日のジャイアンツ戦でもリンスカムがクレームを付けていたように、コロラド有利の細工をしているのではないかとの疑念が付いて回ります。2007年打率、打点圧倒的二冠のマット・ホリデーですらMVPにはなれませんでした。

 アルバート・プホルスは三冠は逃したものの本塁打はほぼ当確、打点との二冠の可能性も濃厚ですが、今年は「試合を制する一撃」が鳴りを潜めており、内容は昨年、一昨年を下回ります。三年連続となれば当然ハードルが高くなりますので、今年は厳しいのではないかと考えております。

 ジョーイ・ボットは一時はMVP候補No1でしたが、終盤勢いが鈍ってきており、票の伸び悩みが予想されます。


 ということで、ナショナル・リーグMVPは、ロイ・ハラデーのサイ・ヤング賞とのダブル受賞と予想させていただきます。ダブル受賞となれば1992年のデニス・エカーズリー以来18年ぶりとなります。近年はMVPは打者のものとなっていますが、86年ロジャー・クレメンス、84年ウィリー・ヘルナンデス、81年ロリー・フィンガース、そして私が大リーグに興味を持つきっかけとなった71年バイダ・ブルーと遡ることができます。ただし何故か全てアメリカン・リーグであり、ナショナル・リーグでは1968年のボブ・ギブソン以来となります。因みにこの年は投手の年と呼ばれており、アメリカン・リーグも現時点における最後の30勝投手であるデニー・マクレインがMVPに選出されております。

2010年9月28日火曜日

12年秋 セネタースvsライオン 4回戦 

10月7日 (木) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
4 0 0 3 2 0 0 1 0 10 セネタース  10勝11敗1分  0.476  浅岡三郎 野口明
1 2 0 2 0 0 1 0 2 8   ライオン        5勝17敗        0.227  大友一明 菊矢吉男


勝利投手 野口明   7勝6敗
敗戦投手 大友一明 1勝5敗


二塁打 (セ)苅田、伊藤、浅岡、北浦、家村 (ラ)煤孫、浅原2、鬼頭


中村信一、3盗塁


 セネタースは初回、先頭の中村信一が四球から二盗と相変わらずの核弾頭ぶり、続く苅田久徳が左中間に二塁打を放ち1点を先制。一死後大貫賢の右前タイムリーで2点目、ボークと家村相太郎の左前打で一死一三塁、伊藤次郎の左翼への二塁打で3点目、浅岡三郎の左前への当りもレフト煤孫伝がもたつく間に二塁打となりこの回一挙4点を先制する。煤孫は春季のデビュー時ファーストでタイムリーエラーを連発し、外野に回ったが守備は今一、翌日の読売新聞には「煤孫を左翼に起用した外野圏の飛球に対する処理悪く忽ち二塁打三本」と記されている。

 ライオンは1回裏、坪内道則右前打、水谷則一中前打から煤孫が汚名返上の中前タイムリーを放ち1-4とする。煤孫は第二打席でも左中間二塁打を放っており打力は良いものを持っているが守備に難がありDHの無い時代には使い方が難しい。ライオンは2回、柳澤騰市、日野弘美が連続右前打、大友一明四球で無死満塁、鬼頭数雄が右前にタイムリーを放ち2-4、セネタースは先発浅岡から野口明にスイッチ、坪内が右犠飛を打ち上げて3-4と1点差に迫る。

 セネタースは4回、北浦三男四球、中村信死球、苅田が左前にタイムリーを放ち5-3、更に重盗を決めて無死二三塁、大貫の中前タイムリーで6-3、家村四球で満塁とし、伊藤の押出し死球で7-3とする。

 ライオンは4回裏、日野、大友、鬼頭、坪内の4連打で2点を返すがセネタースは5回、横沢七郎が左前打で出塁しワイルドピッチで二進、北浦の遊ゴロで三進し、中村信四球から盗塁で一死二三塁、苅田が左前に2点タイムリーを放ち9-5と突き放す。

 7回にライオンが浅原直人の二塁打と中野隆雄のタイムリーで1点返すとセネタースは8回、二四球と家村の二塁打で1点を追加、ライオンは9回、中野のタイムリーと桜井七之助の左犠飛で2点を返すがここまで、セネタースが10対8で打ち合いを制す。

 セネタースの勝因は中村信一、苅田久徳の不動の一二番コンビにあり、中村信は1安打3四死球に三盗塁で2得点、苅田は3安打4打点の活躍であった。

12年秋 タイガースvsイーグルス 4回戦

10月7日 (木) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8  9  計
1 0 0 0 0 0 0 0  0  1   タイガース  18勝4敗          0.818  景浦将
0 0 0 0 0 0 0 0 2X 2  イーグルス  11勝10敗1分  0.524  中河美芳

勝利投手  中河美芳  1勝1敗
敗戦投手  景浦将    2勝1敗

二塁打 (イ)寺内


中河美芳、プロ入り初勝利


 タイガースは初回、先頭の松木謙治郎が四球で出塁、本堂保次の二ゴロで松木は二進、伊賀上良平の遊ゴロをショート辻信夫が失して一死一三塁、山口政信が右犠飛を打ち上げてノーヒットで1点を先制する。2回以降、タイガースはプロ入り二度目の登板となる中河美芳の前に3安打無得点に抑えられる。一方タイガース先発の景浦将は8回までイーグルス打線を4安打無得点に抑え、スミ一を守りながら9回裏を迎える。

 イーグルスは9回裏、先頭のバッキー・ハリスが左前打を放って出塁、サム高橋吉雄の投前バントが犠打野選となり無死一二塁、小島利男の二ゴロで高橋が二封されて一死一三塁、杉田屋守が中前に同点タイムリーを放って1-1、太田健一中飛で二死一二塁、ここで辻に代わって代打畑福俊英が登場、畑福は期待に応えて中前に弾き返し、二塁から小島が還ってイーグルスが逆転サヨナラでタイガースに連勝する。

 中河美芳は3安打7四球3三振の完投でプロ入り初勝利をあげる。3安打のうち二本は御園生崇男と藤村富美男の内野安打、松木の右前打も翌日の読売新聞によるとテキサス性のヒットであったとのこと。

 中河が投げてハリスと杉田屋で同点とし、畑福がサヨナラ打とイーグルスを代表する役者が揃い踏みとなった試合であった。

2010年9月26日日曜日

12年秋 ジャイアンツvs名古屋 4回戦

10月7日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
8 6 1 0 1 0 0 1 1 18 ジャイアンツ 15勝7敗           0.682  スタルヒン 青柴憲一
0 0 0 0 0 0 0 3 0 3   名古屋           6勝14敗2分  0.300  木下博喜 松尾幸造 田中実

勝利投手 スタルヒン 7勝2敗
敗戦投手 木下博喜  1勝5敗
セーブ   青柴憲一 3


二塁打 (ジ)水原2、山本、永澤、青柴 (名)三浦
三塁打 (名)石田
本塁打 (ジ)スタルヒン 1号、 筒井 1号、 水原 2号

水原茂5安打10塁打


 ジャイアンツは初回、一死後筒井修四球、水原茂が左中間を抜く二塁打を放ち筒井が還って1点を先制。続く四番伊藤健太郎は力が入ったか三振、白石敏男四球、ワイルドピッチに永澤富士雄の遊ゴロをショート芳賀直一が失して2点追加、山本栄一郎のタイムリー二塁打で4-0、内堀の遊ゴロを又もや芳賀がエラー、スタルヒンが中前タイムリー、ここで名古屋は先発木下博喜を退け10月5日に登録されたばかりのルーキー松尾幸造が初登板、しかし前川死球、筒井四球、水原中前タイムリーと続いて打者13人の猛攻で一挙8点を先制する。

 ジャイアンツは2回、永澤四球、内堀四球の二死一二塁でスタルヒンが右翼スタンドにスリーランホームラン、ここで松尾から田中実に交代、前川四球後筒井が左翼席にホームラン、続く水原も左翼ホームランで続き一イニング3本塁打の新記録を樹立して14-0とする。

 ジャイアンツはこの後も4点を追加、名古屋は8回、桝嘉一の三塁打をきっかけに大沢清の右前タイムリーと田中実の2点タイムリーで3点を返すが焼け石に水、ジャイアンツが18対3で圧勝する。水原茂は6打数5安打4得点4打点、二塁打2本、本塁打1本で10塁打を記録する。スタルヒンも4打点、筒井修が3打点。

 9月12日に後楽園球場が開場して以来、全部で40本のホームランが出たが、その内33本が後楽園球場で飛び出している(西宮で6本、甲子園で1本)。両翼78メートルの球場で樹立された一イニング3本塁打よりも、昨日両翼110メートルの甲子園で放った中村信一のホームランの方が価値は高いのではないか。後楽園のホームランも甲子園のホームランも1本は1本としてしか記録されていないが、中身を吟味して分析しなければ何の価値も持たないのではないか。

12年秋 金鯱vs阪急 4回戦

10月7日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 金鯱   10勝12敗       0.455  松元三彦
0 0 0 0 0 0 0 2 X 2 阪急  10勝10敗2分  0.500  丸尾千年次 重松通雄


勝利投手 丸尾千年次  1勝0敗
敗戦投手 松元三彦      0勝2敗
セーブ   重松通雄 1


二塁打 (金)小林茂
本塁打 (金)松元 1号


松元三彦、快挙寸前で敗戦投手


 金鯱は前日不甲斐ないピッチングで引っ込められた松元三彦が先発。松元は前日とは打って変わった投球で意地を見せる。

 阪急は初回、先頭のフランク山田伝が中前打で出塁、黒田健吾の三ゴロでランナーが入れ替わり、黒田が二盗を試みるも、金鯱先発マスクの控えキャッチャー村田信一が見事なスローイングを見せてタッチアウト。2回も先頭のジミー堀尾文人が中前打で出塁し、パスボールで二塁に進むも後続なし。3回も丸尾千年次の右前打、山田四球、黒田内野安打で一死満塁と先制のチャンスを作るが現在首位打者の山下好一は投ゴロ併殺打に倒れて得点できず。4回以降松元三彦は阪急打線を無安打に抑える。

 一方金鯱も初回、先頭の島秀之助が四球から二盗を決めるが矢野槇雄の遊ゴロに飛び出しアウト、更に小林利蔵の左前打と黒澤俊夫の四球で二死満塁とするが三走矢野が三本間に挟まれタッチアウト。2回も先頭の小林茂太が左中間に二塁打、安永正四郎が送って村田の3ゴロで小林茂がホームを衝くがタッチアウト。3回以降丸尾千年次が好投を見せて0-0のまま運命の8回を迎える。

