2019年12月11日水曜日

21年 中部日本vsタイガース 3回戦


6月1日 (土) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 2 1 0 1 0 1 0 0 5 中部 7勝10敗2分 0.412 井上嘉弘 森井茂 
0 0 0 0 0 0 1 0 2 3 タ軍 10勝9敗 0.526 野崎泰一 富樫淳 藤村冨美男 

勝利投手 井上嘉弘 1勝0敗
敗戦投手 野崎泰一 2勝3敗
セーブ     森井茂 1 

二塁打 (中)古川、加藤、金山
三塁打 (中)古川
本塁打 (中)木下 1号、2号

勝利打点 木下政文 1


木下政文、戦後初の2打席連続本塁打

 西宮の第2試合は午後零時20分、金政主審の右手が上がりプレイボール。第1試合は杉村、金政、片岡の三氏審判であったが、この試合は金政、杉村の二氏。片岡勝は球団の用事があったのかもしれない。後楽園の第1試合は午後1時開始予定で、まだ始まっていない。

 中部は2回表、先頭の木下政文がレフトスタンドにホームランを叩き込んで1点を先制、続く服部受弘は四球、笠石徳五郎のニゴロをセカンド本堂が一塁に悪送球して無死一三塁、井上嘉弘は二飛、金山次郎は浅い左飛に倒れて二死一三塁、トップに返り岩本章の三ゴロをサード藤村が一塁に悪送球する間に三走服部が還って2-0とする。


 中部は3回表、二死後木下がレフトに2打席連続ホームラン、3-0とリードする。


 タ軍は4回から先発の野崎泰一に代えて富樫淳をマウンドに送る。


 中部は5回表、先頭の岩本が四球を選んで出塁、二死後岩本が二盗を決めると、加藤正二が左中間に二塁打を放ち4-0、続く木下の三遊間の当りが二走加藤に当たって守備妨害。


 中部は7回表、先頭の金山が左越えに二塁打、トップに返り岩本の打席で金山が三盗を試みるがキャッチャー土井垣からの送球にタッチアウト、岩本は四球、藤原もストレートの四球を選んで一死一二塁、タ軍ベンチはここで富樫をライトに回してサードから藤村がマウンドに上がり、古川清蔵も四球を選んで一死満塁、鈴木秀雄の右犠飛で5-0と突き放す。


 タ軍は7回裏、先頭の御園生が死球を受けて出塁、土井垣のニゴロでランナーが入れ替わり、乾国雄に代わる代打渡辺誠太郎のライト線ヒットで一死一三塁、富樫の遊ゴロ併殺崩れの間に三走土井垣が還って1点を返す。


 タ軍は9回裏、先頭の小林英一の当りは投ゴロ、これをピッチャー井上が一塁に悪送球、小林が二盗に成功、キャッチャー服部の悪送球が加わり小林は三進、土井垣が四球を選んで無死一三塁、渡辺が右前にタイムリーを放ち2-5、土井垣は三塁に進んでなおも無死一三塁、渡辺に代えて代走高山泰夫を起用、富樫の二遊間タイムリーで3-5としてなおも無死一二塁、中部ベンチはここで井上からエース森井茂にスイッチ、長谷川善三の投ゴロを森井は三塁に送球して二走高山は三封、トップに返り呉昌征は投ゴロに倒れて二死二三塁、金田正泰はツーストライクナッシングと追い込まれてから四球を選んで二死満塁、打席に主砲藤村冨美男監督を迎えるが、藤村は遊ゴロに倒れてゲームセット。


 井上嘉弘は戦前に1勝しておりこれが通算2勝目、今季はこの1勝だけとなる。中部は井上が森井以外では初勝利。その森井は好リリーフで初セーブをマーク、依然として中部の全勝利に貢献している。


 木下政文の「back to back」は戦後初の2打席連続本塁打である。木下はこの年この2本しか本塁打を放っていない。


 中部は8安打中6本が長打、木下の2発以外にも、古川、加藤、金山の本塁打王経験者が二塁打を放つなど、「ダイナマイト打線」以上の迫力を見せた。



2019年12月10日火曜日

21年 セネタースvsグレートリング 2回戦


6月1日 (土) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8  9  計 
0 0 3 1 0 1 0 0  5 セ軍 7勝12敗 0.368 黒尾重明 大下弘 黒尾重明 
0 0 0 0 0 0 0 1 5X 6 グ軍 11勝8敗 0.579 松川博爾 

勝利投手 松川博爾 2勝3敗
敗戦投手 黒尾重明 1勝3敗 

二塁打 (セ)鈴木2
三塁打 (グ)堀井

勝利打点 (グ)丸山二三雄 2


グ軍、大逆転勝ち

 本日から3日間、西宮の試合は午前10時半試合開始予定。

 西宮の第1試合は黒尾重明と松川博爾の先発で午前10時30分、杉村主審の右手が上がりプレイボール。


 セ軍は初回、一死後横沢七郎が四球を選んで出塁、飯島のニゴロをセカンド安井が二塁に送球するがショート桶川隆が落球して一死一二塁、本日はレフトに入り四番に復帰した大下の一ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、黒尾は三振に倒れて無得点。


 セ軍は3回表、一死後一言多十が四球で出塁、横沢は三飛に倒れるが、一言が二盗に成功、飯島のニゴロをセカンド安井がエラーする間に二走一言がホームに還って1点を先制、大下の右前打で二死一三塁、ここで大下が二盗に成功、キャッチャー筒井敬三からの二塁送球が悪送球となって三走飯島が生還、大下は三塁に向かい、バックアップのセンター木村勉からの三塁送球も悪送球となって大下が一気に生還、この回3点を先制する。


 守備が固いグ軍としては珍しくミスが重なりこの回3失策。


 セ軍は4回表、先頭の熊耳武彦が四球で出塁、石原光男が送りバントを決めて一死二塁、この時ファースト別所が二塁に送球するが悪送球となって一死三塁、鈴木清一が中越えに二塁打を放ち4-0とリードを広げる。


 セ軍は5回表、先頭の大下が四球で出塁、しかし黒尾の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。ここまで5失策のグ軍守備陣がようやくまともなプレーを見せた。


 セ軍は6回表、先頭の熊耳が四球で出塁、石原が送って一死二塁、鈴木が左中間にこの日2本目のタイムリー二塁打を放ち5-0と突き放す。


 セ軍は7回表、一死後飯島が左前打で出塁すると二盗に成功、しかし大下は三振、黒尾は二飛に倒れて無得点。


 グ軍は8回裏、二死後5回の守備から岡村に代わってライトに入っている田川豊がストレートの四球で出塁するとプロ入り初盗塁に成功、堀井数男が中前にタイムリーを放ち1点返して1-5とする。山本一人監督は続く別所に代打丸山二三雄を起用、しかし丸山はニゴロに倒れてこの回1点止まり。


 グ軍は最終回、先頭の木村が左前打で出塁、桶川に代わる代打阪本政数の遊ゴロをショート鈴木が二塁に悪送球して無死一二塁、阪本の代走に野口渉を起用、松川の遊ゴロで野口は二封、筒井が四球を選んで一死満塁、トップに返り安井が押出し四球を選んで2-5、河西に代わる代打清水秀雄も押出し四球を選んで3-5と2点差、セ軍ベンチはここで黒尾をレフトに回してレフトの大下をマウンドに上げる。しかし大下も田川にストレートの押出し四球を与えて4-5と1点差、セ軍は黒尾を再びマウンドに戻して大下はレフトへ。ところが黒尾はストライクが入らず堀井も押出し四球を選んで遂に5-5の同点、そして丸山がライトにサヨナラヒットを放ち、グ軍が6-5と大逆転サヨナラ勝ち。


 松川博爾は5安打7四球5三振の完投で2勝目をあげる。


 グ軍は前半5失策を犯したが、松川が4度も先頭打者を四球で歩かせ守備のリズムが乱れたことが原因。


 黒尾も合計7個の四球を出したが7回までは2四球。8回に田川を四球で歩かせプロ入り初盗塁を許したのが痛かった。田川の盗塁が試合の流れを一気に変えたとも言える。


 山本一人監督は終盤選手を入れ替えながら粘り強くセ軍を追いかけ、最後は別所に代えて起用した丸山が期待に応えた。丸山は5月27日の阪急戦に続いて今節2本目のサヨナラヒット。1節で2本のサヨナラヒットは、昭和14年11月5日と9日にスタルヒンも記録している。