 金鯱は8回、先頭バッターは好投を続ける松元三彦、松元は左翼スタンドにホームランを叩き込み遂に1点を先制する。更に一死後江口行男が左前打にヒットを放ちこれをレフト山下好一が後逸する間に三塁に進み、矢野の右飛で江口はホームを衝くがライト山田伝からの送球に本塁タッチアウト。

  阪急は8回裏、先頭の山田伝が四球で出塁、黒田が送って一死二塁、ワイルドピッチで一死三塁、山下好一四球で一死一三塁、堀尾の三ゴロはサード安永がバックホームするが三走山田伝はホームイン、1-1の同点に追い付き山下好一は一挙三塁に進む。ここでキヨ野上清光がスクイズを決めてノーヒットで2-1と逆転。

 金鯱は9回、一死後黒澤俊夫が四球で出塁、阪急は丸尾から重松通雄にスイッチ、小林茂は右飛に倒れ二死一塁、黒澤が決死の二盗を試みるもキャッチャー島本義文が刺してゲームセット。
 松元三彦は7回まで無失点、8回自らのホームランで1-0とし、完封&決勝ホームランという澤村もスタルヒンもやったことの無い快挙寸前までいったが残念。しかし前日の無念を晴らすあっぱれな投球であった。

2010年9月25日土曜日

一騎討ち ⑦

 本日、アダム・ウェインライトも20勝に到達、ロイ・ハラデーとの一騎打ちは熾烈を極めてきました。両者の成績を比較すると、

ウェインライト  20勝11敗  防御率 2.42 奪三振 213 WHIP 1.05

ロイ・ハラデー 20勝10敗  防御率 2.53 奪三振 213 WHIP 1.07


 約半年間戦ってきてよくもまあこれだけ近似した数字を残せるものだと感心させられます。サイ・ヤング賞にふさわしい実績と経験を有した二人がこれほどの接戦を演じた事例は過去にありません。

 心情的にはウェインライトを応援していることは前にも述べたとおりですが(2006年終盤、カージナルス絶対的クローザー、ジェイソン・イズリンングハウゼンの離脱によりラルーサ監督はウェインライトをクローザーに抜擢してポストシーズンを乗りきり、1982年以来のワールドチャンピオンに輝きました。)、4月から本命説を唱えてきたロイ・ハラデーに取ってもらいたいのも当然のことです。

 スタッツで差がつかなければチームの成績が大きく影響するでしょう。フィラデルフィア・フィリーズは現在地上最強チームながら、今年はチェース・アトリーの長期離脱、ライアン・ハワードのDL入りがあり、長らくアトランタ・ブレーブスの後塵を拝してきましたが、両名が復帰後圧倒的強さを発揮してポストシーズンに進出します(そろそろワールドチャンピオン予想を始めますが、フィリーズ80%と見ています。)。
 一方、セントルイス・カージナルスはシンシナチ・レッズと激しい首位争いを続けてきましたがアルバート・プホルスに「試合を制する一撃」が見られずポストシーズン進出は不可能です。 

 両名ともあと2試合に登板すると思われますので成績に差がつくかもしれませんが、歴史に残る接戦の行方を見守りたいと思います。

 現時点での予想は、ロイ・ハラデー65%、ウェインライト30%、ウバルト・ヒメネス3%、ジョシュ・ジョンソン2%です。
 

12年秋 ライオンvsセネタース 3回戦

10月6日 (水) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0  ライオン      5勝16敗        0.238  菊矢吉男 桜井七之助
0 1 0 2 0 1 1 2 X 7 セネタース   9勝11敗1分  0.450  伊藤次郎


勝利投手 伊藤次郎 1勝1敗
敗戦投手 菊矢吉男 3勝7敗
二塁打 (ラ) 鬼頭、菊矢
三塁打 (セ) 伊藤
本塁打 (セ) 中村信 3号

セネタース、着々と加点

 セネタースは四番キャッチャー中村民雄が欠場。この頃になると突然兵役の可能性がありますが一週間後に復帰しますので怪我のためでしょう。四番には大貫賢が入り、スタメンマスクは北浦三男。

 セネタースは2回、この回先頭の大貫が四球に歩くとすかさず二盗を決め、五番に上がった家村相太郎の右翼線タイムリーで1点を先制。4回、家村が中前打で出塁、伊藤次郎の投前送りバントは犠打野選となり、武田勇に代わる代打野口明中飛後、横沢七郎の一ゴロで伊藤は二封となり二死一三塁、ここでダブルスチールが見事に決まり家村が生還して2-0、北浦の遊ゴロをショート中野隆雄がエラーする間に二塁から横沢が還って3-0とする。

 セネタースは6回、この回先頭の伊藤が左中間に三塁打、4回に代打してそのままライトに入っている野口明が中犠飛を打ち上げて4-0、7回には中村信一が四球後すかさず盗塁、苅田久徳の遊ゴロで中村信が三塁に走りショート中野からサード柳澤騰市に送球されるがセーフ、中野に野選が記録されて無死一三塁、尾茂田叶が右前にタイムリーを放って5-0とする。更に8回、四球に歩いた横沢を一塁において中村信一がレフトへホームランを放ち7-0とする。

 翌日の読売新聞は伊藤次郎の投球を「カーブ、直球問わず投球の悉くが思う壺に嵌ってラ軍を完封」と伝えている。結局4安打2四球1死球4三振の完封で今季初勝利を飾る。
 
 両翼110メートル、右中間・左中間の最深部は128メートル、更に昭和9年にホームプレートの位置が8メートル後方に下げられたという甲子園球場ではオーバーフェンスはめったに見られない。昭和9年に来日したベーブ・ルースでさえ「甲子園は広すぎてホームランがでない」と語っているくらいですから。


 ホームランがオーバーフェンスであるかランニングホームランであるかはスコアブックの記録だけでは峻別できませんので読売新聞の記載のみが頼りとなります。春季リーグ戦では甲子園で四本のホームランが出ましたが、明確にスタンドインと記載されているのは「4月7日、名古屋vsジャイアンツ1回戦」での中島治康の一本だけで、「6月1日、金鯱vs大東京5回戦」の煤孫伝の一本は「右翼柵に添って転々とする」と記載されており、「6月24日、セネタースvsイーグルス6回戦」の中根之は「左中間痛打を脚に委せて本塁打」と記載されていますのでランニングホームランであることが分かります。「6月25日、セネタースvs金鯱5回戦」の北浦三男については「痛烈に右翼を襲う本塁打」と記載されており、おそらくランニングと思われますがオーバーフェンスの可能性もあります。北浦選手には失礼ですが、右打者の北浦が甲子園で右方向にオーバーフェンスを放つとは考えにくいので、春季リーグ戦における甲子園でのオーバーフェンスは中島治康だけだったのではないかと考えられます。

 本日の中村信一の第3号ホームランは「中村信が今シーズン甲子園最初の本塁打を放って」と記載されています。上記のように読売の記事はランニングホームランの場合分かるように(北浦の場合は明言はできませんが)書かれていますので、中村信一の第3号は甲子園球場におけるオーバーフェンスと考えて良いのではないでしょうか。

















12年秋 イーグルスvsタイガース 3回戦

10月6日 (水) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 0 1 1 0 0 0 0 4  イーグルス  10勝10敗1分  0.500  畑福俊英
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0  タイガース   18勝3敗            0.857  西村幸生 若林忠志


勝利投手 畑福俊英 7勝7敗
敗戦投手 西村幸生 7勝2敗


二塁打 (イ)ハリス2、高橋


バッキー・ハリス、快打二発


 現在14連勝、遂に勝率を9割に乗せた猛虎タイガースにイーグルスが挑む。先発はイーグルスがここまで6勝の畑福俊英、タイガースがここまで7勝の西村幸生。

 イーグルスは初回、先頭の寺内一隆が四球で出塁、中河美芳が送って一死二塁、ここでバッキー・ハリスが左翼線に二塁打を放って1点を先制、続くサム高橋吉雄も左翼線に快打を放ち2-0とする。

 イーグルスは4回、先頭の高橋四球、小島茂男の三ゴロで高橋二進、杉田屋守の右前打をライト景浦が三塁に悪送球する間に高橋が還って3-0。5回は一死後寺内遊失、中河四球の一二塁からハリスが又も左翼線に二塁打を放って4-0とリードを広げる。

 畑福俊英は強打猛虎打線を散発4安打に抑えて4四球1死球6三振で完封。西村幸生と並びハーラートップに躍り出る。翌日の読売新聞は「畑福投手の緩急バライテイに富んだ巧みなピッチングに翻弄」と伝えている。イーグルスは5割に復帰、タイガースは14連勝でストップし、勝率9割ラインを割り込む。タイガースの14連勝は9月7日のタイガースvsイーグルス1回戦でイーグルスに敗れてからスタートし、イーグルスに敗れて終了することとなった。因みに9月7日も畑福と西村の投げ合いで畑福が投げ勝ったものであり、西村の2敗はイーグルス戦の2敗のみである。

 イーグルス4回の得点シーンを読売新聞は「一死後高橋二塁にある時杉田屋の二塁後方へのテキサス性飛球を景浦前進トンボを切って掴まんとしたが落球し、これを三塁へ悪投して高橋に得点を許したのは軽率の誹(そし)りを免れず、その際観衆のヤジに挑戦して悪評を買ったのは良い態度ではなかった。」と伝えている。景浦は9月17以降、10月3日に復帰するまで野手として出場していない。怪我のためだけでもなさそうなので(リリーフとしては登板している)どうもこのあたりに原因が隠されているのではないか。

一騎討ち ⑥

 ロイ・ハラデーのナショナル・リーグサイ・ヤング賞受賞が濃厚となってきました。今年の最大の特徴は奪三振数が多いことであり、ティム・リンスカムの三年連続奪三振王を阻む可能性があります。リンスカム、ハラデーによる奪三振王争いはまさに一騎討ちの様相を呈してきました。

 現在地上最強軍であるフィラデルフィア・フィリーズのポスト・シーズン進出はまず間違いないところ、サンフランシスコ・ジャイアンツにも十分可能性があります(現在西地区トップ)。ワイルド・カード争いは東地区2位のアトランタ・ブレーブスと西地区のジャイアンツかサンディエゴ・パドレスとのワンデー・プレイオフの可能性が高まってきました。その前に西地区のワンデー・プレイオフまでありそうです。中地区のシンシナチ・レッズと四チームが勝ち数で並ぶ可能性があり(9月24日現在、ブレーブス・レッズ・ジャイアンツが86勝、パドレスが85勝)、82勝のコロラド・ロッキーズの粘り次第では五チームが並ぶ可能性まであり、デビジョン・シリーズの組み合わせをどうやって決めるのか訳が分からない状況になってきました。
 
 と言うことで組み合わせはまだ分かりませんが、ポスト・シーズンまで一騎打ちが持ち越される可能性があります。
 ハラデーとリンスカムによるサイ・ヤング賞争いが一騎討ちになるとの前提で始まった当シリーズですが、予想ははずれましたがはるかに面白い展開となってきました。

 ウバルト・ヒメネスが4月、5月と二ヶ月連続月間MVPを受賞する中、終始一貫してロイ・ハラデー本命説を唱え続けてきましたが(過去シリーズ参照)、いよいよ2003年以来二度目の受賞が濃厚となってきました。両リーグでの受賞はゲイロード・ペリー、ペドロ・マルチネス、ランディ・ジョンソン、ロジャー・クレメンス以来五人目となり、7年ぶりという一度目との間隔の長さではトム・グラビン以来となります。昨年もアメリカン・リーグでザック・グレインキーと競り合いましたが、トロントのファンが「Cy Back」のプラカードを手に応援していたシーンを思い出します。

2010年9月24日金曜日

12年秋 名古屋vsジャイアンツ 3回戦

10月6日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 1 0 0 0 0 1 0 0  2  名古屋             6勝13敗2分 0.316  繁里栄 森井茂
1 0 6 0 0 0 0 0 X  7  ジャイアンツ  14勝7敗          0.667 澤村栄治


勝利投手 澤村栄治 4勝3敗
敗戦投手 繁里栄   0勝2敗


二塁打 (名)小島
三塁打 (名)石丸 (ジ)澤村、白石


澤村栄治、タイムリー三塁打


 ジャイアンツは初回、先頭の呉波が四球で出塁、一死後中島治康が戻ってきた関係で三番に戻った水原茂の三ゴロで呉が二進、復活中島が右前にタイムリーを放って1点を先制する。

 名古屋は2回、白木一二、小島茂男が連続四球、一死後繁里栄も四球で満塁、二死後トップに返り石丸藤吉が中前打を放ち1-1の同点、逆転を狙って二走小島もホームを突くが強肩呉波のバックホームにタッチアウト。

 ジャイアンツは3回、先頭の水原が投失に生き、中島が送って伊藤健太郎四球、白石敏男が右前にタイムリーを放ち2-1としてなお一死一三塁、永澤富士雄が中前にタイムリーして白石は三塁に進みなお一三塁、内堀保の右前タイムリーで4-1として名古屋先発の繁里栄をKO。代わった森井茂から澤村栄治が右中間に三塁打を放って二者を迎え入れ6-1、筒井修のタイムリーで澤村も還ってこの回一挙7点。

 名古屋は7回、小島茂男の二塁打から二本の内野ゴロで1点を返すがここまで。澤村栄治は5安打4四球3三振の完投で4勝目をあげる。ジャイアンツはこれで5連勝。

12年秋 阪急vs金鯱 3回戦

10月6日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 4 0 0 1 0 2 5 12 阪急    9勝10敗2分  0.474  笠松実 重松通雄
0 0 0 4 0 3 0 0 0  7  金鯱  10勝11敗       0.476  鈴木鶴雄 古谷倉之助 松元三彦 中山正嘉


勝利投手 重松通雄 1勝0敗
敗戦投手 中山正嘉 1勝4敗


二塁打 (阪)堀尾、野上、黒田 (金)黒澤2、小林茂、相原
三塁打 (阪)重松
本塁打 (阪)堀尾 2号、 宮武 1号


宮武三郎、グランドスラム


 10月4日は重量打線で敗れた阪急は宮武三郎と山下実をスタメンから外しトップにフランク山田伝を起用、二番黒田健吾は変わらず、山下好一、ジミー堀尾文人、キヨ野上清光でクリーンナップを組む。

 阪急は3回、先頭の大原敏夫左前打、山田伝の二ゴロでランナーが入れ替わり、黒田の中前打で一死一三塁、黒田二盗、山下好一四球で一死満塁、ここで堀尾が左中間に二塁打を放って2点を先制、更に野上も左中間を抜いて4-0と先制する。まずは打線組み替えが成功。

 金鯱は4回、この回先頭の三番矢野槇雄が四球、小林利蔵中前打、黒澤俊夫が右中間を破る二塁打を放ち1-4、小林茂太も右中間を抜いて3-4、小林茂はパスボールで三進、相原輝夫四球で阪急先発笠松実は降板、重松通雄がマウンドに上る。しかし鈴木鶴雄が左犠飛を打ち上げて金鯱が4-4の同点に追い付く。

 阪急は6回、この回先頭の野上が四球で出塁、二死後重松が右中間に三塁打を放って5-4と再びリードする。

 金鯱は6回裏、この回先頭の黒澤が死球で出塁、小林茂が送って瀬井清の左前打で一死一三塁、相原が中越えに二塁打を放って二者還り6-5と逆転、更に鈴木鶴雄が中前にタイムリーを放って7-5とする。しかし鈴木鶴雄は相変わらずバッティングがいい。シルバースラッガー賞(MLBでは表彰対象となっており各ポジション毎の最強打者に送られる)があればスタルヒンとの争いとなるところ。

 阪急は8回、先頭のジミー堀尾が左翼スタンドにホームランを放ち6-7、ここで鈴木は降板して古谷倉之助が登板。野上が左翼線にヒット、上田藤夫の送りバントは犠打野選となり無死一二塁、野上がキャッチャー相原の牽制に刺されて一死一塁、林信一郎の代打宮武三郎は三振、上田二盗後、重松四球、ここで大原に代わる代打山下実が右翼線に同点タイムリーを放ち7-7とする。宮武は林に代わってファーストに入り、山下実は下がって二番手キャッチャーに島本義文が入る。ここは殊勲のタイムリーを放った山下実を残してファーストに入れ、三振の宮武のところにキャッチャー島本を入れるという選択肢もあった訳であるが宮武を残したことがドラマにつながるのである。

 阪急は9回、この回先頭の黒田健吾が左翼線に二塁打、ここで古谷は降板し三番手に松元三彦が登場、ところが松元は山下好一は右飛に打ち取るが堀尾、野上と連続四球。続く上田のカウントがノーツーとなったところで金鯱ベンチは松元を引っ込め四番手に中山正嘉を投入。しかし中山はいかにもウォームアップ不足、上田が押出し四球を選んで阪急が8-7と1点リード、なおも一死満塁で迎えるバッターは宮武三郎、戦後長嶋茂雄に抜かれるまで東京六大学の通算本塁打記録を保持し続けた宮武は右翼スタンドに満塁ホームランを放って試合を決する。

2010年9月23日木曜日

12年秋 第5節 週間MVP

 今節は14連勝中のタイガースが4戦全勝、ジャイアンツも4戦全勝、セネタースが4勝1敗、イーグルスと阪急が1勝2敗1分、ライオンが1勝3敗、金鯱が1勝4敗、名古屋が4戦全敗であった。


週間MVP

投手部門

 ジャイアンツ 澤村栄治 1
 
 10月2日の対イーグルス2回戦において15三振を奪い2安打完封、見事な復活をとげる。歴史的にはあまり知られていない試合であるが、プロ入り最高のピッチングの可能性すらある。


打撃部門

 セネタース 中村信一 1

 今節20打数7安打、7得点4打点、1本塁打、5盗塁。リードオフマンとして走りまくり好調セネタースを引っ張る。

 タイガース 山口政信 1

 今節15打数6安打、6得点7打点、2本塁打、2盗塁。景浦の抜けた後の四番に入り打って良し守って良し走って良し、「和製ディマジオ」ぶりを見せつける。



殊勲賞

 ライオン 大友一明 1

 10月3日対阪急3回戦、9回裏に10対9となるサヨナラ打を放つ。


敢闘賞

 セネタース 野口明 1

 ようやく調子を上げてきた。今節2勝1セーブ。


技能賞

 セネタース 浅岡三郎 1

 緩球を駆使して今節2勝をあげる。

12年秋 ジャイアンツvsライオン 4回戦

10月4日 (月) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
3 1 0 1 0 3 0 4 0 12  ジャイアンツ  13勝7敗    0.650  成田友三郎 青柴憲一
1 0 0 0 0 2 0 0 0  3   ライオン           5勝15敗 0.250  近藤久 桜井七之助


勝利投手 成田友三郎 1勝0敗
敗戦投手 近藤久    1勝5敗
セーブ    青柴憲一 2


二塁打 (ジ)水原、前川 (ラ)藤浪


成田友三郎、今季初登板初勝利


 ジャイアンツは澤村、スタルヒンの連続完封で余裕が出たか成田友三郎が今季初登板。ジャイアンツとしては貴重な左腕である。

 ジャイアンツは初回、一死後前川八郎四球、筒井修の遊ゴロでランナーが入れ替わり水原茂四球、伊藤健太郎四球で二死満塁、白石敏男が中前に2点タイムリーを放ち、永澤富士雄四球後、内堀保の遊ゴロをファースト浅原直人が失する間に伊藤が還って3点を先制する。

 ライオンは1回裏、先頭の鬼頭数雄が四球で出塁すると二盗、三盗を決める。藤浪光雄四球から二盗、この際キャッチャー内堀の送球が逸れる間に鬼頭が生還してノーヒットで1点を返す。

 ジャイアンツ2回、二失に生きた前川を水原の二塁打で還して4-1。4回にも四球と敵失で二塁に進んだ伊藤を永澤の左前タイムリーで還して5-1とする。更に6回、水原四球、伊藤左前打、一死後永澤右前タイムリー、内堀中前タイムリー、成田四球、呉波中前タイムリーで3点を追加して8-1とリードを広げる。

 ライオンは6回裏、藤浪光雄の二塁打と2四球で満塁とし、柳澤騰市の中前打で2点を返すが、ジャイアンツは8回、永澤四球、青柴憲一四球から呉が中前タイムリー、前川が右翼線タイムリー二塁打、筒井が中前2点タイムリーで4点を追加して12対3で圧勝する。

 成田友三郎は6回を投げて4安打6四球2三振。7回から登板の青柴憲一が2セーブ目(セーブは当ブログ独自の算出であり、もちろん当時は記録されておりません。)、ジャイアンツはローテーションが楽になってきた。

12年秋 阪急vsイーグルス 4回戦

10月4日 (月) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 3 0 0 1 0 0 0 0 4   阪急           8勝10敗2分  0.444  笠松実 中田武夫 重松通雄
1 0 0 1 0 1 2 0 X 5  イーグルス  9勝10敗1分  0.474  藤野文三郎