 グ軍はこれが今節3度目のサヨナラ勝ち。「鶴岡野球」らしいえげつない勝ち方である。


阪本政数の表記について


 グレートリング「阪本政数」の表記について、これまで「坂本政数」と誤って記載していました。大変失礼いたしました。訂正のうえ謝罪させていただきます。

 昭和18年の1個所も含めて気が付いた範囲で全て訂正したつもりですが、未訂正の表記が残されている可能性もありますのでご了承ください。


 なお、ゴ軍の「坂本勲」と巨人の「坂本茂」は「坂本」姓となりますので、グ軍vsゴ軍戦、グ軍vs巨人戦では混同しないようにご注意ください。



2019年12月9日月曜日

森井と内藤


 昭和21年5月の月間MVP(対象期間:4月27日~5月31日)投手部門を争った森井茂と内藤幸三。

 二人のWHIPは共に「1.11」でした。厳密にいうと、森井は「1.113」で内藤は「1.114」なので、森井が僅かに上回っています。


 「WHIP」は分母に投球回数、分子に「被安打+与四球」を取るセイバーメトリクスの代表的指標で、1イニング当りヒットと四球で何人の走者を出すかを表します。防御率同様、数値が低い方が評価は高くなります。「WHIP」で投球内容を測るのは批判もありますが、ここでは「WHIP」の価値を論じるのではなく、森井と内藤の投球内容を比較することが目的です。


 森井の投球回数は91回3分の2、内藤の投球回数は90回3分の2。森井の「被安打+与四球」は102個、内藤の「被安打+与四球」は101個で「WHIP」は共に「1.11」でした。


 分子の中身を見てみると、森井は被安打76本で与四球26個、内藤は被安打46本で与四球55個。すなわち、森井はヒットは打たれるが四球を許さず、内藤はヒットは打たれないが四球を出すピッチングであることが分かります。


 2016年5月21日付け「超スローボーラーの不思議」で分析したように、森井は昭和17年を境にしてコントロールが劇的に改善しました。戦後になってもその投球内容に変わりはありません。


 内藤はプロ野球初年度に沢村を抑えて奪三振王になっていますが与四球数もトップ。あれから10年が経過して球威は衰えていますが、ピッチングの内容は若かりし頃と変わりがないことが分かります。


 「WHIP」の数値だけを見て投球内容を判断するのではなく、その数値の中身を分析することが重要なのです。

https://shokuyakyu.blogspot.com/2016/05/blog-post_21.html


2019年12月7日土曜日

21年 5月 月間MVP


月間MVP

投手部門
 ゴールドスター 内藤幸三 3


 内藤は今月オール先発で10試合に登板して9完投、4勝4敗2完封。90回3分の2を投げて防御率1.19、WHIP1.11。

 防御率トップは白木義一郎で1.10、内藤は僅かに及ばず2位。白木は5月20日以降登板しておらず、5勝4敗ではあるが投球回数は65回3分の1であることが減点材料となった。

 ハーラートップは森井茂で6勝4敗。森井は11試合に登板して先発した9試合はすべて完投、91回3分の2を投げて防御率2.06、WHIP1.11。内藤には防御率で大きく劣る。

 4勝2敗3完封の藤本英雄は防御率2.09。戦前に比べると安定身を増してきたが、打たれるときは打たれるので防御率が上がらない。巨人では近藤貞雄の方が4勝2敗、防御率1.22と安定している。

 首位を走る阪急は投手陣の層が厚く、野口二郎は3勝1敗、防御率1.26ながら投球回数は35回3分の2。天保義夫は4勝1敗、防御率1.46で投球回数は49回3分の1。笠松実は3勝3敗、防御率1.99で投球回数は49回3分の2と、団体戦であれば阪急投手陣が受賞するところであるが、個人の争いでは劣る。

 昭和11年から投げ続ける内藤幸三は現在円熟期にある。実際、今季400イニングを投げるのは真田重蔵、白木義一郎と内藤の3人のみである。内藤は昭和19年8月に続いて、2か月連続の月間MVP受賞となった。昭和17年9・10月にも受賞しており通算3度目となる。

打撃部門
 パシフィック 森下重好 1


 森下は今月91打数33安打2本塁打、打率3割6分3厘、OPS0.964。断トツの19打点が光る。

 打率トップは藤村冨美男で3割8分2厘。但し監督兼任で休みも多く55打数21安打であった。

 加藤正二は打率こそ2割6分6厘ながら3本塁打でトップ。

 青田昇は82打数26安打、打率3割1分7厘であるが打点が僅かに5。意外なことに8盗塁で現在盗塁王である。呉昌征が7盗塁で追っている。


2019年12月5日木曜日

21年 タイガースvsセネタース 3回戦


5月31日 (金) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
2 0 0 0 0 0 0 0 0 2 タ軍 10勝8敗 0.556 藤村冨美男 
0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 セ軍 7勝11敗 0.389 大下弘 

勝利投手 藤村冨美男 3勝0敗
敗戦投手 大下弘        0勝1敗

 二塁打 (セ)一言

勝利打点 (タ)本堂保次 2


史上最強の投手戦

 西宮の第2試合は藤村冨美男と大下弘の先発で午後3時丁度、杉村主審の右手が上がりプレイボール。藤村と大下は共に五番に入っている。

 タ軍は初回、大下の立ち上がりを攻めてトップの金田が左前打で出塁、呉昌征も右前打を放ち無死一二塁、御園生が送りバントを決めて一死二三塁、本堂が左前にタイムリーを放ち1点を先制、一死一三塁から藤村のニゴロをセカンド長持栄吉がゲッツーを狙って二塁に送球、ところが送球を焦ったショート鈴木清一が落球、三走呉が還って2-0、藤村には打点が記録された。一死一二塁から土井垣のニゴロを長持がエラーして一死満塁、しかしここは大下が踏ん張り、乾国雄はカウントノーストライクスリーボールから三振に打ち取り、長谷川善三も左飛に抑えてこの回2点止まり。


 大下は初回からどうなることかと思われたが、2回以降は立ち直ってタ軍打線を抑える。


 セ軍は3回裏、先頭の長持が二遊間にヒット、二死後一言多十の右中間二塁打で長持が生還、1-2と1点差に詰め寄る。


 藤村は4回以降セ軍打線を3安打無得点に抑える好投、大下もタ軍打線に得点を許さず、試合は2対1でタ軍が勝利した。


 藤村冨美男は107球で9回を完投、5安打1四球5三振であった。


 大下弘も136球で9回を完投、9安打2四球3三振であった。


 二人ともピッチングに専念していたため、ここまで4割を超える打率の藤村は4打数無安打、2試合連続2安打と調子を上げてきた大下も3打数無安打であった。


 藤村と大下という、「最強打者列伝」に名を連ねる強打者同士の投手戦となった。戦前でも川上と景浦が投げ合った事例は無く、川上と野口二郎が同じ試合で投げた事例はあるものの野口二郎は好打者ではあるが「再強打者列伝」には入らない。


 タ軍は投手専任の渡辺誠太郎と野崎泰一がぱっとせず、野手兼任の藤村が3勝目、呉昌征も3勝をあげ、御園生崇男も2安打完封がある。


 一方、セ軍はエースの白木義一郎が5月20日から登板しておらず、6月8日に復帰するまでの「空白の3週間」に大下が2度先発している。


 この試合で演じられた「史上最強の投手戦」は、こうした両チームの投手事情に起因して偶然にも起こった現象であった。


 なお、この試合の模様を伝える「日本野球年鑑」には「平凡な大下のカーブが打込めず」と書かれており、大下のカーブは「ションベンカーブ」だったようだ。



2019年12月4日水曜日

還暦野球の世界


 定年退職して今年の4月から還暦野球「品川ベースボールクラブ」に入団しました。
 東京都還暦軟式野球連盟には現在44チームが登録しており、一部から六部で春・秋のリーグ戦を戦っています。その他、幾つかのトーナメント戦も組まれています。基本的に試合は土曜日なので、仕事の都合で水曜の練習には参加できない方も数多く在籍しています。
 先週参加した還暦野球の全国大会は関西のチームが主体で行われており、東京からは「全世田谷」、「杉並SS」、「品川ベースボールクラブ」が混成チーム「品川エンジェルス」を結成して参加して準優勝しました。
 3日間3連投の「全世田谷」のエースTさんは、サイド気味のスリークォーターからの快速球と高速スライダーに切れ味鋭いシンカーを駆使する還暦球界No1ピッチャー。67歳の時にトミー・ジョン手術をして、リハビリ後に復帰してきた鉄腕投手です。現在71歳ですが、草野球デビューしたイチローも、あのピッチングを見たら驚愕するのではないでしょうか。先日の飲み会で、保坂さんが「近鉄の柳田に似ている」と仰ると、私が「ソフトバンクのギータの親戚ですよ」と突っ込みを入れる、そんな感じです。
 元プロが4人在籍する「品川ベースボールクラブ」には有力な新人が続々と参入してきましたので、来年からは私の出番はないと思います。それでも、火曜と金曜は少しレベルの落ちる60歳以上の「草野球」を楽しめる場もあります。もう少し力の落ちるチームに移籍する手もありますしね(笑)。