勝利投手 藤野文三郎 3勝1敗
敗戦投手 中田武夫   0勝2敗


三塁打 (イ)ハリス


イーグルス競り勝つ


 阪急は一番センタージミー堀尾文人、三番ファースト宮武三郎、四番レフト山下好一、五番ライト山下実と考えられうる範囲で最高の重量打線を組む。この結果三番を打っていたキヨ野上清光が六番、西村正夫、フランク山田伝は控えに回る。元来、三宅大輔元監督は山下実を外野に回して宮武と常時使う構想を持っていたが、球団首脳陣が山下実のコンバートに反対し、三宅元監督は阪急を去ることとなった。

 イーグルスは初回、先頭の寺内一隆が左前打で出塁、二番中河美芳三振後、バッキー・ハリスが右翼線に三塁打を放って1点を先制する。

 阪急は2回、山下好一右前打、山下実四球、野上が送って上田藤夫四球で一死満塁、大原敏夫、笠松実が連続押出し四球を選んで2-1と逆転、堀尾の浅井ライトフライに三走上田がタッチアップからスタート、タイミングはアウトであったがキャッチャーハリスが落球して3-1とする。

 イーグルスは4回、左前打で出塁した小島利男が二盗に成功、杉田屋守の二ゴロで三塁に進む。藤野文三郎四球で一死一三塁、バッターは八番辻信夫、ここは当然スクイズが予想される場面であるが、スクイズを警戒した笠松実のウエストボールが高く逸れて暴投となり小島が生還して2-3。

 阪急は5回、先頭の笠松が遊失に生き、堀尾が左前打で続く。黒田健吾が送って一死二三塁、宮武の左犠飛で4-2とする。

 イーグルスは6回、二死後藤野、辻が連続四球、阪急は笠松から中田武夫にスイッチ、しかし漆原進に代わる代打太田健一も四球、更に寺内が押出し四球を選んで3-4とする。更に7回、この回先頭のハリスが四球、サム高橋吉雄も四球で無死一二塁、阪急はストライクが入らない中田をあきらめ重松通雄を投入、小島の遊ゴロはお誂え向きのゲッツーコース、ところがショート上田が二塁に悪送球する間にハリスが還って4-4の同点となり高橋も三塁に進んでなお無死一三塁。更に杉田屋がスクイズを決めて高橋が決勝のホームを踏む(この場面を翌日の読売新聞は「小島・杉田屋の間に行われたスクイズが成功」と誤って伝えている。どうも読売の記事は、鈴木惣太郎、市岡忠男を除き、現場の記者が付けたスコアブックを基に現場を見ていないデスクが記事にしているとしか思えない誤記載が目に付く。この場面は公式スコアブックには「杉田屋の三前スクイズバントで高橋が生還」とはっきりと記載されており、スコアブックを見なくても打順から三塁ランナーが高橋であることは明らかである。新聞のスクラップブックは大変貴重な史料であることは認めますが、当時の情報伝達手段の未熟さを十分考慮に入れて盲信しすぎないことをお薦めいたします。)。

 藤野文三郎は6回以降阪急重量打線を1安打に抑え、結局3安打6四球3三振の完投で3勝目をあげる。イーグルスは一進一退の攻防に競り勝ち、阪急を抜いて四位に浮上、三位金鯱に半ゲーム差と迫る。

2010年9月22日水曜日

12年秋 タイガースvs金鯱 4回戦

10月4日 (月) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 3 0 5 0 0 0 0 0 8 タイガース  18勝2敗     0.900  若林忠志
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 金鯱           10勝10敗   0.500  古谷倉之助 松元三彦


勝利投手 若林忠志   5勝1敗
敗戦投手 古谷倉之助 5勝3敗


本塁打 (タ)山口 2号、 藤井 1号


山口・藤井が二者連続ホームラン


 金鯱は初回、先頭の島秀之助が左前打で出塁、一死後矢野槇雄の二ゴロで二進、小林利蔵の右前打で二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて1点を先制する。

 タイガースは2回、先頭の景浦将が四球で出塁、続く山口政信が左翼スタンドに逆転のツーランホームラン、更に藤井勇が右翼スタンドにバック・ツー・バックとなるホームランを叩き込んで3-1とする(因みにバック・ツー・バックとは二者連続や二打席連続と言う意味で使われておりMLB中継には頻繁に登場します。)。

 タイガースは4回、先頭ののカイザー田中義雄が左翼線安打、若林忠志の遊ゴロをショート瀬井清が失し、岡田宗芳の遊ゴロを瀬井が三塁に悪送球して無死満塁、トップに返り松木謙治郎が右前に2点タイムリー、本堂保次が中前タイムリーして6-1、一死後景浦の内野安打で松木が還り7-1、山口の遊ゴロの間に本堂が還って8-1とリードを広げる。

 1、2回に3安打を許した若林忠志は3回以降五味芳夫のヒット1本に抑える好投、4安打無四球2三振の完投で5勝目をあげる。以前澤村のピッチングは全盛期のペドロ・マルチネスを想起すればより具体像が浮かび上がってくると書いたことがありますが、若林のピッチングは本日20勝目をあげたロイ・ハラデイのピッチングを想起してみると良いのではないでしょうか。

12年秋 セネタースvs名古屋 4回戦

10月4日 (月) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 0 0 2 0 0 3 セネタース  8勝11敗1分  0.421  浅岡三郎 野口明
1 0 0 0 0 1 0 0 0 2 名古屋       6勝12敗2分  0.333  木下博喜 田中実


勝利投手 浅岡三郎 2勝4敗
敗戦投手 木下博喜 1勝4敗
セーブ   野口明 1


二塁打 (セ)家村 (名)大沢
三塁打 (名)高木
本塁打 (名)木下 1号


試合巧者セネタース


 名古屋は初回、先頭の石丸藤吉が遊失に生き、石田政良が送りバント、高木茂が右翼線に三塁打を放って1点を先制する。2回も2安打と四球で満塁、3回にも一死後大沢清の右中間二塁打でチャンスを作るが得点はならず。序盤の追加点のチャンスを生かせなかったことが敗因となる。


 セネタースは3回、一死後中村信一が三遊間を破るとすかさず二盗を決める。苅田久徳の三前内野安打で一死一三塁、尾茂田叶の遊ゴロの間に中村信が生還して1-1の同点。


 名古屋は6回、二死後先発ピッチャー木下博喜が左翼スタンドへホームラン(翌日の読売新聞・市岡忠男の論評には「右翼本塁打」と記述されている。読売の論評は数人の評論家が担当しているが、市岡の論評は秀逸であり最も信頼度が高い。これは編集の際の誤植であろう。)、2-1とリードする。


 4~6回まで無安打のセネタースは7回、先頭の家村相太郎が左越えに二塁打、伊藤次郎の三前送りバントが内野安打となり無死一三塁、ここで名古屋ベンチは木下博喜から田中実にスイッチ、伊藤が二盗を決めて横沢七郎四球で無死満塁。ここからの点の取り方がいかにもセネタースらしいところ。浅岡三郎の中犠飛で2-2の同点、二走伊藤もタッチアップから三塁に進み、一走横沢も二塁に進む。続く中村信の当りは遊撃後方への小フライ、ショート芳賀直一が左前まで追って向こうむきで捕った瞬間三走伊藤次郎がスタート、芳賀のバックはームは間に合わず伊藤が生還して3-2と逆転に成功する。中村信一は遊犠飛で1打点を記録する(犠飛は当ブログ独自で判定しています。当時は犠牲フライは記録されておらず中村信の記録はショートフライで凡打扱いとなり打数が1記録されていますが打点は1記録されています。内野ゴロによる生還の場合は凡打と打点が記録されるのは現行ルールと同様ですが、内野フライによる三塁走者の生還は極めて珍しいケースとなりますので詳述させていただきました。)。


 浅岡三郎は7、8回を三者凡退に退け9回、三浦敏一を投ゴロ、石丸を三ゴロに打ち取り完投勝利まであと一人。しかし石田の代打桝嘉一が中前打、高木に四球を与えたところで無念の降板、野口明に後事を託す。野口明は大沢清に四球を与えて二死満塁とするが小島茂男の代打遠藤忠二郎を二ゴロに打ち取りゲームセット。


 4安打のセネタースが8安打の名古屋を降す。セネタースが試合巧者ぶりを遺憾なく発揮した試合であった。

2010年9月21日火曜日

12年秋 阪急vsライオン 3回戦

10月3日 (日) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8  9   計
1 2 4 0 0 0 0 0  2   9   阪急       8勝9敗2分  0.471  丸尾千年次 中田武夫 笠松実
0 4 0 4 0 1 0 0 1X 10  ライオン  5勝14敗     0.263  近藤久 桜井七之助 菊矢吉男


勝利投手  菊矢吉男 3勝6敗
敗戦投手 笠松実   3勝4敗


二塁打 (阪)黒田 (ラ)水谷
本塁打 (阪)丸尾 1号 (ラ)桜井 1号


桜井七之助、丸尾千年次、共に被本塁打1、本塁打1


 阪急は初回、フランク山田伝、黒田健吾が連続四球、一死後宮武三郎が中前にタイムリーを放って1点を先制する。更に2回、キヨ野上清光四球、丸尾千年次左前打、島本義文が送って二死後黒田が左前に2点タイムリーを放ち3-0とする。

 ライオンは2回裏、浅原直人、坪内道則連続四球、中野隆雄の投前送りバントが内野安打となって無死満塁、一死後大友一明の右犠飛で1-3、近藤久に代わる代打煤孫伝四球、鬼頭数雄も押出し四球を選んで2-3、藤浪光雄が右前に2点タイムリーを放って4-3と逆転に成功する。2回の攻防では両チームの二番打者が2点タイムリーを放つ。

 ライオン先発の近藤久に代打が送られたため二番手に桜井七之助が登場。阪急は3回、一死後ジミー堀尾文人がセーフティバントを決めて出塁、上田藤夫の右前打で一死一三塁、野上が中前にタイムリーを放ち4-4の同点。更にダブルスチールで揺さぶりをかけると先発ピッチャー丸尾千年次が左翼スタンドにスリーランホームランを叩き込んで7-4と再逆転に成功する。