*前列右端が高浦さん、その左が保坂さんです。私の背番号は「42」。MLBに移籍したら付けられませんので、今、付けています(笑)。


2019年12月3日火曜日

21年 パシフィックvs巨人 2回戦


5月31日 (金) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12  計 
0 0 0 1 0 0 0 0 0  0   0   0   1 パ軍 9勝11敗2分 0.450 井筒研一 
0 0 0 0 0 0 1 0 0  0   0   0   1 巨人 10勝8敗1分 0.556 近藤貞雄 

二塁打 (パ)木暮 (巨)黒沢
三塁打 (巨)山川

勝利打点 なし


伊勢川真澄、三度盗塁を刺す

 後楽園の第2試合は井筒研一と近藤貞雄の先発で午後3時3分、島主審の右手が上がりプレイボール。

 パ軍は初回、先頭の木暮力三がレフト戦に二塁打、富松信彦が四球を選んで無死一二塁、しかし小島利男の三ゴロは「5-4-3」と渡るゲッツー、森下重好も三ゴロに倒れて無得点。


 巨人は1回裏、先頭の呉新亨が四球を選んで出塁、しかし山川喜作のセカンドライナーに呉は戻れずゲッツー、千葉は右飛に倒れて無得点。


 序盤は両軍攻め手を欠き、3回まで0対0が続く。


 パ軍は4回表、一死後小島がストレートの四球で出塁、森下が右前打、辻井弘も四球を選んで無死満塁、伊勢川真澄は三直に倒れるが、松井信勝が右前にタイムリーを放ち1点を先制する。


 巨人は4回裏、先頭の山川が右中間に三塁打を放って同点のチャンス、しかし千葉は遊ゴロに倒れて一死三塁、続く黒沢俊夫はスコアカードによると「4A」でアウト、すなわち、セカンド小島がゴロを捕球してそのまま一塁ベースに駆け込みファーストアウト、三走山川は動いていない。黒沢はバントの構えをしてファースト辻井は前進守備、黒沢がバットを引いて一二塁間にゴロを転がし、小島が捌いてそのまま一塁ベースに駆け込み、三走山川は動けなかったということか。山川がスクイズのサインを見逃したが黒沢が二前にバントを転がしたとも考えられる。二死三塁となって多田文久三は中飛に倒れこの回無得点。


 巨人は7回表、一死後黒沢がレフト戦に二塁打、続く多田の遊ゴロをショート松井がエラー、一死一三塁から林清一が右前に同点タイムリーを放ち1-1、一死一二塁から二走多田が三盗を試みるがキャッチャー伊勢川からの三塁送球にタッチアウト、一走林は動いていないので多田がノーサインで走ったようだ。このケースの三盗は面白い試み、伊勢川の悪送球を誘っていたら多田の走塁は「激賞」されたところだが、伊勢川は落ち着いて送球した。11月29日付「阪急vsパシフィック 5回戦 」で伊勢川真澄の「選手名鑑」を掲載しましたが、そこには「土井垣のはげしさと対照されるしずかな捕手」と書かれている。ここはそのコメントどおりの冷静沈着な送球であった。続く諏訪裕良は投ゴロに倒れてこの回同点止まり。


 パ軍は9回表、先頭の辻井が左前打で出塁、しかし一死後松井の遊ゴロが「6-4-3」と渡ってダブルプレー。


 パ軍は10回表、先頭の平野徳松に代わる代打佐竹一雄が一二塁に内野安打、代走に喜瀬正顕を起用、続く井筒は三振に倒れるが、トップに返り木暮がレフト線にヒットを放ち一死一二塁、しかし富松のセカンドライナーに二走喜瀬が戻れずダブルプレー。


 巨人は11回裏、一死後山田潔が左前打で出塁、続く呉の打席で山田が二盗を試みるが伊勢川からの二塁送球にタッチアウト、呉の三ゴロをサード高須清が一塁に悪送球して二死一塁、呉が二盗を試みるが又も伊勢川からの送球にタッチアウト。


 12回も両軍無得点、規程により引き分く。


 井筒研一は139球で12回を投げ抜き5安打1四球1三振1失点、自責点ゼロ。


 近藤貞雄は166球で12回を投げ抜き8安打5四球2三振1失点、自責点1。


 パ軍は終始押し気味に試合を進めたがあと1本が出ず、9残塁を喫した。


 巨人守備陣はノーエラー、3つの併殺でピンチを切り抜けた。


 伊勢川真澄は巨人が試みた3つの盗塁をすべて刺す堅守を見せた。



2019年12月2日月曜日

21年 ゴールドスターvs阪急 3回戦


5月31日 (金) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 ゴ軍 9勝9敗1分 0.500 内藤幸三 
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急 12勝8敗 0.600 笠松実 天保義夫 

勝利投手 内藤幸三 4勝4敗
敗戦投手 笠松実     3勝3敗 

勝利打点 辻功 1


内藤幸三、圧巻のピッチング

 後楽園の第1試合は内藤幸三と笠松実の先発で午後1時7分、池田球審の右手が上がりプレイボール。

 ゴ軍は初回、二死後坪内がセーフティバント、ピッチャー笠松からの一塁送球はタイミングはアウトであったがファースト野口明が落球、四番に座って3試合目となる田中宣顕が右前打を放ち二死一三塁と先制のチャンス、しかし菊矢は投ゴロに倒れて無得点。


 阪急は2回裏、先頭の野口明がストレートの四球で出塁、三木久一の右前打で無死一三塁と先制のチャンス、しかし荒木茂は三振、坂田清春は三飛、笠松の遊ゴロで一走三木が二封されて無得点。


 内藤は3回~5回を三者凡退に抑える。


 ゴ軍は5回表、一死後坂本勲がストレートの四球で出塁、トップに返り酒沢政夫の右前打で坂本は二塁ベースを蹴って三塁に向かうが、ライト下社邦男からの三塁送球にタッチアウト、酒沢の当りがライナーだったことからするとちょっと無理をし過ぎたか、あるいはエンドランであったがライナーだったので一瞬躊躇したか。続く大友一明が四球を選んで二死一二塁、しかし坪内は捕邪飛に倒れて無得点。


 ゴ軍は6回表、先頭の田中が一塁に内野安打、菊矢と内藤は連続三振に倒れるが、末崎正隆が四球を選んで二死一二塁、ここで好投を続ける内藤の女房役辻功が中前にタイムリーを放ち1点を先制する。


 ゴ軍は7回表、先頭の酒沢がストレートの四球で出塁、大友は三飛に倒れるが、坪内が三前にセーフティバントを決めて一死一二塁、田中がストレートの四球を選んで一死満塁、阪急ベンチはここで先発の笠松から天保義夫にスイッチ、菊矢の鋭いライナーはセンターに抜けるかと見えたが、セカンド上田藤夫がキャッチしてそのまま二塁ベースを踏み、二走坪内は戻れずダブルプレー。阪急は6回の守備から荒木に代わって上田がセカンドの守備に入っていた。


 内藤は6回裏に1四球を出すが無失点、7回は三者凡退とここまで1安打無失点。


 阪急は8回裏、一死後天保が四球で出塁、尾西信一も3球ファウルで粘って四球を選び一死一二塁、しかしトップに返り山田伝は左飛、鳥居兵治は遊ゴロに倒れて絶好のチャンスを逃す。


 内藤幸三は最終回、二死後三木に三塁内野安打を許すが、最後は上田を遊飛に抑え、2安打4四球2三振で今季2度目の完封、4勝目をマークする。終盤ややバテた感はあったが、112球の会心のピッチングであった。


 昭和11年から投げ続ける内藤は今が全盛期。この年400イニングを投げるのは、真田重蔵、白木義一郎と内藤の3人のみである。プロ野球初年度には沢村栄治を抑えて奪三振王、戦後初年度には400イニング投球、2リーグ分裂初年度には新球団広島のチーム初勝利と、歴史の節目で活躍を見せる。



2019年12月1日日曜日

21年 中部日本vsグレートリング 3回戦


5月31日 (金) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 中部 6勝10敗2分 0.375 松尾幸造 西沢道夫 
3 0 1 0 0 0 1 0 X 5 グ軍 10勝8敗 0.556 別所昭 

勝利投手 別所昭     1勝0敗
敗戦投手 松尾幸造 0勝2敗 

二塁打 (中)松尾 (グ)清水
三塁打 (グ)木村

勝利打点 なし

猛打賞 (グ)筒井敬三 1


機動破壊

 本日は後楽園と西宮で2試合ずつ。西宮の第1試合は午後1時丁度、金政主審の右手が上がりプレイボール。

 グ軍は初回、先頭の安井亀和が中前打で出塁、筒井敬三の当りは三塁線へのゴロ、これをサード藤原鉄之助が間に合わない一塁に投げて悪送球、この間に一走安井は快足を飛ばしてホームを駆け抜け1点を先制、ヒットが記録された打者走者の筒井は二塁に進み、岡村俊昭の遊ゴロの間に筒井は三進、山本一人が中前にタイムリーを放ち2-0、堀井数男の三ゴロの間に一走山本は一気に三塁に進み、木村勉が右中間に三塁打を放ちこの回3点を先制する。


 グ軍の「機動破壊」が初回から炸裂した。


 グ軍は3回裏、先頭の堀井はスリーボールノーストライクから三振、中部の竹内愛一監督はここで先発の松尾から西沢道夫にスイッチ、木村は遊ゴロに倒れるが、清水秀雄がライト線に二塁打、別所昭が四球を選んで二死一二塁、桶川隆のライト線タイムリーで4-0とリードを広げる。


 グ軍は7回裏、一死後堀井数男が左前打で出塁、二死後堀井が二盗に成功、直後に清水がライト線にタイムリーを放ち5-0と突き放す。


 中部は最終回、先頭の古川清蔵の当りは三ゴロ、これをサード山本がエラー、続く加藤正二の遊ゴロもショート桶川がエラーして無死一二塁、木下政文の右前打で無死満塁、服部受弘が中前にタイムリーを放ち1点を返し1-5としてなおも無死満塁と一発出れば同点の場面、しかし別所が踏ん張り笠石、西沢は連続三振、二死満塁となって金山次郎に代わり代打に5年ぶり出場となる大沢清が登場、しかし大沢は投ゴロに倒れて反撃もここまで。


 今季2度目の登板となった別所昭は6安打1四球6三振1失点、自責点ゼロの完投で戦後初勝利を飾る。別所はこの後295個の勝利を積み重ね、通算310勝をマークすることとなる。


 この日のグ軍は記録こそ盗塁1個であるが、初回から積極的な走塁が目に付いた。この約75年後に、健大高崎の「機動破壊」が高校野球に革命を起こすことになるが、戦後初年度のグレートリングの機動力野球がその「元祖」となっている。



*戦後初勝利をあげた別所昭。巨人移籍後の大版ブロマイド。

2019年11月29日金曜日

21年 阪急vsパシフィック 5回戦


5月30日 (木) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計 
0 0 0 0 0 0 0 0 4  4  阪急 12勝7敗 0.632 森弘太郎 野口二郎 鳥居兵治 
3 2 0 3 0 5 0 0 X 13 パ軍 9勝11敗1分 0.450 真田重蔵 

勝利投手 真田重蔵 5勝3敗
敗戦投手 森弘太郎 0勝1敗 

二塁打 (急)野口明 (パ)伊勢川
本塁打 (パ)森下 2号

勝利打点 (パ)伊勢川真澄 1

猛打賞 (パ)小島利男 1


伊勢川真澄、満塁走者一掃二塁打

 「日本野球年鑑」によると、「阪急は不運にも着京後直ちに試合をせねばならなかったので全員睡眠不足」とのこと。阪急は27日に西宮球場でグレートリングとの試合があったが、東京行の切符が手配できなかったのか、昨晩大阪発の夜行で今朝東京に着いたようだ。進駐軍の軍用機が使えればこんな事態に追い込まれることはなかったでしょうが、敗戦国ということでちょっと無理か。

 後楽園の第2試合は森弘太郎と真田重蔵の先発で午後3時20分、池田球審の右手が上がりプレイボール。


 パ軍は初回、先頭の木暮力三が四球を選んで出塁、富松信彦の二遊間ヒットで木暮は三塁に進み、富松が二盗を決めて無死二三塁、小島利男は三ゴロに倒れ、森下重好は歩かされて一死満塁、辻井弘は浅い左飛に倒れて二死満塁、ここで伊勢川真澄がライト線に鋭いライナーの二塁打を放ち走者を一掃、3点を先制する。


 パ軍は2回裏、先頭の平野徳松が中前打、真田も左前打で続き、トップに返り木暮が四球を選んで無死満塁、阪急ベンチはここで森から野口二郎にスイッチ、富松の二ゴロ併殺の間に三走平野が還って4-0、小島が左前にタイムリーを放ち5-0と突き放す。


 パ軍は4回裏、先頭の真田が三失に生き、二死後小島が左前打を放って一二塁、ここで森下がレフトスタンドに第2号スリーランホームランを叩き込み8-0として前半にして試合を決める。


 阪急は5回から鳥居兵治がプロ入り初登板。


 眠気が抜けきらない阪急は5回まで1安打無得点。6回表、ようやく三木久一の四球と野口明のヒットで一死一二塁のチャンスを作るが、上田藤夫は右飛、日比野武は左飛に倒れて無得点。


 パ軍は6回裏、一死後富松がストレートの四球、小島は右前打、森下もストレートの四球を選んで一死満塁、辻井は浅い左飛に倒れて二死満塁、ここで藤本定義監督は伊勢川に代えて代打に白石敏男を起用、白石がストレートの押出し四球を選んで9-0、松井信勝に代わる代打高須清の押出し四球で10-0、平野のニゴロでセカンド上田が二塁に送球するがベースカバーに入ったショート尾西信一が落球する間に三走森下に続いて二走白石も還って12-0、真田が中前にタイムリーを放ち13-0とする。


 阪急は9回表、鳥居、尾西が連続四球、トップに返り山田伝の左前打で無死満塁、下社邦男の押出し四球で1点目、青田の中犠飛で2点目、二死後野口明の左中間二塁打で2点を返して4点を取り返すが反撃もここまで。


 最終回は少しバテたが、真田重蔵は5安打8四球無三振の完投で5勝目をマークする。


 移動の不備という不運はあったが、阪急は勢いが落ちてきた。


 阪急が本調子を欠いていたととは言え、パ軍は伊勢川真澄が満塁走者一掃二塁打、森下重好がスリーランホームラン、小島利男が猛打賞の猛攻を見せた。



*初回に満塁走者一掃二塁打を放った伊勢川真澄。大映スターズ時代の選手名鑑に残された直筆サイン。

2019年11月28日木曜日

準優勝


 ほっともっとフィールド神戸で行われた還暦野球の全国大会に出場して準優勝してきました。

 初日の1回戦の相手は2年連続全国制覇の強豪でしたが、1対1からのタイブレークでサヨナラ勝ち。


 2日目は2試合で準々決勝は4対1、準決勝は4対2と接戦をモノにしました。


 3日目の決勝の相手は1975年夏の甲子園準優勝の新居浜商業OBを中心に結成された新居浜ビクトリーズ。残念ながら6対4で敗れて準優勝でしたが、安打数は我々品川エンジェルスが12本で相手は8本と打ち勝っていました。


 私も甲子園準優勝投手の村上さんから2本ヒットを打ちましたよ!


 「品川エンジェルス」は東京都還暦野球の強豪「全世田谷」、「杉並SS」、私が所属する「品川ベースボールクラブ」の混成チームです。「品川ベースボールクラブ」からは、日大一高時代に3年連続エースとして甲子園を沸かせた保坂さん、法政時代に江川の球を受けていた高浦さんの元プロ2名が参加しました。グラウンドでも飲み会でも仲良くしていただいています。


 この年齢で甲子園準優勝投手からヒットを打ったり、元プロの方々と懇意にさせていただいたり、「野球」という共通言語のおかげですね(笑)。



2019年11月25日月曜日

休載のお知らせ


 今週は野球の試合で神戸に行ってきますので、しばらく休載させていただきます。

 トーナメント戦なので、早く負ければ早く戻ってきます(笑)。



貫井函治の表記について


 11月22日付「21年 中部日本vsセネタース 3回戦でお伝えしたとおり、この日プロ入り初出場の貫井函治がいきなり猛打賞を記録しました。

 この貫井函治の表記ですが、「Wikipedia」では「貫井丞治」を採用しており、「貫井函治と表記される文献もある」としています。


 「日本プロ野球記録大全集」では「貫井丞治」、「日本プロ野球50年史」でも「貫井丞治」を採用しています。


 当時の資料では、昭和21年4月1日発行「体育週報」(日本体育週報社)第553号「春の日本野球」に8球団のメンバー表が掲載されており、ここでは「漢字ペディア」で「函」の異体字と説明されている「凾」の左右の棒がない文字(下の写真参照)になっています。