 ライオンは4回、先頭の大友が四球で出塁すると、続く桜井七之助がレフトスタンドにツーランホームランを放ち6-7。桜井は丸尾にスリーランを打たれたが、丸尾からツーランを打ち返す。トップに返り鬼頭が四球から盗塁、藤浪の二ゴロで鬼頭三進、水谷則一四球で一死一三塁、浅原直人の左前打で7-7の同点に追い付き水谷は三塁に進む。レフトから内野に返球されたが打者走者浅原が一塁をオーバーランしており一二塁間で挟殺プレイ、隙を見て三走水谷がホームに突進、セカンド野上からバックホームされるがキャッチャー島本が落球して8-7と再々逆転に成功する。更に6回、四球の鬼頭を水谷の左中間二塁打で還して9-7とする。

 桜井は4回以降立ち直り8回まで阪急を無得点に抑え、9回から満を持して菊矢吉男が登板する。阪急は9回、上田に代わる代打山田勝三郎が四球、野上も四球、二番手ピッチャー中田武夫に代わる代打重松通雄も四球で無死満塁。阪急ベンチはここで島本に代えて短期兵役から戻ってきた山下実を代打に起用、しかし山下実は三振に倒れて一死満塁、8回から山田伝に代わってライトに入っている西村正夫が押出し四球を選んで8-9、黒田の左犠飛で遂に9-9の同点に追い付く。

 阪急は三番手に笠松実をマウンドに送る。ライオンは9回裏、先頭の坪内が右前打で出塁、中野の投前送りバントをファースト宮武がエラー、柳澤騰市が送って一死二三塁、このチャンスに八番大友一明が中前に劇的なサヨナラヒットを放ち激戦に終止符が打たれる。

 試合経過にもあるように阪急は12四球、ライオンは10四球。10安打で9点を取った阪急に8安打で10点を取ったライオンが競り勝つこととなった。




12年秋 ジャイアンツvsイーグルス 3回戦

10月3日 (日) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 3 0 2 5 ジャイアンツ  12勝7敗           0.632  スタルヒン
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 イーグルス       8勝10敗1分  0.444  中河美芳 畑福俊英


勝利投手 スタルヒン 6勝2敗
敗戦投手 中河美芳  0勝1敗


二塁打 (ジ)内堀
三塁打 (ジ)スタルヒン


スタルヒン、3安打完封

 イーグルスはここまで一塁手として出場してきた中河美芳が初登板初先発。

 その中河は初回、トップの呉波を三振に打ち取ると二番山本栄一郎を四球で歩かせる。しかし山本が二盗を試みるとバッキー・ハリスが矢のような送球で刺してツーアウト、前川八郎を右飛に打ち取り無難な立ち上がりを見せる。ジャイアンツは2回も四番水原茂以下三者凡退。3回、スタルヒンが初ヒットを放つが呉が又も三振。4回と6回に前川のヒットが出るが無得点、試合はスタルヒンvs中河美芳の投げ合いで6回まで0対0。

  2三振と元気のない呉波は第三打席で筒井修が代打に起用されたためベンチに下がる。筒井はセカンドに入りセカンドの前川がセンターに入る。前川のようなピッチャー、セカンド、サード、外野どこでもを守れる選手がいれば何かと便利である。広島の木下富雄もセカンドをやったり衣笠の後のサードに入ったり外野に回ったりと大忙しだったがピッチャーだけはやらなかった。

 ジャイアンツは7回、一死後伊藤健太郎が四球で出塁、白石敏男の遊ゴロをショート辻信夫が一塁に高投して一死二三塁、永澤富士雄の三ゴロに三走伊藤健太郎がフェアグラウンドで触れてしまい走者アウト、ここで内堀保が中越えに二塁打を放って二者生還、スタルヒンが中越えに三塁打を放って3-0とする。イーグルスのピッチャーが畑福俊英に交代した9回、伊藤、白石の連打と内堀の左前打で一死満塁。トップに返り筒井が左前に弾き返して2点を追加し、5-0とする。

 スタルヒンはこの日絶好調、3安打1四球6三振で完封勝利を飾る。ジャイアンツは前日の澤村に続きスタルヒンも完封でようやくタイガース追撃体制が整ってきたか。イーグルスは前日澤村に2安打完封、本日も高橋、ハリス、小島のクリーンナップトリオが各1本ずつの3安打のみに抑えられる。一方、初登板の中河美芳は8回を投げて5安打3四球3三振、失点3、自責点2と無難な投手デビューであった。

2010年9月20日月曜日

12年秋 タイガースvs名古屋 3回戦

10月3日 (日) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 1 0 1 0 3 タイガース  17勝2敗           0.895  御園生崇男 景浦将
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 名古屋          6勝11敗2分  0.353  繁里栄


勝利投手 御園生崇男 4勝0敗
敗戦投手 繁里栄     0勝1敗
セーブ    景浦将 1


二塁打 (タ)景浦 (名)白木、大沢、繁里


景浦将復活!


 タイガースは四番ライト景浦将が復活、9月17日の対金鯱1回戦以来のスタメン出場である。この間、9月24日には御園生崇男をリリーフして5イニング投げているだけで代打での出場も無い。怪我のためではないかと思われるがその他の事情の可能性もある。ご存知の方がおられましたらご一報をお願いいたします。

 タイガース4回の攻撃は三番伊賀上良平から。第4節(9月22日~26日)の週間MVPに選出された直後の9月29日から三番に抜擢されている。選出理由は「猛虎打線の中で最も当っている」とさせていただきましたが、石本秀一監督の見立てもそのようです。伊賀上は右前打で出塁、景浦の二ゴロは4-6-3と渡りゲッツー、しかし山口政信が右前打から二盗を決めて藤井勇が四球でつなぎ、カイザー田中義雄の左翼線タイムリーで1点を先制。

 タイガースは6回、先頭の伊賀上が四球で出塁、景浦右飛後、山口の二ゴロをセカンド石丸藤吉が失して一死一二塁、藤井が左前にタイムリーを放って2-0。更に8回、本堂保次が四球で出塁、伊賀上の投ゴロで本堂は二塁に進み、景浦が復活を告げる右翼線タイムリー二塁打を放って3-0とする。

 名古屋の先発はプロ入り初登板となる繁里栄。9月29日付け読売新聞は「名古屋から新選手繁里栄君が25日聯盟に登録された、繁里選手は佐伯中(現・佐伯鶴城高校=筆者注)時代から剛球投手として知られ昨年明大に入学、今回退学して名古屋軍に入社したもので柔道三段の猛者である」と伝えている。9回を完投し、猛虎打線に対して6安打6四球2三振、失点3、自責点2と好投、今後が期待される。

 病気上がりで出遅れた御園生崇男は9月20日の今季初登板以来投球回数は4、4、5回とリリーフを仰ぎながら三連勝。本日は完投を考えていたのか7回にもマウンドに上ったが繁里栄に二塁打、三浦敏一に四球を与えたところでライトから景浦がリリーフに登場、本来であれば御園生がそのままライトに入るところであるが本日はライトに玉井栄が入って御園生はベンチに下がっている。未だ体調は万全とはいかないようである。タイガースは御園生-景浦の完封リレーで13連勝、次に勝てば勝率は9割に達する。

 御園生崇男は病気上がりなので大事に使われるのは当然ですが、ボストン・レッドソックスの松坂過保護政策はいい加減にしてもらいたい。ボストンは100億円を回収するためには松坂に故障されては困るので腫れものにでも触るかのような使い方を続けていますが、最近の松坂はそれに甘えているとしか見えません。

金鯱vsセネタース 3回戦

10月3日 (日) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 金鯱         10勝9敗          0.526 松元三彦 中山正嘉
2 0 0 1 0 0 3 0 X 6 セネタース  7勝11敗1分  0.389 野口明


勝利投手 野口明   6勝6敗
敗戦投手 中山正嘉 1勝3敗


二塁打 (金)江口、黒澤、中山 (セ)伊藤、中村信


セネタース、鮮やかな足攻


 雨天順延の試合を本日に詰め込んだためダブルヘッダーの第二試合。セネタースは調子を上げてきた野口明が第二試合に先発。苅田監督は第一試合の展開次第ではリリーフで連投も視野に入れていたのではないか。

 1回表を野口明が三者凡退に抑えて迎えたセネタース1回裏の攻撃、中村信一、苅田久徳が連続四球、尾茂田叶の右飛で中村信は三塁へ進む。中村民雄の右前打で1点を先制して苅田も三塁に進みなお一三塁と理想的な攻撃、大貫賢の左犠飛で2点目をあげる。

 金鯱は4回、江口行男が三塁線を破る二塁打、一死後小林利蔵の遊ゴロに江口が飛び出しセカンドに戻るがタッチアウト、続く黒澤俊夫が右中間を破り一塁から小林利が還り1点を返すがセネタースのスマートな点の取り方に比べていかにもちぐはぐ。
 セネタースは4回裏、二死後中村信が四球で出塁するとすかさず二盗に成功、苅田の三ゴロをサード矢野槇雄が失して二死一三塁、尾茂田の三球目に鮮やかにダブルスチールを決めて3-1と突き放す。

 セネタースは7回、一死後中村民雄が四球で出塁、大貫の中前打で中村民は三塁へ、大貫二盗後、家村相太郎四球で一死満塁、伊藤次郎が右犠飛を打ち上げて4-1、更に内野に返った送球を受けたファースト小林利蔵が誰もいない三塁に送球して白球が三塁ファウルグラウンドを転々とする間に二者が還って6-1として試合を決める。

 野口明は6安打1四球4三振の完投で6勝目、シーズン序盤戦負けがこんでいたがようやく星を五分に戻す。セネタースは4安打で6得点、自慢の脚を絡めたそつのない攻撃で第一試合の借りを返す。

12年秋 セネタースvs金鯱 2回戦

10月3日 (日) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 2 1 0 0 0 0 4 セネタース  6勝11敗1分  0.353  伊藤次郎 浅岡三郎 金子裕
0 2 3 3 0 0 0 0 X 8 金鯱         10勝8敗          0.556  鈴木鶴雄


勝利投手 鈴木鶴雄 4勝3敗
敗戦投手 浅岡三郎 1勝4敗


二塁打 (セ)家村、苅田
本塁打 (金)黒澤 1号、 鈴木 1号


鈴木鶴雄、投げては完投、打ってはホームラン


 セネタースは初回、トップの中村信一が二失に生きパスボールで二進、苅田久徳が送って尾茂田叶の遊ゴロをショート瀬井清が失する間に中村信が還ってノーヒットで1点を先制。

 金鯱は2回、小林利蔵、黒澤俊夫連続四球、小林茂太の三前内野安打で無死満塁、瀬井清が初回のタイムリーエラーの汚名を挽回するタイムリーを左前に放って1-1の同点。相原輝夫の一ゴロで黒澤は本封、鈴木鶴雄の三ゴロでセネタース内野陣は5-4-3のゲッツーを選択するが一塁セーフで三走小林茂が還って2-1と逆転。セネタースは昨年百万ドル内野を形成したサード高橋輝夫が兵役で抜けた穴を埋めることができず苦労している。本日は中村信一の北予中学(現・愛媛県立松山北高校、坂の上の雲でお馴染みの秋山好古が校長を務めたこともある名門進学校)の後輩今岡謙次郎がサードに入っている。セカンド・ショートへの強いゴロであればセカンドゲッツー狙いで良いがサード・ファーストゴロの場合はホームゲッツーを狙って確実に本封するのがセオリーである。三遊間寄りのゴロで苅田ならゲッツーを取れると判断したのであろうが、ここを同点止まりで抑えていれば試合の流れはどうなっていたか。

 金鯱は3回、一死後三番矢野槇雄が中前打、小林利蔵四球で一死一二塁、黒澤俊夫がライトスタンドにスリーランを叩き込んで5-1とリードを広げる。黒澤は昭和11年はホームランゼロ、12年春は1本(7月13日、対イーグルス7回戦)あるがこの時はレフト寺内一隆とセンター中根之が衝突した間を衝いてのインサイド・ザ・パーク・ホームランであり、オーバーフェンスのホームランはこれがプロ入り初である。流石は後楽園球場。

 セネタースは4回、先頭の家村相太郎が右中間に二塁打、浅岡三郎左前打、今岡の二ゴロの間に家村が生還、中村信の中前タイムリーで3-5と追い上げる。
 金鯱は4回、先頭の鈴木鶴雄が左翼スタンドにホームラン。トップに返り江口行男四球、島秀之助三前内野安打、矢野の送りバントが犠打エラーとなり無死満塁、小林利蔵押出し四球、小林茂太中犠飛で8-3と突き放す。

 セネタースは5回、左中間二塁打で出塁した苅田が尾茂田の右飛で三進し、中村民雄の中犠飛で還って4-8とするが6回以降は鈴木鶴雄のテンポの良い投球に抑えられる。セネタースは三番手の金子裕が好投して金鯱の追加点を許さないが反撃できずに完敗。

 鈴木鶴雄は6安打4四球1死球4三振の完投で4勝目をあげる。打ってもソロホームランを含む2打点の活躍。春季リーグ戦6月26日の対セネタース6回戦でも2打点をあげて完投勝利、当日のタイトルは「鈴木鶴雄、投打に活躍」。9月26日の対ライオン4回戦(9月12日付けブログ)でも2安打完投と共に三塁打二本を放って「鈴木鶴雄の独り舞台」であった。乗せると怖い男である。

2010年9月19日日曜日

12年秋 9月・月間MVP

9月の月間MVP(対象期間8月29日~9月26日)を発表させていただきます。


投手部門


タイガース 西村幸生 1


 西村は春季リーグ戦の第二期も月間MVPに選出されたが、あの頃よりもはるかにエースとしての貫禄が増してきた。タイガースは16試合で14勝2敗と早くも独走態勢に入ってきたがその原動力となったのが西村のピッチングである。この間10試合に登板して6勝1敗、完封勝利2回。46回を投げて防御率1.37、WHIP1.17、奪三振率5.48である。
 
 西村は12年秋、13年春と二季連続防御率1位となりながらシーズンMVPを逃すこととなる。タイガースの強さは総合力によるものと判断された、「酒仙投手」と呼ばれる飲酒が投票に影響したなどと伝えられているが、当ブログの見解は違います。

 西村がMVPを逃した原因は、12年春の澤村の成績が投手としての基準になってしまったからではないかと考えます。
 澤村の12年春の1期毎のスタッツを並べてみると、


・第一期(3月28日~4月24日)61回2/3を投げて  防御率0.88、WHIP1.02、奪三振率7.67
・第二期(5月1日~5月22日)  55回を投げて       防御率0.98、WHIP0.85、奪三振率6.38
・第三期(5月26日~6月19日)56回1/3を投げて  防御率0.64、WHIP0.76、奪三振率8.51
・第四期(6月23日~7月11日)71回を投げて       防御率0.76、WHIP0.75、奪三振率6.72


であり、数字の水準の高さと共にシーズンを通して高いレベルを維持し続けていることが分かります。長期シーズンの経験が誰にもなかった当時、このレベルが投手のMVPのレベルとされてしまったのではないでしょうか。


 言い換えれば西村はバッキー・ハリス(12年秋MVP)や苅田久徳(13年春MVP)と争っていたのではなく、12年春の澤村栄治と比較されていたのではないでしょうか。



 


打撃部門


 阪急 山下好一 1


 独走を続けるタイガースには不思議なことに春季の松木謙治郎や景浦将のような数字をあげる打者が見当たらず、打撃部門で他を圧している山下好一が選出された。


 山下好一は16試合にフルイニング出場し、60打数24安打、12得点10打点、二塁打・三塁打・本塁打各2本で36塁打、四球10死球1、打率4割、出塁率4割9分3厘、長打率6割、OPS1.093であった。

12年秋 ライオンvs阪急 2回戦

10月2日 (土) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 ライオン  4勝14敗     0.222 菊矢吉男
0 0 0 0 1 0 0 2 X 3 阪急       8勝8敗2分  0.500 石田光彦


勝利投手 石田光彦 5勝4敗
敗戦投手 菊矢吉男 2勝6敗


二塁打 (ラ)浅原


六連投石田光彦が完投勝利


 阪急は初回、先頭の山田伝が右前打で出塁、黒田健吾が送って宮武三郎、ジミー堀尾文人四球で満塁のチャンスを作るが先制ならず。4回も敵失と四球でチャンスをもらうが得点ならず。
 阪急は5回、この回先頭の沖克己が中前打で出塁、山田の投ゴロでランナーが入れ替わり、黒田は死球、宮武の投ゴロで山田は三封、山下好一四球で満塁、堀尾が押出し四球を選んでようやく1点を先制する。

 本日で6連投(2完投を含む)となる石田光彦はランナーを出しながらも得点は許さず7回まで無失点。ライオンは8回、一死後水谷則一が左前打、浅原直人の左中間二塁打で水谷が還って1-1の同点に追い付く。

 阪急は8回、先頭のキヨ野上清光が右前打、上田藤夫四球、石田の投ゴロをピッチャー菊矢吉男が三塁に悪送球して無死満塁、沖に代わる代打山田勝三郎の投ゴロで三走野上は本封、なお一死満塁のチャンスにフランク山田伝が右前に2点タイムリーを放ち3-1とする。

 先発にリリーフにフル回転の石田光彦は5安打6四球4三振の完投で5勝目をあげる。

12年秋 イーグルスvsジャイアンツ 2回戦

10月2日 (土) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 イーグルス       8勝9敗1分  0.471  畑福俊英
0 1 0 0 0 2 0 0 X 3 ジャイアンツ  11勝7敗        0.611  澤村栄治


勝利投手 澤村栄治 3勝3敗
敗戦投手 畑福俊英 6勝7敗


本塁打 (ジ)水原 1号、 伊藤 3号


澤村復活!15奪三振!


 澤村の秋季リーグ戦での不振は7月の徴兵検査で甲種合格したことによる焦燥、恋人(後の優子夫人)との恋愛問題など精神面によるものと伝えられているが、春季リーグ戦の反動と見るのが妥当ではないか。野口明も秋の序盤戦は不振、春の首位打者松木謙治郎も不振が続いている。本日は春とは見違えるチームに成長したイーグルスを相手に快心のピッチングを披露。案外、前川八郎の協力により優子さんとうまくいくことになったからかもしれない(文才のある前川が澤村のラブレターの代筆をしてあげていた。)。

 ジャイアンツは2回、水原茂がレフトスタンドにホームラン、6回にも澤村の恩人、三番セカンド前川八郎が中前打で出塁すると伊藤健太郎がレフトに大ホームランを放って3-0。

 9月25日以来の登板となる澤村栄治は初回からエンジンフル回転、1回から3回まで1イニング2個ずつの三振を奪いパーフェクト。4回一死後杉田屋守の当たりが右前に抜けて初ヒットを許すが続くバッキー・ハリス三振、二盗を試みた杉田屋もキャッチャー内堀保の送球に刺されて三振ゲッツー。5回も先頭のサム高橋吉雄の当たりが左前に抜けるが続く小島利男は6-4-3のゲッツー。6回は漆原進、辻信夫、畑福俊英から三者三振。

 7回は二死後ハリスに初四球を許すが続く高橋を三振、8回も2三振、9回も代打太田健一、畑福を連続三振、28人目の寺内一隆をライトフライに打ち取ってゲームセット。5回を除く毎回の15奪三振、杉田屋守を除く全員三振(代打の太田を含め9人から三振を奪う。)。翌日の読売新聞によると2本のヒットもクリーンヒットでは無かったという。二度のノーヒット・ノーランや洲崎決戦と並ぶ、あるいはそれ以上のプロ入り最高のピッチングであった。



*写真は昭和9年全日本時の澤村のサイン






*このサイニングでは、澤村は青柴憲一の隣に書き込んでいます。当時京都商業を中退したばかりの澤村にとって、立命館大学で快速球投手として鳴らした青柴は地元の英雄であり、あこがれの存在だったのです。

2010年9月18日土曜日

12年秋 金鯱vsセネタース 1回戦

10月2日 (土) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8  9  計
0 0 0 1 0 1 0 0  0  2  金鯱            9勝8敗         0.529  古谷倉之助 鈴木鶴雄
0 0 0 0 0 0 1 1 1X 3  セネタース  6勝10敗1分 0.375  野口明


勝利投手 野口明   5勝6敗
敗戦投手 鈴木鶴雄 3勝3敗


二塁打 (金)黒澤 (セ)苅田


島秀之助、生涯唯一のホームラン


 金鯱は4回、一死後島秀之助が右翼スタンドに飛び込むホームランを放ち1点を先制する。島は秋季リーグ戦に入って好調を持続しておりここまで60打数21安打、打率3割5分でバットマンレース第2位につけている。しかしながら21安打で21塁打、すなわち秋季リーグ戦で放ったヒットは全てシングルヒットである。両翼78メートルの後楽園球場ならではのホームランと言えるであろう。名審判として名高い島秀之助が選手として公式戦に残した唯一のホームランである。