 スコアカードに押されているスタンプは判読しずらいのですが、「函」の異体字とされる「凾」のように見えます(下の写真参照)。


 当ブログはスコアカードに従っていますので、「貫井函治」と表記させていただいております。


*昭和21年4月1日発行「体育週報」に掲載されているメンバー表では「凾」の左右の棒がない文字が使われている。

*スコアカードに押されているスタンプでは「函」の異体字とされる「凾」のように見える。

2019年11月24日日曜日

21年 タイガースvsグレートリング 3回戦


5月30日 (木) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計 
1 1 0 0 0 0 0 0 1  0  3 タ軍 9勝8敗 0.529 渡辺誠太郎 
0 0 0 0 2 0 1 0 0 1X 4 グ軍 9勝8敗 0.529 丸山二三雄 

勝利投手 丸山二三雄 4勝2敗
敗戦投手 渡辺誠太郎 1勝5敗 

二塁打 (タ)藤村3、富樫 (グ)山本、安井、桶川、筒井
本塁打 (タ)本堂保次 1号

勝利打点 (グ)田川豊 1

猛打賞 (タ)藤村冨美男(4安打)4


田川豊、鮮烈デビュー

 西宮の第2試合は渡辺誠太郎と丸山二三雄の先発で午後3時10分、金政主審の右手が上がりプレイボール。

 グ軍は河西俊雄が二番ショートで復帰。タ軍は土井垣武が六番キャッチャーで5月12日以来の出場。両軍の四番サードは藤村監督と山本監督、これはこの3回戦が初めて。


 タ軍は初回、先頭の呉昌征が四球を選んで出塁、金田正泰が送って一死二塁、しかし丸山からの牽制にタッチアウト、ここは左の丸山ということで三盗を狙っていたか、直後に本堂保次がレフトスタンドに先制ホームランを叩き込んで1-0、続く藤村冨美男監督も右中間に二塁打、しかし御園生崇男は左飛に倒れて追加点はならず。


 グ軍は1回裏、一死後河西が三塁へのヒットで出塁すると二盗に成功、しかし後続なく無得点。


 タ軍は2回表、一死後富樫淳が右前打で出塁、渡部の遊ゴロをショート河西がファンブル、白球を拾い上げて二塁に送球するが悪送球、この間に富樫は一気にホームに還って2-0とする。


 タ軍は3回表、一死後本堂が四球を選んで出塁、グ軍山本一人監督はここでショートをWエラーを犯した河西から桶川隆に交代、これは丸山に一息入れさせる効果も狙ったか、藤村監督は三塁にヒット、御園生も右前打で続いて一死満塁、しかし土井垣武のニゴロがセカンド安井-ショート桶川-ファースト別所と渡ってダブルプレー、ショックを引きずる河西だったらこうは行ったか、ここは山本監督のファインプレー。


 グ軍は5回裏、先頭の丸山の当りはニゴロ、これをセカンド本堂がエラー、筒井敬三は中飛に倒れるが、トップに返り安井が中越えに二塁打を放って丸山を迎え入れ1-2、桶川も左中間に二塁打を放ち2-2の同点に追い付く。河西にポジションを取られそうな桶川も必死。


 タ軍は6回表、先頭の富樫の当りは右中間を破り、富樫は二塁ベースを蹴って三塁に向かうが、ライト岡村俊昭からの返球を中継したセカンド安井の三塁送球にタッチアウト、山本監督はここでライトを岡村からプロ入り初出場となる田川豊に交代、岡村に何かアクシデントがあったのか、あるいは岡村の拙守により富樫の打球が頭上を越えたのを見て俊足の田川に代えたのか、この交代で丸山は落ち着きを取り戻し、渡辺は三振、長谷川善三は四球を選ぶが、トップに返り呉昌征も三振。


 タ軍は7回表、先頭の金田が二遊間にヒット、本堂の三ゴロをサード山本監督がエラー、藤村監督の打席で丸山がボークを犯して無死二三塁、しかし丸山が踏ん張り藤村は三振、御園生が四球を選んで一死満塁、土井垣の当りは二遊間へ、しかしセカンド安井がこの打球に追い付くと自ら二塁ベースを踏んで一塁に送球、「4B-3」のダブルプレーでタ軍のチャンスは潰える。


 グ軍は7回裏、先頭の別所が四球を選んで出塁、しかし丸山のニゴロが「4-6-3」と渡ってダブルプレー、チャンスは潰えたかに見えたが、筒井が左中間に二塁打を放って二死二塁、トップに返り安井が中前に勝ち越しタイムリーを放ち3-2とリードする。


 グ軍は8回の守備からエラーを犯した山本監督がサードからファーストに回り、別所に代わって宮崎仁郎が入ってサード。


 タ軍は9回表、先頭の金田が四球を選んで出塁、本堂の一ゴロの間に金田は二進、藤村監督が左中間に二塁打を放ち3-3の同点、御園生は四球を選んで一死一二塁、土井垣の当りはセカンドライナー、二走藤村は戻れずダブルプレーとなって同点止まり。


 グ軍は9回裏、先頭の木村勉が三塁にヒット、宮崎の三ゴロでランナーが入れ替わり、丸山の右前打で一死一二塁と一打サヨナラのチャンス、しかし筒井の三ゴロをサード藤村監督が三塁ベースを踏んで一塁に送球して「5C-3」のダブルプレー、試合は延長戦に突入する。


 グ軍は10回裏、先頭の安井が四球を選んで出塁、桶川の投ゴロで安井は二封されて一死一塁、ここでこの日初登場の田川が右中間にサヨナラ三塁打を放ちグ軍が激戦を制す。


 丸山二三雄は10回を完投して10安打8四球7三振、崩れかかる場面を何度も凌いで4勝目をマークする。


 タ軍は久々登場の土井垣武が二塁へ3つの併殺打、セカンド安井の好守に阻まれた。藤村冨美男はこの日の4安打で今季51打数21安打、打率を4割に乗せてきた。


 グ軍は安井亀和が攻守にわたって活躍、河西俊雄と田川豊も戦列に加わり役者が揃ってきた。


*サヨナラ三塁打で鮮烈デビューを飾った田川豊。近鉄初年度の選手名鑑に残された直筆サイン。


訂正のお知らせ⑥


 11月23日付け「巨人vsゴールドスター 3回戦」の実況について、一部誤りがありましたので訂正させていただきます。

 藤本英雄監督の登場場面を最終回に「近藤貞雄に代わる代打」とお伝えしていましたが、これは誤りで、正しくは6回裏ゴ軍の攻撃で田中宣顕が同点二塁打を放った場面で諏訪裕良をリリーフして二番手としてマウンドに上がり、直後に菊矢吉男に決勝打を打たれたものです。この時諏訪が近藤に代わってファーストに回り、近藤に代わって藤本が入りピッチャーという布陣となりました。


 以上、訂正のうえお詫び申し上げます。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。本文は訂正済みです。


2019年11月23日土曜日

21年 巨人vsゴールドスター 3回戦


5月30日 (木) 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 1 2 0 0 0 0 3 巨人 10勝8敗 0.556 諏訪裕良 藤本英雄 
2 0 0 0 0 3 0 1 X 6 ゴ軍 8勝9敗1分 0.471 石田光彦 

勝利投手 石田光彦 4勝5敗
敗戦投手 諏訪裕良 1勝3敗 

二塁打 (巨)多田 (ゴ)田中

勝利打点 (ゴ)菊矢吉男 2

猛打賞 (ゴ)酒沢政夫 1、田中宣顕 3


石田光彦、2試合連続完投勝利

 後楽園の第1試合は諏訪裕良と石田光彦の先発で午後1時7分、島球審の右手が上がりプレイボール。

 ゴ軍は初回、先頭の酒沢政夫がセンター右にヒット、大友一明が右翼線にヒット、これをライト林清一が後逸する間に一走酒沢は一気にホームに還り1点を先制、打者走者の大友は二塁に進み、坪内が送って一死三塁、田中宣顕のニゴロの間に三走大友が還ってこの回2点を先制する。


 前の試合で3安打完封の石田はこの日も快調な立ち上がりを見せ、3回までパーフェクトピッチング。


 ゴ軍は3回裏、先頭の酒沢が三前にセーフティバント、サード山川喜作の一塁送球が悪送球となる間に酒沢は三塁に進み、大友の遊ゴロで三走酒沢がホームに突っ込むがショート山田潔の本塁送球にタッチアウト、この守備があるから藤本英雄監督は打てなくても山田を使い続けている。