 金鯱は6回、先頭の島が右前打で出塁、矢野槇雄が送って勝負強い小林利蔵が中前にタイムリーを放ち2-0とする。

 セネタースは7回、一死後中村民雄が右前打、大貫賢、伊藤次郎連続四球で一死満塁、ここで家村相太郎に代わって浅岡三郎が代打に起用されるが投ゴロで三走中村民は本封、二死満塁から横沢七郎に代わる代打北浦三男が押出し四球を選んで1-2。更に8回、一死後苅田久徳が左前打から盗塁、尾茂田叶の三ゴロが野選を誘い尾茂田二盗で一死二三塁、中村民三振後、大貫賢四球、伊藤が押出し四球を選んで2-2の同点。

 セネタースは9回裏、先頭の今岡謙次郎が左前打で出塁するがキャッチャー相原輝夫からの牽制に刺されて一死無走者、野口明が内野安打で出塁するが中村信一の投ゴロで野口は二封、中村はここで二盗に成功、直後に苅田が左中間を破るサヨナラ二塁打を放ってセネタースが土壇場でうっちゃる。


*写真は島秀之助が第2打席で現役時代唯一のホームランを打ったシーン

2010年9月17日金曜日

12年秋 名古屋vsタイガース 2回戦

10月2日 (土) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 2 0 0 0 0 0 0 2   名古屋      6勝10敗2分  0.375 森井茂 田中実
1 1 0 0 0 1 2 0 X 5  タイガース  16勝2敗       0.889 西村幸生


勝利投手 西村幸生 7勝1敗
敗戦投手 森井茂   3勝5敗


二塁打 (名)森井 (タ)田中、西村
三塁打 (名)桝 (タ)山口

西村幸生、完投でハーラートップ
 
 タイガースは初回、一死後本堂保次が中前打、伊賀上良平左前打で一死一二塁、山口政信の三ゴロで伊賀上二封となり山口が二盗を決めて二死二三塁、ここでピッチャー森井茂からの牽制をショート芳賀直一が失する間に三走本堂が還って1点を先制。2回にはカイザー田中義雄、西村幸生のバッテリーコンビの二本の二塁打で2-0とする。

 名古屋は3回、先頭の森井が右中間に二塁打、鈴木秀雄の右飛をライト藤村富美男がエラーして一死一三塁、石丸藤吉の内野安打で1-2、石田政良三前内野安打で2-2の同点とする。タイガースは4回の守備からエラーの藤村に代えてライトに玉井栄を起用。

 タイガースは6回、先頭の山口政信が三遊間を破り、藤井勇の中前打と盗塁で無死二三塁、カイザー田中義雄の左犠飛で3-2と再びリードする。更に7回、先頭の岡田宗芳が左前打と盗塁で無死二塁、二死後伊賀上が三遊間を破って4-2、山口が右中間に三塁打を放ち5-2とリードする。

 西村幸生は6回以降を4イニングス連続無安打無得点に抑える好投を見せつけ、結局5安打、2四球、3打点の完投でハーラー単独トップに躍り出る。

2010年9月16日木曜日

12年秋 ライオンvsジャイアンツ 3回戦

9月29日 (水) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 ライオン           4勝13敗  0.235  菊矢吉男
0 0 0 0 0 0 2 4 X 6 ジャイアンツ  10勝7敗    0.588  前川八郎 スタルヒン


勝利投手  スタルヒン  5勝2敗
敗戦投手 菊矢吉男  2勝5敗


二塁打 (ラ)水谷 (ジ)前川


山本栄一郎、逆転タイムリー


 1回、2回と二走者を出しながら得点に結びつけることができなかったライオンは4回、一死後中野隆雄が四球で出塁、柳澤騰市の右前打で一三塁とし、大友一明の左犠飛で1点を先制する。


 ジャイアンツは2回の一死満塁のチャンスを併殺でつぶすと6回までチャンスらしいチャンスは訪れず。ジャイアンツは7回、この回先頭の本日四番に入る水原茂が四球で出塁、前川八郎三失で無死一二塁、永澤富士雄の捕ゴロで水原が三封、しかし前川が敵失で還って1-1の同点。更に山本栄一郎が左前にタイムリーして2-1と逆転に成功する。


 ジャイアンツは8回、二死後水原が三失に生き前川四球、永澤中前打で二死満塁、又も山本栄一郎が左前タイムリーを放って3-1、更にレフトからのバックホームが逸れる間に前川、永澤が還って5-1、スタルヒンの中前タイムリーで6-1とする。


 本来のローテーションであれば本日は澤村栄治の先発であるが、スキップせざるを得ないほど調子を落としているようである。スタルヒン負担が増えそう。

12年秋 イーグルスvs阪急 3回戦

9月29日 (水) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
0 0 0 0 1 0 0 0 1  0   0  2  イーグルス 8勝8敗1分 0.500 畑福俊英 藤野文三郎
0 0 0 0 0 0 0 2 0  0   0  2  阪急           7勝8敗2分 0.467 丸尾千年次 石田光彦

延長11回引分け


 阪急先発丸尾千年次に4回まで3安打無得点に抑えられていたイーグルスは5回、畑福俊英左前打、寺内一隆中前打、杉田屋守左前打で満塁とし、バッキー・ハリスの左犠飛で1点を先制する。

 イーグルス先発畑福俊英に7回まで無得点に抑えられていた阪急は8回、島本義文、西村正夫が連続四球、黒田健吾左前打で満塁、山下好一の中犠飛で1-1の同点、宮武三郎が中前に痛烈なタイムリーを放って2-1とする。

 イーグルスは9回、小島利男が四球で出塁、代走に金井清が起用される。一死後漆原進に代わる代打太田健一四球、辻信夫に代わる佐藤武夫の遊ゴロは6-4-3と転送されるがセカンド宇野錦次の一塁送球が悪送球となる間に金井が生還して2-2の同点とする。

 その後はリリーフの藤野文三郎と石田光彦の投げ合いとなり延長11回引き分く。

2010年9月15日水曜日

12年秋 金鯱vsタイガース 3回戦

9月29日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 1 0 0  1 金鯱             9勝7敗  0.563  中山正嘉 松元三彦
4 4 0 3 0 0 0 0 X 11 タイガース  15勝2敗  0.882  御園生崇男 藤村富美男


勝利投手 御園生崇男 3勝0敗
敗戦投手 中山正嘉   1勝2敗


二塁打 (タ)藤井
本塁打 (タ)田中 1号、2号、 山口1号



猛虎、金鯱に圧勝


 ここ四試合でチーム打率3割4分8厘、36得点をあげて二位に浮上した金鯱が首位タイガースに挑む。

 タイガースは初回、先頭の松木謙治郎中前打、一死後伊賀上良平の右前打で松木は三塁に進み伊賀上二盗後山口政信四球で一死満塁、藤井勇は遊飛に倒れるが、カイザー田中義雄が左越えにグランドスラムを放って4-0と先制する。

 タイガースは2回、一死後岡田宗芳が四球で出塁、ワイルドピッチで岡田が二進、松木の内野安打で一死一三塁、本堂保次四球で一死満塁、伊賀上の中犠飛で5-0、更に山口が右翼にスリーランホームランを叩き込んで8-0とする。

 タイガースは4回、一死後伊賀上四球、二死後藤井勇が左中間にタイムリー二塁打を放ち9-0、田中がこの日二本目のホームランを放って11-0とリードを広げる。金鯱は7回に安永正四郎のヒット、ワイルドピッチ、二番手キャッチャー村田信一の中犠飛で1点を返すが焼け石に水。

 タイガースは春季リーグ戦の大詰めで手痛い二試合連続完封負けを喫した中山正嘉を粉砕して溜飲を下げる。翌日の読売新聞の見出しは「猛虎猛り狂う」。この頃から新聞誌上に「猛虎」の二文字見られるようになる。タイガースはこれで11連勝。

12年秋 名古屋vsセネタース 3回戦

9月29日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 名古屋         6勝9敗2分    0.400  森井茂 田中実
2 4 0 0 0 0 0 0 X 6 セネタース   5勝10敗1分  0.333  浅岡三郎


勝利投手 浅岡三郎 1勝3敗
敗戦投手 森井茂   3勝4敗


二塁打 (セ)尾茂田、中村信
三塁打 (セ)横沢
本塁打 (セ)中村信 2号


浅岡三郎、完封で今季初勝利


 セネタースは初回、先頭の中村信一が左翼線安打、苅田久徳の捕前送りバントをキャッチャー鈴木秀雄が一塁に低投し、白球がライトファウルグラウンドを転々とする間に中村信がホームに還り苅田も三塁に進んで1点を先制する。尾茂田叶の右前タイムリーで2-0、中村民雄の遊ゴロは6-4-3のゲッツーとなるが大貫賢、伊藤次郎が連続四球と名古屋先発の森井茂はぱっとしない。家村相太郎が遊ゴロに倒れてチェンジ。

 セネタースは2回、先頭の横沢七郎が左中間に三塁打、浅岡三郎が左前にタイムリーして3-0、更に中村信が左翼スタンドに二試合連続の第2号ホームランを放って5-0。名古屋はリリーフに田中実を送るが苅田の三前内野安打に敵失が絡んで6-0とする。

 田中実は3回以降セネタース戦を4安打無得点に抑える。一方浅岡三郎は名古屋打線を4安打2四球5三振に抑えて今季初勝利を完封で飾る。浅岡は春季リーグ戦4月15日の対大東京2回戦以来の完封勝利、打たれる時は打たれるが軟投がハマった時は完封もある。

12年秋 第4節 週間MVP

 今節は金鯱が4戦全勝、タイガースが4戦全勝、名古屋が3勝1敗、ジャイアンツが2勝2敗、イーグルス・セネタース・阪急が1勝3敗、ライオンが4戦全敗であった。

 金鯱は四連敗後の四連勝で一気に二位に浮上する。この四試合で135打数47安打、チーム打率3割4分8厘。江口行男が16打数6安打、島秀之助が17打数6安打、小林茂太が18打数8安打、小林利蔵が11打数5安打、相原輝夫が14打数5安打、矢野槇雄が12打数4安打、瀬井清が8打数4安打である。レギュラー陣がこのくらい打つとチーム打率は3割4分8厘となるのである。