 巨人は4回表、二死後千葉茂が四球を選んで出塁、石田のワイルドピッチで千葉は二進、黒沢俊夫も四球で二死一二塁、多田文久三のライト線二塁打で1-2と1点差に迫る。


 ゴ軍は4回裏、先頭の田中が中前打で出塁、しかし菊矢のサードライナーに田中が飛び出しゲッツー。


 巨人は5回表、一死後諏訪が四球で出塁、山田の中前打で諏訪は三塁に進み、センター坪内の三塁送球の間に打者走者の山田も二塁に進んで一死二三塁、トップに返り呉新亨は三ゴロに倒れるが、山川が四球を選んで二死満塁、千葉が中前に逆転2点タイムリーを放ち3-2とリードする。


 ゴ軍は5回裏、二死後坂本勲が四球を選んで出塁、トップに返り酒沢の右前打で一走坂本が三塁に向かうが、ライト林からの送球にタッチアウト。


 無駄な走塁が続いて追加点を奪えなかったゴ軍は6回裏、先頭の大友がストレートの四球で出塁、坪内が死球を受けて無死一二塁、田中が右中間に二塁打を放ち3-3の同点、ここで諏訪が近藤に代わってファーストに回り、近藤に代わって藤本英雄監督が入り二番手のマウンドに上がるが、菊矢が中前に2点タイムリーを放ち5-3と試合をひっくり返す。



 ゴ軍は8回裏、一死後坪内が中前打、田中の中前打で坪内は三塁に進んで一死一三塁、菊矢の左犠飛で6-3とダメ押す。


 巨人は最終回、一死後林が左前打で出塁、藤本の遊ゴロでランナーが入れ替わり、諏訪がストレートの四球を選んで二死一二塁と一発出れば同点の場面で九番山田に代えて中尾輝三を代打に起用、しかし石田が最後の踏ん張りを見せて中尾は三振、試合終了。


 石田光彦は4安打6四球4三振の完投で4勝目をマークする。



 好調田中宣顕がこの日も4打数3安打を記録。田中は第3節終了時点では打率1割9分6厘と低迷していたが、その後の7試合で26打数13安打と爆発、打率も3割に乗せてきた。

 その田中が四番に座ってから五番に下げられた菊矢吉男が意地の決勝打を放つ。菊矢は打率こそ1割台だが、ベテランらしい勝負強さを見せている。


2019年11月22日金曜日

21年 中部日本vsセネタース 3回戦


5月30日 (木) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
5 0 0 0 1 1 8 0 0 15 中部 6勝9敗2分 0.400 森井茂 
0 0 1 1 1 0 0 0 2  5  セ軍 7勝10敗 0.412 上口政 大下弘 

勝利投手 森井茂 6勝4敗
敗戦投手 上口政 0勝1敗 

二塁打 (中)笠石、古川、服部

勝利打点 (中)古川清蔵 1

猛打賞 (中)古川清蔵 1、金山次郎(4安打) 1 (セ)貫井函治 1、鈴木清一 1


森井茂、中部の全6勝をマーク

 第6節の初日は後楽園で2試合と西宮で2試合。西宮の第1試合は午後1時丁度、杉村主審の右手が上がりプレイボール。

 中部は依然小鶴誠が欠場、金山次郎が復帰して九番ショートに入る。


 セ軍は大下が2試合連続四番、バッテリーは初登板の上口政に初出場の貫井函治、五番ライトも初出場の北川圭太郎と、目先を変えてきた。


 中部は初回、先頭の岩本章の当りは二飛、これをセカンド長持栄吉が落球、藤原鉄之助はストレートの四球で無死一二塁、古川清蔵が中前に先制タイムリーを放ち1-0、藤原が三盗に成功、一走古川は動いていないので、慣れない上口-貫井の隙を見て藤原がノーサインで走ったものか、加藤正二もストレートの四球で無死満塁、木下政文のライト線タイムリーで2-0、服部受弘の三ゴロの間に三走古川が還って3-0、笠石徳五郎が左中間に二塁打を放ち二者還ってこの回5点を先制する。


 セ軍先発の上口は、2回、3回もピンチを迎えるが何とか無失点で切り抜ける。


 セ軍は3回裏、一死後プロ入り初打席の貫井が中前に初ヒット、鈴木清一の右前打で一死一二塁、トップに返り一言多十が右前にタイムリーを放ち1-5とする。


 セ軍は4回裏、先頭の大下が右前打で出塁、北川のニゴロ、長持の遊ゴロの間に大下は二進、三進して二死三塁、森井茂のワイルドピッチで大下が還り2-5と追い上げる。


 中部は5回表、服部、笠石が連続中前打、森井が送って一死二三塁、金山の右前タイムリーで6-2とする。金山が二盗を決め、岩本が死球を受けて一死満塁、しかし藤原の三ゴロが「5-4-3」と渡ってダブルプレー。


 セ軍は5回裏、先頭の貫井の当りは遊ゴロ、これをファースト笠石が落球、鈴木の右前打で貫井は三塁に走りかけるがストップ、しかし打者走者の鈴木は前を見ていなかったようで二塁に向かって走り続け、「9-1-5-6」と転送されて鈴木がタッチアウト、一死二塁となってトップに返り岩本が右前打を放って一死一三塁、横沢の右飛をライト加藤が落球、更に白球を拾った加藤からの返球が悪送球、三走貫井が生還して3-6と追い上げる。貫井の得点について横沢に打点が記録されているので、当時は公式記録では「犠牲フライ」は記録されていなかったが、現代風に言うと「犠牲フライには十分な飛距離」と判断されて横沢に打点が記録されたものと考えられるところから、当ブログの記録では横沢の「右犠飛」となる。加藤には落球と悪送球の2つのエラーが記録されて一死二三塁、しかし飯島は浅い左飛、大下も三振に倒れて追加得点はならず。セ軍はここで試合の流れを掴みきれず、この回はこの試合の大きな分岐点となった。


 中部は6回表、先頭の古川が中前打、一死後古川が二盗に成功、二死後服部の左中間二塁打で7-3と再度突き放す。


 中部は7回表、先頭の金山が三塁線にヒット、トップに返り岩本は四球、藤原の二直をセカンド長持が落球して無死満塁、古川の遊ゴロをショート鈴木がエラー、三走岩本の生還について古川に打点が記録されて8-3、なおも続く無死満塁から加藤が中越えに走者一掃の三塁打を放ち11-3、木下に代わる代打三村勲が中前にプロ入り初ヒットとなるタイムリーを放ち12-3、服部の遊ゴロをショート鈴木が再びエラー、セ軍ベンチはここでようやく上口をレフトに回しレフトの大下がマウンドに上がるが、大下は肩が出来ていなかったか、笠石は四球、森井は押出し四球、金山と岩本の内野安打が連続タイムリーとなってこの回8点、15対3と大きくリードする。


 大下は8回、9回は無失点。


 12点を追うセ軍は9回裏、先頭の上口に代わる代打宮下義雄が三遊間にプロ入り初ヒット、貫井が中前にこの日3本目のヒット、センター古川が後逸する間に一走宮下が還って4-15、打者走者の宮下は一気に三塁に向かうが、「8-1-5」の中継にタッチアウト、鈴木が左前打、トップに返り一言は四球、二死後飯島が左前にタイムリーを放ち最後の抵抗を見せるが、大下が三邪飛に倒れてゲームセット。


 森井茂は13安打1四球1三振で完投、ハーラー単独トップの6勝目をあげる。開幕から1か月以上が経過して、中部日本の勝利は全て森井茂のもの。


 セ軍が初登板の上口政を引っ張りすぎたのは否定できないが、エース白木が投げられない現状では致し方のない面も認められる。結果からみると、白木はこの年440イニングスを投げているので年がら年中投げていると勘違いされている方もいらっしゃるかもしれませんが、この時期2週間以上白木は登板していない。何らかの故障が考えられる。大下の登板がこの時期に集中しているのも、そういう事情によるもの。


 いいところのなかったセ軍であるが、初出場の貫井函治が猛打賞を記録。打率1割台と当りの出ていなかった大下も2試合連続2安打、ようやく光明が見えてきた。


 中部は初回に笠石徳五郎が放った追撃の2点タイムリー二塁打が大きかった。セ軍も中盤で追い付いていたら黒尾重明をリリーフに送る手も残されていたが、笠石の追撃打による序盤の大量失点がそうさせなかったのである。


*笠石徳五郎の直筆サイン入りカード。昭和25年西鉄クリッパース時代のもので、「笠原捕手」は明らかに誤植。1年だけ存在した西鉄クリッパースのユニフォームの資料としても貴重ですね。
綱島理友著「日本プロ野球ユニフォーム大図鑑」によると「ウールのグレーで、左胸に小さくCLIPPERSの文字」とのこと。この写真では見えずらいですが、帽子のマークは「西」の字をデザイン化したもの。


*当時の「笠原」姓は、南海の笠原和夫。こちらが本物の笠原の直筆サイン入りカード。


2019年11月21日木曜日

21年 第5節 週間MVP


週間MVP

投手部門
 巨人 藤本英雄 1

 2勝1完封。今節4連勝で首位阪急に迫ってきた巨人の投の主役。
 戦前の荒れ球とは打って変わってコントロールが良くなった。


打撃部門
 巨人 多田文久三 1

 16打数5安打2得点4打点。
 数字だけなら森下重好や山本一人の方が上だが、多田は巨人の4勝中3試合で勝利打点を記録、山田潔がサヨナラ打を放った試合も多田の二塁打からサヨナラにつながった。



殊勲賞
 巨人 山田潔 1
 26日の阪急戦でサヨナラ打。山田はこの前の打席まで49打数4安打、打率0割8分2厘の不振に喘いでいた。

 グ軍 丸山二三雄 1
 27日の阪急戦で延長11回裏に代打サヨナラ二塁打。

 タ軍 御園生崇男 1
 23日のセ軍戦で戦後初登板で2安打完封。

 パ軍 藤井勇 1
 無届け出場ながら19打数8安打6打点。

敢闘賞
 巨人 呉新亨 1
 16打数9安打6得点。好調巨人を引っ張るリードオフマン。

 グ軍 山本一人 1
 18打数6安打5得点7打点5盗塁。強打もさることながら、山本監督自ら「走る野球」を率先している。

 パ軍 森下重好 2
 18打数10安打4打点。26日のグ軍戦では藤井勇と2者連続ホームラン。

技能賞
 パ軍 辻井弘 2
 23日のグ軍戦で戦後最初の「隠し球」。

 阪急 山田伝 1
 27日のグ軍戦で外野から安井亀和を追いかけ二塁ベースで無捕殺併殺を記録。

 ゴ軍 坪内道則 2
 24日のタ軍戦でオール内野安打での4安打(うち2本はバントヒット)。

21年 第5節 トピックス


 第5節は変則日程で合計12試合。巨人が4戦全勝で、1勝3敗の首位阪急に1.5ゲーム差と迫ってきた。

 パシフィックの23、24、26日の試合は後に「没収試合となり、パ軍に「放棄試合」が宣告されることとなる。


 グレートリングは2勝2敗であったが、4対7で敗れた26日のパ軍戦が後に9対0の勝利に訂正される。結果的にこの1勝がペナントレースの行方を左右することになる。
 
 藤井勇は23日のグ軍戦で無届け出場ながら戦後初登場し、5打数3安打2打点の活躍。


 森下重好は26日のグ軍戦で3安打、27日の巨人戦で4安打と2試合連続猛打賞。


 その藤井と森下は、26日のグ軍戦で2者連続ホームラン。


 御園生崇男は23日の対セ軍戦で戦後初登板して2安打完封。


 辻井弘が23日のグ軍戦で戦後最初の「隠し球」。

 坪内道則は24日のタ軍戦でオール内野安打での4安打(うち2本はバントヒット)。


 タ軍は23日のセ軍戦で富樫淳がサヨナラ打、24日のゴ軍戦で金田正泰がサヨナラ打と、2試合連続サヨナラ勝ち。この他にも、24日の阪急戦で巨人の山田潔が、27日の阪急戦でグ軍の丸山二三雄がサヨナラ打を放ち、4試合でサヨナラ決着。


 タ軍は24日のゴ軍戦で9盗塁を記録。


 阪急は27日のグ軍戦で10失策を記録。


2019年11月19日火曜日

打球鬼ごっこ


 さて、山田伝と安井亀和との「鬼ごっこ」をお伝えしたところですが、そもそもベースボールが日本に伝来した当時、「打球鬼ごっこ」と呼ばれていたことは多くの方もご存じのことと思います。

 ベースボールが急速に日本中に普及していった理由は、当時の小学校の教科書にベースボールが「打球鬼ごっこ」として紹介され、プレーの仕方などを教わった子供たちに大人気となったというのが「定説」となっています。


 明治18年3月に刊行された「西洋戸外遊戯法」にベースボール「打球鬼ごっこ」が解説されています。「西洋戸外遊戯法」は「国立国会図書館デジタルコレクション」で電子化されており、簡単にインターネットで観ることができますのでご確認ください。


 「西洋戸外遊戯法」以外にも、当時の教科書の「指導書」が複数残されています。当ブログが所有しているのは明治19年10月に刊行された「小学遊戯法」で、ここでは「打球鬼」としてベースボールのやり方等が解説されています。既にこの時点では、「打球鬼ごっこ」は「打球鬼」と略して普及していたようです。


 中馬庚がベースボールを「野球」と訳したのは明治27年のことで、翌28年2月に「一高野球部史」が発行され、明治30年に「野球」が刊行されることとなります。



*明治19年10月に刊行された、当時の小学校の教科書の「指導書」です。

*打球鬼(ベースボール)のルールややり方が解説されています。

*こちらはバッティングの指導法。どうも打率が上がらないので、当ブログも見習わなければ(笑)。


*こちらは明治30年に刊行された中馬庚の名著「野球」。


*当ブログが所有しているのは増補第八版で、青井鉞夫により「技術論」が増補されています。
但し、初版でも「技術論」は青井が書いていたと考えられます。中馬は教育者であり「野球」は素人レベル、青井は日本野球史初期の名投手です。

*第八版は明治35年10月1日に刊行されました。中馬の印鑑が貴重ですね(笑)。

史上最大の珍プレー


 「珍プレー」の元祖と言えば「おでこにぶつけた宇野」というのが定説となっていますが、当ブログは、宇野事件より35年前に起こった「山田伝と安井亀和との『鬼ごっこ』」こそが「史上最大の珍プレー」であることを「発見」しました。

 昭和21年5月27日、西宮球場で行われた阪急vsグレートリング4回戦における3回裏グ軍の攻撃でその「事件」は起こりました。


 グ軍は3回裏、先頭の安井亀和が左前打を放って出塁、筒井敬三は左飛に倒れますが、岡村俊昭も中前打を放って一死一二塁、ここで天保義夫の二塁牽制が悪送球となってセンターに抜けたところから物語は始まります。


 「雑記」欄には「天保の悪投に乗じて進まんとするを中堅山田、安井を挟んでアウトとした。この時二進した岡村、塁を離れたので併殺さる。」と書かれています。


 そして、スコアカードには「天保の悪送球で三塁に進んだ安井が一旦本塁方向に走ったが『8B』によりタッチアウト」、「岡村も『8B』によりタッチアウト」と書かれています。


 すなわち、一旦本塁方向に進んだ安井が追ってくる山田から逃れるため三塁ベースを踏んで二塁方向に逆走し、追い付いた山田が二塁ベース付近で安井にタッチ、更に、二塁に進んでいた一走岡村が離塁したところに山田がタッチしてこちらも「8B」によりアウトでダブルプレー。記録は山田伝の「無捕殺併殺」となりました。


*(注)「8B」とは、中堅手「8」が二塁「B」で刺殺を記録したことを意味します。


 天保には悪送球による「失策」が記録されているので、一旦安井が三塁に進塁したのは間違いありません。そこから本塁方向に進んで山田が追いかけてきたとしても、三塁ベースに戻って止まっていれば単なる「天保の二塁牽制悪送球による進塁」で済んでいた訳ですが、何故か安井は二塁方向に逆走しました。


 足に自信のある安井が、俊足として定評のあるベテラン山田に「挑戦」したのかもしれません。天保の二塁牽制悪送球で二走安井が三塁に進むのは当然の成行きですが、バックアップした山田がボールを持ったまま内野方向に走ってきたのを見て、チャレンジ精神がめらめらと燃え盛ったのではないでしょうか。三塁ベースに達していた安井は山田に挑戦を挑むかのように本塁方向に走り出し、山田がそれを追ってピッチャー方向から安井を追い詰め、「ヤバい!」と感じ取った安井が逆方向に逃げました。安井としては、野球のルールなどよりアスリートの本能として山田との「鬼ごっこ」に勝ちたかったのではないでしょうか。


 山田も近くの野手に送球すればよいものを、自ら安井を追いかけ回したのですから「役者」ですね。


 岡村は安井が二塁ベースに戻ったと判断し、占有権は安井にあるのだから自分はベースを離れたがその前に安井がタッチアウトになっていたというところでしょうか。

 岡村のアウトは付け足しとして、山田と安井の「鬼ごっこ」は、「宇野事件」を凌駕する「史上最大の珍プレー」に認定できると、当ブログは明言させていただきます!