週間MVP

投手部門

 金鯱 鈴木鶴雄 1

 対イーグルス2回戦では勝利投手と共に3打数2安打3打点、対ライオン4回戦では完投勝利と共に4打数2安打1打点三塁打2本と、投打にわたる活躍が評価された。


 タイガース 西村幸生 1

 対阪急1回戦は完封勝利、対ジャイアンツ3回戦では澤村栄治に投げ勝ち完投勝利。

打撃部門

 タイガース 伊賀上良平 1

 今節14打数7安打、猛虎打線の中で最も当っている。


 金鯱 小林茂太 1

 今節18打数8安打6打点、主に六番を打ち勝負強い打撃を見せる。




殊勲賞

 名古屋 石田政良 1

 対ライオン2回戦延長17回裏、サヨナラ安打を放つ。


敢闘賞

 名古屋 大沢清 1

 今節20打数7安打。7本中一本が内野安打で残り六本は全て右方向へのヒット。相変わらずの右打ちの名人。


技能賞

 バッキー・ハリス 1

 今節の補殺数は4、3、4、1であり、ことごとく盗塁を刺している。

2010年9月13日月曜日

12年秋 タイガースvsジャイアンツ 4回戦

9月26日 (日) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 4 0 0 1 0 0 0 0 5 タイガース   14勝2敗  0.875  若林忠志
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 ジャイアンツ  9勝7敗  0.563  青柴憲一 スタルヒン


勝利投手 若林忠志 4勝1敗
敗戦投手 青柴憲一 2勝1敗


二塁打 (タ)藤村
 
若林忠志、完投で4勝目

 タイガースは2回、一死後伊賀上良平四球、藤村富美男の右前打で一死一三塁、若林忠志四球で満塁、岡田宗芳の右犠飛で1点を先制。更に松木謙治郎右前、本堂保次左前、山口政信右前と三連続タイムリーで一挙4点をあげる。5回にも左前打で出塁した藤井勇が二失、遊失で三塁に進み若林の二ゴロの間にホームに還って5-0とする。

 7回まで若林忠志に無得点に抑えられていたジャイアンツは8回、先頭の白石敏男がライト藤村のエラーで二塁に進み、二死後伊藤健太郎の左前打でレフト藤井からの返球をカットした若林が落球する間に白石が還って1点を返すがここまで。

 若林忠志は7安打1四球3三振の完投で4勝目をあげる。タイガースは若林忠志と西村幸生をローテーションの柱に据えてジャイアンツ戦四連勝を飾る。

 ジャイアンツは青柴憲一を先発に起用するが1回3分の2でKO。ここはようやく一本立ちしてきたスタルヒンで押すべきではなかったのか。









12年秋 阪急vsセネタース 4回戦

9月26日 (日) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1   阪急            7勝8敗1分     0.467  石田光彦
1 0 0 0 0 1 0 0 X 2  セネタース    4勝10敗1分  0.286  野口明


勝利投手 野口明   4勝6敗
敗戦投手 石田光彦 4勝4敗


二塁打 (阪)堀尾 (セ)大貫
本塁打 (セ)中村信 1号、 中村民 2号


両中村の一発


 セネタースは初回、トップの中村信一の先頭打者ホームランで1点を先制。6月6日の春季リーグ戦ジャイアンツvsセネタース6回戦でも苅田久徳が澤村栄治から先頭打者ホームランを放っており、昭和12年にこれまで行われた公式戦ではセネタースの二遊間コンビによるこの2発だけである。


 阪急は6回、この回先頭の黒田健吾が四球で出塁、一死後山下好一の右前打で一死一三塁、ジミー堀尾文人が右翼線に二塁打を放って1-1の同点とする。続くキヨ野上清光は敬遠の四球で一死満塁、上田藤夫の遊ゴロはショート中村信一が判断よくホームに送球して三走山下好一を刺し、島本義文は三振に倒れて追加点はならず。


 セネタースは6回裏、二死後今度は中村民雄が左翼スタンドに第2号ホームランを放って2-1リードする。調子をあげてきた野口明は7安打5四球1三振の完投で4勝目をあげる。


 阪急は四日連投の石田光彦を見殺しにして勝率5割を割り込む。

2010年9月12日日曜日

12年秋 ライオンvs金鯱 4回戦

9月26日 (日) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1  ライオン  4勝12敗  0.250  近藤久 菊矢吉男
0 0 0 0 2 0 1 1 X 4  金鯱        9勝6敗    0.600  鈴木鶴雄


勝利投手 鈴木鶴雄 3勝2敗
敗戦投手 近藤久   1勝4敗


二塁打 (金)相原、小林茂


鈴木鶴雄の独り舞台


 ライオンは初回、先頭の鬼頭数雄が左前打で出塁、藤浪光雄右前打で無死一三塁、水谷則一の中犠飛で1点を先制する。

 金鯱は5回、相原輝夫が右中間に二塁打、鈴木鶴雄が左越えに三塁打を放って1-1の同点、江口行男が中前にタイムリーを放ち2-1と逆転に成功。7回にも鈴木の三塁打と島秀之助のタイムリーで3-1、8回にはセンターのエラーで出塁した黒澤俊夫が小林茂太の二塁打で三塁に進むとホームスチールを決めて4-0とする。

 鈴木鶴雄は2回以降ライオン打線を3四球1死球のみの無安打に抑える。初回の一二番に連続ヒットを打たれた以降、4四死球を挟んで27連続アウトを取ったことになる(初回の水谷のセンターへの犠牲フライは当ブログが独自に判定しているものでり、当時は犠牲フライの記録は無くフライアウトとして記録されています。)。打っても三塁打二本で1打点、2得点と独り舞台の活躍ぶりであった。

12年秋 イーグルスvs名古屋 4回戦

9月26日 (日) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
5 0 3 1 0 0 2 0 0 11  イーグルス  8勝8敗        0.500  畑福俊英 藤野文三郎
0 0 0 4 1 1 0 0 2  8   名古屋        6勝8敗2分  0.429  木下博喜 遠藤忠二郎 田中実


勝利投手 畑福俊英 6勝6敗
敗戦投手 木下博喜 1勝3敗
セーブ   藤野文三郎 1


二塁打 (イ)中河 (名)白木、芳賀、大沢
三塁打 (名)桝
本塁打 (イ)畑福 1号、2号、 高橋 2号 (名)桝 1号、 小島 1号


ホームラン5発


イーグルスは初回、先頭の寺内一隆四球、杉田屋守左翼線安打、バッキー・ハリス三前内野安打で無死満塁、サム高橋吉雄は三振に倒れるが小島利男が押出し四球を選んで1点を先制。更に中河美芳の中越え二塁打で3-0、畑福俊英四球で再度満塁、辻信夫が押出し四球を選ん4-0、ここで名古屋先発木下博喜から遠藤忠二郎に交代、漆原進の左犠飛でこの回5点をあげる。

 イーグルスは3回、先頭の中河が左前打で出塁、続く畑福は左翼スタンドへツーランホームラン。辻の中飛をセンター桝嘉一がエラー、漆原進の投前内野安打で辻信夫は一気に三塁を陥れて一三塁、寺内の二ゴロの間に辻信夫が生還して8-0とする。更に4回、先頭の高橋が左越えに第2号ホームラン、9-0となったところで名古屋は木下から三番手の田中実にスイッチして後続を断つ。

 名古屋は4回裏、この回先頭の桝嘉一がレフトスタンドにホームラン、大沢清遊ゴロに倒れるが続く小島茂男がレフトオーバーのホームラン、2-9と追い上げを開始する。白木一二中前打、芳賀直一左中間に二塁打、白木は三塁を蹴ってホームに走るが7-6-2のバックホーにはタイミングはアウト、しかしキャッチャー鈴木秀雄が落球して3-9、打者走者芳賀も三塁に進み田中の左犠飛で4-9とする。
 名古屋は5回、桝の右越え三塁打と大沢の右中間二塁打で5-9、6回にも田中が中前打で出塁すると畑福のエラーとワイルドピッチで1点返して6-9と追いすがる。

 しかしイーグルスは7回、中河四球後、畑福が左翼ブリーチャーにこの日二本目のホームランを叩き込んで自らの失点を帳消しとして11-6とリードを広げる。

 名古屋は9回、鈴木に代わる代打岡本利三四球、石丸藤吉の遊ゴロでランナーが入れ替わり、石田政良、桝四球で一死満塁、大沢清が右前に2点タイムリーを放ち8-11と最後まで粘りを見せるが、ここで畑福に代わったリリーフ藤野文三郎に小島は右飛、白木は二飛に倒れて試合終了。

 試合のポイントとなったのは4回の大沢清のバッティングである。大沢清(大沢親分の兄貴)は何度もお伝えしている通り千葉茂も認める右打ちの名人、当ブログでお伝えしている大沢のヒットの大半が右方向のものです。しかしこの打席では乱れ飛ぶホームランに力が入ったかショートゴロ、ここで右前打でつないでいたら試合の展開はどうなっていたか分かりません。5回の第三打席ではすぐに修正して右中間にタイムリー二塁打、9回にもタイムリー右前打を放っているだけに惜しまれるところです。


*写真はホームランを挟んで大沢清が遊ゴロに倒れた場面

2010年9月11日土曜日

12年秋 ジャイアンツvsタイガース 3回戦

9月25日 (土) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 0 0 0 0 0 0 0 2 ジャイアンツ   9勝6敗  0.600 澤村栄治
0 2 0 0 1 0 0 2 X 5 タイガース   13勝2敗  0.867 西村幸生


勝利投手   西村幸生 6勝1敗
敗戦投手 澤村栄治 2勝3敗


タイガース、澤村を攻略


ジャイアンツは立ち直りの気配が見える澤村栄治が先発、一方タイガースは今や不動のエースと言ってもよい西村幸生が先発。

 ジャイアンツは初回、先頭の白石敏男が左越えに二塁打、筒井修が送って水原茂の左犠飛で1点を先制。負傷欠場の中島治康に代わって四番に入る前川八郎四球、伊藤健太郎が左中間に二塁打を放って2-0と先制する。

 タイガースは2回、先頭のカイザー田中義雄が右翼線安打で出塁、澤村キラー藤井勇が左中間に二塁打を放って田中が還り1-2、伊賀上良平も左前タイムリーで続いて2-2の同点とする。更に5回、先頭の山口政信が左前打で出塁、一死後藤井、伊賀上が連続四球、御園生崇男の一ゴロの間に田中が還って3-2と1点を勝ち越す。

 タイガースは8回、一死後西村が左中間に二塁打、岡田宗芳が四球でつなぎ松木謙治郎が右前タイムリーを放ち4-2、岡田も松木のヒットで三塁に進み本堂保次の中犠飛で5-2とする。

 西村幸生は2回以降立ち直り6安打2四球3三振の完投で6勝目、ハーラートップに躍り出る。タイガースは完全に澤村攻略に成功、ようやく半年前に行った投手を一尺手前から投げさせる打撃練習の効果があらわれる。本日の打点も松木、本堂、藤井、伊賀上、御園生と三四番の前後であげており、どこからでも点が取れる。早くも秋季リーグ戦の主導権を握ることとなった。