*「雑記」欄には「天保の悪投に乗じて進まんとするを中堅山田 安井を挟んでアウトとした。この時二進した岡村 塁を離れたので併殺さる。」と書かれています。

*スコアカードには天保の二塁牽制悪送球(1’-4)で三塁に進塁した安井が一旦ホームに向かいかける(本塁方向への矢印)が、「8B」によりタッチアウト(センター山田に二塁ベースでタッチされた)と書かれています。
そして、一走岡村も「8B」によりタッチアウト、併殺が記録されました。

*この試合でセンター山田の刺殺は4個で併殺が1個。センターフライは2個だけで、「無捕殺併殺」による刺殺2個を加えて合計4個となります。


2019年11月18日月曜日

21年 阪急vsグレートリング 4回戦


5月27日 (月) 西宮 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11  計 
2 0 0 0 2 2 4 0 0  0   0  10 阪急 12勝6敗 0.667 天保義夫 笠松実 前川八郎 
1 0 0 0 6 2 0 1 0  0  1X 11 グ軍 8勝8敗 0.500 別所昭 清水秀雄 

勝利投手 清水秀雄 4勝2敗
敗戦投手 前川八郎 2勝2敗 

二塁打 (急)三木、青田、坂田 (グ)別所、安井、丸山

勝利打点 (グ)丸山二三雄 1


丸山のサヨナラ打で決着

 第1試合に1時間53分を要したことから、西宮の第2試合は午後3時25分、天保と別所の先発で試合開始。

 阪急は初回、一死後上田が左前打で出塁、青田の三遊間ヒットで上田は三塁に進み一死一三塁、野口明のニゴロで三走上田がホームに突っ込むが、セカンド安井からのバックホームにタッチアウト、二死一二塁から三木のレフト戦二塁打で二者還り2点を先制する。


 グ軍は1回裏、先頭の安井の当たりは遊ゴロ、これをショート尾西がエラー、筒井敬三の当りは右前に抜けるがライト髙橋敏が一塁に送球してアウト、このライトゴロの間に安井は三進、岡村の右犠飛で1-2と追い上げる。高橋が記録したライトゴロが波乱の展開の幕開けとなった。


 グ軍は2回裏、先頭の堀井が中前打、木村の遊ゴロで堀井は二封、別所の遊ゴロが「6-4-3」と転送されるがファースト野口明が落球してゲッツーならずアウトは木村の二封だけ、八番ファーストに入っている清水秀雄が四球を選んで二死一二塁、天保の二塁牽制が悪送球となって二死一三塁、桶川隆の遊ゴロで清水が二封されてスリーアウトチェンジ。この回のアウトは全て「6-4」の二塁フォースアウトであった。阪急のショート尾西には既に5個の打球が飛んでいる。


 グ軍は3回裏、先頭の安井が左前打を放って出塁、筒井は左飛に倒れるが、岡村も中前打を放って一死一二塁、ここで天保の二塁牽制が又も悪送球となってセンターに抜け、二走安井は三塁に進み、バックアップしたセンター山田伝が内野に走ってくると安井はホームに向かって走り出す。これを山田が快足を飛ばして追走、山田はピッチャー方向から回り込んだのか、今度は安井が三塁から二塁ベースに逃げるが山田の方が足が速くタッチアウト、一走岡村は二塁ベースを回っていたが、二塁を踏まずに一塁に戻ってしまいアウトが宣告されてスリーアウトチェンジ。山田に「無捕殺併殺」が記録されたこのプレーは「史上最大の珍プレー」の可能性が高いので、別掲で詳述することとして実況中継を続けます。


 阪急は5回表、先頭の天保が四球で出塁、尾西の三ゴロをサード山本一人がエラー、トップに返り山田が四球を選んで無死満塁、上田はストレートの押出し四球を選んで3-1、青田の三ゴロをサード山本が三塁ベースを踏んで二走山田を三封する間に三走尾西がホームインして4-1とリードを広げる。なお一死一二塁から野口明のセカンドライナーに二走上田が戻れず「4-6」と渡ってダブルプレー。


 グ軍は5回裏、先頭の清水が右前打で出塁、桶川の投ゴロを天保がこの日3つ目の二塁への送球ミス、トップに返り安井が一塁線にバントヒットを決めて無死満塁、筒井の遊ゴロをショート尾西がエラーする間に三走清水が還って2-4と反撃開始、岡村は三振に倒れて一死満塁、山本の三塁への緩いゴロをサード三木が一塁に送球するがセーフ、山本には内野安打が記録され、この間に三走桶川がホームイン、二走安井も快足を飛ばしてホームに突っ込み、ファースト野口明が本塁に送球するが悪送球となって安井が生還し4-4の同点、一走筒井は三塁に、打者走者の山本は二塁に進んで一死二三塁、堀井の右前タイムリーで5-4と逆転、木村の三ゴロの間に三走山本が還って6-4、別所が左中間にタイムリー二塁打を放ちこの回6点、7-4とする。阪急ベンチはここで先発の天保をあきらめ笠松をリリーフに送り後続を抑える。


 阪急は6回表、一死後下社の当りはニゴロ、これをファースト野口明が落球、二死後笠松が四球を選び、尾西に代わる代打荒木茂もストレートの四球で二死満塁、トップに返り山田が中前に2点タイムリーを放ち6-7と1点差に迫る。続く上田に代打野口二郎が起用されるが三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。


 阪急の二遊間は、ショートには代打の荒木がそのまま入り、セカンドには代打した野口二郎に代わって今西錬太郎が入る。昭和22年から2年連続20勝投手となる今西は、この年は内野手として登録されている。4月28日に前川のリリーフで投手としてプロ入り初出場、この日が野手デビューとなった。10月6日の対グ軍15回戦ではスタメンセカンドで出場することになる(日本プロ野球私的統計研究会様「スタメンアーカイブ」参照)。


 グ軍は6回裏、先頭の桶川が中前打で出塁、トップに返り安井が右中間に二塁打を放って無死二三塁、筒井は三振に倒れるが、岡村が四球を選んで一死満塁、山本の中犠飛で8-6、二走安井もタッチアップから三進、岡村が二盗を決めて二死二三塁、堀井のニゴロをセカンド今西がファンブル、白球を拾って一塁に送球するがセーフ、今西にエラーが記録される間に三走安井が還って9-6、二走岡村も三塁ベースを蹴ってホームを狙うがファースト野口明からの送球にタッチアウトとなってスリーアウトチェンジ。


 阪急は7回表、先頭の青田が中越えに二塁打、一死後三木のスウィングがキャッチャー筒井のミットに当たり打撃妨害、続く下社のカウントがツーボールナッシングとなったところでグ軍ベンチは先発の別所に代えてファーストから清水をマウンドに送るが、下社は四球を選んで一死満塁、坂田のレフト戦二塁打で二者還り8-9と1点差、なお一死二三塁から前川が右前に逆転の2点タイムリーを放ち10-9と試合をひっくり返す。


 グ軍は8回裏、先頭の安井が二塁に内野安打、筒井の左飛で安井がタッチアップから二塁に進む好走塁、岡村も左飛に倒れて二死二塁、山本の三ゴロをサード三木が一塁に悪送球する間に二走安井が還って10対10 の同点に追い付く。更に山本が二盗を決め、キャッチャー坂田の二塁送球が悪送球となって山本は三進、しかし堀井は三振に倒れて同点止まり。


 9回からは試合が落ち着き11回裏へ。


 グ軍は11回裏、先頭の岡村が二塁に内野安打、山本が中前打で続いて無死一二塁、堀井の投ゴロをピッチャー前川は三塁に送球して岡村は三封、一死一二塁となってグ軍ベンチは櫛田由美彦に代えて代打に丸山二三雄を起用、丸山のカウントは1球、2球と外れてツーボールノーストライク、次の3球目に狙いを定めた丸山がバットを振り抜くと打球は右中間を抜けるサヨナラ二塁打、グ軍が激闘を制す。


 投手・丸山二三雄はこの年25勝をマークして全盛期を迎えるが、打者・丸山二三雄もこの一打で強烈な印象を残すこととなった。


 この試合で阪急は10失策を記録した。その内6個が悪送球、グ軍の足を警戒した結果であろう。10個は全て実況でお伝えしていますので確認してみてください。


 色々なことがあって試合時間は2時間5分、試合終了は午後5時30分であった。5月後半の日の入りは午後7時3分くらいなので、まだ球は見える。